───冒険の書60/夢見るアンディさん───
【ケース216:中井出博光(再)/セルシウスさん】 ───……ンビンビンビンビ……ホフー。 藍田   「いやぁ〜、寒い場所で飲むホットうまティーは格別だねぇ〜」 夏子   「まったくだねー、体中に染み渡る気分」 丘野   「セルシウス殿も一緒に飲むでござるかー?」 セルシウス『平然とお茶会を開くな!!』 さて……セルシウスの暴走から5分後。 散々ボコボコにされた我らは、うまティーを飲んでHP回復に励んでいた。 いや、やっぱ美味いぜうまティー。  ◆うまティー  美味い紅茶。とにかく美味い。  *神冥書房刊:『ナイスガイン考察』より 丘野 「いやいや、先ほどはノリで『ウソじゃ』と言ったでござるが、     セルシウス殿は普通に綺麗でござるよ」 中井出「だな。まあ……現実世界のセルシウスさんと違って角は生えてないけど」 麻衣香「姿だけ見たらそのまんま悠黄奈さんって感じだよね」 夏子 「あ、うん。言われてみれば」 藍田 「でも髪は蒼いんだな」 丘野 「セルシウスでござるからな」 俺達が口々に感想を言う中、セルシウスは“なにを言っているんだ……”と困惑していた。 散々ボコった筈の我らが生きてることも不思議なら、 自分に対してよく解らないことを言っている我ら自身も不思議のようだった。 丘野   「で、加護くれるでござるか?」 セルシウス『無礼者に渡す加護など無い。散れ』 丘野   「それは困るでござる。いいから寄越すでござるよ!」 セルシウス『発言二言目にして命令か!?』 丘野   「普通に言っても聞いてくれそうにないでござるし」 藍田   「そんなわけでおくれやす〜」 夏子   「毎度おおきに」 麻衣香  「おおきに」 セルシウス『ダメだダメだ、帰れ』 総員   『なんやのォォォォ〜〜〜〜』 セルシウス『う、うるさいぞ貴様ら!!帰れと言ったら帰れ!!       わたしはそうやって小馬鹿にされるのが大嫌いなんだ!!       どいつもこいつもわたしを雪女だとか物の怪だとか言う!』 丘野   「はははははは」 藍田   「そいでさー」 セルシウス『聞け!!なにしに来たんだ貴様ら!!』 丘野   「え?加護くれるでござるか?」 セルシウス『もういい!やらん!帰ってしまえ!!』 麻衣香  「まあまあ、セルシウスさんも飲もうよ〜。美味しいよ、うまティー。       わたしたちのことならただの一介の旅人だと思って、気にせず飲もうよ〜」 セルシウス『要らない。いいから帰れ』 麻衣香  「むう、頑固者《チラリ》」 殊戸瀬  「……《コクリ》」 言いつつ、殊戸瀬二等に目配せをする麻衣香。 ああ、こりゃあ無理矢理にでもうまティーを飲ませるつもりだ。 ……溶けやしないだろうな。 殊戸瀬  「……フシュッ」 セルシウス『《プスッ》うくっ!?       な、なん───くあっ……!?か、体から力が抜けて……!』 殊戸瀬  「痺れ吹き矢を少々……」 セルシウス『一介の旅人が何故そんなもの持っているんだ!!』 殊戸瀬  「趣味」 セルシウス『な、なんて歪んだ趣味を……!!』 麻衣香  「さぁ〜、うまティーですよセルシウスさ〜ん」 夏子   「美味しい美味しいうまティーですよ〜」 殊戸瀬  「一口飲めばコロッと極楽……」 藍田   「殊戸瀬、その言い方って不吉っぽく聞こえる」 ともあれ女三人がセルシウスににじり寄り、 囲んだり羽交い絞めしたり無理矢理口を開かせてうまティーを流し込んだりで大変だ。 丘野 「嫌がる精霊にうまティーを飲ませる状況でも、     やはりエロマニア提督ならば震えるぞハートなのでござるか?」 中井出「ええいエロマニアから離れろというのに……」 べつにハートが震えたりなんぞしない。 ただ─── セルシウス『やめろぉおーーーーーーーっ!!!!ドゴォオオオオオンッ!!!! 女衆   『うわひゃぁあああああっ!!!!』 丘野   「むっ!?何事でござる!?」 藍田   「おお!女性陣が強烈な吹雪に巻き込まれている!!」 中井出  「そりゃ、いくら痺れ吹き矢くらっても魔力が低下するわけじゃないしなぁ」 セルシウス『もういい……!貴様ら全員、この場で』 麻衣香  「()
