───冒険の書50/穏やかで賑やかな一時───
【ケース198:藍田亮/この回ではメルニクス語フォントが使用されているぜ!】 ───……コンコン。 藍田 「提督ー?おーい、提督ー」 コンンコンコン。 …………し〜〜〜ん…… 藍田 「……ありゃあ……?居ない筈はないんだけどな……。提督、提督ー?朝だぞー」 コンコンコン。 ……し〜〜ん…… 藍田 「───……エロマニア」《ボソリ》 ………………しくしくしくしくしくしく…… 藍田 「うわ……居るな」 まさか泣き声で返事するとは思わなかったが、やっぱりちゃんと居る。 藍田 「まあ町の人全員にエロマニアって平気で言われるんじゃあ、     引き篭もりたくもなるよな……」 町をちょっとでも歩けば“おはようエロマニアさーん!”とか、 “こんにちはエロマニアさーん!”とか“こんばんわエロマニアさーん!”とか言われ、 慕われるよりむしろ貶されてるんじゃないかとさえ思うくらいだ。 でも人々の目は本当に尊敬と感謝の眼差しのソレなのが悩みのタネでもあるわけで。 いっそのこと嫌ってくれたほうが、まだ提督も暴走できたんだろうに。 ……不憫な。 藍田 「えっと……提督ー?メシどうするー?」 …………返事が無い。 ただ、静かに泣き声だけが耳に届いた。 怪談じゃあるまいし、すすり泣く声は勘弁してもらいたいところだが。 こりゃ……しばらくほっといてやったほうがよさそうだな。 しゃーない、下降りてメシ食うか。 ───……。 ……。 メシを食い終えた俺は、結局提督を置いて旅に出るわけにもいかず、 まだサンドランドノットマットに居た。 なにをするわけでもないが……気晴らし程度に散歩をしている次第である。 まあ……戦闘ばかりの最近を思えばこんなのも悪くないと思えるわけであり─── 案外これはこれでいい気分転換にはなっているのだろう。 道具屋「あ、そこのおにーさん?今ならエーテルが安いよー?」 藍田 「はは、結構ッス」 提督の仲間ってことで、俺達の知名度もそれなりだ。 さすがに名前が知れ渡るとかそんな大それた知名度ではないが、 あの提督を見たあとじゃあそれでいいと本気で思えるから不思議なものだ。 英雄っていうのは羨望や憧れの対象のみってわけでもないのだ。 丘野 「いいでござるかー?それっ!生分身!」 子供1「おおー!」 子供2「すっげぇー!にーちゃんすげー!!」 丘野A「はっはっはっは、照れるでござるよー!」 オアシスの噴水広場では丘野のやつが子供相手にワイワイやっていた。 その傍らに殊戸瀬が居るのは……もう見慣れた光景だろう。 一方で言う俺の夏子は聖族を仲間にする方法を知りたいとかで、 サンドランドノットマットの物知りじいさんのところに行ってて、俺の傍には居ない。 綾瀬ももう一度アイテムを見るとかで町の中を歩き回ると言ったきりだ。 藍田 「……はぁ」 疲れからの溜め息というわけでもないが、吐くものを吐いてから空を見上げた。 そこにあるものは真っ青な空と真っ白な雲だ。 滅多に雨の降らないこの砂漠地帯では、雲が見れることも結構珍しいんだとか。 風に流される以外ではここまで届く雲なんて無いのだろう。 ナギー『ほほう……石取りゲームとな?』 シード『いいぞ、まず僕にやらせろ』 青年 「はいはいっと。取れる石の数は一回につき三個まで。     順番に石を取っていって、最後の一個を相手に掴ませたほうが勝ちだ。     じゃ、そっちからどうぞ」 シード『フフッ……これくらいの遊戯、僕の手にかかれば……!』 ああ、こっちではシードとナギ助が石取りゲームをしていた。 積み上げられた石の前でうんうん唸る姿は見る人が見れば微笑ましいんだろうが、 誰があの二人を高位精霊と魔王だと信じよう。 青年 「はい、僕の勝ちね」 シード『なぁぅっ!?