───冒険の書45/神の社の試練!神エネルの侵略!───
【ケース189:中井出博光/ルスラン=カラエフはいい名前だと思う】 中井出「───そんなわけでだ。俺はやっぱりカラムーチョばあさんの目のカタチは、     導火線のついた爆弾だと思うんだよ。もしくはブラックベリー」 ───さて。 水の神殿から命からがら逃れてきた俺達はようやく大地に戻り、 こうして最寄の里(?)で食事を取っている次第である。 もんどりを打ってる最中に怪力無双が波に乗って流れてきた時は 本気でチビリそうになった俺だが、それでもこうして生きていることにまず感謝しよう。 丘野 「カラムーチョ……このエビチリリを見て思い出したのでござるな?」 中井出「そう、このエビチリリを見て思い出したのだ」 食卓に上ったのはサッと茹でたブルシュリッピの剥き身にピリカラのあんかけをかけた物。 エビチリ……ではないらしい。エビチリリが正式な名前なんだとか。 ちなみに米の名前はササシシシだった。 微妙にササニシキを思い出せそうで思い出せない名前である。 命名したヤツはいったい何を考えてたんだろうなぁと思考にふける我らであったが、 そういつまでも考えているわけにもいかんので食事を再開することにしている。 名前は謎なわけだが、これが意外にイケるエビチリリ。 ファンタジーには珍しい米も一粒一粒立っていて、 米にしてはほどよい歯応えと弾力を齎してくれている。 状況分析が遅れたな。 とりあえずここは“周明”という、森に囲まれた町……村……いや、集落、か? 一言で言えば忍者の里みたいに隠されたような場所だった。 中井出「………」 だから米もあるし、竹薮もあるし───なにより、 日本の田舎風景をそのまま持ってきたような景色に妙に懐かしさを覚えた次第である。 問題があると言えばあるのだが、それはきっと言っても仕方の無いことなんだろう。 なにせ俺達は彼らにしてみれば客人であるわけで、 いや、むしろ余所者という言葉の方がよく合っているだろう。 これがエルフやドワーフとかだったのなら俺達も素直に喜べたのだろうが─── 豆  『………』 豆  『………』 その場に居るのは豆だった。 空界に居る異生物の一……棒人間たちに匹敵するほどの謎の生命体、豆である。 だからここに豆ボーヤが居たら、きっと歓迎されていたんじゃなかろうかと俺は思うのだ。 長老 『ようこそおこしなすった。わしがこの豆園の長、ジャックである』 総員 (ハンマー?……ああ、ジャックと豆の木の方か) 長老 『ここに客が来るなどどれくらいぶりだろうか……。     ともかく、久しぶりの客だ。精一杯もてなそうか。刀豆茶、飲むかね』 丘野 「おお、いただくでござる」 豆  『甘納豆もある。食え』 夏子 「わぁ、わたし甘納豆大好きなんだ〜」 豆  『おやつに枝豆もどうだ』 豆  「豆腐もある。食え」 麻衣香「え……う、うん……」 豆  『ピーナッツもどうだ』 豆  『きな粉餅もあるぞ。食え』 藍田 「あ、ああ、食ってる食ってる。美味いなこれ」 豆  『美味いかどうかはどうでもいい』 豆  『豆を食べるんだ』 どうあっても豆を食べさせたいらしい。 なんなんだこの豆どもは。 豆  『お前、忍者か』 丘野 「そうでござるが?」 豆  『だったらこれを読ませてやろう。この豆園に古くから伝わる忍術の巻物だ』 丘野 「おお!……いいんでござるか!?」 豆  『読ませるだけだ。やらん』 丘野 「おお……なかなかセコイでござるな。……ふむ、どれどれ……」 ───…………ちゃーんちゃっちゃらーちゃっちゃらーちゃっちゃちゃーん♪ ピピンッ《丘野が変わり身の術を覚えました!!》 丘野 「おお!変わり身の術でござるか!     無理矢理犠牲を使った変わり身なら何度かやったでござるが、     きちんとした術は初めてでござるよ!     ありがとうござるマス!是非名前を聞かせてほしいでござる!」 豆  『俺はビーン』 豆  『そして俺がナットゥーである』 総員 『うわぁあああああーーーーーーーーっ!!     そのまんまぁあああーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!』 そのまんまにもほどがあるだろうとツッコミを入れたい気分だった。 しかしなんというかこいつらはあまりこちらの話を聞こうとしないので、 こちらも自然と受け流すようなカタチで対応してしまう。 中井出「しかしビーンか」 丘野 「どこぞの豆坊やを思い出すでござるな。猫口の」 藍田 「猫目の男ならここに居るのになぁ」 丘野 「拙者、そんなに猫目でござるか?」 夏子 「うん猫目」 麻衣香「猫目ー」 殊戸瀬「ノルウェー・ジャン・フォレスト・キャット目」 総員 『細かッッ!!』 丘野 「せ、拙者の目はそこまで限定されるほどの猫目だったのでござるか……?」 丘野くんはなにやら奇妙な事実にショックを受けているようだった。 まあそれはそれとして、ようやく食事を終えた俺達は、 属性武器でも売ってないものかと長の家をあとにした。───んだが。 中井出「うーわー……店の“み”の字も無いな」 麻衣香「田舎……田舎よりもなお田舎……」 夏子 「でもこんなのもアリなんじゃないかな」 丘野 「そうでござるよ。日本風景は店など無いに限るでござる。     これはもちろん拙者の偏見でござるが、     こうして豆々が物々交換しているように生きるのが一番だと思うでござる」 藍田 「豆々?