───冒険の書55/がんばれ!男のコ!───
【ケース207:綾瀬麻衣香/ジェームスモリアーティーの謎(意味はない)】 ドカッ、ドカッ、ドカッ、ドカッ…… 規則正しい音が草原を駆ける。 普通のルルカよりも一回り大きいルルカに二人乗りをしつつ、先へ先へと進むわたしたち。 わたしたちは疲れないけどこの世界の生き物は疲れるらしく、 時々休憩を挟んでは、セントール王国付近へと急いでいた。 麻衣香「どう?睦月」 殊戸瀬「メーデー、こちら提督軍。豆、さっさと応答する」 声  『豆って言うの勘弁してもらえませんかね』 殊戸瀬「うるさい黙れ」 声  『ひでぇ……』 とにもかくにも丘野くんと離れること自体でソワソワするらしく、 今の睦月はすこぶる機嫌が悪かった。 声  『えっとっすね。こっちゃあ今トリトン渓谷を降りたところですわ。     これからまた別の場所に向かうことになっとります』 殊戸瀬「別のところって何処?」 声  『メナスの泉ってとこっす。そんなに離れてないと思うんで』 殊戸瀬「メナスの泉……景色が綺麗なことから行商人や旅人の溜まり場として有名。     バザーが開かれているということもあり、商人たちには人気の場所」 声  『うお……よく知ってるっすね』 殊戸瀬「……フッ」 麻衣香「答える代わりに笑うの、やめようね」 けど目的地が決まった。 そろそろセントール王国支配の領域だし、そう遠くない。 麻衣香「睦月、もうちょっと西方面」 殊戸瀬「……解った」 連絡は睦月が取り、地図はわたしが見るということで協力して進んでいる現状。 風がきもちいー、だとかそんなことを思うより先に、まず猫を見つけることを先決とする。 ホントはそんなに急がなくてもいいんだけどね。 ただなんとなく、こういうのって急いだほうが面白そうだし。 殊戸瀬「………」 麻衣香「そんなに丘野くんのことが心配?」 殊戸瀬「……べつに」 麻衣香「声、ちょっとどもってたけど」 殊戸瀬「……気の所為」 麻衣香「そっかそっか、うん」 なにはともあれ、進みましょう。 距離からしてここからだと大体12分もあれば着くと思う。 麻衣香「博ちゃんたち、今どうしてるかな」 殊戸瀬「……知らない」 麻衣香「頑張って勝ってるかな」 殊戸瀬「……知らない」 むう、妙に拗ねてしまった。 こうなると睦月は必要以上のことを喋ろうとしない。 ……まあ、わたしももう慣れたものだから、このまま静かに行くのもいいかな。 などと思いつつ、地図を見ながら吹きぬける風を浴びて前進を体感するのだった。 だって、わたしが進んでるわけじゃないし。 ───……。 ……。 さて……そんなこんなで辿り着いたのはメナスの泉。 大きな泉と、綺麗な景色がウリの……地界で言う観光地名所みたいな場所らしい。 そういうところに限って大体出店があるのが地界式だが…… どうやらそれはヒロラインでも同じらしい。 人間が考えることっていうのはどこも似たようなものなのかもしれない。 睦月とわたしはルルカから降りると、 息の荒いルルカに泉の水を飲ませるべく奥へと進んでゆく。 その際、通常のルルカよりも大きいルルカに驚かれもしたが…… そんな商人や旅人を無視しつつ奥へ。 旅人 「へへへ、随分大きいルルカだなぁ……お前のペットかぁ?」 殊戸瀬「うるさい黙れ」 旅人 「うおっと……へへっ、こりゃ随分と口の乱暴なお嬢さんで。     女二人の旅かい?なんだったら俺様が一緒に《ジャキィッ!》おわっ!?」 殊戸瀬「……三度目はない。黙りなさい」 旅人 「オッ……オーケーオーケー!!解ったからその槍引っ込めやがれ!!」 毒舌じゃない限りは普通に可愛い睦月だ。 周りから目を引いたりもしているけど、 でも睦月の頭の中は丘野くんのことでいっぱいなのである。 誰が話し掛けようとも“うるさい黙れ”で終わるんだろう。 旅人 「はぁ……ったく。そんじゃそっちのお嬢さん。     俺様を雇わねぇか?俺様これでも傭兵やっててさー」 麻衣香「あはは要らないです」 旅人 「やっ……やさしい笑顔でなんて即答!!」 