───未来の国からこんにちわ/ランデヴー───
【ケース144:霧波川凍弥/あ、あ、あいしゃっしゃ……!(アイシャルリターン)】 シャアアアア───ビジュウンッ!!! 浩介 「ムハァーーーッ!!到着!!」 浩之 「おお……!ここが別次元か!!」 凍弥 「へーぇ……あんまり変わらないんだな」 椛  「そこまで変化があったら怖いです」 などと言いつつ、訪れたそこは別の次元の昂風街。 約束した通り、彰衛門の時代に遊びにきたのが今である。 というよりは……椛が突如、彰衛門に会いたくなったってことで。 それに巻き込まれたって言った方がいいんだが。 凍弥 「で───椛?彰衛門の居場所って解るのか?」 椛  「もちろんです。わたしにおとうさんの気配が解らないわけがないじゃないですか」 凍弥 「そ、そんなもんか?」 椛  「はい。ちょっと気配探知をするので、静かにしてもらえると嬉しいです」 凍弥 「ん、解った。それじゃあ浩介、浩之───」 浩介 「おお見ろ!レイヴナスカンパニーが無いぞ!!」 浩之 「これは驚きだ!!───何事!?」 浩介 「もしやこの時間軸ではレイヴナスカンパニーは没落……!?     ちぃい親父め!なにをしているのだ!!」 凍弥 「あー……」 静かにしてくれそうにない。 俺は集中しようとしてる椛に『悪い』と小さく声をかけて、 志摩兄弟を連れて離れることにした。 浩介 「む?どうした同志。もしやツレション?」 凍弥 「違うわっ!……椛が集中したいっていうから、     しばらく一人にしてやろうってことになったんだ」 浩之 「なんだそうなのか。言ってくれれば静寂を守ったというのに」 無視されたんだが。 まあいいけど。 凍弥 「───」 無言のままに、ぐるぅりと辺りを見渡した。 本来レイヴナスカンパニーがある筈の場所にはソレは無く、 ただ『売約済み』と書かれた立て看板が広大な空き地に置かれているのみだった。 ……彰衛門の結婚式に招かれてからたった一週間のこの状況。 俺はちと、自分の嫁のファザコンっぷりに頭を痛めていた。 仕事の方はカフェインさんが帰ってきてくれたお蔭で押し付けることが出来たが、 紅花の方が心配でしょうがない。 オチットさんに任せてあるにはあるんだが─── 浩介 「しかし同志よ。何故貴様の妻はわざわざ同現代の時間軸ではなく、     こんな半端な時代に飛んだんだろうな」 浩之 「うむ。それは我も疑問に思っていたぞブラザー。     それに暦間移動……だったか?それを使うまでもなく、     空界とやらのドアを開けて別口のドアを通れば、     この時間軸には辿り着けたのではないのか?」 凍弥 「大人になった渋い彰衛門が見たかったんだそうだ。     だからこんな時代に飛んだんだと。     ……俺としては、若い親父を見てみたい気分ではあるけど」 浩之 「やはり同志よ。貴様に似てお節介なのか?」 凍弥 「いや、かなりヘンな意味でのヒネクレ者だったらしいけど。     閏璃凍弥の性格を丁寧にダウンロードしたような性格だったって聞いてる」 浩介 「ふむ、あいつか……」 浩之 「なかなか興味深いなブラザー。     まず同志の父親ヤァ〜ングヴァージョンに会ったらどうする?」 浩介 「出会い頭にポセイドンクロスボンバーはどうだろうか」 浩之 「それだ」 凍弥 「“それだ”じゃねぇ」 それに、こっちの時間軸での親父の性格も“そう”だとは限らない。 まあそれよりも…… 凍弥 「……なぁ、訊いていいか?なんでお前が居るんだよ」 佐古田「天命ッス」 運命の神をチェーンソーで斬殺したい気分になった。 物見遊山で来たんじゃないんだぞー、なんて言っても一番に信用されないヤツの同行。 それを許してしまった自分が情けなく思う。 だが信じてくれゴッド。 俺は間違っても、こいつを連れてきたくて連れてきたわけじゃない。 凍弥 「はぁ〜あ……この調子じゃまた悠介さんに怒られるよ」 浩之 「うむ。彼奴は佐古田を嫌っているからな。まず間違い無く怒られるだろう」 浩介 「佐古田好恵だけ帰還させるというのはどうだ?」 佐古田「娘の命が惜しかったらンなことしねぇことッス」 三人 『いきなり脅迫か!?』 凍弥 「ホント碌でもねぇよなお前……」 佐古田「そんな言葉は聞き飽きたッス」 凍弥 「それって威張れることか?」 