───冒険の書29/冒険と書いて無茶と読め───
【ケース150:桐生真穂(再)/流れ流れていつかまた生まれ変わる(時の川)】 ───……時は流れ、とっぷりと夜。 ドリアード『ヒロミツ、それはなんじゃ?』 中井出  「うむよくぞ聞いた!       これは原中名物“呂死闇流卯烈屠(ろしあんるうれっと)
”をするための仕掛けである!」 ドリアード『ろしあんるうれっととな……?』 中井出  「本来ならばガムケーストラップが基本なんだが、       生憎とこの世界にはそれがない。       というわけで、似たような仕掛けを我らで作ったのがこれである!」 ドリアード『そ、そうなのか!それでこれはどうやって遊ぶものなのじゃ!?』 ……いつの間にか完全に遊びに没頭していたドリアードは、 怒りの気持ちを完全に忘れて遊んでいた。 聞けば、ドリアードはその身体が示す通りまだまだ子供らしく、 そんな状態のまま聖堂を任されていたために遊びというものをとんと知らないらしい。 歌を欲したのも、歌以外のことを知らない故、興味が歌にしか回らなかったからだ。 中井出  「まず第三者に、このガムケースもどきをシャッフルしてもらう。丘野二等」 丘野   「ラーサー!」 ドリアード『うむうむ……』 中井出  「で、こうして並べられた六つのガムケースもどきの中から、       一個ずつ順番にガムもどきを引いていく」 ドリアード『……?よく解らぬぞヒロミツ。これがなんの遊びになるというのじゃ』 中井出  「うむ。実はこのガムケースもどきの中に、ひとつだけトラップがあるのだ」 ドリアード『トラップ……?罠か。そ、それはどんな罠なのじゃ?』 中井出  「痛い罠だ。さあ覚悟はいいか。まずはジャンケンだ」 ドリアード『よ、よぅし!受けて立つぞ!』 ……平和だった。 しばらく終わりそうにないってことで見回ったこの関所も、 もう知らないところが無いくらいだ。 あとはもう、提督さんの勝負を眺めるだけになってしまった。 ……スッ。 中井出  「……ムフゥ、セーフ。さあ次は貴様の番だ。心してかかれ」 ドリアード『ト、トラップか……ええい、なにするものぞ!てやぁっ!!』  スッヴァッチィイイイイイインッ!!!!! ドリアード『いっ───きゃああああああああああっ!!!!!』 なんと愚かな……。 遊びという遊び、創作遊びという創作遊びをやり尽くした我らが提督に、 遊びで挑もうなんて永劫早い。 哀れ、ドリアードの指にはバネ仕掛けのトラップが落ち、早くも彼女は泣き叫んだ。 総員 (めっちゃ弱ぇえ……) 原中名物“呂死闇流卯烈屠(ろしあんるうれっと)”は、そのバネのあまりの強さで有名である。 奨められればまずやろうと思う猛者は少ない。 聞いてくれただろうか、今のバネ仕掛けとは思えない強烈な音を。 泣くなというほうがまず無茶なのです。 ドリアード『い、いぐっ……!ひっく……!た、たいしたことないトラップなのじゃ……!       さあ……!もう一度なのじゃ……!!』 そして負けず嫌いのドリアードさんは今回もまた突っ走る。 一度も勝ててないというのに元気なことだ。 中井出  「そうか。ではバネの強さを伝説のマックスモードにするとしよう」 ドリアード『ひぅっ……!?』 付属の(そういう仕掛け)ネジで、バネをキリキリと絞める提督さん。 なんかもう、ドリアードが可哀相でならなかった。 粉雪 「……寝よっか」 真穂 「そだね……」 わたしたちは、森人さんたちが用意してくれた寝室で眠ることにした。 このまま付き合ってても終わりそうにないから。 ───そうして、やがて布団に潜った頃。  ヴァッチィイイイイイイインッ!!! 声  『いきゃぁあああああああっ!!!!!』 どこからともなく、痛そうな炸裂音と悲鳴が聞こえてきたのでした……。 ───……。 ……。 チュンチュン、チ、チチチ……ゴゴスゴスゴスゴゴスゴス!!! 声  「いたっ!いたたっ!痛いでござる!なにするでござる!?」 