……ああ、“人々”の豆版ね」 夏子 「でも丘野くん、     それって殊戸瀬エレクトロニクスカンパニー月詠店、     代表取締り社長が言う言葉じゃないよ?」 丘野 「拙者、もう社長じゃないでござるからOKでござる」 さて、それもさておくにして。 実際……ここではメシを食う以外にすることがなかった。 どうしたもんか─── 中井出「もう……出発するか?」 麻衣香「異議無し」 藍田 「だなー。ここでこうしてても何故か豆どもがあとをついてくるだけだし」 後ろを見れば、何故か我らの行く道を着いてくる豆ども。 隙あらば豆を食わせようとしてるのが解るんだが……要らんよな。 中井出「じゃ、行くか。ん〜っと……?あと手に入れてないのは俺と殊戸瀬二等だけか?     俺が火で殊戸瀬が氷……」 殊戸瀬「いい、氷は必要ない。そもそも手に入らないってことをそこのチビ助に聞いた」 ナギー『ち、チビ助とはなんじゃ!!』 中井出「あれま。そうなのか?」 俺は殊戸瀬にではなく、ナギーに訊いてみることにした。 理由は……察してくれるとありがたい。 ナギー『当然じゃ。宝玉を精製するのは“元素”の列に居る精霊だけじゃ。     即ち、土、水、火、風、雷、光、闇じゃな。     然、死、元、無、氷、時はそれに含まれんのじゃ』 中井出「え……なんで。むしろ後者の方がよっぽど“元素”って感じだろ。     特に“元”なんてそのまんまじゃないのか?」 ナギー『理由ならほれ、ヒロミツが今言ったじゃろ。“よほどに元素”だからじゃ。     解るか?人は真に至ってはならん存在じゃ。     物事を理解するなとは言わぬ。解き明かそうとするなとも言わぬ。     じゃがの、真に至ろうとする人間は等しく死に至る。何故だか解るか?』 総員 『さっぱり解らん!!』 ナギー『……少しは考えてからにしろ……。     つまりじゃな、よほどに元素に近い力とは、     それだけで兵器にもなるほどの力を持っておるのじゃ。     そしてそれは、人ごときの力で解明したり行使したりできるほどやさしくはない。     全員が全員、力に飲まれて消滅しおった。それが結末じゃ』 麻衣香「……それじゃあ」 ナギー『よほど元素に近いわしらが宝玉ではなく加護を齎すのは、     それが死に至るものにさせないためじゃ。解るな?宝玉だと力が強すぎるのじゃ。     それは人の手にあまるものじゃ。     普通の精霊の宝玉だけでも手に余るくらいだというのに、もし───     それこそ無の宝玉なぞ手に入れたら、この世界は凶ってしまう』 総員 『ああ……』 無、と聞いて思い返されるのはどこぞの精霊王。 空界最強……いや、恐らく俺達の知り合い中じゃあ確実に一番強かろう存在。 それを連想すると、もう無の宝玉は恐ろしいものだという認識が先行してしまうのだった。 中井出「はぁ〜……今まで平和ボケしてて忘れてたけど。     晦って随分無茶なことしてたんだなぁ」 藍田 「そのどれもが他人のためだろ……?正気じゃ出来ないよな」 そう。 そんなものは、それこそ感情回路の何処かが破損してなけりゃ精神が保てない。 やっぱ、あいつの感情が欠落してるってのはよほどな真実らしい。 彰利と一緒ンなってあいつの精神に潜った時、きちんと治せたと思ったのにな。 まったく、やりきれない。 なにより身を犠牲にしてまで頑張ってきたヤツが報われないのが一番むかつく。 正直……幸せの価値なんて解らねぇし、あいつがどんな幸せを望んでるかも知らねぇ。 それでもあいつは幸せにならなきゃ嫌だ───理由なんてねぇ! 中井出「うむぅ!なにやら心に火がついた!行こう!冒険へ!」 丘野 「おお!提督が燃えているでござるよ!」 藍田 「やっぱ旅には時に勢いも必要!で、次は何処へ!?」 中井出「殊戸瀬二等、どの宝玉が欲しい?」 殊戸瀬「………ん」 中井出「む?───って、それ……」 丘野 「風の宝玉……」 藍田 「だな……」 殊戸瀬「氷の宝玉が手に入らないことは解ってたから。シルフの懐から盗んでおいた」 総員 (殊戸瀬……怖い子ッ……!!) 盗んだって……可哀相なシルフ。 藍田 「となると……アレか。あとは提督の宝玉だけってことになるな」 麻衣香「そだね」 夏子 「長かった宝玉集めもようやく終わるんだね……」 藍田 「はは、最後が火山ってのが……若干嫌な予感がしないでもないが」 丘野 「不吉な臭いがプンプンでござるな……」 殊戸瀬「相手もサラマンダーじゃなくてイフリート。     空界の精霊からはカタチは推測出来ない」 そうなのだ。 火山ってだけでもうんざりしそうなのに、その上相手はイフリート。 精霊というよりはランプの魔精を思い出してしまう存在なわけである。 あ、イフリートって精霊ではなくランプの精、ジンの仲間らしいよ? や、ランプの精って言うくらいだから精霊なのか?一応。 でも火の精霊とはまた少し違うらしく、本当は性根の悪い悪的なランプの精らしい。 よく漫画とかでインチキ的な願いの叶え方をする精ってのはこのイフリートなんだとか。 三つ願いがある、とか言って“じっくり考えたいから待ってくれ”と言うと、 それを一つの願いとして叶えちまうあのムカツク精のことな? しかしながら……これから向かう場所、ヴォル火山に居るイフリートは間違い無く精霊。 そして、正真正銘の火の精霊なのである。 願いごと云々とか言ってる場合でなく……ケシズミにされないように気をつけなければ。 