02/馬鹿な子ほど可愛いと言っていたのに馬鹿なままだと落胆される

 ……さて。麻帆良に来てからまあまあ時間が経ちました。
 ホレ薬騒動があったりお風呂騒動があったりバカレンジャー騒ぎがあったり、ドッヂボール騒ぎがあったりと、いろいろ忙しない日々が続いております。
 ドッヂボールの時なんて、猛者どもが揃いも揃って「あ〜こんなやつら居たなぁ」と、高等部の皆様を生暖かい眼で見ておりました。
 で、今何をしているのか〜と言えば、

校務仮面『これぞ悪魔の啓示!
     やはり我らは歴史の壊し屋として選ばれし存在だったのだーーーっ!』

 コックローチライトニングをしつつ、図書館島内部を探索中です。
 ちなみに背中にはしっかりとキティが乗ってたりします。

エヴァ 「なにをわけの解らんことを……」
校務仮面『解らなくてもノリで理解するのが面白いんだって』

 進みながら様々な本を影を通して読み漁っております。
 いやぁヤバイ、ホギーさんや穏が興奮しちゃって大変さ!
 片っ端から読んでいってるけど、足りん足りんと催促が……! ええい構わん読むがいいさみんなで! この図書館の本全て読ませてやるわ! 猛者どもや恋姫の皆様も全員手伝いなさい! 一気に読むぞ!

エヴァ 「……ふふっ、全て読めるかな?」
校務仮面『読めなくてもべつにいいよ。みんな退屈してるだろうから読ませてるだけだし。
     それよりマスター、道はこちらで良さそう?』
エヴァ 「ああ。間違い無く、力が漏れる場所へは続いている。
     が、何処に着くかまではさすがの私も知らん」
校務仮面『いいよそれで。俺は楽しめればそれでいい。
     で、ネギたち落ちてっちゃったけど、あれでいいの?』
エヴァ 「べつにいいだろ。私はべつに成績のことなんて気にしていない。
     お前が私を誘ったから、退屈凌ぎに付き合っているだけに過ぎんさ」
校務仮面『そかそか』

 気配察知で、一気にネギ+バカレンジャーの気配が下層へと落ちていくのを感じた。
 あんな急ぎ足で行くからさ。
 僕のようにこうして……のんびり……優雅に進めば、そんなことにはならなかっただろうに、まったくせっかちなんですから。

校務仮面『オ、オ、オッ……』

 と、考え事をしているうちに読破速度は異常にも至り、コックローチライトニングの速度では間に合わなくなってきた。
 ちなみにコックローチライトニングとは、キン肉マン二世究極の超人タッグ編17巻の115ページにてライトニングがやっている怪しい動きのことを指す。
 仕方も無し。僕は立ち上がるとエヴァをお姫様抱っこし、顔を赤くして抵抗する彼女をそのままに烈風を使用。
 そんな速度で本を黒でなぞり、コピーして読ませてゆく。
 すると、叩きこまれる叩きこまれる、凄まじい知識の数々!
 これは面白れー! とばかりに進みまくっていたら、なにやら動く石像と落とし穴っぽいものを発見。
 アー……ネギ達はここから落ちたのかな?

石像 『フォフォフォ、おやおやここにも侵入……ぬおっ!?』
エヴァ「その声は……ハッ、じじぃか。
    ズルで知識を得ようとする悪ガキどもに仕置きをしようって魂胆だな?」
石像 『な、なんのことじゃな? ワシはこの本を守る動く石像で───ぬおおっ!?』

 石像がキティに気を取られている隙に、金灼を伸ばして本をかっぱらった。
 分析で調べたところ、なんでもメルキセデク、とかいう本らしい。
 メルセデスベンツじゃないのか……。スゴイ本らしいけど、別に頭が良くなる効果はないんだとか。これ使ってしっかり勉強するなら、確かに“この本に関しては”頭がよくなる。

石像  『こ、これ! それを返すのじゃ〜!』
校務仮面『え? なんで? これ僕が手に入れたから僕のだよ?』
石像  『な、なんと勝手な! そんなものに頼っていては、頭なぞよくならんぞ〜!?』
校務仮面『……だって。どうする? キティ』
エヴァ 「キティと呼ぶな。と、そうだったな。じじぃにはこの呼び方の借りがあった」
石像  『……フォ? なんの話じゃ?』
エヴァ 「校務仮面。私の“封印既存”を捻じ曲げろ。こいつの始末は私がしよう」
校務仮面『イエスマイマスター』
石像  『エ? エ?』

 戸惑う石像さんの前で、ダークマターよりデスティニーブレイカーを解放!
 その力を以って、キティを封印する戒めの存在を───否定する!
 さらに武具の中から闇や黒側の能力を掻き集め、それを“魔力”として虚空に固定!
 それへと、ニヤリと笑むキティが手を伸ばし───

エヴァ「……さて。覚悟はいいなじじぃ───“掌握”(コンプレクシオー)」

 掌握する。
 さあ全力でいってもらいましょう。
 登校地獄で溜まった鬱憤を、存分に晴らすために。

校務仮面『……マスター。詠唱も小細工もいらん。
     ただ真っ直ぐに、鬱憤をぶつけのがよろしいかと』
エヴァ 『ああ……解っているさ』

 振りかぶり、地面を蹴り弾き、一歩で肉迫し、殴る。
 ただそれだけの動作が、視界の中で実行されただけでした。

  ギヴァンシャドンガァアッ!!!!


───……。


 で、地下へと降りた僕とキティは、予定通りネギ一行を発見。
 気取られないように隠密チックに行動しながらも、水に沈んだ本や、そうでないものを影で包みつつ読んでゆく。
 いやぁ〜……オモシロイね、勉学。俺はやらないけど。
 それにしても……

エヴァ「〜♪」

 ……頭の上の彼女は滅茶苦茶機嫌がいいです。
 なんでも久しぶりに全力を出せたのが嬉しかったんだとか。
 代わりにゴーレムとその後ろの景色が粉微塵になったけどね。
 さすがに死神とか闇側の精霊や幻獣やモンスターの能力を魔力化させて、掌握させたのはやりすぎたかねぇ……景色が吹き飛び過ぎたよ。
 一応重要文化財だろうから直しておいたにはおいたけどさ。
 動かしてたぬらりひょんが死んでなけりゃいいけど。

エヴァ 「校務仮面、さっきの魔力……あれは全力か?」
校務仮面『十分の一くらいです』
エヴァ 「……つくづくバケモノだな───うん? …………ハ、ハハハハッ!
     バケモノと言われたことはあったが、
     まさか自分が誰かに言う日が来るとはなっ!」
校務仮面『うむうむ。存分に笑いなさい。
     耐えられるようなら、もっと強い魔力も掌握させてみるから』
エヴァ 「ああ、だったら相手も相応の者がいいなっ。何か召喚でもしてみるかっ?
     実力的から考えて、リョウメンスクナノカミあたりなんかどうだっ?
     “既存破壊”をされた私なら、簡単に召喚することが出来ると思うがっ」
校務仮面『召喚する理由がブチコロがすためってのもひどいっすね……』

 ていうか凄く興奮してる。
 まるで歳相応の悪ガキみたいだ。

校務仮面『……ふむ。読み終わってしまった』
エヴァ 「もうか。随分早いじゃないか」
校務仮面『処理速度というか精度を上げたからかな。じゃ、どうしよ。
     そこに隠れてるゴーレムでもケシズミにしてみる?』
石像2 『ヒィッ!? き、気づいておったかっ!』
エヴァ 「……《にへら》」
石像2 『どなた!? エ、エヴァンジェリンはもっとこう、ニヤリと笑うじゃろ!
     なんじゃそのオモチャを見つけた歳相応の子供のような笑みはっ!
     と、というかの! さっきのは本当に危なかったんじゃぞい!?
     ケシズミになる瞬間、石像から接続魔法を外さねばワシも死んどったわい!』

 ああ……やっぱりそうなんだ。
 惜しい、ぬらりひょん退治は成らなかったか。

校務仮面『よし、では次はこの校務仮面が』
石像2 『話聞いとる!? ワ、ワシはここでやらねばならぬことがじゃの……!』
校務仮面『問答〜無用Y』
石像2 『ま、待つんじゃーーーーっ!!
     ワシは子供たちに勉強をさせるため、ここの管理をじゃなぁあーーーっ!!』
校務仮面『……《ピタリ》……管理?』

 その言葉に、キティの真似してワールドデストロイヤーを掌握してみようとした僕の動きがピタリと停止。
 ぬ、ぬう。あのぬらりひょんが……子供のためとな。
 そういや結果如何では、ネギが担任失格になってウェールズに強制送還されるとかされないとか……。