こ、こんな……まさか!な、なにかの間違いだ!』 ナギー『なさけないのう。では小僧、次はわしの番じゃ』 青年 「小僧って……まあ、いいけど」 意気込みというか勢いというか傲慢というか豪気というか。 ともかく威勢だけはいいナギ助があっという間に負ける姿を傍観しつつ、 俺は再び適当にぶらつくことにした。 藍田 「はぁ……それにしてもいい天───」  ゴォオオオオオオゥウウウンッ!!!! 藍田 「気……ぃいいいいいっ!!!?」 再び空を見上げ、静かに笑みをこぼしながら息を吐いたその時である。 ここより遙か上空の空に影を見たのは。 それは……飛竜!?と……人、だよな。 まさか殊戸瀬!?……あ、て……殊戸瀬のエルはまだあそこまで大きくないよな。 そもそも今は結構な大きさになった時に、 エル自身が吐き出した竜珠の中に便利に収納されてるわけだし。 つーことはあれは……?  コォオッ───シュタッ! ???「………」 藍田 「っと……」 空中から俺の目の前に着地したそいつは、まず俺に小さく頭を下げた。 どうやら驚かせてすまない、の意味らしい。 町人1「お、おい……あいつ!い、いや!あのお方は……!」 町人2「あ、ああ……間違いねぇよ!レオン様だ……っ!!」 さて……本日晴天。 雨量は全く無さそうだが、時折騎士が降るでしょう。 と、そんなこたぁ捨てといてだ。 レオン「すまない。私はセントール王国が騎士団長、レオン=アルバレート。     我がセントールとエトノワールの同盟事情について、     とある獣人を探している者だ」 藍田 「ほうほう。それで?っと、俺は藍田亮な」 レオン「藍田か。執事のようだが───」 藍田 「主人はどこだ?ってのはナシな。俺は俺で楽しんで冒険してる」 レオン「そうか。訊きたいことというのは他でもない、獣人についてなんだが。     無茶な格闘を好む獣人を知らないか?」 藍田 「獣人の中からそれを見分けろっていうのか……?───って、ああ」 そういや一体だけ居たっけ、無茶な格闘を好む諸刃獣人が。 藍田 「多分、2、3度戦ってる。そいつが同盟となんの関係があるんだ?」 レオン「声を高くしては言えないが……同盟のために王が綴った書状が、     その獣人に奪われたのだ。」 藍田 「ほうほう……で、アンタはそれを探している途中だと」 レオン「察しが早くて助かる。     それで───藍田。お前がその獣人を見たのはどれほど前だ?」 藍田 「あー、すまん。もう結構経ってる。同盟の話が耳に届く前の話だ」 レオン「……そうか」 レオンは口惜しそうに頭を垂れるが、 すぐに顔を上げて“邪魔をした”と言って歩いていってしまった。 恐らく町の人にも話を聞こうと思ってるんだろう。 藍田 (……まあ、ヒマだしな) それに付き合うのもいいな、と───俺はレオンの(もと)
へと歩いた。 ───……。 ……。 藍田 「こっちはだめだー。獣人なんてここしばらく見てないんだとさ」 レオン「こちら側もダメだ。ここらには獣人の手が伸びていないらしい」 そうしてレオンに協力することしばらく。 サンドランドノットマットの意外な広さに汗を拭いつつも、俺達は歩き出す。 娯楽もあったもんじゃないが、暇潰しにはなっている。 それで納得しておこう。 藍田 「水でも飲むか」 レオン「いや、私は───」 藍田 「だめだ飲め」 レオン「……今さらだが、お前は随分と奔放なんだな、藍田」 藍田 「……?こんなんで奔放なんて言ってたら、原中の猛者なんてやってられないぞ?」 レオン「ハラチュー?なんだそれは」 酒場に行き、水を頼んで少しずつ飲む。 レオンは酒場に入ることすら躊躇していたが、そこのところは強引に連れていった。 