───冒険の書58/ホギッちゃんの面倒な一日───
【ケース213:穂岸遥一郎/ファンフォンチャンチョン】 カァーーーーーーーーン!! 全員 『うあっちゃああーーーーーーーっ!!!!』 今尚俺達の精神を暖かく見守ってくれている精霊達よ、ご機嫌いかがだろうか。 俺達は現在、某学級王の軌跡を辿って砂漠まで来ていた。 清水ら一向の話では某学級王は原沢南中学校が誇る稀代の提督、 中井出博光だというのだが。 遥一郎「tell……中井出博光、っと……もしもしー?」 声  『もしもし?あたし───ゴンザレス!』 遥一郎「いきなりごっついなオイ!!」 声  『フフフ、このゴンザレスに電話をかけちまうとは運がない……。     残念ながら従兄弟のリカは他の電話を呪ってる最中だぜ?』 遥一郎「あー、そこの電波霊、御託はいいからまともに話をさせてくれ、頼むから。     というかお前、ノリが弦月みたいになってるぞ」 声  『そりゃお前、原中だからとしか言いようがない。     で、穂岸だっけか。その穂岸がこの博光にどんな用か?』 遥一郎「ああ。お前、精霊を拉致したって本当《ブチッ!》っておい!     いきなり切るヤツがあるかぁっ!!」 精霊のことを話した途端に切るとは……まさか本当に拉致なのか? 仕方なく俺はもう一度tellを発信。 相手の受信を確認して声を─── 声  『もしもし?あたしゴンザレス!』 遥一郎「いや……あのなぁ」 声  『フフフ、このゴンザレスに電話をかけちまうとは運がない……。     残念ながら従兄弟のリカは他の電話を呪ってる最中だぜ?』 遥一郎「解った、解ったから。そこに自然の精霊居るんだろ?     俺達《ブチッ!》……あのなぁああああ……!!」 また切られた……いったい何を言われると思ってるんだあいつは……!! ええいこうなったらもう一度───!! 遥一郎「───あのな!まず人の話を」 声  『もしもし?あたしゴンザレス!』 遥一郎「それはもういいっつーんじゃあ!!」 声  『そ、そうか?三回やるのはお約束だと思ったんだが。     で?なんの用だ?金ならやらんぞ』 遥一郎「どうしていきなり金の話になるんだ……!     お前達が攫った精霊のことで話があるんだ!!」 声  『この組織の犬め!!』 遥一郎「いきなりかよ!!少しは話を聞こうと───」 声  『黙れ黙れ黙れ!サツの回しモンなんかと話すことはねぇ!!失せろ!!』 遥一郎「失せろって……あのな、これはtellなんだが?」 声  『うん知ってる』 遥一郎「………」 野蛮だが、拳の一つでもぶちかましてやりたいと思った。 声  『なんじゃ?なにを一人でぶつくさ言っておるのじゃヒロミツ』 声  『おおナギー。なんでも貴様を嫁にもらいたいという変態ロリコン男から伝心が』 遥一郎「〜〜……貴様の姿を見つけたら有無も言わさず攻撃していいか……!?」 声  『もちろん冗談だ落ち着こう。     むしろこれくらいのことなんて、俺なら毎日言われてるぞ。殊戸瀬に』 遥一郎「そ、そうか。それはまあ置いといて。今何処に居るんだ?     お前と一緒に居る精霊の加護が欲しくて探してるんだけど」 声  『フフフ、秘密さ。ナギーの加護が欲しくば俺の跡を追って……あっ!     いやっ!正確に追ってこなくてもいいよ!?特に砂漠の町なんて無視してOK!』 遥一郎「砂漠の町?っと、橘ちょっといいか?この砂漠のマップ内に町があるかどうか」 声  『調べなくていいよ!!ほっといて!行かないでいい!!』 遥一郎「……なにをそんなに嫌がってるんだ?って、いいや。     今何処に居るのかすぐに教えてくれるなら、     そっちに行くから寄る必要もなくなるけど」 声  『そ、そうか、その手があったか〜〜!!』 