校務仮面『くっ……仕方ない。貴様のことは全力で破壊してやりたいところだが、
     ネギが絡んでいるなら埒もなし……!』
石像2 『……ねぇ。ワシなにかした? キミたちになにかした……?』
校務仮面『いや、取り立てては。ただ猛者どもがそいつは居ても居なくても同じ、
     むしろ足を引っ張るだけの役立たずだから始末してもいいと』
石像2 『役立たずとな!?』
校務仮面『大丈夫大丈夫〜、バカレンジャーの皆さんは僕が責任以って送ってくから。
     では……えーとエヴァ?
     闇の魔法(マギア・エレベア)って放出する筈の力を我が身に取りこむんだっけ』

 はた、と思い当たって訊いてみる───と、ああそうだよ、と軽く言われた。
 なるほど、ようするにスピリッツオブラインゲートみたいなもんだ。
 あれは精霊と繋いだ回路から力を引き出すものだけど……あ、そっか。
 こっちは放出する力を自分に装填するものだっけ。
 オメガレイドとか、練った気を自分の中に入れることでブースターにすると。
 つまりはそういうことか。

校務仮面『じゃあ───皇竜王の九頭ギガレーザーを魔力として凝縮固定!
     その力の量を把握し、霊章に流し込むようにして───“掌握”(コンプレクシオー)!』

 虚空に凝縮したレーザーをドーピング剤として我が身に付加!
 うん、エンチャントみたいなもんだから、これはこれで楽チンだ。
 僕の体自体が既に一つの武具だから、へっちゃらさ!

校務仮面『ゴック・ズゴック・ハイゴック!───以下略!
     ぶち抜けぇええっ……!“皇竜王の極波動”(インペラトル・イクシトレムス・コーラム)!!』

 今こそゴーレムをケシズミに……! と思ったものの、考えてみればここで撃ったらバカレンジャーさんたちに気づかれてしまう。
 ポムポムとキティの足を軽く叩いてみると、キティもそれに気が付いたのか、やれやれと小さく溜め息を吐いた。
 まあ先ほどのキティの全力パンチだけでも十分な気がするけどさ。

校務仮面『だからここは派手じゃない魔法で気づかれないようにいこうね?
     ゴック・ズゴック・ハイゴック! 万象の精霊1000000000000柱(ウンデトリーギンタ・スピリートゥス・トライルーオーン)!
     魔法の射手、連弾・万象の一兆矢(サギタ・マギカ・セリエス・トライルーオーン)!!』
エヴァ 「一兆!? ば、ばかっ!
     それだけ撃てばデカいの撃つのとなにが───あーーーっ!!」

 キィンッ♪
 ヴォンガシャシャシャシャズシャーーーアーーーッ!!!

石像2『ギャアーーーーーーーーッ!!!!』

 視界を埋め尽くす九頭竜の極光が、ゴーレムをあっさりと飲み込みました。
 それはほんの一瞬の出来事で、ハッと気づけば爆煙だけがそこにあり……それをソニックブレストでゴシャーンと吹き飛ばすと、な〜んにも残ってやしませんでした。

エヴァ 「……な、ななな……」
校務仮面『きょ、強敵だったぜ……! ああしなければやられていた……!』

 顎をグイッと拭い、強敵との死闘の終えた安堵を。

エヴァ 「お前は少し加減ってものを覚えるべきだよ……」
校務仮面『え? そ、そう? ……って、能力解放してやった瞬間、それがどれほどの力か
     も考えずに“闇の魔法”(マギア・エレベア)“掌握”(コンプレクシオー)したのは誰でしたっけ?』
エヴァ 「私はいいんだよ、私はむしろ自分の限界以上をもっと知りたいくらいだ。
     サウザンドマスターにはいいようにやられたが、
     本気を出せばどうなっていたか……ふふ、興味が尽きん」
校務仮面『なんの。この校務仮面とて“武具宝殿”(サウザンドブレイダー)と呼ばれる魔王よ。
     千の呪文にとて……負けないといいね?』
エヴァ 「サウザンドブレイダー?」
校務仮面『千のブレードを有する者、って意味らしい。
     って言っても保有してるのは剣だけじゃなくて、
     ほぼ全てっていっていいほどの種類の武器を持ってるの。
     それこそ果物ナイフから、エクスカリバーまで。
     木の槍からゲイボルグ、石斧からジャガーノート、
     トンカチからトールハンマー、木の杖から賢者の装飾石杖と……まあその他も。
     ……っとと、ネギ坊主どもがこっち来るね。隠れようか』
エヴァ 「なにっ!? ちょっと待て! それほどまでの武具を何処で───!」

 「聞く耳持たーーん!」と、キティを黒衣で飲み込み、ヴァンパイア能力霧化を発動。
 霧になり、気配もブチコロがして気づかれないようにする。
 グオッフォフォ……!! ネギよ、貴様がいくら見渡したところでこの校務仮面を視認することなど出来ぬよ……!

楓  「…………ふむ」

 ……あ。でもなんか忍者さんが感づいたっぽい。
 何者ですかあのバカブルーは……ハッ!? バカイエロー(古菲)にまで気づかれてる!
 馬鹿な……み、妙ぞ、こはいかなること……!?
 何故一介の中学生に、我の存在が捉えられる……!?
 しかも結構上空(天井近く)に居るのに、二人とも真っ直ぐに俺を見上げてらっしゃる。

楓  「中井出殿。どういった用事でここに居るのかは知らぬが、
    気配を殺してジロジロと見るのは感心しないでござるよ」

 ゲェーーーーッ!!? しかも校務仮面ではなく中井出と!?

古菲 「オオ、気が揺らいだアルね。これしきで隙を見せるとは、修行が足りん証拠アル」

 ……まあ、修行なんてしてませんから僕。
 とまあ、ネギ坊主と他の皆様は何も無かったと判断してさっさと戻ったようで、残った二人だけが僕を見上げて言葉を発しておりました。
 埒も無し、僕はあくまで校務仮面として霧から戻ると大地に降り立ち、黒衣からキティを引きずり出してハフゥと一息。

校務仮面『校務仮面である』
楓   「おやおや、やはり校務仮面殿の正体は中井出殿でござったか」
校務仮面『違う! 校務仮面は校務仮面以外の何者でもないナリ!』
古菲  「紙袋被てても気配は誤魔化せないアルよ。初日の時点でモロバレアルな」
校務仮面『なんと!? 馬鹿な、きちんと魔王の気配に変えておいたのに!』
楓   「ふーむ。変えるのが教室に入ってからでは、些か遅すぎでござるな」
校務仮面『ゲェエーーーーーーッ!!!』

 し、しまったそうだった……! 僕ってば痛恨の失敗を……!
 考えてみりゃそんなポカをやらかしてました僕……!

楓   「しかし驚きでござるな。まさか副担任殿が人にあらざる者とは。
     霧になる〜といえばドラキュラあたりでござるかな?」
エヴァ 「ふふっ……いいや? こいつは歴とした人間だよ。少々特殊なだけのな」
楓   「おおっ? これは珍しい。好んで誰かとともに居るなど、
     いったいどういった風の吹き回しでござるかな?」
エヴァ 「退屈凌ぎだ。こいつの傍は何かと揃っているからな」
校務仮面『小さい子供がテレビのまん前を陣取るのと同じ理屈で《ボカッ!》痛い!』
エヴァ 「い、いちいちうるさいんだよお前はっ」

 だからって拳骨はないでしょう……って、また肩車ですか? 好きですねぇ……。

古菲  「魔王ではないアル?」
エヴァ 「いいや? おかしな話だが、人間でありながら魔王なんだよこいつは。
     ククッ、戦ってみるかい?
     実力は、上に居たゴーレムを拳一つで壊せるほどだ」
古菲  「なんと!? それは是非、力見てみたいアルな!」
校務仮面『ダメだ』《どーーーん》
古菲  「オオッ!? 即答アル!」
エヴァ 「まあ……言っておいてなんだが、やめておけ。
     こいつは力を見せたがるくせに、誰かと戦うことになると途端に自信を無くす。
     といっても本当に戦うことになれば、卑怯卑劣も厭わないという───」
校務仮面『失礼なことを申すな。この校務仮面、いつでも正々堂々と戦いましょう』
エヴァ 「………」
楓   「なるほどなるほど、中井出殿はその仮面を被ると“校務仮面”とやらになりきる
     わけでござるな?」
校務仮面『違う! 校務仮面は校務仮面でしかないのだ!
     誰かねその中井出とかいういかにもダンディっぽい名前の者は!』
エヴァ 「自分で言ってて虚しくないか?」
校務仮面『はっはっは、何を言うのかこのキティさんは。私は校務仮面。
     自分で言うと言われてもなんのことだか《グイイッ!》ギャアーーーーッ!!』

 それは突然のことだった!
 僕の言葉にカチンと来たのか、キティさんが校務仮面を奪いにかかったのだ!
 抵抗はもちろんだ! これだけは取られるわけにはいかーーーん!!

