───冒険の書30/AINSHBYI(アインシュバイー)─── “頭はいいけど何も知らない人は馬鹿と呼べるのか否か”の略
【ケース152:中井出博光(再)/ヒップホップの手の動きに意味はあるのだろうか】 ドカカッ!ドカカッ!ドカカッ!ドカカッ!! ナギー『お、おおおお!!動いておる!動いておるぞよ!!早いのじゃー!     あっ!ヒロミツ!あれはなんじゃ!?おお!あれは湖じゃな!?知っておるぞよ!     おおモンスターじゃ!面妖なものよの!おお!あれが獣人か!』 さて……ナギーを攫い、ルルカで大地を駆けること数分。 早くも興奮状態のナギーは、 それはもうあっちを見ればキャーキャーこっちを見ればキャーキャーと大忙しだ。 ナギー『どうしたヒロミツ!旅は楽しむものなんじゃろ!?返事くらいせんか!』 ルルカに跨る俺の股の間にちょこんと座ったナギーが、 俺の胸に後頭部をちょんと付けるようにして俺を見上げる。 だがこちとらルルカの駆り方に完全に慣れてるわけでもなし。 一歩間違えれば転倒の恐れは十二分にアリである。 中井出「じ、実はだなぁナギー新兵!この中井出博光はなー!」 ナギー『な、なんじゃ?なにかあるのかの?』 中井出「ルルカに乗るのはまだ数回目と言えるくらいにルルカ初心者なのだ!!」 ナギー『おおそうなのか!ならば余計に楽しむべきじゃな!新しいことは楽しいのじゃ!』 中井出「簡単に言ってくれるねキミ!!駆ってる方はもうドッキドキなんだぞ!?」 ナギー『そのドキドキが冒険の醍醐味なんじゃろ?』 中井出「うむ!そのとーり!!」 ルルカがさらに大地を走る。 ……大地の洞穴まではまだかなりある。 癒しの大樹にはルルカで来たから敵と遭遇しなかった…… 故にアイテムはたくさんあるが、一度町にでも寄るか? 最初に立ち寄るのがダンジョンじゃあ、ナギーにとっては苦になるかもしれないし。 ───よし突っ込もう! 中井出「ゴー!原中ゴー!!」 ダンジョン直行絵巻発動! 大体、町でルルカから降りたらルルカはルルカ牧場に戻っちまうし。 今はまずノームがどんなヤツなのかを見るだけでも十分! 勝つことが大事なのではない……!体感することこそ本質!! ナギー『思ってたんじゃがの、ヒロミツ。その“ハラチュー”とはいったいなんじゃ?』 中井出『戦!闘!民!族!』 ナギー『おお!そうなのか!』 違います。 ある意味間違ってはいないんだけど。 と、そんなことを考えてると丘野二等が見事なルルカ捌きで我がルルカの隣につける。 丘野 「提督殿提督殿!途中で町があるようでござる!立ち寄るでござるか!?     ダンジョンがどれだけ長いか解らんでござる!     食事は取っておいたほうがいいかもでござるよ!!」 中井出「───はっ!しまった忘れてた!(食事のことを)」 ナギー『うーむ……ヒロミツはほんに人徳があるのじゃの。     皆、おぬしを提督提督と呼んでおる』 中井出「え……あるの?人徳」 ナギー『……?何故おぬしが疑問に思っておるのじゃ?』 中井出「いや……はは……なんでだろうね」 俺……本当に提督って思われてるんかなぁ。 まあそれこそその一時一時を猛者どもが楽しく生きようとしてる証拠だろう。 いちいち気にしてても始まらんわなぁ。 中井出「それでは総員!まずは途中にある岸壁の町ログオーレンに立ち寄るものとする!     その再、再発は徒歩になる可能性があるので気を引き締めるように!!」 総員 『サーイェッサー!!』 ナギー『さ、さー?』 中井出「ナギー新兵!こういう時は一緒に叫ぶのだ!」 ナギー『う、うむ!じゃない、サーイェッサー!!