07:女性といい関係になってからお口のエチケットに気を配る男はそうしない者よりもとりあえずは紳士的

 やがてバトルが終了した頃、皆様はそれぞれ元居た位置に戻され、ネギや明日菜っち、楓殿やくーさん、キティなどを猫の里に招きました。

中井出「いやしかし見事。まさか最後の最後、
    爆発の瞬間に刻震竜の内部に突っ込んでから自爆するとは」
エヴァ「……狡賢さも、死に際の華々しさも全て、武具が教えてくれた。
    ぐっ……! 末路が自動自爆だと知っていたら、そもそもあんな能力っ……!」

 お陰で今回は引き分けを治めた。
 なにせ“ナモナキツルギ”の力とともに発動したワールドデストロイヤー。そんなもんを体内で炸裂されりゃあいくら刻震竜でも微塵と砕けます。急激な体質変化のために、まだ脱皮中の柔らかボディだったのが幸いしたようです。
 そのためかペナルティ筋肉痛もなく、彼女はぴんぴんしてました。不機嫌だけど。

中井出「でもスッキリしたでしょ?」
エヴァ「やってる最中は笑いが止まらなかったさ。だが逆に貴様との差に唖然としたね。
    あれほどまでの能力を隠して、なにが副担任だ、笑わせる」
中井出「どっ……どれほどの能力持ってたって副担任になってもいいじゃん!
    えぇ!? だめなの!?」
エヴァ「ダメとは言わないが納得がいかんっ!
    勝てれば自爆はないようだが、もし勝てなければ空間ごと吹き飛ぶわ!
    そんな力を持ちながら平然と教師やっているお前に、
    いったい何が楽しいのかを問いたいんだ!」
中井出「この博光の進む道! それこそが愉快だ!」《どーーーん!!》
エヴァ「なぁあーーーーっ!!?」

 ブリーチの東仙要隊長の正義論を愉快に置き換えて叫んだ。
 そう、己が信じた道こそを愉快に思う! それがこの博光の選ぶ道!

中井出「でもさすがに現実世界であんなの使ったら麻帆良とか軽く滅びそうだから、
    これを使うにしても敵が逃げられない状況で使わなきゃあだめだ。
    あ、ただし世界創造を使えばその世界がシールド代わりになって滅んでくれるよ?
    もちろん自分はHP1で衰弱&超筋肉痛状態で動けやしないけど」
エヴァ「使う限りは必勝しろってことか……」
中井出「まあそんなわけだから、ネギの魔法の師匠をお願いね?」
エヴァ「待て! なにをそんなさらりと恐ろしいことを言っているっ!?」
中井出「馬鹿野郎! さらりと言ったんだからさらりと頷きたまえよ!」
エヴァ「馬鹿とはなんだこのっ……大体お前はっ!」
中井出「おー!? なんだこらやんのかコラ! 言っとくが俺ゃ弱ぇぞ!?」
エヴァ「弱いヤツがあんな仮契約カードを持ってるわけがないだろうがーーーーっ!!」

 そして取っ組み合い。
 頬を引っ張ったりギャースカ喚いたりの、まあ可愛いものですが。

エヴァ「私があのぼーやの親になにをされたか忘れたのかっ!」
中井出「そのぼーやの魔法系統を自分の思うままに導けるんだぞっ! 素晴らしい!
    ちなみに断ったら二度とヒロラインには導かんぞグオッフォフォ……!!」
エヴァ「今日から貴様は私の弟子だよっ! いいんだろこれでっ!」

 ツリ白目から涙を飛ばしつつ、ウガーッとネギウスくんに向けて叫ぶキティが居た。
 え? 外道? 最高の褒め言葉です。急に叫ばれたネギウスくんは涙目で怯えてるけど、大丈夫! 俺には関係ない!

古菲 「ウム、私も了承するアルヨ。頼みごとには素直に頷く約束アルからナ」
ネギ 「ハ、ハイッ! よろしくお願いしますくーふぇさん!」
古菲 「違うアル! ワタシのことは古老師と呼ぶがいいネ!」
ネギ 「ハイ! 古老師!」
中井出「うむ! この博光のことはこのヒロライン内では中井出師父と呼ぶヨロシ!」
ネギ 「ハ、ハイ! チューせんせい!」

 おお、言ってみたら素直に受け取ってくれた! いいね、素直だねネギせんせ!
 しかしそうか、これからネギウスくんも参加か……こりゃあ鍛え甲斐がありそうだ。なにせホンモノの“天才少年”だ。才能ゼロの超凡人の僕から見りゃあ、最高にいじり甲斐のあるお子だぜ?

中井出「うむ。なんにせよ、ようこそ冒険の世界フェルダールへ。
    細かい説明は一番最初に渡したナビの“情報”項目に目を通してもらうとして、
    引き分け状態だったから修錬場には行ってもらいます。
    ああそれから明日菜くん?
    この世界でもアーティファクト……ハマノツルギは思う存分使ってくれていい。
    というかいっそ、この世界で得られる素材でどんどん強化して、強くなりなさい。
    咸卦法も、今のままじゃあ消費が激しすぎるから、
    もっと蛇口を閉めて解放できるようになるといい」
明日菜「な……なんか今、自分がとんでもない場所に立っているって実感が、
    ようやくジワジワと……」
中井出「ちなみに。この世界のことと俺の能力は、極力内密に頼むよ?
    特にくーさん。この前、超さんに迫られて話そうになってたでしょ」
古菲 「うう……口は堅いつもりだたアルが……」
楓  「これだけの能力でござる。誰かが知れば悪用したくもなるでござろう。
    友達だからと軽く教えてしまっては、どこから誰に知られるとも限らん」
中井出「うむ、そういうことです」

 特に校務仮面についてはより一層に、という注意は既に済ませてある。
 明日菜くんやネギには是非バラさずに引っ張っていきたい。

エヴァ「ところでヒロミツ。あの霊章とかいうのは何処で手に入る」
中井出「おおっ、やる気になった?
    キミってば参加はしたけど魔法ぶっ放すことしかしないから、
    冒険の世界の意味がないじゃん……と少し心配だったんだけど」
エヴァ「退屈凌ぎだよ。当然ぼーやの鍛錬も、この世界に関わることもさ」
中井出「よろしい。霊章に必要な稀少石は浮遊島、
    グラウベフェイトー山にあるって言われてる。
    正直俺も詳しいことは知らんのだが、マクスウェルに訊けば解るかも」
エヴァ「またグラウベか……はぁ。ともかくそこにマクスウェルってやつが居るんだな?
    そいつに訊けば解るんだな?」
中井出「うむ! ただし稀少石って言われているだけあって、行けば必ずあるとは限らん。
    もし手に入れられたら、フィートにするかミスティにするかをよく考えること。
    フィートが力でミスティが詠唱速度。あるだけで全然戦い方が変わってくるから」

 そうかと一言。シュゴーと飛んでいったキティさんが、直後にデスゲイズと遭遇。
 開幕メテオで神父送りにされるのを、僕らは眩しそうに見送った。
 直後にエーテルアロワノンの教会からウガーと飛び出し、空を飛ぶ彼女も見送った。

明日菜「…………な、なに、あれ……」
中井出「? ああ、デスゲイズっていってね?
    普段ならよっぽど近づかない限りは攻撃してこないように設定した古の大妖。
    飛空艇イベントを進めると、いつかは戦えるようになるよ?」
明日菜「戦いたいんじゃなくてぇっ!!
    あ、やっ……そ、それはこんな世界に足を踏み込んだなら、
    いつかは“戦わなきゃいけない時”っていうのがくるかもだけど……!
    で、出来ればそんな時が来るまでは戦いたくないかなーって……」
中井出「甘し!!」《どーーーん!》
明日菜「はわっ!?《ビクッ!》え、ええ? どうして?」
中井出「鍛錬というのは、訪れる戦いや窮地に即対応するためにすることを指す。
    ああ、僕のことはその範疇じゃないから無視でOKです。
    でも、戦わなきゃいけない時が来るまで戦わないっていうのはマズイ。
    なにせ受けに回りすぎてて、攻め手に欠けるしレベルも稼げてないに違いない。
    いい言葉を授けましょう───考えるより先手先手じゃ!!
    この世界は勝気で行かねば生き残れぬ世界よ!
    だからね、まずはこの世界を我が手中に……! ってくらいの心が必要です」
明日菜「中学生に世界征服のいろはを叩き込まないでくださいよーーーっ!!?」
中井出「だめだ」《どーーーん!》
明日菜「えぇえーーーーっ!!?」

 ネギくんが早速、くーさんに型などを教えてもらって居る頃、僕はアステカさんに覚悟のいろはを教えていました。それに楓殿が参加し、二人して糸目で笑いながら、この世界の厳しさを叩き込んでゆく。

楓  「しかしまあ、アスナ殿。この世界はなにも辛いことばかりではござらん。
    己が強くなることを実感出来る上、武具までも強化できる。
    忍じゅ……こほんっ、己の特性強化もスキルパラメータとして表示され、
    それには好き勝手にポイント配分が出来るのでござるが、
    投擲などにポイントの全てを託した時など、
    投石のみでモンスターが倒せるでござる」
明日菜「石で!? え、えと、配分ってどうやって……」
中井出「うむ、説明いたそう。
    まずは視界の端にある項目を“押す”ってイメージを働かせる。
    メニュー画面が開いたら、それぞれ開きたい項目を選んで意識で押す。
    慣れるともうポンポン開けるようになるから、
    手に入れたアイテムとかも頭に叩き込んでおくといいかも。
    このアイテムが使いたいってイメージすれば、すぐに使えるようになってるから。
    で、配分だけど……スキルって項目を選んで、配分ってのを選べば……
    うわ、見事に基本INTが少ないな明日菜くん」
明日菜「うぐっ……ど、努力します……」

 さすがはバカレンジャーと感心しつつ、配分方法を教える。
 どれだけレベルが上がっても配分はいつでも何度でも可能だと教えると、それだけで目を輝かせていた。

中井出「ちなみに。テストの時だけINT上げるっていうのは無しだからね?」
明日菜「はぐっ!?」

 ……図星だったか。
 なにせくーさんも楓殿もやろうとしていたものだ、当然待ったはかける。

中井出「さて、初期レベルだから配分できるポイントも5ポイントと少ないものだ。
    よってここでサービスを。どうせ修錬場でもやってもらえることだから、
    ここでぽぽいっとやってしまおう。ん〜〜レベルアップ!!」

 ぺぺらぺっぺぺ〜♪《レベルアップ! スキルポイントが5加算された!》

明日菜「わ、わっ!? こんな簡単でいいのっ!?」
中井出「いいのいいの。じゃ、ステータス項目じゃなくスキル項目を覗こう。
    ……こんなふうに、フリースタイルジョブには全ての可能性が秘められてる。
    もちろん創造だの黒操術だのの固有スキルは無茶だけど、
    どこかで奥義を教えてもらったりすれば、
    そのスキルのレベルを上げることも出来る。烈風とかトランスとかだね。
    投擲は初期スキルのひとつだ。
    ていうか明日菜くん、キミ結構パンチとか蹴りのスキル高いね……」
明日菜「ア、アハハ……」
中井出「……むしろこのオジサマ好きスキルってなに? 初期なのに50もあるけど……」
明日菜「なんでもないですっ!!《カァアア……!!》」

 初期は3〜5もあれば十分なのに、蹴りとかパンチとかが10とかいってるし、いったいどういうスペックの持ち主なんだこの人は。
 ……隠しスキルで“パイパン”ってスキル数値が“∞”だったことに関しては、触れてやらないでおくべきだろう。
 ともかく投擲だ。
 場所を移動してネコット農場にやってきた僕らは、採掘場に落ちていた石ころを拾うと、明日菜さんを促して……まずは普通に投げてもらう。それでも本気で。
 石は結構な速さで飛んで、採掘場の高い位置から先にほうへあるガノトトス湖へとポチャンと落ちた。

中井出「では投擲スキルマックスで」
明日菜「……こんなので変わるって、想像つかないんだけど……えっと、これでいいかな?
    よし。それじゃあ───せやぁっ!!」

 ヒュバァッ!! ───……トパァーーーンッ!

