───冒険の書49/辺境英雄エロマニアさん───
【ケース197:中井出博光(再)/過因と書いてカインと読む】 諸君、私は武器が好きだ。 諸君、私は武器が好きだ。 諸君、私は武器が大好きだ。 剣が好きだ。槍が好きだ。斧が好きだ。刀が好きだ。弓が好きだ。 槌が好きだ。鎌が好きだ。銃が好きだ。ハンマーが好きだ。 民家で。露店で。 城で。教会で。 祠で。洞窟で。 武器屋で。道具屋で。 万屋で。ダンジョンで。 この地上で手に入るありとあらゆる武器が大好きだ。 磨き上げた武器の一閃が風を斬る音が好きだ。 今まで倒せなかった敵が、新たな武器で塵になった時など心が踊る。 昇華したおかげで炎が現象する武器が好きだ。 鍛えた武器で敵の軍勢を薙ぎ倒した時など胸がすくような気持ちだった。 揃えて振るう双剣の斬撃が敵の戦列を薙ぎ倒す瞬間、 武器が強くなっているのだと実感出来る刹那が好きだ。 巨大な魔物が振り下ろす攻撃を何度も何度も弾けた時など、感動すら覚える。 陽光に当てられ、キラリと輝く武器などはもうたまらない。 薦められた武器を手に取り、 しかしそんなに使えなかったぞと文句を言う瞬間もまた最高だ。 頑張って強化させ、 +99にしたのちにそれが昇華可能の武器類だったと知った時は絶頂すら覚える。 いい武器を持っているなと言われるのも好きだ。 武器の価値も解らんヤツが、 好き勝手に武器を捨てたり売ったりする様はとてもとても悲しいものだ。 主に捨てられた武器を拾って、それを磨いて自分の武器と合成させてやるのが好きだ。 その行為をハイエナだとか武器乞食だとか言われるのは屈辱の極みだ。 諸君、私は武器を。地獄に落ちても武器を望んでいる。 諸君。私とともに歩む脳内の戦友諸君。 キミ達はいったいなにを望んでいる? さらなる武器を望むか? 情け容赦なく賃金全てを武器に注ぎ込むことを望むか? 鉄風雷火の限りを尽くし、三千世界の鴉を殺す嵐のように武器を望むか? 脳内博光×100『武器!!武器!!武器!!』 よろしい。ならば武器だ。 我々は渾身の力をこめて今まさに振り降ろさんとする巨大な武器だ。 だがこの広大な世界に舞い降りて、 世界の広さと武器の多さを知った我々には、ただの武器ではもはや足りない。 レアウェポンを!! 一心不乱の強化世界を!! 我らはわずかに一個大隊。千人に満たぬ脳内の博光に過ぎない。 だが諸君は一騎当千の武器愛好者だと私は信仰している。 ならば我らは諸君と私で総力100万と1人の愛好者となる!! 我々を忘却の彼方へと追いやり眠りこけている鍛冶屋どもを叩き起こそう! 髪の毛を掴んで引きずり降ろし、眼を開けさせ思い出させよう! 連中に鉄を鍛つ感触を思い出させてやる! 連中に灼色の鉄の上で弾む槌の音を思い出させてやる!! 錬成と錬鉄の狭間には、 魔法使いの哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやる! 一千人の鍛冶屋の錬鉄の末に、曲った錆を燃やし尽くしてやる。 中井出「至高の大隊、大隊指揮官より全脳内博光へ」 目標、サンドランドノットマッド右隅、鍛冶屋!! 第二次ルドルグニス強化作戦───状況を開始せよ!! 脳内博光×100『サー!イェッサー!!』 ───……というわけで。 中井出「ここが鍛冶屋か……フフフ、隅っこにあるから探すの苦労したぜ……」 ナギー『無駄に広い上に暑くてたまらん。     ところでさっきはなにをブツブツと言っていたのじゃ?』 中井出「武器への思いを少々」 俺はナギーを連れ、サンドランドノットマッドの鍛冶屋に来ていた。 ああ、サンドランドノットマッドっていうのは、 ヴォル火山で死んだ我らが神父送りにされた町である。 巨人の里に行く前に準備は必要だろうってことで、 金を山分けして準備のための行動に出たのだ。 で、俺はもちろん貰った金の全てを武器に注ぎ込むつもりでここに来た。 一心不乱に駆け出す俺を見て付いてきたのがナギーということだ。 ナギー『何処に向かうのかと思えば、鍛冶屋か……。     ほんにヒロミツは武器が好きなのじゃな』 中井出「戦士のロマンだろ、これは」 武器強化の出来ないファンタジーなんて寂しいもんだぜ? その点で言うと、この世界はロマンに溢れている。 中井出「ナギーこそいいのか?シードと自然の強化をしてなくて」 ナギー『いいのじゃ。あやつと居ると集中出来んでの……』 中井出「はっはっはっは」 ナギー『な、なぜ笑うのじゃ』 素直ではない娘の態度に笑む父親を演出してみた。 ……が、ナギーはどうも娘という感じじゃない。 娘か……紀裡のやつ、元気にしてるかなぁ。  ギンギギギギギ、ゴンギギギギギギィイイイ…… ともあれ鍛冶屋の入り口の扉を開ける。 それはまるで使い古された時計のように錆びついた音を立てながら開いた。 