じゃ!     あっとと……“じゃ”は要らぬのじゃったの。なかなかに難しいのじゃ……』 麻衣香「すぐに慣れるよ」 夏子 「そうそう。あ、そうだ。宿についたらまず自己紹介でもし合おっか」 藍田 「あ、そういや名前知ってるのって提督の名前だけなんだよな。     藍田。俺藍田亮な?藍田でも亮でも好きな風に呼んでくれ」 殊戸瀬「オリバと呼んであげて。それが彼の本名だから」 藍田 「違いますよ!?壮絶に違うから!!」 ナギー『ではリョウと。おぬしはなんというのだ?』 殊戸瀬「殊戸瀬睦月。殊戸瀬と呼んで」 ナギー『コトトセか。ではおぬしは?』 夏子 「わたしはね───」 どうでもいいけど宿屋に着いたらって話はどうなったんだ? ルルカに乗りながら話されると、それだけ近寄らなきゃいけないから結構怖いんだが。 ナギー『うむ、ヒロミツにナツコにリョウにオカノにマイカにコトトセか。覚えたぞよ!     わしは第二代自然象徴精霊ニーヴィレイ=アレイシアス=ドリアードじゃ!     呼び方はおぬしらの好きにするがよいぞ!』 藍田 「じゃあアレクセイで」 ナギー『いやじゃ!』 丘野 「ドルドレイで」 ナギー『いやじゃ!』 麻衣香「ニーヴェルンヴァレスティで」 ナギー『いやじゃ!』 夏子 「ホイス=グレイシーで」 ナギー『いやじゃ!』 殊戸瀬「……怒李庵海王(ドリアンかいおう)」 ナギー『い、いやじゃ!!それだけは絶対にいやなのじゃ!!』 殊戸瀬「好きに呼べって言ったのに……なんて我が儘」 総員 (誰だって嫌だと思う……) そんな葛藤を余所に、やがて見えてくる壁に造られた町。 岸壁を綺麗に削り、町としたソレはステキな造型だった。 俺達は騒ぎもそこそこに、岸壁の町ログオーレンへと降り立ったのだった。 ───……。 ……。 ───岸壁の町ログオーレン。 一人の彫刻家が巨大な彫刻を彫ってみたいと言い出したのがきっかけで出来たという、 超巨大彫刻の町。 今やその彫刻家は伝説の彫刻家と呼ばれ、この町の頂上に彫像を立てられているらしい。 本人は既に死去。 以降、数十年にも渡りこの岸壁の町は不屈を誇っているらしい。 ……そんなこんなで。 ナギー『おぉおおっ!!ここが町か!     見事なものよの!岩を削って作ったとは思えん造型じゃ!     町を見るのは初めてじゃ!ヒ、ヒロミツ!ほれ!はよう案内せぃ!!     外の世界がこんなにもわくわくする《がぼしっ!》はぷっ!?む、むーぐ!!     ぷはぁっ!!な、なにをするかヒロミツ!!』 中井出「精霊の格好のままじゃ目立つから、それを頭から被ってること。     丁度皮細工屋があったから買ってきた」 ナギー『む……おお、ヒロミツがわしに買ってくれたのか。     とするとこれは“ぷれぜんと”というやつじゃな?知っておるぞ』 中井出「や……皮のマント一着でそんな風に目を輝かせて喜ばれると胸が苦しいんだが」 ナギー『照れるでない。男ならどーんと胸を張って生きるのじゃ』 殊戸瀬「……提督がとうとうロリコンの道を」 藍田 「さすがエロマニア……」 中井出「そういう危険な発言やめようね殊戸瀬!!俺ノーマルだよ!?     やめようよ誤解されるから!」 ナギー『おぬしらの側はほんに愉快よの。片時も退屈せぬ気がするぞよ』 中井出「こっちはいっぱいいっぱいだよ!!     ちょ、殊戸瀬!?なんで合掌しながら般若心経唱えてんの!?     俺の人生これからだよ!まだ終わってないよ!?     俺の人生ってエロマニアからロリコンにクラスチェンジしたら終わるの!?     そもそも俺エロマニアでもロリコンでもないよ!!」 