ここに来た目的は傭兵探しじゃない。 とはいえ……何処に居るんだろう、マメ目マメ科のナマモノくんは。 殊戸瀬「……麻衣香、あっち」 麻衣香「え?あ───」 睦月が指差した方向。 泉を挟んだやや手前の場所で手を振るバンダナ少年を見つけた。 どうやら連絡を取り合って、位置を確認したらしい。 でもそう簡単に……ってそうか、こっちにはやたらと大きいルルカが居るんだ。 解らない方が逆にどうかしているかもしれない。 わたしは一度頷くと、睦月やルルカと一緒にあっち側まで迂回して───溜め息を吐いた。 目的地までの距離にではもちろんなく、目の前に立ち塞がる旅人にである。 旅人 「なぁ〜、いいじゃんかよぉ。     俺様暇してんだよぉ。こんな出会いがあってもいいだろ?な?」 麻衣香「夫なら間に合ってますんで」 旅人 「夫!?」 殊戸瀬「解ったらさっさとどいて。邪魔」 旅人 「邪魔とな!?」 もう本気で無視して行くことにした。 相手をしていられないし。 ……ところがこの旅人、 猫の店の前まで来てもいちいちギャハギャハと笑いながら付いてくる始末。 なんとかならないだろうか。 殊戸瀬 「……邪魔だから憑いてこないで」 旅人  「そうつれなくすんなよぉ〜……ってちょっと待て。      今“ついてこないで”の部分に霊的なものを感じたんだが……」 アイルー『お客様は神様ニャー。でも冷やかしは邪魔なだけだから失せるニャ』 旅人  「な、なんだぁこの猫がぁ!この怒王偽さまに向かってなんて口利いてやがる!」 豆村  「ヌワンギ?」 刹那  「あぁ道理で口が悪いと……」 怒王偽と書いてヌワンギと読むらしい。 どちらにしろヘンテコな名前だ。 殊戸瀬 「馬鹿はほっといて、修繕を頼みたいの。出来る?」 アイルー『モノを見てからじゃないと判断できないニャ。      でも出来るだけ要望には応えるニャ』 怒王偽 「てめぇら俺様の話を聞きやがれ!おいったら!!」 豆村  「騒ぐなクズが!マナー違反だぞ貴様!      ロミオの青い空のアンゼルモみたいな声しやがって!!」 刹那  「おお、言われてみれば。典型的な脇役ボイスだ」 麻衣香 「アンゼルモとヌワンギは声優違うけどね」 豆村  「あれ?そうなんすか?」 怒王偽 「なんだぁてめぇらぁっ!!      この怒王偽様を相手に随分とナメた口利くじゃねぇか!!」 ズズイと乗り出すように頭の奇妙な突起物で威嚇してくる怒王偽。 と、そんな時───ピピーーッ!! 彰利 「そこ!静かにしめされい!!     賑やかにするのはいいが故意に騒ぐのはここのルール違反だぞコノヤロー!!     ……おろ?我がマイサンに麻衣香ネーサンに殊戸瀬サンじゃないの」 笛の音とともに現れたのは、なんと弦月くんだった。 豆村 「親父ぃっ!?こ、こんなところでなにやってんだよ!」 麻衣香「そ、そうだよ!真穂たちが───主に篠瀬さんが探してたよ!?」 彰利 「なにって……見ての通り警備員ですが。     セントール騎士団長ってのを追い詰めたはいいけどさ、     あんにゃろ、途中で飛竜に乗って逃げやがってさ。     戦いはまだ終わっちゃいねーー!って叫びつつ追ってたら見失いまして。     で、うろついてたら近場にこんなステキな場所があるじゃない?     だからこの場を荒らす者を成敗する者としてここに立ってるの。今日一日限定で」 麻衣香「そうなんだ……あ、じゃあすぐに篠瀬さんを呼んで───」 彰利 「それ以上行動を起こしたら転移で逃げる」 麻衣香「え?なんで?」 彰利 「あのね。こんな時くらい妻の論争から逃げたいってオイラの気持ち、解らんの?」 麻衣香「うん全然。むしろ面白そうだし」 彰利 「とことん原中だねキミ!!やめてね!?本気で!!     まったくもうなんだってんだいコノヤロー……」 弦月くんがぶつくさ言いながら去っていった。 どうやら監視に戻ったらしい。 しっかりと怒王偽を小脇に抱えていくのは流石というか。 