エヴァ 「だったらこの紙袋を取ってみろ!
     お前がヒロミツじゃあなかったら謝ることでもなんでもしてやる!」
校務仮面『いかん! 校務仮面の正体は絶対に秘密なのだ!』
エヴァ 「人の目の前で紙袋を被ってみせておいて今さらそれを言うのかっ! このっ!」
校務仮面『こ、これ! やめなさい! 悪戯で済むのは今だけぞ!
     や、やめぬか〜〜〜〜っ!! や、やめぬというのなら〜〜〜っ!』
エヴァ 「ハッ、どうする!? 攻撃でも仕掛けるか!
     だったら私はその隙にこの仮面を取るだけ───」
校務仮面『九龍城落地(ガウロンセンドロップ)ーーーーッ!!』

 紙袋を引っ張るキティの腕をガシィと掴み、そのままの状態で跳躍!!
 そして彼女の頭が大地に向かうように体勢を捻るとドグシャア!!

エヴァ「ぱろっ!?」

 鈍い音とともに、キティの脳天が地底図書室の板張りの地面に突き刺さった。
 それを確認してからヴァーと起き上がると、ピクピクと痙攣する彼女の傍らに座り、言ってやるのだ。

中井出「若すぎる……遅すぎる……そしてなんと弱い」

 これぞマホメド・アラ──────アラァアアアッ!!?

古菲 「オオ! やはり中井出教諭だたアルよ!」
楓  「確認を取る必要もないほどに、行動パターンが一緒だったでござるがね」
中井出「ハッ!? ヒッ!? ヒ───ギャーーーーーーーッ!!!」

 ペタペタと顔面を触って、さらにキティを見下ろし……絶叫!
 なんたること! 彼女の手にはしっかりと校務仮面が……!!

中井出「ギャーーーーーーッ!!」
古菲 「なにごとアル!?」
中井出「ギャーーーーーーッ!!」

 ───ドタッ!

古菲 「……倒れたアルよ?」
楓  「おお? どうされたでござる中井出殿っ」
古菲 「死んだフリして正体隠せると思てるア───心臓止まてるアルーーーーッ!!?」
楓  「おぉおおっ!?」


───……。


 ンビンビンビンビ……

中井出「ぷっはぁーーーいぁっ!! ふ〜〜、死ぬかと思ったチェン」
古菲 「や、心臓止まてたアルヨ」

 復活してから、ユグドラシルの天然水を飲んでスッキリ爽やか……こんにちは、中井出博光です。

中井出「いやっはっは、失礼失礼。どうにも校務仮面状態で正体を知られると、その責任か
    らか勝手にハートが停止してしまうんですよ」
古菲 「凄い体質アルなっ!?」

 現在はといえば、地底図書室の一角に忍び、一休みをしているところです。
 ガウロンセンドロップにて気絶してしまったキティをこう、胡坐型膝枕したりして。

中井出「いやしかし、こうもあっさりバレてしまうとは……。えぇと、くーふぇさん?」
古菲 「姓を古、名を菲というアル。今はバカイエローを担当してるアルね」
楓  「長瀬楓。さんぽ部でござる」
中井出「うむ。拙者、中井出博光と申す者。生粋の人間で、魔王をやっております」
古菲 「ツヨイアルか?」
中井出「えーと……どうなんだろ。僕自身はとてもとても弱いです。
    ただし武具を手にすると、武具のお陰で強くなれます」
古菲 「?」

 眉を八の字にし、目を丸黒にし、口を猫口にして首を傾げられました。
 ……うーむ、頭はあまり良いほうでない……と?

中井出「つまり武器の無い僕はとても弱い! そういうことです」

 武具を使わないで、ヒロラインのレベルだけで戦うならそれなりにだとは思うけど。
 1192万2960レベルは伊達じゃあ……ねぇぜ!

古菲 「ようするに強いアルね?」
中井出「えーと……話の流れからして、戦えと?」
古菲 「ウム。強い男、好きアル。我が信条、我只要和強者闘(私が望むのはただ強者との闘いのみ)。
    富も名声も必要無し、相手が魔王だろと望むとこアル」
中井出「メシは?」
古菲 「それは必要アルな」

 とても正直なお方でした。

中井出「うむ! 正直で大変よろしい! では手合わせだ!」

 黒衣をジュルンと宝殿に戻し、村人の服状態でバシームと掌に拳をブチ当てる。
 すると猫口がカッと開かれ、ウキウキ顔で中国武術独特の構えを取るくーふぇさん。
 そんな彼女を前に、僕は胡坐の上からキティさんの頭を軽く持ち上げ、こてりと寝かせると……ズオオオオと立ち上がりつつ、ゴシャーンと目を赤く光らせた。
 “ンンンン〜〜〜……行くぞォオオ……!”と言いたくなるような状況です。

中井出「ではルールを。武器の使用以外、全てを認めます!」
古菲 「オオ! 解りやすくてとてもいいネ!」
中井出「ただし、校務仮面ではない僕は外道を地で行く原中が提督なので、卑怯卑劣はむし
    ろ褒め言葉となります。ヨロシ?」
古菲 「構わぬ。それを含めての強者というなら、それごと倒すことこそ勝利アル」
中井出「よくぞ言った死ねぇええーーーーーっ!!!」
古菲 「にゃむっ!?」

 我が拳に炎よ宿れ!
 精霊魔法をダウンロードして拳を燃やし、灼熱轢き逃げナックル(ヒートドライブ)で攻撃! ───するも、

古菲 「ほっ!」
中井出「《パンッ!》お《ドボォッホォオンッ!!》ケンプファーーーッ!!?」

 燃え盛る手に手を添えられ、そこを軸にするかのように流れる動きで横に回られ……ると同時に体の芯まで響く肘を叩きこまれた。
 で、添えられた手が離れるや、自分で滑った勢いと肘の勢いとで吹き飛び、ところどころに生えている樹木にドッカーーーンと激突する始末で……

古菲 「やたアルか?」
楓  「ふふ、後ろでござるよイエロー」
古菲 「ム!?」
中井出「やあ」
古菲 「───!《タタンッ───!》」

 いや驚いた……このお嬢ったらお強いお強い……!
 振り向いて顔を見るなり距離を取る速度もお見事!
 ……ていうか脇腹痛い、気を抜くと吐いてしまいそうです。

中井出「つっはぁあ〜〜……効いたぁあ……! 防御が意味を成さないなこれ……!
    氣って言うんだっけ? 内側まで徹ること徹ること……」
楓  「浸透勁というものでござるな。
    防御の上からでも徹るため、防御は無意味でござる」
中井出「ウム、勉強になりました。ではこちらも行かせてもらおう」

 人器を引き上げる。
 20%から100%へ。
 手加減? するわけがなかろうね……加減なんて馬鹿のやることです。
 だから人として、精一杯の力でぶつかりましょう。……フフ、負けず嫌いなのでね。

古菲 「ム……」

 だが知りなさい。加減は馬鹿がやること。
 しかし、全力で遊ぶことは素晴らしき馬鹿のやることであり、この博光の生き方である!

中井出「さあ……どこからでもかかってきなさい」
古菲 「うむ! 本気でぶつかることの出来る相手が居て、私嬉しいア───」
中井出「でも死ね」
古菲 「───!」

 ゾンッ───と、人器フルバースト烈風脚でくーふぇさんの背後に回り、その項へと手刀を《ガドォォンッ!!》

中井出「ヌッ!?」

 う、腕で受け止められたとな!? どれだけ強いのこの中学生さん!! 足が板張りを踏み砕く程の威力だったっていうのに、腕一本で……!

古菲 「《トトンッ───》ひたたっ……! あ、危なかたアル……!」

 しかも今の感触……ぬう、硬氣功とかいうやつか。まるで鋼のような硬さだったわ。
 しかし距離を取ったところで、そこでは未だに博光の間合いよ。
 そう、それは変わらない。

中井出「俺は変わらず……」

 腕をぷらぷら振るって、痛みを消そうとしているくーふぇさんへと真っ向突進!
 烈風で一気に詰め、

中井出「ただ…撃つ!!」

 鉄山靠とかそーいうのは解らんから拳を突き出す!!
 しかしその真っ直ぐに伸ばした拳から腕が、くーふぇさんが小刻みに振るう両拳にドドドドンッと下方に落とされ、思いっきりスカされたところへ……トンと胸に右手を添えられ。

中井出(あ、やば───)

 と思った時にはもう遅い。
 添えられた手は発射台だ。次に来る渾身を外さぬために、標的へと添えられる。
 からくりサーカスで梁師匠が言ってたじゃないか。
 これがあるから中国武術はドボォッゴォッ!!