浩介 「否だな同志。既に佐古田好恵は終わっているのだ」 佐古田「激うるせーッス!!終わってるとか言うなッス!!」 凍弥 「はーいはいはいどうどう」 佐古田「馬扱いすんなッス!」 ギャーギャー騒がしい佐古田の頭をグリグリと押し、振り回されるナックルを遠ざける。 しかしアレだな、ここ数年ずっと家の中に篭りっ放しだったから、空気が美味く感じる。 それはそれとして─── 凍弥 「椛ー、気配はどうだー?」 そろそろいいだろうと思って声をかける。 が───椛は首を傾げたままなにかをぶつぶつ言っていた。 凍弥 「?」 解らん。 とりあえず近くに行って話した方がよさそうだ。 凍弥 「椛?」 そんなわけで近くにまで駆け寄って、その顔を見る。 ……その顔は案の定思案顔で、 椛特有の、なにかが解らないままだと決まってなる顔だった。 椛  「あの……えと。おとうさんらしき気配は感知しました。     でもその……なんかヘンなんです。     死神だったり、なにか強大な生物の気配だったり……。なんでしょう、これ」 凍弥 「ん……俺に言われてもな。悪い、俺じゃあそっちの気配とかは解らない」 昔とった杵柄とかなんとか。 俺が解るのは近場に居る人の気配くらいだ。 椛  「結婚式の時から比較しても、異常なくらいに力があるんです。     これは……このまま会いに行くのは危険かもしれません」 凍弥 「そうなのか?じゃあどうする?……っと、じゃあ晦神社にでも行ってみるか」 椛  「あ……よくわたしが考えてることが解りましたね」 凍弥 「多少なら解るさ。その、ずっと愛してきた相手なんだからな」 椛  「と、凍弥さん……」 椛がポッと顔を赤らめて俺を見上げる。 俺はなんだか照れくさくて、それを払拭するために椛の頭をやさしく撫でた。 佐古田「ぶっちゅするッス?」 凍弥 「貴様が見てる限り永劫やらんわ」 佐古田「チッ、つまんねぇッス」 凍弥 「あのな……」 ああいい、こいつのねちっこさは今に始まったことじゃない。 今さらなに言ったって無駄だろう。 ということで─── 椛  「それじゃあ晦神社に転移します。     佐古田さん以外のみなさん、こちらに寄ってください」 佐古田「なんでッス!?」 椛  「人の恋路を邪魔する人は付いてこなくて結構です」 佐古田「だったらしがみついてでも行くッス!!そりゃー!!」 ビシィッ!! 佐古田「あいたッス!!」 伸ばされた佐古田の手が、素早く動かされた椛の手に叩かれる。 となれば、次に来る言葉はもちろん─── 椛  「……わたしに触らないでください」 ……である。 男以外に使ったのを見るのは初めてかも。 佐古田「なっ……無茶苦茶すぎるッス!!横暴ッス!!」 浩介 「よもや佐古田好恵から“横暴”という言葉が聞けるとは……」 佐古田「激うるせーっつってるッス!!」 椛  「大体、面白そうだからという理由で、     転移の瞬間にしがみついてくるなんて何を考えているんですか?     一歩間違えれば時間軸の海に飲まれて、     何処に落ちるかも解らなかったところです」 佐古田「アチキはラッキーガールだから全然平気ッス」 浩介 「うむ。ジュラシックパークなどだったら第一に食われるキャラと見た」 佐古田「うるせーッス!!」 凍弥 「まあそんなわけだ。サラバだ佐古田」 佐古田「え?ああっ!待つッスーーーーッ!!!」 佐古田の悲痛な叫びも虚しく。 俺達は佐古田を置いてさっさと転移したのだった。 佐古田「ひでぇッス……マジモンの鬼ッス……。     ……まぁいいッス。このまま蒼空院邸にでも行ってみるッス……。     あそこならきっと縁のある誰かが居るに違いねぇッス……」 ───……。 ……。 じゃんじゃがじゃじゃん・じゃんじゃんじゃじゃんじゃん、 じゃんじゃがじゃじゃんじゃん♪ 浩介 「オウイェーーーイ!!」 じゃんじゃがじゃじゃん・じゃんじゃんじゃじゃんじゃん、 じゃんじゃがじゃじゃんじゃん♪ 浩之 「オウイェーーーイ!!」 じゃじゃっちゃっちゃっちゃちゃらっちゃっちゃちゃ、 じゃんじゃがじゃじゃんじゃんじゃんじゃじゃんじゃん、 じゃじゃじゃじゃじゃんじゃじゃんっ! 志摩 『イエアーーーッ!!』 凍弥 「前々から思ってたんだが……その歌になんの意味があるんだ?」 浩介 「む?