───冒険の書54/穏やかな日常の過ごし方───
【ケース204:中井出博光(再)/のんびり光合成しながら聞いてくれアロエリーナ】 らーらがららら〜んらら〜♪ 神父 「おお旅人よ!死んでしまうとは情けない!!」 中井出「情けないで済ませられる相手じゃねぇよ!文句あるなら戦ってみろコノヤロー!」 ゼプシオンにコロがされた俺は案の定教会送りにされた。 生きてるだけめっけもんだとはよく言ったものだが、 正直全身の骨が砕ける感触を体感する機会はあれっきりにしていただきたい。 もちろん、だからといって戦いに恐怖するようなことはなく─── むしろさらに冒険を素晴らしく思えた自分が正直信じられなかったりもする。 とまあそんなわけで神父への罵倒もそこそこに闘技場まで戻ることにした。 ───……。 そんなわけで闘技場───に辿り着いた途端、 俺はゾンビだの不死鳥だのと言われるハメになり、 やはり自分の人生について少し考えることとなった。 審判 「ここここれは驚きだぁーーーっ!!     壁に衝突して死んだと思われていたチーム原中のひとりが!     なんと生きていたぁーーーーーっ!!」 中井出「生きてちゃ悪いみたいな言い方やめようよ!こっちは本気で死ぬかと思ったよ!」 審判 「まあまあまあまあ。さて、既にイルザーグ王は退場してしまったが、     ここに新たなるランククィーンの誕生が決定したわけだぁっ!!     皆様ァッ!!この小さな戦士たちに惜しみない拍手をぉっ!!」 観客 『ドワァーーーーッ!!!!ガスガスガスガスガスガス!!!! 藍田 「うぅわうるせぇっ!!なんだぁっ!?」 丘野 「ウググ……!!なにごと……!?」 中井出「拍手の音までうるせーーっ!!しかも音がナンディさん風だし!!」 あまりに五月蝿い拍手の嵐に、倒れていた藍田と丘野くんが起き上がる。 ちなみにナンディさんとは、 女神転生シリーズに出てくる“コードブレイカー”のおっさんである。 拍手の音が“ガスガスガスガスガス”という音であることで有名である。 審判 「さぁてそれでは!クィーンまで打倒したことへの賞金と賞品、     そして久しぶりにイルザーグ王の戦いを見れたことへの     観客全員からの感謝を込めた$が贈られます!!」 ガシャガシャチンッ♪ 《賞金200000$、緋緋色金、女王の勲章、感謝賞金50000$を受け取った!!》 中井出「ウオオ!!?」 藍田 「いぢぢっ……い、いいのかこんなに!」 丘野 「ていうか手当てくらいしてほしいでござる!     さっき斬られた腹からドジャーと血が……血が!!」 審判 「おっとこれは失礼!では救護班!」 シャラララァン……《HP、TPが完全回復しました》 丘野 「ワムウ!《ビシィッ!!》」 中井出「おお!血が一瞬にして止まり、傷口が塞がった!!」 藍田 「いろいろツッコミどころがあるがそこんところは無視しよう!!」 審判 「それでは皆様、最後にチーム原中に惜しみない拍手を!!」 総員 『やめろぉおーーーーーーっ!!!!ガスガスガスガスガス!!! 観客 『ウォオーーーーム!!!!』 総員 『《ズキィーーーン!!!》ウギャア耳痛ェーーーッ!!』 ……こうして我らの突然の闘技場バトルは、拍手喝采のうちに幕を閉じたのだった。 ───……。 ……。 それからどうしたかといえば、ひとまずは闘技場を出てからマホーミックに向かった。 “万屋マホーミック”は本当にいろいろなものがそろえられており、 防具や武器の質も他の町に比べると1ランク上のものばかりだった。 だがひとまずは何を買うでもなく、店の隅にあったテーブルに座ると話を始めた。 普通なら傍迷惑であろうこの行為も、 このマホーミック自体でカフェのようなものをやっているからお咎め無しである。 俺達はコーヒーを頼んで3時間長を余裕で居座るどこぞの誰かのごとくテーブルを陣取り、 戦いのことや賞品のことについて話し合っていた。 中井出「で……この緋緋色金(ヒヒイロカネ)