ったァーーーーーッ!!!」 ガポシィッ! セルシウス『んぐぅっ───!?《ゴクン……》ぷあっ!!       げほっ!!き、貴様!なにを飲ませた!!』 麻衣香  「うまティー!!」 ドーーーン!! あの吹雪の中で無理矢理紅茶を飲ませるその意気やよし!! 胸を張るに値する!! セルシウス『ウソをつくな!大方また痺れ薬かなにかを……!!       でなければこんな!……こんな───…………美味い』 麻衣香  「イエーーーーッ!!」 夏子   「うまティーイエーーーッ!!」 麻衣香  「さあさ飲もう!一緒にうまティー飲もう!!」 夏子   「この美味しさが解る人に悪い人は居ないから!!」 セルシウス『い、いや!確かに美味いがわたしは───』 麻衣香  「え……もううまティー飲みたくないの!?」 セルシウス『ぃやっ……そ、そのうまティーとやらには罪はないから       飲みたいといえば飲みたいが……』 夏子   「じゃあ飲もう!」 セルシウス『待て待て待て!わたしたちは敵同士───』 麻衣香  「うまティー好きに敵も味方もないの!!」 殊戸瀬  「いいからさっさと飲む」 セルシウス『い、いきなり吹き矢で痺れさせた貴様に言われたく《がぼしっ》んぐぅ!?』 夏子   「飲めー」 麻衣香  「飲め〜」 セルシウス『ぷあはっ!や、やめろ!無理に飲ませなくても自分で飲める!!』 麻衣香  「じゃあハイ、紙コップね」 セルシウス『え……う、うぅう……』 ……その日、氷山はうまティーの力で平和になったのだといいます。 ───……。 ……。 ワヤワヤワヤワヤ……!! さて……やがて女性陣とセルシウスがうまティーパーティーをする中、 我ら男衆はそれはもう暇を持て余していた。 せっかくの暇だというのに持て余すのはどうか。 上手く有効利用しなければ。 藍田 「うーん、いくら我らでも女性たちの宴会に混ざるのは気が引ける」 丘野 「なんつーの?妙に女の中に男が一人って感を受けるよね」 中井出「不思議だ……こっちは三人居るというのに」 最初から一緒になって騒ぐ分にはいいんだが、 先に女性たちだけで席を設けられてしまうともうだめだ。 まるで強引なナンパでもしているような気分になってやってられない。 中井出「じゃあまた雪合戦でもするか?」 藍田 「いや。ここはセルっちょが寂しくならないように雪ダルマでも作ってやろう」 丘野 「おお、やさしいでござるな」 中井出「じゃあ頂上の周囲を雪ダルマで囲むように腐るほど作るか」 藍田 「おおっ!それは面白そうだ!」 丘野 「是非やるでござる!!」 目的は決まった! そうと決まれば我らは止まらん!! いずれも巨大な雪ダルマを!いずれも強固な雪ダルマを!! さあ今こそ我らの力を見せ付ける時!! 中井出「さぁ飲め飲め!!     寒い場所ではやはりウォッカ!!体の芯からあったまれー!!」 藍田 「おお!用意がいいでありますな提督!」 丘野 「景気付けに一杯!カンパーーーイ!!」 ンビンビンビンビ…… 中井出「ぬぐはぁああーーーーーーーーっ!!!!」 藍田 「よっしゃ次俺な!んぐっ……んぐっ……ヌハァーーーーーッ!!!」 丘野 「飲むでござる飲むでござる!!……ムハァーーーーーッ!!!」 暑……熱い!!そして頭がグワングワンする!! 酔い回るの早ェエ!! 藍田 「オォオオ……モ、モスクワの大地が見える……」 中井出「モ、モスクワー!!」 丘野 「コ、コサックダンスでござる!踊るでござる!!」 中井出「歌えい野郎どもーーーーっ!!」 男衆 『ハワァーーーーーッ!!!!』 俺達は燃えるように熱い身体を持て余し、やがて踊り出す。 ちなみに飲んだウォッカはスピリタスという、 アルコール96度の鬼ウォーターである。 今なら火も噴けますよ?ウヒャヒャヒャヒャヒャ!! 