───冒険の書59/氷山に登ろう!───
【ケース214:弦月彰利/ムーラン紅しょうが】 ヴァッサヴァッサ…… 彰利 「ギギギー!!《カッ!!》」 などと、ガーゴイル飛びしながら顔を輝かせてる場合ではなく。 さてさて椛と聖はちったぁ反省してくれたかね? 彰利 「ふーむ……居ないねぇ」 以前置いてきた場所には流石に居なかった。 ウーム、素直にその場に居るってことは流石に出来んかったか。 そりゃそうだね、平原に普通に置いてきたわけだし。 などと思いつつ飛んでおると、 なにやら空の向うから我に向かって飛んできている物体を確認。 あれは───うおう。 ゼット『───?弦月彰利か』 彰利 「やーほー。散歩中?」 ゼット『たわけが、散歩でこんな場所を飛ぶわけがない』 彰利 「たわっ……!」 どうしてみんな、僕にたわけたわけ言うんだろうね。 ……俺がたわけてるからか。 彰利 「ゼットってもう黒竜王にはなれたんか?」 ゼット『とっくにだ。急いでいる、もう行かせてもらうぞ』 彰利 「そりゃいいけど。あのー、みさおさん?そんなあからさまに無言で無視せんでも」 みさお「───」 ゼット『状態異常“沈黙”になっているだけだ』 彰利 「あ、あらそうなん?」 ゼット『今は山彦草を手に入れに行く最中だ、邪魔をするな』 邪魔してるわけじゃないんだが。 と言おうとしたが、ゼットはシュゴーン!と物凄い速さで飛んでいってしまった。 彰利 「……頑張ってんのね、一応」 でもみさおに甘いところは相変わらずのような。 既に尻に敷かれてるんじゃあるまいか。 彰利 「………」 俺も含めて、俺の知り合いってとことん女に頭上がらんよな……。 彰利 「まあいいコテ、ここらに聖たちは居ないようだからもっと向うのほうを探すか」 俺は黒い飛翼をはためかせると、TPに気を付けながら空を飛んだ。 さてさて……どこに行ったのかねぇ。 ───……。 ……と、そんなわけで随分遠くに来た僕ですが。 彰利 「おや、ホギッちゃん発見」 草原を軽快に走る三人の人影を発見。 言葉通り、ホギッちゃんとノアっちと桃色ッ子だ。 彰利 「ヤー!!」 遥一郎「へ?おぅわっ!?」 ノア 「敵!!」 彰利 「ノー違う!つーか話し掛けただけで敵扱いなんて勘弁してプリーズ!!」 遥一郎「ゆ、弦月……?お前その格好……」 彰利 「オウヨ、ブラックオーダーなり。     TPを少しずつ消費して、黒い翼で空を飛ぶことが可能さ」 ヒラリと舞ってシャラァ〜ンとキメてみた。 ……溜め息を吐かれたのは見なかったことにしよう。 彰利 「そんなに急いで何処行くん?」 遥一郎「ああ、ちょっと中井出が居るところまで」 彰利 「中井出?ヤツになにぞか用でも?」 遥一郎「閏璃たちがな、加護が欲しいっていうからそれに付き合ってる。     今のところ特に目的がなかったからって理由が一番だけど」 彰利 「暇潰しか。つーことはキミは既に加護を?」 遥一郎「ああ。ランダークの王城で会った時にもらった。     それからいろいろあって、閏璃たちとは癒しの関所で遭遇したんだけど……はぁ。     今思うとこんなのに付き合うんじゃなかったって呆れてくるよ」 彰利 「ヤツは自由奔放じゃからのう。あい解った!     この及ばずながらこの俺が仲間になってやるぜ〜〜〜っ!!」 遥一郎「すまん、ようやくやかましいやつらから解放されたところなんだ。間に合ってる」 彰利 「ひでぇ!!」 あっさりと断ったよこの元精霊野郎は!! 遥一郎「まあ加護のことはこの際どうでもいいんだ。     問題は本当にあいつが拉致したかどうかなんだ。     ランダークで会った時の精霊は楽しそうにしてたけど、     関所の惨状見たあとじゃあ素直に頷けない」 彰利 「関所ってあの癒しの?ああ、あれなら丘野くんがブチ壊したけど」 遥一郎「え……なんでだ?」 彰利 「エネルになった俺をコロがすため」 遥一郎「………」 彰利 「むっ!?どうしたのかね!?もしや偏頭痛!?     クロマティ高校の前田くんのように頭を抱えるとは!!」 遥一郎「ようするに全部お前の所為ってことだな……」 彰利 「ぬぅ、なにやらよく解らんがなんでも人の所為にするのはどうかと思うな僕」 遥一郎「なんでももなにも、今回のことに関しては全てにおいてお前が悪い」 勘弁してくれ……と溜め息を吐く精霊野郎。 