で、肝心の中のほうはというと───ボロかった。 中井出「うわー、こざっぱりとしてるー」 ナギー『良い予感はせぬの……。どうするのじゃヒロミツ』 中井出「外見で人を判断してはいかんぞナギー。     まあ、こう言ったりすると大体後悔するのが人生のセオリーなんだが」 はぁ、と溜め息をひとつ。 そうしてから改めて中を見るに至り…… 奥のテーブルでコンコンと鉄の塊を叩くじい様が居るのに気づく。 中井出「おお、じいさんか。こりゃ期待できる」 玄人って感じがしていかにもって感じだ。 ……もちろん、こういうふうに期待すると後悔するのもセオリー。 じいさん「なんだ……客人か?」 中井出 「そうだ」 ナギー 『なぜそこで胸を張るのじゃ?』 中井出 「さあ」 それはどうでもいいとして。 さて……中の方に武器は……少し飾られてる程度だな。 中井出 「じいさん、鍛冶は出来るか?」 じいさん「……フン。鍛冶屋に向かってなんてこと訊きやがる。      おめぇさんの目は節穴かっつんだい」 中井出 「節穴でいいから答えろコノヤロー」 じいさん「………」 呆れた目で見られてしまった。 じいさん「俺はな、ランダーク直属の鍛冶屋だったんでぃ。      それがどうだい、聞けば王国は一体の魔物にやられちまったって話だ。      それは武器が悪かったからだ、なんてみんな言いやがる。      弟子は誰一人残らず出ていき、      “お前の所為だ”と、王国に住んでいた者の家族が責め、金を払えと言う……。      お蔭で、賑やかだった鍛冶場も廃り……俺はこんな遠くの町に追い遣られた。      噂ってのは怖ぇえなぁ……。一級の鍛冶職人と呼ばれた俺の知名度が、      今ではこんなにも裏目に出て……客なんて誰も来やしねぇ……」 中井出 「そうか。で、鍛冶は出来るか?」 じいさん「ちっとくれぇ話を聞いていこうとか思うわねぇのかいおめぇさんは!!」 中井出 「見縊るな!!この中井出博光!!楽しいことは好きだが暗い話は大嫌い!!」 ナギー 『こ、これヒロミツ!      ご老人が傷ついておるであろ!少しは聞く姿勢を持たぬか!』 そうは言われてもな。 さてどうしたものか……。 中井出 「そィで……わざわざ話すということはなにかしてほしいことでもあると?」 じいさん「……俺が武器を鍛ってやる。      それを装備して、モンスターを50体ほどコロがしちゃくれねぇだろうか……。      そうすりゃあ、俺の武器のことが誤解だって広まると思うんだ……」 中井出 「だめね!断るね!!」 ナギー 『な、なぜじゃヒロミツ!やってやればよかろ!』 中井出 「え!?なぜ!?……知らん!!何故だか知らんがダメだ!!」 じいさん「もしやってくれたら!お前さんの武器は無料で鍛えてやってもいい!!」 中井出 「そういうことは早く言おうぜじいさん……」 ナギー 『も、物凄くやさしい顔になったのじゃ!!』 中井出 「はっはっは、なにを言うかナギー。この博光、生来老人には優しいぜ?」 ナギー 『そ、そうなのか?では子供には───』 中井出 「うむよし!では貴様の作った武器とやらをさぁ出せ!!さぁさぁさぁさぁ!!」 ナギー 『聞くのじゃヒロミツ!!無視するでないぃっ!!』 そんなことは知りません。 しかし俺が承諾するとじいさんは本当に嬉しそうな顔になって、 奥の方から一本の剣と短めの変わった形の刀を持ってきた。 じいさん「これは俺が鍛えた剣だ。      王国製のな。しかも一番納得のいかない出来だったものだ」 中井出 「そんなもんで戦えというのかこの博光に」 ナギー 『承諾したと聞くや否や、大きく出たのぅ……』 じいさん「勘違いしねぇでくれ。一番弱いもので50体も倒せたら、      周りはあの事件が武器の所為じゃないと解ってくれる筈だ」 ナギー 『ふむ……なるほどの。ところで主人、この短刀はなんじゃ?』 じいさん「あ、ああ。これは俺が若い時に手に入れた忍者刀で、“虎刀”って言うものだ」 中井出 「虎刀!?《ピキーーーン!!》」 ナギー 『おおっ!ヒロミツの目が光ったのじゃ!』 じいさん「思い出の品だが……もし上手く……いや。失敗してもいい。      手伝ってくれたお礼として、これを受け取ってくれ。      もしこれがダメだったら、俺も素直に鍛冶業をやめよう……」 中井出 「じいさん……───うむ!貴様の心意気、この博光が確かに受け取った!!      だが間違うなじいさん!この博光、夢を見、浪漫を求める男の仲間!!      このクエスト───見事達成してみせよう!!」 じいさん「おめぇさん……すまねぇ、感謝する……」 中井出 「そうと決まれば覚悟を決めろ!」 ナギー 『サーイェッサー!!』 中井出 「心は猛っているか!?」 ナギー 『サーイェッサー!!』 