レオン「騎士が任務中に酒場に入るなど……」 藍田 「はぁ、大方予想はしてたけど、ホント頭固いんだな。     じゃあお前はその任務ってのが酒場内での喧嘩だったら、     止める以前に入ることもしないってのか」 レオン「む……それは極論だぞ藍田」 藍田 「いいから飲めって。     この暑い中、空高くを飛んで来たんだろ?そんなゴツイ鎧を着て」 レオン「……そうだな。ではいただく。君に感謝を」 藍田 「いいよいいよ、堅苦しいのは嫌いなんだ。水を飲んでる時くらい砕けてみろって」 レオン「そうは言ってられない。私は王国騎士団団長として、架せられた責任がある」 藍田 「へー……俺にゃあ理解出来ない部類の誇りってやつか」 レオン「理解出来ないことはないだろう、お前も男だ。     自分に架している責任くらいあるだろう」 藍田 「俺にあるのは“惚れた女を守り通す”ことと“仲間を大切にする”ことだけだよ。     そういう、万人から責任を追求されるのには正直興味が無い」 レオン「いや、それで十分だ。誰かを大切に思うことは、どうあれ良い事だぞ」 それはよく解ってる。 と……そういや提督、もう復活したかな。 ……無理だな、うん。 でも鍛冶屋に武器を預けたままらしいし……代わりに取ってきてやるか? 藍田 「あ……そういやまだ鍛冶屋に行ってなかった。     ついでだ、獣人を見なかったか聞いてくるよ」 レオン「ついで?」 藍田 「うちの提督が武器を預けてるんだ。それを取りに行くついで」 レオン「提督か……強いのか?」 藍田 「強いっつーか面白い」 レオン「……?」 藍田 「はは、まあ信頼はしてるよ。提督はいいヤツだ。     知名度で言ったら、ここでなら多分お前より有名だと思う」 レオン「そうか。是非一度会ってみたいな」 藍田 「やめとけやめとけ。     今部屋に閉じこもって泣いてるから、ヘタに刺激すると暴走する」 レオン「な、泣いているのか。男子たる者が」 藍田 「あー、お前の騎士道がどんなものかは知らんが、     男に“泣くな”って言うのは差別だろ。     むしろああいう提督だからこそ、一緒に居て飽きないんだし」 や……むしろあいつらから見た俺もそんな感じなんだろう。 他のやつらにしたってそうだ。 原中はそういった意味で結束が固い。 ……ふざけて裏切ることなど腐るほどあるが。 代表例として“トルネコさん”とか。 “誰だって自分が一番可愛いのさ。あんただってそうだろ?”は名言中の名言だ。 俺はあの時ほどトルネコさんが輝いて見えた瞬間は無い。 藍田 「成長しても適度にガキで居たいんだよ、俺達は。     人間、童心を無くしちまったら人生終わり。俺はそう思ってるよ」 レオン「なるほど。一理あるな」 他愛ない言葉を交わしながら歩く。 鍛冶屋まではそう遠くない。 こうしてるだけですぐに───ああ、もう着いた。 レオン「ここか?随分と賑わっているな」 藍田 「はは……これも提督効果ってやつ?」 立てかけられた看板に、 “どれだけ頑張ってもエロパワーは身に付きません”と書かれているのには、 正直涙を誘われたが。 藍田  「邪魔するぞー」 じいさん「あん?悪ぃな、こっちは順番待ちで───っと、なんだい。      エロマニアの仲間の───」 藍田  「エロマニアの仲間って認識には若干抵抗を感じなくもないが……ああ。      その、提督の武器を受け取りに来たんだけど」 じいさん「おう、それならほれ、そこにあるぜ」 アゴで促された場所を見ると、確かにテーブルの上に綺麗な双剣が置かれていた。 窓から差し込む日差しに、キラリと輝く刀身が男心を擽る。 レオン 「それが……。素晴らしいな、丹念に磨きこまれている」 じいさん「ああ、そりゃ俺の腕だけじゃあねぇぜ?持ち主が武器を大切に扱ってるからだ。      