彼の幸せポイントが1減った。 フフフ、知ってるかい?溜め息吐くと幸せが逃げるんだぜ? 遥一郎「……はぁ。疑惑は晴れたわけだ。     あの精霊は本当に自分の意思で中井出たちと一緒に冒険してるってことだな」 彰利 「おお、あのちっこいのね。かなり楽しそうにしてたし、そりゃ間違いねぇぜ?」 遥一郎「だったらもう俺達が追う必要は無いってことだな。はぁ……」 駆けていた足がゆっくりと止まった。 ふぅむ、どうやら彼は精霊さんから真実を聞きたかっただけらしい。 元精霊としての気遣いってやつかね? よく解らんが。 遥一郎「じゃあ巨人の里に戻るかな。蒼木たちをあのままにはしておけないし」 サクラ「戻るです?」 遥一郎「戻るです」 彰利 「俺も行くぜぇ〜〜〜っ!!」 遥一郎「結構人数居るから、桐生たちのパーティーにtell送られることになると思うぞ?」 彰利 「よし僕行かない」 妻たちに捕まるのだけは御免です。 自由に飛びまわれる羽があるのに飛べなくなるのは悲しすぎる。 遥一郎「やっぱり桐生たちから逃げてたか」 彰利 「う、うむ。今の僕はなにより自由を愛します。     最初は悠介と一緒に旅してたんだけどね、いろいろあって別れた。     今は何処でなにやってるやら」 遥一郎「そっか。あ、それじゃあな。俺は蒼木たちと合流してまた旅に出るから」 彰利 「ホエホエホー、縁があったらまた会おう」 ひらひらと手を振ると、ホギッちゃんと二人の小娘は去っていった。 彰利 「………」 そして取り残される、手を振る僕。 えーとどうしようか。 また懲りずに中井出たちにちょっかい出してみる? 実はレオンを追っ払ったおかげでレベルアップしたんだよね、僕。 前回はただ月鳴力を駆使して遊んだだけだし…… 秘奥義使って戦えば、きっと僕が勝てるさ! つーわけで氷河へゴー!! ───……。 さあやって来ました氷河の国!! ウハーイ、一面銀世界さー!! でも広いし吹雪いてるし視界が悪いったらない。 えーとマップマップと…………もうちょい南に行ったところに町があるね。 きっと中井出もここに違いねぇ。 彰利 「いやしっかし寒いねアンタ!!視界も悪いし足は埋もれるし!!     進みづらいったらないよこのっ!!」 TPが尽きたので現在は徒歩中である。 歩く度にスボッスボッと鳴る雪がなんだか懐かしいが、 懐かしむよりまず前に進みづらい。 吹雪いてなけりゃあ僕だって雪と戯れて遊んだんだろうけどね。 彰利 「しゃあない。ここは一旦座って、TP回復するまで待ちますか」 そんなわけで。 彰利 「ジャガー目潰し!!」 俺は雪原の上に体育座りで座り、TPの回復を待った。 さらに待った。 ひたすら待った。 やがてTPがマックスになると翼を生やし、空をバッサバッサと…… 彰利 「進めねぇ!!吹雪が凄すぎだよこれ!!     ちくしょー!!雪が邪魔で前が見えねーざます!!」 ……そういや俺が知る限り、雪が降る時って大体吹雪いてたよね。 月詠街でホワイトクリスマスだ〜、なぁんて時は大体吹雪いたもんだ。 ……もしかしなくても、俺って吹雪男? 彰利 「………」 構わん!マップで見れば南!とにかく南に行けば町があるのだ!! 前は見えないがマップを見れば辿り着ける筈!! そうと解ればレッツビギンだぁ〜〜〜っ!! ───……ちなみに。 そうして進んだ五分後、俺は前方不注意で思いっきり氷河の海にダイヴすることとなる。 物凄い冷たさが俺を襲う中、我が体力はあっという間に底をつき。 やがて目が覚めるとノースノーランドの教会に立っていた。 ……こんな辿り着き方、したくなかったなぁ……。 そんなことを思いながら、神父のありがたい説教を受ける俺であった。
