08/キレた人はおっかないけどそんな人が好きな人も居る

 ガヤガーヤ、ガ、ガヤリ・ガヤリータ……!

エヴァ「フッ……ふふふはははははっはっはっはっは!!!
    ついに来たついに! ここからだ! ここから外の時間が始まるんだ!
    アハハハハ!《プァン……!》おおぉっ!? 走った! 走ったぞ!
    ヒロミツ! ヒロミツーーーッ!
    茶をよこせ茶を! とびきり美味いやつをだ!」
中井出「うるせーーっ! 新幹線内では静かにしなさいそこのお子様!」

 さて、修学旅行です。
 今日もキティがとっても元気、JR新幹線ひかり号からお知らせします。

エヴァ「やかましいっ! 貴様に解るか!?
    日本の景色が好きだというのに何処にも行けなかった私の気持ちが!」
中井出「あっははははは解んねーやーーーっ!!」

 問われたならば答えよう! 解らん! だってそんな気分になったことないもん!
 あったかもしれないけど忘れたよもう!

エヴァ「知ろうとする努力くらいしろぉおっ!! それでも教師か貴様!」
中井出「教師だとも! つーわけで3−Aの生徒諸君!
    とっくに新幹線に乗っててなんだが、修学旅行である!
    細かいことや固いことなぞ言いませぬ! 存分に楽しみめされい!
    なんぞ問題を起こそうともこの博光が全てなんとかいたそう!
    修学旅行とはそうまでしてまで楽しむものだと心に刻み込みなさい!
    旅館での抜け出し枕投げ上等!! 清水の舞台からだって飛び降りませう!
    たとえ新田せんせに掴まることがあろうとも、この博光がササッと解決!
    故に少女たちよ! 今を楽しめ! 中3の修学旅行は一度きり!
    皆が望む楽しさを追求し、余計なことなど考えずに楽しむのだ!!」
3−A『ハーーーーーイッ!!』
中井出「うむよい返事だ!
    というわけでしずな先生、我ら3−Aの熱き魂、もはや誰にも止められぬ。
    是非とも旅の間だけは、自分が教師ということを忘れましょう」
しずな「いえあの、そういうわけには───」
中井出「いくのです! いかないじゃない、いかせてみせる、いかせるんだ絶対。
    ……中井出博光です《脱ギャどごぉっ!!》タボス!?」
エヴァ「脱ぐな馬鹿者ッ!!」
中井出「キミこそわざわざ飛び蹴りなんかしないでよ!」

 落ち着くところは結局、“いつも通り”だ。
 始まったワクワクイベントに僕自身ワクワクしながら、到着地点である京都までの道を暇潰しで乗り切る。
 で、修学旅行の暇潰しといえばゲームなわけで、途中経過からお送りします。

中井出「俺のターン! ドロー! アックスレイダーを召喚! 守備表示!
    カードを一枚伏せてターン終了!」
エヴァ「私のターンだな……ドロー。グレムリン一体を守備表示、
    場にニ枚のカードを伏せてターン終了だ」
ハルナ「うわなにっ!? リアル遊●王!?
    モンスターもカードもきちんと立体化してるし……!」
中井出「うむ。知人から貰ったものです。───俺のターン! ドロー!
    アックスレイダー二体目を召喚! 守備表示!
    さらに手札より魔法カード発動、トラップ除去!
    このカードの効果により、敵側のトラップカードを墓地へと送る!」
エヴァ「ククッ……おっと、ではトラップカード発動だ。
    このカードは破壊された瞬間効果を発現させるカードで、
    敵の墓地からどれでも好きなカードを奪うことが出来る」
中井出「なに!?」

 トラップ除去から発動するトラップコンボ!?
 な、なんたること! この博光ともあろう者が!

エヴァ「奪うカードはビッグシールドガードナー! 守備表示で特殊召喚!」
中井出「お、おのれ〜〜〜っ! こ、この博光のビッグシールドガードナーをぉおお!」
エヴァ「さらに私のターンだ! 先に一枚カードを伏せ、
    それとは別に伏せカードオープン! 魔法カード死者蘇生!
    これにより墓地に眠るヴァンパイア・ロード、復活!
    ───ククッ、ヒロミツよ……“神”を見せてやる」
中井出「なっ───!? ま、まさか、既に手札の中に……!?」
エヴァ「場に居るモンスター、グレムリン、ビッグシールドガードナー、
    ヴァンパイア・ロードを生贄に! 今! オベリスクの巨神兵、降臨!!」

 ゴカァアッ! ヂガガガァォオオンッ!!
 新幹線内部に熱風吹き荒れ雷鳴轟く現象が発現!
 おやつとか食べてた皆様は何事かと思い、慌てるばかりである!
 そんな中、傍で俺とキティの様子を見ていたパル子さんやゆえっち、本屋さんがハラハラ顔で慌てきっていた。

ハルナ「うひゃぁあああっ!!? 雷から突風まで再現すんの!?
    てか天井! 新幹線の天井突き破るって!」
中井出「こ……これが…………神……!!」
ハルナ「や、先生お決まりのこと言ってる場合じゃないからっ!」
エヴァ「さて……覚悟はいいな? ではくたばるがいい!
    オベリスクの攻撃! ゴッドハンドクラッシャー!!」
中井出「くっ……! ト、トラップカード発ど……!」
エヴァ「アハハハハハ! 無駄だよヒロミツ! 神にトラップなど通じない!」
中井出「くっ……くぉおおおおおおおおっ!!!」

 ドォオッグォオオオオンッ!!!

中井出「グ、グウウ……!!」

 ゴッドハンドクラッシャーの衝撃が体を突き抜ける……!
 だが……ああ、だがジョジョ……!

エヴァ「フフフフ…………? 何故だ!? 何故生きて───ハッ!? そのカードは!」
中井出「ああ、そうだ……使わせてもらったぜ、奈落の落とし穴……!
    このカードの効果により、
    攻撃力1500以上のモンスターは召喚されることがなく、全てが徒労に終わる!
    神の進行もここまでだ───今、神という幻想は消えた。
    召喚されることもなく、墓地行き……!」
エヴァ「なっ───!? 貴様いったい人がどれだけの策を巡らせて、
    こいつを召喚したと思っている!」
中井出「勝負とは常に非情なものよ! 俺のターン!
    アックスレイダー二体を生贄に、ブルーアイズホワイトドラゴンを召喚!!」
エヴァ「なにっ!? 貴様、既にブルーアイズを!」
中井出「ワハハハハ! 遊戯よ! これが真のデュエリストの格の違いだ!
    さあ滅ぶがいい! ブルーアイズの攻撃! ダイレクトアタック!
    滅びのバーストストリーーーーーム!!」
エヴァ「甘い! リバースカードオープン! 万能地雷グレイモヤ!」
中井出「ギャアアアアアアア!!? ちょ、キミ! それはあんまりにも卑劣で」

 どぉおっがぁあああああんっ!!!

中井出「ブ、ブルーーアイズーーーーーッ!!!」

 ブルーアイズは粉微塵になって死んだ!
 な、なんたること……俺の最強のブルーアイズが……!

エヴァ「……さて、これで振り出しだ。だが私はお前のように暢気ではないんだ。
    私のターン、ドロー! ……おやおや、ククク、これはいいカードを引いた」
中井出「ぐっ……ゆ、遊戯貴様……いったいなにを……!」
エヴァ「場にクリボーを召喚、攻撃表示。
    さらに───魔法カード発動! 死者蘇生!」
中井出「なにっ!? 死者蘇生だと!?」
エヴァ「私のデッキのテーマは不死と絶対火力。
    死者蘇生が一枚きりだと、本気で思っていたか?
    神のカードであるオベリスクは特殊召喚時は僅か1ターン……
    私のエンドフェイズまでしか場に存在することが出来ない。
    だが、この1ターンがあれば十分だ───
    さらに手持ちのカードより魔法カード発動! 増殖!」
中井出「───!《ギクリ……!》」
エヴァ「この魔法効果により場のクリボーが増殖する……
    クク、遊びには詳しい貴様のことだ、察しはついているんだろう?
    オベリスク! 増殖したクリボーを吸収せよ! ソウルエナジーMAX!」
中井出「ば、馬鹿な……ば、馬鹿な……! こ、この俺が……!」
エヴァ「覚悟はいいな? オベリスクの特殊攻撃! ゴッドハンドインパクト!!」

 ガドォッゴォオオーーーーッ!!

中井出「グワァアアアアアアッ!!!」
ハルナ「うひゃああーーーーっ!?」

 突き抜ける轟音! 駆け抜ける爆風!
 気づけば場のモンスターは全て粉砕され、我がライフも0に……!

エヴァ「アハハハハハハ! 残念だったなヒロミツ! どうやら私の勝ちのようだ!」
中井出「グ、グムムギギ〜〜〜〜ッ!!
    お、俺がゲームで負けるとは〜〜〜〜〜っ!!」
エヴァ「学園の外にも出られた! ヒロミツも打ち負かしてやった!
    今日はいい日だな茶々丸! アハハハハハハ!!」
中井出「グヘヘヘヘその笑みもいつまで続くことやら」
エヴァ「なに───?」

 キティがそうして笑みを止めた瞬間、周囲からはホキャーという悲鳴がバゴォ!!