……か?これの使い道ってなんなんだろな」 丘野 「きっと石鹸でござるよ!!」 殊戸瀬「眞人、それはないから」 藍田 「見た目的にはオリハルコンだよな」 殊戸瀬「オリハルコン───アトランティスで使われていたとされる金属で、     “炎の如く煌めき輝く不思議な金属”と表現されている。     名前の意味は“山の銅”という意味。山をオロス、銅をハルコンと言う」 麻衣香「それを繋げて呼称したのがオリハルコン?」 殊戸瀬「恐らくそう。高純度のオリハルコンは金よりも柔らかく、     けれど合金になるとプラチナよりも硬くなる希少金属として伝えられていた」 夏子 「へえ……」 殊戸瀬「緋緋色金というのは日本で発掘されたというオリハルコンの類似金属。     緋いオーラを放っていて軽量にして強靭、     絶対に錆びず、磁力を無効化すると云われている」 麻衣香「そ、そうなんだ……(……なんで知ってるんだろ)」 殊戸瀬「なお姉妹品として青生生魂(アボイタカラ)というものが存在したとされている」 夏子 「……なんで知ってるの?」 殊戸瀬「世界の果てから無の電波がピピピと。───冗談だから引かないでいい」 総員 『真顔でそういうこと言うな!!』 何処まで信じていいのか解らないよもう!! 中井出「と、ともかく。つまりこの緋緋色金は鍛えてもらえば武器にもなるってことか?」 殊戸瀬「それは無理。武器にするには緋緋色金の量が圧倒的に少ない」 む……言われてみれば。 これじゃあ短剣とか短刀くらいしか作れなさそう───あれ?ちょっと待て? 中井出「あ……じゃあさ、この溶けた短刀を鍛え直してもらうってのはどうだ?     一応似た色ではあるし」 藍田 「おお提督、それ名案」 中井出「おお。ならば早速」 丁度万屋がここに居ることだし、俺はウムと頷いてカウンターまで歩いていった。 そして溶けた短刀と緋緋色金を見せて交渉すること数分─── 店のオヤジは肩を竦めて大袈裟に溜め息を吐きやがったのである。 オヤジ「ニイちゃん困るぜ。うちではこんなガラクタ扱えねぇよ」 殴ってやろうかとも思う態度だったが、 人の性格にいちいちツッコミ入れていたら俺達はこの町を出られそうになかった。 中井出「んじゃ、この杖は?」 オヤジ「おめぇ俺をバカにしてやがんのか!?営業妨害するってんならとっとと出てけ!」 ……古びた杖を見せた途端に激怒されてしまった。 近頃の鍛冶屋は武器も治せないのかコノヤロー。 俺は燻るハートにシャンドラの火をつけそうになったのをギリギリで耐え、 テーブルへと戻っていった。 忌々しいことこの上ない。 藍田 「どうだった?」 中井出「バカにしてんのかー、って怒られた」 殊戸瀬「気にしなくていい。ただここの主人の腕と目利きが悪いだけ」 丘野 「そうなんでござるか?」 麻衣香「うん、多分そう。一応ナビに書いてあるの。     店や場所、鍛冶屋の腕前によっては鍛えられない、     または直せない武具があるって」 夏子 「わ、それ初耳」 藍田 「なんとまあ……」 中井出「マジすか……」 丘野 「だったらここの主人はただの     クズでカスでゴミで加トちゃんハゲってことになるでござるな」 総員 『そうなる』 チラリと覗き見た彼の頭は確かに加トちゃんハゲなのだ。 中井出「確かにその方が───ああいやいや、加トちゃんハゲのことじゃなくて。     鍛冶の腕前とかのことはそっちのほうがリアリティはあるけどさ。     それじゃあ、だったら何処で鍛えてもらえばいいんだろうな」 麻衣香「それはやっぱり……」 夏子 「ねぇ?」 殊戸瀬「そんなことも解らないの、提督」 中井出「なんで俺だけに限定して落胆するの!?     ほ、ほら!