遥一郎「……キン肉マンの真似はいいから」 声  『だが断る。この中井出博光の最も好きなことの一つは。     有益なものが貰えると喜んだ相手にNOと断ってやることだ』 遥一郎「───いい性格してるなお前」 声  『ふっ……ふふふふ……な、泣いてないよ!?泣いてないんだかんなー!?     一時の見栄張りで自分の痴態をさらすことになったからって泣いてないよ僕!!     寄りたいなら寄りゃいいじゃねぇかコノヤロー!!     この鬼!悪魔!人でなし!!梨!!人な上に梨!!この梨!人なのに梨!!     バカアホタコイモトーヘンボク!ついでにウエストポーチ!!!』 ブチッ。 遥一郎「て、あっ───切りやがった」 言いたいことだけ言って切るのは電話上における最大のマナー違反だろオイ。 しかもなんだよ、ウエストポーチって……。 遥一郎「はあ、しょうがない。     中井出博光は砂漠の町に寄ったらしいからそこで情報を得よう。     話をしてみても無駄だった」 凍弥 「そか。ほいじゃあ砂漠の町のえーと……」 清水 「サンドランドノットマットだな」 凍弥 「そう!そこに出発だー!」 柿崎 「この際、黄泉路鍋で生死の境を彷徨っていた時間など忘れよう……」 全員 『それはもう……』 あの鍋は悪夢だ。 もう思い出したくもない。 なにもしてないのに目に染みて涙が出るわ、臭いを嗅いだだけで堰が出るわ、 何故か方向感覚が曖昧になってコケたりするわでもう大変だった。 ありゃ毒鍋だ、きっとヒッヒッヒとか言いながら掻き回すだけで魔法薬が出来る。 もちろん毒殺用魔法薬だが。 ───……。 というわけでサンドランドノットマット。 連絡をとった場所からはそう離れてなかったそこは、案外活気があって賑やかだった。 遥一郎「誰から情報を聞いたもんかな。なぁ、原中として中井出の行動範囲を───」 清水 「3個!」 青年 「2個!」 清水 「2個!」 青年 「い、1個……」 清水 「3個!!よし俺の勝ち!!」 青年 「あ、あわわ……」 遥一郎「町に入ってから分と経たずに石取りゲームに走るなぁーーーーっ!!!」 田辺 「フッ……穂岸よ、それは無理ってもんだ」 岡田 「我らの中に点在する心の巴里!それは誰にも壊すことは出来ん!!」 凍弥 「心の中に巴里さえあればどんな時でもゲームに走るのかお前らわ」 清水 「……なにを今さら言っているのだ?」 凍弥 「や、そんな本気で“なに当然のこと言ってんだ”って顔されても」 田辺 「我ら原中、こと遊びに関してぬかりは無し」 岡田 「かつて提督が残した素晴らしき言葉、今貴様に教えよう」 清水 「“ゲームがあるから我らが居る”。つまり、山を昇るのが登山家の望みならば、     楽しさがあるから楽しみを求めるのが我ら原中」 岡田 「直訳すれば楽しければそれでオッケー」 幸せそうでいいなー、原中のやつら。 俺もここまで常日頃からブッ飛んだ脳細胞持っていたら、 或いは中学に原中を選んでいたらここまで暴走できたんだろうか。 ……無理だな。 だって俺、こいつらより年上だからそもそも学年が違う。 それじゃあどうしようもない。 根性で一歳若返るなんてことは無理だし。 遥一郎「いいやもう……俺だけで調べるから」 ノア 「マスター、わたしもご一緒いたします」 サクラ「サクラも一緒に行くです」 遥一郎「またややこしくなるから待機。     お前らが一緒に来たおかげでどれだけ人との交渉が失敗したと思ってるんだ……」 特にノアなんて交渉相手が女性だと笑顔のまま殺気だしてくるし、 男の場合でもちょっと暴言じみたことを言うと、 “マスターへの侮辱!”とか言って暴れ出すし。 なぁ神様よ。