中井出「ぶぉおっふぇぇえっ!!?」

 ……接近してからが怖い。
 手を添えられたすぐ隣の胸に、強烈な一撃が叩き込まれた。
 体はあっさりと宙に舞い、再びドゴーンと樹木へ激突。
 しかし次の瞬間にはくーふぇさんの背後に回り、その背中へと拳を

古菲 「何の!」

 振るうより先に気づかれましたハイ!
 振り向きざまに背を預けるみたいに懐に潜られ、相手のリーチの外から殴ろうとしたこの拳では威力を乗せて殴れません! と思ってたらまた手を添えられてイヤァアアアアッ!!

  バォオンッ!!

中井出「……グヘッ!《ゴプシャアッ!》」

 ……はい、氣をぶちかまされました。
 内臓に直接徹るこの衝撃……まさに国宝級である。
 臓器だけじゃなくて背中にまで突き抜けていきおったわ。
 フフフ……内臓、イカレてなきゃいいけど。

中井出「フフッ……中学の身でこの実力……成長が楽しみじゃわい。
    だが、それでは勝てん」
古菲 「む……っ!?」

 口から血をブシャーと吐きながら、ハッハッハと笑ってみせた。
 うん、赤松作品ではこれくらい出来なければ人として不出来です。
 ……人のライン高いなオイ。

中井出「トドメを刺すまで油断は禁物。
    というか“やったかどうか”を思い描く時点で、それは既に油断というものぞ。
    菲くん。強くなるだけではつまらんぞ」

 寂海王のようににこやかに、しかしゆっくりと。
 近づき、振るわれる拳や掌や蹴りの弾幕を───描く円にて弾き切る!!

古菲 「マッ……マワシ受ケアルか!?」
中井出「おうよ。あらゆる受け技の要素が含まれるてェ廻し受け。
    受け技の最高峰だ。矢でも鉄砲でも火炎放射器でも持ってこいやァ……」
古菲 「ふふ……勝てぬ勝負、するだけ無駄とはよく言うアルけど、
    勝てぬ勝てぬと闘わねば己の強さ、低いままアル。
    強くなるだけはつまらんアル。強くなり、強者と闘いコレに勝つ。
    それこそが喜びというもの。……では、行くアル《ズンッ……!》」
中井出「ほっ……」

 構えとともによく練られた氣が、踏み締めた大地へと流れ、地震めいたものへと変わる。
 ……実に真っ直ぐだ。きっとウソとかつけない娘だろうね、うん。
 そしてまず結論。技術では絶対に勝てん。
 かといって馬鹿正直に向かっていっても捌かれて、逆に力を利用されてデカいのキメられる始末です。いや、この娘ホントに強い。闘ってて楽しい相手っていうのはこういう娘のことを言うんだろうね。押されてるのに楽しいんですよ不思議と。

中井出「では……参る!」
古菲 「行くアル!」

 ふむ、来るアルではないということは相手も突っ込んで速ェエーーーーーッ!!?
 予想外! こんな一瞬で詰められるとは! しかもそのまま肘打ちで……甘い!

中井出「避ける!《ひらりガシィッ!》ムオッ!?」

 ゼロ距離……取られた! といいますか左腕捕まった!
 ……だが知れ、くーふぇよ。この博光の戦いに距離などというものはないのだ。

中井出「トルネードフィッシャーマンズスープレックスゥッ!!」
古菲 「ホワッ!? アイヤァアアーーーーーーッ!!?」

 ゴハハハハハ!! 相手が掴んでくれたのならむしろ好都合というものよ〜〜〜っ!!
 さあいつものごとくジャスティスハリケーンチックに大回転して大地に───

古菲 「ほっ!《ドダァンッ!!》」
中井出「ホワッ!?」

 ……着地した。
 絡めていた腕を解いて、頭から落ちるはずだった板張りに向けて掌を突き出し、氣をクッ
ション代わりにして…………

古菲 「……《ニッ》」
中井出「ア」

 さらにそんな片腕一本をグッと曲げ、反動を付けて跳躍してみせました。
 当然俺が抱き付いたままの状態で。そうして空中で自由になった右手を俺の胸に添え……ア、アワ……アワワワァアーーーーッ!!!

  ドボォンッ!!!

中井出「グボギャァアーーーーッ!!!」

 ……また、氣をブッ放されました。しかも例の如く樹木にブチ当たる僕の図。

中井出「……ウン……ウン……解った、もう……解った……」

 でもまたすぐに戻ってきました。最強。

中井出「よろしい! 言葉遊びで遊んでたこと、素直に謝らん!」
古菲 「謝らんアルか!?」《ゴーーン!!》
中井出「うむ謝らん!
    だが代わりに、レベル50から最大レベルまで引き上げてみせましょう。
    もちろん人器も100%のままで。つまり……人間としての本気で!」
古菲 「……弱かたのはやはり手加減アルか?」
中井出「弱っ……!? い、いや……これでも常人よりよっぽど強いかもしれないこともな
    いこともない筈だったんだけど……」

 うん結論。この人強すぎ。
 だが───世界じゃ二番目だ。
 何気にこの言葉、好きなんだよね。世界じゃ二番目だ、って。
 別に世界一なんて目指してないからどうでもいいんだけどさ。

中井出「では?」
古菲 「うむ、いつでも」
中井出「ただ…撃つ!!」

 ゴパァアッヒャアアンッ!!───……トサッ。

中井出「……ンム。よい武力でござった」

 光速拳で空気大砲をぶっ放し、的確に鳩尾を穿った僕は、倒れゆくくーふぇさんに烈風で近づくと、トサリと受け止めました。
 鎌倉幕府人器100%モードでは、負ける気はしませんです、はい。
 ……あ、鎌倉幕府っていうのは1192万2960レベルのことです。
 え、えーと……一応威力抑えたけど、腹に風穴とか…………うん無いね。ただ服の前と後ろとに見事に穴が開いてしまっている。これは失礼をしてしまった……。
 これはなんとかせねば……いや待てよ? 考えてみれば彼女、金髪チャイナ?

中井出「…………ああっ《ポムッ》」

 よし。華琳と同じ服でも複製して着せてみよう。
 サイズのほうは……いろいろいじってみるとして。
 で、あとはこの頭の両脇から伸びる髪の毛をグルグルドリルヘアーに……長さが足りん。
 うむ、じゃあ傷と服とを怪しまれんように治して〜……と、これでよし。
 キティの横にでも寝かせておこう。

中井出「で……楓殿。……やる?」
楓  「いやいや。遠慮しておくでござる。さすがにここまで圧倒的では。
    今はまるで歯が立ちそうにもない」
中井出「………」

 今は、でござるか……さすがに向上心を忘れぬ忍。立派なものです。
 僕だったらやってられっかーとか言ってゲームに走りそうです。だって実際ゲームだから出来たことっていっぱいあるだろうし。

中井出「あ、そうそう。多分せっちゃんや龍宮さんは無理だろうけど、
    他の人には内緒にしといてね、校務仮面の正体。
    あとこの博光自身に妙な力がある〜とかそっちのことも。
    校務仮面状態以外の時は、出来るだけ力使わないようにしてるからさ」
楓  「ふむ……いずれ力試しをしたくなった時に、
    胸を貸してくれることを約束してくれるのならば」
中井出「おうよ、承ろう。
    この博光、友との約束は平気で破るが、仲間との約束も平気で破る」
楓  「なるほど。では生徒との約束を守って貰えれば結構でござる」
中井出「おお、解ってくれてなにより」

 では、と気絶中の二人に爽やかな目覚めとばかりに月鳴の裁きを〜……
 ヂガァアアアアンガガガガガガッ!!!!

エヴァ「ふぎゃわぎゃぁああわわわわわっ!!?」
古菲 「にょほほほほほほ!? ししし痺れるアルぅーーーーーーッ!!」

 ……で、ふと気づいてやめた。
 そういえばキティったら吸血鬼だから、裁きは相当に効くんじゃなかったっけ……とまあそんな感じで。

エヴァ「殺す気かこのアホーーーーーッ!!!」

 盛大に怒られました、はい。

エヴァ「……? あ、おいっ、お前っ……」
中井出「あーそーですよー、
    キミが校務仮面を引っ張ったりするからバレちまったんだよーコノヤロー」
エヴァ「いやっ、あれはお前が強情だったからだろっ!? わ、私は関係───」
中井出「関係ないと申すか!?
    ……ちょいとちょいと楓さんにくーちゃん、聞いてくださいよ。
    彼女の名前のA・Kってところね? 実は」
エヴァ「ぬわぁあああああやめろぉおおおおおおっ!!!」

 素直じゃない彼女が、急に襲いかかってきた!
 ならばとこの博光は飛びかかってきた彼女を熱く抱擁し……!