中井出 「浪漫を求めているか!?」 ナギー 『サーイェッサー!!』 中井出 「じいさんを助けたいと思っているか!?」 ナギー 『サーイェッサー!!』 中井出 「夕食のおかずを一品貰ってもいいか!?」 ナギー 『サーイェッサー!!』 中井出 「そのことで逆恨みしないと誓えるか!?」 ナギー 『サーイェッサー!!』 中井出 「うむよし!!ならば心の巴里にシャンドラの火を灯せ!!      これよりクエスト“老鍛冶職人の危機”を開始する!!      イェア・ゲッドラァック!ライク・ファイクミー!!」 ザザッ!! ナギー 『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』 こうしてその言葉を合図に、俺とナギーは町の外へと駆け出していったのだった!! ナギー『……のぅヒロミツ?どさくさに紛れて妙なことを言っておらんかったか?』 中井出「気の所為だ!!」 さあ頑張ろう!じいさんの鍛冶職人生命と、夕食のおかずのために!! ───……。 ……。 ───と、そんなわけで。 中井出「王国制式長剣を装備した!」  でってーんけてーてーててーん♪ 中井出「うわっ……攻撃力が鬼のように下がった……」 喩えの意味は解らんが、ともかく下がった。 なんだいこりゃあ……弱いにもほどがある。 ナギー『苦労しそうなのかの?』 中井出「五分五分かな。     ここいらの敵なら純粋にストレングスだけでなんとかなりそうだし」 それでもこれで倒さなきゃいけないわけだ。 はぁあ、FF11の暗黒騎士クエストを思い出すなぁ。 あんな面倒臭いクエスト、やってられっかっつーの。 少しはプレイヤーのことも考えろ、コノヤロー。 中井出「いやいかんいかん。集中しないとな。じゃあ、適当に回ってコロがすか」 ナギー『そうじゃな』 楽しく行きましょう。 賑やかに。そう賑やかに。 中井出「じゃかんちゃちゃんちゃかんちゃちゃんちゃかちゃか♪     でってでってーでってでってーでーてー、でってってってけて♪」 ナギー『歌か?』 中井出「男が歌うような歌じゃないけどなー。原中には歌のことで男女差別などせんのだ。     いい歌をいい歌と思ってなにが悪い。そんな感じだ」 ナギー『なるほどのぅ。……わしは聞いていてもいいのか?』 中井出「いいぞー。減るもんじゃないし」 ナギー『そうかそうか』 なにやらニコニコしながら、ナギーが俺の後ろを付いて回る。 さて……敵はどこかなっと……。 ───……。 ……。 中井出「ある〜晴れ〜た日〜のこと〜♪魔法以上の愉〜快な〜♪     かぎり〜なく〜、ふりそ〜そぐ〜、不可能じゃな〜い〜わ〜♪     あし〜たま〜た会〜う時〜♪笑いなが〜らサ〜ミング〜♪     うれしーさを〜、あっつ〜めよ〜お〜、簡単なんだよこんなの〜♪」 ナギー『サミングとはなんじゃ?』 中井出「目潰しだ」 ナギー『そのような物騒な歌、今すぐやめぃ!!』 怒られてしまった。 ちなみに普通は“明日また会う時、笑いながらハミング”なんだが、 あの歌を聴いたら誰だって絶対にサミングと変えたくなるだろう。 ナギー『まったく……ハラチューの者どもは歌をなんだと思っておるのじゃ……』 中井出「歌は歌である!!違うというならその答えを400文字以内で述べてみよ!」 ナギー『う、うむ!解ったのじゃ!聞くがよいわ!よいか!?歌とはのぅ!!』 中井出「あ。待った。モンスターだ」 ナギー『あとでよいのじゃ!!聞け!!』 中井出「だめね!断るね!!」 ナギーの言葉をかろやかに流しつつ、 離れた場所に居たシルバリオ(狼)へと攻撃を開始する! 狼  『グルッ!?』 中井出「ヘィヤァッ!!!」 スバッと振るう王国剣! しかしあっさりと躱される始末!! しかも躱したシルバリオは着地すると同時にすぐに我が左腕目掛けて牙を剥く!!  がぶりんちょ♪ 中井出「ほぅわぁあああーーーーーーっ!!!!なんて言うと思ったかコノヤロー!!」 見よ!このパゥワー!!この力強さ!! 強引に牙を外し、その上で振り回せるストレングス!! かつてのこの博光には有り得ん光景ッッ!! いゃっ……しかしこのっ……!相手さんもなかなか暴れおるわ……!! 中井出「このっ……!こらっ!暴れるんじゃDDT!!」 狼  『《ドゴシャッ!!》キャィイインッッ!!』 力任せに暴れるシルバリオの頭が我が脇に入った瞬間、首をがっしりロックしてDDT。 相当不意をつかれたのか、シルバリオは相当驚いた悲鳴を上げた。 しかし許さん。 中井出「さらに上から胴を掴んでぇええっ!!スーパーパーィル!!ドライバー!!」 狼  『《ゴワシャア!!》ギャンッ!!』 中井出「さらにジャイアント───スウィングスウィングスウィィイイイングーーー!!」  フンフンフンフンミスミスミスミスミス!!! 