中井出「モォ〜スクヮァ〜ゥ♪」 藍田 「塩分って入んかホ〜イ♪」 丘野 「爪をそっとポォ〜イ♪」 男衆 『ぉ帰り〜な〜さ〜い♪』 でんけんてんけんてんけんてんけん♪でんけんてんけんてんけんてんけん♪ 中井出「モォ〜スクヮァ〜♪」 藍田 「ゴォスペ〜ルゆ〜るせ〜ん♪」 丘野 「()〜が〜作法や変〜♪」 男衆 『いんげん?そうハ〜イ♪』 でんけんてんけんてんけんてんけん♪でんけんてんけんてんけんてん♪ 中井出「お酒へっへっ変な事件さーーーっ!!」 藍田 「へぃ!へぃ!!」 丘野 「わたしゃはっはっ春ですぅ〜〜っ!!」 中井出「はっ!はっ!!」 藍田 「回れステップステップ!!ええよんスティーブ〜ン♪」 丘野 「へぃっ!へぃっ!!」 男衆 『またボートでヘ〜ィホラホ〜〜ゥ♪ヘィッ!ヘィッ!ヘィッ!ヘィッ!』 中井出「モッスクヮ〜ゥ♪モッスクヮ〜ゥ♪ゆ〜め見ーるーアンディさん♪」 藍田 「お〜っさんですか?シャアですか?おっほっほっほっほ!ヘィ!!」 丘野 「息子ォ〜ゥ♪息子ォ〜ゥ♪だぁ〜いじーなー一寸法師♪」 中井出「なっくしたりしたらぁ大変よ♪あっはっはっはっは!ヘィ!!」 藍田 「モォ〜スクヮ〜ゥ♪モォ〜スクヮ〜ォ♪ゆ〜びさーきかぁるいや♪」 丘野 「べーんじょ戦争!決戦だ!!おっほっほっほっほ!ヘィ!!」 中井出「モッスクヮ〜ゥ♪モッスクヮ〜ゥ♪とぉ〜にかぁくーあっかんべぃ♪」 藍田 「ピィ〜ザ実質三千円♪あっはっはっはっは!」 男衆 『ヘイッ!!』 我らは軽快にコサックダンスをしつつ、高らかに歌った。 ああ、酔った勢いってどうしてこんなに楽しいんだろ。 ヤバイことに手を染めないことと周りに迷惑かけない限りは、酔うのも案外悪く無い。 ───……。 ……とまあそんなわけで…… 男衆 『悪いことしたなぁ……』 頂上の周囲にはインカの像のようなものが完成していた。 酔いが治まってみれば、いつの間にかこんなもんが出来ていたのだ。 いや……確かに記憶はある。 ただ単純に雪ダルマを作っても面白くないだろうと思い、 ちょっと工夫してみたんだよな、確か……。 むう、ちょっとした悪戯心がやがて大火事を招いてしまった子供のような心境だ。 藍田 「しかも無駄に硬く作っちまったから壊すのもめんどい……」 丘野 「というかあそこのインカ像、ワンチャイ様に似てないでござるか?」 中井出「あー……言われてみれば」  ◆ワンチャイ様───わんちゃいさま  某アイスホッケー漫画に出てきた守護神。らしい。ただの奇妙な像。  怒ると自分が居るお堂ごと火事を発生させると村人(?)は言うが、  それは大いなる誤解であり誤認である。  ちなみにこの“ワンチャイ様”、検索するとろくなところに飛ばないので注意。  *神冥書房刊:『彼の漫画はこれが一番面白かったんじゃなかろうか』より ……ともかく。ここに奇妙なインカ帝国が完成した。 セルシウスが未だにうまティーパーティーに熱中しててよかった。 ……まあどうせ気づかれるんだろうけどさ。 中井出「こうなったらヤケだ!この山を好き勝手にエセインカ帝国にしてしまおう!」 丘野 「おおナイスアイデアでござる!」 藍田 「暇潰しにゃあもってこいだぜ〜〜〜っ!!」 こうして僕らはもう一度ウォッカをあおり、駆け出した! 雪で出来る限界のインカ帝国を目指して!! 雪なら腐るほどある!STRをマックスにして固めるだけ固めて神殿のような外観を! 中井出「モッスクヮ〜ゥ♪モッスクヮ〜ゥ♪ゆ〜め見ーるーアンディさん♪」 藍田 「お〜っさんですか?シャアですか?おっほっほっほっほ!ヘィ!!」 丘野 「アンディさんって誰でござろうねぇ!ウヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!!」 ───……。 ……。 む〜〜〜〜ん…… 男衆 『……悪いことしたなぁ……』 やがて完成したインカ帝国は、我らが想像するよりもヘンテコなものだった。 おかしいなぁ……こんな筈では…… セルシウス『ふう……堪能した。       うまティーとは本当に美味いものなんうわぁあーーーっ!!?』 丘野   「ど、どうしたでござる!?もしや敵襲!?新たな敵の来襲でござるか!?」 セルシウス『なっ……ななな……ひょ、氷山が奇妙なカタチに……!?』 