しかもしばらく歩くとおもむろに怒王偽を泉に放り込むし。 うん、わたしはなにも見なかった。 さて、一方猫さんの方は─── アイルー『これは珍しいものを発見したニャ。この短刀は元は忍者刀のようニャ。      こっちの杖は……これも驚きニャ。鍛え直してからのお楽しみにしておくニャ。      でもちょっと困ったニャ。この忍者刀、鍛え直すには特殊な金属が───』 殊戸瀬 「……ン」 アイルー『あ、そうニャ、これニャ。巨人族に伝わる金属だから、入手が困難なのニャ。      緋緋色金なんてどうやって手にいれたニャ?』 殊戸瀬 「御託はいいからさっさとやる。ごー」 アイルー『……猫使いが荒いニャ』 と言いつつも、しっかり受諾してくれる猫さん。 で、言われたままの金額を渡すと、わたしと睦月は手持ち無沙汰になってしまった。 麻衣香「どうしよっか」 殊戸瀬「………」 などと訊くまでもなく、睦月は既にバザーを見て回っていた。 行動が早いというかなんというか。 こんな時でもきっと、頭の中は丘野くんでいっぱいなのだろう。 麻衣香「………」 わたしはモシャーと溜め息を吐きつつ、さっさと行ってしまう睦月の後を追った。 はぁ……さて、今頃博ちゃんたちはどうしてるかな……。 【ケース208:中井出博光/力こそパワー!……や、そりゃ当たり前だって】 ドゴォス!!……ズズゥウウンッ!! 審判 「ア、アワワーーーッ!!な、なんとチーム原中!     群がる挑戦者を全員倒してしまったぁーーーっ!!」 中井出「ゼハーーーッ!ゼハーーーーッ!!」 丘野 「はひょーーーっ!!はひょーーーっ!!」 藍田 「ふぅっ……!」 神よ、我らは地獄を見た。 だが立っている我らにこそ勝利がある!! 中井出  「オッ……雄雄雄雄雄雄雄雄ッ!!!我らの勝利だぁーーーーーっ!!!」 藍田&丘野『Yah(ヤー)ーーーーーッ!!!』 審判   「それでは傷を癒しましょう!救護班!!」 マキィンッ♪《HPTPが回復しました》 中井出「おお、感謝感激!」 藍田 「あぁ〜〜……しばらく戦いたくねぇかも……」 丘野 「なんで拙者がこんな目に……立て続けでこんなことされたら───」 審判 「というわけで、     まだ挑戦者が待っているので第三回バトルロイヤル開始ィーーーッ!!!」 ドワァッシャァアアアアアンッ!!!! 総員 『ってちょっと待てぇえーーーーーーっ!!!!』 ゴォオオオッ───ドゴンドゴンドゴンドゴンドゴォオオオオオオンッ!!!! 巨人達『グォオオオオオム!!!!』 総員 『ヒャアーーーーーーッ!!?』 観客席から次々と飛んでくる巨人たち……ああ神様!! いや神じゃなくていい!誰か助けてぇええ!!! 中井出「ち、ちくしょう!!レベルが上がるのはいいけど     毎度毎度死にそうな状態でやっと勝てるこっちの身にもなりやがれぇえっ!!」 藍田 「こうなりゃもうヤケだちくしょーーーーっ!!!」 丘野 「ブチコロがしてくれるでござるぅーーーーーっ!!!」 VS巨人バトルロイヤル……実は第三戦目。 倒した巨人の数は既に20に至り、 バトルロイヤルのくせにみんながみんな俺達しか狙わない巨大な陰謀。 そりゃあさ、巨人同士で闘うよりゃ俺達を狙ったほうが楽だろうけどさ。 巨人 「てめぇら倒せば俺がクィーンだぁーーーーっ!!」 中井出「やってみろ!     こちとら二回連続のバトルロイヤルでとっくに100レベルなんぞ超えてんだ!」 巨人 「レベルだぁ!?なんのこった!ぶはははは、潰れろォッ!!」 巨人の攻撃!巨人は体重を乗せた拳を振るってきた!! 藍田 「“受付”(レセプション)