中井出「チュミミーーーッ!!?」
エヴァ「貴ッ様なにをしたァアアーーーーーッ!!!
    人がせっかく良い気分になっているところに!!」
中井出「お、俺じゃねぇーーーーっ!! 僕ただ警告をしようとしただけだよ!?
    なのに問答無用で顔面ナックルって……! この子は悪魔に取り憑かれた!!」
エヴァ「悪魔どころか吸血鬼だ私は!」
ハルナ「へ? きゅーけつ……?」
中井出「ベンハーーッ!!」
エヴァ「《バゴォッ!》ぷろあっ!? ……〜〜っ……ななな殴ったなぁーーーっ!!?」
中井出「おお殴ったとも! つーかキミ正体隠す気あんの!?」
エヴァ「お前がなんでもフォローするって!
    全てなんとかするってさっき言ったんだろーが!!」
中井出「ア、アア〜〜〜ッ! い、いわれてみれば〜〜〜〜〜〜っ!!
    すまなんだ〜〜〜っ! すまなんだ〜〜〜っ!
    い、痛かった!? すまんなぁせっかくの白い肌なのに、
    赤く腫れて───おらん!」

 スッと触れてパパッと回復! 殴った痕跡も痛みもあっさり治療完了!
 で、うむと頷いたあとに「何事かぁああ!」と叫ぶと、

ネギ 「な、なんですかこのカエルの団体さんはーーーっ!」
明日菜「なんかそこら中からいっぱい出てきたのよーーーっ!」
まき絵「あーーーん助けてネギくーーーん!」

 振り向いてみれば、なにやらカエルピョコピョコ状態!
 こ、これはいったい……!

中井出「これは───何者かからのスタンド攻撃じゃ!」
エヴァ「血迷ったこと言ってないでなんとかしろっ! お前が鎮めてみせるんだろう!?」
中井出「ぬ、ぬう……そうだな。
    キミの外界出陣祝いも兼ねた、この博光がなんとかするという言葉に嘘はない。
    ならば───生徒諸君に告ぐ! 耳を塞げ! 今すぐ全力でだ!
    塞がなかった際の責任は一切取らん!! ではゆくぞ!」
エヴァ「───! おいっ! 耳を塞げ! 疑問に思っている暇はない! 今すぐにだ!」
ハルナ「へ? あ、う、うん……?《ぎゅっ》」

 一息置いたのち、ニコリと笑い───

中井出「ッ───喝ァアアッ!!!」

 ゴカァアッキィイインッ!!!!
 ボパパパパパパァアアンッ!!!!
 息を吸い、伯流気合い砲でカエルどもを殲滅する!
 所詮幻術や呪術系のものだ。気合い砲を発射すれば、そのテの類は抹殺完了!

中井出「了! じゃ、旅を続けましょう」
エヴァ「…………切り替えの速さは相変わらずだな。
    耳を塞いだ程度じゃ防げなかったぞ、見てみろ周りを」
中井出「お?」

 きょろりと辺りを見渡してみれば、死屍累々と言うのか……皆様目を回してぐったりしていらっしゃった。

中井出「アーアー、ちゃんと耳塞いでないから……」
エヴァ「そういう問題じゃないと言っているんだが───ン?」
中井出「?」

 ピクリとキティが何かに反応。何事? と思った次の瞬間には、何故かツバメが新幹線内
を飛翔し、そのクチバシには……今朝方、ネギに渡しておいた新書が───ってオイィイ!

ネギ 「ひ、ヒロミツ! その鳥が新書を───っ!」
中井出「うむ大丈夫」

 僕の横を通り過ぎた途端、ツバメはボテリと落下し、ただの紙切れになった。
 ちょいとエナジードレインを標的固定で発動してみただけなんだが、コレモンである。

中井出「まったく、ちゃ〜んと持ってなきゃだめだろー?」
ネギ 「うう、ごめん……。ちょっと確認しようと思っただけだったんだけど……」
中井出「うむ、気をつけめされい。───では皆様! ……京都です」
総員 『速ッ!!?』

 だってキティが急かすんだもん……ちょっと外の時間をかっとばして、あっという間に到着させてしまった……。


───……。


 さて、京都といえば。京都と言えば清水寺。シミズじゃないよ? キヨミズです。

桜子 「京都ーーーっ!!」
裕奈 「おお! ここが噂の飛び降りるアレ!」
風香 「誰か! 飛び降りれ!」
中井出「うむ……僭越ながらこの博光が! ずぇりゃああああーーーーーっ!!!」
あやか「ひえぇええーーーーっ!!?
    中井出先生が飛び降りましたわぁーーーーーっ!!?」
エヴァ「《じぃいいん……!》……風流だ……」

 最初っからクライマックスです。
 見事地面にドグシャアと落下した僕は、ムクリと立ち上がると寺の上の生徒達にワハハハハと笑いつつ手を振った。
 「うおおおお!? 無傷だーーーっ!!」とゆーなさんに驚かれてましたが、そこはそれなのですよお客さん。実は受身の達人ということで流しました。

まき絵「次は恋占いの石ーーっ! この石の位置からあっちの石まで、
    目を瞑って辿り着ければ恋が叶うんだって」
裕奈 「ちょっと……コレ20mはない?」
あやか「で、ではクラス委員長の私から……!」
明日菜「邪魔しないでよいんちょ、私が先に……!」
まき絵「ずるーい私もやるー!」
のどか「あ、わ、私もー……」

 恋する乙女が歩みます。己の恋を求め、ふらふらと。
 しかし雪広嬢の閉じた目から光がゴシャーンと漏れると、彼女は急に走りだす!
 完全に閉じているというのに……まさか心眼!?
 と思いきや、走る気配に釣られるように走ったまき絵さんとともに落とし穴に落ち───あ、あれ? ネギくん? くーさん? 楓さん? ……アスナさんまで、なんで僕をジト目で見るの? ……ぼ、僕じゃないよ!? 僕だったらこんなちゃちぃ落とし穴じゃなく、もっと落ちて楽しい落とし穴を───……

明日菜「……そうよね、中井出せんせが作ったら、この程度じゃ……」
ネギ 「中にマッディボムが仕掛けられてるとか、
    かと思えば何故かところてんが仕掛けられていたり……」
古菲 「以前は醤油だたネ」
楓  「スライムだった日もあったでござるな……」
木乃香「? そーなん?」
刹那 「私はまだそれほど面識はありませんから……
    あの世界にも二度の訪れさえしていませんし」

 あ、解ってくれたようです。
 しかし落とし穴からはまたしてもカエル。
 これは……きっと何か裏があるぜ!?

中井出「エヴァ。こいつは……」
エヴァ「ああ、どーやら西側の妨害ってやつらしい。
    だがお前がどうにかしてくれるんだろう?」
中井出「うむ。お前は存分に楽しめ。……っと、そろそろ運命破壊を重ねるぞ。いいか?」
エヴァ「も、もうか? よし解った、やってくれ。
    この旅行ばっかりは途中で効果が切れたなんて、冗談じゃあ済まさない」
中井出「解ってるって。では───……」

 武具よりデスティニーブレイカーを発動。
 キティにかけられた登校地獄の呪いを再度捻じ曲げ、自由に行動できる時間を増やしてゆく。

中井出「うむよし、これで大丈夫だ」
エヴァ「……ああ。その、すまん。ありがとう」
中井出「───……ああ、気にすんな。子供はじじぃに甘えてればいいんだよ」
エヴァ「《くしゃくっしゃっ……》わぷっ……お、おいこらっ!」

 乱暴にではなく、心を込めて撫でる。
 ああまったく……素直に礼を言われるとは思ってなかった。とんだ不意打ちだ。
 思わず心にキュンと来てしまったじゃないか。

まき絵「つ、次いこ次ーーーっ! 音羽の滝っ!」
ハルナ「ゆえゆえっ、どれがなんだっけ!?」
夕映 「右から健康、学業、縁結びです」
まき絵「左、左ーーーっ!!」
風香 「私もーーーっ!」
史伽 「わ、私もーーっ!」
あやか「お、お待ちなさいみなさん! 順番を……!」

 で、チラリと見てみればとっとと移動してとっとと騒いでいる皆様方。
 フォローとして、関係者が近寄ろうとした際に超眼力で黙らせ、どっかへ行ってもらう。
 嗚呼、僕ってケナゲ……!【注:脅しそのものです。絶対に真似しないでください】

釘宮 「ムムッ!? この味は……!」
裕奈 「う、美味いっ!? もう一杯!」

 ていうか……猛者情報によると、音羽の滝ってやつに細工がされてて、みんなが酔っ払う
イベントがあるらし───

中井出「ゲェエエーーーーーッ!! 既に飲んでらっしゃるーーーっ!!」

 見上げてみれば滝の上に酒樽! それが水に混ざり、それらを飲んだ生徒たちがみるみる真っ赤になってノビてゆく!

中井出「……けしからん! やり方が実にけしからん!」

 あまりに姑息ではない! もっと姑息にやらねばつまらんだろう!

エヴァ「はっはっは、どうやら集中的に狙われているようだな。
    どうするんだヒロミツ、このままでは修学旅行が中途で終わるぞ」
中井出「あ、大丈夫。そうなったらお偉いさんブチノメして、
    俺が運営してでも続行させるから」
エヴァ「それは心強いな。お前がやるからには実に愉快になりそうだ」
中井出「面倒ごとは押し付けるに限るから、妨害するけどね。───月清力」

 することは簡単。
 酔ってノビてる皆様を月清力で落ち着かせ、酒気を吹き飛ばす。
 あっさりと終わった措置に、せっちゃんが「ほぉ〜……」と、お見事と言わんばかりに小さく拍手をくれた。

中井出「や、せっちゃん。楽しんでる?」
刹那 「ハ、ハイ。どうなることかと思いましたが、
    なんというか……妨害が児戯に思えてきました」
中井出「それでいいよ。精一杯楽しんでくれ。
    特にキミやマクダウェルは、人よりも楽しむことに遠慮してきたんだ。
    楽しんでくれないと俺がつまらない」
刹那 「……不思議な人ですね、貴方は。
    しようと思えば思うがままに生きられるだろう力を持っているのに、
    副担任という職に甘んじているとは……」
中井出「何が出来ようとも、
    出来ることが楽しくないんじゃあ世界征服だって退屈なだけだよ。
    俺はね、せっちゃん。ただ楽しみたいだけなんだ。それ以上は望まないよ」