中井出「ほうりゃぁああっ!!!おぉおーーーーーっ!!!!」 散々振り回したのちに斜め上の上空へと手放す!! そしてハンマー投げ選手のごとく絶叫!!あれって意味あるんかな!! だがそれだけでは終わらん!! 俺はさらにシルバリオを追うと、ヤツが地面に落下する前に跳躍!! 倒れたシルバリオ目掛けて 中井出「デストロォオオーーーーーイ!!!」 ダブルニープレスを実行しました。 ドボォッッッシャアアアアンッ!!! 狼  『ギャイィインッ───……《シャァアン……キラキラ》』 それがトドメとなったのか、塵になるシルバリオ……OH最強!! 中井出「成敗!!《ズビシィイイインッ!!》」 ナギー『……武器でトドメを刺さずしてよかったのか?ヒロミツ』 中井出「ギャア忘れてたァーーーーーッ!!!!」 そして忘れていた当初の目的。 仕方ないじゃないか、戦闘はやっぱり楽しいんだから。 むしろ己の好むままに戦うのが楽しいったらないのだ。 中井出(いやいかんいかん……この武器にはなんの罪も無い。     むしろ思う様使ってやらないと。鍛冶屋のじいさんのためにも) この博光、根がやさしい老人たちの味方。 じーさんとばーさんが残してくれたこの命、もっとたくさんの人のために!! ……などと大袈裟なことを言うつもりはさらさら無い。 中井出「よ、よし。ここでこうしてても始まらない。いくぜナギ〜〜ッ!!」 ナギー『わかったのじゃー!』 これでなかなかノリのいいナギーとともに、俺は新たなる一歩を踏み出した!! さあ!悪い子はいねがぁーーーーっ!!! ───……。 ……。 中井出「なんでもかんでもやーりーまーしょーおーーーっ!!!     パーッといっちょうやーりーまーしょーおーーーーっ!!!     実はみーなさんー!!無責任ーーっ!!     頭カラッポのほうがぁっ!!楽しいのさぁーーーっ!!!」 ズバズバドシュドシュビタァーーンビタァアーーーンゾバシャアア!! モンスターども『ギャアアアーーーーーーッ!!!』 剣で斬る斬る斬る斬る!! 逃げようとするヤツはAGIにステータスを振り分けて回り込み、 即座にSTRマックスのプロレス技で地面に叩きつけて剣で斬る!! 向かってくるヤツはヤクゥザキックで顔面を蹴りつけたのちに斬る!! そう!トドメである!トドメさえ剣であれば戦闘方法なぞ自由!! だが可能な限り剣で戦う!みさらせ!これが浪速の商人の生き様やぁーーーーっ!!! 中井出「ふはははははは!!かかってこいオラァッ!!」 魔物 『グ、グキャーーッ!!』 中井出「ターちゃんパァーーーンチ!!」 魔物 『《ボゴシャッ!》ウギャッ!!』 中井出「ターちゃんキィーーーック!!」 魔物 『《ドボォッ!!》ウギョオッ!!』 中井出「ロォーリィーーング!ソバァーーーット!!」 魔物 『ケキャッ!!《シュバァッ!!》』 中井出「のわっと!?《ドシャアッ!》ギャアッ!!い、ぢぢ……!     いきなり避けるなコノヤロ───おぉおおおっ!!?」 魔物達『オォオオオオオオオオオッ!!!!』 中井出「ちょ、ちょっと待てぇーーーっ!!     人が倒れた途端に一斉になんて卑怯ギャアーーーーーッ!!!」 ナギー『立てー!立つんじゃヒロミツー!!』 中井出「あんたもうすっかり傍観者だね!!助けようとか《マゴシャア!》ふぼっふ!!」 乱戦になればなるほど楽しいのがザコモンスターとの戦い。 とはいえ、こう大勢に囲まれてボコられると反撃するのも大変である。 ナギーはナギーでどっから知識を手に入れたのか、 どこかキラキラとした目で俺の戦いっぷりを見つつもおやっさんの真似をしている。 いいよねキミ、空中で見てるだけだもん。 魔物達『ゲキャキャキャキャアアーーーーーッ!!!』 中井出「《ドスドスドスドス!!》ギャッ!ギャッ!!     こ、こら貴様らっ……!!一人に対して集団ストンピングとはっ……!!     あ、あまりにも卑劣!よってこれより修正を《ベゴシャア!!》痛ぇ!!     ノー!!顔はやめてぇええ!!芸能人は歯が命ィーーーーーーッ!!!」 ていうか痛い。 中井出「こンのっ……弁慶!!」 魔物 『《ゾグシュ。》ギャーーーーーッ!!!』 魔物達『ウギョッ!?』 二足歩行モンスターの弁慶の泣き所に剣での突きをプレゼント。 その一瞬ッ……!!まさに一瞬、悲鳴に驚いたモンスターどもの隙を突いて、 ストレングスマックス+両手持ちで王国剣を水面斬りにて振り払う!!  ゾバシィインッ!! 魔物達『ギョキャアアアッ!!?』 周囲の魔物どもの足を斬ったらすかさず立ち上がり、マグニファイを発動!! 衝撃波(小)しか出せないが、それでも今は良し!! 今はまずこの魔物に囲まれた状況から逃げられれば良し!! 中井出「そィやぁあーーーーーーっ!!!!」 