朝───丘野くんの悲痛な叫びで目が覚めた。 見れば、何故か鳥に頭を突付かれまくってる丘野くん。 突然の出来事だったのか、口調がござる語に戻っていた。 確か昨日までは普通だった筈。 ドリアード『やったのじゃ!わしの勝ちじゃぞヒロミツ!!』 中井出  「ぬぐっ……!まさか……!この中井出博光が負けようとは……!!」 ……どうやら遊びは続行されていたらしい。 見れば、丘野くんの隣で眠る藍田くんの頭には鳥のエサらしきものが乗っていた。 丘野くんもそれにやられたんだろう。 丘野   「なにをしたでござる提督殿!これは罠!?新手の罠でござるか!?」 中井出  「遊びである!!魂をかけた遊びである!!」 丘野   「押忍!それならば文句はないであります!!」 真穂   「いいんだ……」 ドリアード『ふふふ……わしは今気分がいいぞっ!皆起きるのじゃ!!       さっさと起きんと属性の加護をくれてやらんぞ!!』 藍田   「うずー……」 麻衣香  「すやー……」 ルナ   「くー……」 粉雪   「んぅ……」 春菜   「んくー……」 仁美   「すやすやすや……」 殊戸瀬  「くっくっく……くっくっくっくっく……」 中井出  「怖ッ!!こ、殊戸瀬!?キミどんな夢見てるの!?ねぇ!!」 殊戸瀬  「う……提督……こっちじゃない……!あっちに……!逃げるのよ早く……!」 中井出  「こ……殊戸瀬?」 殊戸瀬  「そう、そっち───くっくっく……!堕ちた堕ちた……!!」 中井出  「何処に!?ちょ───殊戸瀬!?起きて殊戸瀬!       俺キミの夢の中で何処に堕ちてんの!?気になるよ!!       起き───起きてぇーーーっ!!俺をどっかに堕とさないでぇーーーっ!!」 殊戸瀬  「……ん……?……はぁ」 中井出  「あ、起き───ちょ、なにその人の顔見た途端の溜め息!!       どんな夢見てたのか言いなさい!!俺何処に堕ちたの!?       殊───なんでそんなあからさまに残念な顔してんの失礼でしょ!?       え?な、なに?なんでぺたぺた触るの?       ───確認しなくてもちゃんと実体だよ!死んでないよ俺!       ちょ、なんで改めて溜め息吐くの!?マジで俺何処に堕ちたの!?ねぇ!!」 ドリアード『うるさいぞヒロミツ。少し黙っておれ』 中井出  「うう……ちくしょう……何処に堕ちたんだ……“俺”」 騒がしい瞬間がようやく終わりを告げた。 けどみんなはまだ寝入っている。 あれだけ騒いだのによく眠れるなぁと素直に感心。 ドリアード『起きよと言うのが聞こえぬか!ええい起きよ!!』 中井出  「否である!ドリアードよ……そんな掛け声では猛者どもは目覚めん!!」 ドリアード『な、なにを言うか!       わしの掛け声に反応せぬ者など、この関所には居ないのじゃ!』 中井出  「ではごろうじろ───すわっ!!起床ッ!!」 ババァッ!! 総員   『YesSir(イェッサァッ)!!』 ドリアード『なっ……!?』 真穂   「うわー……」 丘野   「爽快でござるな……」 ドリアードの声にはピクリともしなかったみんなが、提督さんの一声で起床。 その中には、ルナさんや篠瀬さんやお母さんまでもが混ざっていた。 ……伊達に間近で号令をかけられまくってないってことでいいのかな……あはは……。 ドリアード『ま、まあよいのじゃ。わしにだってそれくらいすぐ出来たわ』 藍田   「くぁあ……ふぁひゅひゅ……あれ、ドリアード……?」 麻衣香  「あれ……あ、そういえば関所に泊まったんだっけ……」 ドリアード『シャキっとせんか、情けない。       これからお前らに属性の加護をくれてやると言っている』 真穂   (言ってないと思うけど……) ドリアード『わしの加護は凄いぞ〜?なんと戦闘中でもHPが回復するようになるのじゃ。       もちろんそれだけではないがの、あとは自分で適当に磨くのじゃ。       ───ではゆくぞ?てやぁあーーーーっ!!!』 ドリアードがどんどんと話を進め、光を舞わせてわたしたちに振り掛ける。 それはわたしたちの身体に染みこんでゆくと、淡く輝いた。 中井出  「ん……あ、あら?俺も?」 ドリアード『ふふん、言ったろう。わしは今機嫌がいいのじゃ。       まああれじゃな、勝者の余裕というやつよの、はっはっはっはっはぁっ!!』 藍田   「へー……ちなみに戦率は?」 中井出  「78戦77勝1敗。もちろん俺が」 ドリアード『う、うるさいっ!!負けは負けじゃろ!負け惜しみを言うでない!!』 総員   (どっちがだろう……) ルナ   「じゃあ、あれねー……。ふぁああ……力も貰ったことだし、       わたしそろそろ悠介探しに出るー……」 夜華   「わたしもだ。今日こそ彰衛門を見つけ出してくれる」 夏子   「もう行くの?」 真穂   「うん、そんなわけだから。またね、夏子、麻衣香、睦月」 丘野   「男衆は無視ッスか……」 藍田   「べつにいいけどな。そんじゃ、アデュー」 こうして、ひらひらと手を振る藍田くんと丘野くんに見送られて、 わたしたちは新たなる旅路への一歩を踏み出したのだった。 というより……また提督さん一行がなにかをやらかして、 行動できなくなるような事態になる前に逃げた、と言ったほうがいいかもしれないけど。 次は何処に辿り着くのやら……はぁ。 【ケース151:中井出博光/“景徳鎮”と“提督さん”は似ているようで似てない】 桐生真穂ら、いわゆる“妻パーティー”が去ってゆく。 俺達はそれを見送り、ひとまず一息をつく。 中井出「さてと。じゃあ次なる場所を目指そうか」 丘野 「マップから見ると……次は大地の洞穴かな。     精霊ノームが居るってもっぱらの噂だ」 中井出「地属性は藍田二等だったな。それでいいか?」 藍田 「イェッサー!     やっぱ蹴りっつったら大地の力ってイメージがあるようなないような!」 中井出「よし!では総員、ただちに準備を整え───《クンッ》───ヌオ?」 手を振り上げ、いざ号令をかけようとしたまさにその時。 鎧に隠れてない部分の我が衣服を引っ張る指があった。 ドリアード『も……もうゆくのか?もっとゆっくりしていったらどうじゃ』 振り向いてみれば、上目遣いにならざるをえない体格の高位精霊さん。 そんな彼女が服を引っ張り、不安気に俺に訴えかけ 中井出「ならぬ!!」 総員 『即答!?』 思考も半端に即答した。 中井出  「我らは冒険者である前に原中。       それがさらに冒険者ともなれば、冒険にこそ魂を捧げるのは至極当然。       残念だが目的が達成された以上、ここで燻っているわけにはいかんのだ」 ドリアード『じゃ、じゃがな!わしに負けたままでよいのか!?』 中井出  「わたしは一向に構わん!!」 ドリアード『ぬ、ぬぅうう……!!わしがこれだけ頼んでもダメなのか!       わしはまだ遊び足りんぞ!ヒロミツ!わしにもっと遊びを教えろ!!       いつもそうじゃ……!力を渡した途端、手の平を返すように皆去ってゆく!       わしの存在価値は力だけか!?何故皆、わしを見てくれんのじゃ!!       ヒロミツ!おぬしだけはわしに損得無しで向き合ってくれると思ったのに!』 中井出  「ええいこの馬鹿者め!       それだから貴様はチビで子供だというのだドリアード新兵!!」 ドリアード『し……しんぺ?』 中井出  「この中井出博光!損得で貴様と遊んだ瞬間などただの一度も無し!       そこは貴様の言う通りだコノヤロー!!だがいつ俺が手の平を返したか!       俺はずっとこんな態度だったわ!       原中の提督として恥ずかしくない振る舞いだったわ!!       なのに貴様はどうだい!まったく恥ずかしいったらありゃしない!!」 殊戸瀬  「人前でしくしく泣くのは提督として恥ずかしくない振る舞いなの?」 