 「だからお前ももっと笑えよ〜?」と続けて、せっちゃんの眉間を軽く揉み解してやる。
 当然のことならが少し嫌がっていたが、少し程度で止められるようならばこの博光、こんな場所で常識破壊の魔人なぞやっておりません。意味解らんけど。
 そうして少しの間、眉間から頭にかけてを揉み解すと、最後にやさしく撫でてゆく。

刹那 「な、中井出先生、その、あまりこういうのは……」
中井出「もはや僕のクセになりつつあるから気にしないで……。
    気にされるともっと悲しくなるから……」

 この手がね……この手が勝手に撫でやがるのだ。
 もちろん撫でてやりたいとは思ったよ? 思ったけど、それにしたって即座に動きすぎだろこれ。

中井出「さあ行こう! 僕らの旅は……始まったばかりだ!」
千雨 (終わってるだろそれ……)

 どっかからツッコミ電波が届いた気もしたけど、僕らは京都での今日という日を満喫するため、駆け出したのでした。
 え? ええ、もちろん「なにやらお酒臭いですな」と話していた新田先生と瀬流彦先生には、背後からのパンプキンシザーズチョップで気絶してもらい、輝かしき修学旅行を妨害することを真っ向から阻止させてもらいました。
 関西呪術協会なんぞよりも新田の方が邪魔だわい。


───……。


 頑固先生の排除が済むと、皆様のリミッターも外れたらしく。
 散々と騒いでへとへとになりながら訪れた“ホテル嵐山”で、僕とネギは生徒よりもお先に露天風呂に浸かっておりました。教員方は先に入れ〜って言われたからですが。

ネギ 「へぇええ〜〜……これが露天風呂なんだ〜」
中井出「天が露になっているから露天風呂……ドラム缶風呂も立派な露天風呂だな」

 いやしかし気持ちがいい。
 もうちょっと熱いほうが好みだけど、それは贅沢だよね。

中井出「そういえばネギよ。風呂に入る際、明日菜くんから注意を受けているんだが。
    貴様、洗髪が嫌いだそうだな」
ネギ 「はぐっ!? あ、えと……そそそっ、そんなことはっ!?」
カモ 『兄貴、もうバレてるみたいだぜ、諦めが肝心だ』
ネギ 「うぅ……」
中井出「大丈夫! 何を隠そう、俺は洗髪の達人だぁあああっ!!
    貴様の髪、見事綺麗に洗ってしんぜよう!」
ネギ 「えぇっ!? いいよ僕、湯船に浸かるだけでっ!」
中井出「だめだ」《ドーーン!》
ネギ 「そ、そんなー!」

 逃げ出そうとするネギー!
 だが甘し! さらに甘し! この博光から逃れられると思うてか!
 バシャバシャとお湯を掻き分けるように逃げ出すネギの逃走方向に、ナルガクルガが如くヴァシュウと飛んで回り込む!!

中井出「知らなかったか? 大魔王は当然として、魔王からは逃れられん」
ネギ 「あ、あう、あわ───ひぃいやぁあああああっ!!!!」

 もはや逃げるという行動のカケラたりとも許すまじ。
 風のマナに頼んでネギを縛り付けると、湯船から上がってたっぷりウォッシュ。
 暴れるお子から抵抗を奪いながら、こころゆくまで洗浄し───再び湯船に浸かっていたところで、カララララ……と露天風呂の出入り口となっている引き戸が開かれ……

中井出「………」
ネギ 「………」
カモ 『……ムホッY』

 何故か現れるせっちゃん。
 あ、あれ? ここ男湯……だよね?

ネギ (あぶぶぶぶぶっ!? ヒヒヒヒヒロミツ!? これどうなって!?)
中井出(う、うむ! この博光もまさかとは思ったが───)

   ───男
           だったのか───

ネギ (エェえええええええーーーーーっ!!!? そそそそうなの!?)
中井出(だってここ男湯だぞ!? それ以外になにが───)
カモ (いやいや落ち着けよ兄貴に旦那。ただ混浴ってるだけだって)
中井出(ホエ?)
ネギ (えぇっ!? こここここ混浴!?)

 混浴……なんだ、ただの混浴か。

中井出「ならばひそひそやるのはむしろ失礼。どんと構えいネギよ。
    郷に入りてはなんとやら、それがこの場のしきたりならば、
    気分を害さない程度に従うべきよ」
ネギ 「えっ、でででもっ」
カモ 『あ、兄貴に旦那っ! そんな大きな声出したらっ! ───あ』
刹那 「あ」

 …………目と目が合ったらしい。
 俺はもう後ろ向いているから解らんが、その対面……俺の正面より少しずれた位置で湯船に浸かっていたネギとカモは、ピタリと硬直してしまった。

刹那 「ネッ……ネギ先生!? それに中井出先生もっ!?」
中井出「博光です。《バァアーーーン!》……じゃなくて、あーえーと。
    せっちゃん、ここ混浴みたいだからあまり構えないでいいよ。
    風呂に来たならば風呂。風呂で遊ぶのも素晴らしいが、慌てるだけではつまらん」
ネギ 「わっ! すごいっ! ヒロミツ全然慌ててないっ!」
中井出「……それはいいから、まずは視線を外すマナーくらい守ろうな、ネギ」
ネギ 「え───う、うわわわわっ! ごごごめんなさい刹那さんっ!」
刹那 「あ、い、いえっ……こちらこそすいません、まさか混浴とは……!」

 言いつつも、きちんと湯浴み着を着て湯船に入るせっちゃん。
 あ、もちろん体は洗ったようですよ? マナーは守ろう。守った上でぶち壊そう。それが僕らの原ソウル。

刹那 「う……そ、その。中井出先生は、こういうことには動じない……のですか?
    それもまた鍛錬のたまものとか───」
中井出「いや。この博光、学生の頃は生粋のエロマニアとして名を馳せていた猛者よ。
    子供の頃に親のエロビデオとか見たり、
    修学旅行の時なんて覗きを決行しよう〜なんて馬鹿な企てもして。
    ……まあ、実際にはやっちゃいないんだけどね。いいんちょさんだったし。
    ただ寂しさを紛らわせる何かが欲しかった〜っていえばそれまでのことだし」
ネギ 「ええっ!? ヒロミツがエッチ……!?」
刹那 「……意外です。ふざけたところは見受けられましたが、
    そういうところは固いものかと……」
中井出「今じゃあ随分と固いけどね。
    ……あることがきっかけで、そういったものの虚しさに気づいてしまって……。
    まあでもいろいろあってこうして生きているけど、安心なさい。
    キッパリ言ってしまえば、俺は自分が好きになった人の裸にしか興味がない。
    たとえ告白されようとも、
    相手のことを自分も好きじゃあなきゃ受け容れられないもんだろ?
    それと一緒で、たとえ裸の女子が居たとしても注意するくらいで欲情とかはない」
カモ 『それはそれで女に失礼な気もするぜ、旦那ー……』
刹那 「むぅ……少し複雑な気分ですね」

 大体女性の魅力は裸体にあらず。
 相手のことが好きならまだしも、ポンと裸を見せられたからって襲い掛かる外国ドラマがこの博光には理解できやしないのだ。アレだ、つまり事件に巻き込まれた男女がいつの間にか問題そっちのけでラヴってる外国映画とか、正直なんなんだって感じ。

中井出「とにかく、今はゆったりたっぷりと湯船でリラ〜〜ックスさ。だから」
声  「ひゃあああああ〜〜〜〜〜〜っ!!!」
中井出「…………ヒャア?」

 湯船でゆったり気分って時に、突如として聞こえる悲鳴!
 これは───

中井出「桜咲!」
刹那 「はい!」
ネギ 「い、今のってこのかさんの声ですよね!? いったいなにが───!?」

 せっちゃんが一足先に走る! ネギもあとを追う! 向かう先は女側の脱衣所で……って
ちょっと待たんかいボーズ。

ネギ 「《しゅるるるるキュッ♪》ピキュッ!?」

 危機に乗じて女の花園に入ろうとは不届き千万!
 伸ばした火闇で首をキュッと絞めたのちに引き寄せると、目を白黒させながら怒られました。最強。

中井出「だめだな、全然だめだ。英国紳士たる者が女性の脱衣所に侵入するとは」
ネギ 「えぅうっ!? そ、そういわれてみれば……!
    ぼ、僕っ、混乱に乗じてなんてことをしようとーーーーっ!」
カモ 『落ち着けよネギの兄貴っ!
    そんなことよりも先生として生徒の危機は救わなきゃだろ!?』
ネギ 「! そうだ……今の僕は英国紳士である以上に、生徒のみんなを守る先生なんだ!
    ごめん博光、それでも僕は行くよ!」
中井出「なに!? そんなことは神が許さんぞ!」

 と言ってるうちに、ゴシャーーアーーーッと走っていってしまうネギウスくん!
 お、おぉおお……湯船の中だというのになんという疾駆! 見事よ!
 しかし大人な僕はこれを追いかけるわけにもいかず、はぁ……と溜め息をついたのちに、

中井出「ビッバノ〜〜〜ン♪」

 ゆっくり湯船に浸かることにしました。
 だってここ最近、キティとの付き合いでのんびりできなかったし。
 多くは語らなかったけど、昨日なんてひどいもんだったんですよ? わくわくして眠れないキティに呼び出されて、あれがどーだこれがどーだって。
 で、今日も今日で目を輝かせてぐいぐい服引っ張ってくるし。

中井出「まあさすがに初めての修学旅行だ。
    燥ぐことはあっても、騒ぎになるようなことは───おや?」

 かすかに香る酒の香り。
 ハテ?と湯気を風で吹き飛ばしてみると、湯船の端っこ、俺とネギが浸かってた位置とは正反対すぎる場所にある岩陰で、酒が乗ったお盆を浮かせながら「ホゥ……」と熱い溜め息を吐いているkittyさんが……!