俺は衝撃波を自分の足元の地面に叩きつけ、爆風で空を飛んだッッ!! ───もちろん一度はやってみたかった、あのポーズのまま。 ナギー『お、おおお!!すごいのじゃヒロミツ!!座ったままの姿勢でジャンプを!!』 ドォオーーーンッ!!と煙を上げながら跳躍する俺を見て、ナギーが本気で驚いていた。 が……俺は俺でこれからのことを考えていた。 ……いかん。 このまま落下したら結構なダメージになるんじゃなかろうか。 毎度毎度計画性ってものが無いからなぁ、俺の行動。 だが否!! どうせ空に飛んだのなら、飛んだ意味がきっとあると思う行動を取ろう!! 中井出「そんなわけで秘奥義発動!!火の宝玉の力を得た我がキャリバーを見よ!!     エクスプロ《ドゴシャア!!》ゲファーーーリ!!!!」 くっちゃべってる途中で地面に脇腹から落下した。 そりゃそうだよね……いくら高く飛んでも、 くっちゃべってるだけの暇があるならとっとと撃て、だよね……。 漫画とかアニメの表現ってなんかヘンだって……思ってたよ……。 だが諦めない!!それが我々人間の最大の武器なんだよ!! 中井出「みさらせ!これが火の属性を得たソードマスターの秘奥義!!」 飛翔する、燃える斬撃を見たことがあるか!?俺は無い!! だから受けてみてください!この炎の剣閃に我がTPの全てをかける!! 中井出「剣を両手持ちで右から左へ全力で振り払いッッ!!」  シュゴォッ───キィインッ!! 中井出「その反動で左へ回った剣を、さらに全力で右へと払う!!」  ゴコォッ───キィイインッ!! 中井出「そのふたつの剣戟の間に生じる燃える剣閃はまさに圧倒的破壊空間!!     なお歯車的砂嵐の小宇宙は発生しないのであしからず!!     受けろ剣風!エクスプロードブレェーーーーーーーードッ!!!」 TPマックス状態から放つ二連の剣閃!! 炎の宝玉の加護を込めた我が剣風は、こちらへ向かってきていた魔物を蹴散らし、 追うニ閃目の剣風が残った敵を塵に帰してゆく!! しかも今までの剣閃と違って、相手が燃えながら塵なっていくのがまたなんとも……!! ああっ……俺剣士やっててよかった!! でもこれでルドルグニス使ってたら、 ボマースキルでもっと素晴らしい花火が見れたんでしょうねドドリアさん。 僕はちょっとそれが残念です。 だがそれは次の楽しみとしてとっておくとしましょう。 それが明日への励みとなる!! 中井出「さあ!蛮勇なるモンスターどもよ!この博光を恐れないのなら!かかってこい!」 ナギー『どういう文句じゃ?』 中井出「日輪の輝きが無いんだからしゃーないでしょ!!」 そうこうしてるうちにどんどんと現れるモンスター! つーかなんで町の近くにこんなにモンスターが出るんだってくらい出てきてる!なにコレ! 中井出「ア、アゥワワワ……!!」 ナギー『臆せずして向かうのは果たしてどっちかのう』 中井出「こここ怖くなんかないやい!!恐れるのは向こうだよ!?ほんとだよ!?     王国剣だって武器さ!これはこれで強いさ!!」 ルドルグニスより圧倒的に弱くたって俺は構わん! ストールンベア『グゥウオオオオオゥウッ!!!』 ヴァルチャー 『ホォオオゥルェエエエエエエエッ!!!』 中井出    「飛び込め激動!アルゴ必殺の十字斬り!!───って無理だった!!」 アルゴ必殺の十字斬りは両手での手刀か、武器が二つなけりゃ無理! しかもどう足掻いても必殺にはならねぇ!! それはジャングルの王者ターちゃんで証明済みだ! ストールンベア『ルゥウオッ!!』 中井出    「《ゾゴシャア!!》ウギャーーーーイ!!!」 ヴァルチャー 『ルェエエイッ!!!』 中井出    「《ブスッ。》痛ェエエーーーーーーーーッ!!!!!」 熊モンスターの爪攻撃と鳥モンスターのクチバシ攻撃が俺を襲った。 アルゴの所為で絶妙に不意打ちだったため、そのダメージは地味に計り知れなかった。 中井出「ぐふっ……!こいつら……強ぇえ!!」 ナギー『普段のおぬしならちょちょいと倒せるくらいのレベルじゃろ!     早ように倒してみせるのじゃー!!』 中井出「簡単に言うなぁーーーーっ!!!」 レベルが高いからって敵が雑魚になるのは、 ステータスが均等に振り分けられていた時のみの戯言!! ステータスをいつでも自由に振り分けられるこのヒロラインにおいて、油断が一番の敵!! ガードポイントが甘いと、せっかくの防具の防御力もささやかなものと化してしまうのだ。 どうやらこの世界、 防具とVITが合わさって初めて“防御力”というものが発生するらしく─── いくら防具が良くても、 そこにVITがプラスされないと、そうまで防御力は発生しないのだ。 ───と、そんな脳内会議の中で葛藤が生じる中…… 目の前の魔物の群れが突如として割れると、 その先から奇妙な格好の魔物が現れたのである。 どうやら雰囲気からして長っぽいが。 