明日菜「…………わ」

 投げた本人が一番驚いていた。
 さらにステータス移動でSTRとAGIにステータスを振るってもらい、投げてもらえばさらに驚愕。

明日菜「す、すご……オリンピックも夢じゃないかも……!」
中井出「うむ! 懸命に頑張る人々を蹴落とすんだな!? 応援しよう!」
明日菜「《グサァッ!》はぐぅっ! …………や、やっぱりやめます……!」
中井出「え? なんで?」
楓  「普通に疑問に思っているところが、中井出師父でござるなぁ」
古菲 「外道アルな」
中井出「うん! 任せてよ!」
明日菜「威張らないでくださいよっ!!」

 ともあれ、さあレッツヒロライン!
 明日菜さんとネギには修錬場に飛んでもらい、くーさんと楓殿には元の位置に飛んでもらうことにして、僕はといえば……修学旅行のための準備をと、現実世界へと戻りました。


───……。


 サボリはいかんのだと思うんだけど、ネギくんたちが戻ってきませんどうしましょう。なんてことを考えつつも、とりあえず学園長室。授業が終わった放課後のこと。

中井出 「なんですって!? 京都行きは中止!?」

 ネギくんがヒロライン中だから、代理として呼ばれるままに来てみれば……これだよ。
 さっき教室で、「修学旅行だイィヤッホォ〜〜〜ウッ!!」ってみんなと喜んでたところだったっていうのに。
 京都・奈良って結構好きなんですよ俺。木刀あるし。

近右衛門「ウム、京都行きが中止になった場合はハワイに───」
中井出 「ハワイなんてどうでもヨロシ!
     つーかてめぇ自分が何言ってんのか解っとーと!?
     京都行きが中止になったなんてエヴァが知ったら……!」
近右衛門「お、おぉおそりゃあもちろん解っておるがのう……。
     まだ中止と確実に決まったわけではないのじゃよ。
     先方がかなりイヤがっておってのう……」
中井出 「おおっ! ならばツブ───もとい、説得すりゃいいんだね!?」
近右衛門「待たんかっ! 今潰すとか言おうとせんかったか!?」
中井出 「言ってないから相手を教えれ! 説得でもなんでもどーんとやったるでい!」

 まったく解らずやなんだから! 京都じゃなきゃまずいんだって!
 ハワイ!? そんなのヒロラインにだって似たような場所があるし、むしろヒロラインの海のほうが全然綺麗だわ!!
 ともかくこの博光、京都以外に認めん! そういったことを(もちろんヒロラインのことは伏せてるけど)熱心に説き、説得を続けていると、相手が関西呪術協会だということが発覚。

中井出 「なるほど! よーするに貴様らの仲が悪いから、
     “貴様らなんざ来るなカスが”ってことなってるんだね!?
     じゃあぬら様、いい加減仲直りとかしよう!
     ほら、手紙でもなんでもさっさと書けコノヤロー!
     そしたら僕が届けてくるから!」
近右衛門「口悪いのぅおぬし! あ、あー……実は新書は書いてあるんじゃ。
     これを西の長に届けてくれんか。
     そうすればいろいろと治まることもあるじゃろう。
     本来ならばネギくんに頼むはずだったのじゃが、
     どうにも今日は出勤しとらんようなのでのう」
中井出 「僕のところに連絡来たよ? 今日は風邪がひどくて出られそうにないって。
     神楽坂さんと古さんと長瀬さんも同じで、エヴァンジェリンはサボリだって」
近右衛門「聞いておったんなら報告くらいしてほしいんじゃけど!?
     なんで放課後にそんなこと言われとんのワシ!
     ハッキリ言って困るんじゃけど!? むむ……、ま、まあともかく、頼むぞい」

 ピピンッ♪《和解の新書を手に入れた!》

近右衛門「む? なんじゃな今の音は」
中井出 「え? なんか鳴った?」
近右衛門「……?」

 ヒロラインチックに音を出して受け取ってみたら、首を傾げられた。
 さて、えー……

中井出 「で、これさえ渡せばいいわけだから、修学旅行は京都でいいんだよね?」
近右衛門「うむ。それは問題ないはずじゃ。道中、向こうからの妨害があるかもしれんが」
中井出 「大丈夫大丈夫、そしたら妨害し返すから」
近右衛門「……お手柔らかに頼むぞい。っと、そうそう。
     京都といえば孫のこのかの生家があるんじゃが……
     このかに魔法のことはバレたりしとらんじゃろな。
     ワシはいいんじゃが、アレの親の方針でな。
     魔法のことはなるべくバレないように頼む」
中井出 「全力でバラして貴様が教えたってことで先方に話をつけてきます」
近右衛門「仲直りしようとしてるって話聞いとった!?
     生家があるんじゃよ生家が! これ以上波風立ててどーすんじゃ!!」
中井出 「はっはっは、解った解った。
     じゃあとにかくこれを渡してくればいいというわけで。僕もう行くね?」
近右衛門「……物凄く心配じゃが、頼んだわい……」

 ぐったりしてるぬら様にアディオスを唱え、外へと向かう。
 しかしそっか、そんなに仲が悪いのか。
 その理由がなんなのかは解らんが、話をつければそれで済むならOKだ。
 元気出していきましょう。


───……。


 デゲデーーーン!

中井出「本日も晴天ナリ!!」

 放課後の学園都市を歩く。お空はまだ青く、夕暮れが訪れるのはまだ先だ。
 皆様フェルダールでなにやってんのか、今日は欠席扱いだし……いやいいんだけどね、若いウチはサボってでも自分が夢中になれることを探すのもステキです。
 ただそれを続けすぎるのはあきまへんえ〜ということで……とりあえず今は学園生協って場所で準備をと思ってるんですけどね?

中井出「しっかし、仮契約カードねえ……」

 この世界って不思議。
 魔法陣の上でチッスするだけでこんなカードが生成されるんだから。
 と、カードホルダーを取り出して、シャカシャカと意思分のカードを見ていると、

木乃香「わ、中井出せんせ何やソレ! タロットカード!?」
中井出「《ビビクゥッ!!》ウヒャーーーイ!!?」

 いつの間に隣に居たのか、興味津々顔の近衛さんがいらっしゃいました。
 ……えーと久しぶりにビビクゥと驚いてしまったわけですが、とりあえず挨拶を忘れない僕。それが博光です。こう、軽く手を上げて、私服姿の彼女に一言。

中井出「やあ」
木乃香「やあやえ〜♪ ってそうやなくて、中井出せんせ、ソレなんなん〜?」
中井出「カードだけど……み、見る?」
木乃香「ええの!? 見る見る〜っ!」

 すぐにでも手ぇ伸ばそうとしてたのに、ええのもなにもないでしょうに。
 ともあれカードホルダーごと「はい」と渡すと、このちゃんは輝くようでいてとろけるような、器用な表情でカードを一枚一枚見ていった。
 猛者知識によると、彼女は占い研の部長らしく、こういうものには目がないらしい。

木乃香「なーなーせんせ、これ何処で()ーたん〜?」
中井出「非売品でございます。作ったのはえーーーと……俺みたいなもんでして」
木乃香「せんせが作ったん!? わ……すごいなーそれー!
    ……あ、アスナのカードもあるー!」
中井出「───へ?」

 え……いや……なんで!? あ、あれ? もしかして俺、間違えてコピーしちゃった!?
 い、いや、俺はやった覚えが……うわ、あったかも。
 ハマノツルギってどんな特性なのかなーって分析して、コピーできるかなーってコピーして……カードが武器に変わるんだから、そりゃコピーした時点でカードがあるのは当然なわけで……まあその、彰利風に一言で言うなら……ギャア。

木乃香「やーーんかわえーーY ええなー♪」
中井出「エ、エート、もういいかな?
    僕これからちょっと学園生協で修学旅行に向けていろいろ買っておこうかと……」
木乃香「ええなー……《キラキラ……!》」
中井出「あの……」
木乃香「ええなー……っ《キラキラ……!》」
中井出「えっと……」
木乃香「ええなー……!《キラキラ……!》」
中井出「……えっと……解った、作ります作りますよぅ……」
木乃香「えっ、ホンマ!?」

 魔法をバラすわけじゃないんだから、文句ないよねぬら様……。
 魔法陣はインプット済みだし、えーと……

中井出「じゃあ“いい”って言ったらえーと《ゴソリ》……この白紙のカードにキスを」
木乃香「……あっ、もしかして手品するん?」
中井出「せっかくだしね。……さて、ご存知の通り、
    この博光の手品にはタネも仕掛けもございます。
    たとえばここにある一本のチョーク。
    これを砕いてパッと手放すと、地面に勝手に魔法陣が描かれて───」
木乃香「わっ、すごいな〜っ」

 イメージを解放、インプットした記憶通りの魔法陣を描き、そこに魔力を通して完了。

中井出「さらにムッと念じると、浮かび上がるは綺麗な光〜♪」
木乃香「わーーっ、チョークの粉が光っとる〜〜っ♪」
中井出「ではこのちゃん、“いい”ですよ」
木乃香「あ、うん解ったえ〜」

 促されるまま、疑いもせずに白紙のカードにチスをするこのちゃん。
 さてこのカード……実はネギの唇と魔力をもとに出来ていまして、まあよーするにこれにくちづけるだけで、ネギと仮契約できるというスグレモノで───

中井出「《ギピーーーン!》仮契約(パクティオー)!!」

 目を光らせて唱えれば、アッーー!!と言う間に仮契約!
 ……うん、なんかごめんネギ。勝手にキミの仮契約者、増やしちゃった。

木乃香「わっ、わっ、白紙のカードがアスナのカードみたいになったーーーっ!
    ホンマ手品やーーーっ♪ いやーーーんウチのカードやーーーん♪」

 で、実際にカードになったソレを手に、このちゃんご機嫌超ご機嫌。
 ……うん、あとで隠れた位置から殺気を放ってるせっちゃんにも、いろいろフォロー入れとかないとね……。

木乃香「ありがとうなーせんせ、これ大事にするえー♪」
中井出「う、ううううん……だだだ大事にしてね……?《ガタタタタタタ……!!》」

 うう、すげぇ殺気だ……! オラの十倍はありそうだ……!!
 こりゃあ早くお嬢様から離れないと───

中井出「ジャ、ジャア僕、買い物があるかラ《ガシィッ!》───おや?」
木乃香「買い物、ウチも行ってええ? お礼にいいお店案内するえ〜♪」
中井出「へっ!? ひやっは……あ、あのっ……!?《ゾクゥッ!!》ヒィッ!?
    さ、殺気が増しましたけど!? あ、や……よ、よし行こうすぐ行こう!
    つーか行くの学園生協って聞いてるし、そんなに大きくないんじゃないの!?
    そりゃ何処にあるかも解らんから案内してもらえると嬉しいけど───
    ええいとにかくレッツラゴーーーーーーーーーッ!!!」
木乃香「《ガシッ!》ふわっ!? わ、わー、せんせ力持ちやーーーっ♪」

 早口で喋ってこのちゃんを小脇にレッツダッシュ!!
 バストゥーク並に広い学園都市を走り、建物の角を曲がったところで透明の膜でこのちゃんを包んだのち、気配を完全に殺し切る!
 そんな状態で曲がり角で待ち……せっちゃんが焦った表情で曲がってきた瞬間!!