この世界でも俺に平穏の二文字は無いのか? ああいやいい、ここで考えても仕方ない……まずはパートナーを選んで情報収集に…… 遥一郎「………」 パートナー……この中からか? 言っちゃなんだが、俺も含めてあまりまともなヤツが居るように見えないんだが。 いや、その中でも交渉が上手そうな人を探せばいいのか。 あー……真由美さん。は、だめだな。今なら漏れなく橘のヤツが付いてくる。 彼は普段は三馬鹿の中でも相当頭のキレるやつなんだが、真由美さんが絡むと人が変わる。 じゃあ次───支左見谷……だめだな。今なら漏れなく閏璃のヤツがついてくる。 彼は普段から三馬鹿の中でも極のつく騒ぎの台風の目だからな、度外視決定。 蒼木───も、レイチェルの姐さんがついてくる。 あとは……あとは……うっうっ……ろくな知り合いが居ねぇ……。 こんだけ知り合いが居るのにまともなのが珍しいってどういうことだよ……。 遥一郎(あぁ……こんな時にお前が居てくれたらな、フレア……) 俺は、もう二度と会えない幼馴染を思って途方に暮れた。 しかしそうしていても仕方がないのは確かで。 はぁ……よくもまあこんなカオス集団の中であそこまで冷静な大人が生まれたもんだ。 そこのところは素直に凄いと思うぞ、晦。 原中は俺から見れば十分にカオス集団だ。 名前からして既に“迷惑部”という危険極まりない物だからツッコミどころ満載なんだが。 遥一郎「さて……誰に話し掛けたもんかな」 もう一度振り向いてみても、 既にみんな遊びに繰り出したあとである事実に本気で泣きたくなった俺であった。 ───……。 ……。 で、それから5分後。 遥一郎「あぁ、すまん。ちょっと話を聞きたいんだが───」 たった一人でも情報集してる俺が、砂漠の町にポツンと存在していた。 フフ……寂しくないよ? 周りに振り回されることなんてしょっちゅうだったし。 それならきっと、一人の方が気楽なのさ。 砂漠人「おぉ、どしたいあんちゃん。俺になんか用かい?」 遥一郎「人を探してるんだ。     この町に軍人的なノリでいっつも叫びまくってるような集団が来なかったか?」 砂漠人「軍人?いやぁ、ここは軍事とは関係のねぇ町だしなぁ。そんな集団は知らねぇぜ」 遥一郎「そっか……中井出博光って名前なんだが」 砂漠人「中井出……知らないねぇ」 遥一郎「そっか。解った、邪魔して悪かった」 砂漠人「いやいや、ここに人が来るなんて珍しいんだ。客人はもてなすぜ」 ひらひらと手を振る町の人にこちらも手を振り返し、次の人を探した。 町自体はそう広くないし、結構すぐ情報が得られると思ったんだが。 遥一郎「っと、ちょっと情報を聞きたいんだがー!」 砂漠人「おー!?なんだーい!」 屋根の上で作業をしていた町人に話し掛ける。 何をやっているのかまでは知らないが、とにかく今は手当たり次第だ。 遥一郎「中井出博光ってやつがこの町に来たと思うんだがー!     何処に行ったか知らないかー!?」 砂漠人「なかいでー!?いやー!そんな名前のヤツぁ知らねぇなー!!」 遥一郎「………」 ほんとにヤツはここに来たんだろうか。 と、疑いたくなる瞬間だった。 砂漠人「町に寄ったってんならこの暑さだ、宿に泊まっていったんじゃねぇかいー!?     宿に行って宿帳見せてもらえやー!!」 遥一郎「あっ……そっか」 その手があった。 俺はマップを開くとこの町の宿を探し、すぐさまそこへ急行した。 ───……。 そして─── 宿屋 「宿帳を見せろ?しかしね、これはここに来た人のプライバシーだからね」 遥一郎「そこをなんとか!大事な用があるヤツがここに来た筈なんだ!     なんなら名前を調べてくれるだけでいいから!!」 宿屋 「ふぅん……?まあいいか、名前は?」 