久しぶりに武器を大切に扱う野郎と会えて俺も嬉しいわい」 レオン 「すまない、藍田。少し見せてもらってもいいだろうか」 藍田  「ああ」 手に取り、それをレオンに預けると俺はじいさんの方を見た。 新たな弟子とともに灼色の鉄を鍛つ姿は、いかにもっていう喜びに満ちていた。 レオン 「……軽いな。それに安定性も高い。      振るえば鎌鼬と炎が出る……こんなものを装備しているのか、藍田の仲間は」 じいさん「おお。エロマニアの野郎は本当にすげぇんだぜ?      俺っちが鍛った一番弱い王国剣で、ここら一帯の魔物を退けちまったのさ」 レオン 「これを使わずにか。それは凄いな。一度手合わせをしてみたいくらいだ」 藍田  「やめといた方がいいぞー。提督、バトルになると本気で好き勝手やるから」 もちろん俺もだが。 でもソードマスターなのに、 ジャイアントスウィングだとかパチキだとかを突如として行使するのは提督くらいだろう。 ファイトスタイルが自由っていうのは利点だとは思うけど。 藍田 「じゃ、それ返してもらっていいか?」 レオン「ああ、すまない」 チャキリとルドルグニスを受け取る。 これで目的の一つは達成したわけだから───次はアレだな。 藍田  「なぁじいさん。ここらで諸刃的格闘好きの獣人を見なかったか?」 じいさん「獣人……?いや、見てないな。そいつがどうかしたのかい」 藍田  「ああ、こっちの……レオンが探してるらしいんだ」 じいさん「レオン……レオンってもしや、あのレオン=アルバレートかい」 レオン 「そういう貴方はランダークの鍛冶をやっていた老人だな」 じいさん「へぇ、こいつぁ驚いた。こんな世界の外れにある町になんの用だい」 藍田  「そのことについてならもう話したが……」 じいさん「あん?……おお、獣人のことについてか。      生憎だがここらには一切獣人は住んでやしねぇよ。      お前さんが探している獣人がどんなヤツかは知らねぇが、      余所をあたったほうがいい」 レオン 「───そうか。邪魔をした」 深く追求する気は元から無かったのだろう。 レオンはそれだけ告げると頭を下げ、鍛冶屋をあとにした。 ……ま、こんなもんか。 欲しい情報が簡単に手に入れば苦労はしない。 藍田 (……じゃ、俺も帰るか) 頭をコリコリと掻きつつ、俺は帰路へ─── ナギー『まったく!訳が解らんのじゃ!     あれはきっと策略じゃ!なにかの巨大な陰謀じゃ!』 シード『まったくだ!僕の手でも打ち勝てないとは!なにが石取りだ!』 ……ありゃ。ナギ助とシードじゃないか。 石取りゲーム、上手くいかなかったのか? 藍田 「おーいナギ助ー」 ナギー『うむ?おお、藍田ではないか。どうしたのじゃー、こんなところで』 藍田 「ああ、提督の武器を受け取りにな。ほら」 シード『父上の武器……確かに』 藍田 「それと───っと、レオン?てっきり帰ったと思ってた」 レオン「お前を待っていた。一度、お前の言う提督に会ってみたい」 藍田 「提督にか?そりゃ構わんけど……」 ナギー『ヒロミツに会うのか?腐っとるじゃろ、平気なのか?』 藍田 「平気じゃないけど面白いから引き受けた」 まさに外道。 レオン「……?待て藍田。その子供はお前の知り合いなのか?」 藍田 「知り合いじゃなくて仲間だが。どうかしたか?」 レオン「いや……しかしまさか。     その子は攫われたと噂されているドリアード……じゃないのか?」 ナギー『いかにもわしはドリアードじゃが。     なんじゃ、わしは攫われたことになっておるのか?』 レオン「───藍田、これはどういうことだ。もしやドリアードを攫ったのは───」 ……ややこしくも雲行きが危うくなってきたな。 けどここは正直に言っておこう。 