中井出「とったぁあーーーーーっ!!」
刹那 「っ!? しま《がしぃっ!!》」

 せっちゃんの腕をガシィと掴み、脇に立っているこのちゃんをまずしっかと見せる。
 するとハッと隙を見せ───いやいやいや、何もしませんよ?

中井出「やあ」《ジャーーーン!》

 まずは挨拶です。基本ですね。基本だからこそ、みんな忘れやすいんですが。
 もちろん腕は握ったまま。なんとなく逃げられそうだったし、猛者ソウルがこのちゃんとせっちゃんはきっかけがなければ絆を取り戻せないとか言ってるので、その絆……この博光が引っ掻き回し……もとい、直し……もとい、好き勝手する!

刹那 「え……あ、え……?」
中井出「桜咲さん、一緒に修学旅行の準備のための買い物、しない?
    今なら近衛さんも一緒です」
刹那 (えっ───あ、怪しいことを企んでいたわけでは───)
中井出(え? なんでこの博光がそんなことを?
    僕は面白いことにしか興味がなく、
    少なくともそれは近衛さんをどうこうして得られるものじゃないよ。
    それに、護衛なら近くのほうがやりやすいでしょ?)
刹那 「───! し、失礼しま《グイッ!》わっ!?」

 ニコリと笑いながら言うと、せっちゃんたら急に逃走! ……させないけどね。
 無駄だ無駄無駄、腕は掌握済みよグオッフォフォ……!!

中井出「にぃいがさんん……!!」
刹那 「なっ……!? は、離してください! 私はっ……」

 一度掴まったなら、この博光からは絶対に逃れられん!
 そんな意思も込めて、腕をしっかと掴みました。
 しかし抵抗するせっちゃん! そんなせっちゃんへ、このちゃんが近づいて一声を。

木乃香「あ、えと……せっちゃん、一緒に……」
刹那 「〜〜〜〜っ───いや、わ、私はっ! 用事がありますのでこれでっ!」
中井出「だめだ」《どーーーん!》
刹那 「なぁあーーーっ!!?」《がぼーーーん!!》

 ディエエエエフェフェフェフェ、この博光がこうと決めたことを相手の予定ごときで曲げると思うてかウブルファハハハハハハ……!!
 ……え? 普通は曲げる? うん、周りの普通よりもこの博光はこの博光の普通を尊重します。その方が面白いから。

中井出「じゃ、せっちゃんの了承も得たし行こうか。
    あ、このちゃんはせっちゃんの反対側の手を握って。
    大丈夫、この博光の名に懸けて、絶対に逃がさないから……!!」
木乃香「…………せ、せっちゃん……」
刹那 「う……───《キッ》いえ。私などに触れること、私は頷きません。
    おじょ───」
中井出「じゃあ行こう!」
刹那 「ふへっ!? あ、や……えぇっ!?」
中井出「あ、このちゃんこのちゃん、お兄さんの隣来なさい!
    もうこの子ったら恥ずかしがりやでほんっとしょうがないんだからもォオオオ!」

 うん、なんかもう知らん。理由があろうとなかろうと、話も聞かんと押し退けるのはいただけん。だからもう問答無用で連れ回すと私が決めた今決めた!

刹那 「あ、あの、中井出先生……!?」

 当然、せっちゃんは疑問を僕に向けてはくるのだが、僕は今冷たさでいっぱいさ。
 だから小声で話し掛けてきたせっちゃんに、僕は僕の正直な気持ちをぶつける……! あれ? なんか告白するみたいに聞こえない?

中井出「ハン、“お嬢様の身だけ”を守れれば満足かい?
    立派な“護衛人”だよキミは。けど、幼馴染として、友人としては最低だ」
刹那 「《ゾワッ───》なっ……貴方になにが!」
中井出「解らん。だって何も教えられてないし、何も言う気ないでしょ?
    なのに何が解る〜って、随分ムシのいい言葉だよねぇ。この卑怯モンが」
刹那 「《グッ……!》くっ……そ、んなことは……! 解っていま───」
中井出「さあこのちゃん行きましょう! まず僕大きなバッグが欲しいんだけど!」
木乃香「《ガッシッ!》へわっ? あ、ああうん、案内するゆーたもんなー」
刹那 「───〜〜っ……」

 少女に涙は似合いません。もっと笑うべきである。少女に限らず、様々な人もだけど。
 だから左手で掴むせっちゃんも絶対に笑わせてくれる。右手のこのちゃんも絶対に笑わせてみせるさ。それが私の天命!(今決めた)
 というかね、二人とも互いを随分意識してるみたいだし、なにか決定的なきっかけさえあれば……ウーム、僕こういうお節介とか、ホントはキライなんだけどね。
 応援とかもキライだし。愉快で外道なものごとへの応援なら喜んでするんだけど。

中井出「お」

 閃いた。
 えーと……スーツが傷つくかもだけど、まあいいや。

中井出「このちゃんこのちゃん」
木乃香「? なんやー、せんせ」
中井出「前から言おう言おうと思ってたんだけどね? 実は僕───」
刹那 (───! まさか……魔王だ、と明かす気か!?
    この場で、あの仮面を被り……くっ、いざとなったら!)
中井出「……人間だったんだ」
木乃香「……ほえ?」

 視界の隅でせっちゃんがズッコケていた。

中井出「しかしただの人間じゃない……変わったものを持って生まれたんだよ」
木乃香「? それってさっきの手品のことー?」
中井出「いや……違うな。それは体の方の問題でね?
    それは僕がハッと気づくまでは無かったものなんだけど、
    ハッと気づいたらそこにあったものなんだ。おかげで───
    びっくりして背中に翼が生えちゃった!《バサァッ!》」
木乃香「ひゃっ?」
刹那 「ほわぁあああーーーーーーっ!!?」《ドギャーーーン!》

 そう。背中に翼があることが問題になってたりするなら、いっそ僕も生えてますよって見せつけてやればいいのさ。べつに僕、正体バレようと関係ないし。
 校務仮面の正体は絶対に秘密だけどね? スーツ突き破ったけどべつにいーや。

木乃香「わ、わ、わ……これほんもんなんー!?」
中井出「ホンモノである! ほれ《バッサバッサ》」
木乃香「わー動いとるー! かわえーなー! さ、触ってみてもええー?」
中井出「触るどころか空だって飛べま《ギュミィッ!》痛い!?」

 興奮するこのちゃんを前に、何故か左手に走る痛み!
 なに!? と振り向いてみると、顔を青くしたせっちゃんが僕を睨んでおりましたとさ。

中井出「あ、あの……なに?」
刹那 (なにを考えているのですか……!
    このかお嬢様にはこちら側のことは知ってもらいたくないと……!
    だから私も距離を取っていたのに!)
中井出(こっちって? これ、冗談抜きで魔法とかと関係ない俺の特徴なんだけど)
刹那 (…………ほへ?)

 せっちゃん、停止。だが気にすることなく翼を触らせます。
 はっはっは、いやくすぐったいくすぐったい。

木乃香「はー……あったかくてきもちえーなー……♪」
中井出「うむうむ。ちなみに付け根のところに妖精の羽もあったりする。綺麗だぞー」
木乃香「! わ、わ、わー! これかわえーなー! こ、これも手品なんー!?」
中井出「はっはっは、こらこら……! 痛いからあんまり乱暴はよしなさい……!」

 軽く引っ張られつつも、漏れるのは苦笑です。
 いやね、“背中”にあるものだから、実際引っ張られると滅茶苦茶痛いです。
 背中が弱点って事実はどーしても消えてくれないんだよね。悲しいけど。
 しかし実際、呆れたもんだよ。
 人間に戻ったには戻ったけど、手に入れた能力とかをはそのままに、って時点でこういうものもそのまんまだったんだよね……。人型だと、出そうと思わないかぎりは仕舞われた状態なのが嬉しいけどさ。

中井出「さってここで質問ですよこのちゃん。
    あなたは翼の生えた人をどう思います?」
木乃香「かわええ!」《どーーーん!!》
中井出「それが女の子だったら?」
木乃香「かわええ!」《どどーーーん!!》
中井出「さらにその子がせっちゃんだった日には」
木乃香「見てみたいーーーっ!!」《ドッギャァアーーーーン!!!》
刹那 「なっ……《ポム》……え?」
中井出「……だとよ《ニヤリ》」

 暴いてみればなんのことはない、なんてことはよくあることで。
 せっちゃんはこのちゃんの真っ直ぐな言葉に、顔を赤くしてふるりと震えていた。
 そんな彼女の肩に手を置き、悪者っぽくニヤリと微笑んでみせた僕はといえば───……せっちゃんに目潰しをされ、怯んで手を離した途端にボッコボコにされました。


───……。


 シュウウウウウ……

中井出「ウメー! トロピカルジュースウメー!!」

 やあ僕博光。街角の一角のオープンカフェからお知らせします。ボッコボコ状態で。

中井出「あ、すいませーん。このジャンボミックスパフェデラックスってのくださーい」

 たまにさ、甘いものって食いたくなるよね。
 今がまさにその時なんだけど───

刹那 「………」
木乃香「………」

 僕の“余計な”はからいで隣同士の二人は、さっきからな〜んにも喋りません。
 なもんだから僕一人、陽気にモノ食いまくってます。

中井出「まあつまりね? せっちゃんは翼人……ハーフなんです。
    だから翼もあって空も飛べる」
刹那 「ながぁっ!?《ゴーーン!》みゃみゃみゃ脈絡もなく何をバラして───!!」
木乃香「ハーフて……」
中井出「天使と人間のです」
木乃香「《パァアア!》やっぱそーなんー!?」
刹那 「へっ!? い、いえお嬢様っ、わわ私はそんなっ…………大層な、ものでは……」
中井出「や、ほんとは鳥族と人間のハーフらしいんだけどね?
    天使なんて鳥族とそう変わらないって。
    というか自分に負い目を感じてるから大層なものは〜なんて考えるんだよ。
    白の羽根がタブーだ〜って言うなら、
    タブーを手にして産まれたことをむしろ誇りに思うべきさ。
    せっちゃんよ、貴様……このちゃんが嫌いか? 出会いたくもなかったか?」
刹那 「急になにをっ! さ、さっきから聞いていれば勝手なことを……!
    このちゃっ……このかお嬢様は私が守るべきお方だ!
    そう任され、それを曲げるつもりは微塵もない!」
中井出「や、そーじゃなくて。護衛対象としてしか気にできないのかって聞いてるの。
    嫌い? 出会いたくなかった?」