遥一郎「中井出博光って名前なんだが」 宿屋 「なかいで、ね。あー……」 ペラペラ……ペラ…… 宿屋 「いや、来てないようだが?」 遥一郎「ぬあっ……じゃあ藍田亮でも丘野眞人でもいい!     そういう名前のヤツが居ないか!?」 宿屋 「やれやれ……んあ?ああ、もしかしてこれかい?」 ペラリと宿屋の主人が宿帳を見せてくる。 そこには確かな地界文字(日本語)が───……なんだこの“エロマニア様”ってのは。 どうやら二回ほど厄介になったらしく、名前が二つ並んでた。 しかも上の方には“中井出博光”という文字を消した跡があり、 その上から“エロマニア様”という文字が書き殴られていた。 ……町の人に訊いてみても知らないって言う理由はもしかしてこれか? 遥一郎「な、なぁ……このエロマニア様って……」 宿屋 「お?なんだ、エロマニアさんを知ってんのかい?あの人はこの町の英雄さ!」 男  「なんだなんだ?エロマニアさんがどうしたって?」 女  「もしかしてエロマニアさんが戻ってきてくれたの?」 宿屋 「いやいやそうじゃねぇんだ、     この人達がエロマニアさんのことを訊いてきたからな?」 男  「あんたら、エロマニアさんの知り合いなのか?」 女  「エロマニアさんにまたいつでも寄ってって言ってね」 遥一郎「………」 すまん、中井出……。 お前がここには寄らなくていいって言ってた意味、今ようやく解ってやれた気がする……。 これならまだポカパマズさんと呼ばれるほうが嬉しい。 遥一郎「ま、まあその……一応そのエロマニアの知り合いでさ……。     あいつが何処にいったのか……っ……あ、あれ?なんで涙が……」 知らず、ホロリと涙が出た。 おお……エロマニアの知り合いだって言うことがこれほど悲しいことだったとは。 宿屋 「おー!やっぱりエロマニアさんの知り合いか!」 男  「なるほど!エロマニアさんの知り合いらしい風貌をしている!!」 女  「わたしは最初からそう思ってたわ!エロマニアさんの知り合いだって!!」 遥一郎「やべぇ……涙が止まらねぇ……」 むしろ今すぐ逃げ出したかった。 ここで何があったかは聞かないほうが身のためだ。 早く話を終わらせて、この町を出よう。 遥一郎「それで、エロマニアが何処に行ったか知らないか?連絡がつかないんだ」 宿屋 「へぇ……おめぇら知ってるか?」 女  「いえ、わたしは……」 男  「あぁ、そういや酒場のドンさんが言ってたな。     彼らが南西に歩いていくのを見たって」 遥一郎「南西?っていうと……」 マップを見ておおよその見当をつける。 ここから南西というと……トカホウテ山? いや、その先にある平原に巨人の里があるな。 もしかしてここか? 遥一郎「ありがとう!じゃあ急ぐからこれで!」 宿屋 「おーう!エロマニアさんによろしくなー!」 女  「さようならー!エロマニアさんの知り合いのかたー!!」 男  「おまえさんもエロマニアさんみたいになれよー!!」 遥一郎「なるかぁーーーっ!!!」 止まらない悲しみの涙を拭いもせず、 俺は一刻も早くこの町を出るために仲間たちを探しまわった。 しかしそれがどこからか原中ネットワークに知られ、 突如として砂漠の町のかくれんぼ大会が開催された。 どういうわけか俺が鬼になったという事実がtellで知らされ、 何故かみんながノリ気で全力で俺から隠れたというわけだ。 もちろん俺は町の中を駆け回った。 そして探し回った。 駆け回る度に“がんばれエロマニアの知り合いー!”と声援を送られながら探した。 やがて中井出の言う通り、こんな町に寄るんじゃなかったと本気で思いだした頃。 世界は夜の姿へと変わり、ようやく……そのかくれんぼは終わりを告げた。 清水 「じゃー次は僕が鬼ねー!!」 