中井出「オイィイイイイ!! なんでこんなところで酒飲んでんだテメェエエエ!!」
エヴァ「お、おぉっ!? なんだヒロミツか、驚かすなよ。
    なんでって、旅行の温泉ではこうするのが定番だと雑誌で読んだんだ。
    いいものだなぁ、趣のある景色を眺めながら、
    酒の熱さを喉に通してゆったりと力を抜く。長年の疲れが癒されるようだ」

 アア……なんかモンノスゲー目ェ輝かせて酒飲んでるんですけど。
 どうしよう、いくら僕でもこんな彼女にいろいろ突っ込む度胸はない。

中井出「雑誌に書いてあったんじゃ仕方ないね。どれ、僕も」
エヴァ「話せるじゃないか、中井出先生」

 だから自分も混ざりました。最強。
 そんなわけで、ククッと笑って僕に酒を奨めてくれるキティさん。
 スッと差し出された徳利の下に木で作った猪口を構え、注がれたそれを喉にスッと通そうとして───

声  「ま、待って二人とも! このかがおサルに攫われるよっ!?」
エヴァ「うん?」
中井出「おや?」

 何故か小さなサルの大群に丸裸のまま運ばれているこのちゃんが、脱衣所からこちらへ。

中井出「やあこのちゃ〜〜ん! なんか楽しそうなことしてるね、なんかの祭り〜!?」
木乃香「こ、これ祭りなんーーーっ!?」
中井出「いや僕に訊かれても……え? 違うの?」
ネギ 「ヒロミツ! そのおサルさんは西の協会の人が作った式紙なんだって!
    このままじゃあこのかさんが攫われちゃうんだよっ!」
中井出「なに!?」

 ではこれはこのちゃんを攫うための行動と見て間違いあるまいね!?
 って、そう言ってたね。

中井出「じゃあえーと……異翔転移」
木乃香「《ビジュンッ!》へわっ?《ばしゃあっ!》わぷぷっ?」

 湯船から出たくなかったので、月空力で異翔転移。
 このちゃんをすぐ隣に転移させて、即座に湯浴み着を着せてと。
 あとは急にロストした標的に混乱を起こすおサルさんに、握った手から突き出した人差し指と中指を向け、気合い砲を発射!!

おサル『ギ、ギャアアアア〜〜〜〜ッ!!《ボォッチュゥウーーーーン!!!》』

 無理矢理喋らせることでドラゴンボールっぽい演出を。
 もちろんトドメに「汚ぇ花火だぜ」と言うのも忘れません。

エヴァ「……風流じゃないな、汚すぎる」
中井出「そうだね……じゃあ」

 一匹は気合い砲で破壊したので、戸惑っている他五匹のおサルさんをサイコキネシスで上空へと飛ばす。そしておサルさんの在り方を花火に変換すると、フリーザ様がそうしたように力を送り込み───爆発させました。

 ドドォッパァーーーーン!!!
 バラバラバラバラ……!!

中井出「たーーーまやーーーーっ!!」
エヴァ「おおっ! 夜空に花火かっ! これはいいなっ!」

 やられた猿にとってはいい迷惑だろうけどね。
 ともあれ、面倒が起こっても対処するといったからには面白おかしく対処する……こんばんわ、中井出博光です。

木乃香「ふわ……おサルさんが夜の星になったえー……」
中井出「よい花火でした。おーいせっちゃんに明日菜くんにネギー!
    きみらも湯冷めしないよう、さっさと入りなさーーい!
    修学旅行中に風邪でも引いたら相当惨めな思いするぞ〜〜〜っ!」
刹那 「…………《ぽかーーーん……》」
明日菜「……改めて思ったけど、中井出先生って何者……?」
ネギ 「ぼ、僕のほうこそ訊きたいです……」
カモ 『あのどしっとした構え方……恐らく素人じゃねぇな……』

 うむ、なんかいろいろ言われてる気がするけど、真っ裸のままホウケているせっちゃんも転移で傍に招き、湯浴み着を着せる。まったく、おなごがこげん格好でホウケるなぞ、ろくな大人の女性にならんとね……と彰利がうるさいので。

刹那 「あ、あの……中井出先生、貴方はいったい……」
中井出「博光です」《ジャーーーーーン!!》
刹那 「いえ、名前を訊いているのではなくっ」
中井出「ネギと同時期に人生初の先生を始めた、ネギのサポートをする存在やってます。
    はっはっは、大丈夫大丈夫。俺は面白いことの味方だし、
    先生である限りは生徒の安全は可能な限り保証する。敵ではないよ、せっちゃん」
刹那 「うっ……そ、それにその、せっちゃんというのは……」
中井出「え? だって俺がせっちゃんこのちゃん言ってれば、
    二人とも呼びやすくなるでしょ? 友達がきちんと友達してないのはいかん。
    この博光、基本的に様々なことはどうでもいいが、
    楽しいことと友人関係にはいろいろ首を突っ込む性質です。
    まあそれはそれとして酒でも飲もう」
明日菜「それはそれとしすぎですよっ!? ちゅ、中学生にお酒を奨めるなんて!」

 ばしゃばしゃと湯船を進行してきた明日菜さんが、なんとも当然のことをつっこんできました。生徒に酒を奨めるのは確かにいかん。いかんが───

中井出「大丈夫。我らがマクダウェル嬢もほろ酔い気分でゆったりリズム」
エヴァ「……〜〜……♪《ぽー……》」
明日菜「うわっ……すごい緩みきった顔……ってそーじゃなくてぇっ!」
中井出「まあまあまあまあ、ほらネギ、キミもとっととこっち来なさい」
ネギ 「う、うう……」

 顔を赤くしつつもこちらへ来て、騒ぎに混ざるネギは本当に素直です。
 ……さて、そんな時に風呂を囲う柵の茂みから、ガサリと音がしたわけですが……なるほど、アレが西の協会の刺客というわけどすか。元気なことどすなぁ……。
 まあ結局のところ、こちらにちょっかいかけない限りはスルーでいいだろうし、そうじゃないと僕も楽しめそうにないから。
 おたおたと戸惑う生徒諸君に平気で酒を奨め、抵抗も無しにくいっと飲んだこのちゃんが顔を真っ赤にしてふらついたりそれを心配したせっちゃんに無理矢理飲ませたり、ツッコミながらもやっぱり飲むアステカさんを笑ったりと、その場は騒がしいものとなりました。
 ……補足しますが、きっちり酒気は抜きましたよ?


───……。


 さて、風呂上りで艶かしい博光です。
 ぽっかりほかほかと湯気でも出したい気分であるが、さすがにそこまで体温を上昇させるわけにもいかん。

中井出「おらー、就寝時間だぞー。
    さっさと部屋に戻って───枕投げでもなんでもするがよいわ!」
裕奈 「おおっ! せんせ話せる!」
中井出「ふはははは! 風呂上りに枕投げで汗をかくのはどうかと思うが、
    その場合は二度風呂をもこなす覚悟で挑まれよ!
    それこそが遊び! それこそが娯楽!! あ、くーちゃんに楓殿?
    能力は発動させずにコテンパンにのしてさしあげなさい」
楓  「あいあい」
古菲 「力使わんでも、精神に追いつこトして成長した体、普通に負けはないアルヨ」
中井出「うむ、それで構わん。この博光はちと新田や他の教師を締め落としてくるから、
    貴様らは存分に修学旅行の夜を堪能せい」
古菲 「起こる問題よりも中井出師父こそが物騒アルな」
中井出「博光ですから」

 ネギくんとともに就寝時間の報告をしつつ、遊ぶことを促します。
 大丈夫、若いパワーがあればこれしきのこと……問題ではないわ。
 明日に響かせるほど彼女らは馬鹿じゃあねぇ。
 ならばこそ、ここで思い切り遊ばせるのが教師の務めよ。多分。

中井出「さてと、各部屋はもう回っただろうから……
    ネギはそれが終わったら外の見回りに行くって張り切ってたよな」

 もう行ったのかな。
 まだだったら俺もちと付き合ってみようと思うのだが───

中井出「まあいいや、とりあえず新田や瀬流彦やしずなっちを締め落とそう」

 うむ、修学旅行の夜に教師なぞ無粋。
 いつ来るやもしれん見回りにハラハラする楽しみもあろうが、その役目はこの博光が担うとしよう。


───……。


 チャララ〜〜……チャッチャッチャッチャッチャッ・チャララ〜〜〜〜♪

  ゴキャアッ!!

新田 「ウギャアアアアーーーーーーッ!!!!」

 厳しいことで有名な新田先生を天井から襲い、首をゴキャアと捻ってやりました。
 あ、大丈夫大丈夫、生きてるから。

中井出(グフェヘヘヘヘ……しかしさすがの教師どもも、
    よもやこの博光が天井をゲンバリングしているとは夢にも思うまい)

 これぞ彰利流フルフル闘法。
 もはやこの博光の存在を確認し、対抗する者などおりはせぬゥウウ!!

しずな「……? に、新田先生!? どうされまし《ゴキャアッ!!》ふぴうっ!?」

 そしてエサに近づく者あらば、女子供とて容赦しない……どうも、博光です。
 瀬流彦くんはとっくに布団の中に突っ込んであるし、あとはこの二人を運んでと……

中井出「おや?」

 視界の先を、なにやら着ぐるみ装着した物体が駆けていった。
 なんだろあれ。ここらのイベントのマスコットキャラ? おお、なんとも元気だ。
 きっとアレだ、旅館の人がそういったイベントのことを忘れてて、慌てて出ていくところだったんだよ。

中井出「まあ外にはネギも居るし……」

 なんとかなるでしょう。


───……。


 ……なんて思ってた時期が、俺にもありました。

中井出「どうしてキミはそう物事を見逃すかねぇ!!」
ネギ 「こ、今回ばっかりはヒロミツに言われたくないよっ!
    イベントのマスコットキャラとか思ってたなんて、
    そんなのが旅館から出ていくわけないじゃないか!」

 現在、サルを探してあっちゃっこっちゃ移動中。
 なんでもこのちゃんが攫われたらしく、なんでも解決してみせようと意気込んでいた僕はそれはもう「んんん〜〜〜っ! 許せーーーん! 私のゲームを邪魔しおってーーーっ!」と憤慨。サルの着ぐるみを着た人攫いを、せっちゃんと明日菜っちとネギとともに探しているわけですよ。

中井出「───むう! 自然の話によると、サルは駅へ向かったらしい!」
ネギ 「えぇっ!? そんなことが解るの!?」
中井出「この博光が持つ武具と意思に不可能の文字はあんまりないのだよ!」

 博光に不可能がない、と言わないのが基本です。
 そうと解ればとネギを抱えて地面を蹴り、途中で発見した明日菜さんやせっちゃんも回収し、クサナギを霊章から弾き出すと各馬一斉にスタート!