ナギー『気にするでない。     ヒロミツがエロマニヨン人でもわしはもう嫌悪したりしないのじゃ』 中井出「違うよ!?認識の時点で間違ってるよ!     俺エロマニヨン人じゃないしそもそもそんな種族居ないから!」 ナギー『そ、そうなのか?』 殊戸瀬「そう……そんな種族は居ないわ。何故なら提督が最後の生き残りだから……」 ナギー『ヒロミツ……!おぬし、それほどまでに辛い人生を……!』 中井出「殊戸瀬えぇええええっ!!てめぇええええええええっ!!!!」 やめましょうよ……マジもう勘弁して。 ナギーのやつ疑うことを知らない……何故か俺の言葉以外は。 だからもうナギーに無いこと無いこと吹聴するのは勘弁してください。 もう泣かないって決めたのにもう早速泣きそうだよ。 中井出「と、とにかく!俺はそんな種族でもないしそういう種族自体存在しない!     それよりもアイテム整理とか買い物とかしようよもう!」 ナギー『ヒ、ヒロミツ!おぬしが自種族のことで自棄になろうが、     わしはエロマニヨン人を見捨てたりはせんからの!!』 中井出「いいよ!見捨てていいから!自棄になってるわけじゃないから!     俺の顔見ながら自種族とか言わないで!!」 殊戸瀬「いつまでも騒いでないで宿に行きましょう」 中井出「え!?いや誰の所為だと思ってるの!?     俺言ったよ!?宿に行こうって俺言ったよね!?」 ナギー『そう高ぶるでないぞヒロミツ。まずは宿屋に行って気を落ち着かせるのじゃ』 殊戸瀬「そしてあわよくば若い女の身体をベッドに押し倒し……」 中井出「押し倒すかぁっ!!殊戸瀬キミちょっと黙りなさい!!     いい歳した女の子がなんとはしたない!!     ていうかナギーの前でそういうこと言わないでお願い!!興味持っちゃうから!」 丘野 「睦月、先に宿屋に行くでござるよ。それから少し考えを整理するでござる」 殊戸瀬「う、うん、眞人」 ……あっさりと宿屋へ向かう殊戸瀬二等。 俺は少し、世の中の在り方について考えた。 ───……。 ……さて、ログオーレンの宿屋に向かった我らは、その宿屋内で食事を頂いていた。 ナギー『おお、これが外の食事なのじゃな……』 中井出「ナギーは肉とか大丈夫か?」 ナギー『もちろんじゃ。弱肉強食の心得くらい胸に刻んでおる。     可哀相じゃが、わしの糧となって生きてくれ。     自然の精霊として願う……汝の来世に幸多からんことを』 そう言ってから肉を食べ始めるナギー。 最初は少しおずおずとだったが……初めて食べる味に、 両の頬を両手で押さえ、目を閉じながら“きゅ〜〜”と唸っていた。 恐らく頬に広がってゆく旨みに身悶えしているのだろう。 ナギー『う……美味いのじゃ……。     外の者どもは斯様なものを日に三度も食しておったのじゃな……』 中井出「そんなに珍しいか?」 ナギー『珍しいのじゃ。然の関所で摂る食事なぞ、水と木の実だけじゃった』 丘野 「うお……それはなんと彩りの無い食卓……」 ナギー『こうして誰かと食を囲むこともなかったのぅ。     それを考えると、この食事のなんと暖かなことよ……。     わしはそれだけでも嬉しいぞよ……』 中井出「うむそうか。ところで出発時刻だが」 ナギー『ヒロミツ!少しはしんみりとさせるのじゃ!』 中井出「黙らっしゃい!湿っぽいのは無しだと言っただろう!     よいかナギー新兵!しんみりとするなとは流石に言わん!     だがその次の瞬間にはもっと楽しめるようなことを思い描くのだ!」 しんみりするよりも楽しいほうがいいに決まってる。 