藍田も丘野くんも解らないって顔してるよ!?     なんで───ちょ、聞きなさい殊戸瀬!無視して会話進めないで!!」 殊戸瀬「つまり、よりレア率の高いものの開発や鍛え、     直しに長けた存在に任せればいいの。そういった意味では、     “稀黄剣”を仕立て上げたあの猫さんが一番信頼出来るっていうこと」 中井出「あ、そういや……」 あまりに普通に鍛えてくれるもんだから忘れてた。 あの猫、他の鍛冶屋では絶対に付加されないオマケ属性とかもつけてくれるんだよな。 しかもただでさえ綺麗で、 これ以上は無いと思われた宝剣シュヴァルツレイヴを稀黄剣に変えちまったんだ。 もうひとつ上のランクに鍛え上げられると、見ただけで解るほどの目利きを持ってたんだ。 これって……ある意味相当信頼できるってことだよな? 中井出「よっしゃ!それじゃあ猫探しの旅にでも出るか!」 藍田 「意義無ぁーーーーし!!正直もうこの町やってられまへんわ!」 丘野 「アカーーーン!!こいつありえへーーーん!って感じでござるよ!!」 どういう感じだ。 けどここを出ることにみんな依存は無いらしく、 あっさりと頷いては───さっさとマホーミックを出るのであった。 一応、アイテム一式は買い揃えた上で。 中井出「っと、そうだ。えーと……豆村みずき……っと。tell発信!!」 ナルルルル……トルルルル……ブツッ。 声  『ハイ!こちらマツモト引越しセンターと申しますが!』 中井出「そうか。それでマツモトよ。今貴様は何処に居る」 声  『え?いやあの……冗談で……俺、豆村───』 中井出「黙れマツモトコノヤロー!!何処に居るのかと申しておる!!」 声  『……あの……ハイ……トリトン山間渓谷ってとこに……』 中井出「トリトン山間渓谷?」 聞いたことのない場所だった。 傍らでは俺の言葉を聞いた猛者たちがマップを開いて場所を探すが─── おお、どうやら見つかったらしい。 夏子 「トリトン山間渓谷……セントール王国付近の大きな山だね」 丘野 「セントールって……ちょっと待つでござる、相当遠いでござるよ?」 藍田 「んー……でもさ、ルルカで行きゃあそう時間は掛からないだろ」 麻衣香「それもそうかもだけど、この町ってルルカ牧場無いけど?」 総員 『………』 どうしよう……。 シード『あの、父上。父上も使えるでしょうし、不躾なのは解っております。     ですがその、死人の森までならば僕の転移魔法で───』 総員 『是非行こう』 救いはここにこそあった。 中井出「いやぁ、偉いぞシード、よく言ってくれた。父は貴様の成長が嬉しいぞ」 シード『ち、父上……ありがたき幸せ』 総員 (嬉しい割りにしっかりと“貴様”呼ばわり……) ナギー『な、なんなのじゃなんなのじゃー!わしだって転移くらい出来るのじゃー!!     そのような粗忽者に頼るよりわしに頼むのじゃヒロミツ!!』 シード『ふん、出番じゃないんだ。引っ込んでいろアレイシアス』 ナギー『なにを言うか痴れ者め!!わしの転移のほうが凄いのじゃ!』 藍田 「へぇ……ナギ助は何処まで転移出来るんだ?」 ナギー『うぐっ……い、癒しの大樹の関所までなのじゃ……』 シード『ふん、偉そうにでしゃばった割にはその程度か』 ナギー『う、うるさいうるさいうるさい!うるさいのじゃー!!』 総員 (どっちもどっちだよなぁ……うん) ようするに自分の力の加護がある場所にしか転移出来ないっていうんだろう? それは果たして喧嘩するほどのことなのか? いや……なんとも低いレベルの争いだ。 だがそんなものでも我らにとっては高いレベル。 なにせ転移自体が出来ないからなぁ……どうにもならん。 中井出「あ───ちょっと待った。     二人とも、麻衣香に転移魔法の詠唱を教えてやってくれないか?」 夏子 「あっ……その手があったね」 丘野 「さっすが天下の提督殿でござる!」 