明日菜「はっ……速ァアアアーーーーッ!!?」
中井出「ワハハハハハ!! 喋ると舌噛むぞぉっ! っと、到着ゥ!」
刹那 「ええっ!? もうですか!?」
ネギ 「うわわ無茶苦茶だーーーっ!!」《がぼーーーん!!》

 駅に到着し、内部に走ってみれば、そこには電車に乗り込まんとするサルが!
 つーか扉が閉まりかかっておるわ!

刹那 「こ、このままでは間に合わ───」
中井出「ッチィ! 舌噛むぞ! 喋るな!《スゥッ───》“1”ィッ!!」

 久々の全力烈風を解放!
 呆れるほどに離れていた距離を一気に殺し、それこそ瞬間移動とも思えるほどの速度で車両内部への侵入を果たす!

明日菜「え、え……え? さっきまであそこに……」
ネギ 「!? !?」

 二人はもう存分に慌てまくっている。
 その点せっちゃんはキッと先頭車両方向を睨むと、俺に降ろしてくれと頼んで自ら駆け出した。当然この博光も駆け出し───サルを発見する!
 つーかこの電車、夜も遅いというのにちゃんと動いてるんだね。もしかしてこれ終電?

サル 「んなっ……追っ手の気配は無かったはず……!
    フフッ、なかなかやりますなぁ……ほな、
    相応の手を以って追ってこれへんようにせんとなぁ……《スチャッ》」
中井出「ムッ!?」

 このちゃんを抱えたサルが、小さなサルにお札を投げさせ、小さく呟く。
 「お札さんお札さん、ウチを逃がしておくれやす」と。
 その途端にドバァアッシャァアアアッ!!!

中井出「ぬう!?」
刹那 「水!? それもこれだけの量《ザパアッ!!》ぷむぅっ───!!?」

 ───札から車両を一気に埋め尽くすほどの水が召喚される。
 サルはといえば一個先の車両に逃げ込み、その扉を閉ざしてこちらを見ていやがる。
 しかも笑顔で、いやらしい笑顔で、ニンマァアアと。
 ……うむ! その笑顔、なっておらぬ!

中井出(闇のウンディーネさん、全部戻しちゃって)
声  『イエス、マイマスター』

 ユグドラシルにそう語りかけると、すぐに返事をしてくれるウンディーネさん。
 フェルダールのウンディーネさんとは大違いだねと思いつつ、即座にぎゅぽんっ!と札に戻る水を見て、さらに驚愕に染まるサルの表情を見て、

中井出「《ニィイイイタァアアア……!!》ゲエエエフェフェフェフェ……!!
    札の力を過信しすぎたのが貴様の敗因よゲボルハハハカッカッカッカカ……!!
    そして解ってねぇようだから教えてやるよ子豚ちゃァん……!
    悪っぽい笑みっていうのは……こうやるのよクフィヒヒヒヒヒ……!!」

 最高のムカツク笑顔をしながら、ズチャリズチャリと先の車両へと歩いてゆく。
 さあどうしてくれようかこのサルめ、この博光の目標をいとも容易く崩してくれおって、ただではおかぬっ!!
 あ、でも車両には罪はないね。怒ってても扉は普通に開けるよ?

サル 「な、ななな……なにをしはったんです!?」
中井出「ザ・手品!!」《どーーーん!》
サル 「そないなことあるもんですかっ! 手品であれだけの水をっ!」
中井出「うるせーーっ!
    やった本人が手品だって言えばどんなものでも手品なんだよコノヤロー!!
    悔しかったら暴いてみせろコノヤロー!
    それで納得出来たら手品以外の何かとして認めてやるよコノヤロー!」
サル 「くっ……口悪いにもほどがありますえ!? ───!」

 と、ジリジリとやっているうちに次の駅へと到着してしまう。
 つーか速いなオイ……ってしまった! そういや加速魔法解いてなかった! いやそもそ
も同じ電車なのこれ! そっちのほうが驚きだよ僕! とか思ってるうちに逃げられるし! ああもう俺の馬鹿! せっちゃんのほうがよっぽど行動が速いわ!

中井出「ほれ二人とも! 未だに呆然としてないで、とっとと追うぜよ!」
明日菜「へあっ!? あ、は、はいっ!」
ネギ 「ま、待ってください刹那さんっ!」

 いろいろと忙しい。
 先にデカザルを追ったせっちゃんを追いかけ、僕らも駆けます。
 ……が、意外なことにデカザル(だった人)は着ぐるみを脱ぎ捨て、式紙の小さなサルどもにこのちゃんを運ばせ、自分は俺達を足止めするつもりで待機しておった。

女  「ふふ……よーここまで追ってこれましたな」
中井出「え? あ、あ……どうも。そ、そんなに褒められると照れてしまうね」
刹那 「褒めてませんっ!」
中井出「えぇっ!? そうなの!? テメェエエエ人のピュアハートを傷つけやがって!
    覚悟出来てんだろうなコラァアアアア!!!」
女  「ウチ関係あらへんですやろ!?」
中井出「うるせーーーっ! いーからこのちゃん返せよコラァアア!!」
女  「くっ……人の話はきちんと聞かんと……あきまへんですえ!」

 長い駅の階段の中腹で、サル女がこちらへと札を投げる。
 先ほどのように水でも出すのか───と思いきや、なんとそこからは巨大な炎が!!

女  「ほほほほほ!! くらいなはれ! 三枚符術・京都大文字焼き!!」

 段差で出来た斜面なぞ知りませんってくらい、無理矢理に広がる大文字の炎!
 それは見事な壁となり、サル女と僕らとの間に炎という名の壁を作ったのだ……!

刹那 「くっ……こ、これでは……!」
中井出「明日菜くん」
明日菜「はいっ! “来れ”(アデアット)! フレイムブレストォオーーーーッ!!!」

 チャギーンとハマノツルギを召喚、ヒロラインスキルより炎の属性を引き出した明日菜くんが、特殊能力効果破壊が付加された炎の剣閃を放ち、炎の壁を破壊!
 ゾッパァアアンッと綺麗に裂かれた炎は完全に消え去り、

女  「へ……? ん、んなぁあーーーーーっ!!?」

 仰天するサル女だけが残された。

刹那 「す、すごい……! 剣閃だけであれほどの炎を消すなんて……!」
中井出「さーあ……とっととこのちゃんを返しなさい?
    修学旅行の夜を邪魔する輩はこの博光、たとえ老若男女でも容赦はせぬ」
明日菜「誰一人許されませんよそれっ!!?」
中井出「許す気ないもん!」《どーーーん!》
女  「っ……ほなこれでどないです! 猿鬼! 熊鬼!」
中井出「ぬっ!?」

 次の手が用意されていたとな!? と思っていたら、さっきまで着ていた猿の着ぐるみが動き、さらに熊の着ぐるみが動いて我らの進路妨害をする!
 その隙に女はこのちゃんを抱え、再び走り出そうとするではないか!

中井出「……ジーク」

 ゾンガガドバババゴバシャォゥンッ!!!
 それらを、ジークフリードの一閃で斬滅。
 胴を両断され、直後に発生した炎の鎌鼬にて燃え刻まれ、あっさりと塵と化した。

女  「ひっ……ひえぇえええーーーーーーっ!!!?」

 その瞬間、俺はネギに目配せをし、次なる札を取り出そうとした女がこのちゃんを猿に任せ、降ろした───まさにその時!!

ネギ 「“魔法の射手・戒めの風矢”(サギタ・マギカ・アエール・カプトゥーラエ)!!」

 目配せを正確に受け取ってくれたネギが、戒めの魔法を発動!
 風の矢は真っ直ぐに女へと襲い掛かり、女はネギのことなど忘れていたのか(注:ジークフリードの威圧感の所為で他を考える余裕がなかっただけ)完全に不意打ち状態となり……

女  「───! あひいっ! お助けぇえーーーっ!!」

 しかし身を守る意思は十二分のようで、なんとこのちゃんを盾に構えて己は助かろうと……ってオイィイイイイ!! 攫おうとしてたんじゃなかったのかコラァアアア!!
 でも天晴れ! 俺ならきっとそうする!