総員 『ワーイ!!』 遥一郎「ワーイじゃない!!今すぐやめろ!!」 雪音 「わー!ホギッちゃんがキレたぁーーーっ!!」 清水 「ノリ悪いぞホギッちゃん」 遥一郎「ホギッちゃん言うな!!いいから今すぐここから出るぞ!     中井出たちは巨人の里に行ったみたいだから!」 清水 「あ、俺石取りゲームやり終わったあとすぐに入った酒場でその情報もらったぞ?」 岡田 「俺も」 田辺 「俺もー」 遥一郎「ギィイイイーーーーーーーーッ!!!!」 “それなら早く言え”という言葉はしかし、 激しい怒りと脱力感に包まれて言葉にはならなかった。 ───……。 ……。 ───そんなこんなでトカホウテ山。 清水 「むっすぅめさんっ♪」 田辺 「よぉっく〜きっけぇ〜ぇよ♪」 岡田 「ゆぅ〜きおっとこぉ〜ンにゃぁ〜あ惚ぉ〜ぉれぇ〜ぇるぅ〜ンなよぉ〜っ♪」 遥一郎「お前らにはこの剥き出しの大地と草原が目に入らないのか……」 清水 「山に来たらこれくらい歌わねば」 遥一郎「雪山で歌ってくれ。普通の山だったらもっと、山彦を堪能するとかあるだろ?」 総員 『フゥーーーーアァーーームアァーーーーーイッ!!!』 ───アァーーームアァーーーイ……アァーーーーイ……アァーーーイ…… 遥一郎「すまん……いいから黙っててくれ……」 清水 「ノリが悪いぞホギッちゃん」 遥一郎「ホギッちゃん言うな!!」 鷹志 「山彦にさえフーアムアイ言うってのはな……原中ってどういう中学だ?」 清水 「そういう中学だ」 岡田 「犯罪以外は大体やるような集団だった気がする」 鷹志 「それってほんとに中学生か……?」 もっと言ってやれ。 キミの感性は間違ってない。 凍弥 「確かに原中って謎が多いよな。中学生が暴走する範囲を超えてるだろ」 清水 「馬鹿を言うな!我ら原中は誇りを持った暴走集団だ!!     校舎の窓ガラスを破壊してギャハハとか笑う者たちと一緒にせんでもらおう!!」 岡田 「人々が楽しいと思うことを全力でするのが我らの務め!!     事実、人の人生を狂わせたことなど一度も無し!!」 田辺 「祭りごとには積極的に参加して盛り上げ、任された雑用もきちんとこなした!!     これが何故悪だと!?」 凍弥 「担任泣かせた回数は?」 総員 『マグナムエース』 凍弥 「悪決定」 総員 『なんで!?』 凍弥 「44回も泣かせりゃ十分だろ……」 遥一郎「マグナムエースで44回だって確信できるお前もどうかと思う」 しかし見晴らしのいい山だな。 今のところこの景色が俺の荒んだ心を癒してくれる……。 雪音 「ヤッホー!!やほやほやっほー!!やっほー!!やっほーってばー!!     返事して山彦さーん!!やっほぉーーー!!!」 田辺 「ヤッホォーーイ!!ヤッホーこの野郎!!返事しろ山彦てめぇ!!」 凍弥 「ぬう!山彦と聞いてはこのヤマビーラーの閏璃が黙っちゃいない!!     誰がより山彦の野郎のハートをゲット出来るか勝負だ!!」 清水 「勝負とあっては原中の猛者として退けぬ!!いいだろう勝負だ!!」 岡田 「ヤッホォーーーーッ!!!」 凍弥 「うおーーー!!ヤッホーーーーッ!!」 清水 「ヤッホォーーーーッ!!!」 岡田 「いやまて!俺達それでいいのか!?     愚直にヤッホーと叫んでるだけでいいのか!?」 凍弥 「い、いや違う!!同じ言葉で人の心は動かせない!!     それはきっと山彦の野郎だった変わらない!!」 清水 「ニュウドメストーーーーッ!!」 岡田 「ヘアーサロンガスパッチョーーーーッ!!!」 田辺 「ソドムゥーーーーーッ!!!」 凍弥 「ゴモラァーーーーーッ!!!」 雪音 「ベニーザジェットロドリゲスーーーーッ!!!」 これでせめて静かだったらなァ……。 そんな願いも虚しく、人々の叫びは山を降りるまで続いたのだった。 ───……。 ……。 ややあって巨人の里。 総員 『でっ……でっけぇええーーーーっ!!!』 山から草原を歩いてここに辿り着いた俺達は、まずその建物の大きさに驚愕した。 もちろん巨人の大きさにも。 岡田 「ば、ばかな……ば、ばかな……!俺達がまるで子供のようだ……!!」 清水 「あの腕の馬鹿げたデカさといったら、女性のウエストどころではない……!!」 田辺 「でも藍田(オリバ)