藍田 「攫ったのは提督だよ。もちろん俺も加担した」 レオン「───」 おお、目つきが変わった。 しかも瞬時に槍を構えると、矛先を俺に向けてきた。 レオン「然の精霊を連れ出すことがどれほど危ういことか、お前は解っていてやったのか」 藍田 「……はぁ〜〜〜ぁぁあ……」 レオン「……?なんだ、その溜め息は」 藍田 「お前はそういうことを言わないヤツだと思ってたんだけどな。     どうやら俺の目は狂いまくってたらしい」 レオン「なに?それはどういうことだ」 藍田 「役目だからだとか使命だから責任だからだとか、     そんな理由で子供をあんな場所に縛っておくのが、     お前の言う“騎士道”ってやつかって言ってんだよ。     ああ、その返事を聞く前に言っておこうか。     俺はそれがどれだけ危ういかを知りながら加担した。それがどうしたコノヤロー」 レオン「お前……」 藍田 「槍、納めてくれないか?じゃないと本気でお前のこと呆れるぞコラ」 ナギー『話をしたいのか脅したいのかどっちじゃ?』 藍田 「どっちもだ。それが原中クオリティ。常識だけでは語れない」 レオン「───だめだな、槍は引け───」 藍田 「“腹肉(フランシェ)シュートォッ”!!」  ガゴォンッ!! レオン「っ───!?」 槍を突きつけていたレオンの腹部分の鎧を蹴り、間合いを空けた。 はぁ……まったくこれだからコチコチのクソ石頭野郎はっ……!! 藍田 「あんまり勝手なこと言うなよクソヤロウ。オロすぞコラ」 レオン「藍田、貴様───!」 藍田 「立派な騎士道、大いに結構。けどそんなものは仲間内だけでやってくれや。     ナギ助はな、自分の意思で、自分の口で俺達に付いていきたいって言ったんだ。     世界の在り方なんざ知らねぇ。     そうありたいと、涙まで流して願った子供の願いを叶えないでなにが男だ!!」 ナギー『藍田……おぬし……』 レオン「……王国特注の鎧がヘコんだ……か。恐ろしい力だ。     むき出しの腹を蹴られたらと思うとゾッとする」 藍田 「あーそうかい。それで?     納得するのか、それともまだウダウダぬかすのか、どっちだ」 レオン「───……納得しよう。お前の言うことはもっともだ、藍田。     ドリアード自身が願ったのなら、当然そこには責任への葛藤もあったのだろう」 藍田 「お……」 よかった。やっぱりこいつは根っからの捻じ曲がり精神は持ってない。 槍を納めるレオンを見て俺も構えを解いて息を吐いた。 レオン「だが一つ訊かせてほしい。大樹の関所からは攫われたという情報だけを聞いた。     犯人が学級王ヒロミツという名だという情報と、     暴れるだけ暴れてドリアードを攫ったという情報を聞いた。     それはいったいどういうことなんだ?」 藍田 「あぁ……」 そういえばそこんところのフォローは一切してなかったんだっけ。 いろんな町に行っても捕まらなかったのがむしろ奇跡だ。 藍田 「そりゃ森人が勝手に言ったことだよ。     俺達ゃナギ助の気持ちを無視した行動で攫った覚えなんて無い」 ナギー『その通りなのじゃ。わしは自ら望んでヒロミツたちと一緒になったのじゃ。     そのことについてあれよこれよと言われる覚えはないのじゃ』 レオン「……だが、世界の自然はどうする?死人の森がある限り、自然の侵食は───」 シード『その点ならば心配は要らない。     僕が死人の森の侵食を抑えている限りは自然に害などないからな』 レオン「……?この子供は?」 ハタ、と俺の顔を見て問うレオンさん。 俺は大声をあげるわけにもいかず、レオンの傍に寄って耳にボソリと呟いた。 藍田 (魔王ナーヴェルブラングの子供だ) レオン「なっ!?」 藍田 (馬鹿っ!