 そう、大事なのはコレ。
 護衛の任務がどうとかじゃない、本人の気持ちヨ。

刹那 「っ……わ、私は……っ……私に、そんなことを言う資格は……」
中井出「愛してるってさ!」《どーーーん!》
木乃香「せっちゃん!」《ばーーーん!》
刹那 「うわぁわわわああああーーーーーっ!!?《ガーーーン!!》
    ちちちちがっ……いいいいえそれはもちろん私はこのかお嬢様を大切に思い……!
    し、しかしそれはそういった意味では……!」
中井出「うむ。まあよーするにさ。その翼が無ければ、キミは近衛さんには会えなかった。
    キミが白の翼を持つ理由なんて、それで十分なのさ。
    大体翼があるからなんだい、そんなの俺なら何枚も出せるぞ」

 言いつつダークマターを発動、九頭竜闘気とレヴァルグリードの飛翼を以って十八翼を出し、ニコリと笑ってみせる。

刹那 「…………《ぽかーーん……》」

 せっちゃん、唖然。
 目の前で何が起きているのかがよく飲み込めていないのか、目をまん丸にして固まっていらっしゃる。

中井出「……ハッキリ言おう、刹那く───」
店員 「ジャッ……ジャンボミックスパフェデラックスです」
中井出「あ、どうも。あ、この食器片付けちゃってください」
店員 「は、はい」

 ちらちらと十八翼を見て、「コスプレかしら……」と小さく呟いた彼女に、なんか少し悲しさを感じた博光です。まあそれはそれとしてパフェ食おう。

中井出「んぐんむんむむむ……おおこれ美味い!
    せっちゃんこのちゃん、キミらも食いなさい!
    量ならたっぷりあるか───あ。…………コホン」

 しまった、あまりの美味さに方向がズレてしまった。
 えーとシリアスシリアス……と。

中井出「《キリッ》───ハッキリ言おう、刹那くん。キミの悩みはまだまだ小さい。
    キミが信じた、キミが好きになった幼馴染は、
    翼が生えている程度でキミを嫌いになる子かい?」
刹那 「……そ、れは……理想論、というもので───」

 僕が思っているよりも、彼女にとっては重いことなんだろう。すぐにシリアスを纏ってくれたせっちゃんに感謝を。
 ……しながらも食ってるけどね、俺。

中井出「むぅ……解ってない。異形の姿をしているものを人間と呼ばないんじゃない。
    理想を語れない“モノ”こそを人間と呼ばないものさ、誰しもね。
    それに……そんなものは理想でもなんでもない。
    キミが近衛を信じているからこそ抱けた理想だろう?
    確認するのが怖かろうが、キミは描いたはずだ。そんな未来を。
    さてこのちゃん? キミにとってのせっちゃんの理想は、どう返せるものかな?」

 このお方は全然まるで解っちゃいない。
 お友達っていうのはね、相手を馬鹿みたいに信じて、なんというか救われてなきゃだめなんだ。二人で元気で豊かで……。
 しかし怯えてしまった心ってのは中々立て直せないものであり、特にこういったお子は頑固になってるもんだからね、うん。

木乃香「あ……」
刹那 「《びくっ!》こ、この……か……おじょう……っ!
    や、やめ───このままでいい! お嬢様に嫌われるくらいなら───!
    いやっ……嫌われても構わない!
    ただずっと守っていられるだけで……私は……!」

 ククッ……《ドンッ★》そうくることは読んでいたぜ海馬。
 俺のターン! 魔法カード“天然の幼馴染”発動!!

木乃香「? ……嫌う? なんで……?
    ウチ、せっちゃん嫌いになったことなんて、一度もあらへんえ……?」
刹那 「───! こ、このか……お嬢……?」
木乃香「なんや知らんけど、もし今せんせが言ったことが全部ほんまなんやとしてもやよ。
    ウチ、せっちゃんのこと大好きやもん。
    けど───もし背中に翼があるから避けられてたゆーなら……」
刹那 (───! ……そ、そうだ。
    私は……お嬢様……このちゃんに嫌われるのを怖がるばかりで、
    このちゃん自身に訊いてみもしないで避けて……。
    …………ああ……だったら、今度こそ終わった。
    信じようとしなかった自分自身の自業自得で……私は───)
木乃香「それが理由なら……───よかったわー……」
刹那 「…………え?」

 ショックを受けたり落ち込んだり、ビクッとしたりソワソワしたり、この時だけで相当のせっちゃんを見れた僕ですが、今この瞬間ほど間が抜けた表情はそう見れないと思う。
 断言できるね、きっとそうそう見れないよ、こんなせっちゃん。
 しかし美味いねこれ。……ふ、二人ともホント食べないのかな。食べちゃうよ? 全部。

木乃香「ウチ、せっちゃんに嫌われるようなこと、
    知らんうちにしてしもたんかと思ててん……。
    ああ、なんやほんま……よかったわー……」
刹那 「《ズキッ……!》こ、このちゃ───」
中井出「ワハハハハハ!! 言わんことではないわ!
    全ては貴様が勝手に距離を取っていたから生まれた誤解よ!
    つま《ドボォッ!!》オフゥッ!!?」

 ゴッ……ゴッハ!? ば、馬鹿な……何故こんなところでバスケットボールが脇腹目掛けて飛んでくるといった事態が……!?
 あ、うん……でも目的は果たせたようだし、これでOK……かな?
 痛がるフリをしつつ倒れ、せっちゃんの視界とうっすらと涙を浮かべて笑むこのちゃんの視界から消え、それを確認してからコックローチライトニングで逃走。
 支払いを済ませたのち、バスケットボールが飛んできたと思われる場所までを進み、そこにいらっしゃったゆーなさんと「ウェーイ!」とハイタッチ。
 え? ええもちろん言い合わせなんてものは一切ござーませんよ? 全ては出たとこ勝負のオールタイムクライマックスストーリーズよ。

中井出「やあ」
裕奈 「やっ、せんせ。だめだよー?
    上手く落ち着きそうなところで茶化すみたいなこと言っちゃあ」
中井出「いや、必要悪というものがあります。
    誰かが悪になることでその場の一体感ってのを増やす、
    少々荒っぽくて赤鬼さんが泣いちゃいそうな方法だけど、効果はばつぐんだ!
    そんなわけでもう抱き合って微笑み合ってるところも確認したし───
    嫌われ者のスピードワゴンはクールに去るぜ」
裕奈 「えっ? この後の行く末とかは? 見なくていーの?」
中井出「友達は仲良くしてなきゃいかん。
    時に誤解はあれど、最後はハッピーじゃなければこの博光が許しません。
    で、彼女らはお互いの深いところを受け止め合った。
    ならばもはや何を心配する必要があろうか。
    だから安心して去れるのさ。スピードワゴンだし」

 さーてバッグは……何処だろ。
 まあいいや、見つからなかったら創造するかバックパックにいろいろ詰め込んでいけばいいんだし。

中井出「つーかキミ、部活行く途中で尾行てきたでしょ。
    麻帆良の外への外出は基本禁じられてるんだから、引率者がおらんとあかんえ?
    今日は見逃してあげるからさっさと戻りなさい。僕も買い物があるし戻るから。
    あとあまり覗き見してると感知されるから気をつけてね?」
裕奈 「へ? 感知? って、なんか二人してこっち来てる!?」
中井出「うむ! ではさらばだ!《ダタッ!》」

 逃走! 後ろから「えぇっ!? ちょっ……ってあっちも走ったぁーーっ!」とか聞こえたけど、“生憎だったな! パワーでは貴様ならばスピードは俺だ!”とばかりに大地を蹴り、このちゃんをお姫様抱っこしつつ追ってくるせっちゃんから逃げる逃げる!
 懸命に追ってこようが無駄だ! 一生かかっても追いつけんぞ!


───……。


 ……はい、というわけで走りに走って……やっと見つけた学園生協です。

中井出「うーむ……ジャンパーソンシリーズ無いかな」

 まあもちろんあるわけもないんだが。名前好きなんだよな、ジャンパーソン。
 歌もまったりしてたし。

中井出「金は……一応多少だけど給料貰ってるし、あー……うわ高ッ!
    地界離れて久しいけど、バッグってこんなにするんだな……!
    霊章輪手に入れてからというもの、
    なんでもかんでも霊章に突っ込んでたから、バッグなんて飾りだと思ってたのに」

 お、おそろしい……手が出せんぞこれは。

中井出「いやいや……世の中には自給250円で頑張ってるGSも居るんだ。
    このくらいなんだいっ、僕の人生は満たされている!」

 そう思うことにして、バッグをじーーーーと見つめて分析完了。
 さて、ログハウスに戻ってコピーでもしようか。
 え? 犯罪? フフッ、完成された犯罪は犯罪なのさ! ……だめですね、それ。

中井出「自作でもしようか。それがいい」

 よーし、どうせなら豪勢にいこうね?
 キングベヒーモスの皮で作るバッグなんてどうだろう!
 核でも用いらん限り綻びの一つも……いや、核でもつくかどうか。
 とにかくGO! ブランドものなんぞ目じゃねーぜ!


───……。


 ちくちくちくちく……ジャーーン!!

中井出「完……成……!」

 そして翌日の朝。貫徹してまで完成させたソレは、もはやバッグの域を超えていた。
 この世界にこれほど豪華なバッグがあろうか、いや無い! ……反語。
 え? ちなみに僕は何処に住んでるのかって? 宛がわれた部屋がネギくんとは違って一人部屋でね? なんか退屈だったから外のほーにテントを構えています。
 もちろん許可は得てるし、邪魔にならないところならば何処でもという条件をぬら様と取り付けることに成功してる。
 故に───

中井出「コォオオオケコッコォオオオオオオオッ!!!
    生徒たちよっ! 朝であるぅうーーーーーーーーーっ!!!」

 僕は学園の屋上から高らかに叫びました。
 さあ、今日もまた一日が始まるぞう!

中井出「さーーあまずは大きく手を上げて背伸びの運動ーーーっ! ミギーーーッ!!」

 チャチャブーのように叫んだあとに体操を始めた僕。
 しかし眠気のあまりに背伸びをしたあとにふらつき、柵を越えて屋上から落下したのはいい思い出です。

中井出「思い出にもなりゃしないよ!」

 しかしこの博光、落下ごときではもはや血反吐を吐くくらいで済むようになりグオオ脇腹しこたま打ち付けた……!!
 だがへっちゃらさ。つーかそろそろ本気で生徒たちを外に出さないと。

中井出「ん、んー…………おーやってるやってる。懲りずに飛竜バトルか」

 ログを覗いてみると、楓殿、くーさん、ネギにアスナくんは四人でパーティを組み、飛竜と戦っていた。ナーヴァルヘイム山の飛竜だね、鱗を取りに行くのに散々追われたっけ……懐かしいなぁ。
 ……あれ? でもキティは? ネギちーの師匠を任せてたはずだけど……居ないや。

中井出「……うむ」

 壁をよじ登って屋上へ戻り、テントに入ってヒロライン。
 ストンとフェルダールのナーヴァルヘイム山に降り立った僕は、戦っている彼女ら+ネギくんを見やった。つーか思いっきりバトル中です。

蒼飛竜『グバァオシャアアアッ!!』
古菲 「ふっ《ドンッ!》アイヤッ!」

 突進から飛翼でのナックルを、気を込めた左手で受け止め、その気を踏み砕いた地面に流すことで衝撃を抹殺。
 即座に踏み込み、その速度のままに放たれた肘打ち、霍打頂肘が飛竜の腹部に直撃。
 さらに一歩を踏み込むと、肘を当てた場所に左の掌底、その隙に戻し、練っておいた気を右手に込めるとピョンと軽く跳躍し、着地時の衝撃を気で引き上げ右拳に乗せるようにして馬蹄崩拳。
 そこまでやってようやく怯んだ飛竜へと、同箇所への右の裡門頂肘、続けて左の躍歩頂肘で完全に距離を詰め、反撃のダガージョーを右手刀で打ち逸らし、身を低くして顎下を潜り抜けると───やはり同箇所への錬氣頂肘を叩き込み、とうとう血を吐き出し動きを止めた飛竜へと……

古菲 「ただ撃つ!!」

  ドゴォッバォンッ!!