殊戸瀬「ウエストポーチ……」 中井出「だからウエストポーチってなに!?なんの意味があるの!?」 藍田 「まあまあいいからいいから。それで、お願いできるか?」 ナギー『いやなのじゃ。そうやってわしから活躍の場を奪う気じゃろ』 シード『父上は僕がお運びする。他のやつらの出番じゃない』 そして子供たちは凄まじく捻くれておりました。 藍田 「だめか……。じゃあどうするんだ?     シードの転移魔法で行くのか、ナギ助の転移魔法で行くのか」 ナギー『大樹の関所の近くにはログオーレンがあるのじゃ!あそこから───』 麻衣香「や、残念だけどあそこにはルルカ牧場無かったから」 ナギー『うぐっ……』 夏子 「死人の森は……エーテルアロワノンが近くにあるけど、あそこは斉王支配だし」 丘野 「どちらにせよ町は遠いでござるな」 藍田 「どうするでありますか提督!!」 中井出「うむ歩く!!」 総員 『ざわっ……!!』 藍田 「あ、歩くって───セントールまででありますか!?サー!!」 中井出「その通りである!!どの道遠いなら冒険しながらレベルを上げる!!     敵を倒せばレアアイテムも落とす可能性だってあるし、     旅をしていることを再実感出来るというもの!!」 丘野 「おっ……おおお……!!見直したでござる提督殿!!     やはり乗り物が無いのなら走るべきでござる!!それが冒険者!!」 藍田 「昔の人は言ったなぁ……それが架空かどうかなんてこの際どうでもいいわけだが。     パンが無ければケーキを食べればいい!!     それを現状に変換するなら乗り物が無いなら走ればいい!!」 中井出「おお解ってくれるか丘野二等に藍田二等!!」 丘野 「あ、もちろん疲れるとしたら乗り物を選んでたでござる」 藍田 「俺も」 所詮そんなもんだった。 走ろうが歩こうが逆立ちしようが踊ろうが疲れないこの世界、 どんな乗り物よりも案外自分こそが信用できると思えるなにかがある気はするのだ。 中井出「じゃ、行くかぁっ!!」 総員 『サー!イェッサー!!』 我らの心に焔よ宿れ! さあ行こう!謎の武器やアイテムを解明するために!! などと思いつつマホーミックを出た時までは、その意気は暖かかったと言えるだろう。 しかしだ。 出た途端にうろうろしていた男に叫ばれたと思うや拉致られ、 気づけば闘技場に立っていた……。 なんでも挑戦者が殺到しているらしく、 俺と藍田と丘野くんがランククィーンとして抜擢されたらしい。 ああまったく……この町では少し強くなると人は拉致られるために存在するらしい。 俺はこの世の不条理を頭の中でグシャグシャになるくらい噛み締め、溜め息を吐いた。 もちろん俺達が捕まっている間、女衆にトリトン渓谷まで行ってもらうことにして。 ……ちなみに。一応木村夏子には残ってもらうことにした。 藍田二等の能力向上のために。 【ケース205:霧波川凍弥/ラリパタター】 凍弥 『疾空連殺閃!!』 トンッ───ゾフィンゾフィンゾフィンゾフィンゾフィィインッッ!! ジャガー『グォオオオオオッ!!!』 踏み込んでからの斬り払い、斬り上げ、跳躍斬り、斬り落としが炸裂。 続いて着地とともにその眉間に刀を突きつけることでトドメとした。 凍弥 『はぁっ……まったく、しつこいやつは嫌われるぞ……』 浩介 『うむ同志、そろそろ金がいい頃合に溜まった』 浩之 『獣人鍛冶屋のところに行って武器を鍛えてもらうのだ』 佐古田『異議無しッス』 金が溜まった、というよりはアイテムがごっざりと溜まったと言ったほうがいい。 旅をして、モンスターを発見したら容赦なく逃げることもなく戦ってきた俺達だが─── とうとうバックパックがマックスになってしまったのだ。 そんなわけで獣人装備を外すと、最寄の町に駆け込んでアイテムをとっとと売っ払った。 