中井出「というわけでしゅっぱぁーーーつ!!」 丘野 「途中でクーラードリンクを買っていくでござるよ!」 藍田 「火山といえばそれは外せないな!」 夏子 「グラビモス居るかな」 中井出「居たとしてもあのレーザーは勘弁だぞ?     ───まあそんなわけで!これよりヴォル火山に向けて進軍開始ィーーーッ!!」 総員 『サー!イェッサー!!』 そんなこんなで向かう場所は決定した。 目的地、ヴォル火山。 どんな場所なのかは見当もつかんが、 きっとなんとかなる……じゃなくてなんとかしませう。 ───……。 ……。 と……旅を再開したまではよかった。 俺達も別に遠出するのが嫌ってわけじゃなかったし、 むしろ遠出は望むところだったわけだし。 だがそんな些細な喜びを土足でストンピングするような事態に巻き込まれようとは、 一体誰が予測できたというのだろう。 とりあえず俺には出来ないので誰か出来る者が居るなら交代してほしい。 エネル「ィヤッハッハッハッハッハッハ!!絶景!!」 たまたまだ。 ホームシックなのか、はたまたただ寄りたかっただけだったのか。 ヴォル火山に向かう途中、直線的に移動するとどうしても経由してしまう癒しの大樹。 飛び出してきた後ろめたさもあるのか、 少し挨拶をしていくというナギーに促されるままに久しぶりに侵入し─── 木の玉座へと続く長い階段を登った先にヤツは居た。 ナギー『何者じゃおぬし!そこはわしの玉座だぞ!』 エネル「ィヤハハハハ……フン……なにをしに来たのだ青海人よ。     ここは神の社。貴様らのような者が来ていい場所ではない」 ナギー『う、うるさいのじゃ!わしの家にわしが帰ってきてなにが悪い!』 エネル「何度も言わせるな、小娘。ここは神の住むべき場所。     恐れ多い……貴様ごときがここに居ていいわけがなかろう……」 ナギー『なにが神じゃ!神なぞおらん!』 エネル「ィヤハハ……違うな。神ならここに居る。我こそが神」 玉座に無理矢理寝転がって頬杖ついているそいつは……どう見ても彰利だった。 周りには神官の服来た聖ちゃんと……椛ちゃんか?が居るし。 ナギー『おい森人たちよ!なにをしておるのじゃ!この無礼者を───』 エネル「無駄だ、戦士ワイパー……やめておけ。     ここに居る者どもは皆、私を貴様だと思っている。     つまり部外者で無礼者なのは貴様……ということになるのだ」 ナギー『なんじゃと!?』 エネル「ィヤッハッハッハッハッハ!!     いや実に剣呑……子供のくせにいい目をしているものだ」 ナギー『あまりわしを怒らせるでないぞ……!貴様なぞ、わしの魔力で───』 エネル「やめておけ、戦士ワイパー……あまり強そうなことを言うと弱く見える」 ナギー『ほざくでないわ!!自然の力強さよ、あやつを押し潰せ!』 エネル「……愚か」 構え、魔法陣を瞬時に解放したナギーの魔力により、 大樹のあちらこちらから巨大な木が急成長し、彰利───否!神・エネルに襲いかかる!  ズゴォンッ!!ドゴォオオオンッ!! やがてそれは玉座に直撃し、恐らくその場にいたエネルさえも潰した───!! 中井出「……?」 が。その両隣に立っている聖ちゃんと椛ちゃんは微動だにしていない。 それどころか焦った様子も心配する様子も見せない。 つーことは…… 中井出「い、いかんナギー!気をつけるのだっ!!」 ナギー『なに?なにを言うヒロミツ。あの無礼者はこれこの通り、手打ちに───』 中井出「そうではないわ!そう───ヤツは恐らく既にブラックオーダー!!     直接攻撃なんぞ効かないに等しい筈!」 ナギー『ぶらく……?なんじゃそれは……』  ビヂィッ─── ナギー『───!?』 そうこう言ってるうちに、やはり霧のように舞った黒が集合すると、人の形となる。 それは───やはりエネルだった。 エネル「ヤハハハハハ……だからやめておけと言ったのだ戦士ワイパー……。     我は神なり!貴様のような存在の攻撃など児戯に等しい……!!」 中井出「なぁエネルー。なんだってみんなお前をナギーだと思ってんだ?」 エネル「それはね?エキストラスキルに死神ってのがあったからそれをマックスにしたら、     しっかりと月操力まで実装されたから幻惑の調べで騙くらかしてみたからなの」 親切に教えてくれた。いいやつだ。 そしてやっぱり彰利だった。 エネル「というわけでこの社は神のものとなった。潔く失せるがいい戦士ワイパー」 ナギー『〜〜〜……いやなのじゃ!わしは───わしはっ……!』 エネル「ヤハハハハ!!ィヤッハッハッハッハッハ!!!     今さらなんだというのだシャンディアの民よ!!     住むべき場所を捨てた貴様がなにを執着する!!」 ナギー『シャンディア!?なんじゃそれは!それに住む場所を捨てた覚えなぞない!     返すのじゃ!ここはわしの“帰る場所”じゃ!!』 エネル「そうか……貴様の帰る場所はここなのか。     確かに帰る場所があるというのはいいものだな」 ナギー『なら!』 エネル「だが断る。私が最も好むものは、     希望を持ち喜びを受け止めようとする笑みをドン底に突き落とすこと……。     ハッ、このような場所になどそもそも興味は無い……。     その下の都市シャンドラにもなぁっ!!ィヤッハッハッハッハッハ!!」 丘野 「……言ってることが激しく破綻してるでござるな……」 中井出「まあ、何かの真似してる彰利は性質が悪いからな……」 総員 (それでもオリバ化した彼よりはマシだと思えるんだよね……) 藍田 「え?