【Side───提督さん】 北風吹き荒ぶ銀世界の町、ノースノーランド。 俺達はそこの宿で暖かいものを飲むと、毛皮のマントを買ってからフィールドに出た。 しっかりとセルシウスが居る場所の情報も得たし、あとは氷河近くの氷山に行くだけだ。 そこにセルシウスは居るのだという。 中井出「うわっ……吹雪いてるな……」 藍田 「ノースノーランドに入る前は全然降ってもいなかったのに」 丘野 「天候の変わり目など解らんものでござるからな。     それより早く進むでござる。体の温度が無くならないうちに」 殊戸瀬「うん」 ルルカ『ゴゴゴゴゴゴゴゴェエエエエエ……!!』 麻衣香「ロドちゃん、物凄く震えてるけど大丈夫?」 殊戸瀬「大丈夫。毛皮のマントを二つ余分に買ったから、それをつけてあげれば」 ゴソ……ゴソソッ……マキィンッ♪《ルルカに毛皮のマントを装備させました》 中井出「おお!何故か雄々しい!!」 藍田 「しかも寒くなくなった途端にキリっとした目になった!」 丘野 「さすがミルルルカでござる!!」 殊戸瀬「じゃあ、いきましょう」 ルルカ『ゴエッ!』 ふむふむなるほど……ルルカは寒さに弱い、と。 しかしなんだな、毛皮のマントをつけた動物ってのもおかしなものだ。 などと思いつつ、俺達は先を急ぐことにした。 【Side───End】
ザガシャアッ!! 彰利 「ちくしょー居ねーざます!!何処いったざます下等生物めー!!」 教会から飛び出した俺は、それこそ雪を掻き上げるような勢いで走っていた。 しかしながら中井出が居ない! BADちくしょう!何処行きやがったあの野郎!! まさかこの俺が怖くて逃げ出したんじゃあねぇだろうなぁ〜〜〜っ!! 彰利 「オ?ちょいとそこゆくオネーサン?     ここにさ、スネ夫みたいな髪型したタレ目のエロマニアが来なかった?」 女性 「……?なに言ってるのかよく解らないわ」 彰利 「ヌ……では語尾に“ござる”をつける猫目の忍者が来なかった?」 女性 「……ああ、その人なら外に出たわよ?なんでもセルシウスに会いに行くんだとか」 彰利 「ヌウ!」 なんということ!既に外に出た後か!! 彰利 「おのれぇえええ!!絶対に許さんぞムシケラどもめ!!     このフリーザ様を出し抜けられるとでも思っているのかーーーっ!!     ジワジワとなぶり殺しにしてくれるわーーーっ!!!     ……あ、セルシウスの居る場所ってどこ?」 女性 「こ、ここから東に行ったところにある氷山、です……」 彰利 「謝謝!!」 俺は黒と月鳴力を同時行使し、黒い雷となって外へと一気に飛んでいった。 これならば吹雪に負けず進んでゆける!! ィヤッハッハッハッハ!!待っていろ青海人め!! 前回のようにはいかないことを、身をもって思い知らせてやる!! 【ケース215:中井出博光/スコットランドジニー】 スボッ……スボッ……スボッ……スボッ…… 中井出「んっ……はぁ〜〜っ……!!吹雪、余計に強くなってきたな……!!」 藍田 「元々この氷山にはずっと吹雪が吹いてるらしいけど……こりゃキツい……!!」 丘野 「砂漠の砂嵐の中を歩くジャンボ村の村長の気持ちが解るでござる……!!」 吹雪は依然やまず、むしろ山に入った途端に強くなった。 町の人から山にはいつも吹雪が吹いているとは聞いたものの、正直吹雪を甘く見てた。 ナギー『さ、さっさとセルシウスに会って帰るのじゃー!』 中井出「否ァ!!断じて否ァ!!」 藍田 「我ら原中!宝箱をそのままにして逃げ帰れるものか!!」 丘野 「意地でも氷山全てを探索し、宝箱を一つ残らず取るでござる!!」 麻衣香「わたしたちは宝箱の一つも見逃しません!!」 夏子 「たとえそれが命を賭ける探索であっても!」 殊戸瀬「わたしたちは───一歩も引きません!」 総員 『それが!原沢南中学校迷惑部なのです!!』 ナギー『な、なんと……命より宝が大事なのか?』 中井出「金はっ…………命より重い………………っ!」 藍田 「なにせ俺達、死んでも生き返るしな」 中井出「それならたとえ無茶でもアイテムが欲しいだろ?」 シード『さすが父上だ……。己の欲のためなら命も顧みないとは……』 ナギー『そうか?なんだか褒められたものではない気がするのじゃ……』 どうだろうと構わん! ともかく我らはまず宝を探す!! 道草上等!寄り道上等!でも宝箱を見逃すことだけはイヤなの。 中井出「むう!ではそろそろ全力で宝箱探索を開始するものとする!     それでは!各自張り切って宝箱を探せぇーーーっ!!」 ザザァッ!! 総員 『Sir(サー)!!YesSir(イェッサー)!!』 敬礼とともに、まず低い位置から探索に回る。 隠し扉とか、出入り口を塞いでる岩などが無いかもきっちり調べながらである。 