 ストックしてあったであろう気の全てを込めた左掌が叩き込まれた。
 それをまともに受けた蒼飛竜は、荒れた山道の岸壁まで吹き飛び激突。
 あの突き抜けるような感覚……ありゃあ徹しも入ってるね……。

古菲 「アタタ……! やはり飛竜種は硬いアルネ……!」
楓  「いやいや、篭手の武具でこれならば十分でござろう。───(ニン)ッ!」

 しかしながらタフで知られる竜種。飛竜だとしてもそのしぶとさは困ったものであるからして、ムクリと起き上がった飛竜は怯むことなく襲いかかってくる。
 それに対して楓殿が分身で迎え、突撃からのダガージョーを分身の一体がわざと食らうことで引き付け、分身を消して怯ませた瞬間に横からバカデカい手裏剣を投擲。
 これがあっさりとブレスで弾かれたと思いきや、既に懐に潜り込んでいた二体が錬氣拳とサマーソルトで強引に飛竜を浮かせ、詠唱をしていたらしいネギがそこへ雷の暴風を放ち、分身の一体を踏み台に跳躍したアスナくんがハマノツルギをギリッと握り、一閃!
 それと同時に飛竜の背面側に回っていた楓殿が、気らしきものを右手に凝縮させていて───同時に放たれたそれは、飛竜を内側から破壊してみせた。

古菲 「オオ、やたアルカ」
ネギ 「……はぁっ……!
    強くなるためとはいえ、連続で飛竜と戦うのは疲れますね……!」
古菲 「なに、肉体は疲れないアルからどんどんイケるアルヨ、ネギ坊主」
ネギ 「そ、そうですけど」

 うんうん、みんな逞しくやっているようでなにより……なんだけど。

中井出「やあ」
楓  「む?」
古菲 「オ、中井出師父アル」
明日菜「あっ……あーーーっ! やっと来たーーーっ!!」
中井出「お?」

 戦闘も終了し、さあ剥ぎ取りってところで話し掛けました。
 もちろん、僕は皆様に「あ、剥ぎ取りしながらでいいから」と告げますが。

明日菜「な、中井出せんせ───じゃなかった、中井出師父!
    いろいろと言いたいことあったのに、
    どーして二、三年近くもほったらかしにするんですか!」
中井出「いや、僕にしてみりゃほんの一日半程度の話なんだけど……どしたの?」
明日菜「どしたのって……急にこんなところに放り込まれて、旅して戦って……!
    それが中学生に言う言葉かぁーーーーーっ!!」
中井出「楽しかったっしょ?」
明日菜「楽しかったわよぅっ!!」《ドギャーーン!》

 ツリ白目&涙目で胸張って叫ばれました。
 うむ、正直でなにより。

中井出「しかしキミらねぇ、いかんよ。
    夢中になるのは博光としても嬉しい限りだが、サボリはいかん。
    今日は休日だからいいけど、昨日なんて思いっきり風邪で欠席扱いになってるよ」
明日菜「えぇっ!? え、や、あ……だだだって待ってれば声をかけてくれるって言うから
    私、ずーっと……!?」
ネギ 「えううっ!? じゃあ僕も先生なのにサボ……!?」
古菲 「アイヤ……」
楓  「は、はっはっは、それはまた……困ったでござるなぁ……」

 楓殿が言うと、あまり困ったように見えないから不思議だ。
 っと、いろいろ話しておかねばならないこともあるし、とりあえずはログアウトかな。

中井出「ともかく今日は修学旅行準備のための自由行動許可日である。
    べつに今日も一日ヒロラインしてるのもOKだけど、準備とか出来てる?」
ネギ 「あ……そうだった! きょ、京都に行くんだよね京都!
    うわーー楽しみだなぁ修学旅行!! 早く当日にならないかなぁああ!!」

 純粋な子供がここに居る。うむ、僕も木刀をこの手にするのが楽しみでならねー。
 だから解る……その気持ち、解るぞネギー!

明日菜「ネギなら楽しみだ楽しみだ言いながら、
    とっくに準備済ませてるから問題ないですよ。
    私やこのかだってそれに付き合わされるカタチで、もうとっくにですし」
ネギ 「だ、だって備えあれば……わーーい嬉しいなぁああ!!」
明日菜「憂い無しでしょ、それ言うなら。ほんとガキなんだから……」
古菲 「フム? 準備アルか……特に何が必要ということはないアルな」
楓  「その気になれば自給自足で生活できるでござるからなぁ、はっはっは」
明日菜「二人とも修学旅行になにをしに行く気!? サバイバル!?」
古菲 「ンニャハハハ、ここでの生活に慣れるト、むしろそれが当然になてくるアルヨ」
楓  「自然とともに生きることがすっかり癖になってしまったでござる」
ネギ 「た……たくましいですね……」

 てゆゥか女子中学生の言葉じゃない。
 とまあそれはさておいてだ。

中井出「じゃ、くーさんと楓殿は準備に出ること。
    それとネギ、近衛さんが探してたっぽいから外にどうぞ」
ネギ 「え? あ、うん」
明日菜「え゙ッ!? あ、じゃあ私もそろそろ───」
中井出「よーしそんじゃあ明日菜くんは僕と一緒に経験を積もう!
    二年間ヒロラインを生きていて、
    まだこんなところに居るようでは胆力と覚悟が足りん証拠!
    さーて目指せ愉快で素敵な我が人生!」
明日菜「《がしぃっ!》ひっ!? い、いやぁあーーーーーーーーーっ!!?」

 三人をログアウトさせたのち、僕はそれはもうアスナさんを引っ張り回しました。
 武具強化のいろはから、金の使い道など、それはもういろいろ。
 どうやら初期の頃、同じ場所でずっとネギとちくちくと経験値稼ぎをしていたらしいのだが、そこはもちろんヒロライン。同じ場所での燻りを許さぬ我らがバルバトス様に目をつけられ、「貴様らぁ……こんな所で長々と何をしているゥウウ……!!」と血管ムキムキで問いかけられたのちにデストロイ。
 ここは危険だと旅をしてくーさんたちと合流し、そこからずっと一緒に旅をしていたらしいのだが……戦闘スタイルは、せっかくの大剣なのに積極的に突っ込むことをしないもの。
 これはいかんと思い、僕は彼女にソロプレイを強要しました。


───……。


 ……そして……一年の月日が経った。

  ブフォオンッゾッガァアッ!!

明日菜「はぁっ……火の精霊イフリート……討ち取ったぁーーーっ!!」

 振り回したハマノツルギ+291を灼熱の地面に突き立て、ボロボロで汗だくの明日菜さんが勝ち鬨を上げた。

明日菜「うぅっ……!
    ご飯とかアイテムとか寝床を切り詰めて、武具を強化した甲斐があった……!」

 うん、相変わらず魔法生命体っぽい相手には滅茶苦茶強いです彼女。しかしもちろん殴られれば痛いわけで、イフリートはそこんところ上手いから散々っぱらやられました。
 既に恋姫連中も結構倒していた所為か、イフリートのレベルも随分強化されてたし。ハマノツルギ持ってなきゃ、このレベルで勝つなどとてもとても……。

イフリート『フッ……たった一人に敗れるか……いいだろう、認めてやる。
      そこに居るワールドマスターとの戦いよりも、
      よほどに納得できる戦いだった』
中井出  「うるさいよもう!」
明日菜  「……? わっ、なにこれ……赤い……球?」
イフリート『属性の宝玉だ。それを持っていれば、汝の攻撃全てに火の属性が付加される。
      込めたくないと思えば付加されることもない。上手く使うがいい』
明日菜  「……あ、ありがとう……」

 宝玉を受け取り、レベルも上がり、目標も達成した所為か、彼女は結構フラフラしたりしていた。そういやそろそろ寝かさないと精神危ないかも。
 ここまでくるのに結構かかったし。
 我らの頃は一年もあれば相当のレベルに上がってたもんだけどね、戦いを知らない中学生にそれらを一気にやれっていうのは、さすがに無謀だ。

中井出「よっしゃそれじゃあ休憩だ、猫の里へと案内しましょう。
    そこでゆっくり休んで、あとは修学旅行までを現実世界で過ごしなさい。
    現実の方の暮らしも充実させないと、外での生き方忘れるから、マジで」
明日菜「この一年間好き勝手に引っ張りまわした人の台詞なんですか!? それ!!」
中井出「もちろんである! さあさ、もてなすからもてなすから。
    あ、じゃあイフリート、また火属性の適性に合った娘が居たら来るから」

 バイアイ、と奇妙な言葉を吐きつつ手を振ると、「貴様は来るな」とキッパリ言われた。
 うん、どうも初見のイメージが相当に悪すぎたようだった。


───……。


 さて、そうしてお持て成しをしようと、久しぶりにこの博光が腕を振るっていた時。
 外のほうから呼ばれる感覚を覚え、式を描いて外の映像を映し出す。……と、ネギウスくんが僕を呼んでいるようだった。

中井出「ネギか。じゃあ黒で包んでこちらに来てもらおう」

 片手間だからちょっと直視してる余裕が無い。
 テント内が既に僕の空間のようなものだから、そこに居る人物を引き込めばいいや。
 はいヨイショオ。

声  『わぁあああっ!?《ドシャドシャアッ!!》』

 ……キッチンで調理をする僕の後方で、何かがドシャアと落ちる音。
 ちょっと手荒だった? と思いつつも、構わずGO。

中井出「近衛さんの用事は済んだかー?
    あ、もうちょっとでメシできるから、湖のほうに先に行っててくれーい」

 僕は仕上げが残っているので、ちと手が離せない。
 しかし何故か「あわあわ」言っているのが気になって、ハテと振り向いてみれば───

刹那 「………」
木乃香「………」
中井出「………」

 せっちゃん並びに、このちゃんがぽかーんとした顔でへたりこんでいらっしゃった。
 その横であわあわと真っ青になっているネギウスも合わせ、僕はといえば同じくぽかんとするしかなかったわけで。

中井出「…………ようこそ。冒険の世界フェルダールへ」

 結論からいえば、なんかもう受け容れるしかありませんでした。
 特撮じゃよーと言ったところで、このちゃんは騙せてもせっちゃんは騙せないだろうし。


───……。


 ……シュウウ……!