魔物 『貴様が私の可愛い部下を痛めつけてくれた人間か……』 中井出「いやぁ、痛めつけてくれただなんて。礼を言われるほどのことでは」 魔物 『礼を言っているのではない!!……貴様、名をなんと言う?』 中井出「むう!名乗れと言われて答えぬは男の恥!!     遠き者は耳に聞け!近き者は目にも見よ!!     我こそは武器に命を燃やす原中の提督!中井出博光!!じゃかじゃーーーん!!」 ナギー『……自分で効果音をつけると寂しいぞ、ヒロミツよ……』 中井出「言ってみたかったからいいのだ!!」 魔物 『ヒロミツと言うのか……フフ。どうだ?我が右腕にならないか?今なら』 中井出「ならん!!」 魔物 『特別に即答!?フ、フフ……即断には早いと思うがなぁ……。     いいか?よく聞け。私は』 中井出「ならん!!」 魔物 『き、聞け!!いいから!まず私の話を聞いてから───!!』 中井出「黙れクズが!黙れクズが!黙れクズが!」 魔物 『ギ、ギィイイーーーーーーーッ!!!!』 ナギー『……ほんに相手を怒らせるのが上手いの、ハラチューというのは』 中井出「大体貴様!人に名を訊ねておいて己は名乗らんとは何事!!     貴様それでも上に立つ者か!!」 魔物 『……なるほど、一理ある。いいか、よく聞け。     私はここら一帯の魔物を仕切る───』 中井出「一応高校総番、手目小野若蔵(てめこのわかぞう)
というらしい」 ナギー『ほほう……珍妙な名じゃな』 魔物 『違う!!貴様、私を馬鹿にしているのか!?』 中井出「ど、どうした手目小野若蔵!!」 ナギー『これしきのことで怒るとは、器が知れるぞ手目小野若蔵』 魔物 『こ……ッ……こここここ……!!』 手目小野若蔵のコメカミがバルバルと躍動する。 ナギー『ヒロミツー、喉が渇いたのじゃー』 中井出「っと、それじゃあそろそろ喉でも潤しにいくか」 ナギー『そうじゃな』 魔物 『無視をするなぁっ!!』 中井出「あ、すまん手目小野若蔵。俺達水飲みにいくから」 ナギー『用があるのなら待っておれ。それくらい出来なければ器量が知れる』 魔物 『ぐっ……いいだろう!普通ならば下級種族の言うことなど聞いてやらんのだがな!     私は器の大きい男だ、それくらいの余裕を見せてやろうじゃ……って居ない!?』 ───……。 ……。 ……。 ───……。 ホーホー……ホー……。 魔物 『……来ねぇ……』 ───……。 ……。 チュンチュン……チ、チチ…… 中井出「くぁああ〜〜〜……よぉ〜く寝たぁあっと……」 ナギー『ふぅうむむむ……さて。では魔物退治の続きをするかのぅ。     しかし、なんじゃヒロミツ、昨日の夜は。急にわしのおかずを取りおって』 中井出「そういう約束だったじゃないか」 魔物 『ふっ……ふはははは!!ま、待っていたぞ下級族がぁっ!!     今すぐにこのラウル=ハーネマンが貴様らをコロがしてくれる!!』 中井出「ん……んあ?誰お前。……ラウル?知らねー」 ナギー『なんじゃ、町の外に群がって見苦しい』 魔物 『綺麗さっぱり忘れてんじゃねぇーーーーっ!!!!』 いや……誰だっけ。 名前……名前……と。 中井出「あぁそうだ!手目小野若蔵だ!!」 ナギー『おお!思い出したのじゃ!手目小野若蔵じゃ!……で、その若僧が何用か?』 魔物 『ブッコロがすぞてめぇら……!!』 中井出「いやぁ〜、砂漠地帯っていっても朝はまだ涼しいなぁ」 ナギー『ほれ言うたとおりじゃろ?一泊して正解じゃ』 中井出「夜も涼しかったしな」 魔物 『………』 中井出「……ありゃ?どうした手目小野若蔵。コメカミがバルバル躍動してるようだが」 ナギー『なんじゃ?』 魔物 『……もういい。我らモンスター軍団の強さを見せ付けてやる!!     いくぞお前たち!こいつらを殺せ!!』 魔物達『グォオオオオオオオオオオッ!!!!』 中井出「お───くるか?よっしゃ、いっちょやるかい!!」 ナギー『目覚めの運動にはうってつけじゃな。どれ、わしも歌ってやるかのぅ』 中井出「歌だけだぞ?強化とか弱体使ったら、この武器で勝ったことにならない」 ナギー『む……つまらぬのぅ』 そうは言うが仕方ない。 ともあれ、起き抜けだと身体は鈍ってるだろうし───よし!やっぱバトルあるのみ! 中井出「フフフ……!見るがいい!     昨日モンスターをコロがしまくったことで手に入れた宝玉の経験!     その全てをとある力に注いだ我が能力を!!“ストック解除”!!」 魔物 『なにぃっ!?』 中井出「フフフハハハハ……!!ルドルグニスのマグニファイを封入したストック!     武器は一本だが敢えて言おう!!武器はしっかり二刀流!!」 モシャアァンッ!!《中井出のステータスが二倍になった!!》 ナギー『あっ!これっ!能力向上は武器の能力を損なうと言ったばかりじゃろ!!』 