!!」 ドバァンッ!! 巨人 「いがぁっ!!?な、なななにぃいいっ!!?」 しかしその勢いを利用した蹴り落としによって拳を地面に叩きつけられ、驚愕した!! そう、今や藍田は超執事。 木村夏子二等の存在が彼に秘奥義“主人一筋60レベル”を齎しているのだ。 ただでさえ強いってのに、秘奥義での能力向上だ。 普通に戦ってもそうそう負けはない。 加えて─── 丘野 「余所見は禁物でござる!“分身烈風剣”!!」 ゾゴォオオゴゴゴゴゴゴフィィイイイインッ!!!! 巨人 「ぐあぁああああああっ!!!」 丘野 「一丁あがりでござる!!」 ズシィイインッ!!!───と、言葉通りに一丁あがり。 巨体が倒れる様は爽快というか壮観というか。 そう、俺達は一対一の戦いをしているわけじゃない。 一方に気を取られているなら、その隙をついて攻撃してでも倒していけばいい。 や、普通にやってもオリバが居ればそうそう負けはないんだが。 巨人 「ぐっ……こいつら……最初の頃とは目つきが違うぜ……!?」 中井出「少しは自信が持てたってことなり!!」 丘野 「我らは既に100を越えた集団!纏めたレベルは300を超えるでござる!!     もはやそう簡単には敗れんでござるよ!!」 藍田 「臆せず向かってこれるか!?誇りを以って!」 巨人 「チッ……ナメんなぁあーーーーーーっ!!!」 巨人たちが一斉にドスドスと轟音を立てて向かってくる───!! さて、どうしてくれようか……!? 藍田 「提督───」 中井出「かまわーーーーん!!オペラツィオン:ブチノメーション!!     各自全力を以って全てを撃退せよ!!」 ザザァッ!! 藍田&丘野『Sir(サー)YesSir(イェッサー)!!』 さぁやってやろう! ヤケクソになった我ら原中の底力、見せてくれる!! 巨人 「ヌゥウオオオオオオッ!!!」 藍田 「セット───三点“切分”(デクパージュ)!!」 フオドドドォンッ!! 巨人 「ぎっ───!?ちぃ!!」 ───速い。 一気に巨人の軸足まで駆けての三連蹴り。 容赦無い連撃は巨人のバランスを挫かせ、 藍田 「“反行儀(アンチマナー)───キックコォーーース”!!」 ドゴォオオオンッ!!! 巨人 「げぁあああっ!!」 倒れてきた巨人の脇腹を蹴り上げ上空へ飛ばす。 その後一瞬にして上空へ飛びゆく巨人の身体に駆け上り、 やがて持ち上がる力と重力の境まで辿り着くと跳躍。 藍田 「“粗砕”(コンカッセ)!!」 ギュラドボォオンッ!! 巨人 「げぇええっ!!」 荒れ狂う嵐のような回転とともに放った踵落としで地面に叩きつけ、 さらに身を捻りトドメの一発を───!! 藍田 「“串焼き(ブロシェット)ォオッ”!!!」 ガゴォオオンッ!!!! 巨人 「───、……!!」 顔面に突き刺さった足は、それこそ巨人の顔面を岩盤に串刺しにするように潰した。 藍田 「よっしゃ次来い!!」 巨人達『っ……!!』 十分すぎる。 藍田はオリバにならなくても十分に強い。 ただオリバになるともっと強くなりすぎるだけだ。 それは地面に倒れたまま動かない巨人の姿が物語っている。 武器に頼ってないだけでその様が余計に際立つんだから不思議だよな。 だが俺は武器が好きだからそんなことは気にしない!! 藍田 「“空軍・(アルメ・ド・レール)パワーシュート”!!ッ───オォオオオオオッ!!!!」 ドゴォッ───ドゴゴゴゴォオオオンッ!!! 巨人達『ぎゃああああああああっ!!!』 中井出「あー……」 駆け出そうとした足が止まった。 藍田二等が本気で蹴り飛ばした巨人が、群がっていた巨人を吹き飛ばしたのだ。 俺は構えた剣をどうしたものかとシェ〜イシェ〜イと振るってはみるものの、 ただ虚しさが込み上げてきた。 とんでもねぇな……足一本で巨人吹き飛ばしたよ。しかもあんな勢いで。 藍田 「出来る!きっといつか出来る!!     俺にも瞬きする瞬間に提督を端から端まで吹き飛ばすことがきっと出来る!!」 待て待て待て。 あの時お前に意識があったかどうかなんてこの際どうでもいい。 夢を見るのは勝手にしても、人を吹き飛ばすことを夢に持つな。 俺は蹴鞠でもサッカーボールでもキック用サンドバッグでも硬球でも軟球でもないんだぞ。 ああちなみに軟球や硬球に喩える意味は少年サンデーコミックス “今日から俺は”を見てくれると納得してもらえるかもしれないこともないかもしれない。 