な、なんだよ、みんなして俺を見て」 我らの気持ちは一緒だったらしい。 今のところ、敵になってほしくない相手ナンバーワンだ。 ナギー『ヒロミツ!こやつを倒すぞ!手を貸すのじゃ!』 中井出「や……そう言われてもな。プレイヤーキラーにならないか?」 エネル「……不届き。既に勝てる気で居るのか、青海人よ……。     ならば安心しろ、我は神なり。自由人でも国家勢力でもない……。     神という勢力となり、それ以外の全てを裁く神の帝国を作るのだぁっ!!     戦えぬ道理など皆無!!止めたければかかってくるがいい……!」 中井出「いくぞ野郎ども!皆コロがしだぁーーーーーーッ!!!」 総員 『ハワァーーーーーーーッ!!!!』 エネル「えっ───えぇっ!?そんなあっさりブッ殺宣言しちゃうの!?」 中井出「そぉりゃあ!!」 フィィンッ!!───駆け抜けざまに双剣を振るう! が───斬ったと思った感触はまるで、雲を裂くかのようにすり抜ける。 この剣は確かに、エネルの胴を斬ったというのに。 見ればエネルの身体は全身が黒い雷となり、俺の攻撃を完全に無効化していたのだ。 エネル「五百万……一千万……二千万……!」 中井出「シィッ!!」 ヒュフォンッ───ビヂィッ! 中井出「うおっ───」 雷を溜めるエネルに向かって再度双剣を振るう。 だがすり抜けるばかりでまるで手応えが─── エネル「二千万ボルト……“放電”(ヴァーリー)
……!!」 ヂヂッ……ズガガガガォオオオオオオンッ!!!! 中井出「あぐあがぁああああああああああっ!!!!」 まるでスタンガンの電極のように上下に差し出された人差し指と人差し指。 そこから電流が流され、上と下から俺の体を焼き焦がす───!! 藍田 「て、提督ーーーっ!!!この野郎ォッ!!三点“切分”(デクパージュ)!!」 エネル「体に教えてやらねば解らんのだろう……?神の定義……!!」 フオッ───フォフォフォンッ!!ビヂヂィッ─── 藍田 「んなっ……!手応えが……無い!?」 エネル「お前たちがどう足掻こうと太刀打ち出来ない圧倒的な力ぁっ!!」 中井出「げっほ……!こォの!!」 藍田二等の三連蹴りを雷化で避けたエネル。 その姿が実体化する瞬間を狙って攻撃を───!! シュフィンッ───ジュビヂィッ!! 中井出「───……!!」 やっぱり……手応えが無い! 雲でも斬ってるみてぇだ……!!チャッ…… 中井出「っ……!?こ、こら離せ!!」 エネル「そこで知る……“絶望”」 掴まれた双剣の刀身───そこに雷が叩き込まれる!! 中井出「甘い!《パッ》」 エネル「ィヤッ!?《ドゴシャッ!》ギャア!!」 逆さま状態で剣を握っていたエネル。 しかし俺は雷が俺の体に到達する前に双剣を手放した。 当然落下するエネル。頭をしこたま打ちつけたようで、 床を転がりながらもんどりを打っている。 藍田 「“反行儀(アンチマナー)キックコォーーーース”!!!」 エネル「《ドボォッシャアアッ!!!》ぶるえぁあぁあああああっ!!!!」 さらに追い討ちで藍田二等に空へと蹴り上げられた。 うわー、ありゃ痛い。 完全に不意打ちくらったみたいで、雷化する間もなかったようだ。 俺はすかさず双剣を構え、マグニファイでステータス二倍の効果を引き出すと 力の全てをストレングスに注ぎ込んで構えた。 中井出「眼・耳・鼻・舌・身・意、人の六根に好・悪・平。     また各々に浄と染……───一世、三十六煩悩。     連ねる撃より二条に伏せる。二世、七十ニ煩悩。二刀流“七十二煩悩鳳”!!」 大袈裟なことを言いつつ双剣から剣閃を放つ! 飛ぶ斬撃を見たことがあるか!?俺は散々見ている!! エネル「……ィヤッハッハッハァッ!!     これしきの攻撃が避けられないとでも思っているのか!!     立て続けにやられればいくらこの神とて避けられきれるものではなかったが───     ほれ、このようなものなど身を捻る程度で───」 中井出「丘野二等!セットイン!!」 丘野 「オーラァイ!!」 ───ゴゴォッキィン!! 丘野 「キャプテェンッ!!ソォオーーーーーードッ!!!」 エネル「なにぃ!?」 丘野二等が天に向けて稀黄剣シュバルドラインを振り上げる! そこから放たれるのは極光のレーザー!! それを出しっぱなしにして、巨大な剣としてエネルへ向けて振り下ろす!! エネル「えっ!?いや!ちょっ!!待って!!こんなん聞いてない!!     こんな技があるなんてギャアーーーーーーーッ!!!!ゾゴォッッ!!フィィイイインッ!!! シャァアアン……キラキラ…… ……そして彼は死滅した。 黒である彼にとって、“極光”のレーザーは最大の弱点属性でもあったらしい。 もちろん丘野は極光レーザーの秘奥義を使ったことでHPTPともに1となり、 すぐさまに麻衣香に回復してもらって一息をついていた。 なんにせよこれで神エネルはドカバキ!! 丘野 「ギャアーーーーーーーーッ!!!!」 中井出「丘野二等!?何事おわぁーーーーーーっ!!!!」 聖  「よくもパパを!!死んで詫びなさい!!」 椛  「急に訪れておとうさんを殺すなんて!許しません!!」 視線の先では丘野二等が聖ちゃんと椛ちゃんに囲まれてボコられていた。 二人のレベルがどれだけあるのかは知らんが、精霊の宝玉は持っているようだ。 なにせ、しっかりと月操力とかを自由行使してるし、 そもそも基本身体能力が人のそれとは違うっぽい。 