中井出「52の関節技のひとつ! キャプチュードォッ!!」
エヴァ「へ? うわ《ドゴォンッ!!》うぴぃっ!?」

 ……ええはい、ヒロラインで散々っぱらナギーやシードにやっていた伝統的愛の抱擁で向かい打ちました。
 危ないところだった……もうちょっと判断が遅れてたら、ただの抱擁になるところだぜ。

中井出「お前は強かったよ。でも間違った強さだった」
エヴァ「おっ……おぼえ、てろよ、この……っ……!!」
中井出「はっはっは。この博光、いつでも挑戦を受けていればこそ、
    ああして襲いかかってきた瞬間に返すことが出来るのさ。
    なにせこの博光、小学生レベルのお子様にだって、
    こうした技をかけたことがあるほどの猛者よ。
    さ、こんなところで倒れてないで起きた起きた」

 涙目で痙攣しているキティさんに闇の波動とともに回復魔法を振りかける。
 もう魔王がどうだって言ってるんだから、見られたってへっちゃらです。
 べつに俺が魔術師教会に捕まってオコジョになったりするわけじゃないし、この二人はそういったことをわざわざ言うような子じゃあ……ねぇぜ! と皆様の意思も言ってくれてるしさ。これで……よかったんじゃよ。

古菲 「しかし強さは異常だたケド、技術は全然アルね」
中井出「うむ! なにせこの博光、修行というものをてんでしていない存在よ!
    えーとほら、ゲームとかってさ、
    レベルと武具さえよければ強かった時代があったじゃない?
    それをなぞって、俺もレベルと武具だけで進んでるの。だから技術はてんで無し。
    ちなみにくーちゃんと最初に戦ってたレベルが50で、
    その次のが1192万2960レベルです。
    その時の感想からして、
    100レベルでも勝てないと判断したために全開レベルでいきました」
古菲 「本気だたアルか!?」
中井出「人として本気でいきました! 最強!」
古菲 「オオ! …………オ? 魔王としてはどうアル?」
中井出「さっきの十倍は軽いかと」
古菲 「ムヒャッ!? ……オ、オオオオ……上には上が居るものアルな……!」
中井出「なになに、才能ゼロの俺でこれなんだから、くーちゃんは俺より強くなれるって。
    というか凄い嬉しそうに言うのね……」

 うん……だとしたら、才能に満ち溢れてるネギボーイはどうなるんだろうね。
 ……いっちょ誘って、コタくんが出てくる前に仕込みまくってみようか。

エヴァ「……なにを考えているのか解りそうな笑みだな」
中井出「あらエヴァちゃんウェッヒェッヒェッヒェッ……!」
エヴァ「笑うなら普通に笑え……で?
    訊きたいことは一つだ。もう麻帆良には慣れたか?」

 ふむ? それはネギボーイを襲う日付のことを遠回しに訊いている……のだね!?

中井出「OKそろそろ大丈夫。土地勘も掴めてきたし……そだね。
    三年に進級して、頑張るぞってところに横槍を刺してやりましょう」
エヴァ「ほう……? クックック、魔王というだけあって地味に黒いじゃないか」
中井出「いえいえ貴女ほどじゃあございませんよ、とぅるやさん」
エヴァ「とぅるや……? よく解らんが、その時まで楽しみに待つとするよ。
    《ニヤ……》お前の力のこともいろいろ知っておく必要がありそうだしな」
中井出「断る!」《どーーーん!》
エヴァ「断るなぁっ!!」
中井出「見える!《シェエィッ!!》」
エヴァ「あっ、こら避けるな!」

 断った途端に振るわれた蹴りを、余裕を持って躱してみせた。
 うん、だってレベルも人器もマックスモードですし、せっかくなら避けてみたいし。
 ……ってそうだ!

中井出「そ、そうだ〜〜〜っ! 私にはこれがあった〜〜〜〜っ!」
楓  「ふむ? どうしたのでござる?」
中井出「うむ。実は僕の唯一の才に人器なるものがあるのですが……
    ああいえ、これもまた助けが無ければ身に着けることさえ出来なかったという、
    カケラでしかない才能だったわけですが……はい。
    つまり才能ゼロだったわけですがね? 出来ること、あった!」
エヴァ「出来ることっ!? 破壊かっ!」
中井出「違うよ!? え、えーと……人器ってのはね?」

 懲りずにブンブンと蹴りを放つキティさんを躱しつつ、説明をば。

中井出「人器。それは……
    人が持つ力の“残り80%”を無理矢理引き出すって代物なんだけどもね?
    それを使えば脳も活性化!
    記憶力もよくなって、教科書を見るだけで次のテストは余裕だぜってなことに!」
古菲 「ほんとアルか!?」
楓  「それが本当ならば、テストなど余裕……というわけでござるな?」
中井出「ただし使用した場合は問答無用で地獄のような筋肉痛に見舞われます」

 ……ピタリ、と動きが止まりました。
 キティの動きも止まってくれたから、少しありがたかったです。

中井出「今なら3分だけ体験できるコースがございますが?」
古菲 「やてみるアルヨ!」《どーーん!》
中井出「おお勝気でノリ気! そういう人って大好きです! では───」

 くーちゃんに影を繋げて、そこへと人器100%を流し込む!
 すると彼女の体が薄っすらと赤く染まり───

古菲 「オ……? なんだか体軽くなたアルな」
中井出「うむ! 人間が引き出せる限界点を引き出す……それが人器のステキなところ!
    では試しに氣を練って、全力であちらの樹木へと拳を振るってみてください」
古菲 「ウム!《ダダンッ───キュボッ!!》」

 板張りの地面を踏み砕き、よく練られた氣を宿した掌が振るわれる!
 斜め上に繰り出されたそれは景色……というか目の前の空気を歪ませたそれは、ソニックブームのような輪状の円をいくつも虚空に描き、遠くの樹木を破壊してみせました。

古菲 「…………アイヤ……」
中井出「とまあ、うむ。くーちゃんよ。人間、鍛えればあれくらい出来るということで」
古菲 「勝負アル!」《どーーーん!!》

 説明した途端、丸黒目猫口で叫ぶ彼女がいらっしゃいました。

中井出「なんですって!? い、いやだめだめだめ! 
    そーいう挑戦は自分でそこまでに至れてから言ってほしいです!」
古菲 「ム……そだたアルね。スマンかたアル、少し興奮してしまたヨ」

 ハッハッハと笑い、気を落ち着かせてくれました。
 あれだけの力を放っておいて、力に溺れない姿……お見事です。

中井出「では知識のほうに移りましょう。ではこの本を読んでみてください」
古菲 「わかたアル」

 氣に関すること、武術に関することを我ら全員(内包する意思の全て)で纏めた本、その名も“総世武術書【極】”を渡し、読んでもらう。
 くーサマはそれを受け取るや1ページ目を開き、次のページからは速読モードと化し……三分もかからず一冊全てを読み終えてしまい、

古菲 「エターナル……《ズバッ! ビシッ! キラッ♪》
    ネギッ───フィーバァーーーーッ!!《POW!!》」

 知識においてはまだまだ先の出来事である、ジャック・ラカンさんの技を目の前でやってみせては、全身から放出された氣という名の光線で樹木をケシズミにしていた。

古菲 「《キラキラ……!》おもろいアルよこの本《ズキィーーーーン!!!》
    キョミャアアアーーーーーーーッ!!!?」

 はい、タイムリミットです。
 輝く笑顔をこちらへ向けた途端に謎の奇声をあげたくーさんが、激痛のあまりドシャアと倒れました。……うん、見事に丸黒目になりながら、猫口状態で痙攣してらっしゃる。

中井出「夢は……見れましたか?」
古菲 「さ……最高だたアルヨ……《ビシィッ!》」

 なのに親指を立てて見せる彼女の強さに乾杯。
 これで黒目が白目に変化しつつ、コポコポと謎の液体を口からこぼしてなければ最高だったのだけどもね……。

中井出「楓殿」
楓  「ふむ。頭の良さというものには興味があったでござる。
    となれば、一度は体験してみたいと思うもの。お願いするでござるよ」
中井出「御意」

 ならばと影を繋ぎ、楓さんにも人器100%を。
 え? 僕は筋肉痛とか大丈夫なのかって? ゴワハハハ、もはやそんなもの、順応の回路で慣れきってしまったわ。
 ……さすがにこの状態からさらに人器を高めるとしたら、確実に起こるだろうけど。
 脳が鍛えられるっていうなら、脳から発せられる命令信号ってのも鍛えられるはずだ。
 つまりそれの上を行ければ、人器の100%の幅はさらに広まる。