丘野   「なんだそのことでござるか……あまり驚かさないでほしいでござる」 セルシウス『驚いたのはこっちだ!!なんだこれは!!』 男衆   『我らの最高傑作!エセインカ帝国!!』 ジャジャーーーン!! おお見よこの素晴らしき外観!! インカ帝国と呼ぶにはあまりにショボいが、きちんと階段まで作ったのだ!! 斜面の多い場所は雪を叩きまくって角のある神殿のような外観を再現!! きちんと段差も作り、冬の要塞のように仕上げられたこれはまさに芸術と言えよう!! おおマーーヴェエラス!!ステキすぎ!! 中井出  「僕らと別れたあとのセルっちょが寂しくないように、       各所にはワンチャイ様の氷像を設置。       いっつも頂上であるここを見ているように作ったのだ」 丘野   「他にもいくつかあった洞穴を削って、       あたかも過去に誰かが住んでいたようにしたでござる」 藍田   「大丈夫!可能な限り全力で固めたから、       よっぽどのことが無い限り溶けも砕けもしないぞ!」 男衆   『これぞまさに!精霊が住むに相応しい超巨大氷雪帝国エセインカ!!』 セルシウス『今すぐ直せ!!』 中井出  「な、なんだとー!?」 藍田   「貴様!我らの芸術品を、作った早々壊せと言うのか!?」 丘野   「鬼!悪魔!」 セルシウス『精霊だ!』 中井出  「ほ、ほーらワンチャイ様はいつでも主であるキミを見つめているんだぞー?」 藍田   「これで全然寂しくない!」 丘野   「よく見るとこの顔もなかなかチャーミングで……うぇっ!キモいでござる!」 藍田   「なっ?」 セルシウス『なにが“なっ?”だ!!今すぐ直せ!!』 中井出  「ダメね!!断るね!!」 丘野   「慣れればきっと女王気分に浸れるでござるよ!?」 藍田   「そうだ!ワンチャイ様帝国の女王に───ぶぐふっ!!くっくっく……!!」 セルシウス『耐え切れないほどに笑われて誰が受け入れるか!!』 悲しいほどに正論だった。 セルシウス『あぁ……頼むから。加護なんてくれてやるからさっさと帰ってくれ……』 藍田   「うわー、すげー言い方」 丘野   「拙者たちとしては加護が貰えれば文句はないでござるが……」 物凄く鬱陶しがられてる気がする。 理由は……物凄く解るが。 ともあれ俺達は氷の加護を受け取り─── 残ったうまティーをセルシウスに渡すことで、その場から帰ることとなった。 もちろんその際、“二度と来るな”と言われたのは言うまでもないんだろう。 ……ちなみにエセインカ帝国の破壊は敢えてしなかった。 フフフ、加護さえ頂いちまえばこっちのもの。 俺達は全力で逃走し、後ろから聞こえるセルシウスの罵倒を聞かないフリして───  ズルドシャベキゴキャガンガンガン!! 総員 『ギャアーーーーーーーーーッ!!!!』 氷作りの階段に足を取られ、頂上から麓までの長い長い距離を転がることとなった。 ……ちなみにその日。 吹き荒れる吹雪の中、少し別の場所へと狩りに出ていたコリアノフさん(41)が、 いつの間にか氷山が奇妙な氷雪帝国と化しているという超常現象を目撃したという。
【Side───黒な人】 ズズ……ずしゃっ。ずず……ズシャッ。 彰利 「ギギギー!!《カッ!!》」 ……もういいです。 状況がどうあれ俺は気絶していたらしく、雪に埋もれながら危うく凍え死ぬところでした。 だがこの彰利は立ったね!やつらに復習するために立ったね!! そうして氷山を登ろうとして───……ナニコレ。 彰利 「ミ、ミステリー!!」 なんと!少し寝ている間に氷山が妙な氷雪神殿になってるじゃありませんか!! しかもこの階段、雪で出来てるよ! でも思い切り固めたのか氷結させたのか知らんけど、物凄く硬いよ! ……何故か角に微量の血液が付着して凍っているのは無視した方がいいんかな。 誰か転げ落ちたとか?まさかね。 ともかく俺はコケない程度の速さでしっかりと階段を踏みしめて駆け上がる! 嗚呼!なんていうか俺、魔王に挑もうとしてる勇者になった気分!! 