中井出「あれ!?───うおお忘れてた!!試してみたくてつい!!」 ナギー『なにをやっておるのじゃこの馬鹿者め!!』 中井出「馬鹿とはなんだコノヤロウ!!」 それでも、どんな時でも馬鹿と言われりゃマルボロ魂発動。 我ら原中はCOSMOSを応援します。 魔物 『なんだか解らんが、どうやら貴様の目論みは無に帰したようだな!     ははははは!はぁーーっはっはっはっ《バゴシャア!》はぶぼぉあああっ!!?』 ムカツいたのでとりあえず殴っといた。 すると一斉に俺を睨み、襲い掛かる魔物の軍勢!! 中井出「ま、待て!一分だけ待つんだ!あ、いやっ……!     双剣のマグニファイをそのまま封じ込めたからプラス一分かっ……二分!     二分だけ待ってくれ!頼む!」 魔物達『ゴガァアアアアアアアッ!!!!』 中井出「やっぱ無理か!?チィイ!ならば!!」 スピードポイント!! 倍化したステータスの全てをAGIに注ぐ!! すると俺の速度がまるで疾風のように!!  ドシュンッ!! 魔物 『なっ!?消えた───!?』 中井出「ココニイマス」 魔物 『なっ───!?』 瞬時に疾駆した俺は、魔物のボスの背後で体育座りをしていた。 中井出   「ワタシガドコニイルカ、ナドトユウ質問ハ……手目小野若蔵。        二度トシナイデクダサイ」 魔物    『手目小野若蔵じゃないと言っている!!』 ナギー   『愚か者めが!己の名を偽るとは何事じゃ!!        おぬしは手目小野若蔵であろ!!』 魔物&中井出『えぇっ!?そうなの!?』 ナギー   『おぬしもじゃヒロミツ!おぬしはエロマニヨン人の末裔じゃろ!!        いい加減にそれを認めるのじゃ!!』 中井出   『認められないよそんなの!!俺はエロマニヨン人じゃないよ!!』 魔物    『私だって手目小野若蔵ではない!!』 ナギー   『デタラメを申すな!!』 中井出&魔物『ひでぇ!!』 忘れてた。 ナギーってガンコだったんだった。 俺のエロマニヨン人説を未だに信じきってるわけだし……。 中井出   「………」 魔物    『………』 中井出&魔物『飲もうか……』 ここに、奇妙な協定が誕生したのだった。 ───……。 ……。 ……で。 ラウル『うひゃーーーっひゃっひゃっひゃっひゃっひゃ!!     なんだなんだぁ!人間も悪くねぇじゃねーかぁっ!!』 中井出「おおっ!飲め飲めぇっ!今日は俺のおごりだー!!」 魔物のボスの名前がラウルだったことが解ったりなんだりしたのち、 俺達は肩を組んでビールをガブ飲みしていた。 ラウル『オーケーオーケー!お前は同志だ!仲間だ!     他の人間なんぞ知ったこっちゃねぇがお前は別だ!     願い通り、この町には一切手は出さねぇよ!     しっかしよくもまあこんな剣で私の部下を倒せたもんだ!はっはっはっはっは!』 中井出「いやいや、これがあったからこそだ!間違うな!」 ラウル『そうかそうか!あっはっはっはっは!どうでもいいや!あははははは!!』 ゲラゲラと笑いながら酒瓶をカァーーーーーーーン!と打ち合わせてンビンビと一気飲み。 クハァーーーッ!!染みるねぇ!! 麻衣香「……なにアレ」 丘野 「さあ……」 藍田 「モンスター……だよな、あれ」 夏子 「外まで酒を買ってきてくれってtellが来たと思ったら……はぁ」 ラウル『さぁっ!お前らも飲めぇーーーーっ!!』 魔物達『ウォーーーーーッ!!』 中井出「さあ!貴様らも飲むのだ!!」 丘野 「……って言われても……」 藍田 「なぁ……?」 中井出「オペラツィオン・バンクェット!!」 ザザァッ!! 総員 『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』 こうして僕らの一日は今日も更けてゆく。 ちなみにバンクェットってのは宴会のことである。 我らと彼らは買ってきたビールをスッカァーーーンと打ち鳴らして、一緒に飲み合った。 その宴会は町から離れたところで密かに、だが盛大に行われ─── やがて再び夜が明ける頃。 我らは真の友の顔をしつつ、手を振って別れたのだった。 ───……。 ……。 中井出 「というわけで、魔物たちはここらを襲うことはなくなった。      もちろん、こっちが何もしなければだが」 じいさん「……ああ、知ってるよ。      こっちもな、ここの武器は魔物を改心させるって噂まで流れてな。      早くも注文が来てんのさ。……あんがとなぁ、おめぇさん」 中井出 「いやいや。で、この忍者刀は本当にもらっていいのか?」 じいさん「ああ。おめぇさんになら惜しくはねぇ。大事に使ってやってくんな。      ああそうだ、おめぇさんの武器もタダで鍛えてやっから。      