言いたいことは腐るほどあるが、言っても流されそうなのでやめておいた。 それよりも今はバトルだ!勝ち残らなきゃどうにもならん!! 中井出  「恐れずしてかかってこいコノヤロー!!俺は逃げも隠れもするぞ!!」 藍田   「うわぁーーーーっ!!カッコつかねぇーーーーっ!!」 中井出  「う、うるさい!これだけの相手が居りゃ逃げもするし隠れもするだろが!!」 丘野   「虚勢でもいいから逃げも隠れもしないって言うでござる!!」 中井出  「面白くないから言わん!!」 藍田&丘野『さすが提督だ!!』 妙に納得されてしまった。 もちろん嬉しくなかったが。 巨人 「な、なんだこいつら……確かに強いが頭はバカか!?」 中井出「ストレートすぎるぞてめぇ!!決めた!俺は貴様を絶対に許さん!!     今決めた!そし( く)(つが)(え )ん!!(にく)む!(ねた)む!(そね)む!(さげす)む!」 総員 『大人気ねぇ!!』 中井出「ほっとけコノヤロー!!」 ともかく全力で戦います!! そう、私たちは(己の)正義のために戦います!! たとえそれが命を賭ける戦いであろうとも!私たちは───何歩でも引きます!! それが、原沢南中学校迷惑部なのです!! だがやる時には全力でやる!それが原ソウル!! 巨人 「あの分身野郎と執事野郎はかなり危ないが───     てめぇはそんなに怖くなさそうだなぁ!!」 中井出「ひでぇ!こ、このスネ毛野郎!人をザコ扱いしたことを後悔させてやるぅう!!」 我ながら泣きそうだった。 だが俺はすぐに双剣を回転させて構え直すと巨大な拳を斬りつけた。 巨人 「いでぇっ!?て、てめぇっ!!」 中井出「はっはっはっはぁ!!ファイヤファイヤファーーイヤァアアアアッ!!!」 鎌鼬と炎を駆使した連撃を見よ! 全力疾走しつつ双剣を思う様振り回し、巨人を追い詰めてゆく!! 巨人 「ちっ───ちょこまかと!一旦距離を取って───」 中井出「甘いわ!!エクスプロードブレェーーーード!!」 シャキィンゴォッパァアアンッ!!! 巨人 「げぇぁあああああっ!!!」 バックステップをした巨人に向けて爆裂剣閃をお見舞いする。 オーケー、ボマースキルはやはり、俺には相当ありがたい能力だ。 爆煙に弾かれるように吹き飛ぶ巨人を見て、その威力に思わず頷いてしまう。 巨人 「ちぃい……!てめぇら!一人一人向かっても勝てやしねぇ!     一斉に攻撃を仕掛けるんだ!!」 巨人 「言われるまでもねぇってんだ!!」 丘野 「フッ───甘いでござるなぁ!!見るでござる!     提督殿の双剣のマグニファイを封入したストックの解放!!     そして生分身した拙者たちが織り成す連撃空間!!」 連携の輝きに身を包んだ丘野二等が跳躍! 次の瞬間、光が弾けるように分裂して見上げる巨人たちへと───襲い掛かる!! 丘野×25『我流秘奥義!“双月五月雨散水(そうげつさみだれさんすい)”!!』 キィンッ!!ゾバシャシャシャシャシャシャアッ!!! 巨人達『ぐぅあぁあああああっ!!?』 分身によって分かれた丘野が巨人たちを六閃化した双剣で切り刻みまくる。 それはまるでよく出来た人間台風だ。 下手な忍術よりも上等に強く、光輝く稀黄剣の連撃が巨人の悉くを打ち倒す───!! 巨人 「ぐっ……こんな筈では!───はっ!?」 藍田 「余所見は禁物だ!───連撃いくぜぇっ!!     “鞍下肉”(セル)“脛肉”(ジャレ)“腿肉”(ジゴー)“上部腿肉”(カジ)“腰肉”(ロンジェ)!     “腹肉”(フランシェ)“胸肉”(ポワトリーヌ)“肩肉”(エポール)“首肉”(コリエ)“顎”(マントン)“口”(ブージュ)“鼻”()“目”(ウイユ)!     “粗砕”(コンカッセ)“背肉”(コートレット)“受付”(レセプション)“串焼き”(ブロシェット)!!」 驚愕に身を染めた巨人目掛けて駆けた藍田。 その姿が足への攻撃から身体を昇るように連撃を繰り返してゆく。 