意味など無いが」 凍弥 「……そか」 さて……晦神社に辿り着いた俺達は、神社の境内で辺りを見渡していた。 どうやらここはいつまで経っても変わらないらしく、 下界の物音など一切聞こえないためか……物凄く静かだった。 前までだったらここで篠瀬とかが竹箒を使って掃除してたりしたもんだ。 彰衛門と一緒にこの時間軸に来てからは、その風景も無くなってしまった。 なんだかんだで篠瀬とは付き合いも長かった。 寂しくないと言えばウソだったのを覚えてる。 でも……それ言うと椛が嫉妬するんだよな。 嬉しい反面、加減を知らないから困る。 凍弥 「───……」 時刻は昼あたり。 見上げた空の太陽の位置で大体の時間を予想し、視線を戻した景色の中で頷いた。 凍弥 「なぁ椛───あら?」 浩介 「同志?朧月なら母屋の方へ降りていったが」 凍弥 「そ、そか……はぁ。相変わらず彰衛門のこととなると……」 やっぱり屋敷の中で缶詰状態じゃストレスも溜まるんだろうな。 たまの休暇だ、たっぷり羽を伸ばさせてやるのもいいだろう。 そんなことを思いながら、 俺は志摩兄弟と竹箒を持ってチャンバラごっこを始めたのだった。 【ケース145:朧月椛/“それはお江戸だった。怪しいお江戸だった”という145話】 がらがらがら…… 椛  「ただいま……あぅ」 玄関を開けて中に入った……までは───良かったのかな。 でもこの家は“わたし”の家じゃないから、ただいまもなにもない。 この時代じゃあまだわたしは産まれてないだろうし、 そもそも今ここに住んでる人が、わたしを覚えてるとは─── 水穂 「あれ……?椛ちゃん?」 椛  「───」 覚えてた。 エプロンで手を拭きながら、とたとたと歩いてきたその人は紅水穂さん。 もう随分と長い間、晦家に住んでいる人だ。 水穂 「おにいさんの結婚式以来になるのかな。あ、とにかく上がって上がって。     って……上がって、でいいのかな。     でも未来になれば椛ちゃんはここが自分の家になるわけだし……うーん……」 椛  「時代が違いますから、お邪魔しますと言っておきます」 水穂 「う、うん。それで……今日はどうしたの?なにか事件?」 椛  「え……いえ。おとうさんを探しに来たんですけど……」 水穂 「おとうさん?……ああ、ホモさんですね?」 椛  「ホモじゃありません。おとうさんです」 水穂 「あ、っとと……つい昔のクセが……。     えっとね、彰利さんならここには居ないよ?」 椛  「え───それじゃあおじいさまは───」 水穂 「おにいさんは家を出ちゃったから。今は蒼空院邸に居る筈だけど」 椛  「………」 蒼空院邸……お母さんとお父さんの家だ。 あそこにおじいさまが……? 椛  「あ……それじゃあ今ここには誰が……?」 水穂 「えーと。ゼノさんとわたしが夫婦になってるのは知ってるのかな」 椛  「───えぇっ!!?」 水穂 「あ、知らないんだ。うん、久しぶりに驚いた顔が見られたかも」 わたしの顔を見て、嬉しそうにこくこくと頷く水穂さん。 ……なんだか悔しかったけれど、ここで時間をとるわけにはいかない。 椛  「それじゃあ水穂さんとゼノさんが住んでるんですか……?」 水穂 「わたしとゼノさんと、セレスさんとお姉さんがた……かな。     あとは時々シュバルドラインさんが遊びにくるくらい」 椛  「………」 シュバルドラインって、 確かおじいさまが戦った黄竜王……とかいうのじゃなかっただろうか。 遊びにくる、って……相変わらずこの神社には『なんでもアリ』の空気が流れてる。 椛  「すいません、話を戻しますけど───おとうさんは蒼空院邸に居るんですね?」 水穂 「そう。なにか急用なのかな」 椛  「私事です!ごめんなさい話せません!!」 言ってわたしは駆け出した。 おとうさんが居る……!もうすぐ会える……!! 水穂 「もしかして、“おとうさん”に会えなくてさびしくなっちゃった?」  ドゴォンッ!! 椛  「はきゅうっ!!」 突然振られた言葉に思い切り動揺した……らしい。 気づけばわたしは玄関前にある支柱に頭をぶつけていて、蹲りながらその痛みに耐えた。 水穂 「だ、大丈夫!?今なんか『ドゴォン』って物凄い音がっ……!!」 椛  「はぅ……っ……くっ……!!ら、らいじょうぶれす……!!」 頭を打つわ舌を噛むわで散々だった。 でも図星だったからしょうがない。 