声が大きいって!!) レオン(だ、だが!魔王ナーヴェルブラングといったら、     旧時代のこの世界における最大最悪の魔王だぞ!その子供が居たなどと……!!) 藍田 (今は提督のことを本当の父親だって思ってるからいいんだよ……!) レオン(なに!?だがナーヴェルブラング自身が居る限りは───) 藍田 (あいつなら俺達が倒したから安心しろ。本当に害は無いから) レオン(倒した……魔王をか!) 藍田 (それがさ、長い長い封印生活の所為でとんでもなく弱くなってたからさ。     口ほどにも無いって言葉はあいつにこそ相応しいんだと思う) レオン(そ、そうか……そんな存在を今まで恐れていたとなると泣きたくなるな……) 藍田 (そこんところの心中は察するよ……) あんな漫★画太郎の描いたボスっぽいヤツにかつて恐怖してたなんて、 過去のヤツを知る人が見たら絶対に泣く。 レオン「あ、ああ……うん。大体の事情は解った。     先ほどの無礼を詫びる。すまなかった、藍田《ごすっ!》くわっ!?」 藍田 「あのな。カタッ苦しいのは嫌いだって言ったばっかだろ。     お前が失礼なことを言って、俺がそれを蹴った。それでチャラでいいよもう」 ノリの悪いやっちゃのう。 真面目一本では肩が凝るってもんだろう。 そうは思うものの、こいつがふざけてるイメージは全然完成しないのは何故だろう。 レオン「そうか。それならば問題は解決だ。お前の言う提督とやらに会わせてくれ」 藍田 「………」 何気に提督のこと、物凄く気にしてないかこいつ。 つーか一国の騎士団長殿が気にするほどの男でもないんだけどな、提督は。 普通だし、むしろ提督はお偉い方は嫌いだろうし。 藍田 「そりゃ構わないけど、その前に石取りゲームやってからな」 レオン「石取り……?」 ナギー『正気かおぬし!!』 シード『あんなものはインチキだ!     僕にも出来なかったことがお前なんかに出来るものか!』 藍田 「うわー、すげぇ言われかた」 雪辱を晴らしてやろうってのにこの言い方はなんだろうな、神様よ。 ───……。 ……。 と、そんなわけで石取りゲームのあんちゃんの前に俺達は来ていた。 レオン「……これが、石取りゲームというものか?」 藍田 「ああ」 ナギー『おぬし、存外物事を知らぬのだな』 シード『器が知れるぞ、騎士団長』 ナギー『真似するでないシード』 周りが必要以上に賑やかだが……まあなんとかなるだろう。 この手のゲームには原中として絶対の自信がある。 青年 「いらっしゃい。一回10$だけど、やってくかい?」 藍田 「ああ。ルールは知ってるからそのまま始めてくれていい」 青年 「そうかい?じゃあツボの中に入っている数だけでも。     このツボの中には37個の石が入っているよ。じゃあ順番だけど───」 藍田 「後でやらせてもらっていいか?」 青年 「解った。それじゃあ僕は3個取るよ」 藍田 「よし。じゃあ俺は1個」 青年 「続いて2個」 藍田 「俺も2個」 ───……。 ……。 藍田 「じゃ、3個、と」 青年 「うぐっ……!」 藍田 「残りの1個はお前のだな。俺の勝ちだ」 ナギー『なにぃいいいっ!!?ど、どうやったのじゃ藍田!わしにだけ教えるのじゃー!』 シード『いいや僕に教えろ!僕にだけ!!』 藍田 「いやだぁ」 二人 (健に似てる……っ) 青年 「うぅ……それじゃあこれが賞品の“精霊石のカケラ”……」 でってーで・でーてーててーん♪《精霊石のカケラを手に入れた!》 レオン「……見事だな、藍田。まさか一度で勝ってしまうとは」 藍田 「ゲームでは滅多なことじゃ負けないのが原中の自信の一部だ。     それに……この手のゲームの法則は頭に染み付いてるし」 ナギー『おぉお!よく解らんがすごいのじゃー!     