ネギ 「あっ……!? 曲がれ!」

 だがそこはネギウスくん。まさか盾にされるとは思ってもなかったらしく、あっさりと戒めの方向を変える。
 風の矢は見当違いの方向へと飛んでいき、サル女もきょとんとした顔でそんな魔法の行方を眺めていた。
 いや……確かに多少は傷つくかもだけど、今は敵を捕まえることが先決で……えーと。

中井出「……ネギくん。キミは本当にやさしいなぁ……」

 呆れ半分、お見事半分。

女  「は……はは〜〜〜ん読めましたえ……?
    甘ちゃんやな……人質が多少怪我するくらい気にせず打ちぬけばえーのに」
ネギ 「うくっ……こ、このかさんを離してください! 卑怯ですよっ!」
女  「ホーーホホホホいやですえ〜〜っ!
    ホントこの娘は役に立ちますなぁ! この調子でこの後も利用させてもらうわ!」
刹那 「くっ! このちゃ───」
女  「動くんやありまへん!
    動いたらぁ……お嬢様にどないなことしてしまうのか、ウチも不安ですやろ?」
刹那 「っ……! 卑怯な!」

 へらへら笑いながら、女がこのちゃんを肩に担ぐ。
 その手には符が握られており、迂闊に手を出せば……なるほど、実に上手いです。

明日菜「ちょっとあんた! このかをどうする気よ!」

 そこへきて、驚くばかりだった明日菜さんが女の卑劣な手に血管を浮かばせながら、大声で質問を投げ飛ばす。
 結局はそこだ。
 情報があろうとも、僕はこいつがなにをしたいのかを知らない。
 猛者どもに訊いても、他のことは教えてくれるのにそこだけは教えてくれなくて。
 なんなんだろ───とか思ってたのに、直後に理由が判明した。

女  「そやなー……まずは呪薬や呪符を使て口を利けんよにして、
    上手いことウチらの言うコト聞く操り人形にするのがえーな、
    くっくっく《ゾパァンッ!!》───……へ?」

 軽く横を向き、くすくす笑いながら喋っていた……いや、ほざいていた女の長い髪が飛び散る。即座に殺さなかったのは自分にしてはよくやったと思う。本気で殺すところだった。
 が───

中井出「……貴様。今なにほざきやがった? ……人形? 人形って言ったかおい」
女  「あ、え……? ウ、ウチの髪……? ───ひっ!?」

 霊章が金色に躍動点滅する。まるで鼓動をするように動き、点滅し、そこからは金色の炎が吹き荒れ───

中井出「人形扱いされる方のことも考えないで、そんなくだらないことを言ったのか?」

 俺の怒りに呼応してか、武具たちが勝手にフルブラスト状態にまで解放される。

中井出「操り人形になったが故に、
    人生を無茶苦茶にされたヤツの気持ち……お前に解るか……!?
    解らないんだったら教えてやる……!
    全てを失って、人であることすらも捨てて、
    それでも仲間の明日を願った馬鹿野郎の怒りってヤツをぉおおおおおっ!!!」

 そして、最大解放。
 限界レベルそのままに、ナモナキツルギまでもを霊章に流し込んだドーピング状態で、燃え盛る灼闇を揺らめかせながら一歩、二歩。

女  「はっ……ひっ……! ちちち近寄るんやありまへん! 
    ここっ……ここここのかお嬢様がどうなっても───!?」
中井出『盾にするなら貴様……楽に死ねると思うなよ』
女  「《ぞくぅっ!!》ひぃいっ!!? あ、あう、あ……!」

 殺気を込めた凝視を前に、女は腰を抜かして尻餅をついた。
 もはや木乃香は地面に下ろし、自分が助かるために必死に地面を這っている。
 そんな女にもうこんな馬鹿げたことをしないよう戒めるため、万象の業火を噴き放ち続けるジークフリードを逆手に持ち、一気に───!

声  「え〜〜〜〜いっ!」

 ───振り下ろさんとした瞬間、駅の壁を蹴って俺へと向かう影が一つ。
 ソレは俺が振り下ろそうとしたジークフリードを止めるべく短刀を当て───た途端!

  バゴガォオンッ!!!

少女 「ひぁあぇえ〜〜〜っ!?」

 短刀が爆裂。
 衝撃で、どうやら少女だったらしき影は吹き飛び───しかし体勢を立て直すと、

少女 「え、えと、すみません遅刻してしもて……。
    どうも〜〜〜、神鳴流で《ドボォッ!》けひゅっ!?」

 喋り始めたそいつの腹に拳を減り込ませ、即座に黙らせた。

中井出『邪魔だ、寝てろ』

 情報によれば雇われただけとくる。
 だったら破壊する理由はないし、俺の目的はあくまで───………………はうあっ!?

中井出『《バシュンッ!》や、やべーやべー! つい怒りに任せてフルブラストを!
    落ち着こうね俺! 楽しむの、楽しむ! うむ! よし!
    殺すことヨクナイ! ノー殺ス! ノー!!」

 フルブラストを解除して、元の僕に戻る。
 怒り任せはよくない、よくないね、うん。
 もういっそのこと破壊してくれようかとも思ったけど、それはよくない。

中井出「つーか……この娘には悪いことしたなぁ……」

 当たり所が悪かったのか、吐いた状態で真っ青になりながら気絶してはる。
 な〜んて少女を見下ろしていたら、サル女が新たなるサルを召喚! 倒れたおなごをほったらかしにして逃げおった!

中井出「…………まあいいや、目的はこのちゃんだったみたいだし、
    そのこのちゃんもきちんと気絶したまま倒れてるし」

 万事解決!!
 じゃあえーと…………帰るか。
 あれだけ脅せば多分もう襲ってこないだろうし。

中井出「じゃ、みんなー、ホテルに戻───あれ?」

 …………ほふぅと溜め息をひとつ、振り向いてみれば……腰を抜かして震えている三人がおがったとしぇ。あ、あれー? なんでみんなそんなことに……?

中井出「ちょっとちょっとみんなどうしたの。腰なんか抜かしちゃって」
明日菜「ど、どど、ど……どう、し……」
ネギ 「あ、あ、あぅ……あ、あぅう……」
刹那 「…………、……」
中井出「………ラ〜ラ〜ラ〜、ララ〜ラ〜♪ こと〜ばに〜、できなぁい〜♪
    ハッ!? まさか新手のスタンド使いからの攻撃が!?」
ネギ 「…………ひ、ヒロミツ……だよね? ヒロミツ……だよね?」
中井出「ぬ? 博光が博光なのは同然であろうよ。
    我こそが原沢南中学校迷惑部部長にして提督、中井出博光である」
ネギ 「…………《ぶわっ》……う、ううう……うわああーーーーーーん!!」
中井出「ぬおっ!?」
明日菜「っく……ひっく……うぅうう……!」
中井出「あ、あれ? ちょっと明日菜くん!?」
刹那 「……っ……ひっ……うっ……」
中井出「ゲェエーーーーッ!!? ちょっ……せっちゃんまでどうしたの!?
    ななななにを急に泣いておるのか博光にも解るように教えて!?」

 話してたら急に三人が泣き出しました。
 いったいなにが起こったのかカケラも解らん……。
 ともかくまずは三人が落ち着くように然のマナで包んでやり、次にこのちゃんには創造した服を着せ、倒れたままの嬢には…………うわっ、内臓ズタズタだ! 骨も相当グシャっといってるぞコレ!
 し、しまったわ! フルブラスト状態で殴れば、たとえ軽くやってもこうなるって!
 ウヌヌヌ〜〜〜ッ、力を手にする自覚、まだまだ足りぬかなぁ僕。
 弱いままのほうがまだまだ僕らしいや。
 ともあれこれはいかんとすぐに癒しの光を発動。
 癒しの大樹よりダイレクトヒールを送ると、ズタズタの内臓も骨も、出来ていた痣の全ても完全にシャッキリと癒えた。
 その頃には三人とも落ち着きを見せてくれて、このちゃんも目を覚まし、ついでに少女も目を覚まし───!

少女 「…………《じー……》」
中井出「む? どうした女」
少女 「……ウチ、強い人好きですえ〜……。
    こんな一方的に、一撃でキメられたんは初めてですわ〜……。
    あの……《ポッ》す……好きになってもうてええですか〜?」
中井出「…………ホエ?」

 それは。
 ここに居る誰もが、そして僕の中に居る猛者どもでさえ想像だにしなかった、トンデモ発言でした。

少女 「ウチ、月詠いいますー。戦と血さえあればそれでええのですけどー……
    貴方の傍には戦いも血もありますかー?」
中井出「……ふむ。十分すぎるほど。
    もうね、今までの戦いが馬鹿らしくなるくらいの世界が存在へ誘えますよ?
    さてここで質問だ。貴様がさっきの女との契約を破棄し、
    この博光とともに来るのであれば、この博光は貴様を仲間として認めよう。
    べつに飽きたら裏切ってくれてもいいし、そのまま居付いてくれても構わん。
    己の強者としての順位が底辺へと落ちる世界を貴様に見せてやろう。どうだ?」
月詠 「ほんまですかー? ウソやったりしましたら……」
中井出「ちなみに僕に攻撃をするのなら」
月詠 「《バゴシャドォッゴォンッ!!》クピッ───!?」
中井出「……仕返しされることをきち〜んと頭に入れておくことね?」

 ひゅっと刀を振るった月詠さん。……の、斬撃に拳のカウンターを持って地面に殴りつけた。丁寧にバウンドして気絶してくれはった。ご苦労さん。
 力の自覚がどうだろうと、相手がその気なら容赦なし。こんばんわ、博光です。じゃなくてキツケキツケ……!

月詠 「《ドスッ!》けふぅっ!? け、けほっ! こほっ!」
中井出「はい、解ったら答えを聞かせてもらおうね?
    ただし一言言っておく。
    血と戦が好きでも、貴様の技術で血を見ることが出来ると思ったら大間違いだ。
    貴様なぞ下の下……四天王にすらなれん実力よ。
    今の貴様ならば───息吹だけで倒せる!」《どーーん!》
月詠 「ほあ〜……それ、ほんまですか〜? いくらあんさんでも───」
中井出「すぅっ……覇ッ!!」

 スゥ……と息を吸い、そして狭めた口より発射!!
 圧縮された僕の息吹はレベルマックス状態のまま放たれ、くすくすと笑いながら構えていた月詠さんの胸部をドチュゥウウンと穿ち、一撃の名の下に下してみせた……!!