わたしは結局、おとうさんの側に居たいし凍弥さんの側に居たい我が儘な娘なのだ。 などと思いながら玄関を開けて外に出た───途端。 ?? 「っ……!!」 椛  「あわっ───!?」 飛び出した途端に人の顔。 わたしは慌てて踏みとどまると、目の前の人に謝ろうとして───固まった。 ?? 「あ、あの……お客さま……ですか?」 目の前に居たのはわたしの母───蒼空院深冬だったのだ。 若いけど間違いない。ちゃんと面影がある。 深冬 「あの……?」 椛  「おか───あ、えっと……その」 お母さん、なんて呼んでも混乱させるだけだ。 とはいえ……随分と雰囲気が違うから驚いた。 わたしたちの時代の蒼空院深冬といえば、 確かに儚げな印象はあるものの……言いたいことはスパッと言う人だった。 でも目の前に居る人は緊張感の塊といった感じだ。 えぇっと……どうしましょうか。 深冬 「………」 椛  「………」 深冬 「………」 椛  「………」 ああっ……だめだっ!! 凍弥さんに会う前の昔の自分を見ているみたいで物凄く歯痒い!! 椛  「あ、あのっ!」 深冬 「《ビビクゥッ!!》はっ……はいっ……!!」 椛  「………」 一気に二回怯えられた気がする。 え……?これがお母さんの青春時代……? 声  「おーーーい、椛ー?」 ……、───凍弥さんの声だ。 どうやら境内から降りてきたらしい。 とすれば、ここにはもう用事らしい用事は無いと思う。 椛  「あの、失礼します」 深冬 「あ……は、はい……」 小さくお辞儀をして横を通り抜ける。 と、お母さんは大きく丁寧にお辞儀をしてわたしを見送るように振舞った。 ……さすがおじいさまの娘。 こういうときの礼式は相当のようだ。 でもおじいさまって案外ざっくばらんというか、適当な人だから。 ああいうのは案外、お母さん自身が自然に身に付けたものなのかもしれない。 凍弥 「あぁ椛。もういいのか?」 椛  「はい。おとうさんは蒼空院邸に居るそうです」 凍弥 「蒼空院邸か……そういえばもう全然行ってなかったな。     この時代と俺達の時代とでは、やっぱり違ったりするのかな」 椛  「そればかりは見てみないと解りませんよ」 凍弥 「それもそうだな。じゃ……頼む」 椛  「はい。───月空力」 浩介 「しかしアレだなブラザー。ここの空気は相変わらず澄んでいるな」 浩之 「そうだなブラザー。     数えられる程度にしか来たことはないが、それでも解るほどの───」 ビジュンッ!! すぐに発動させた月空力の所為か、二人の言葉をしっかりと聞く余裕は無かった。 【ケース146:霧波川凍弥/“道なき道は歩きようがない”という146話】 ビジュンッ!! 椛  「……ふう。着きました」 浩介 「おお確かに。相変わらずの豪邸だなブラザー」 浩之 「おおまったくだブラザー。このテーブルとか見ると落書きをしたくなる」 凍弥 「で、怒られるのは俺なわけな」 志摩 『解っているではないか同志よ』 凍弥 「わからいでかっ!!なんべんお前らの巻き添え食ったと思ってんだ!!」 志摩 『うむ。ざっと146回ほどだな』 凍弥 「勘弁してくれ……」 さて、場所は蒼空院邸の庭……だな。 いくつかティーセットが出しっぱなしの状態で放置されている。 で、そんなティーセットで優雅に紅茶を嗜む佐古田。 凍弥 「……なぁ、訊いていいか……?なんでお前がここに居る……」 佐古田「自然の摂理ってヤツッス」 世界でもっとも自然の象徴に見えないヤツに言われてもな……。 そう言いそうになったのをグッと堪えた。 そしてのちに、堪える必要は皆無だったかもしれないと気づく。 凍弥 「中には入ってみたのか?」 佐古田「アチキはそこまで身勝手じゃないッス。     チャイム鳴らしても誰も来ないからここであまり物の茶を啜ってるわけッス」 カチャッ……ギギィ…… などと佐古田の話を聞いていると、門のところの大きな扉が開け放たれ、 その先から一人のお婆さんが。 椛  「あ───」 一度、椛が見せてくれた深冬さんのアルバムで見たことがある人だった。 確か名前は……蒼空院櫻子さん。 そう、そうだ。 子供だった深冬さんを庇って、強盗に惨殺されたっていう─── 椛  「ひぃお婆様───!」 櫻子 「あらあらあらあらあらあらあらまあまあまあまあまあまあまあまあまあ……!!     