中井出  「だぁーーーまらっしゃぁーーーい!!       泣かした張本人みたいな人がそういうこと言わないの殊戸瀬!!」 でも本気で泣いたのは事実である。 だって悲しかったし。 中井出  「とにかく!駄々っ子の言うことは聞いてられません!!」 ドリアード『いやじゃいやじゃ!!もっと遊ぶのじゃーーーっ!!』 中井出  「なんで言うこと聞けないの!!いやじゃないでしょ!!」 藍田   「提督、口調がおかんになってる」 ドリアード『だったらわしも連れてゆくのじゃ!!これだったら文句はないじゃろ!!』 中井出  「当方はベビーシッターではありません」 ドリアード『誰がベビーじゃ!!』 夏子   「ていうか素で拗ねる精霊も珍しいわよね」 麻衣香  「あはは……しかも高位精霊」 殊戸瀬  「下に就いてる根源精霊が浮かばれないわね」 総員   『や、死んでないから』 しかしまいった。 このままではちぃとも話が進まんぞ。 寂しいのは解るが、そんなことでは強く生きれません。 と、経験者は語る。 ドリアード『むうう……おい!そこの女!』 麻衣香  「え?わたし?」 ドリアード『おぬし、魔法使いじゃな?ならばわしが魔法というものを説いてやろう。       どうじゃ?わしを連れていけばメリットも相当に高いんじゃぞ!』 中井出  「弱酸性の?」 ドリアード『それは“メリット”違いじゃ!!───ともかく!       わしは高位精霊じゃ!他では覚えられん魔法も───』 中井出  「さてみんな。今日はちとコメツキ虫の生態について考えたいんだが」 丘野   「こりゃまたシブイ題材を……」 藍田   「レベルが高いであります提督」 ドリアード『聞かぬかぁーーーーっ!!!!』 麻衣香  「えーと……ホントに教えてくれるなら、       わたしは連れていってあげてもいいと思うんだけど……」 丘野   「なっ……おいおい本気か?」 藍田   「なんということを言い出すんだ綾瀬……」 中井出  「貴様正気か!?」 麻衣香  「あの……なんでちゃっかり正気まで疑われてるのかな」 そりゃそうだろう……今まで自由きままに冒険を重ねてきた我らに、 突如仲間が加わってもバランスが取れなくなるだけだ。 だが確かに魔法を教えてくれるというのはメリットになると思う。 どうしたものか……。 ドリアード『戦闘のことで思うところがあるのなら安心するがよいぞ!       わしは高位精霊じゃ!そんじょそこらのモンスターに遅れを取るほど       情けない腕っぷしはしておらぬわ!ヒロミツ、忘れたか?       わしはその気になれば、鉄製の牢屋なぞ簡単に潰せるのじゃぞ!』 中井出  「ところで今日の朝飯についてだが」 丘野   「味噌汁が飲みたいであります!!」 藍田   「同じくであります!もしくはマックシェイク!!」 中井出  「うむ!それでこそドナ様の使徒だ藍田二等!これからもその心を───」 ドリアード『聞けと言うておるのじゃ!!』 ふぅむ……仕方のない。 中井出  「ドルドレイよ……」 ドリアード『ドリアードじゃ!』 中井出  「すまん、素で間違えた。……ドリアードよ。       冒険に必要なのは知識や経験ではない。       如何にその事態を楽しむかという思考の回転だ!!       さっきから聞いていれば貴様は『高位精霊だから高位精霊だから』と!!       我らは力を見せびらかしたくて旅をしているのではない!!       純粋に!この世界を楽しみたいからこそ旅をしているのだ!!」 ドリアード『そ、そうなのか!?』 中井出  「うむその通り!!時には敗北することもあるだろう!!       時には神父の言葉に激怒することも多々あるだろう!!       だがその瞬間にこそ次はこうしてくれようだとか思えるわけである!!       弱いことは罪にアラズ!!むしろ抗わぬことこそ罪ッッ!!       高位精霊だから負けることなど有り得ないなどという傲慢っ……!!       