俺が実際そうだったし、しんみりしてたって生きる希望は沸いてこないのだ。 ならば……楽しむっきゃねぇだろ? 中井出「よし。ではナギーのために原中に伝わる原中のための替え歌を歌ってやろう」 ナギー『……学級王ヒロミツならもうよいぞ?』 中井出「あれは二度と歌わせないから安心してくれるとありがたい。     ちなみに替え歌の元の歌は“やわらか戦車”というフラッシュの歌だ」 ナギー『……?よく解らんが……』 まあ話に聞くより聴いてみろだな。 我らは一定の間隔で拍手でリズムを取り、やがて歌いだした。 丘野 「原中生徒のこ〜ころはひとつ♪」 藍田 「楽しみたい♪楽しみたい♪」 麻衣香「む〜ねに刻むは原中魂♪入〜部しってっこ〜のかったっ無〜茶人生♪」 夏子 「教〜師の威〜圧を露にも感じない♪」 殊戸瀬「マサルドが来た!退却〜〜っ!(セリフ)」 中井出「三日にい〜ちどはだ〜れかが犠牲者に♪」 総員 『提督ーーーっ!!(セリフ)』 ───え?歌の中の犠牲者って俺!? 丘野 「なぁ〜かいで提督♪なぁ〜かいで提督♪」 藍田 「他の追随を、ゆ〜るさぬエロさ♪」 殊戸瀬「ゆ〜びさきで、つ〜つかれたらそ〜こからく〜さ〜る〜♪」 ナギー『く、腐るのかヒロミツは!!』 中井出「腐らないよ!!そりゃ死んで放置されればそりゃ腐るかもしれないけど!     指先で突かれたくらいで腐らないよ!!そんなのヘンな病気持ちの人だよ!     ていうか他の追随を許さぬエロさってどんなエロさ!?」 藍田 「まあまあどうどう……落ち着け提督」 終わってみれば再び悲しみが襲う現状。 なんつーか最近パーティーのみんなが絶好調すぎて時々辛いです神様。 ファンタジーに興奮するのは解るが……なぁ? 中井出「ウーヌ……と、そうだ。名乗った時から気になってたんだ。     ナギー新兵、貴様に一つ学んで欲しいことがある」 ナギー『なんじゃ?』 中井出「地界文字。なんか名前呼ばれる時、カタコトっぽく聞こえるからさ。     発音だけでもってな」 丘野 「おお、言われてみればそうでござるな」 ナギー『そうか?わしはちゃんとヒロミツをヒロミツと呼んでおるであろ?』 中井出「まあまあ。いいか?我が中井出博光の名はこう書く」 パンの下に敷かれていた紙に文字を走らせる。 ペンは、麻衣香が“旅の最中、書くものが無いと不便でしょ”と買っておいた羽ペンだ。 ナギー『ほう……これが地界文字か。わしの知っている地界文字とはちと違うようじゃの』 中井出「悪かったな……字が汚くて」 ナギー『いちいち細かいことを気にする男よのう、ヒロミツは。     どーんと構えよと言ったであろうに』 中井出「ホレ違う。ちゃんと発音する。ヒロミツじゃない、博光だ」 ナギー『むー……』 宿に来たら必ずやらせようと思っていた発音練習を今こそ開始させる。 そうしてる内に猛者どもは次々と紙にペンを走らせ、自分の名前を連ねていった。 丘野 「拙者、丘野眞人というでござる!」 ナギー『お、おか……おかの、丘野───丘野眞人、じゃな?』 丘野 「YES!!」 藍田 「よっしゃ次は俺だ!藍田。藍田な?藍田、亮だ」 ナギー『ふむふむ……これでアイダリョウ……あいだ、藍田……藍田亮、と読むのじゃな』 藍田 「YES!!」 次々と畳み掛けるような学習時間。 だがナギーは文句の一言も言わず、名前と発音を頑張って覚えていった。 やがて─── ナギー『丘野、藍田、夏子、麻衣香、殊戸瀬……じゃな。どうじゃ!』 総員 『ブラボ〜〜〜……』 その場に静かな拍手が巻き起こる。 が。 中井出「俺は?」 