さて…… 中井出「そっちはあったかぁーーっ!?」 丘野 「ねぇでござるーーーっ!!」 麻衣香「全然ダメーーッ!!」 夏子 「こっちもーーーっ!!」 殊戸瀬「こっちもダメだった」 藍田 「こっちもだーーーっ!!」 低い位置探索……結果無し。 ああちなみに。ナギーとシードは寒いからという理由で、 ルルカの毛皮のマントに潜るような形で休んでいる。 中井出「じゃ、次行くか」 藍田 「そだな」 丘野 「……それはそうと睦月?     どうせならさっきみたいに頻繁に叫んだほうがいいでござるよ?     “わたしたちは───一歩も引きません!”のように」 殊戸瀬「………」 丘野 「顔、真っ赤でござるよ?」 どうやら恥ずかしかったらしい。
【Side───エネル】 バヂィッ!! エネル『ィヤハハハハハ……ここが氷山か……実に絶景!!』 ドドンッ!! エネル『と、一応やることやったことだしとっとと追いつくぞー!     やつらのことだ、さっさとこんな寒い場所からは逃げようって魂胆に違いねー。     そうはさせんヨ!?すぐ追いついて俺の力を見せてやるのサ!!』 精霊とやらはきっと頂上に居る筈! ならばそこ目指して一直線すれば間違いは無し!! エネル『ゴー!!』 バヂィッ!!ドシュゥウウーーーーン……───!! ……。 …………。 中井出「あったかー?」 丘野 「いやー、ないでござるなー」 藍田 「普通に考えて、氷山に宝箱が置いてあること自体がおかしいよな」 麻衣香「それ言うんだったら火山にあるのもおかしいと思うし」 藍田 「む……ならあるってことか?」 【Side───End】
……。 中井出「ありゃ?さっきなんか飛んでったか?」 藍田 「んや?気の所為じゃないか?」 丘野 「拙者もなにも感じなかったでござる。     拙者の忍者センサーに引っかからんのでは、恐らくなにも飛んでないでござるよ」 麻衣香「そのセンサー、本当に効果あるのか疑問なんだけど」 丘野 「いや、まったくの勘でござるから効果なぞ微塵にもないでござるよ」 ダメだろそれ。 藍田 「提督、このままでは埒があきません」 丘野 「ここはやはり、バラバラになって探したほうがよろしいのでは……?」 中井出「何を言っているヒヨッ子どもが!     貴様らは吹雪の怖さを知らんからそんなことが言えるのだ!!     人数はこのままで探す!迷わないよう気をつけろ!!」 藍田 「イェッサー!!」 丘野 「失礼しました!サー!!」 中井出「ではこれより探索速度を上げるものとする!!目一杯とばせぇーーーっ!!」 男衆 『サーイェッサー!!』 俺と藍田と丘野の三人は敬礼し合うと手近な壁や暗がりを探索しまくった。 もちろんAGIをマックスにして。 この方が効率がいいし、 モンスターが出てきたらその速度のままに攻撃を避けてからステータスを戻せばいい。 藍田 「───ハッ!!て、提督!提督ーーーっ!!     ここの巨大岩の向うに空洞があるのを確認しました!サァーーーッ!!」 中井出「なにぃ!?」 丘野 「それは本当でござるか藍田殿!!」 藍田 「ホントもホント!ほら!」 駆け寄って調べてみる───と、確かに巨大岩の小さな隙間から風が来るのが解る。 中井出「ウヌウ!では早速この岩を破壊しよう!!」 丘野 「しかし提督殿!これは相当硬いでござるよ!?」 中井出「……いけそうか?藍田二等」 藍田 「もちろんであります!そんじゃいっちょォ……!」 トンッ、と藍田二等が跳躍する。 その高さは既に人の跳躍力を越えている。 STRマックス状態でのみ可能な、地面を強く蹴ることで完成する跳躍力である。 そこから身を捻ると高速回転を始め、 やがて重力が藍田二等の身体を地面に向けて落とす頃。 藍田 「“粗砕”(コンカッセ)