足から腰へ、腰から首へ、首から頭頂───そこに踵落としをブチ込み、 前のめりに倒れゆく巨人の背中に蹴りを、さらに叩きつけの蹴りを。 もちろんトドメにブロシェットを忘れないのはもう流石───なんだろうな。  ドォッゴォオオンッ!! 巨人 「ぶげぇぁあっ!!」 ……潰れたな。 ああ潰れた。 巨人 「〜〜〜っ……執事の野郎は危険だ!!先にブチノメせぇ!!」 藍田 「ふははははは!上等!!恐れずしてかかってこい!!───変ッ!身ッ!!」 マカァーーーーン!!! その言葉!その構えとともに藍田の体が光輝く! そして光が消えた頃───その場にはやはりアイツが居た……!! オリバ「フフフ……コウナッテシマッテハ、サッキマデノヨウニヤサシクハナイゾ」 審判 「で、出たァーーーッ!!チーム原中の最終兵器!褐色の悪魔です!!」 中井出「よかったなー……悪魔呼ばわりだぞ」 丘野 「いつの間にか最終兵器扱いでござるな……」 俺と丘野はコクリと頷き合うと、纏まった巨人をオリバに任せることを大決定した。 手伝ってとばっちり受けるのは勘弁だし。マジで。 巨人 「ぬぅわぁあああああっ!!!!」 オリバ「いいじゃないかソノダよっ!!全員に勝ったらブラックベルトだ!!」 巨人 「こんな馬鹿な!巨人の中でも最大と言われたこの俺が、     こうもやすやすと振り回され《ドゴォン!!》ぐぶべっ!!」 ああ、あっさり投げ飛ばされて壁に激突してる。 さて……俺達がここで出来ることは二つくらいだ。 オリバからこぼれてくる巨人を倒すことと、バトルロイヤルが最終的に終わった時、 この闘技場が原型を留めていることを願うことくらいだ。 じゃあ……いっちょ、どーんとやったるでぇい!! 【ケース209:綾瀬麻衣香/梅田という名のトニー】 ガコォンコンコンコゴニャァアアオオ!! アイルー『できたニャーーーッ!!』 人々  『ざわわっ……!!』 さて……長い間をバザー……フリーマーケットのようなものだろうか。 ともかくそれで潰していたわたしと睦月に終了の報せが来たのは、 そろそろ状況に疲れてきた頃だった。 わたしたちはてほてほと急ぐでもなく猫の店まで戻って、完成した品を目にして微笑んだ。 アイルー『仕立て直した武器二つニャ。これでオーケーニャ?』 殊戸瀬 「おーけー」 でってーけ・てーてーんててーん♪《稀緑杖グルグリーズと龍刀を受け取った!!》 麻衣香「うわっ!うそっ!!     いろんな人がボロだガラクダだとか言うからまさかとは思ったけど───!!」 本当に稀緑杖だったなんて! ああっ!ツイてる!わたしたち、奇妙にツイてるよっ!! 殊戸瀬「龍刀……龍……刀……やった……やった!眞人、きっと喜ぶ!!」 麻衣香「わー」 殊戸瀬「……っ……?な、なに……?」 麻衣香「やー……うれしそーだなぁって。     わたしたち相手じゃ笑顔なんて滅多に見せないのに」 殊戸瀬「……笑ってない」 麻衣香「うそうそ。笑ってたよ睦月」 殊戸瀬「わ、笑ってないっ!」 ああ、顔を真っ赤にした希少生物ムツキが、 どすどすと足音を高鳴らせてルルカのもとへと逃げてゆく。 わたしはそんな睦月を微笑みながら追い、 早速稀緑杖を装備して誇らしげに掲げたのちに睦月と一緒にルルカに乗った。 さあ、あとは戻るだけだ。 殊戸瀬「いい?全速力で眞人のところへ。解ったら速くっ!」 ルルカ『ゴ、ゴェエ……』 ああ、溜め息吐いたな今の。 って解るくらいの返事だった。 ともかくわたしたちは一路、巨人の里へ向けて再出発をしたのだったー。 アイルー『……いろいろ聞きたいことがあったのにニャア。気の早いお嬢さんがただニャ』 豆村  「師匠師匠ー!俺の新ナマクラー、バザーに出してもいいか!?」 アイルー『だめニャ』 豆村  「ひでぇ!!」 刹那  「お前さぁ、もうちっと鍛冶のこと真面目にやったほうがいいぞ?」 豆村  「うーるーせー!俺はナマクラーを極めるんだー!!」 ───……。 ……。 ───。 麻衣香「……と。