あなたお客さんね?そうなのね?それじゃあお茶にしましょ、それがいいわ」 椛  「えっ───あ、あのっ!?あ、あわっ───あぁあーーーーー………………」 ……疾風怒濤だった。 戸惑っていた椛は明らかにお婆さんな櫻子さんに掴まれ、 物凄い速さで屋敷へと連れ去られていった。 凍弥 (お婆さん……だったよな?) なんつー元気なお婆さんだ。 歳をとってもああなりたいと思える理想的なお婆さんだ。 ───……。 ……。 ややあって。 浩介 「んぐっ!むぐぐっ……!!むう!!これはまたなんともっ……!!」 浩之 「ああこらブラザー貴様!それは我の取り分だぞ!!修正ィイイイイッ!!」 浩介 「《ボゴシィッ!!》ラブリィイイイイイイッ!!!」 凍弥 「………」 お茶会とやらに巻き込まれた俺達は、庭で紅茶とケーキを食べていた。 連れ攫われた椛はなにやら終始頭を捻っていた。 攫われた意味が解らなかったらしい。 凍弥 「それで……えぇと」 櫻子 「解っているわ、あなた……霧波川凍弥くんね?     そしてこっちの女の子が朧月椛ちゃん。     ……志摩浩介くんに、志摩浩之くんね?」 凍弥 「え……なんで───」 この際、名前を呼ばれなくて何気にショックを受けている佐古田は無視しよう。 浩介 「───!大変だ同志よ!!」 凍弥 「っ!?ど、どうした!?もしかしてなにか異常事態が───」 浩介 「いや。ブラザーがケーキを喉に詰まらせて悶絶している」 凍弥 「どうしてお前らはそう話の腰を折るんだっ!!」 浩之 「げひゅっ……げひゅっ……グビグビ……」 浩介 「おお見ろ同志!ブラザーの顔色がどんどんと虹色に!!」 凍弥 「そんな奇妙な色に仕上がってたま───うわぁマジだ!!     浩之!?浩之ーーーーーーっ!!!!」 櫻子 「うふふふふふ、彰利ちゃんの知り合いだけあって、賑やかねぇ」 凍弥 「笑い事じゃねぇーーーーっ!!!」 まあ、なんだ。 今日も俺達は絶好調だった。 ───……。 ……。 凍弥 「え……ゲーム?」 櫻子 「ええそうよ。なんだかとっても楽しいゲームみたいでねぇ。     三日くらい部屋に閉じこもって出てこなかったのよ。     おばあちゃん、ちょっと寂しかったの。だから丁度良かったわ」 ケーキを食べ終えた俺達は、ほのぼのと喋る櫻子さんの言葉を聞いていた。 なんでも彰衛門たちは、謎のゲームにハマってるんだとか。 その歳になってもゲームか、とかツッコミたかったが、 そんなものは個人の自由なので言葉を飲み込んだ。 凍弥 「ちょっと様子見て見ていいですかね」 櫻子 「あら、うふふふふ、もちろんよ。     未来の方のとはいえ、椛ちゃんは悠介さんのお孫さんなんだから。     わたしにとっては曾孫のようなものよ」 椛  「ひぃおばあさま……」 凍弥 「なぁ椛。思ったんだが……悠介さんを間に挟むと曾お婆さんじゃなくて、     曾々お婆さんってことになるんじゃないか?」 椛  「あ……言われてみればそうですね」 櫻子 「うふふ、いいのよどっちでも。     さ、それじゃあ悠介さんの部屋に案内するわね?     お客さんがいっぱい居るけど、驚いちゃダメよ?」 凍弥 「いっぱい?」 悠介さんや彰衛門にそこまでの知り合いが居るとは……って居たな。 確か原沢南中学校時代の友人とやらたちが。 ……今、居るのか。 あの騒がしさは志摩兄弟以上だ……なにせ人数がケタ違い。 結婚式の時も随分と騒いでたし───まあ、椛の気が済むまで付き合う気ではあるが。 そうして俺達は櫻子さんの案内のもと、悠介さんの自室に─── ?? 「ありゃ?お客人?」 ?? 「みたいだな───って、どっかで見た顔」 ?? 「……?アレじゃないか?     ほら、悠介さんと彰利さんの記憶を見せてもらったとき……」 ?? 「あ、あーあーあー!そうだよそう!未来の俺の娘!!」 ?? 「で、あっちは未来の俺の息子?……自分が親である状態の想像がまるで出来ない」 ───行こうとした時、庭に何かが降りる気配。 見れば、深冬さんを始めとした数人が庭に立っていた。 恐らく月空力だろう。 となればこっちの男三人は───親父……霧波川柾樹に、裕希刹那、豆村みずきだろう。 で、こっちの女三人が深冬さんに悠季美さん。それと……誰だろ。 櫻子 「あらあら、あなたたち何処に行ってたの?