中井出「……オ?」

 うむうむと自分の先がまだまだ広いことに頷いていると、さっきまでそこに居た楓殿が居なくなってらっしゃった───と思ったら上空でシュヴァヴァヴァヴァと飛び回っている、101人楓さん!? す、すげぇ! ナマの忍者の分身だ!
 その内の一人が僕の隣に降りてきて、はっはっはと糸目で笑っているもんだから、さすがのこの博光も驚くほかござらんかった。
 中学生のレベル、軽く超えてるって……。
 と思いつつも、楓さんには武術書ではなくきちんとした勉強の本を渡してみると……これまた一分かからず読破して、再びはっはっはと笑ってらっしゃった。
 ……うん、次の瞬間には分身の全てが消えて(目の前で笑ってた楓さんも)、空から一人の楓さんがヒョーーーと落ちてきて、ばっしゃーんと水の中へと落ちました。

中井出「腹から……だったね」
エヴァ「ああ。腹からだったな」

 しばらくすると、プカ〜〜とうつ伏せ状態で浮かんでくる楓さん。
 気絶しているのか激痛で動けないのか……あ、痙攣してる。動けないんだね。

中井出「シューター」

 ならばと火闇を伸ばしてそっと包み、こちらへグイと引っ張る。
 くー殿の傍に寝かせた彼女はやっぱりはっはっはと笑っていて、笑うたびに「あいたたた……」と眉を顰めていた。

中井出「……キミ、どうする?」
エヴァ「私はいいさ。肉体の機能向上よりも、
    むしろ能力の解放をしてもらった方が面白い。
    筋肉痛なんて好んでなるものでもないしな」
中井出「ん、それが賢い生きかたネ」

 だってね、横たわる二人を見ればそう思いたくもなるよ。
 ……っと、このままにしてちゃあ勉強に支障が出るね。そろそろネギたちも調べに来るだろうし。というか今まで来なかったのが不思議なくらいだ。

中井出「では回復の奇跡を。
    これが効くのは一回コッキリだから、人器の使用はもうナシとします。
    ユグドラシルよりマナを凝縮……掌に集めて〜〜……流し込む」

 左右の掌に集ったマナを、倒れる二人に押し当て、流し込む。
 困ったことにペナルティ筋肉痛を癒す手段はこれしか無い上に、マナで回復出来るのは最初の一回だけとくる。
 だからもし、次に使用する機会があったとしたら……かなり苦しむことになりますね。

古菲 「オ? オ? オ? ……痛くないアル。治たアルかっ?」
中井出「うむ! まあそんなわけで、そろそろネギ坊主たちが来るかと推測する。
    差し当たり僕はエヴァと一緒に隠れているとしましょう。
    見つかるといろいろ説明が面倒そうだから」
楓  「はっはっは、正直でござるなぁ」
中井出「グオッフォフォ……!! それが真実とは限らんがなァアア……!!」
楓  「いやいや、つまらんことではウソはつかん者だと判断した。
    ここぞという時にウソをつかれるまでは、
    その判断を基準に接することにするでござるよ」
中井出「うーむ……過信すると後が面白いよ?」
楓  「怖くないのなら、それは望むところでござるな」
中井出「うむ。ではテスト近くになったらキミたちを襲いに来るので、
    知恵を絞りつつ逃げてくださいね?
    僕自身なんのこっちゃって感じだけど、みんながそう言ってるから」
古菲 「アイヤ解たね」
中井出「ほんじゃ」

 キティをシューターで伸ばした火闇で引き寄せ、空間翔転移で転移。
 離れた位置に降り立ってから、僕はこれからのことのための準備を始めることにした。
 すると早速kittyさんにツッコミ入れられる。

中井出「うむ。これはヒロラインの基盤でして。
    これから僕、来る者拒まずで人を強くしてみようかな〜と」
エヴァ「強く? お前が? ……ハッ」
中井出「はいはい、見下したような笑いを飛ばさないの。
    手始めにスプリングフィールド先生に戦いというものを教えてみようかと。
    エヴァも相手があまりに弱くちゃつまらないだろ?」

 今のネギ造さんたら魔力が強いだけの持ち腐れボーイですから。
 才能が無い僕にとって、才能があるヤツが燻ってるのはなんというか許せないんですよ。

エヴァ「そうでもないさ。私はあいつの……あの男の息子が、
    ひーひー泣きながら逃げまどう姿を見たい。
    まあ見たら見たで、情けないと激を飛ばすんだろうがな」
中井出「そうなったらそうなった時ってことで。とにかく鍛えてみるよ。
    テスト終了の暁に、皆さんの前で“強くなりてぇ子はいねがー!”って言って。
    で、来た者だけが全てを知る権利を得るのだ…………っ!!」
エヴァ「それはお前の全てという意味か?」
中井出「んー……それでもいいし、魔法の全てでもいいし。
    あ、ちなみにそこならルールブレイクを常にONの状態に出来るから、
    なにをするのも自由だよ?」
エヴァ「乗った!!」
中井出「マッ……」

 物凄い勢いで乗ってきました。
 ……うーん……サウザンドマスターさん、彼女を弱体化させたまま閉じ込めとくのは、随分と彼女にとっての毒にしかなってないんじゃないでしょうか……。

エヴァ「それで!? そのヒロラインとやらはなにがなんなんだ!?
    というかなにをどうするものなんだ!?」
中井出「俺の中の世界です。そこには俺が今まで内包してきたものの全てがある。
    普通に冒険も出来るし、竜種とも戦える。
    倒しても復活するから、それこそなんべんでも。
    ただし復活すると強化されてるから、倒した時と同じようにはいかない。
    さらに言えば既に冒険者も何人か居るから、
    そいつらと戦ってみるのも面白いかも」
エヴァ「……よく解らん。よーするにお前が経験した、
    あの記憶の中の世界の一部ってことでいいのか?」
中井出「あれは随分とはしょってあったからね、そう訊くのも無理はないっす。
    まあその通りですじゃ。ちなみに先に冒険している人々の中で、
    今一番強いのは呂布……と見せかけて楽進だね。
    れ……呂布ったら、相手が動物と見ると攻撃とかしないんだもの。
    で、次が……うん、夏侯惇だね」
エヴァ「……過去の武人まで居るのか、お前の“宝殿”とやらの中には」
中井出「ちょいと違うけどね。まあ、そういった人たちが居るけど、全員女だから」

 ……あ、また止まった。

エヴァ「……女?」
中井出「女」
エヴァ「呂布や関羽がか?」
中井出「呂布や関羽が」
エヴァ「…………」

 今、彼女の中で言葉に出来ない葛藤が。
 まあそれはそれとしてと。

中井出「ヴァーちゃん、今日の昼メシなにがいい?」
エヴァ「ヴァーちゃんと呼ぶな!! お前にそれを言われるとことさらに不愉快だっ!!」
中井出「……キティ?」
エヴァ「余計に呼ぶな!!」
中井出「……マクダウェル《ポッ》」
エヴァ「何故頬を赤らめる!?」
中井出「貴様の反応がいちいち面白かったからさ!」
エヴァ「っ……か、過去形か……!」
中井出「過去形である! で……結局、呼び方はどれがいい?
    エヴァ、エヴァンジェリン、アタナシア、キ───」
エヴァ「キティは断固却下だ」

 ……物凄い速度でキティだけが却下されました。
 まあ、気持ちは解るけどね。

中井出「じゃあマクダウェル? それともマクドナルド? ドナルド?
    ジェリ〜ン? ジーちゃん? ヴァーちゃん? ……ジェリーか!!」
エヴァ「とりあえず自殺願望があることはよーく解った。
    しのごの言わずに封印破壊をして一歩も動かず殺されろ」
中井出「ゲフェフェフェフェ……! この博光、殺されるくらいなら相手が本気を出す前に
    殺しておるわグオッフォフォ……!!
    ということで嫌です。そんなことより呼び名だよ呼び名。
    あ、僕のことはヒロミツって呼んでくれたら嬉しいナ。
    キミもない? 呼ばれたいとかそういう呼び名」

 そういうのがあれば、こちらとしても呼び安いですよ。
 そんな意味もこめて、どうでしょうと訊ねてみたさー。訊ねまくる俺さー。
 と、無駄に世紀末リーダー伝みたいな言い回ししてないで。