中井出「“バッ”! この“バッ”!!
    あの場所にせっちゃんとこのちゃんを連れてくるなんて!
    一言“バラしたいんです”と言ってるようなもんじゃないかっ!」
ネギ 「ごごごごめんなさーーーーいいぃいっ!!!」
中井出「よし許す!」《どーーーん!!》
総員 『許すの早ッ!!』

 さて、ガノちゃん湖前。
 猫の里の中心に位置するエーテルアロワノンから西に移動した先にあるそこ、通称ネコット農場にあるそこの前で、自然を使ったテーブルの前でひと悶着。
 モリモリと食事中のくーさんや楓さんや明日菜さんを余所に、僕はコトの発端であるネギの頭頂にお灸を設置、シュウウと燃やしながら説教をしてました。
 でも謝ってくれたので即許す。つまらんことには興味がない……それが僕らの原ソウル。

刹那 「あ、あの……中井出先生。この場所はいったい……」
中井出「え? ネコット農場ですよ?」
刹那 「いえ、場所の名称ではなく……ここはいったいどうなっているのでしょうか」
中井出「え? アイルー種や妖精やドワーフ、天使族などといった亜人族の聖地ですけど」
刹那 「そ、そうではなくてっ」
木乃香「あはは、せっちゃんどこでもえーよー。
    最近アスナたちが付き合い悪い理由、解ったし」
刹那 「し、しかしお嬢様……」
木乃香「あー、せっちゃんまたお嬢様ゆーた……このちゃんやゆーとるのに」
刹那 「うぅ……」

 許しを得たネギくんが食事をモリモリ食べ始める中、なんとも睦まじい状況がテーブルの一角を占めていた。

中井出「しかし急にどうしたの二人とも。
    ネギのことつけまわしてたわけじゃないでしょ?」
刹那 「い、いえあの……実はおじょ───こ、このちゃんに頼まれ、
    神楽坂さんを探していたのですが……」
明日菜「むま? んぐんぐ……んっ……く。あぁ桜咲さん、アスナでいいよアスナでー。
    この世界に来ちゃったんならもうミチヅ───仲間だからっ」
刹那 「………あの。今ミチヅレと言いかけませんでした?」
明日菜「あはははは気の所為気の所為っ!《どーーん!》
    でもアスナでいいし、私も刹那さんって呼ばせてもらうから!」

 この一年で彼女も随分と逞しくなりました。
 そしてこの世界で生活を続けたのち、皆様の中から食事の最中の“作法”というものが無くなった。“食える時に食う”が世の常ですからね、行儀よくちまちま食ってて、敵に襲われでもしたら目も当てられない。
 この猫の里なら大丈夫だよーと言っても、ニ・三年で染み付いたクセってのは流れないもので。

明日菜「はむっ……んぐっ……うぅ、おいしっ……!
    こんなおいしいの、久しぶり……うぐっ……ぐすっ……おいしぃい〜〜……!」
ネギ 「アスナさん、随分と雰囲気が変わりましたけど……なにかあったんですか?」
中井出「うむ。一年間集中的に鍛えてみました。
    もちろん僕にゃあ技術面で教えられることなんてないから、
    覚悟や意気に対するいろいろだけどね。
    火の加護と火の属性の宝玉を手に入れたし、もう初心者卒業って状態ですじゃ」
明日菜「これだけやってまだ初心者卒業レベルなの!?」
中井出「だって上限レベルが一千万以上あるんだよ?
    武器レベルだってまだ291だし、もっと上があるよ。
    このフェルダールは広いぞぅ。キミたちが訪れた場所なぞまだほんの一部だ。
    一つの街にも腐るほどイベントが転がってるし、出来ることが多すぎるくらいさ。
    あ、もちろん外からこの猫の里に来た時は歓迎するよ?
    入るにはそれなりの条件が必要になるけど」
ネギ 「あ、あのー、ところでヒロミツのレベルと武器レベルって───」
古菲 「訊かヌほうが身のためアルヨ、ネギ坊主」
楓  「こればかりは流石に呆れたでござるからなぁ」
ネギ 「え? え?」

 話し合いの中でオロオロとするネギウスさんを余所に、僕は猫の里の皆様を呼んで、軽いパーティ気分で騒ぎ始める。
 その一歩前を優雅に歩くのはジョニーだ。
 彼は紳士的態度でグラサンと帽子を外すと、ペコリと優雅にお辞儀をし、再び被り直す。

木乃香 「やーーん猫が人間みたく歩いとるー♪ かわえーなー、抱いてみてもえー?」
ジョニー『《きゅむっ》おっとお嬢さん、ボクにはノータッチで頼むニャ』
木乃香 「ほにゃっ!? ……猫が喋っとるーーーっ!」
刹那  「! ───お嬢様! 下がって!」

 もちろん喋るなんて知らなかったこのちゃんは仰天。彼女を守るように刀に手を伸ばさんとするせっちゃんだったが、残念。ジョニーの方が速い。

ジョニー『おぉっとお嬢さん、それ以上はオイタが過ぎるニャ。
     ボクらは歓迎をしたいのであって、争いは好まないニャ』
刹那  「っ……」

 刀に手を伸ばそうとする手が止まる。何故って、既に喉元にジョニーの刀が突きつけられてるから。飛竜種はおろか、ドラゴンにでさえ勝ってしまうステキキャットだ。いくら鍛えてあるからとはいえ、新規登録扱いのせっちゃんが敵う相手じゃない。

中井出「せっちゃん、落ち着いて。この猫の里はキミタチに危害を加えない。
    というか生徒に攻撃するようなことはしないから安心して。
    お持て成しをしたいんであって、争いはいいよ。
    “我らは楽しいこと”を好みます。
    だから、是非とも警戒ではなく楽しいことで返してほしい」
刹那 「…………先生……」

 俺がそう言うと、ジョニーはニッとニヒルに笑い、ヒュフォチャキィンッ! と綺麗に刀
を鞘に納めると、「ノリが悪かったニャ……」とジョニーチックに背を向けた。
 あとは完全接待モードである。
 次から次へと料理が運ばれ、それらを既に先駆者であるネギや明日菜さんやくーさんや楓
殿が競うように食べてゆく。その速度にせっちゃんやこのちゃんは唖然とするばかりだ。

中井出「まあともかく、バレちゃったなら仕方ないか。二人とも、これを」

 手にネックレスを生成、二人に渡すと、再びヒロラインの説明から入る。
 それが済めばそういうことならばと食事を始める二人を眺め、友人に隠し事をする必要が無くなったからか、ホッとしている明日菜さんを横目に僕もニコリと笑ったのでした。

中井出「でさ。結局なんだってネギはここを見つかる破目に?」
ネギ 「あっ! そうだった!」

 マンガ肉をムチャアアアと食べていたネギが、ハッとして肉を離す。
 うむ、一度はムチャアアと引っ張って食いたいよね、マンガ肉。

ネギ 「二人とも、ヒロミツを探してたんだって。
    仲直り出来たことでお礼が言いたかったのに、ヒロミツが逃げたって───」
中井出「急用を思い出したから帰っただけです」《キッパリ》
刹那 「人のことを散々焚き付けておいて、急用ですか……」
中井出「うむ。だってバッグ買わなきゃいけなかったし」
木乃香「あ、せやったなー。せんせを案内する約束しとったのに、ウチ忘れてたえー」
ネギ 「でね、今日はそれ以外のことでも用事があって───えっと、アスナさん」
明日菜「むぐ?」

 同じくマンガ肉を食べていた明日菜さんが、急に自分に振られたことに驚きつつも肉を咀嚼し飲み込む。そうこうしているうちにネギの方は準備万端という風情で、なにやら小さな包みを差し出していた。

明日菜「え? えと……なに? これ」
木乃香「アスナの好きな曲のオルゴールやえ〜♪
    明日渡すつもりやったけど、こんな賑やかなら今日のほうがきっとええと思うし」
刹那 「すいませんアスナさん。
    今日はその、祝いのためのプレゼントをネギ先生と探していたのですが。
    丁度探していた中井出先生の居場所をネギ先生が知っている様子だったので……」
中井出「あ……それでネギのこと尾行して、屋上のテントに侵入したと」
刹那 「う……ネギ先生が話をつけてからでは、またきっと逃げられると思い……」

 先手に出たら、丁度黒で飲み込んでしまったわけですね……。

明日菜「え? お祝いって?」
ネギ 「あ、あれ? 解りませんか?
    明日……4月21日はアスナさんの誕生日ですよ…………ね?」
明日菜「…………え? あ───」

 ……え? そーなの?
 うわやっべ……! なんも用意してねーよ俺……!

刹那 「その、私からはお守りを。京都に行くというのにお守りというのもなんですが」
明日菜「あ、ううんっ、くれるだけでもうっ……そ、そっか……あはっ……」
中井出「う、うむ。そして僕からのプレゼントがこれさ、明日菜くん」
明日菜「え───」

 光速で梱包を終え、サッと差し出すプレゼント。
 一瞬パンチンググローブでも仕込もうかとも思ったけど、さすがにそれじゃあ芸がない。
 それに……こんな、涙を滲ませて喜ぶお子にそんな残酷なことは出来まいよ。

明日菜「あ……開けてみても……いいですか?」
中井出「うむ。きっと気に入れる。
    なにせこの博光自らが素材から選び、徹夜して作ったもの。
    さあ、存分にご覧あそばれい」
明日菜「あそばれい!? な、なんか言葉になってそうでなってないんだけど……えと」

 結局滲んだ涙も言葉回しでブッ飛ばしつつ、開封を奨める僕が居た。なんかもう俺って祝いの席には向かないのかなーとかそんなことを考え始めてます。

楓  「ふむ。中井出師父のことでござるし、
    パンチンググローブでも仕込まれているのではないでござろうか」
明日菜「え」
古菲 「いやいやそれは違うアル楓。中井出師父はくれるものはくれる人アル」
明日菜「そ、そうよねー? あはは、そ、そんな驚かさないでよー」

 不安だの安堵だのを織り交ぜながらも開けドパァンッ!!