その際、セントールが誇る騎士団長が謎の存在に敗れたなどという噂や、 巨人の里では闘技場で観客を沸かせている三人の闘者が居るという噂を耳にした。 前者は真っ黒な翼を五枚生やした、ツンツンと尖った髪型をした男だという。 これは恐らく彰衛門だろう。 巨人の里の方は───休む間も無く挑戦者に襲われ、 闘う度に強くなっているという三人の男たち。 それが誰なのかは解らないが、 闘技場では二番目に強いということに(無理矢理)されているらしく、 冗談抜きで連戦の嵐だとか。 一度どんな人達なのか見てみたいと思ったが、多分怖いもの見たさに近い感情だろう。 闘う度に強くなるってのは、多分レベルアップのことだろうし。 うん、解らん。 さすがに悠介さんってことはないと思うけど─── そういや悠介さん、今なにやってんのかな。
【Side───モミー】 ザザァ……ザァアア…… 村人 「う、うわぁーーーーっ!!!人が海岸に打ち上げられてるぞぉーーーーっ!!!」 ヒロライン暦1192年……俺達はどざえもんまがいの状態で村人に救われた。 ───……。 村人 「へぇ……あんちゃんたち、時の大地から泳いで来たんかい」 悠介 「いけると思ったんだけどな……」 出来る限りは浮いた状態のルナに運んでもらっていたんだが、 TPが尽きたところで見事に着水。 その後は泳ぐこととなったわけである。 問題があったとするなら───ルナが泳げなかったということくらいだ。 そりゃな、死神に泳法は必要ねぇわな。 ルナ 「途中で海産軟骨魚のシャークさんに襲われて、     勝ったまでは良かったんだけど力尽きちゃったんだよねー……」 悠介 「疲れることがないからって調子に乗りすぎた。     さすがにダメージ受ければ意識は朦朧とするよな」 ルナを背中に背負った状態で泳いだり闘ったり……生きた心地がしなかった。 村人 「なんのことかよく解らねぇが……まあいいや、ゆっくりしていくといい」 悠介 「ふふふ、残念だがそうはいかねぇ」 村人 「なにぃ!?」 ルナ 「悠介、それって助けてもらった村人に言う言葉じゃないと思う」 悠介 「まあまあ気にすんなって。それより俺達急いでるんだ。     だからゆっくりなど出来ん!」 ルナ 「急ぎの用なんてあったっけ?」 悠介 「漠然としたステキなサムシングを見つけるための冒険をしてるんだ」(デマ) だがHPTPが回復した今、こうして休んでいても始まらない。 さあ、さらなる楽しさを求めてレッツゴーだ!! 村人 「おいおいバカ言っちゃいけねぇよ!     打ち上げられてからろくに回復も待たねぇでどうする気だい!」 悠介 「回復ならした!」 ルナ 「うん、まあしたね」 村人 「ど、どういう体してんだい……」 悠介 「それはコウモリだけが知っている。故に俺も知らん。     つーわけで行くぞルナ!」 ルナ 「はえ?何処に?」 悠介 「片っ端から精霊に会いに行くんだ!枷なんてものは先に取り外したい!」 ルナ 「それが出来てたらブラックホール転移でなんとかなったんだもんね……」 悠介 「うぐっ……し、仕方ないだろっ……!スピリッツオブラインゲートの他に、     創造にまで枷がついてるってんだから……!」 まったくやってられない。 なんでこう、俺にばっか枷がこんもりあるんだノートよ。 悠介 「ん……?ははっ」 ルナ 「んむ?どしたのゆーすけ。急に笑ったりして」 悠介 「いぃや。いっぱしに愚痴も文句も思えるようになったか、ってな」 ルナ 「?」 解らないって顔のルナを促して、そのまま村をあとにした。 大丈夫、感情はどんどんと成長していってる。 これならきっと間に合うだろう。 あとは俺が─── 【Side───End】