魔王って大体階段の上に居るよね!? で、頂上まで辿り着いたらオイラジャンプして剣振り下ろすの!! おおまさに王道勇者!! 彰利 「つーかなにこれ!!なんでところどころにワンチャイ様の雪像があるの!?」 しかも何処のワンチャイ様も頂上見つめてるし! もしかしてここのボスってネオ・ワンチャイ様!? お、おのれ魔王め!いかにも魔王って顔してそうじゃねぇか!! この勇者アキトゥスィが成敗してくれる!! そう、今の俺は勇者!OHビバ勇者!!カコイイ!ステキヨー!!最高アル!! 彰利 「そィやぁーーーーっ!!!!」 やがて最後の一段を踏みしめると同時に跳躍!! とりあえず跳躍!そして黒からルナカオスを引き出すと 彰利 『ギャア気持ち悪ィイイーーーーーーーッ!!!!!』 頂上の周囲をみっちりと埋め尽くしたワンチャイ様の像に寒気をもよおし、 跳躍した体勢のままにザムゥ〜〜と頂上の雪原に落下した。 その落下した位置ってのがなにやらボクを見下ろす女性の立つ場所だったわけで─── 女性 『コ、コホン。ようこそ旅の方。わたしは───』 彰利 『ぎゃああああああ!!ワ、ワンチャイクィーンだぁーーーーっ!!!』 女性 『なっ───!?』 そう!彼女こそがきっとワンチャイクィーン!! このワンチャイ帝国の創始者に違いない!! こ、怖ェエ!!この俺が恐怖している!! 女性 『あ、あの……!?ななななにか勘違いをされているのでは……!?わたしは』 彰利 『ヒィイ寄るなぁ来るなぁワンチャイクィーンめぇえ!!     来たら刺すぞぉ!本気だぞぉ!!殺すぞコラァアアアッ!!!』 女性 『………』 ドゴゴシャメキョボギョガンゴンガン!!! ギャアーーーーーーーー………………─── ……その日、私は氷山のワンチャイクィーンにボコボコにされた。 【Side───End】
…………。 中井出「……んあ?今なにか悲鳴みたいなの聞こえなかったか?」 藍田 「んや?気の所為じゃないか?」 麻衣香「全然聞こえなかったよ?」 ……ハテ。 気の所為か? 殊戸瀬「きっとエロマニアンイヤーが何処かの女性の悲鳴でも聞きつけて」 中井出「ないよ!!男の悲鳴だったよ!絶対!!」 殊戸瀬「……そ、そっちの趣味があったなんて……」 中井出「俺が関わるからってなんでもエロ系するのやめなさい!!」 ああもう馬鹿なことしたなぁ俺も。 どうしてかつてはあそこまでエロにご執心だったのか不思議でしょうがない。 しかもそれを今の今まで引きずられてるんだから、 第一印象ってとっても大事なのだとボクは思いました。 麻衣香「じゃあ、これから何処行こうか」 中井出「ノースノーランドの船場から時の大地に行こう。     時ってくらいだからきっとゼクンドゥスが居るに違いねぇ〜〜〜っ!!」 丘野 「おぉ〜〜〜っ!!その言葉を待ってたぜ〜〜〜っ!!」 藍田 「お、俺もだ〜〜〜っ!!」 夏子 「……キン肉マンキャラクターってどうして語尾を奇妙に伸ばすんだろうね」 藍田 「それはきっと、普通にギャグ狙いで描かれても笑えないからだろう」 丘野 「ゆでたまご氏は真面目に描いてくれた方が面白いでござる」 麻衣香「逆にウケ狙いで描かれたらしき場所で笑えたためしはないしね……」 藍田 「チェックメイトのヤツがバッファローマン先生にラリアットされた時、     ウヒャーとか言ってたのは地味に笑えたなぁ」 丘野 「その前にはバッファローマン先生がただ付いていくってだけで     『俺もいくぜーーーっ』と何故か語尾を伸ばしてたのも地味に笑えたでござる」 不思議だね。 キン肉マンキャラは狙ったギャグとかをするよりも普通に喋っててくれた方が面白いのだ。 まあそれはそれとしてだ。 中井出「じゃあ次の目的地は時の大地ってことで。ノースノーランドに戻るか」 藍田 「イェッサー!!」 夏子 「ついでにうまティーを買っていくであります提督!!」 中井出「うむ!うまティーはいいものだ!是非買っていこう!!」 麻衣香「あんな素晴らしいものが     ノースノーランドにしか売ってないのはもったいないであります!!」 丘野 「特産品らしいから仕方ないでござるよ」 しかしあのセルシウスさえ懐柔するうまティーだ。 