明日菜「はぶぅっ!?」
ネギ 「うひゃあっ!?」
木乃香「アスナーーーっ!?」

 ……た途端、顔面クラッシュ。
 当然見守っていた皆様も開けた本人もドッキリ状態です。

中井出「甘いわ。この博光ならばあえて両方で刺す」

 なにせ飛び出したのは確かにプレゼントであり、顔面に直撃したのもプレゼントなのだ。

楓  「おおっ、プレゼントをグローブ代わりにするとは。この発想はなかったでござる」
古菲 「今度超にやるアルヨ!」
中井出「うむ! 全力でやるがよいわ!
    というわけで明日菜くん、それがこの博光からのプレゼント。
    その名もキングベヒーモス素材で作ったただ一つのバッグだ」
明日菜「キングベヒーモスーーーーーーッ!!?」《ドギャーーン!!》
古菲 「竜種よりよっぽど強いバケモンアルーーーーッ!!」《ゴガーーーン!》
木乃香「よく解らんけど名前がそのまんまやーーーーっ!!」《オジャーーーン!》

 フェルダールに生きた者にしか解らないこの脅威……プライスレス。
 せっちゃんやこのちゃん、首を傾げたりしてるし。
 うん、ネーミングセンスについては、もう僕は諦めてます。

明日菜「なっ、あっ、うっ、えっ……い、いいんですかこんなの!!」
中井出「構わぬ! ちなみにチャックには贅沢にもオリハルコンを、
    縫い糸にはカイザードラゴンの背毛が使われていて、
    ボタンには虹の貝殻を削ったものを───」
ネギ 「《ズガァアーーーン!!》たっ……宝そのものだぁーーーーーっ!!」
カモ 『姐さんそりゃヤベェよ! 店売りなんてしても値段つけられるもんじゃねぇ!
    い、いやむしろそれらを素材にして武具を鍛えたらどうなるか……!』
中井出「うむ? べつにそうしても構わんが……明日菜くんはそれで頷けるかな?」
明日菜「…………これは、バッグとして先生がくれたものだもん。
    武具の素材として使うのは、いくらなんでもひどいわよ」
中井出「……うむ。その言葉で十分さ。じゃ、祝おう皆の衆!
    そして明後日の修学旅行の安全を願ってぇええーーーーっ!!」
総員 『かんっぱぁーーーーいっ♡』
木乃香「ひゃっ……!?」
刹那 「なっ……!?」

 せっかくだから、管理者権限を発動。
 プレイヤー全員をこの場に召喚し、客として招きました。
 大丈夫、招待が終われば元の状態のまま復帰できるのが猫の里への招待のステキなとこ。

彰利 「なんだべ!? 人がせっかく釣りしてるところに!」
中井出「うむ良くぞ来た僕のキミタチよ!
    今日はここにおわす神楽坂明日菜くんの誕生日なのだ! ほんとは明日だけど!
    しかしこうして席を設けたからには───」
彰利 「祝わないなんてお前……ウソだぜ!? そーゆーこったな中井出てめぇ!」
中井出「うむ! そういうことだぜ彰利てめぇ!」

 言いつつ、ミクを召喚! 続けてジャポンにおわすハクを召喚し、以前ちょいと気になってから作った場所から他のヴォオカロイドの皆様も召喚!
 猛者連中や、原外(原中以外の人々の意)の人々の知識を基に作ったから詳しいことなんて知らない…………こんにちは、博光です。性格も受け取り方によって違うから、コロコロ変わるかもしれんし……いやいやそれがどうあれ僕は暖かく迎えます。そういった意味でも召喚されたヴォーカロイドの皆様らを前に、僕はニコリと笑みを浮かべ、暖かく迎えたのでした。

中井出「さーあミク! リン! レン! ルカ!
    ハク! ネル! テト! カイト! メイコ! 元気に歌って祝ってくれ!」
テト 『キミは実に馬鹿だな』
中井出「召喚して僅か4秒で馬鹿扱い!?」

 あっさり馬鹿扱いでしたが。

中井出「ね、ねぇ藍田二等?
    こんなコほんとにヴォーカロイドの中に居たの?
    なんだか物凄くやるせない気持ちが……」
藍田 「や、俺も詳しくは知らんのだけど。誰か知ってるヤツ居る?」
清水 「おお。エイプリルフールキャラだったらしいぞ?
    つーか提督、なんでもかんでも象りすぎ」
中井出「馬鹿呼ばわりだけど、楽しいからいいじゃない。ミクとハクも寂しがってたし。
    それに僕にとっては自分の知らない地界の歴史だから、
    なんというかこう……知ることが出来ると嬉しいわけなのです。
    あ、きちんと世界の一角にゲキド街作らせてもらったから、暇があったらどうぞ。
    街なのに全てが合法って感じのステキな街さ」

 ほんと、僕もみんなの知識を集めて作っただけだから、よく解らないけど。
 ただうん、現在楓殿の頭に乗っかって、糸目になりながらホウー……とリラックスしているたこルカさんにはひどく癒された気分です。
 ジークンが妙な対抗意識燃やして、くーさんの頭の上に乗ろうとして叩き落されたりもしてるけど、それもまたお祝いの一興ということで。

岡田 「ゲキド街って……サ、サー! ドナ様も居るのでありますか!?」
中井出「もちろんである!
    ちなみにゲキド街内ではなにをやっても死なないように設定されてるから、
    何気なく不死身を体感したかったり、
    グランドセフトオートチックな気分に浸りたかったらどうぞ。
    車もバイクもロケットランチャーもなんでもあるから」
古菲 「どんな街アルかソレ」
麻衣香「……えーと、ヒロちゃん? そこにはそのー……もしかしてほめ春香も……」
中井出「よく解らんけどMMDってやつの知識が元になってるから、
    街中の設定等は街自体に仕切られてる感じさ。
    キミたちが信じていればきっと居る」
麻衣香「ど、どっちかっていうと居てほしくない部類なんだけどなー……」
佐野 「MMDかぁ……懐かしいなぁ。そして一部が歪みなさそうでなによりや」

 ニコニコドゥガーとかいう場所でやってたらしいね。
 残念だがこのDIOが地界に居た頃は、まだそう活発じゃあなかったし、MMDという名前すらも聞いた覚えがなかった。……と、明日菜さんそっちのけで喋ってないでと。

中井出「いろいろ解ったところでとにかくお祝いである! 総員整列!」
総員 『サーイェッサー!!』
中井出「総員、騒ぐ準備は十分か!?」
総員 『サーイェッサー!!』
中井出「腹は空いているか!」
総員 『サーイェッサー!!』
中井出「騒ぐ気力は十分か!」
総員 『サーイェッサー!!』
中井出「祝う気持ちも十分か!」
総員 『サーイェッサー!!』
中井出「心の巴里は今も燃えているか!」
総員 『サーイェッサー!!』
中井出「ならばよし! 総員、全力を以って自分も楽しみつつ、明日菜くんを祝い尽くせ!
    イェア・ゲッドラァック! ライク・ファイクミー!!」

 ザザァッ!!

総員 『Sir(サー)!! YesSir(イェッサー)!!』

 一部を除いたほぼ全ての者達が敬礼をし、即座に散会!!
 熱き号令を前にポカンとするネギまの皆様をまずはほったらかしにして、祝うための用意を残像さえ残るほどの速度で始め、5分後には完成させる。
 そんな中で明日菜さんは盛大に祝われ、これでもかというほどのプレゼントをごっちゃりと受け取ることになる。
 それは歌だったり技術だったり、笑い話だったり芸だったり。
 終いにはほんとに嬉し涙を流し始めた明日菜さんを前に、我らはさらにさらにと祝う心を強くした。

ネギ 「あ、あのっ、どうすればあんな風に魔法の連射が───!」
遥一郎「ん? ああ、スプリングフィールドか」
悠介 「魔法の連射かぁ……あれはちょっとどころか相当特殊なんだが……
    まずは魔法をとことん覚えること、だよな?」
遥一郎「そうそう。初級だとか弱い魔法だとかと思うなかれだ。
    魔力が高ければ、弱い魔法でも必殺になる時がある。
    それと───無詠唱というよりは、頭の中で魔法詠唱を組み立てておくんだ。
    自分の内側で言霊を作っておく。
    で、組み立てておいたそれを吐き出すことで無詠唱と成す。
    ここからが重要だ。放ったら終わるんじゃなく、
    次の言霊も放つ魔法に合わせて一瞬で完成させること」
悠介 「解るか? この世界の初級魔法、プチファイアを撃つ時なんかは、
    “出でよ灯火”って───これだけの詠唱で済む。
    プチファイアを撃とう、って思った瞬間には頭の中で“出でよ灯火”って言霊が完
    成していることが自然になるようにするんだ。
    それに慣れたらより難しい魔法を。それに慣れたらさらに、って」
ネギ 「そ、そんなことが出来るんですか?」
遥一郎「出来る。で、それに完全に慣れたら、今度はチェーンスペルを混ぜていく。
    無詠唱で放った魔法が敵に衝突、ただのマナとして散る瞬間、
    敵の傍で散ったマナが霧散するよりも早く、
    そのマナに新たなマナを少し加えてやって、別の魔法を追加して発動。
    その間にも無詠唱は続けて、それにも慣れたら両方しながら口で大魔法を詠唱」
ネギ 「えっ……えぇええーーーーっ!!?」
悠介 「……気にするな。こいつの思考回転速度はいろいろな経験を経て精霊に近い。
    使うものが魔法なんじゃなく、思考速度が魔法じみてるんだ」

 一部で訊ねたいことを真っ直ぐに訊ねて驚愕している者や、

古菲 「今度こそ私が勝つアル!」
凪  「隊長の前だ……無様はさらさない!」

 拳で語る仁義を貫こうとしている者や、

ゼット「決戦だ! ツゴモリ!」
悠介 「状況考えろたわけ!」
ゼノ 「我と戦えぇえええええええっ!!」
彰利 「断固拒否いたす!」

 やたらと戦いたがってる人たちが居たり、今日も猫の里は平和です。
 そんな景色をスマイルしながら見ていたら、皆様と同じく強制召集をかけられたキティさんがぶすっとした顔で訊いてきました。

エヴァ「……ヒロミツ? 浮遊島にどうしても行けないんだが、どうすればいい」
中井出「地道に武具を鍛えなさい。その傍らで妖精と仲良くなるか、
    一部のモンスターと仲良くなってゲートがある場所へ案内してもらう。
    脅迫はまず効かないだろうから、地道に。
    それか、敵と遭遇しないように浮遊島を目指す」
エヴァ「地道な作業はもうやっているし、
    空への強行はストームドラゴンが邪魔をするんだよっ! 忌々しいッ!
    いいからもうお前のカードをもう一度よこせっ!」
中井出「フハハハハ断る。キミはもっとこの世界を堪能すべきだ。
    せっかくの退屈しのぎなんだから、
    ばーさんみたいに茶を飲んでばかりいないでアグレッシヴにいきなさい」
エヴァ「うぐっ……わ、解ったよ……。おい晦! 茶を点てろ!」
中井出「言ったそばからお茶!?」
悠介 「いいけどこいつをなんとかしてからだっ!」
みさお「ゼットくんっ、祝いの席での戦いは禁止だって言ったでしょ!?」
彰利 「そうだこのタコ!」
中井出「馬鹿め!」
総員 『馬鹿め!』
ゼット「ごっ……ここぞとばかりに罵るな貴様らぁあああっ!!」

 けどまあどんな状況にせよ、僕らがこれだけ集まって騒がしくならない筈もなく。
 僕らは明日菜さんの誕生祝いを盛大に盛り上げつつ、騒いで走ってバトって釣って、この場を最大限に利用した騒ぎ方でこの瞬間を楽しみました。

明日菜「え、えと……こう?」
くるり『そうニャ! 振りかぶると体が光るから、
    その光が弾けた瞬間、大木をハンマーで叩くニャ!』
木乃香「ん〜〜♪ この蜂蜜おいひいな〜♪」
刹那 「濃度が高く、それなのに嫌なくせもない……」
楓  「おおっ、なにやら女人が釣れたでござるな」
精霊 『……貴女が落としたのはこの銀の釣りカエルですか?
    それとも金の釣りカエルですか?』
古菲 「ネギ坊主ーーーっ! ネギ坊主ーーーっ!」
ネギ 「? くー老師、どうかしうひゃああああーーーーーっ!!」
古菲 「バカデカい魚がかかったアルヨォオオオオッ!!!」
総員 『ガノトトスだぁああああっ!!!』

 ネギま陣営の皆様に特に喜ばれたのが、猫の里&ネコット農場体験。
 二年も三年も続けているネギまな皆さんでもまだ至っていないこの猫の里は、まるで夢見るワンダーランド。鉱石採掘や貴重な虫の入手、岸壁のミスリル採掘にワクワクしたものです。
 それは恋姫連中にも言えることでドッガァアアアアアンッ!!!