ほどの驚愕は受けないね」 総員 『不思議だねぇ』 オリバ……藍田亮か。 彼の変貌を見たヤツは誰だろうが絶対に驚くからな。 遥一郎「よしっと。それじゃあみんな手分けして中井出の情報を……───居ねぇ」 再び振り向いた時……やはりみんな居なくなっていた。 俺か……?俺が間違ってるのか……? 俺達は自然の加護が欲しくて彼らを追ってるんじゃなかったのか……? 遥一郎 「……はぁ」 それでも結局俺は、独りで町を歩き出した。 はは……今回も有力情報が得られるといいなぁ……。
【Side───その頃の猛者ども】 中井出「雪原だぁーーーーっ!!!」 総員 『Yah(ヤー)ーーーーッ!!!』 おお煌く銀世界!!美しい!! これが……これが氷河への道!!美しい!! ナギー『おおお白いのじゃー!』 藍田 「ナギ助は雪見るの初めてか?」 ナギー『わしが居た関所の地域では雪は降らんのじゃ!だから初めてなのじゃ!』 藍田 「そーかそーか!よし雪ダルマ作ろう!!」 殊戸瀬「出来てる」 藍田 「速ッ!!しかもしっかり選挙とかで見るダルマだし!!」 殊戸瀬「あとは右目に窪みをつければ完成。……眞人、やって」 丘野 「おお!なにやら緊張するでござるよ!!」 中井出「よっしゃあ藍田ー!雪合戦するべー!!」 藍田 「わがっだー!!オラにまがしとけー!!」 夏子 「……男の子ってさ、雪見るとはしゃぎまわるよね」 麻衣香「海でも川でも何処でも騒ぐでしょ。特に原中の猛者は」 夏子 「そだね。ていうかなんでナマってるんだろうね?」 麻衣香「ノリでしょ」 雪原を駆け回る!! 物凄い速さで駆ける!! やがて一定距離を保った状態でザシャアと止まると、雪を手に取って丸く握る!! 中井出「はおおおおおおお……!!!!《ミチミチミチミチ……!!》」 藍田 「ストレングスマックス!!雪球作成!!」 もちろんSTRをマックスにして握った! すると雪がまるで水晶のようにマキィーン♪と輝く雪球に!! 中井出「ヌオオオオオオッ!!!くらえ我が魂の雪球!!」 藍田 「なんの!!俺のレベル130ブラストを受けてみよ!!」 ドシュゥン!!ドッゴォオオオンッ!!! 麻衣香「キャーーーッ!!?雪球が大木を貫通して飛んでったぁーーーっ!!!」 夏子 「こ、こっちは後ろに居た雪熊モンスターを一撃で屠ったぁーーーーっ!!!」 丘野 「どういう雪合戦でござるか!?」 殊戸瀬「……完成」 ナギー『こ、これがゆきだるまか……珍妙な顔よの……』 メキメキメキメキ……ズズゥウウウンッ!!! 倒れる大木と塵になる熊を確認しつつ、ゴクリと息を飲む。 中井出「フ、フフフ……かつてここまで緊迫した雪合戦があっただろうか……!」 藍田 「一度喰らえば地獄行き……片時も目を逸らすことが出来ねぇぜ……!」 麻衣香「それって既に雪合戦じゃないよ……」 中井出「否だ麻衣香!!奇面組の豪くんだって水晶のような雪球を作っていただろう!」 藍田 「おお!あの場面は何気に好きだぞ俺!奇面組では豪くんが一番好きだ!!」 中井出「おお!お前もか!!」 丘野 「拙者もでござる!!」 夏子 「わたしも!」 麻衣香「実はわたしも!」 殊戸瀬「わたしも」 藍田 「み、みんな……!俺は、俺はひとりじゃなかったんだな!?」 総員 『友情だ……』 ナギー『……なんなのじゃ?』 シード『僕が知るもんか』 ……その日。 僕らはちょっとだけ平和な一時に身を置けたんだと思います。 【Side───End】