どうせなら世界のみんなに知ってもらいたくはある。 これが地界だったら、すぐに類似品作る会社が増えるんだろうね。 ……うーん、それ考えたら世界に広めるのはもったいない気がしてきた。 ま、まあとりあえず先に進もうか? もうノースノーランドも見えてきてるし。 中井出「でも晴れてよかったなー」 丘野 「代わりになにやら氷山がある位置は物凄い吹雪に見舞われてるでござるが」 藍田 「誰ぞかごっつい吹雪男でも居るんじゃないか?」 夏子 「まさかぁ」 あっはっはと笑い合う僕ら。 うん、今日もいい日さ。 この調子で時の加護も貰ってしまいましょうね。 そんなわけで我らはノースノーランドに入ると早速うまティーを買い漁り、 普段は動くこともないらしい船に乗って時の大地へと出発した。 ───……。 ……。 ザザァアン……ザザァアアン…… 中井出「FUUUUM……しばらくすると寒くないもんだなぁ」 麻衣香「氷河地帯はもう抜けたからね」 氷河地帯を抜けた船は、そのまま波の上を進んでいた。 澄み渡る景色と、ゲームならではの海の青さに感動しつつ船旅を満喫していた。 サパァンッ!! 藍田 「おっしゃーーーっ!!」 ナギー『おお!魚が釣れたのじゃー!これもわしの作ったエサのおかげなのじゃー!』 藍田 「ほれナギ助も釣れ!釣るのだ!!」 ナギー『解ったのじゃ!』 藍田と木村夏子とシードとナギーは釣りに熱中している。 俺は麻衣香と他愛もない話をしたりして時間を潰し、 丘野くんは殊戸瀬と忍術の練習をしている。 丘野 「忍法───水遁の術!!バァアーーーーッ!!」 バッシアアアア!!! 丘野くんが海水を巻き上げて遊んでる。 ちなみに“遁”とは“逃げる”の意味を持っているらしく、 つまり水遁とは水を利用して逃げることにあるらしい。 ゲームで言う遁術は攻撃ばっかりだが、資料によるところでは攻撃にはならんらしい。 そらそうだよなぁ、忍者って隠密の存在だし、 戦うよりむしろ逃げることこそが重要だし。 丘野 「ニーンニンニンニンニンニィイイイイイン!!!!」 ザサァアアアアアアアアッ!!!! 丘野くんが水蜘蛛を使って水上歩法を演出してくれている。 丘野くん的にはあれが水遁らしい。 丘野 「ブチャラティイイイイイイイイイイイイイイッ!!!!     行くよッ!オレも行くッ!!行くんだよォーーーーーーーーッ!!!!」 水蜘蛛を利用しての水上歩行はそのまま水蜘蛛の術って言う筈だが……ウーム。 とりあえずナランチャの言葉を真似しながら 烈海王のように海の上を進む彼はどうしたものか。 丘野 (船の速さにはッッ…………!!さすがに追いつけぬなッ…………!!) ガボガボガボガボ……トプン。 沈んだ。 殊戸瀬「眞人!?眞人っ!!」 ……浮いてこないなぁ。 声  『───!!おお!なにかかかったのじゃーーーっ!!』 中井出「………」 そしてオチが読めた。 声  『おおっ……これは重いぞ!きっと大物なのじゃ!!』 声  「よっしゃあ一緒に引き上げるぞ!!ヌォォオオオ…………!!     STRマックス!!大爆釣ォオーーーーーーーーッ!!!」 ズゴッ……ゴゴゴゴドォッパァアアアアアアアンッ!!!! 声  「おお───お、オオォギャアアーーーーーーーーッ!!!!」 大方の予想通り絶叫を上げる藍田二等。 俺は溜め息を吐きつつ、丘野二等を見下ろしていた場所から藍田二等のところまで歩き…… 巨大物『グモオォオオオーーーーーーッ!!!!』 中井出「ほぎゃあああーーーーーーーーーーっ!!!!!」 絶叫した。 船員 「お、おおお……!!あ、あれはここらに住む幻のヌシ……!!」 藍田 「練りエサで釣れるヌシってなんだよ!!」 中井出「てっきり溺れた丘野が釣れたかと思ったら!!」 シード『どうしますか父上!』 中井出「かまわーーーん!!ブチノメしちまえぇーーーーーい!!」 藍田 「りょーーかいぃ!!そぉおおおおおおりゃぁあああああああっ!!!!!」 ゴォッ───ッパァアアアアアアアンッ!!! 藍田二等が渾身の力を込めて近海のヌシを空中へと釣り放つ。 そこで釣竿を離して跳躍すると、TPを消費した衝撃が貫通する連撃を連ねてゆく。 藍田 「“整形(バラージュ)