中井出「なんて分析してる場合じゃなかった!!丘野二等!?丘野二等ォーーーッ!!!」 丘野 「なんでござるか?」 中井出「丘あれぇっ!?」 麻衣香「え……あ、あれ?なんで丘野くんがこっちに……」 聖  「……っ!?丸太!?」 椛  「そんなっ……いつの間に!!」 丘野 「ふっ……忍たる者、     これくらいの忍術は出来てとうぜ《マゴシャア!!》ギャアーーーーッ!!!」 目を閉じつつ、気取ったままに胸を張った丘野二等が再び殴られた。 聖  「だったらもう一度殴れば済むことです!!」 椛  「なにが忍術ですか!このっ!!」 中井出「あーーー……ちょっといいかお前ら」 聖  「なんですか!」 椛  「わたしたちは今取り込み中で───」 中井出「や。それ既に丸太だから」 聖  「……?そんな筈あれぇっ!?」 丘野 「フフフ……既に貴様は拙者の術中の中でござる……。     忍者マスターである拙者が本気になれば、     気配を殺して丸太と変わるなど造作も無いことでござるよ!」 藍田 「見せてもらった忍術を行使してるだけだろ」 丘野 「し、真実は時に人を傷つけるでござるよ藍田殿!!」 とりあえず騒ぐ人々を余所に双剣を拾って、思考に耽る。 そうしてから───ナギーを見て、声をかけることにした。 中井出「……ナギー?」 ナギー『……!』 ナギーは何を言われるか予想がついていたのか、身体を跳ねさせた。 中井出「どーする?ここがお前の帰る場所だってんなら、     多分お前はここに居るべきで───」 ナギー『帰るべき場所があるから移動が出来るのじゃ。     わしはヒロミツたちと一緒に行くぞ。まだ行ってない場所もあるのじゃ。     まだまだ満足出来ていないからの』 中井出「ふむ。まあそうくるとは思ってたけど。でもいいのか?」 ナギー『いいのじゃ!わしはまだまだ遊びたいのじゃ!』 中井出「遊びたいって……確かに俺達ゃ全力で楽しみながら旅をしてるが……」 べつに遊びで命懸けの戦いしてるわけじゃないんだが。 ナギー『ともかくゆくのじゃ!邪魔者は排除したのじゃ!これでどうとでもなるのじゃ!』 丘野 「こやつらはどうするでござる?」 聖  「…………《しゅ〜……》」 椛  「…………《しゅ〜……》」 振り向けば、頭にコブを作って気絶中の二人。 どうやら強打により気絶させられたらしいですハイ。 中井出「ありゃ。なにで気絶させたんだ?」 夏子 「亮が粗砕で」 中井出「し、死んでないか?」 藍田 「さすがに威力は抑えたって。それより提督、そろそろ行こう。     つい寄ったから忘れてたけど、俺達って───」 森人 『う……う……?はっ……な、なんだ……?なにやら夢を見ていたような……』 森人 『むっ───!?貴様らは!ドリアードさまを誘拐したやつらか!!』 森人 『よくもいけしゃあしゃあと戻れたものだ!!成敗してくれる!!』 藍田 「……あぁ……やっぱりぃ……」 ───って、そうだった。 促されるままに入ったけど、俺達ゃナギー誘拐事件の犯人だったんだ。 中井出「よぅしナギーよ!これが最後の問答だ!     お前はここに残って自然のために生きるか!     それとも俺達と一緒に無茶な旅を続けるか!     他の誰でもない、自分の意思で選んでみせろ!」 ナギー『そんなもの決まっておるわ!わしは───』 森人 『ドリアードさま!お戻りください!』 森人 『ドリアードさま!』 ナギー『わしは……』 森人 『死人の森からの侵食が勢いを増しているのです!     このままではいずれ、この世界から癒しが───!!』 ナギー『っ……わ、わしは……わしは……!』  ヒュオガギィンッ!! 中井出「おぉっと危なぁい♪」 ナギーを説得しつつも攻撃してくる森人。 突き出された槍を弾いては、俺や猛者どもはナギーの言葉を待った。 森人 『なにを考える必要がございますか!     あなたはここで!この世界の自然を見守り守護する役目があるのですよ!     このような蛮族どもに付いていくような器量で、どうして自然が守れましょう!』 ナギー『───!』 森人 『何を間違っているのですドリアードさま!     あなたはその者たちとは違う!!“精霊”なのですよ!?』 ナギー『───……わ、わしは……』 森人 『その役目も忘れ、外の世界にうつつを抜かし───!!     それでよく二代目を名乗れますな!!』 ナギー『う……う、く……!』 ギシリ……! 藍田 「は、はは……悪ぃ提督……!独断先行作戦無視していいか……!?」 夏子 「ちょっと……頭にきちゃった……!」 ……だめだ。 まだナギーの決断を聞いてない。 俺はそれをアイコンタクトで知らせると、 森人に殴りかかりそうになる手を必死に押さえた。 森人 『さあ!そのような下賎な蛮族どもとは縁を切り、戻るのです!!     そして自然を見守り守護する楔となって、この世界の癒しを守るのです!』 ナギー『じゃ、じゃがわしは……わしは、……』 森人 『我が儘を言っている場合かっ!!』 ナギー『ひぅっ……!?』 森人 『あなたは自然に生きるものたちとその蛮族を     天秤にかけられるとでも思っているのか!!』 森人 『こんな問答を続けている間にも侵食は続いているのです!!』 森人 『それをあなたの幼稚な心だけで全てを犠牲にしてもいいなど!!     そんなことが許されるとでも思っているのですか!!』 ナギー『ぅ……じゃが……じゃがぁあ……!!』 ギ……リ……!! 