はぁ……さて。 この町には通常サイズの人間が向かう場所が酷く限られている。 お蔭で行く場所なんて二つ三つくらいだったんだが、 じゃあそれならさっきまで一緒に居た彼ら彼女らに全然遭遇しないのは、 いったいどんなカッパーフィールドなのだろう。 などと不毛でしかないことを考えつつも開け放ったのはマホーミックという万屋のドア。 オヤジ「……らっしぇい」 よし無愛想だ。 新聞みたいなものを読んだまま、こっちを見もしない。 大判焼き2つを頼んだら物凄く面倒臭そうな声で“200円ね……”とか言いそうだ。 遥一郎「ちょっと訊きたいことがあるんだけど、構わないか?」 だが話し掛けないことにはしょうがない。 俺は少々疲れた頭を奮い立たせるようにして、彼に話し掛けた。 オヤジ「……あぁ?」 遥一郎「ここに中井出博光っていう男が来なかったか?」 オヤジ「さぁ……知らねぇなぁ……」 遥一郎「……真面目に聞く気、あるか?」 オヤジ「さぁなぁ……知らねぇな」 遥一郎「……じゃあ原中って名前に心当たりは?」 オヤジ「───……ん」 なにかが引っかかったのか、オヤジがコンコンとカウンターをつつく。 ようするに─── オヤジ「ここは万屋だぜ?タダで情報得ようなんて甘いんじゃねぇか?」 遥一郎「ほぅらお菓子あげるよー♪」 オヤジ「わぁいありがとー♪って馬鹿にしてんのかてめぇ!!」 いかん、俺も相当疲れてるらしい。 でもいいや、まともに話し合っても無駄みたいだしこのままノリで押し通そう。 遥一郎「解った解ったポーション一個買ってやるからとっとと喋って楽になれ」 オヤジ「な、なんて無礼な客!てめぇ俺は情報提供者だぞ!」 遥一郎「情報を喋らない情報提供者になんの価値があるんだ馬鹿者」 オヤジ「うぐっ……ッチィ……解ったよ。原中ってのはこの巨人の里のNo.2(セカン)
だ」 遥一郎「セカン?」 オヤジ「闘技場のな。巨人たちをも押し退けて、     この国でもっともイルザーグ王に近い闘技者になっちまったヤツってこったよ。     普通サイズの人間なのに、どうなってんだありゃ」 ふむ……。 遥一郎「で、そいつらが何処行ったか知らないか?」 オヤジ「おっと、こっからは別料金だ。原中の情報と行き先の情報は別だぜ?」 遥一郎「ポーション一個買ってやるから」 オヤジ「……とことんセケェなおめぇ……」 あんたにだけは言われたくない。 オヤジ「氷河に行くとか言ってたぜ?なんでも氷の精霊に会いに行くんだとか」 遥一郎「精霊……氷河……なるほど」 あっちも加護狙いってわけか。 それならこっちに協力してくれてもいいと思うんだが。 遥一郎「サンクスおっさん。そんじゃあ」 オヤジ「ふん……金が溜まったらまたこいや、貧乏人」 遥一郎「………」 やはり一言多いオヤジだった。 金なら貧乏じゃない程度には持っているっつーの。 ───……。 そんなわけであとは追うだけだと意気込んだはいいが─── お仲間さんたちはどういうことかそろいもそろって闘技場に群がって騒いでいた。 凍弥 「頑張れ清水ーーーっ!!!」 どごぉーーーん!!! 清水 「ウギャアーーーーーーーーッ!!!!」 田辺 「し、清水ーーーっ!!」 岡田 「清水が潰され《グシャア!》ギャアーーーーッ!!」 田辺 「岡田!?ヒイイ!!俺だけ独りなんてイヤ《ボゴシャア!》ギャアーーーッ!!」 ……騒いでたというよりは、俺が観戦席に辿り着いた時には全滅していた。 相手は巨人だ、文字通り一捻りにされ、彼らは光になって教会に飛ばされた。 