!!」 バゴォッ!!バガシャッ……ガラガラ……ッ……!! 藍田 「ふぅっ……こんなもんで如何でしょ、提督」 踵落としで巨大岩を破壊した藍田二等は、着地してこちらをゆっくりと向くと、 まるでサンジくんのようにニヒルな笑みを浮かべたのだった。 おおすげぇ……あの硬そうな巨大岩を蹴り一発で粉々……流石だ。 藍田 「さて中身は?───祠?」 果たして、中には───祠というよりは何かの祭壇のようなものがあった。 そこには一つの巻物が置かれており、藍田二等がそれを手に取る。 藍田 「おお……飾られたナマの巻物って初めて見た」 中井出「俺も……豆が持ってたものってのもあるけど、これはなんつーか雰囲気がある」 丘野 「随分と年季の篭った巻物でござるな……。     豆に見せてもらったものとは大違いでござる」 言いたい放題であるが、事実こんな見事な造型の巻物は初めてなのだ。 内容はいったい……!? 藍田 「体術……奥義書……体術奥義書!?」 中井出「体術!藍田にぴったりじゃないか!」 丘野 「体得するでござるよ!」 藍田 「お、おお!もちろんだ!えーとなになに……!?」 しゅるしゅるしゅる……しゅる…… 藍田 「ふむふむ……ふむ……」 藍田がしゅるしゅると巻物を伸ばしてゆく。 やがて───でてーけ・でーてーててーん♪《藍田が奥義を覚えた!》 効果音とともに、藍田が奥義を体得した!! 丘野 「どんな技でござるか!?」 中井出「見せろ!」 藍田 「TPを消費して威力を高める永続型の奥義みたいだ。     攻撃に“気”みたいなのを上乗せ出来るらしい。内部にダメージを徹すみたいで、     ガードされても全ての威力を殺されることはないみたいだ。     しかもヒットすればもちろん威力は相手の身体を貫通する」 中井出「おおお……!!そりゃすげぇ!!お、俺も読ませてもらっていいか!?」 丘野 「拙者もでござる!!」 藍田 「体術限定らしいけど」 中井出「パチキやヤクザキックならOKだ!」 丘野 「覚えておいて損はないでござるよ!!」 マキィンマキィンッ♪《中井出、丘野が奥義を覚えた!》 ……フオオ!この奥義を覚えたっていう実感がたまらねぇYO!! いや、YOじゃなくて。 声  「博ちゃーん?こっち居るのー!?」 などと頭を痛めていた時、洞穴の外から麻衣香の声が聞こえた。 中井出「む!しまったそういや探すのに夢中で麻衣香たちを忘れてた!     うぉーい!!ここだー!洞穴の中ー!!」 そうして麻衣香たちを呼ぶに至り…… 入って来た女衆に奥義書を見せ、奥義を覚えてもらった。 夏子 「これって……?」 中井出「衝撃を“(とお)す”奥義だな。     TPを漫画であるような“気”として放つもの。たとえば───」 俺は即席で雪ダルマを作り、 マイトグローブを装着した拳を構えてパァンッ、とその顔部分を殴った。 すると───バシャアッ! 麻衣香「え───?」 夏子 「内側から……溶けた?」 中井出「とまあこのように。加える衝撃を効果的に対象の内側に打ち込める奥義だ」 体術だけでだけど。 でもむしろこういう奥義はありがたい。 中井出「よぅし!この調子でお宝を探そう!」 総員 『サーイェッサー!!』 さぁ探そう!狂おしいほど! この奥義書の発見は僕らに夢を希望を与えてくれた! 藍田 「ジョワジョワジョワ!!まだきっと何処かにあるに違いねぇ〜〜〜っ!!」 丘野 「ヌワッヌワッヌワッ!!いくぜライトニング〜〜〜ッ!!」 藍田 「おお〜〜〜っ!!イチ!ニ!散ッ!!」  ドシュドシュンッ!! 麻衣香「速ッ!!」 掛け声とともに、まるで忍者のように飛び去る二人。 俺はそんな二人を見送りつつ、女性陣を促した。 麻衣香「ん、そうだね。ここでこうしてても仕方ないし」 夏子 「暖かい飲み物飲んだらすぐ追いかけるね」 殊戸瀬「なんとかなる」 中井出「そかそか。じゃあ変わらず調査を続けるから、焦らず付いてきてくれ」 夏子 「追えたらね」 藍田二等のあの速さを見て、普通に追うのは不可能と踏んだらしい。 確かにあの速さはもはや奇跡的だ。 っと、俺もこんなことをしている場合ではない。 もっと探さねば。 と踏み出した途端、女性陣もウムスと頷いて駆け出した。 中井出「なにぃ!?」 麻衣香「ふはははは!我が夫博光よ!     女性陣だとはいえ我ら原中がただ黙っているだけだと思うたか!!」 中井出「熱でもあるのか?」 麻衣香「そこで素で返さないでよ!!」 中井出「いやまあ冗談だが。するとヒヨッ子ども、探索に協力し続けるというのか?」 夏子 「もちろんでありますサー!!」 殊戸瀬「女だからと見縊るなかれ」 中井出「そうか!ならば再び探索開始!!     自らに、そしてシードたちに負担がかからん程度に探索すること!!以上だ!!」 女性陣『サーイェッサー!!』 ドタタタタタッ……!! ルルカの足跡を大きく残し、女性陣+シードが洞穴から出て行く。 といってもやはり、 シードとナギーは毛皮のマントとルルカの羽毛の間でヌクヌク状態だが。 さて、それじゃあ俺も探索を続けますか。