丘野 「はは……やべぇな……!久々にドタマに来たかもなぁ……!」 殊戸瀬「───提督、バスターコールを」 中井出「まだだ……すまない、耐えてくれみんな……!」 そう、まだだ。 俺達は……ナギーの本音を聞く必要がある。 自分が言っていることが我が儘だと理解した上で、 それでもと願うならためらうことなんてなにもない。 諦めて自然のためにここに戻るというのなら、やはり止めることもないだろう。 ナギー『ヒ、ヒロミツ……わしは、わしはどうしたら……!』 中井出「───……バカヤロウ!」 ナギー『え……ヒ、ヒロミツ?』 中井出「そんなものを人に訊くんじゃない!“これ”はお前の分岐点だろうが!」 ナギー『わしの……?じゃがこんな重すぎるもの、わしには選べん……選べんのじゃ……』 中井出「重さがどうした!     そんなものを無視してでも何かをしたいって気持ちがお前にゃないのか!?」 ナギー『じゃが!!』 中井出「俺は言ったぞ!“自分の意思で選んでみせろ”って!!     それに対してお前はなんて答えようとした!?     森人たちの言葉を聞いて、なにをどう思った!?     その上で、どちらを選びたいと思った!?」 ナギー『わしは……』 中井出「俺達が住んでいた場所ではずっと、     ここぞという時の選択権を他人に委ねる輩が少なくなかった!!     何故だか解るか!!───その方が逃げ場が作れるからだ!」 ナギー『逃げ……場……?』 中井出「そうだ!他人に選択権を任せておけば、     その選択が失敗だろうが責任の一端を押し付けることが出来るからだ!!     だがそんなものは逆恨みでしかない!!     だから俺はお前に自分の意思で選べと言った!!」 ナギー『ヒロミツ……』 中井出「果たしてお前は本当に自然のためにと残るのか!責任のために残るのか!!     俺達の旅には責任から逃れたいから付いてきたいのか!     我が儘でもいいから心から世界を知りたいからこそ付いてきたいのか!!     周りがそんなに怖いのかぁあーーーーーーっ!!!!」 ナギー『───!!っ───わしは!!』 森人 『ほざけ余所者がぁっ!!ドリアードさまを誑かした罪、万死に値する!!     はぁああああああっ!!!』 中井出「───!!」 森人が迫り来る。 振り上げる槍は迷うことなく俺へと向かい───ドゴォンッ!! 森人 『えはぁっ!?』 中井出「……!!」 しかし、刃先は俺に届くこともなく───森人は横からの攻撃に吹き飛んだ。 吹き飛ばしたのは当然……ナギーだった。 ナギー『人の……道理など知らぬ……。何が正しいのかも……わしは知らぬ。     じゃが……!自分を思ってくれる懸命な人の言葉くらい、     わしにも聞こえるのじゃ……!!』 中井出「ナギー……」 ナギー『答えを言え……。わしは今……なにを吹き飛ばした……』 中井出「……っ……蛇だぁっ……!!」 ナギー『蛇!?ち、違う!!』 藍田 「おーい提督ー、     こんな時までノーランドと大戦士カルガラの真似しなくてもいいと思うぞー」 中井出「いや、だってな。ここまでお善立てされて言わないのは逆に失礼ってもんだろ」 ナギー『わしは今……然の精霊としての戒律を破り、民を傷つけた……。     しかしおぬしはそれを見てもむしろ笑ってくれる……。     精霊としてのしがらみを、自分の意思で越えよと言ってくる……!     本当にわしは……我が儘を言ってもいいのか……!     わしはっ……!望んでもいいのか……っ!!』 中井出「……〜〜〜〜すぅっ───」 総員 『当たり前だ!!』 ナギー『……〜〜〜〜っ……!!』 息を吸い、そして全員で叫んだ。 俺達の声が、ナギーの心にこそ届くように。 そして、俺達の声はきっと届いただろう。 あとは─── 森人 『ふんっ、なにを馬鹿な戯言を。さ、ドリアードさま、こちらへ───』 ナギー『……っ』 バシィンッ!! 森人 『っ……つ……!?』 差し伸べられた、“自然のために生きる道”への手が……今、払われた。 そして……払った本人であるナギーの顔に、もう迷いなどなかった。 ……ああ。これでようやく─── ナギー『わ、しは……わしはっ!!わしはぁああああっ!!』 ナギーは心の葛藤に押し潰されそうになりながらも、結局は馬鹿な道を選んだのだ。 やめときゃいいのに、わざわざ安定の道を壊すような道を。 涙でくしゃくしゃになった顔で、けれどしっかりと森人たちを見て叫んだのだ。 ナギー『我が儘でもいいっ……!!我が儘でなにが悪い!!     わしはっ……ヒロミツたちともっと世界を知りたいのじゃぁーーーーっ!!!』 そしてその叫びは───確かに、俺達の心に。 総員 『っ〜〜〜……提督!!』 中井出「おう!!いいぞ!思いっきり暴れてやれぇええい!!!」 ザザァッ!! 総員 『Sir(サー)!!YesSir(イェッサァー)!!』 ナギーの意思は受け取った。 これでようやく───存分に“仲間”として、あいつのために暴れられる!! 中井出「オペラツィォン:バスターコール!!     仲間を泣かせる不届き者どもに、我らの鉄槌を下してやれ!!     あ、ただしコロがしたらイカンぞ?半コロがし程度で」 総員 『雄雄雄雄雄雄雄雄(オオオオオオオオ)ォオオオオオオオッ!!!!』  ドゴゴシャバキゴキガンガンガン!! 森人たち『しぎゃああああーーーーーーーーっ!!!!!』 中井出 「……聞いちゃいねぇ」 ともかく荒れ放題の猛者ども。 