───思考を回転させてみたが、あの人はあの人で案外奔放だからな、と纏まらなかった。 さて、ここでいつまでも物思いに耽ってるわけにもいかないし。 凍弥 「じゃあ、オルクヴィレッジにいこうか」 浩介 「うむ」 浩之 「獣人製品は獣人か旅の猫にしか鍛えられぬらしいからな」 佐古田「面倒ッスねぇ」 凍弥 「これで佐古田あたりが獣人鍛冶業にでも目覚めてくれればなぁ」 佐古田「大事な武器をトンデモ武器にされたいなら別に構わねーッスが?」 凍弥 「そんな理由だけで鍛冶業に身を置こうとするなよ……」 そうなのだ。 やっぱり獣人装備の強化は獣人にしかできないらしく、 そこらへんでの面倒臭さは目立ってしまう。 ここで猫とやらにでも会えれば良かったんだが、それこそ言っても始まらない。 凍弥 「なぁ浩介、お前の武器レベル、いくつだっけ」 浩介 「む?丁度44という素晴らしさを醸し出すフォーティーフォーソニックだが」 よし、喩えの意味が解るような解らんような。 凍弥 「浩之は?」 浩之 「45である。ちなみに佐古田好恵が99だ。     コソコソとヘソクリまがいに金品を奪っては、己の武器の糧にしていたらしい」 佐古田「ンなことしてねーッス!!アチキだってまだ43ッス!!」 凍弥 「佐古田よ……日頃の行いがそういうことを信じさせなくするんだぞ……?」 佐古田「同情度満点の眼差しで諭すように言うんじゃねーッス!!」 しかしな、金品を奪ったことを言われたときには、 “さすが佐古田だ”という考えしか浮かばなかったんだが。 これってやっぱり先入観というか日頃の行いからくる理解だと俺は思うんだが。 佐古田「そういうムナミーはどうなんス?これで60とか言ったらコロがすッス」 凍弥 「真顔で物騒なこと言うのはやめような、怖いから。     俺は39だよ。まだそこまで強くない」 佐古田「ウソつくんじゃねーッス!!」 凍弥 「即答かよ」 佐古田「きさーん、どうせ口ではそう言ってて強いんだろこのヤロウッス……!!     見せるッス!!これでもし見せなかったらムナミーは」 凍弥 「ホレ」 佐古田「───……39ッスね」 解決した。 佐古田「なにッスこれ。武器がこんなのな割りに、やたらと敵を倒してるッスよムナミー」 凍弥 「そりゃあ、これでも前世の頃は剣聖とか言われてたんだ、無様は晒せないだろ。     ようやく勘が戻ってきたところなんだ、これからもっと上を目指したい」 浩介 「おお、立派な向上心おおいに結構。     だがそれよりもまず世界を旅することから始めるのだ同志よ」 浩之 「うむその通りだブラザー。世界をこの目で見つつ、     ことあるごとに人々を襲って金品の強奪をするのだ」 だから……頼むから真顔でそういうこと言うのはやめようって。 けど実際、獣人の金収集ってのは冒険者を襲うことにあるわけであり。 これがまた結構難しかったりする。 遅れてヒロラインに入った俺達では余計に、だ。 ───……。 そんなわけでオルクヴィレッジ。 凍弥 『装着は済んだか?』 志摩 『問題ないぞ同志よ』 佐古田『よくもまあそうやって同時に声が出るもんッスね』 原中の猛者とやらには負けると思うが。 ともあれ俺達はオルクヴィレッジに辿り着くと獣人装備に身を包み、 堂々と中へ入っていった。 このオルクヴィレッジ、今では相当な規模にまで達していて、 集落というよりはそろそろ要塞に近いものになってるんじゃなかろうかと思う。 元々岩山の壁際にあった場所だ。 そこを掘り、現在も開拓中なのがこのオルクヴィレッジ。 日々鍛錬を欠かさない獣人たちはより一層強くなり、 岩を掘るのもそう苦にも見えずに働いている。 その様はまるで鉱山夫のソレだが、 みんながみんな集落を大きくしようという意思のもとに力を合わせる様は、 見ていてワクワクしてくるものがる。 俺達は日に日に大きくなってゆくオルクヴィレッジを眺めながら、 その足で鍛冶職人、オークのムルド氏のところまで辿り着く。 