【Side───雷男爵】 ゴロゴロゴロゴロ……!! 彰利 「ギギギーーーッ!!《カッ!!》」 いやだから、雷になりつつ顔を輝かせてる場合ではなくて。 まいったね、もう頂上ですよ? 中井出の“な”の字も無いや。 もしかして雪女に凍りつかされた!? 彰利 「ちくしょー!出て来い雪女ー!隠れたりして卑怯だぞー!!」 なんて言っても無駄なんだけど。 さてどうしたもんか───どうやら入れ違い擦れ違いになってしまったようで。 ほんなら氷の加護でももろうととっととおいとましまひょか? 彰利 「物申す!我はゴッド・エネル!かなり黒いが気にするな!!     故あって貴様の加護を受け取りに来た!今すぐ出てきて加護寄越せコノヤロー!」 …………ヒュゴォオオオオオオ……!! 出てこねぇ。 彰利 「コノヤロー!     出てこない気ならこの氷山ごとビッグバンかめはめ波でコロがすぞー!!     お、俺は本気だぞコノヤロー!!」 ヒュゴォオオオオ……!! ……やっぱ出てこねぇ。 まさか既に何者かに襲われ、この場所には居ないとかそういうことか? なにせセルシウスだし。 恐らく瘴気に当てられて狂ったか、モーラに力を奪われたとかそんなとこだろう。 なにせセルシウスだし。 ゲームでも空界でもろくな登場の仕方してねぇからなぁ、セルちゃん。 ならば俺がやることはただ一つ!! 【Side───End】
ゴゾォ……!! 藍田 「ウフフフフ……!!あるわあるわ、宝の山じゃああ……!!」 丘野 「アイテムとか食材ばっかだったけどなー」 藍田 「な、なんでこんな時だけござる語使わないんだお前は」 ともあれ探索は無事終了。 あとはすぐ目の前の頂上に辿り着くだけである。 俺達は全員が集合していることを確認すると、 一度ゴクリと喉を鳴らしてから頂上に辿り着いた。 すると、ひときわ強い吹雪の後に景色がバァッと開け───── エネル『ィヤッハッハッハッハッハ!!!───絶景』 その先にどっかで見た耳たぶが居た。 エネル『なんの用だ青海人よ……ここは神の住むべき場所。     おいそれと下界の者が来ていい場所ではないのだが……?』 藍田 「……ハッキリ言って貴様に用は無い!失せろ!!」 エネル『うわヒデッ!!     それがわざわざこんな寒い場所で待ってたクラスメイツに言う言葉か!?』 丘野 「さぁてセルシウスはっと……居ないなぁ」 殊戸瀬「居ない……」 エネル『かろやかに無視すんなこの野郎!!』 殊戸瀬「……そこの耳たぶ、なんの用?」 エネル『みみたぶ!?福耳って言えこの野郎!     じゃなくて、えーとあのー。我と戦え!!』 総員 『いやだぁ』 エネル(健に似てる……っ!!) 総員考えは同じだった。 経験値にならない戦いなど無駄! むしろ我らはここにセルシウスを探しに来たのだ!! 神様と戦っている暇など無し!! エネル『チィならば……セ、セルシウスの身柄は俺が預かってるのですよ?     だから俺を倒さん限り貴様らは永劫彼女にゃ会えねーーーっ!!』 藍田 「羊肉(ムートン)ショット”!!ガカァッ!! エネル『キャーーッ!!?……あ?』 いきなり戦闘条件のようなものを語りだしたエネルに向かって、 藍田二等が飛び蹴りをかます。 だが藍田二等がエネルの後ろに着地してもまだ、 エネルにダメージは無いように思ドッゴォオオオオンッ!!!! エネル『ぎゃあああああああっ!!!!』 総員 『ヒィイ!!?』 突如!エネルが勝手に吹き飛んだ!! そう、まるでサンジくんとの戦いで蹴られた際、勝手に吹き飛んだボン・クレーのように! あ、いや……だから羊肉ショットなのか? ともかく摩訶不思議現象をこの目で見てしまった。 恐らく彼が放った蹴りが先ほどの奥義と相まって、超真空現象を巻き起こしたのだろう。 うん、きっとそうだ。 だからああやって衝撃が後から現れ、 本来吹き飛ぶ筈のインパクト時からズレた状態で吹き飛んだのだ。 そしてああ……段々迫りつつある自分が怖い。 