そんなわけでカッ飛ばしてきたわけなんだけど……」 ナギー『……大丈夫なのか?そのルルカは』 ルルカ『ゴ………………ゴ…………』 殊戸瀬「……無茶させすぎた。うかれすぎてた……ごめんなさい」 ルルカ『ゴエエッ!?』 殊戸瀬「……ちょっと。なに、今のかつてない驚愕の顔。     わたしが謝ったのがそんなにおかしい?」 ルルカ『ゴエァッ!?ゴエッ!ゴエエッ!!』 わー、一生懸命首振ってる。 よかったー、一応言葉解るんだー。 ……じゃなくて。 麻衣香「それでナギちゃん、夏子、シードくん。博ちゃんたちは?」 ナギー『おぬしの目は節穴か?ほれ、あそこじゃ』 ナギちゃんがスピシと、煙が晴れてゆく武舞台を指差した。 そこには───気絶した巨人たちの山と、 総員 『成ッ!敗ッ!!』 その山の上でポージングをとっている我らが提督にしてわたしの夫と、 藍田くんと丘野くんが居た。 中井出「さあ次は!?次は居ないのか審判コノヤロー!!」 審判 「む、無理です!     既にエントリー出来る条件を満たした上で意識のある巨人が居ないので……!!」 中井出「むう……!ようやく慣れてきたってのに」 丘野 「まあまあ、そう言ってても仕方なきことでござる。     レベルが120になったことで頷いておくでござる」 麻衣香「ひゃくにじゅうーーーーーっ!!?」 中井出「む?おお麻衣香ァーーーッ!!帰ってたのかー!」 丘野 「睦月も!ご苦労さまでござるーーーっ!!」 殊戸瀬「ま、眞人……はっ!」 麻衣香「んふふふふ〜……ほら、やっぱり」 殊戸瀬「〜〜〜っ……笑ってない!!」 素直じゃない睦月サンであった。 中井出「あぁ、俺達ゃ120レベルにまでいったぞ。結構地獄も見たが、なんとか」 丘野 「それよか聞いてくれよ睦月。藍田のヤツがさ……」 中井出「トドメボーナスだとか     一気にブチノメしたボーナスとかで、既に130レベルなんだよ……」 総員 『うわぁ……』 藍田 「なんでそこでバケモン見る目で人を見るかねぇ……。っとそうだ。     そっちのほうはどうだったんだ?」 麻衣香「えっへへぇ……じゃーん!!見てこれ!稀緑杖グルグリーズ!!     しっかりと鍛え直してくれたのー!ひゃっはー!捨てないでよかったー!!」 藍田 「心の底から嬉しそうだな」 麻衣香「だってこれほらレアアイテム!しかもかなり上級のレア!     レアアイテムを喜ばない冒険者なんて冒険者じゃないってばあははー!!」 丘野 「おお……踊り出すほどに嬉しかったでござるか……」 なんとでも言ってくれって感じだった。 いい加減、ランダークの宝物庫から盗んだ杖では寂しいとか思っていたところにこれだ。 嬉しくないわけがない。 殊戸瀬「それと───眞人にはこれ」 丘野 「?……拙者でござるか?いったい……───はっ!!こ、これは!!     リュッ……りゅ、りゅりゅりゅ……りゅりゅりゅりゅ龍刀でござるぁああっ!?」 中井出「なにぃ!?まさか!!」 藍田 「龍刀って───おいおいおい!     あの無月散水のトドメが龍虎滅牙斬になるっていう素敵ウェポンの片割れか!?」 中井出「あ、虎刀なら俺持ってるぞ?」 総員 「なんで!?」 中井出「あれ?言ってなかったっけ。     サンドランドノットマットのじいさんに貰ったって」 総員 『聞いてないよそんなこと!!』 中井出「そうだったっけ?まあいいや、ほんじゃ、これは丘野に」 丘野 「ありがとうござる!!」 博ちゃんが丘野くんに躊躇することなく虎刀を渡す。 と───なにを思ったのか丘野くんは稀黄剣を外し、ポスムと博ちゃんに渡したのだった。 中井出「うお……丘野二等?」 丘野 「拙者───あの日から今日まで考えたでござる!何度も何度も考えたでござるよ!     しかしやっぱり答えは変わらないでござる!!     そう!拙者は忍!!やはり剣などよりも忍者刀一筋に生きたいのでござる!!     だからその剣は提督殿にあげるでござる!!」 