月詠 「けっ……けほっ……!? あ、う……!?」
中井出「蛙よ、淡水より旅立ち大海を知り、海水にまみれて溺死するがいい。
    神鳴流だろうと鍛錬が行き届いていようと、
    貴様が血を望もうと狂人の果てを目指そうと、その全てが半端であるわ!
    よいか小娘! 貴様がこれから足を踏み入れる世界!
    そこはこの博光がそうであるといえばそうである世界!
    ちなみに貴様より強い人間が50は居ると考えてくれ。
    見ることになるのは恐らく貴様の血ばかり。それでもこの手を取れるかね」
月詠 「…………、……こほっ……、あ、う……」

 差し出した手に、月詠さんの手が乗せられる。
 僕はそうした彼女にニコリと微笑みかけ、

月詠 「───あはぁっ♪」

 口から血を吐きながら、刀を片手に俺の手を引く月詠さんをマゴチャア!

月詠 「はぴゅう!?」

 容赦無く鼻ナックルで沈めました。
 よーするに鼻をゴチャアと殴ったわけですが。
 ええいこのお子ったら本当に戦闘狂らしい。
 どうやら骨の髄に敗北の二文字を刻み込まなきゃ納得しないらしい。

月詠 「あはー、つ、つよいですなー……♪」
中井出「うむ! 故に貴様に敗北の二文字を刻み込む! 歯ァくいしばれ!!」
月詠 「えへへへへ……ただやられるだけとちゃいますえー《チャキン》」

 言いつつ刀を構えバゴシャアッ!!
 ……殴りました。
 それどころか吹き飛んだ瞬間に足を掴んで地面に叩き落し、拳の弾幕をプレゼント。
 たとえ相手が女だろうと差別はしない……改めてこんばんわ、博光です。

中井出「殴る蹴るどつく殴る蹴るどつく殴る蹴るどつく殴る蹴るどつく殴る蹴るどつく殴る
    どつく殴る蹴るどつく殴る蹴るどつく殴る蹴るどつく殴る蹴るどつく殴る蹴るどつ
    く殴る蹴るどつく殴る蹴るどつく殴る蹴るどつく殴る蹴るどつく殴る蹴るどつく殴
    る蹴るどつく殴る蹴るどつく殴る蹴るどつく殴る蹴るどつく殴る蹴るどつく!!」

 倒れている月詠さんを蹴り上げ、駅の壁へと殴り飛ばすと一気に間合いを詰め、貼り付け状態で殴る蹴るどつく!
 落下することすら許さずにこれでもかというほどボッコボコにし、反撃しようとするならばその腕を破壊してさらに殴って絶望を与える!!

明日菜「───……はっ!? ちょ、ちょちょちょちょとせんせ!?
    やりすぎ! やりすぎやりすぎ! 死んじゃうよ!?」
ネギ 「あっ! ひひひヒロミツ!! いくら敵でもそれ以上はぁあああっ!!」
中井出「む?」

 さらにナックルを、と構えたところで、その腕が後ろからガシィと掴まれる。
 抱き締めるように、これ以上殴らんようにと。

刹那 「やめてください先生……! あなたは生徒の前で少女を殺す気ですか……!?」
中井出「……いや、どうやっても死なないから大丈夫だよ?」
刹那 「え?」

 見てみなさい、と促すと、ずるりと地面に崩れ落ちた月詠さんには傷ひとつなく。
 破壊した腕も既に回復させてあるので、平穏無事状態です。

中井出「戦闘狂なんてお子には、一度絶対に敵わぬって絶望をくれてやらなきゃいかん。
    徹底的に敗北を刻んでやって、その上で向上心を持ってくれりゃあ、
    戦うことしか能がないお子でも別の楽しさに目覚める。
    安心おし。このお子を味方に引き入れるのはやめじゃい。
    向かってくる限りは叩きのめすが、味方に入れると危険な気がする」
刹那 「先生……し、しかしいくらなんでもこれは……」
中井出「相手が誰だろうと、敵である限りは容赦せぬ! それがこの博光のスタンスです」

 するりとせっちゃんの手から逃れ、くたりと崩れ落ちた月詠さんをぽこりと小突く。
 するとクワッと顔を上げ襲いかかってバゴチャアッ!!

月詠 「ひゃぶっ!」

 ……殴りました。

中井出「つーかこのお子、全然懲りてないよ!? どこまで戦闘狂なのほんと!!
    せっちゃん!? これでもやめろと!?」
刹那 「い……いえ、まさかこれほどとは……」

 殴られた拍子にごぢーんと後ろの壁に頭を打ちつけ、痛がる月詠さん。
 なのだが、その痛みにすら体を抱き締めるように熱っぽい顔で自分を抱き締め……って!

中井出「ヒィイ変態さん!? 変態さんが居る!! おマゾネスさんだ!!」

 やばい! 殴りすぎて何かに目覚めたみたい!
 殴られたっていうのにうっとりしてるよこの子ったら!

月詠 「《ぞくぞくぞく……!》あはー……♪ もっと、もっと戦ってくださいー……♪」
中井出「せっちゃんあと任せていい?」
刹那 「《ぎくっ!》い、いぃいいえっ、わたしもこの手の人種は少し……!」
中井出「いやでも僕止めたのせっちゃんだしっ! ほら、戦って!? ねっ!?」
刹那 「いえいえいえいえ!! 今の戦いを見て気づきました! わたしもまだまだ未熟!
    先生のもとで力をつけさせてもらい、励むためにもここは先生が!」
中井出「さっきと言ってること違うじゃないせっちゃん!
    キミは僕に無益な争いをしろと!?」
刹那 「そそそそうは言ってません!
    言ってませんが敵である限りは容赦しないと言った先生だから!」
中井出「あっ! コノヤロそこでそれを出しますか!?」

 もう子供です。
 二人してギャースカ騒ぎ合い、くすくすと怪しく笑む月詠さんを完全無視です。
 しかし我慢できなくなったのか襲いかかってくる月詠さんを

中井出「おだまり!」

 ドボォオッホォオゥンッ!!!

月詠 「か゜ぺっ……!?」

 まずボディーブロウ! さらにそのままの勢いで空中まで殴り飛ばし、宙に飛ぶ彼女を追うように跳躍! 即座に彼女を空中で捕らえると逆さ状態で固めてゆき、

中井出「火事場のっ……クソ力ァアアーーーーーッ!!!」

 額に肉マークを出現させ、キン肉バスターの形を完成させる!
 もはや完全に気絶させるしか逃れる方法は無し!
 長かった戦いよ……さらば!

中井出「マッスルゥウウ……グラビティーーーーッ!!!」

 しかしこの博光のバスターはただのバスターじゃないんだ。
 落下の重力により月詠さんの体が変形しても落下速度は緩めず、そのまま地面へと───
叩きつける!!

 ドゴォオオーーーーーンッ!!!

月詠 「ゲボハァーーーーッ!!?」

 すると月詠さんが女性らしからぬ悲鳴を上げ、血を吐き出してドシャアと崩れ落ちる。
 まあ……無理もないか。圧に耐えられず胸は裂けてるし、他も随分とズタズタだ。
 でも軽く癒すだけで、気絶までは取り除きません。

中井出「悪は去った……」

 それじゃああとは帰るだけ。
 僕は呆然とする皆様をさあさと促し、この場から離れることを提案したのでした。
 あー……一番唖然としてるこのちゃんへのフォロー、なにかしておかないと……。

中井出(明日はのんびりした一日になるといいなー)

 “のんびり=楽しい一日”が僕のなかのデフォルトです。
 だからもう明日こそは健やかに騒げますように。


───……。


 で、翌日。

中井出「ハッハッハッハッハ! 鹿よ! 今日もよい風車日和であるな!」
鹿  『いーからせんべいよこせ』
中井出「おおっ、正直なところが素晴らしい! 飴をやろう」
鹿  『いや、せんべいよこせって』
中井出「なにぃ、ならばこんぺいとうを授けよう。頂戴するがよい」
鹿  『ンなもんいらねーからせんべいよこせって』

 やあ僕博光。
 今日は奈良公園より鹿の軍勢の前でお報せするよ?

エヴァ「ほう? 随分懐かれているじゃないか」
中井出「フハハハハ! この博光は動物だけにとどまらず、草花とも話せる存在よ!
    言葉が通じぬ者よりも、話せる者のほうが頼れるということであろうよ!」

 石畳の上を、キティを肩車しつつ歩く。
 「こう人がごみごみ居ちゃあ、見たいものも見れん」と言ったキティを救済すべく、この博光が立ったのです。
 ……既存破壊の都合もあって、僕はキティからは離れられないからね、必然的に行動はキティと一緒ってことになる。

中井出「さ、せんべいをやろう。何枚だ? 一枚か?
    おっ、おっ? 三枚? 三枚かいやしいやつめっ!」

 チョコラータとセッコの真似を微妙にしつつ、せんべいをドシュドシュと投げると、それでも見事に空中キャッチしてバリボリ食べる鹿たち。たくましいです。

中井出「しかし茶々丸子ちゃんはよかったの?」
エヴァ「ハカセに任せてきた、問題ない。
    いろいろなことを考えずに堪能したいんだよ、今の私は」
中井出「そかそか」

 ならばと歩き出し、鹿をゾロゾロ連れて、この景色を堪能してゆく。
 ううむ、素晴らしきかなこの風景。
 これでせめて、ここまで人が居なければなぁと思う。
 どうもここまでの人間に囲まれていると、猫だった頃の記憶がじくりじくりと……

中井出「難しいこと考えても仕方ねーや!
    よぅしマクダウェル、思う存分堪能しようぜーーーっ!!」
エヴァ「はっはっはっはっは! 言われるまでもない!
    さあ進めヒロミツ! 全力でこの修学旅行を堪能するために!」
中井出「よっしゃあ任せとけっ! ゆくぞ鹿達よ!
    木刀を買って不動明王唐竹割りを会得したら、今こそ旅立ちの日ぞ!」
鹿  『いーからせんべいよこせ』
中井出「まだ足りないの!?」