もう慣れたもんだと思っていたが、 まだ常識に囚われていた部分が俺にもあったんだなぁうん。 ……そう、ここはファンタジー。 僕らの夢と希望がウェルカムする世界だ。 改めて確認する是非も無い───よし受け入れよう!! まあとりあえず氷山の頂から地面に向けて落下していった神にさよならの拍手を。 中井出「で、セルシウスは何処かな」 丘野 「うわっ!めっちゃいい顔!!」 中井出「気にしていても埒も無し!!そう!そうだよ!僕らは原中!     僕らがこんなことでどうする!!     常識など中学の頃にポリバケツに便利に収納した!そうだろう!?」 丘野 「もちろんでござる!しかし突然どうしたでござる?」 中井出「いや。俺の中で“常識”が暴れ出そうとしてたから牢獄に閉じ込めてたとこ」 ふう危ない。 危うく常識人になるところだったぜ……。 ………………マテ。それって危ないことなのか? まあいいや!常識だろうがなんだろうが、 非常識の方が面白いということを我らは彰利たちとの出会いで知った!! ああもちろん腹を切り裂かれる感触だとか毒を盛られる地獄だとか、 ゾンビ(男性)とディープキスする感触だとか生々しい初体験もあったよ。 ───ハテ。毒?ゾンビ?……………… 中井出「思い出したぁああっ!!」 総員 『オヒャーーーゥア!!?』 オォオオオオオ俺俺オォオオオオオオッ!!!!! ゾゾゾンビゾンビビビビギャアーーーーーーーーーーッ!!!!! 丘野 「何事でござるか提督殿!急に暴れだしたりして!!」 藍田 「うおっ!?なにやら雪を口に詰め込み始めた!!     しかも涙を流しながら手の平で解けた雪で口を洗っている!!     こ、これはあの伝説のペンドルトンマジック!!」 麻衣香「マジックじゃないでしょあれ」 藍田 「いや、語呂が良かったもんで。しかしそうなると、恐らく提督は───」 中井出「麻衣香!!」 麻衣香「ぇあっ!?は、はい!?」 中井出「アイラァアアビュゥウウウウウッ!!!!」 がばしぶちゅぅううううっ!!!! 麻衣香「んくっ!?んぐぅううううううっ!!!!!」 夏子 「うわひゃあーーーーっ!!!?」 丘野 「こ、これは……!なんとも情熱的なキッス!!」 藍田 「雪の舞う景色で二人抱き合い、涙を流しながら熱いキッス……!!     すげぇ……!まるでドラマのワンシーンだ……!!」 殊戸瀬「……麻衣香の方、     どう見てもゾンビとの間接キスに泣いてるようにしか思えないけど」 総員 『言わないやさしさってあると思うんだ……』 ───しばらく、おまちください─── どしゃーーーん…… 麻衣香「うぐっ……うっ……汚された……」 藍田 「ヒィイ!今度は綾瀬が雪で口を拭ってる!!」 丘野 「嫌な絵面だなぁ……」 夏子 「ゾンビとの間接キスだもんね……想像するだけでも泣きたくなるよ」 殊戸瀬「さすがエロマニア……ゾンビとのベーゼを理由に女子の唇を奪うなんて」 中井出「誰が原因でゾンビとベーセしたと思ってんの!!」 殊戸瀬「提督」 中井出「違うよ!!殊戸瀬がモンゴルの英雄を俺に食べさせたからでしょ!?     なに平然と人に罪押し付けてるの!ちょ、やめなさい指差すの!     失礼でしょ《ブスッ》うもごぉおおおォオオぉおォっ!!!!     な、なにっ!?なんで急にサミングするの!?     指差すなって言われてなんでサミングなの!?     え?サミングするなとは言われてない?     そんな当たり前のこと言う必要ないでしょ!!     何処の世界に平然と人の目にサミングするヤツが居るの!!     “サミングしていいよ”なんて笑顔で言える世界なんて滅んだほうがいいよ!!」 殊戸瀬「……あなたの種族が滅んでしまったあの頃のように?」 中井出「なにモノモノしく語ってんの!!そんな種族存在しないって言ってるでしょ!?     そもそもあの頃ってどの頃!?知らないよそんな頃!!     そんな悲しそうな顔で視線逸らしながら言っても僕頷かないよ!?大体───」 シャラァアア……ン…… 中井出「ややっ!?《ブスッ》くぉォがぁあああァァアァぁあぁっ!!?     だからなんでサミングすんの!?俺に恨みでもあんの!?」 殊戸瀬「……なんとなく」 中井出「なんとなくで目潰しされたら近い将来失明するよ!!