はっはっはっは!!笑止笑止!笑止千万!笑止至極!!       よいかドリアードよ!勝つことよりもまず楽しむこと!!       それこそが旅を面白くする調味料!!       レベル上げが作業的になった時、冒険者は終わりだ!!       そしてそんなゲームにも未来はねぇ!!       まず楽しむこと!!これが大事!これがゲーム世界を救う!!」 ドリアード『……そうなのか?よく解らぬ……』 中井出  「以上を理由に貴様が我らが原中パーティーに加わることは不可能とす!       即刻諦めめされい!!潔く!!」 ドリアード『いやじゃ!それとこれとは話が別じゃ!』 中井出  「ギムゥウーーーーーッ!!!おのれ貴様!これだけ言ってもまだ解らんか!       我らは三千院のお嬢様のようなヤツを       パーティーに加えることは出来んと言っておるのだよ!!」 総員   (三千院……ああ確かに) 僕らの中に金髪ツインテールで頭脳明晰、 体力はスペランカーな天才お嬢様が浮かんだ瞬間だった。 ドリアード『うぅ……ならば魔法を使わなければバランスが取れるというわけじゃな!?       それならわしが吟遊詩人として付いていけば文句はあるまい!!』 丘野   「いかん!女人ともあろうものがそんな!サブリガだなんて!!」 藍田   「なんて破廉恥な……!!」 中井出  「俺は貴様をそんなエロ将軍に育てた覚えはないぞ!!」 麻衣香  「や、詩人=サブリガはkittyさんだけだから」 夏子   「それよりいい加減決めないと。話が進まないよ?」 丘野   「ちなみにドリちゃん。人前で歌える?」 ドリアード『な、ななな何を言い出すのじゃ!!人前でなど恥ずかしくて歌えるものか!』 俺達の旅は、今再開した───!! ドリアード『わぁあ待つのじゃ!!頑張って歌うから待つのじゃ!!』 藍田   「素直じゃない上に負けず嫌いか……ほんと三千院だなぁ……」 丘野   「ドリアードじゃ名前が長いからナギーってことにしておこう」 あだ名を付けたらそれこそ連れて行くことになりそうなんだが……? ナギー『それじゃあ連れていってくれるのか!?』 丘野 「いや、あだ名つけただけ」 麻衣香「そもそも森人のみんなが許さないでしょ」 ナギー『説き伏せてくれるわ!!』 中井出「サンハイ」 総員 『絶!対!無理!!』 中井出「……なっ?」 ナギー『爽やか笑顔で肩を叩くでないわ!なんじゃその立てた親指は!!』 中井出「貴様には貴様の、ここでしか出来ない使命があるだろう。     癒しの樹がもし破壊されでもしたら、この世界は地獄ぞ」 ナギー『癒しの樹はこの世界に生きる全ての者にとって命同然じゃ!     それを誰が壊すというのじゃ!』 中井出「世を儚んだ人とか、全生命を道連れに心中しようと思った馬鹿とか」 ナギー『ぐっ……』 中井出「そんなわけでアディオスだナギー!貴様を連れてゆくことはやはり出来ん!!」 丘野 「おお、置いていくのか」 ナギー『ヒ、ヒロミツ!?何故じゃ!わしのなにが悪い!!』 中井出「えーと……それに答える前に一つ訊きたいんだが。貴様は何を求めて旅に出る?」 ナギー『知らないものを知ろうとしてなにが悪か!』 中井出「いやしかしだな……三千院のお嬢たるもの、もっと引きこもってなくては」 ナギー『よく解らんがわしは三千院とやらとは無関係じゃ!聞いたこともないわ!!』 そりゃそうだろう。 知ってたら拍手を確実に送ってた。ブラボーの言葉とともに。 中井出「ナギーよ。残念だがな、人手はもう間に合っておるのだ。     故にナギー、貴様を連れてゆくことは出来ん。     思い出した時あたりにまた遊びに来るから、大人しく待っているように」 ナギー『いやじゃ』 中井出「───」 融通の利かん子供に腹を立てたことはあるかい悩める少年少女&青年青女よ。 言っておくが俺はある。 なにも自分の子供に手を焼いたわけじゃない。 