ナギー『ヒロミツ』 中井出「………」 何故か俺の名前だけは音程がズレたままだったという。 もしかしてわざとなんじゃなかろうか……そんなことを思う、蒼い夏の一時だった。 【ケース153:藍田亮/ロンドン……シューズ!!(サンダルでも可)】 小休憩を取るかたちで宿屋を出たのが昼。 俺達はそれぞれ準備を整えて、徒歩で大地の洞穴へと向かっていた。 一応探してみたんだが、残念ながらルルカ牧場はログオーレンにはなかったのだ。 ……ま、普通に考えて草もあまり生えてないようなところで草食動物飼うのは無理がある。 中井出「ゴーダッツ体操第1ーーーッ!!フンッ!!」 丘野 「ムッフン!!」 藍田 「ヌゥッフゥ〜〜〜ン!!」 まだまだ蒼いままの太陽の下、俺達はやっぱり絶好調だった。 身体を伸ばすという意味も込めて、全力で捻った身体がポキペキと音を鳴らす。 それだけでもなんだか楽しい。 藍田 「しっかし結構歩くのな。マップじゃあ距離感がイマイチまだ掴めてない」 麻衣香「あ、それ解るかも」 丘野 「結構歩いたと思っても、“ありゃ?まだこれだけ?”ってのはあるな」 夏子 「あれ?丘野くんもう“ござる語”はいいの?」 丘野 「気が向いた時にだけ使うことにしたでござる。     忍びじゃなくてももう気にせずいくでござるよ」 麻衣香「睦月はもうキモイとか言わないの?」 殊戸瀬「そ、そんなこと……」 丘野 「睦月は恥ずかしがり屋なんでござるよ。     だから人前だと素直になれ《ドス。》いてぇ!!な、なにするでござる睦月!!」 殊戸瀬「恥ずかしいからやめて……」 丘野 「お、おお……これはすまんかった……。     でも脇腹を買ったばっかの槍の石突きで突くのはどうかと思うよ、俺という夫は」 と、丘野くん。 とりあえず、ござる語の途中で『いてぇ!』とか叫ぶと物凄い違和感があるな、うん。 藍田 「けど、そろそろ着いてもいい頃だと……っと、あれか?」 マップと照らし合わせるようにあちらこちらを見る俺の目に、一つの大きな洞穴があった。 それはずっと右方に存在していた巨大な岸壁の先にあり、 見た目だけでもかなり深そうなのがよぉ〜〜〜く解った。 藍田 「うひゃはぁ〜〜……こりゃまた深そうな……」 丘野 「間近で見るとホントデカイな……」 ナギー『これは……なかなかに壮観よの……』 麻衣香「これからここに入るのかぁ……」 夏子 「深そうなのは外見だけで、中は案外狭かったってオチだったら楽なんだけど……」 中井出「うむ!だがここでこうしていても仕方が無い!!総員!心の準備を開始せよ!」 総員 『サーイェッサー!!』 ナギー『さ、サーイェッサー!!』 中井出「ナギー新兵!遅れているぞ!注意せよ!」 ナギー『サーイェッサー!!』 中井出「うむよし!ヒヨッ子ども!心の準備は出来たか!!」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「腹は満たされているか!」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「アイテムは充実しているか!」 総員 『サーイェッサー!!』 中井出「うむよし!ではこれよりノームが居るとされている大地の洞穴に潜入する!!     総員、全力で冒険を堪能せよ!     イェア・ゲッドラァック!!ライク・ファイクミー!!」 ザザッ!! ナギー『え?えぅ……っ!?』 総員 『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』 一人敬礼の出来ていないナギーを残し、俺達は綺麗な敬礼とともに声を張り上げる。 