悠介さんたちが探してたみたいよ?」 豆村 「やー、柾樹ン家に親父さんが戻ってきてまして。     で、“母親の葬式にも出ずになにしてたんだー!”って怒られてた」 刹那 「正直親父さん可哀相だったなー」 ???「でも一方的に怒るのはヒドイと思ったから言ってやったんです。     妻と子を置いたままずっと海外に居た人にそんなこと言う資格は無いって」 豆村 「紗弥香さん、ありゃ流石に言いすぎかと……」 刹那 「親父さん、本気でヘコんでたっすよ」 紗弥香「宅の柾樹くんをイジメるヤツはわたしが許しません」 豆村 (……いつから紗弥香さん家の柾樹くんになったんだ……?) 刹那 (さあ……) ……ふむ。どうやら紗弥香、という名前らしい。 でも誰だろな。 俺達の時代でそんな名前の人は居なかった。 ってことは……未来では生きてない人の娘ってことだよな。 とくれば、与一の娘か閏璃凍弥の娘……? 櫻子 「それで、大丈夫だったの?」 柾樹 「さすがに一週間家空けてたって知られたら思いっきり怒られたよ」 豆村 「でも葬式とかももう終わってたみたいだ。     一応柾樹は“誰も居ない家に居たくなかった”って理由で、     俺ン家に泊まってたってことにしといたからさ。     そこんところは親父さんも悪かったと思ったのか、すぐ引き下がってくれた」 櫻子 「そう……。で、そのお父様は今……?」 豆村 「ま、呆れちまう話なんだけどさ。     今プロジェクトが上手く軌道に乗ってるとかで、     どうしても外国に戻らなきゃならないんだってさ。     それこそ、その会社が潰れるくらいの責任重大プロジェクトらしいんだけど」 柾樹 「そんなこんなで、俺達は力を合わせて父さんのプロジェクトが安定して、     父さんが帰ってくるまではなんとか生きていこうってことになったわけで。     はは、危うく外国に一緒に連れて行かれるところだった」 豆村 「そこんところは紗弥香さんが猛烈に反対してくれたお蔭で乗り切れたけど。     さすがに近所の者どもも孤独の身になったのに、     自分の息子だけそこから抜き去るってのは心が痛かったみたいだ」 ……言ってることが良く解らないんだが。 親父の母親って……来流美ばーさんだよな。 死んだって───って、悠介さんや彰衛門が居るってのに死んだままってのはないな。 そもそも親父たち、全然悲しそうとか辛そうとか、そういった表情はしていない。 と───そんな時。 額にバンダナを巻いた猫口の男───豆村みずきが、こっちを見た。 こっち、というよりは椛を。 豆村 「自分の娘なのに自分より経験豊富とはこれ如何に……」 椛  「な、なんですか……人をジロジロと……」 豆村 「ともあれスキンシップは大事!時空を超えた親子のスキンシップを見よ!!     名前はえーと……椛ィイーーーーーーーッ!!!!」 がばズパシィッ!! 豆村 「アウチィーーーーッ!!」 椛  「凍弥さん以外の男がわたしに触らないでください……!!」 両手を広げて抱きつこうとした途端にビンタが炸裂。 親子のスキンシップってったって、時空が違うんじゃあそもそも親も子も無い。 豆村 「あの……俺、キミのパパりんだよ?」 椛  「別の時間軸での話です」 豆村 「や……そりゃそうだけど。えーと、霧波川凍弥クン。     キミよくこんな性格の娘と付き合う気になったね。パパは嬉しいよ」 凍弥 「誰がパパだ」 柾樹 「叔父さんと同じ名前……ややこしいなぁ」 凍弥 「はっはっは、どうだ親父殿参ったかコノヤロー」 柾樹 「待った。とりあえず俺を親父なんて言うのはやめてほしい。     別の時間軸での俺がどうだったかは知らないけど、     俺は誰とも付き合う気も結婚する気もない」 刹那 「良かったら佐奈木夕さんの住所教えるぞ?」 柾樹 「いらないって」 凍弥 「ふむ」 こっちの親父殿は随分と冷めた人らしい。 会ってすぐに親父殿だとか認められるのは、ひとえに彰衛門のお蔭だろうけど。 大体のビックリ状況には慣れちまった。 豆村 「で……そっちの人が」 浩之 「うむ。世に言うセカンドインパクト、志摩浩之だ」 浩介 「そして我が世界のファーストインパクト、志摩浩介だ」 佐古田「そしてアチキが───」 全員 『ただの馬鹿だ』 佐古田「激うるせーッス!!