凍弥 「よっしゃあ次は俺達だ!行こう鷹志!柿崎!!」 鷹志 「お、おう!」 柿崎 「なんで俺まで……」 三人が通路の中へ駆けてゆく。 それからしばらくすると武舞台のほうから降りてきて、巨人と向き合っていた。 審判 「それでは始めましょう!ランクW・P!開始ィーーーーッ!!!」 ドワァッシャァーーーーン!!!! ドラが大きく高鳴った。 それと同時に三人は巨人へと走り───ゴシャーン……一瞬にして潰された。 審判 「勝負ありぃーーーっ!!あぁっとこれはお話にもなりません!!     開始から一分と保ちませんでした!」 総員 『弱ぇえ……弱ぇえ……』 来流美「王国暮らしが長かったからねぇ……」 真由美「レベルを上げられるミッションなんてそうそうなかったし……」 遥一郎「真由美さん……なんだってみんな闘技場でワイワイやってるんだ?」 真由美「あ、与一くん。ご苦労さま」 遥一郎「……その言葉、     既に俺がいろいろ駆け回ったことへの労いと受け取っていいんだよね?」 真由美「え?ぁやっ……これは弾みで。     と、ところでどうしてみんなここで、って話だったよね?」 はぐらかされた……いいけど。 真由美「実はね?この闘技場のランク付けが……     ほら、あそこの大きな垂れ幕に書かれてるでしょ?」 遥一郎「あ、うん。それが?」 真由美「そこの二番目。ランククィーンを見てみて」 ランククィーン?えっと……チーム原中……原中!? 真由美「なんでも中井出くんたちがここでナンバー2にまで伸し上がっちゃったらしくて。     だから他の男の子たちもそれを乗り越えようと頑張ってるんだけど───」 遥一郎「全員一回戦敗退?」 真由美「そうなの……」 相手が巨人じゃどうにも出来ないってのは解る。 解るんだが……じゃあそれを仕留めてセカンに至った中井出達は何者なんだ? よっぽどレベルが高かったか、はたまた武器が良かったかだな。 どちらにしろ凄いことだ。 遥一郎「ところでみんなー!?中井出たちは氷河に行ったらしいからそろそろ───」 清水 「閏璃!金かしてくれ!エントリー代金すら無くなった!!」 凍弥 「だめだ!俺だってもう1000$しかないんだ!!」 清水 「同級のよしみで!な!?」 凍弥 「ダメヨー!!」 遥一郎「戻ってくるなり続行宣言するようなこと言うな!!目的忘れたのか!?」 凍弥 「え?なにそれ」 清水 「目的?知らねー」 遥一郎「………」 神様。 こいつらいっぺん殴っていい? 遥一郎「はぁ……もういい、俺だけでも先行ってる」 真由美「ごめんね、与一くん。鷹志も次の一回で終われると思うから、そしたら追うね」 遥一郎「りょーかい。ノア、サクラ、お前らはどうする?」 ノア 「許されるのならご一緒に」 サクラ「いくです」 遥一郎「蒼木は?」 澄音 「ごめん、僕ももう少しここに居るよ。雪音が参加するって言ってきかないんだ」 遥一郎「聞き分けのない駄々っ子か貴様は……」 雪音 「そんなんじゃないよー!大丈夫大丈夫、パパッと勝ってすぐ追うから!!」 遥一郎「期待しないから待たないよ」 雪音 「うわヒドイ!!期待しないで待ってるよって言うとこだよここ!!」 遥一郎「知らん」 そっちが我が儘の限りを尽くすならこっちだって知ったこっちゃない。 そうだよな、こんな時くらいハメをいくら外したっていい筈だ。 遥一郎「よし行こうノア、サクラ。出来る限りの速度で、中井出たちを追おう」 ノア 「畏まりました、マスター」 サクラ「わかったですー」 ピピンッ♪《澄音、雪音、レイチェルと別れました》 ……うん、新たなる一歩をここから。 さあ参りましょう、相当遠くにある、氷河へと。 Next Menu back