そんな彼らを余所に、俺は怒りを引っ込めてナギーに近寄った。 そィで、嗚咽に震える体を抱き寄せてからポンポンと頭を撫でてやる。 ナギー『ひぐっ……ひっく……な、なんじゃ……わしを手篭めにする気か……?』 中井出「しないよ!どうして“慰める”って言葉よりも手篭めって言葉が先行するの!?」 そして一瞬で吹き飛ぶボクの心のシリアス空間。 きっと漫画の中だったら点描が逃げていってたところだろう。 ちょっと抱き寄せて頭撫でてやっただけなのに、なんで手篭めとか言われるかな……。 ああ……俺って周りから既にエロマニアとしか認識されてないんカナ……。 ナギー『ひっく……ぐしっ……。……のぅ、ヒロミツ……』 中井出「む?どした?」 ナギー『わしは……ひどいやつなんじゃろうな……。     信頼してくれた森人たちを裏切り、自分のためだけに生きるなど……。     高位精霊が正気でやれるほどのことではない……』 中井出「なんで?」 ナギー『……な、なんで、って……解っておるのか?     わしがここの管轄から離れるということは、自然を見捨てるも同義……』 中井出「へー」 ナギー『へー……って……真面目に聞いておるのかヒロミツ!わしは───』 中井出「あぁもううだうだとやかましいのぅ。貴様はニコ・ロビンかっつーの。     あのね、人間、適度に我が儘じゃないと息詰まるぞ?」 ナギー『それは……言うように“人間”についてじゃろ……。わしは……どうせ精霊じゃ』 中井出「フンッ!モンゴリアン!!」  ズビシィ!! ナギー『うきゅっ!?な、なにをするかっ!』 なにって……モンゴリアンチョップだが。 中井出「フフフ……仲間と認識したからには加減なんざ知らねぇなぁ〜〜〜っ!!     というわけでナギーよ」 ナギー『なんじゃっ……!ヒロミツはわしのことなぞどうでもいいんじゃろ……!     わしがどれだけの決心で今の状況に立っていると思うのじゃ……!     それを……!それなのに……!』 中井出「や、そうじゃなくてな。お前の心配ってさ、死人の森からの侵食だけなんだろ?」 ナギー『……大元を言えばそうじゃ。死人の森は瘴気が強く、     少しずつじゃが自然を削りながら拡大していっているのじゃ……。     わしはヒロミツたちと旅をするまで、それを抑えて───』 中井出「……えっとさ、一つ質問いいか?     たとえばその死人の森の侵食を操れるヤツが居たとしたらどうする?」 ナギー『なんじゃと……?い、居るわけなかろうが。そんな者が居るなら今頃わしは……』 中井出「おーい!木村夏子二等ー!頼むー!」 夏子 「りょーかーい!!ストック解除!召喚の詠唱を弾き出す!十ツ星神器……魔王!」 尽きることなくゾロゾロ現れる森人たちとの攻防をしつつ、 木村夏子二等の手から放たれるのはシードという名の魔王。 そう、他の誰にも死人の森を操ることなぞできないだろうが、 魔王の直息であるシードならば可能な筈!! シード『お、お呼びですか父上!     このシード、尊敬する父上のためならばなんでもしましょう!     見事期待に沿えてみせます!』 中井出「うむ!実は死人の森の瘴気を抑え、     他の自然の侵食を止めてほしいのだ!出来るか!?」 シード『森の侵食を……?     しかしそれならば大魔王である父上のほうが簡単に出来るのでは───』 中井出「大魔王!?」 ナギー『ヒ、ヒロミツは魔王じゃったのか!?』 中井出「ち、違うよ!?僕そんな大それた存在じゃないよ!?」 ───って、そ、そうか〜〜っ!わ、わかった〜〜〜っ!! 考えてみりゃ俺はシードの親ってことになってるんだから、 シードが魔王なら俺が大魔王……?ならば! 中井出「バ、バカモ〜〜ン!!」 シード『はっ……!?す、すいません父上!僕はなにか失礼でも……!?』 殊戸瀬「叫び方がジャムおじさんみたい」 中井出「うるさいよ!わざわざツッコミのために戻ってこなくていいよ!!     いいかシードよ!これは試練だ!過去に打ち勝てという試練と受け取れ!!     これに貴様の成長度合いがかかっているのだ!瘴気を操れて初めての一人前!     解ってくれるな!?俺は貴様の成長を見たいのだ!!」 シード『ち、父上……!!』 中井出「やって……くれるな?」 ポムスとシードの両肩に手を置き、ニヒルな笑みで同意を求めた。 すると─── シード『は、はい!もちろんです!見事父上の期待に応えてみせます!!』 キリッとした、しかし何処かに笑みを隠せないままにシードは頷いたのだった。 時々思うんだが、やっぱこういう遣り取りって相手が息子で素直な時のみだよな。 娘ではなかなかどうして、こうはいかないだろう。 などと思いつつ、俺は確信を持てずにおろおろとするナギーの頭を撫でると、 “心配しなさんな”と声をかけてやった。 ナギー『の、のうヒロミツ……迷惑ではないのか?     わしは自分のことばかりで、ヒロミツたちのことを考えていなかったのじゃ……。     もしわしのことが迷惑だというなら、ハッキリ───《ディシィ!》あうっ!?     な、なにをするかぁっ!!』 中井出「なにって……デコピン。田舎打ちのほうがよかったか?」 ナギー『話中に攻撃をするなと申しておるのじゃ!』 中井出「そうはいってもなぁ。ともかく!暗い雰囲気ご法度千万!!     よいかナギーよ!迷惑だったのなら貴様の意思なぞ訊かずに置いていく!     