黙ってるッス!!」 豆村 「おお……ホンモノか!!貴様に是非お願いしたいことがあるんだが!!」 佐古田「なにッスこの猫口……アチキに何用ッス?」 豆村 「明神太郎と呼んでもいいだろうか」 刹那 「バァ〜イ・うえきの法則」 凍弥 「よかったな佐古田!ぴったりのあだ名じゃないか!!」 佐古田「うるせーッスムナミー!!     ぴったりだったとしても呼ばれたくないあだ名なんて五萬とあるッス!!」 凍弥 「そうか!じゃあ嬉しいんだな!?」 佐古田「なんでそうなるッスてめぇ!!誰も呼ばれたいなんて言ってねぇッス!!」 凍弥 「呼ばれたくないともハッキリ言ってなかったじゃないか」 浩介 「うむ。呼ばれたくないあだ名が五萬とあると言っただけだったな」 浩之 「そうだなブラザー」 凍弥 「ほら見ろコノヤロウ」 佐古田「野郎……!」 豆村 「……なんつーか……なぁ?」 刹那 「ああ……ほんと凍弥さんって感じ……」 ギャーギャー騒ぐ俺達を見てざわざわと思い思いのことを口にする親父様集団。 自分より年下の人を親父様と呼ぶのは如何なものかとも思ったが、 気にしたってしょうがない。 凍弥 「っと、ごめん櫻子さん。案内してもらっていいかな」 櫻子 「はいはいはいはい、それじゃあ付いてくるのよ?」 散々待たせたにも関わらず、櫻子さんは穏やかに笑って案内を続けてくれた。 はぁ……いい人だ。 ───と。 俺はふと、一人でさっさと櫻子さんの後ろに付く女の子───郭鷺悠季美さんを見て、 ふと訊いてみたいことが頭をよぎるのを感じた。 だから俺はそっと悠季美さんに近づいて、これまたそっと耳打ちした。 凍弥 (……あの。やっぱ親父のこと、好きなんですか?) 悠季美「───!!」(グボンッ!!) 瞬間的に沸騰した。 顔は真っ赤で、うわ言のように『な、な、なぁあ……!』と言っている。 うむむ……核心をいきなり突くのは些か不躾だったか? 椛  「───凍弥さん」 凍弥 「おッ……OK話し合おう椛。     こ、これはちと訊いてみたいことを訊いてみただけであって、     断じて顔が赤くなるような口説き文句を囁いたとかじゃないぞ……」 ギュリィッ!! 凍弥 「あいぃいいいいーーーーーーーーっ!!!!!     いででいででででいだだだぁああーーーーーーーーーっ!!!!!     腿っ!!腿ツネるなって何度言わせりゃ気が済むんだぁーーーーーーーっ!!!」 椛  「凍弥さんこそっ!!わたし以外に色目なんて使ってどういうつもりですか!?     他の女性に色目を使うなんて許しません!!     欲情するならわたしにしてください!!」 凍弥 「よよよ欲情なんてするかぁっ!!」 悠季美「なっ……それはわたしに魅力が無いとでも言うつもりですか!!?」 凍弥 「そ、そうじゃない!そうじゃなくて!!」 刹那 「おのれ貴様!郭鷺ほどの美人になんて言い草!!」 悠季美「あなたは関係ありません!!引っ込んでてください!!」 刹那 「ひでっ!?」 浩介 「はっはっは、相変わらず女運が無いなぁ同志よ」 浩之 「まったくだなブラザー」 椛  「それはわたしと連れ添ったこと自体が不運だったという挑戦ですか!?」 浩介 「ムオッ!?」 浩之 「いかんぞブラザー!矛先がこっちに!!」 悠季美「あなたなんかにどうこう言われるほど     わたしは女性として出来てないわけじゃあありませんよ!余計なお世話です!!」 刹那 「そうだそうだ!!」 豆村 「ジャイアンの言う通りだ!!」 悠季美「誰がジャイアンですか!!」 凍弥 「だぁあああ!!収拾つかねぇえーーーーーーーっ!!!!」 未来で俺の帰りを待つ紅花よ……パパは今日も頑張ってるよ……。 などと思いつつ、いつまで経っても悠介さんの部屋に辿り着けない俺は、 こんな状況にホロリと涙したのだった。 ───……。 ……。 櫻子 「さ、ここが悠介さんの部屋よ」 凍弥 「はぁあ〜〜〜〜〜あぁああ……」 ようやく着けた。 後ろの方ではまだギャーギャーと騒いでいるやつらが所狭しだが、 もう無視していいと思う。 櫻子 「じゃあ、なにかあったら呼んでくれていいからね」 凍弥 「あ、はい。わざわざすいません」 つい口から出た丁寧な口調に、櫻子さんが『まあ』と小さくこぼしたのちに笑顔。 そのまま廊下を歩いていった。 