ムルド『オオ、マタ来タカ、同志ヨ』 浩介 『うむ来たぞ同志よ』 浩之 『今日も頼むぞ同志よ』 佐古田『同志同士ってうるさいッスね……     同志言うのは志摩兄弟だけで十分だったッスのに』 凍弥 『お前のその語尾の“ッス”もうるさいから安心していいぞ』 佐古田『安心要素がねぇッス!!』 ムルド『ソレデ、今日ハドレヲ鍛エルンダ?』 浩介 『うむ。今日は限界ギリギリブッチギリバトルで冒険者をコロがしまくった。     故に金は結構あるから、     まずは我らの武器を平均的に上げられるところまで上げてほしい』 ムルド『オヤスイ御用ダ。デハ鍛エル武器ヲ置イテイケ』 浩之 『うむ』 ガシガシャシャンッ♪《装備品と$を預けました》 ムルド『ナルホド、タンマリ稼イダナ。     一度鍛エルノニ1000$、同志価格デ500$ダ。     出来ル限リ鍛エテシマッテイイノカ?』 志摩 『我らは一向に構わんッッ!!』 ムルド『ワカッタ。デハ代用ノ武器ヲ渡シテオク』 ガシャガシャシャンッ♪《代用武器を受け取った》 凍弥 『……よし、と』 浩介 『あとは任せておけばオーケーだなブラザー』 浩之 『おおその通りだブラザー』 佐古田『それじゃあいつも通り外に出て代用武器で金稼ぎするッスか?』 男衆 『もちろんだ!』 佐古田『やかましいから同時に叫ぶなッス』 これも既に茶飯事。 俺は代用獣人刀を手に意気揚々とフィールドへと出て行った。 ……ああちなみに、 鍛えてもらっている武器は初期装備のものじゃなくて、 ちゃんとムルド氏にお近づきの印としてもらった獣人武器である。 そうじゃなけりゃ獣人に鍛えてもらうことなんて出来やしないし。 【ケース206:桐生真穂/カルネージサンダース】 いろいろあって現在。 癒しの大樹に集まっていたみんなは提督さん探しの旅に出た。 なんでも“ここまで来たら意地でも然の加護を手に入れてやりたくなった”らしく、 みんな揃ってドヤドヤと行ってしまった。 わたしたちはというと、 既に然の加護を受け取っているわけだからこうして別の道を歩いていて─── むしろ篠瀬さんの言うように弦月くんを探すのが目的となった旅をしている。 や、素直になれない人が好きって言っちゃったら怖いってホントだね。 こうまで一途に思えるのってある意味すごい。 ……元々がちょっと暴力というか斬殺的な人だけど、 相手が弦月くんだからこそ付き合える相手だ。 真穂 「んー……」 で、わたしが今なにをしているかといえば、歩きながらtellをしてみているのである。 対象はもちろんといっていいのかは解らないけど、提督さん。 何度かtellしてみているんだけれど、全然出ないのだ。 受信無視設定にしてあるのか、それとも忙しいのか。  ブツッ─── 真穂 「あれっ?繋がっ───」 声  『だだだ誰だぁこんな忙しい時にギャアーーーーーーーッ!!!!』  ブツッ……ツー、ツー…… ……そしていきなり切れた。 え……っと……は、発想の転換! 提督さんが断末魔の叫びをあげるほど忙しいなら、藍田くんか丘野くんにかけてみるとか。 それじゃ───……、…………ブツッ。 声  『なんでござるか誰でござるか!     分身がたくさんあるうちにさっさと言うでござる!!』 真穂 「え?あの、桐生だけど───今何処でなにやってるのかなぁ、って」 声  『巨人の里のコロシアムで戦ってるでござるよ!!     何故か急にバトルロイヤルってことで     場外負け無しの地獄バトルが始まったでござる!!     お蔭でこっちは幾多の巨人たちと戦うハメにギャアーーーッ!!!』 真穂 「え───ちょっと丘野くん!?丘野くん!!」 し〜〜ん…… 真穂 「あ、あわわ……」 どうしよう……あとは藍田くんだけど……多分一緒になって闘ってるんだろうし。 ここでtellしたら邪魔になるだけ+絶対に断末魔を聞くことになりそうだ。 真穂 (ああ……空が蒼い……) 現実逃避することにした。 