エヴァ「……マクダウェルだ。そう呼べ」
中井出「……? オ、オオ?」

 少しだけ間を空けて、口にしたのはマクダウェルの呼び名。
 ……そうか、マクダウェルって呼んでほしかったのか。

中井出「じゃあ愛称はマックだね!」
エヴァ「《ヒククッ……!》潰すぞ、じじぃ……!!」

 ええ、目がマジでしたとも。

中井出「ゲヴォルハハハハハハカカカカッカッカッカッカ……冗談冗談。
    イヴエンジェルとかいう呼び名も考えたんだけど、どう?
    あ、ストレートにエンジェルとか天使とか」
エヴァ「だ・か・ら……! 捻り潰すぞ5倍じじぃ……!」
中井出「お前には出来ないかもしれない《ニコリボゴシャア!》ジェイ!」

 ダブルハードの真似してニヒルに笑んだらストレートでした。
 瞬間に出た謎の言葉、ジェイに疑問を抱く瞬間を僕に。こんにちは、中井出博光です。

中井出「ふふ、いいパンチだったぜ……?
    だがこんなものでは世界など狙えん! 自惚れるな馬鹿めが!」

 しかしまあなんでしょう。
 殴られた時ってのは、なんだか世界狙えるパンチだ〜とか思う人って多いよね?
 そしたら呆れられるとか結構あると思うんだ、僕。
 だから敢えて逆で行ったら喜ばれるかなーと思って……ボッコボコにされました。


───……。


 で、テスト前日……!

リビングアーマー 『オォオオオオッ!!!!』
バカレンジャー+1『キャーーーーーッ!!?』

 僕は召喚したリビングアーマーの内部に潜り込みながら、リビングさんを操縦して楽しんでいました。
 楽しむというか、出口に誘導していってるわけですが。

夕映 「滝の裏側に出口です!」
明日菜「それよ! ……ってなにこれ! 扉に問題が───」
古菲 「答えはredアルね!」

 いや、これがまた結構面白いんですよ。
 メルキセデクの本をこれみよがしに持ちながら現れたら、あっさりくーさんに奪われて、取り返そうとすれば全力で抵抗されるしで。

明日菜「うわっ、螺旋階段!? ……って高ッ! 上が見えないじゃない!」
木乃香「うひゃ〜……これ上まで登るん〜?」

 滝の裏の通路は狭く、リビングアーマーでは進行不能……ときたら、破壊しかありますまいて! そんなわけだからドッカァーーンと拳や剣で壁を破壊し内部へ侵入!
 すると呆れるくらいに長ったらしい螺旋階段を駆け上がるバカレンジャーの姿が!

まき絵「わぁあっ!? 無理矢理来たぁーーーっ!!」
夕映 「のんびりしていられないです……急ぐです!」
明日菜「ってまた問題!? しかも数学っ……!」
楓  「x=46゜でござる《ピンポーン♪》……おおっ♪」

 僕、こういう誰かを追うとか負われるイベントって大好きなんだよね。
 速くしなければ〜って緊張感が好きです。
 ……でもリビングアーマーの大きさじゃあこの螺旋階段登れないや。
 んー……よし、ジュノーンにでも変身しよう。シャッキィーーーム!!

古菲 「オオッ!? 変身したアル!」
楓  「うーん、楽しんでいるでござるなぁ」
明日菜「なんのことかは知らないけど、こっちは全然楽しめないってばーーーっ!!」

 ずしーんずしーんとゆっくりと登り、近づいてくるとソニックブレストで最後尾の娘のすぐ後ろの階段を破壊、先を急がせる。
 もちろん壊れた部分は跳躍で飛び越えるという方法で、慌てる中でもしっかりと考えなければ先に進めない状況を作り出し、テスト中の思考の回転が鈍りやすい焦りの中でも考えられるようにとの改善方法……なんだけど。効果があるかは謎です。

明日菜    「あ、任せて! 中臣鎌足ね!《ピンポーン♪》わっ……やった!」
古菲     「アスナとマキエまで答えられるなんて、この魔法の本本物アル!」
アスナ&まき絵『悪かったわねっ!』

 しかし途中から、当てる気がないのか当たらないと踏んだのか、緊張感を無くしてきた彼女たち目掛け、くーさんと楓殿に目配せをしてから───奥義ドラゴンソニックを解放。
 剣から巨大な剣閃が放たれるや、階段どころか壁にまで巨大な穴を穿ち、直線上にあったもの全て破壊し尽くした。

明日菜  「キャーーーーーーッ!!?
      いっ……《ブルッ……》い、いいぃい急いで急いで急いでぇえーーーっ!!」
まき絵  「は、はっ……! し、しつこいぃい……なんなのあれーーーっ!!」
ジュノーン『転校生!』《どーーーん!》
明日菜  「そんな転校生が居るかーーーっ! って喋ったーーっ!?」《がぼーーん!》
夕映   「……! 携帯の電波が入りました!
      地上は近いです! 助けを呼ぶのでみんな頑張って!」
まき絵  「ち、はぁっ……地上、が……?」
ネギ   「ああっ、みんな見てくださいっ! 地上への直通エレベーターですよっ!」
明日菜  「これで地上へ帰れ───B30!?
      こんなところまで電波が届くってどれだけ強いのよその電波!」

 い、言われてみれば! と納得しつつも追うことはやめません。
 嬉々としてエレベーターに乗り込む皆様を、あくまでズシームズシームとゆっくり追うことで、さらなる緊張感を彼女らにプレゼント……!
 ……と、ここまで来ると情報通りというか重量オーバーでエレベーターが作動しない事態に陥り、騒ぐお子めらのなんとかわゆきことよ。

声    『随分楽しそうじゃないか』
ジュノーン『笑い声我慢しながら言うセリフじゃないでしょ』
声    『がっ、我慢なんかしてないっ!』

 デモンズアーマーの中のキティさんも、存分に楽しんでいるようです。
 何故か? といえば、まあそもそも3年になったらネギっちを襲って遊ぶ予定だったのだから、こうして慌てるネギを見るだけでもヒャッハァー! ゴキゲン……だぜ!? といった状態なんでしょう。

ネギ 「僕が降ります! みんなは先に行って、明日の期末を受けてください!」

 しかもネギがこんなことまで仰るのです。
 彼女のドSメーターは臨界突破寸前です。

ジュノーン『ほお……だがそれはこの儂を倒さんと……無理だな』
ネギ   「生徒を守るんだ!
      たとえ魔法が使えなくても……(ボソリ)動く石像め! 僕が相手だ!」
ジュノーン『いい度胸だ……でやぁあーーーーっ!!!』

 ゴシャーーーーン♪

ネギ 「うひゃああああっ!? 光ったぁーーーーーっ!!!《グイッ!》あうっ!?」

 プリンスオブペルシャのジャファーの真似をしつつ、ゴシャーンと光ったら……その隙にネギがエレベーターの中に引っ張られてしまった。
 ひ、人のキメポーズの時に行動を取るとはなんと卑劣な!(言えた義理じゃない)

ネギ 「あ、あれっ? 明日菜さんっ!? エレベーター動いてなかったんですか!?」
明日菜「こういう時のパターンっていうのは、
    大事なものを捨てなきゃ動かないって相場が決まってるのよっ!
    だから───こうっ!」

 ネギまと同じく、ネギが下りたところで上昇を開始しなかったエレベーター内部から、神楽坂さんが投げたメルキセデクの書が飛んでくる!

ジュノーン『《ビシィッ!》北斗神拳ニ指真空杷』

 それを人差し指と中指とだけで、ビッと挟み止めてみせる……!!

まき絵「いやぁああーーーーっ!!? カイブツが北斗○拳使ったーーーっ!!」
明日菜「ちょっ……急いで急いで速く動いてーーーっ!!」

 エレベーター内部は笑顔のままに飛び散る涙を放つ皆様でいっぱいです。
 あれが噂の“笑い泣き”……というものでしょうか。
 などと感心している内にエレベーターは動いてしまい、奥義に従い本を投げ返す前に彼女たちは地上へと向かってしまった。

声    『やれやれ、ゲームは終わりか』
ジュノーン『否であるマクダウェル! 追うぞ!』
声    『へ? 追うって』

 閉ざされたエレベーターの扉を両手で無理矢理こじ開け、物凄い速さで上下する鎖を確認してから壁をよじ登って追いすがる!
 随分と速いエレベーターのようだから、こちらも誠意を以って応えねばならんなっ!

ジュノーン『カカロットの出番はないぜ!』

 まずは追いつかなければ意味もなし! と空を飛ぶ勢いで壁を登る登る登る!
 つーか暗ッ!! 下はまだ明りがあったけど、ここ暗い! 
 しかし構わん! カルキを引き出し魔人状態になると、より速度を上げて登る!