ナギーはそれが悔しかったらしく、 ナギー『な、なんじゃ今のは!あのようなことをするなどとは聞いていなかったぞ!!』 丘野 「ウフフフフ……あれはちょっとねぇ……新兵には難しいかなぁ」 ナギー『ずるいのじゃー!!わしもやりたいのじゃやりたいのじゃやりたいのじゃー!!』 と、両手をわたわたと振り回しながら悲しんでいた。 ここまでくると本当にただの子供にしか見えないから不思議だ。 だが。 藍田 「ノーだめだ!貴様にはまだこれが出来るほど原ソウルが溜まっていない!!」 ナギー『原ソウルとな!?なんじゃそれは!』 丘野 「説明しよう……原ソウルとは、     我ら原中の猛者たちの中に眠る熱き心の巴里を指す。     心にこれを発芽させ、大事に育成し、燃やすことが出来ねば原ソウルは語れん!」 ナギー『ならばその“こころのぱり”とやらはどうすれば手に入れられるのじゃ!?』 丘野 「5000円で俺から買うのだ」 ナギー『か、金を取るのか!?』 藍田 「おーい丘野ー?顔が商人の顔になってるぞー」 丘野 「コホン。というのは冗談で、こればっかりは全てが慣れによるものとなるのだ。     だから、まずはゆっくりと、優雅に、そして力強く。     慣れるまでは少しでも合わせようとすることが大事だぞーぅ」 ナギー『そ、そうか……焦ってばかりじゃいかんのじゃな……』 麻衣香(……博光、ちょっと) 中井出(うむ……) どうやらナギーは、自分だけ仲間外れになったような気持ちになって悲しかったのだろう。 だがなぁ、こればっかりは本気で慣れるしか無いわけだし。 ───と思ってたら、提督と綾瀬が少し離れた場所に歩いてゆく。 何気なく耳を傾けてみると、なにやらナギーのことで語り合ってるように聞こえた。 麻衣香(なんかわたし嬉しいかも。     ほら、紀裡って我が儘らしい我が儘って言わなかったでしょ?     娘がもう一人出来たみたいで……あははっ) 中井出(ふーむ……娘というよりは“わんぱくボウズ”って感じじゃないか?) 麻衣香(ぷふっ!そ、そうかも……!     でもちゃんと女の子なんだから、男の子みたいに扱うときっと怒るよ?) 中井出(ん、解ってる。なんだかんだで俺も楽しんでるから大丈夫だって) ナギー『ヒロミツ?なにをコソコソ話し合っておるのじゃ。     そんなところに居ないで近う寄れ。     実はじゃな、丘野に丸秘技というのを伝授してもらったのじゃ』 中井出「丸秘技?」 トコトコとナギーの側に寄りつつ発言する提督。 ……なんのこっちゃ。丸秘が必要な話題なんて出たか? 提督はもちろんのこと、 俺も提督と綾瀬の話が気になって丘野の言葉なんて全然聞いてなかった。 ナギー『丘野が言うにはの、     さっきの号令が出るのは続きがありそうな言葉が出た時らしいのじゃ。     つまり、続け様に号令が出た時は身構え、     らいくふぁいくみー!とヒロミツが言ったら、     踵を揃えて右手をこう構えて、声を高らかにサーイェッサーじゃ。どうじゃ!』 中井出「………」 麻衣香(カワイイ……!!) 身振り手振りで実演するナギーを前に、提督の背後で綾瀬が悶絶していた。 一方のナギーは褒めてほしいのか実演させてほしいのか、 まるで尻尾を振るわんこのようにハウハウと提督を見上げている。 肩幅よりやや大きく広げられている足幅と、 少し持ち上げている握り拳が、その嬉しさを表現しているようで面白かった。 そんなナギーを見下ろして可笑しそうに溜め息を吐くと、 次の瞬間には提督は声を高くしていた。 中井出「ではナギー新兵よ!