我ら原中は戦闘集団なんだぜぇえ!!     わざわざそんな遠回しなことするわけがないだろう!!」 ナギー『あ……そ、それでは……』 中井出「うむナギーよ!我らは仲間だ!     そして今度そんな暗い雰囲気を見せたら───吊るす」 ナギー『吊るす!?ど、何処にじゃ!?』 中井出「フフフ、秘密さ」 殊戸瀬「……子供には勝気なのね、提督」 中井出「だから!わざわざツッコミ入れるために戻ってこなくてもいいよ!!     どうしてわざわざそういうことするかな殊戸瀬は!」 殊戸瀬「当然」 総員 『面白いからだ!!』 猛者どもが咆哮する! ……その後ろには、ぐったりと動かない森人たちの山が。 藍田 「いやぁ〜暴れた暴れた」 丘野 「気分爽快でござるよ。     やはり大勢を成敗するのは三国無双のようで楽しいでござる」 不憫な……。 会話中にもうちょっと言葉を選んで喋ってりゃあ、 ここまでボコられることもなかったろうに。 藍田 「そィで提督、ナギ助連れていくんだよな?」 中井出「うむ。自分の意思でしっかりと目的を持った以上、この博光、見捨ててはおけん」 殊戸瀬「そして気を許した途端に茂みに押し倒して」 中井出「押し倒さないよ!!」 麻衣香「まあまあ、落ち着いて博光」 中井出「えー、ともかく。ようは死人の森からの侵食を抑えればいいわけだから、     そこは魔王であるシードに食い止めてもらうこととなった」 夏子 「へぇ、シーちゃんそんなことまで出来るんだ」 シード『当然だ。それくらい出来なくては父上の息子として恥ずかしいだろう』 夏子 「……もうちょっと口の聞き方がよければ、もっと恥ずかしくないと思うんだけど」 言っても“これでも譲歩している方だぞ”とか言いそうだな。 性格がまんまウィルオウィスプのミニバージョンで、男版ノアちゃんなわけだから。 藍田 「ナギ助もべつにここじゃなけりゃ自然干渉が出来ないってわけじゃないんだろ?」 ナギー『当然じゃ。ただ、癒しの大樹が傍にあればやりやすいのは確かなのじゃ。     この世界全ての活力はあの大樹から流れる。     じゃからそれにわしの魔力を流すことで、さらに自然の力を高めているのじゃ』 藍田 「だったら話は……」 丘野 「早いでござるな」 麻衣香「だね」 夏子 「うん」 ナギー『な、なんなのじゃ?皆で……』 殊戸瀬「現状で足りないのなら、あなたが強くなりなさい」 ナギー『わ、わしが!?強く!?』 殊戸瀬「精霊だからという理由で現状に留まり努力を怠るなど不届き千万……。     足りないのなら高めなさい。丁度競い合える相手も居るんだし」 ナギー『競える相手……?誰じゃ?』 夏子 「えと……この状況を見ればシーちゃんって解りそうなものだけど」 シード『比較にもならないな。頑張るだけ無駄だね』 ナギー『なにっ……!?よし、その言葉はわしへの挑戦と受け取るぞ!     わしは自然の保持者として、おぬしにだけは負けんのじゃ!!』 シード『好きにすればいい。僕は僕のペースで己を高めるだけだ』 中井出「うむ。頑張るんだぞ〜、シード」 シード『え───は、はい!任せてください父上!!』 総員 『………』 労いの言葉とともに頭を撫でてやった……それだけなのだが、 どうやらシードの心に炎が燃えたらしい。 シード『ふはははは!ドリアード!最初に言っておくが成長の道を先んじるのは僕だ!!     僕こそが父上の期待に沿える存在だ!!お前には無理だから諦めろ!!』 そして直球発言。 さすがだ。 ナギー『ふっ……ふふふはははは!!なにが“先んじる”か!!     おぬしこそせいぜい吠え面かかぬようてんてこ舞いになるがいいのじゃ!!』 かたや、よく解らん罵倒文句で精一杯胸を張って見下すナギー。 ……うん、これで上手い具合にライバル精神を育ててくれればいいんだが。 中井出「よっしゃあ!ひと段落してところでそろそろ行くか!」 藍田 「押忍提督!」 丘野 「目指すはヴォル火山!どんな敵が居るのか楽しみでござるよー!!」 夏子 「ブロリー居るかな」 麻衣香「居るわけないって」 それにあれはマグマ地帯だっただけであって、 好き好んで火山に向かったわけではなかった筈。 や、空界暮らしが長いってのによく覚えてるもんだ俺も。 とまあそんなこんなで旅は無事再開され─── ナギー『あ……ちょっと待つのじゃ』 大樹の関所から出たあたりで、 ハタと何かを思い出したナギーによって、我らの歩は止められた。 ナギー『これだけの裏切りをしたのじゃ、どうにでもなれじゃの。     宝物庫から武器を持ってくるのじゃ』 中井出「おお〜〜〜っ!!」 藍田 「そいつはありがてぇ〜〜〜っ!!」 ナギー『……普通、こういった場合は“いいのか?”と訊いたりはせぬか?』 総員 『せん!!』 ナギー『そ、そうなのかの?ハラチューの考えることはよく解らんの……』 何気にひどいことを言われつつも、ナギーのあとについて再び関所の中へ。 すると─── エネル『ィヤッハッハッハッハ!!絶景……!!』 総員 『…………』 恐らく月空力で転移してきたであろう彰利が、 再び玉座前の高台にて両手を上げて叫んでいた。 なにがどう気に入ったのかは知らんが、どうやらここを占拠したいようだった。 夏子 「宝物庫の前に……」 殊戸瀬「まずイカレた神殺し……」 麻衣香「だね……」 無視して宝物庫に向かおうとしたのだが、ヘンに絡んでくる神様も居たもんで…… 結局、再び戦うこととなったのだった。 Next Menu back