するとおぬしはハラチューの中で一番げーむが上手いのじゃな!?』 藍田 「いやぁ……ゲームでは殊戸瀬が一番だ。一部を抜いて」 シード『一部?なんだそれは』 藍田 「……パイロットウィングス」 あのゲームでアイツに勝てるヤツなど絶対に居ないと断言できる。 殊戸瀬でさえボロ負けしたくらいだ。 それ以降、アイツ……弦月は、 原中の中では“パイロットウィングスマスター”と呼ばれた時期があったのだ。 計算された落下地点、パラシュートを使わずに頭から100点へと落ちる雄々しさ、 どれを切っても最高の腕前だった。 ほぼ誰も知らないことだが、 パイロットウィングス最短総合クリア時間世界記録保持者でもあるのだ。 実はギネスブックにも載っている。 が、ゲームがゲームなだけにちっこく、誰にも知られることなく生きている。 未だその記録は破られてないんだからある意味伝説である。 いったい普段からなにやってるんだお前はー、 などとツッコミを入れたくなる気分ではあるが、 あいつの家のゲームがパイロットウィングスしかないことからして 全ての事情は飲み込めるわけである。 いったい世界の何処を探してみればゲームを一本しか持っていない男が居るのだろうか。 もしそういう知り合いが居るのなら是非教えてほしい。 藍田 「精霊石のカケラか……どんなモノなんだ?」 レオン「どういった属性がついているかは知らないが、     それは精霊の力を含んだ石の欠片だ。武器に融合するなり、     欠片を集めるか原石を手に入れ、武器そのものとして加工することも可能だ。     ようするに武器になにかしらの属性を含ませることが出来る希少品だ」 藍田 「へーぇえ……」 精霊石って……空界で晦が錬成してたアレか? つーことは晦ってば今、創造が出来るとしたらとんでもないことに───
【Side───モミー】 ルナ 「んー……ねぇゆーすけ?お金無いなら創造して売ったらどうかな」 悠介 「創造物は時間が経つと消えちまうんだよ。     そんなことやったら俺ゃ指名手配になるわ」 ルナ 「でもさ、このままだと……」 悠介 「解ってる、皆まで言うな……」 あぁ……金が無いって辛いな……。 時の大地からノースノーランドに戻るための船代がねぇ……。 時の回廊で無駄な買い物しすぎた……(ルナが)。 帰りの船代のことをスコーンと忘れるとは……嗚呼。 もうこれで三日目の無人島生活……。 神様……俺は本当に馬鹿なんでしょうか……。 【Side───End】
さて……そんなこんなでレオンを提督の袂へと案内するの巻は続行されているわけであり、 俺としては今の提督に人を会わせるのはどうかと思うのだが…… どうしてもと言って聞かない(と思う)レオンをこのまま案内することとなった。独断で。 面白いだろうという俺の意見が圧倒的に尊重されている原中の猛者としての葛藤の中、 提督の犠牲はきっと貴いものになるだろうと勝手に自己解決をしている。 などと訳も解らずとりあえず思考を回転させてはみているが、 やっぱりやめようという答えはまるで一切現れなかった俺を、 俺は原中の猛者として褒めてやりたかった。 さて、それではここが提督の部屋の前となります。 恐らく今の提督なら噛み付きますので、くれぐれも妙な刺激はなさらぬよう。 じゃ、まずは無難にノックから。 ……コンコン。 藍田 「中井出ー、お前に客人が来てるぞー」 ……しーん。 藍田 「……提督ー?客人でありますぞー」 ……しーん。 藍田 「………」 レオン「居ないの……か?」 藍田 「いや、絶対に居る。     このドアの隙間から漏れる鬱オーラが間違い無く滞在中の証!     提督ー!?提督!提督ー!!出て来い提督コノヤロー!!居留守かぁーーっ!?」 