声  「……なー明日菜ー? 下のほーからどっかんどっかん聞こえてくるえー?」
声  「……えっと。こういうパターンって、映画とかだと……追ってきてる!?」
声  「いやーーーーーっ!!?」

 やがて追いついてきたエレベーターの中からは、そんな声が聞こえてきて……なんか嬉しい。やっぱりこういうイベントは相手が慌ててこそだよね!
 うん! ではこのままギキィドゴォンッ!!

ジュノーン『ニーチェ!!?』

 ……うん。地上にまで着いたのか、急に止まったエレベーターに頭から激突してしまいました……。相当な速さだったから、そりゃあもう衝撃も尋常じゃあなかったわけで……。

声  『お、おいっ!? おいっ!? ちょ、待───』

 見事に脳震盪を起こした僕は、壁から手を離してしまい……地下30階分の距離の自由落下を始めたのでした。
 最後に聞こえたキティさんの悲鳴だけが、耳に心地よかったです。
 のちに地面に埋もれた状態でそんなことを言ってみたら、鎧から出てきた彼女に殴られましたが。


───……。


 とまあそんなこともありまして。テストも無事終了。
 今現在の僕が何をしているのかといえば、

中井出「これぞ悪魔の啓示!
    やはり我らは歴史の壊し屋として選ばれし存在だったのだーーーっ!」

 コックローチライトニングで、逃げ出したネギを追っておりました。
 何故ネギが逃げているのかといえば、アレですよ。ぬらりひょんの採点が原因ってヤツ。
 図書館島に行ってた皆様の分が、発表された平均点とは別にされてたからこんなことに……うんなるほど、みんなが言う通り、ぬら様って足しか引っ張ってないなぁ……。

エヴァ「なんとしても止めろっ!
    あの男に仕返しが出来ないのに、
    あの男の息子がここから去るなど笑えもしないっ!」
中井出「……あのー? 今の僕中井出先生だから、
    キミの言うこと聞く理由がないんだけど」
エヴァ「可愛い教え子の頼みだろっ、それくらい聞き入れろっ!」
中井出「断る!《どーガブゥッ!》ギャアーーーーッ!!」

 噛まれました。
 コックローチ中であり、背中に乗ってる彼女だから、多少体勢を変えれば喉にも簡単に口が届いてしまうのです。……つーかこの状況、僕にとってマイナスしかないのでは?
 ……普通に急ぎましょうか。

中井出「仕方の無い……ジークフリード!」

 辺りをきちんと見渡してから、人が居ないことを確認するやジークフリードを霊章から取り出し、キティを背に負ぶったまま、宙に寝かせたジークフリードに飛び乗る。

エヴァ「お、おい? これは」
中井出「俺の相棒です。では───各馬一斉にスタートォッ!」

 ドゴォオッシュゥウウウンッ!!!

エヴァ「へわっ───ぁああああああああああぁぁぁぁぁぁーーーー…………───」

 テストのことで、皆様が成績発表の場に集まる今なら、外で飛んでもバレやしねーはず。
 というか俺自身はバレようがどうしようがオコジョになるわけでもないし、いいんだけどね、ほんとは。
 ともあれ風を切り、駅へと向かう途中でネギ助を発見!
 その前に生徒の影を追い抜いた気がしないでもないけど、気にしナーイ!

中井出「タックルは腰から下ァーーーッ!!」
ネギ 「《ドッガァッ!!》わぷぅっ!?《ガドォッ!!》まろぷっ!」
中井出「キャーーーッ!!?」

 飛び降りながらのタックル……当然その勢いは凄まじいものであり、そんな勢いのままに倒れこんだネギ助さんは地面に頭をぶつけ……まあグッタリ!!
 しかもキティまでもが勢いに耐えられなかったのか、タックルと同時に背中から離れ、地面を滑走することに……! ……あれ? 起き上がってこない。もしかして気絶中?

中井出「どうしよう……」

 考え無しにもほどがありました、ごめんなさい。

中井出「でも大丈夫! こんなものは我が力を以ってしゃらんらぁと」
明日菜「《タタンッ》ネギッ───え?」
中井出「ア」

 丁度、ホギースキルから回復魔法を引き出して回復してるところへ、明日菜さん参上。
 そういえばさっき、誰かを追い抜いたような気が……ア、アワワーーーーッ!!

明日菜「え? え……? なにっ!? あんたも魔法つかっ───」
中井出「シャァアラアアップ! こんなところで大声で言ってはいけません!」
明日菜「わっ……とと、そうだった……じゃなくてっ! な、なんなの!?
    まほ……ほにゃらら使いってそんなにごろごろ居るもんなの!?」
中井出「いや、この博光は魔法使いじゃないです」
明日菜「今使ってネギを治してたでしょーーーっ!?」
中井出「い、いちいち騒ぐんじゃねぇ〜〜〜〜っ!
    こ、これにはじ、事情があるんだ〜〜〜っ!
    じ、実は今回の一件、テストの結果はトップのはずだったのに、
    が、学園長の所為で、バカレンジャーや近衛殿や宮崎殿やパルっちの点数が含まれ
    ずに合計されていたのだ〜〜〜〜〜っ!!」
明日菜「───へ? …………えぇえええーーーーーっ!!?」
中井出「お、俺はそれを報せるために急いでここに来ただけなのだ〜〜〜〜っ!
    だ、断じて魔法使いなんかじゃねぇぜ〜〜〜〜〜っ!
    だからネギが気絶してる今が好機です。こいつ、学園に連れ戻しちゃって?
    俺は……ホレ。あそこで気絶してるマクダウェルを回収するから」

 言いつつ、ポサムとネギっちを譲渡。
 その足でキティの傍まで歩くと、癒しつつお姫様抱っこです。
 神楽坂さんはそんな僕をジッと見ると、

明日菜「ねぇ。もしかして……あんたって校務仮面?」
中井出「? こ……? なんだいそれ」
明日菜「あ、ああううんっ? なんでもっ?」
中井出「よく解らんが、もろもろの事情はぬら……じゃなかった、学園長に訊いてくれぃ。
    なんだったら殴り倒しても構わんから。そんじゃ俺は《がしぃっ》オヤ?」
古菲 「にょほほ、捕まえたアル」
楓  「副担任殿、少々の時間、よいでござるかな?」
中井出「アレー……」

 アステカさんがぽかんとする中、僕はキティを抱っこする腕を両脇から掴まれ、逃走不能になっておりました。

中井出「な、なにかなー?
    先生ちょっと忙しいからなんでも言うがよいわ」《どーーん!》
明日菜「忙しいならダメなんじゃないのっ!?」
中井出「そんな常識知りません。で、なに?」
楓  「はっはっは、いやなに、途中で空を飛ぶ中井出殿を発見してしまって」
古菲 「急いで来てみたアルよ」
楓  「するとほれ、アスナ殿の前で魔法を使う中井出殿が」
中井出「ウワー……」

 なんだか僕、ここに来てから墓穴掘りまくり……え? いつでもだろ? うるさいよ!
 と自分の内側に叫んでいると、二人がニコニコ笑みながら僕を見る。

楓  「聞けば成績はトップだとか」
古菲 「もはやネギ坊主に対する憂い無しアル。と、いうことで……勝負アル!
    アイヤッ、ではなく、鍛錬に付き合てほしいアルヨ」
中井出「え? ほんと?」
古菲 「オ? ホントとはどゆことアル?」
中井出「うむ。実はこの博光、
    来たる大戦に向けて人々を強化する企みを動かしていたのです。
    そこにきてほれ、くーさんが蟹に……じゃなくて強くなりたいと言う。
    ならば丁度良しとして───その提案、承ろう!!」
古菲 「《バサァッ!》アイヤーッ!?」
楓  「おおっ?」
明日菜「えっ? ちょっと!?」

 黒衣を出現させ、ばさりとくーさんを飲み込む。
 向かわせる先は当然ヒロライン……というかユグドラシルの猫の里。そのネコット農場に下り立たせ、面倒だからキティも楓殿もと飲み込むと、気絶中のネギを抱いたアステカさんをチラリと見る。

明日菜「あ、あんた何者……?」
中井出「中井出博光。人間ですよ……ちょっと常識破壊が好きな。
    じゃ、あと少ししたらみんなも来ると思うし、ぬら様も来ると思うから。
    事情をちゃ〜んと聞いて、ネギ助を担任にしてやってくれい。
    僕は……ちょっと用事が出来たので、もう行くね?」
明日菜「えっ……ちょ、待ちなさいよーーーーーっ!!?」

 聞く耳持ちません。
 僕は誰かがここに来るより先にジークフリードに乗ると、ドンチュゥウウンと飛翔して逃走。どこかのんびり出来る場所を探す旅に出たのでした。
 ……麻帆良内で、だけどね。




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