近所のクソガキャアに手を焼いたことがあるのだベイビー。 それを思い出した時、この博光の中で何かが躍動しおったわ。 中井出「フッ……この博光もいつの間にやら老いておったわ……。     よもや目の前の冒険を放置してしまいそうになるとはな……」 丘野 「え……て、提督?」 藍田 「あー……ちょ、ちょっとよろしいでありますかー提督ー……。     なんっつーかぁ……提督がそうやって俯き加減で口を歪ませてると、     大体が禄でもない上に非常に後先後悔しきり大決定な事態が───」 さてここで問題です。 この時俺はなにを思ったでしょう。  ピピンッ♪《イベントが発生し───》 中井出「黙れ下郎が!!選択肢など全て“攫う”でアンサー!!」 選択肢が出るより先に大決定!! 俺はナギーを小脇に抱えると、ドアをブチ破って大激走を開始した!! 総員 『やっぱり禄でもねぇえーーーーっ!!!!』 総員が驚愕!だが無視!! こちとらそもそもセオリー通りになど生きられん性格!! 森人 『はっ!?き、貴様!!ドリアード様をどうする───』 中井出「見さらせこれが極道モンのヤクザキック!!」  ドゴォンッ!! 森人 『ぶべらっ!?』 勢いのままに突き出した蹴りが森人の顔面にヒット!! もちろんあとのことなど完全無視!! ナギー『こ、こらぁっ!森人に手荒な真似をするでない!』 中井出「黙らっしゃい!!付いてきたいと言ったのは貴様だナギー新兵!!     その言葉がどれほどの責任を必要とするものなのか、その目を以って確かめよ!     っていっても基本的には逃げるけどなぁっ!!     はっはっはっはっは!!アァ〜〜バヨォ〜〜〜ッ!!とっつぁ〜〜〜ん!!! 森人 『ぐっ……!緊急通達!緊急通達!     昨日訪れた来訪者がドリアード様を攫《ガシィ!》うわぁっ!?』 中井出「フフフ……この中井出博光、     幼少の頃よりゲームの中では仲間を呼ぶモンスターが何より嫌い!!     喰らえ正義の鉄槌!ストレングスMAXジャイアントスウィーーーング!!!」 森人 『う、うわぁああーーーーーーーーっ!!!!!』 ぐるぐるぐるぐるぐるブンブンブンブンスパァッ───ズベシャアアーーーーッ!!! 腕力にモノを言わせて即座に振り回したのちに放り投げる!! そして、ジャイアントスウィングをするために降ろしておいたナギーを再び抱え、 出口まで大激走!! ナギー『……っ……こ、この先に憧れることすら知らなかった世界が……!』 抱えているナギーが、次第に表情を柔らかくしてゆく。 NPCだからといって、ゲームマスターである精霊達に手抜きは無い。 ナギーはちゃんと意思を持ってるし、感情も持っている。 だったら───ここから世界ってものを教えてやればいい。 きっと楽しくなる。 ───そう、思っていた時だった。 森人×10『そこまでだ無法者め!!』 ナギー  『あ───』 開いた出口の先には……ずらりと森人たちの姿がドゴォーーム!! 森人1『ペサァーーーーーーッ!!?』 ドゴシャズザァアーーーーーーッ!!! 我が渾身のヤクザキックを喰らった森人1が滑りゆく!! 森人 『えっ……えぇーーーーっ!!?』 ナギー『ヒ、ヒロミツ!?なにをしておるのじゃ!     こ、こういう場面では普通、力無く項垂れ、     夢見る者を置いていくものと聞いたぞ!?』 中井出「やかぁしい!!この中井出博光───自分の意思を貫き、     外に出たいと言った者を置いて行ったりなどせぬわ!!     10対1……?上等!!かかって来いオラァッ!!」 森人2『なっ……滅茶苦茶だぞこいつ!!』 森人4『ええい怯むな!ドリアード様をこのまま攫われてもいいのか!!』 中井出「いいに決まってるわキィーーーック!!」 コキィンッ!! 森人4『覇王ッ!!』 ナギー『ひゃあっ!?』 身振り手振りで熱烈に説得に走ってた森人4にゴールデンブレイクを進呈。 その隙にナギーを背にやり、構える。 中井出「よっしゃナギー!