ドンドカドンドカゴスガスドドンッ!!! レオン「……もうやめろ、ドアが壊れる」 藍田 「ぬう……だったら普通に」 ヂャココッ!……って、やっぱ鍵かかってら。 レオン「どうする?本当に居ないのかもしれないぞ」 藍田 「ワー、鍵空イテタヨー」 ベキャアッ!!メキョメキョッ!! 藍田 「さあ入ろう」 レオン「……待て。今、奇妙な炸裂音が……」 シード『気の所為だ』 ナギー『気の所為じゃな』 藍田 「ああ気の所為だとも」 レオン「………」 捻じ切れたドアノブをゴシャアと捨てて、中へとずんずん侵入してゆく。 もちろん入っていいですかの一言もなしだ。 さぁて、提督は……っと。 藍田 「お、居た居た。提督ー?客が来てるぞー」 中井出「UGAREBISARE……」 藍田 「ヒィッ!?メルニクス語喋ってる!!」 体育座りしながら、 まるでアニメの軍曹さんが口からゲロゲロという文字を吐くかの如く……。 藍田 「お、おーい……提督ー?」 中井出「aaondoresama……」 藍田 「提督ッ!!」 中井出「───!ギャッ……ギャーーーーーーッ!!!」 藍田 「どわっと!?て、提督!?」 中井出「ギャーーーーーーーッ!!!ギャーーーーーーーーーーッ!!!!」 ……ドタッ。 藍田 「───死んだ!!」 ナギー『なんじゃと!?』 藍田 「いや冗談《ぼごすっ!》いてぇ!!」 ナギー『言っていい冗談を選べ!このうつけが!!』 殴られてしまった。 それも、物凄い速さで。 けどなぁ、なにもこんな時に漂流教室の真似しなくてもいいのに。 藍田 「提督ー?客だけど」 中井出「う、うそだ!どうせ僕をエロマニアだと嘲笑いに来たのだ!!     僕は騙されないぞ!!外になんか出るもんか!僕はここで生涯を終えるのだ!!」 そりゃまた盛大な人生プランだ。 風呂もトイレもついてないこの部屋でどうやって過ごす気なんだ、提督よ。 藍田 「あぁ……すまんレオン。提督のやつ、やっぱり錯乱中で」 中井出「僕は正常だ!キミがおかしいのだ!!」 藍田 「真顔でおかしいとか言うなよ……ほら、提督の武器」 中井出「あっ!それは私のです!武器は私のものだ!返してくださいお願いします!!」 レオン「よく……解らん男だな」 ああ、この顔は俺にもよく解る。 思いっきり呆れてる顔だ。 藍田 「提督ぅ……頼むからシャキっとしてくれよ。     それはそれで面白いっていやぁ面白いけど」 中井出「ギャーーーーーーーッ!!!!ギャッ!!!ギャーーーーーーーッ!!!」 藍田 「………」 少し近づいただけでこれだ。 叩けば古いテレビのように直ったりするだろうか。 藍田 「岩山両斬破ァーーーーッ!!!あたぁっ!!」  ドゴシュゥンッ!!! 中井出「ギャアーーーーーーッ!!!!!」 ───どしゃあ……。 藍田 「……あれ?」 頭に手刀を叩き込んでやったら、提督が倒れた。 かなり、抵抗もなくドシャアと……つーかグシャアって感じで。 藍田 「あ゙っ……そういや俺、レオンに蹴り入れる時にSTRをMAXにっ……!」 い、いやっ!しかしだっ! 夏子が近くに居ないから、そんなに強いダメージはっ……! 夏子 「さっきからなんの騒ぎ?」 藍田 「ギャア夏子ォーーーーーーッ!!?」 夏子 「わっ!?ど、どうしたの亮……!?」 藍田 「あっ……いやっ……い、いいいいつからそこにっ……!?」 夏子 「え?いつからって……ずっと隣の部屋に居たけど。     あ、物知りお爺さんに会ってみたんだけど、     さすがに欲しかった情報は知らなくて……亮?どうしたの?亮」 藍田 「…………」 嗚呼……神様……。 俺は頭頂部が奇妙にヘコんだままグビグビと泡を吹いて倒れている提督を見下ろしつつ、 ただ静かに手を合わせてなんにもない天井を見上げるのだった。 Next Menu back