これより貴様の反応速度を確かめる!覚悟はいいか!」 ナギー『サーイェッサー!!』 中井出「うむ!心の準備は出来たか!」 ナギー『サーイェッサー!!』 中井出「お届け三十分以内は当たり前か!!」 ナギー『サーイェッサー!!』 中井出「髪を洗う時にはシャンプーハットは欠かせぬか!」 ナギー『サーイェッサー!!』 中井出「自転車には補助輪は必須か!」 ナギー『サーイェッサー!!』 中井出「うむそうか!今の質問でキミへの疑惑が確信へと変わった!     ではこれより大地の洞穴へと侵入する!心してかかるように!!     イェア・ゲッドラァック!ライクファイクミー!!」 ザザッ!! ナギー『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』 ……お見事!! よもや二回目だというのにきっちりキメてみせるとは!! さらに言えば少し遊ばれてたことにまるで気づいてない!! このおなご……ナギーというあだ名は伊達じゃない!! ナギー『ど、どうじゃ!?合格かの!』 中井出「ブラボ〜〜〜〜〜……」 藍田 「ブラボ〜〜〜〜〜……」 丘野 「ブラボ〜〜〜〜〜……」 藍田 「ブラボー、ブラボーバキ、ブラボー」 パチパチ、パチ……パチパチ…… ナギー『……なにぞ、気が暗くなる拍手よの……』 俺もそう思う。 中井出「うむまあよくやったナギーよ。そうして少しずつ慣れてゆくのだ」 ナギー『う、うむ、そうじゃの。ところで……ずっと気になっておったのじゃがの』 中井出「む?どうしたナギーよ」 ナギー『関所で言っておった“ドナ様”とは何者なのじゃ?』 ざわ……!! ナギー『な、なんじゃ?なにか危険なものなのか?』 中井出「ドナ様とは、我らが原中には無くてはならない神のような存在だ。     そう……一言で言えば魅上照(みかみテル)
にとっての夜神月(やがみライト)のような」 ナギー『喩えの時点で全くの謎なのじゃが……神とはまた、信仰厚きものよの』 中井出「否である!我らにとって神とはチェーンソーで斬殺すべき相手!     普通の神とドナさまとはこれまた複雑的に違うのだ!!」 ナギー『そ、そうなのか……難しいものよの……』 中井出「あ、ところで今、なにか新メニューって増えてるか?     晦と行ってきたには行ってきたけど、     正直ボコボコにされてた所為であまり覚えてない」 丘野 「そうでござるな……かつてのダブルチーズバーガーが、     いまやノナブルチーズバーガーに進化したでござるよ」 中井出「ノナブルって……ハンバーグ9枚入り!?」 藍田 「今じゃ大勢用として中々の人気を得てるぞ」 夏子 「そっか、そういえば提督さんって空界暮らしが長いから、     地界のこととなると疎いんだっけ」 そういやそうだっけ。 まあ俺も、まさかチーズバーガーがあんな大変なことになるとは思ってもみなかった。 中井出「ふぅむ、興味深い話も聞けたことだし───そろそろ潜入するとしようか」 丘野 「ラーサー!!」 藍田 「これはこれで楽しみだよな。あ、光があればいいけど」 夏子 「ん……大丈夫みたい。晦くんが潜った洞窟みたいに、光る石が中にあるよ」 麻衣香「ああ、露明石っていったっけ」 藍田 「あ、そうそうそんな名前だった」 とかなんとか言いつつ、ぼんやりと明るい大地の洞穴をゆっくりと降りていった。 入り口から先へは下り坂になっているらしく、 だがそれもゆるやかな坂だったのでコケることもなかった。 そんなこんなで───俺達のノーム探索作戦は始まりを迎えたのだった。 Next Menu back