中井出「お、丘野二等……貴様ってヤツは……!」 藍田 「それならさ、その忍者刀に双剣化させた稀黄剣合成させればいいんじゃないか?」 丘野 「解ってないでござるね藍田殿。     忍者刀には忍者刀を合成させるのが拘りというものでござるよ」 藍田 「気持ちは解らんでもないが、     そういう拘り持ってるやつって大体が頂きには至れないよな」 中井出「そうそう。風来のシレンでブフーの包丁と木甲の盾装備して、     包丁と俎板を地味に演出して悦に入ったはいいけど     ドラゴンに殺されて鬱に入るバカヤロウみたいに」 丘野 「そ、そんな無駄に真実味のある話なんて聞きたくないでござるよ!!」 中井出「まあいいや、くれるなら貰っとくわ。むしろ早速合成したいんだが」 麻衣香「こういう場合って双剣とはどうやって合成させるんだろね」 ちょっと疑問点。 やっぱりそのまま怪盗ペリカンの口に放り込んでしまっていいのだろうか。 中井出「えーと、まずベースにしたい武器を入れて」 麻衣香「ふんふん」 中井出「次に付加させたい属性アイテムだとか、普通に能力を持ってる武器とかを入れる」 麻衣香「ふんふん」 中井出「トッピングにまきびしを入れると叩き出されるから気をつけろ」 麻衣香「やったの!?」 中井出「いや、棍棒と釘10本を合成させて釘バット作ろうとはしたんだけどな。     実行する前に叩き出されたことならある。     面白そうだから是非ともやってみたかったんだが」 麻衣香「叩き出されるよ誰だって!!そんなことしたら!」 夏子 「あ、でも怪盗ペリカンは欲しいね。わざわざ合成屋さん行かなくて済むし」 麻衣香「え?あ、うん。まあそれは」 欲しいといえば欲しいけど───まだ一度も会ったことの無い野良と違って、 合成屋さんのものを奪うわけにはいかないし。 殊戸瀬「噂だとエコナ平原に生息しているらしいけど」 丘野 「エコナ!?」 中井出「なにその健康に良さそうな油みたいな名前の平原!!」 夏子 「そこまでストレートならもう健康エコナって言おうよ提督さん」 殊戸瀬「平原ダックウォリアーとタッグを組んでいるって噂。よく知らないけど」 丘野 「平原ダック!?」 藍田 「ハーゲンダッツじゃなくて!?」 中井出「むしろその言い回しってダックとタッグをかけてるの!?殊戸瀬!!」 殊戸瀬「かけてない」 中井出「そ、そか。まあいいや、バトルロイヤルの賞金も貰ったし、     早速マホーミックにでも行こかー。あそこ一応ペリカンも扱ってたし」 藍田 「抜け目ねぇなあ、さすが提督」 丘野 「そんなことまで事前に見てあったでござるか。さすが提督殿でござる」 殊戸瀬「エロマニアの眼力からは誰も逃げられないのね……」 藍田 「最低だぞ提督てめぇ!!」 丘野 「ペリカンまでそんな目で見てたでござるかこのクズが!!」 中井出「てめぇらつい四秒前にさすがだとか言ってただろうが!     変わり身の速さにも限度ってもんがあるぞこの野郎!!」 殊戸瀬「……夏子?話は変わるけど夏子はレベル上がったの?」 夏子 「ううん、闘技場に立つと三人パーティーとして扱われるみたいで、     わたしには経験値こなかったから」 殊戸瀬「そう」 中井出「ちょっと聞きなさい殊戸瀬!!     そうやってまたはぐらかそうったってそうはいきませんよ!!」 藍田 「なんでオカン言葉なんだ?」 殊戸瀬「きっと前世がオタマ標準装備の中年オバサンだったから……」 中井出「違うよ!!なんでそこで中年オバサンが出てくるの!     ていうか前世が中年オバサンってなに!?     オ、オバサンにだって若りし頃があるってこと忘れてるだろキミ!!     誕生から臨終まで中年オバサンだったらそれきっとUMAだよ!!     今すぐ全国の悩める中年オバサマに謝れぇえっ!!」 麻衣香「………」 えーとまあなんと言いましょうか。 今もきっと地界で生きてる父さん母さん、わたしは今日も呆れながらも頑張ってます。 Next Menu back