凍弥 「……ん」 気分を転換させる感じに気合を入れる。 そしてコンコンとノック───すると。 声  『カムイン』 何故か、この場には似つかわしくない声が聞こえてきた。 あ、いや……洋館なんだから似つかわしいのか? ともあれ返事があることに気を良くした俺はドアノブを回転させて、ドアを開けた。 ていうか悠介さんが洋館に住むって……似合わないよなぁ。  ガチャッ─── ───などという考えは、部屋の中を見た途端に吹っ飛んだ。 凍弥 「……あれ?」 マテ。 これって何処でもドアですか? 洋館から一歩中に足を踏み入れればッ……!!そこは和室だった!!なんて─── 女性  「ん……あれ?誰キミたち。ここは関係者以外立ち入り───って」 豆村  「やは、イセリアさん」 イセリア「ツンツン頭の息子?じゃあこっちの見覚えの無い小僧さんたちは?」 柾樹? 「マイサン!!」 柾樹  「豆村、人の声を真似てとんでもないこと言わないように」 刹那  「しかも全然似てねぇ」 豆村  「まあまあ。えーと、こちらは別の時間軸の未来から来た……未来人類!」  ボグルシャアアア!!! 豆村 「ペサァーーーーーッ!!?」 未来人類と言った途端、顔面を椛によって打ち抜かれる豆村氏。 殴られて当然なので、とりあえず無視。 なにやらインパクトの瞬間に爆発してたような気もするが、 開祖ナックルに巻き込まれるのはこちらとしても本意ではないので。 イセリア「なに?キミたちもヒロラインに参加するの?」 凍弥  「ヒロ……?なんだそれ」 聞き慣れないゲーム名に困惑する。 なんだかんだでゲームなどをどこからか調達してくる志摩兄弟─── その二人と一緒に居ても聞き慣れないゲームは心底珍しい。 ヒロライン……多分略称だと思うが、そんなのは未来には存在してない筈。 イセリア「“博光の野望オンライン”っていうのが正式名称らしいんだけどね。      自分の精神を創造空間に飛ばして、      そこで擬似ファンタジーを体感するゲーム……かな」 言われた言葉に部屋の中を見渡してみると、 広い部屋の中には見知った顔が寝入った状態で倒れていた。 そこに居る全員は若い姿のまま。 当然、彰衛門の姿もすぐに確認出来た。 イセリア「どうするの?見物しに来ただけなら出来れば退場を願いたいんだけど。      結構管理に集中力が要るから、      話してると辛いし精霊のみんなにも迷惑がかかるの」 凍弥  「……───」 浩介  「フッ……同志よ。何を迷うことがある」 浩之  「そうだぞ同志……ファンタジーとは男の浪漫。      ここで頷かずして何が男か任侠か」 佐古田 「任侠を語られたらアチキが潜らないわけにはいかねぇッス」 凍弥  「よっ!極道娘!」 佐古田 「激うるせーッスムナミー!!それで!?ムナミーはどうするッス!?      ここで夫婦仲良く乳繰り合ってるッス!?」 凍弥  「乳繰り言うな!!……えーと、本当に俺達も混ざっていいのか?」 イセリア「んー?べつにいいよー。      このゲームは基本的に人数が多ければ多いほど面白いから。      もう今さら管理するキャラクターがいくら増えようがどんと来いって感じ」 へえ……なんか大変そうだけど、彰衛門が三日間も閉じこもって夢中になるゲーム…… そう聞いた時から興味心身だったのは事実だ。 よし。 凍弥  「じゃあ……お願いする」 イセリア「うんよし。じゃあそこらへんに適当に座るか寝転がるかしてね。      ノーちゃん、新しいお友達が追加されるけどOK?」 ??? 「好きにしろ」 たった一言の返事だった。 イセリア  「じゃあまずは年齢調整から。        原則としてこのヒロラインは夢見る少年少女の冒険絵巻だから、        ちょっと調整させてもらうから。ゼクンドゥス、いい?」 ゼクンドゥス『容易い』 やっぱりたった一言。 でもゼクンドゥス氏が俺達をチラリと見据えた途端、 俺達の身体がかつての青春時代にまでシャッキリ戻されていた。 浩介 「ぬおっ!?こ、これはいったいどういうトリック!?」 浩之 「もしや……ノストラダムス!?」 凍弥 「や……それは絶対に無いと思う」 ともあれ俺達はそこらへんに適当に座り、促されるままに目を閉じた。 で───次に目を開けた時。 そこは既に別世界だった。 Next Menu back