入用になったらいつでも言ってくんな。      注文が入ってるから。時間の許す限りしか鍛えてやれねぇがな」 中井出 「押忍」 ぺっぺけぺー♪《クエストを達成しました》 中井出(……はふぅ) これでよし、と。 あとは─── 中井出 「そうだじいさん。この杖、鍛えられそうか?」 ふと思い出し、バックパックから古びた杖を取り出して見せてみる。 ナギーが関所から持ち出してきたものだ。 じいさん「……?なんだいこりゃ、サビついててボロボロじゃねぇかい。      こりゃだめだ、手がつけられねぇ」 中井出 「む……そ、そうか」 やっぱただのボロっちぃ杖……か。 でも捨てるのもなんだし、一応持っとくか。 中井出 「じゃあ早速だけど武器鍛えてもらっていいか?」 じいさん「おう、じゃあ武器をそこに置いといてくんな。      鍛えてる間はその王国剣使ってて構わねぇからよ」 中井出 「ほいほいっと。じゃ、ここに置いとくな」 ガシャンッ───《双剣ルドルグニスを預けました》 中井出 「で、武器は王国剣、と」 さてと。 鍛え終えるまで町の中で暇潰しでも─── 町人1「おお!出てきたぞ!」 町人2「あいつがそうなのか!」 中井出「……へ?」 と、鍛冶屋を出た途端に、集まっていた町人から注目を浴びていた。 ……な、何事? 町人3「すげぇよなぁ!」 町人4「ああっ!あれだけの魔物の軍勢を一人で!」 町人5「ああすげぇ!!」 あ、や……も、もしかしてクエストこなしたお蔭で知名度が上がったとか……? いや……普通に照れるな、こういうの。 よし、ここは一つ手でも振って応えて─── 町人6「なんてったって、     自分がエロマニアだって理由だけで魔物たちを追い返したんだもんな!!」  ドゴシャアッ!! 町人7「ああっ!エロマニアさんがコケたぞ!」 町人8「何事だ!?町の英雄・エロマニアさんが!!」 町人9「町の救世主、エロマニアさんが!!」 エッ……エロマニアって……!! 中井出「こっ……殊戸瀬ぇえええええっ!!!てめぇええーーーーーーっ!!!     どうせ貴様だろ!!出て来いコノヤロォーーーーーーッ!!!」 町人1「急に叫び出したぞ!?どうしたんだいったい!」 町人2「きっとああやってエロパワーを集めてるんだ!なんてったってエロマニアだ!」 町人3「なるほど!!」 中井出「なるほど!じゃねぇえええーーーーーっ!!!」 町人4「なんでもエロマニヨン人という種族らしいぜ……!しかも最後の生き残り!」 町人5「すげぇよなぁ……エロマニヨン人はエロパワーを力に変えるらしい」 中井出「なにそれ!?初耳だよそんなの!いつのまにそんな設定が生まれたの!?」 町人6「魔物の長は彼がエロマニヨン人の最後の生き残りと聞いた途端、     戦意を無くしたと聞いたぞ!!」 町人7「種族の名を聞いただけで魔物のボスが怯えるとは……!すげぇ!!」 中井出「ち、違うよ!?誰なのそんなウソ言ったの!情報源を教えなさい今すぐ!!」 町人8「エロマニアばんざぁーーーーーい!!」 町人9「エロマニヨン人ばんざぁーーーーーーい!!!」 町人4「エロマニアさまばんざぁーーーーい!!」 声  「……エッロマッニア、エッロマッニア」 町人1「エッロマッニア!!エッロマッニア!!」 町人 『エッロマッニア!!エッロマッニア!!』 中井出「ちょっ……誰今こんなエール囁いたの!!前に出て来い!     どうせ殊戸瀬だろキサマ!!ちがっ……俺はエロマニアじゃないよ!?     え!?“またまたご謙遜を”!?しないよ謙遜なんて!!     そんな呼ばれ方されてなんで謙遜なんかしなきゃなんないの!!」 町人 『エッロマッニア!!エッロマッニア!!』 中井出「だからやめてって言ってるでしょ!なんでどんどん声を張り上げてくの!?     そこ!一緒になって踊らない!!───喜んでないよ!!照れ隠しでもない!!     やめっ……やめろぉおーーーーーーーーーっ!!!!!」 ───……その日。 僕はサンドランドノットマットという町で、 エロマニアという英雄としての知名度を欲しいままにした。 すぐにでも旅立とうとした俺を町の人々は無理矢理引きとめ、 それでも逃げ出そうとした俺にどこからか現れた殊戸瀬二等がなにかを飲ませ、 俺は力を込めることが出来なくなったのちに、 まるでブタ箱に閉じ込められるかの如く宿屋の一室に叩き込まれた。 鍛冶が終わるまでは旅立てないでしょ、 というその場しのぎなんだか正当な理由なんだか イマイチ思考が追いつかない理由とともに、俺は再びここで夜を明かすこととなった。 ただ以前と違うのは……俺が泊まった宿の宿帳には俺の名前が無く、 代わりに“エロマニア様”と書かれていたという事実のみ……。 俺は生まれてきて何度目かの本気の涙で、宿の枕を濡らしたのだった。 Next Menu back