まったく……」 もういい。 殊戸瀬のことはほっといて、まず出現した───セルシウスと話をしよう。 セルシウス『……ようこそ、旅の人。ここまでの道のり、ご苦労様です』 藍田   「おのれ妖怪!!」 セルシウス『えぇっ!?』 丘野   「きっと瘴気に当てられて暴走してるに違いねぇでござる!!」 夏子   「戦闘準備ー!」 麻衣香  「こっちはいつでも!」 殊戸瀬  「屠る気満々……クックック」 セルシウス『あ、あのっ……?わたしはべつに瘴気に侵されてなど……』 総員   『そうなん!?セルシウスなのに!?』 セルシウス『あのですね……いったいどういう先入観から───』 中井出  「騙されるなみんな!悪霊は人を騙すのが上手なんだ!悪霊退散!」 セルシウス『退散しません!!そもそも誰が悪霊ですか!!』 中井出  「貴様だ!」 セルシウス『即答!?な、なんて失礼な……!       貴方はまさかそんな失礼なことを言うためにここまで来たのですか!?』 中井出  「───いえいえ全然。むしろ加護が欲しくてここまで来た。       なのに瘴気に当てられて話にならないからこうして───」 セルシウス『瘴気になど当てられていないと言っているのだ!!       いい加減にしろ貴様!!』 総員   『……へ?』 セルシウス『あっ……い、いえあの、し、失礼しましたわオホホホホ……?』 一瞬にして確定した。 こやつめは……猫被りだ。 中井出  「おのれ貴様……精霊のくせに猫被るとは何様だコノヤロー」 セルシウス『そっちの方が何様だ!!精霊であるわたしに対してなんだその口の利き方!』 男衆   『問われりゃ言おう───俺様だ!!』 セルシウス『〜〜……』 彼女は頭を痛めたようだった。 藍田   「それで貴様。今まで何処でなにをやっていた?       まさか本当にゴッドエネルに捕まっていたとかそんなことはないよな?」 セルシウス『ぁかっ……いえそのっ……!?       べ、べべべべつに発声練習とかしていたわけではありませんわよー?       ええもちろん、一生懸命丁寧な言葉を練習してたなんて、       そそそそんなことは当然ありえませんわよー?』 どうやらウソがつけない体質と見た。 ああ……なんつーかこの世界ってまともな精霊が全然居ない気がしてきたなぁ……。 丘野   「そうでござるかそうでござるか……発声練習をしていたのでござるね?」 セルシウス『そうではないと言っているでしょう!!       わわわーたくしは高貴な精霊ですから?元々こうやって丁寧に話すのが』 中井出  「いいから加護くれ」 セルシウス『少しくらい話を聞こうとは思いませんの!?』 中井出  「解った解った、貴様が捨て猫を見ても友達の前では知らん顔してた割りに、       しばらくして友達と別れた後、       大慌てで猫の袂へ駆けつける性格だってのはよーく解った」 セルシウス『ななななんですのその奇妙に詳しい例え話!!       わわわたくし生憎と猫が嫌いですの!そんなことはありえませんわよ!?』 殊戸瀬  「丁寧語がいつの間にか高飛車になってる」 セルシウス『ふくっ!?き、気の所為ですよ?わわわわたしは清楚で可憐な』 男衆   『ゴンザレス』 セルシウス『セルシウスだ!!セ!ル!シ!ウ!ス!!』 どこらへんが清楚で可憐なのか教えてほしかった。 セルシウス『もういい貴様ら帰れ……貴様らに渡す加護など無い……。       どうせわたしはガサツで男っぽくて冷たい女だ……』 中井出  「おお!しゅんとした顔が案外カワイイ!」 セルシウス『えっ……?』 丘野   「よく見るとかなりの美人でござるよ!」 セルシウス『ほ、本当か?』 藍田   「おお!肌も綺麗でとってもステキだ!!」 セルシウス『本当!?本当にそう思うか!?』 男衆   『ウソじゃ』 セルシウス『───』 ドゴゴシャバキゴキガシャゴシャゴワシャシャシャアアアア!!! ギャアアアアアーーーーーーーーー………………─── ……その日。 吹き荒れる吹雪に紛れて、掠れるような絶叫が氷山から轟いたのを、 ホワイトラビット狩りをしていたコリアノフさん(41)が聞いたという。 Next Menu back