ショットォッ”!!」 ドパパパパパパパパパァアアアンッ!!!! ヌシ 『グォギャァアアアアアッ!!!』 中井出「いいぜ藍田二等〜〜〜っ!!その調子だ〜〜〜っ!!     さて藍田二等よ〜〜っ、そろそろあっちの陸に飛ばすんだ〜〜〜っ!!     調べてみたが、そいつの強さは計り知れねぇ〜〜〜〜っ!!!     つまりノートリアスモンスターってことだぜ〜〜〜〜っ!!     珍しいヤツならばやはり剥ぎ取りをせねば〜〜〜〜っ!!!」 藍田 「ジョワジョワジョワ〜〜〜、解ったぜ〜〜〜っ!!《ギュリンッ!!》     “空軍・(アルメ・ド・レール)パワーシュートォッ”!!」 ドゴォッ───!!ヒュゥーーーン───……ドザァーーーッ!!! 空中で身を捻ると同時に巨体を蹴り飛ばすと、 馬鹿みたいなデカさのヌシが遠く離れた小島まで吹き飛んでいった。 すげぇ……さすが藍田だ。 伊達に最初から今まで足だけで上り詰めてねぇ。 きっとヤツの“蹴りスキル”は大変なことになっているだろう。 ストンと船の上に着地する藍田を見て、そう思わずにはいられなかった。 藍田 「いやぁ〜、ファンタジー様様だな。     自分の力であそこまで跳躍出来るなんて、嬉しくてしょうがねぇよ」 中井出「だよなぁ。まるで甲羅をつけて修行した小僧が甲羅を外した途端に、     物凄いジャンプ力を手に入れたような感動だ。プライスレス」 お金で買えない価値がある。 おおありがとう精霊たちよ。 僕らは今感動している。 藍田 「……ところで丘野は?」 中井出「海に沈んだまま浮かんでこない」 藍田 「………」 もしかして本気で溺れた? 中井出「殊戸瀬、丘野って確か泳ぎは上手すぎたくらいだよな?」 殊戸瀬「………」 コクリと頷く殊戸瀬二等。 うーむ……あの丘野が泳ぎで沈んだままな筈が───ぬお!? シード『ち、父上!海面に巨大な影を確認しました!!』 ナギー『な、なんなのじゃああれは!!』 中井出「ゲェエーーーーッ!!あ、あれはぁあーーーーっ!!!」 藍田 「ま、間違い無いッッ!!     あれはかつて花山さんがブッ殺したとされる超巨大生物!!     海産軟骨魚の頂点とされるホオジロザメ!!」 麻衣香「み、見て!そのホオジロザメの鼻の先に人影が───って丘野くん!?」 ザアァアアッパァアアアアアンッ!!!! 中井出「おおぉーーーっ!!カッコイイぞ丘野二等!!     そのまま目を貫通して脳を握り潰してしまえーーーっ!!」 丘野 「助けてぇえええ!!!!」 中井出「………」 思い切り助けを求められてしまった。 どうやら彼に花山さんは無理らしい。 つーかそもそも手が届きそうにないのだ。 中井出「……ちぃい!こうなったら俺が───」 オリバ「格好つけんでもよろしい。キミはビールでも飲みながら私の連絡を待てばいい」 中井出「おぅわっ!?ビ、ビビビスケット・オリバッッ!!?」 オリバ「私を一人にしてくれないか」 ザッパァアアアンッ!!! 中井出「アーーーーーッ!!」 高速道路を走る車から飛び降りるが如く、 軽くウィンクするとオリバが海の中へと飛び込んでいった。 俺は……どうする気も起きず、ただポケーと待っていた。 やがてプカーと浮いてくる巨大なホオジロザメ。 その鼻の先には巨大な殴痕があり、 まるでオリバに殴られたジェフ・マークソンの胸のように窪みが出来ていた。 丘野 「……一撃だったでござる……」 一緒に浮いてきた丘野くんはそう証言した。 それはきっと嘘偽りの無い真実だったんだろうなぁ……。 オリバ「そら……シコルスキーだ……」 総員 『どこが!?』 ツッコミどころはいっぱいあったのだが、とりあえず今は小島に行く必要がある。 オリバは船の後ろにホオジロザメを括りつけると、ニヤリと笑って船をよじ登ってきた。 マカァーーーン!!───そんで登り終えるとすぐに変身解除。 藍田 「ぷっはぁーーーーっ!!あ〜、気持ちよかった」 中井出「俺たちゃ心底驚いたよ……」 水中であんな殴痕がつくって……どんな超規格外腕力なんだ? 