ちっと両手使うから背中にしがみついておるのだぞ!!     ここを抜けるから、振り落とされるんじゃないぞー!?」 ナギー『むっ……望むところじゃ!!』 中井出「うむいい返事だ!だがこういう時はサーイェッサ−だ!!」 ナギー『う、うむ!よぅ解らんが───サーイェッサーじゃ!』 中井出「“じゃ”は要らず!!」 ナギー『サーイェッサー!!』 中井出「もっと大きな声で!!」 ナギー『サーイェッサー!!』 中井出「うむよし!!ではいくぞ!」 森人5『ふんっ、なにをする気か知らんがこの人数を相手に───』 中井出「武器はしっかり二刀流!!」 ゴコォッキィンッ!!《マグニファイが発動!ステータス二倍の効果!!》 森人6『えぇっ!?』 ナギー『け、剣じゃと!?ヒロミツ!だめじゃ!殺してはならぬ!』 中井出「殺すかっ!!ただステータスを二倍に引き上げたかっただけだ!!     さらにそのステータスをAGL……アジリティに全て振り分け!!」 俺は───風になる!! 中井出「我流奥義!!高速ナブラならぬ高速パチキ!!」  ヒュオボォッガァアアアアアアンッ!!! 森人2『ギャアーーーーーーーッ!!!!』 森人3『なっ───早っ……!?』 中井出「ふははははは!!はぁっはっはっはっはっはっは!!!     速度+ボマースキルの爆弾パチキの威力を見るがいい!!     邪魔するヤツは頭頂ひとつでダウンだぁーーーーーっ!!!     頭突き頭突き頭突き頭突き!!スライディング頭突き!!スパイラル頭突き!!     大回転ハイジャンプエビ投げ頭突きィイーーーーッ!!」 ボガガドッパドッパゴパァンボガァンズガァアアアアアンッ!!! 森人たち『ほぎゃああああああああああっ!!!!』 ───……。 ……。 ザシャア!! 中井出「成敗!!」 やがて……マグニファイが尽きる頃、森人たちは全員気絶していた。 ナギー『……すまぬことをした、森人たちよ。     おぬしらはただわしを守ろうとしてくれただけだったというのにの……』 中井出「湿っぽいのは無しだナギー新兵!それともここで引き返すか!     今ならそのー……取り返しは付く!と思いたい!」 ナギー『いや。わしは外に出ると決めたのじゃ。     ここで躊躇しては、それこそ申し訳ないじゃろ。     さぁ、それではゆこうぞヒロミツ。まずは何処へ向かうのじゃ?』 中井出「大地の洞穴である!ノームに会いにゆくのだ!」 ナギー『そ、そうか!わしは真実ここから出たことがないのじゃ!     何処に向かうのであろうと楽しみじゃぞ!』 中井出「ではこれよりここから南西にある大地の洞穴に向かう!覚悟はよいか!」 ナギー『よいのじゃ!』 中井出「ノー違う!サーイェッサーだ!」 ナギー『サーイェッサー!!』 中井出「うむよし!!では待機させているルルカに乗る!     ナギー新兵は俺の前に座るように!」 ナギー『ルルカ!?おお!話には聞いたことがあるぞ!     一度乗ってみたいと思ってたのじゃー!!』 見るもの全てが本当に新鮮なのだろう。 ナギーはきゃいきゃいと騒ぎつつ、ルルカの待つ外の方へと走っていった。 俺は……そんなナギーを見るに至り、 あとのこととかが今さらになって心配になってきた所存であります。 はぁ……明日あたりには指名手配かね、こらぁ……。 藍田 「これで俺達も指名手配犯の仲間入りか……」 丘野 「大変刺激的な旅でござるなぁ……」 麻衣香「博光……お願いだからもうちょっと考えて行動してよね……」 中井出「面白ければ問題無し!!」 夏子 「確かにこんな事態も案外面白いかも」 殊戸瀬「大丈夫。いざとなったら全責任は提督が背負うってことにしておけば」 中井出「血も涙もないねキミ!!」 かくして───ナギーというNPCを加えた新たな旅が……今始まったのだった。 えーと……まあその。 とりあえずはなんとかなると信じよう。 指名手配とかのことは忘れて生きるって方向で。 Next Menu back