ルンナ『ゴニャーーーッ!? 赤いお姉さんが爆弾採掘で吹き飛んだニャーーーッ!』
華琳 「なにをやっているのあの娘はぁあーーーーーっ!!」
秋蘭 「も、申し訳ありません華琳様。姉者がどうしても自分でやってみたいと……」
岡田 「いや、正しい」
藍田 「あれ見てると、
    自分ならいい場所に爆弾設置が出来るってどうしても思っちゃうって」
丘野 「欲しい時に限って欲しい鉱石が出ない……それが採掘でござるからなぁ」

 ある者(まあ春蘭だけど)は爆弾で吹き飛び、

焔耶 「好きだぁあーーーっ!! 蒲公英、お前が好きだぁあーーーーっ!!」
蒲公英「好きっ! たんぽぽも焔耶のことが大好きぃーーーっ!!」
翠  「…………えっと。なんだあれ、幻覚……?」
桃香 「わ……焔耶ちゃんと蒲公英ちゃんが抱き合ってる……」
愛紗 「信じられん……いったい何が……」
閏璃 「さっきキノコ食ってたし、おおかたドキドキノコでも生喰いしたんだろ……」
中井出「ああ思い出したくもない……」

 あるところでは犬猿の仲だった二人が愛を語り合い、

亞莎 「へぇええ……この畑ではこんなものが採れるんですかぁ……」
明命 「オオモロコシ……っていうんですね、大きいですっ」
雪蓮 「めーりーーんっ、ちょっとめーりーーん!? 投網やるから手伝ってーーーっ!」
冥琳 「先ほどまで鉱石採掘をしていただろう……。
    その前は虫取り、その前はキノコの採取、その前は───」
雪蓮 「いーからいーから。
    お酒に良く合う魚が居るらしいのよっ、やるしかないじゃないっ」
祭  「ならば儂にも噛ませていただこう」《どーーーん!》
冥琳 「……祭殿。突然沸いて出てこないでいただきたいのですが?」

 纏まり無くあっち行ったりこっち行ったりと気の多い人たちが居たりと、まったく忙しい限りである。

美羽 「なんじゃとーーーっ!? 博光は妾の博光じゃーーっ!!」
ナギー『なにを言うかこのドチビがーーーっ!
    ヒロミツはわしのヒロミツなのじゃーーーっ!』
美羽 「ドチビはどっちじゃっ! 七乃、七乃ーーっ! このドチビを成敗してたも!」
七乃 「無理ですっ♪」
美羽 「なんじゃとーーーっ!?」

 ……巻き込まれたらただでは済まん方向は、極力見ない方向で。

中井出 「よっしゃあ宴会時必須の超・飲み物!
     クオリティーナッシャー・オメガ零が完成したぞ!
     飲みたいヤツはじゃんじゃん取ってけぇえーーーーっ!!」
ジハード『《ギャオッ!》よっしゃあよこせ! 今すぐよこせ!』
中井出 「あれぇジハード!? 貴様いつの間に! 鬼面衆の監視とかはいいの!?」
ジハード『あんなめんどいことやってられっかよ! それよりナッシャーだナッシャー!』
中井出 「よし構わん! 面倒なことなどサマルトリアの王子に全部任せればいいんだ!
     あーほら明日菜くん、キミも飲みなさい! さあっ! 今日は誕生祭りだ!」
総員  『イィヤッホォオオオオウッ!!!』

 祭りはいつになってもいいものです。
 祭りとなるとやたらとハイテンションな僕らに巻き込まれ、主役たる明日菜さんは休む暇もなくあっちへ連れられこっちへ連れられ。
 疲れることがない世界だから全然平気だからむしろOKだし、終始明日菜さんは笑顔でいらっしゃった。……さすがにゲキド街体験の時は驚愕の連続だったけど。
 銃で撃たれても死なない、ロケットランチャーくらっても吹き飛ぶだけと、変わらぬ不死身クオリティがそこにありました。

ネギ 「ラス・テル・マ・スキル・マギステル!」
遥一郎「そうだそうそう。詠唱中も頭の中では無詠唱から繋げるチェーンスペルを……!」
雪音 「それはいいけどどうしてわたしが標的なのホギッちゃーーーんっ!!」
遥一郎「避けるのが上手いからだ!」
麻衣香「ぎゃーーーっ!! 居たぁああほめ春香居たぁあああっ!!」
清水 「相変わらず首が何度曲がってももげないぞ! すげぇ!」

 もちろん剣や魔法での攻撃でも死ぬことが無いので、いつしかゲキド街は技や魔法を試し撃ちするカオスな街へと化していたことは……うん、きっと言うまでもない。

明日菜「《ドグシャアッ!!》キャーーーッ!!?」
ネギ 「わああーーーっ!? アスナさんが車に撥ねられたぁあーーーっ!!」
藍田 「い、いや! それよりも運転してたスネークがそのままガソリンスタンドに突っ込
    んで大爆発を……!!」
岡田 「スネーーク!」
藍田 「スネェエーーーーク!!」
ネギ 「ひぃいーーーっ!? あ、あっわわそそそそうだアスナさっ……あれ?」
明日菜「……あ、あれ? 痛くない」

 しかも痛くないと知るや、戦い好きで知られる人たちの行動は早かったさ。
 途中からなんの祭りか解らなくなるくらい、ゲキド街はバトルフィールドとなったのだ。
 ……なんの祭りって、戦いの祭りとしか言い様がないんじゃないかなぁと思ったのは、その時でした。

中井出 「よっしゃ〜〜〜っ! お、俺も混ぜろ〜〜〜〜〜っ!!」
悠介  「《ピクッ》提督か! 相手にとって不足はない!」
彰利  「俺もやるぜ〜〜〜っ!!」
ジハード『よっしゃ白黒つけようぜナカイデ! 今日こそ俺が勝って終いにする!』
中井出 「あれぇなんだか敵多くない!? だが構わん!
     せっかくだからボスモンスターも入り混じったカオスバトルを展開させる!!
     不死身で無痛だけどくらえば思い切り吹き飛ぶから、
     悔しいには悔しいこの戦い───見事に楽しむように!
     シャンドラの火を灯せぇええええっ!!!!」
総員  『ウォオオオオオオッ!!!』

 そして始まるゲキド・オブ・バトルワールド。
 とんでもない技や魔法を食らおうが、吹き飛ぶだけで痛くもないという安心感とスリルがたまらん。なにせメテオを食らっても、潰されるだけで痛くはないとくる。ていうかメテオの雨を掻い潜るのが面白い!

中井出「よっしゃあいったれエヴァ!
    今回も3分で自爆だが、痛くないならむしろ巻き込んで炸裂しろ!《シュピッ》」
エヴァ「《パシッ》いいだろう───そういう条件ならむしろ望むところだよ───!
    “来れ”(アデアット)!! “全てを忘れた時詠み人”(スエ・トエルウム・プレシオース・アルティクーレ)!!」
悠介 「アーティファクトってやつか! だったらこっちも反則技で行かせてもらうぞ!
    染まれ染まれ染まれ染まれ、赤く紅く緋く朱く……!!
    紅蓮に染まれ! “月夜の黄昏”(ラグナロク)!!」
彰利 「ゲェエ! 世界創造はずるいっしょ!
    だったらこっちだって───黒より“夜”を発動!
    黄昏部分を覆い、さらに“闇蝕せし栄黒の歪鎌”(アブソーブダークネス)を発動!
    闇に満ちる力全てをアタイのものに変換! この力……素晴らしいぞ!」
悠介 『ぐあっ! ひ、卑怯だぞお前!!』
彰利 『うるせーーっ!! 世界創造なんざするキミが悪いんじゃーーい!!』
中井出「ならば俺はシャモンを召喚!
    月夜に照らされ、今ここに守護竜イルムナルラ降臨!!」
総員 『守護竜はやめろってぇえええっ!!!』
中井出「うるせーーっ!!
    僕になにか言うよりもミルハザードとかゼプシオンとかと戦ってなさい!」
藍田 「つーかアハツィオンとレヴァルグリードまで呼んだんでありますか提督!」
中井出「うむ! 全力で実力を試せ!!」
麻衣香「そそそその前にぃいいいいいっ!!!
    ばばばバルバトスとベルセルクが居るぅううううっ!!」
総員 『ぎゃあああ馬鹿あぁああああっ!!!』
中井出「な、仲間外れなんて可哀想じゃないか!」

 これから始まるカオスバトル。
 死なないからとはいえ、それはとてもとても苦しく、空が青い戦いであり……

藍田 『くっ……相変わらずバケモンだなバルバトスは』
岡田 「ああ……まるで隙あり死ねぇええええええっ!!」
藍田 『そう来ると思ったわぁあああっ!!』

 もちろん不意打ち裏切りなんでもありを信条とする僕らが、ただ馬鹿みたいに敵と戦うだけなはずもなく。死なないのであればと、それこそ所構わず不意打ち裏切りを繰り返しました。

悠介 『ネギ! これが雷化でこれが光化だ! よく覚えておけ!』
彰利 『なんの! これが闇化でこれが黒化YO!
    光なんてどーでもえーからアタイの方こそを覚えておきんさい!』
ネギ 「え、えうっ!? あ、あああの!? 僕雷にも闇にもなれませんよ!?」
エヴァ『あっはははははは! あぁあっはははははは!!
    そらそらどうした魔法使いっ! 魔法が届いていないぞっ!』
遥一郎「くっは! 魔力のケタが異常だろ……! だったら一気に───!」
中井出「隙あり死ねぇええーーーーっ!!」
エヴァ『《がしぃっ!》へ? あ、うわぁああーーーーーーっ!!?』

 空中で魔法を撃ちまくってたキティをフェニックスドライバーで落としたり、ゼットがミルハザードと戦ったり、ゼプシオンがイルザーグと戦ったりと、実に愉快な状況が実現。
 でもとにかく怖かったのはバルバトスとベルセルクだったわけで。

バルバトス「ぶぅうううるぁあああああっ!!!」
総員   『タスケテェエエエエエッ!!!!』
ベルセルク『力を示せ……力をォオオオオオッ!!!』
総員   『勘弁してくださぁあああいっ!!!』

 終始そんな感じで、僕らは飽きることなく、吹き飛んだり吹き飛ばされたりしたのです。
 デュエルディスクを使ってターン制で戦ってた僕に対して、無遠慮に殴る蹴るどつくを仕
掛けてくる皆様にキレて、オガーと襲い掛かったりもして───

中井出「さぁああけべ叫べヒィイイホホホ《ガシィッ!》ホッ!?」
エヴァ『捕まえたぞ……! ジャスト3分だ!《シュカァッ───!!》』
中井出「いや……───!!」

 途中、キティに背中から抱きつかれ、ワールドデストロイ自爆されました。
 ええ、ゲキド街は3分で崩壊しました。ほっといたら勝手に再生したけど。





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