想像するだけでも痛い。 と、冷や汗を出していた時。 船員 「おーい、そろそろ時の大地に着くぞーーーっ!!」 総員 『Yah(ヤー)ーーーーーーッ!!!』 船員が到着の報せをくれた。 さあ、あとは近海のヌシをコロがして剥ぎ取るだけなり!! 頑張っていきましょう!! 丘野 「あのー……拙者のこと忘れないでほしいんでござるがー……」 ナギー『この針に掴まるのじゃー!』 丘野 「せめて糸を薦めるでござるよ!!」 ……とまあ、いろいろあったが───船はヌシが倒れる時の大地へと辿り着いたのだった。 中井出「よっしゃあいくぜ藍田二等ォーーーーッ!!」 藍田 「ラーサー!!」 丘野 「なんの!泳いできた分、拙者のほうが陸への到着は早いでござる!!     受けてみるでござる!我が究極の連撃!!“分身無月散水”!!」 中井出「なにぃ!?」 俺と藍田二等が船から飛び降りようとする中、 既に大地を駆けてヌシへと向かう丘野二等の姿が!! しかもその姿が25体に分身すると、 それぞれが瞬間移動でもするかのように掻き消えるとヌシの周りを囲み、 構えた龍虎双刀で切り刻む!! 丘野 「だぁああああららららららららぁああああああっ!!!!」 ゾバシャシャシャシャシャシャ!!! バラシャシャシャシャシャシャゾガシャシャシャアッ!! シュゴォ───ッキィインッ!! 丘野 「唸れ!龍虎の牙!!」 散々と連撃を加え、あとは切り上げたのちに叩き落すだけとなった刹那、 景色は暗転ののちに輝き、丘野二等がヌシたちを闘気の篭った忍者刀で打ち上げる!! 丘野 「ハァアアアアアッ……!!───見切った!!」 それとともにヌシを囲む丘野二等の円がまるでなにかの魔法陣のように輝き出し、 そこから溢れる剣気がヌシを切り刻みながら上空へ吹き飛ばす!! 丘野 「トドメだ!“龍虎───滅牙斬”!!」 やがて吹き飛ばされたヌシを丘野二等が飛び越すと、 その上空で丘野二等が構える二本の忍者刀が一本の光り輝く極光剣となる!! それを思う様、存分に力を込めて振り下ろした途端!!  ギギィッシャゴッバァアォオオオンッ!!! 斬撃を中心に幾重もの衝撃波が飛び散り、暗転を吹き飛ばすように輝いた。 そしてひらりと丘野二等が地面に着地する頃……ヌシは跡形も無く消え去っていた。 中井出「〜〜っ……」 藍田 「つっ……つえぇええ……!!」 パキィンッ! 丘野 「ややっ!?刀が二本に戻ったでござる……」 いてもたっても居られなかった。 あんなもんを見せられて、突っ立ったままでなんて居られるわけがない!! 俺と藍田は頷き合うと船から飛び降り、丘野のところまで駆け出した。 丘野 「お、おお!見ていてくれたでござるかお二方!!今の派生秘奥義───」 中井出「ジャンピンニィーーーーーーッ!!!」 丘野 「《ボグシャーーーッ!!!》へぶしぃーーーーーーっ!!!」 藍田 「デストロォオオーーーーーイ!!」 丘野 「《ドボォオオム!!》オギャアーーーーーーーッ!!!!」 喋り途中の丘野の顔面にジャンピングニーパッドを。 そして砂浜を滑った丘野にダブルニープレスを。 それぞれがやりたいことを済ませたのち、ニコリと笑って修正を開始した。 中井出「この馬鹿ァーーーーーッ!!!     ヤツはレアモンスターだから剥ぎ取りするって言っといたろうがぁーーーっ!!」 藍田 「それを貴様!!よりにもよってステキな秘奥義で跡形も無く!!     ええい同じ二等兵として恥を知れ貴様ァーーーーーッ!!!」 丘野 「え、えぇえーーーっ!?き、聞いてない!拙者聞いてないでござるーーーっ!!」 中井出「ムキムキムキムキムキーーーーーッ!!!!」 丘野 「《ドゴゴゴゴゴゴ!!!》ぶべらはべら!!」 僕らはどうしようもない気持ちを拳に託してマウントポジションを取ると、 指先でなにかを摘むように握った拳で丘野くんの顔面をマッハで殴りまくった。 そうして、やがて女性陣が砂浜に降り立った頃。 丘野くんは死なない程度にぐったりと動かなくなっていた。 Next Menu back