わたしは何も聞いてない。 などと思いつつ、少し空から視線を外した時のことだった。 なんと、一頭のルルカに二人乗りをしている豪気な旅人が居るじゃないか。 しかもどっかで見た覚えがあるようなないような。 あれって─── 真穂 「あ……麻衣香ーーーっ!?睦月ーーーっ!!」 そう、綾瀬麻衣香と殊戸瀬睦月その人である。 普通のルルカよりも一回り大きく、雄々しいルルカに乗った二人は、 わたしの声に気づくとこちらに向かってきた。 真穂 「どうしたのこんなところで。     てっきり提督さんたちと一緒にコロシアムに居ると思ったのに」 麻衣香「あれ?なんで───ってそっか、tellシステムね」 真穂 「うん、まあ。それで……急いでたみたいだけど、どうしたの?」 殊戸瀬「……猫を探して三千里」 真穂 「猫?」 麻衣香「ああうん。旅する猫商人の店、“猫の店”を探してるの。     巨人の里で聞いた時はトリトン渓谷に居るって聞いたんだけど、     あれから結構経っちゃってるから同じ場所に居るかも解らないし」 殊戸瀬「だから同行しているマメ目マメ科のナマモノと連絡を取りながら進んでる」 真穂 「そ、そうなんだ」 マメ目マメ科って…………ああ、豆村くんか。 解ってしまうところが悲しいところだけど、 間違いじゃないって確信を持てるところもなんだか可哀相に思えてくる。 粉雪も微妙な顔してるし。 真穂 「えっとさ、単純な疑問をしてみるけど……ルルカに二人乗りって、大丈夫なの?」 ルルカ『ゴエッ』 殊戸瀬「全然平気だって言ってる」 真穂 「解るの?」 殊戸瀬「独断と偏見」 真穂 「ああ……」 春菜 「な、なんでそこでわたしを見るかな?     わたしもう独断偏見実力行使なんてアッくん以外にはしてないよ?」 モンスターにも平気でやってたと言ったら怒るだろうか。 麻衣香「このコ、ミル・ルルカだからね。そんじょそこらのルルカとは鍛え方が違うの」 真穂 「え───それじゃあ」 麻衣香「そ。睦月は今ルルックナイトだから」 真穂 「へえ〜〜〜っ!!すごいすごい!     じゃああとは60レベル以上になって飛竜の卵を手に入れたら───」 殊戸瀬「必要ない。もう持ってるから」 真穂 「え?」 殊戸瀬「エル、挨拶」 ココンッ……と、睦月がどっかで見たような珠をつついた。 するとそこから現れる───飛竜!? 真穂 「あ、あわ……あわわ……!!」 春菜 「飛竜!?っていうことは……」 麻衣香「うん。もうちょっと成長したら睦月も竜騎士ってことなの。     なんて言っても、もう人一人乗せた状態で空飛ぶことくらい簡単だろうけど」 エル 『コルルルル……』 真穂 「ちゃ、ちゃんと言うこと聞くの……?」 麻衣香「……それは訊かないであげて。お願いだから」 真穂 「え?う、うん」 なんだか解らないけど、飛竜は睦月にはまるで抵抗の意思を持ってないように思えた。 言うなれば叱られっぱなしの子供のような……あ、はは……まさかね。 麻衣香「それじゃあわたしたち、急ぐから。     チョロチョロ移動される前に捕まえておきたいし」 真穂 「うん、それじゃ」 殊戸瀬「突撃(ロース)
」 ルルカ『ゴ、ゴエェエ……』 走ってゆく二人と一頭を見送った。 そして思う。 きっと最後、あのルルカは“人使いの荒いヤツだ”と言ってたんだろうと。 真穂 「ほいじゃあわたしたちも行こっか」 粉雪 「そだね」 仁美 「アキちゃんが何処に居るのかが解れば進み甲斐もあるのに」 春菜 「tellにも出ないし噂も聞かないから無理だと思うよ、うん」 夜華 「彰衛門……ああ彰衛門、彰衛門……」 段々コワレ気味になってきている篠瀬さんを安否を疑いつつ、 わたしたちはやっぱり弦月くん探しの旅を続行することにした。 はぁ……お願いだからひょっこり現れてよ、弦月くん……。 Next Menu back