 今日はネギたちとも別行動。
 噂じゃあのどっちたちの班と一緒に回っているそうだが、まーそこらへんはきっちり楽しんでくれることでしょう。
 なにやら猛者どもがクスクスヒッソォと内緒話をしているようだが、知ろうとも思わんし。解らんから楽しめることもあるということですね。

楓  「あの二方は妙に仲がよいでござるなー」
古菲 「善き哉アル」

 途中で暖かな視線も感じたけど気にすることやおへん。
 いつまでもエサをねだる鹿たちに複製したせんべいをあげると、次なる場所へと歩みを進め───

エヴァ「おっ……おぉおおおおこれが大仏か! 大きいな! 見事だな!
    ……うむ、よくできている……!
    これほどのものを形作るのは容易ではなかっただろう……!」

 大仏殿で賽銭投げたり大仏見上げたり、

エヴァ「大吉……おお大吉だぞヒロミツ!
    これも日頃の素行の良さからくるものだな! アハハハハハハハ!!」

 おみくじ引いて一喜一憂……いや、一憂はなかったけど。

エヴァ「はー…………たまらん……」

 散々と騒いだあとは、吉所庵というところで抹茶やだんご、ぜんざいを食べたりと。
 キティは心行くまでこの旅を堪能し、もう物凄い緩みきった表情でうっとりしてました。

中井出「よーしまだまだ行くぜマクダウェル。この休憩が終わったら、次は───っと。
    その前に既存破壊を、っと……」

 すぅ……と息を吸って、ふぅう……と満足げに息を吐くキティの頭を、こう……さらさらと撫でつつ、既存破壊を流してゆく。
 いや、恐ろしいねぇサウザンドマタスー。じゃなくてスマター……でもなくてマスター。
 彰利のブレイカーを以ってしても、しばらくしか効果が持続せんとは。

エヴァ「《なでくりなでくり……》………」

 何度かやってるうちに、もう撫でられるのにも慣れたのか抵抗する気も失せたのか、撫でられるがままのキティ。それどころか目を閉じてハフーと安堵っぽい息まで吐いている。

エヴァ「……すまん、本当に世話になるな、ヒロミツ。
    闇の福音だとかどう呼ばれようと、力が無くなればこんなものだ。
    15年もの時間を学園という檻に閉じ込められ、
    そのくせこういったイベントは情報を知るだけで参加も出来ないとくる」
中井出「……うむ」
エヴァ「初めて修学旅行の話が学園に走り、私の耳に届いた時……
    ガラじゃないが、理由もなく心が高鳴ったのを覚えている。
    ようやくこの景色から抜け出せる……いや。
    純粋に行事というものが楽しみになった瞬間でもあった。
    それがどうだ、中途半端な魔法で呪いをかけられたため、
    あくまで“登校地獄”であり、学園からは出られない。
    初めて沸いて出た心も私も置き去りのまま、
    当時のクラスの連中は私を置いて旅立ったよ」
中井出「……うむ」

 話を聞きながらも撫でる。
 キティがお茶を飲み終え、湯飲みを置くと……その頭を招き、膝枕をしてやった。
 茶屋の前の椅子でこういうのって迷惑だろうかーとも思ったが、デバガメ以外に人の気配はないし、べつに問題ないでしょう。

エヴァ「するとどうだろうな。結局サウザンドマスターが来ることもなく、
    学校行事にも参加できずにただただ学園に縛られた私は、
    様々な物事に興味がなくなっていった。
    ぼーややお前が現れるまで、何をするわけでもなく縛られていた」

 だんごを食ったからか、はたまた思い切り堪能したからか。
 キティは完全に力を抜き、我が膝枕でうとうととし始める。
 そんな彼女の頭をやさし〜く撫でながら、自然と滲みでるマナや癒しを浴びせつつ、話をのんびりと聞いていた。

エヴァ「……ありがとう……来てくれて……。おかげで、わたしは…………」

 やがて全てを言い終える前に、キティは目を閉ざし、寝息を立て始めた。

中井出(ありがとう、ねぇ……)

 あーくすぐったい。
 普段からこれだけ素直なら、まだ可愛げがあるのに。
 いや、普段から素直か。素直に罵倒したり物言いしたりしてくるし。

中井出(さてさて、出歯亀は……柿崎、釘宮、椎名に鳴滝の双子……1班の連中か。
    好きだねぇほんとに……)

 インディグネイションでも叩き落してくれようか。
 ……っと、そんなことしたらキティが起きるか。
 この博光、惰眠のありがたさを知る修羅よ。
 心地よき睡眠をむさぼる者を邪魔するようなこと、気が向かない限りはせぬ。多分。

中井出(しかし……のどかだねぇ〜……)

 いや、宮崎さんのことじゃなくてね? なんというかこう、静かで平和だ。
 キティが眠りたくなる気持ちもよ〜く解るよ。
 しかし時は待ってはくれぬので、さっきから動いている面白いものレーダーに任せて動いてみましょう。えーと……キティの安らぎ速度を速めて〜と……はいじっくり睡眠完了!

エヴァ「ン……、……くあ……ひゅひゅ……。ん、あれ……私は……」
中井出「おはよ、マクダウェル」
エヴァ「ン、ンー……おはよう、ヒロミツ……」

 普通に6時間くらいは寝かせた計算だから、随分休めたはずだ。
 膝枕状態のままに俺を見上げ、ぐぐぐ〜〜〜っと伸びをするキティをさらに撫で、店員さんにあったか濡れタオルを貰って顔をやさしくぬぐってやる。

エヴァ「ぷあっ……こ、こらやめろっ、それくらい自分でっ……!」
中井出「いーからいーから。よく眠れたか?
    眠れたなら次だ。今日という日は待ってはくれん」
エヴァ「ん……ちょっと待て……今、目を覚ます……ん、んー……」

 で、再び伸び。
 ンゴゴゴゴと小刻みに震え、脱力すると……パチリと開いた目が俺を見つめた。
 そんなキティの額をポムポムと撫でると、抱きかかえ、ヒョイと宙にほうってスチャリと肩車を完成させる。

中井出「いざ、出陣!」
エヴァ「うむ、出陣!」

 段々ノリが似てきたかもと思うのは、不老不死にしか解らんステキマジック。
 子供そのもののノリで、ヒャッホーゥィと燥ぎ、しかしきちんと料金は払ってから疾駆。
 茶屋の裏に回り、出歯亀さんの目から逃れた時点で烈風解放。
 視認できない速度で堂々と駆け抜け、地を蹴り木を蹴り空へと跳び空を飛び、大空よりこの京都を見下ろしながら───僕らは盛大に笑いました。

エヴァ「なるほど! 地から見上げるばかりじゃなく見下ろす景色もまた見事だ!」
中井出「うむ! 絶景である!」

 バサバサと吹き荒ぶ風にぶつかられながら見下ろす景色のなんとステキなこと!
 いやーいいもんだね、こういう行動も!

中井出「っと、ネギ発見」
エヴァ「ぼーやか? たしか宮崎らと同じ班で行動してるとか言ったな」
中井出「うむ。どれ、ちょいと近くの茶屋がウメーことを教えてやりましょう。
    あそこは中々に見事でござった、是非とも味わってほしい」
エヴァ「やさしいじゃないか。その提案は私も賛成だ。アレはいいものだった」

 見上げ、見下ろし、ニカッと笑って急降下。
 キティ曰く、この落下している時のキュ〜〜ッと来る感覚が好きなんだとか。
 うん、なんか解る気がするけど少々怖いのが難点。
 のどっちが居るから近くに落ちるのはやばいね、少し離れた位置に……と。
 そんなわけでどかーんと大地に舞い降りて、ハーロー! と声をかけようとしたまさにその時!

のどか「私、出会った時からずっと、ネギ先生のことが好きでした!
    私、私……ネギ先生のことが大好きです!」
エヴァ「おっ……」
中井出「マッ……」
ネギ 「……え?」

 にっこり笑って手を振り上げた状態で固まる博光、見参!
 「いや見参じゃねーべよ!」と彰利が突っ込んでくるけど知ったこっちゃねー!

ネギ 「あ、え……あ……」
のどか「あ、いえー……わかってます、突然こんなこと言っても迷惑なのは。
    せせ、先生と生徒ですし、あの、ごめんなさい……。
    でででも私の気持ち、知っておいてほしかったのでー……そそそのっ!
    しししし失礼しますネギ先生!!《ダァッ!》」

 …………硬直してる間に一気に捲くし立てるように言い放たれ、彼女は僕らに気づくことなく走っていってしまった。
 残されたのは硬直してしまったネギウスと、振り上げた手をどうしたものかと考える僕。
 しかしまあ、なんだ。

中井出「ウェッフェフェフェフェフェなんだなんだおいコノヤロー告白かコノヤロー!」
エヴァ「随分慕われているじゃないかぼーや! で、どうするんだ返事はウハハハハ!!」

 精一杯のムカツク顔をしつつ、肩から飛び降りたキティとともにネギを盛大にからかってやります。心底腹が立つだろうが、これは礼儀というものよ!
 というかね、こういう時って混乱してることの方が多いから、こういった野次は逆に心地がいいと勝手に俺が決めた。今決めた。

中井出「このっこのっ、ニクイねこのっ! にくっ……憎い!
    19歳並に憎いぞこの野郎! ギィイイイイ19歳めぇええええっ!!!」
エヴァ「……19歳に嫌な思い出でもあるのか?」
中井出「いや、昔“19歳”という名の歌がありまして。
    ひたすらに19歳を大嫌いと歌う歌でして、
    黒揚羽蝶がどうとか言ってたけど、もう19歳が嫌いなことしか覚えてない」
エヴァ「19歳にとってはたまらなく嫌な歌だな……」

 いや本当に。
 と言ってるうちに、バターンと倒れるネギウスくん!

中井出「ややっ!?」
エヴァ「おおっ!?」
中井出「どうしたしっかりしろ! ───ハッ!? もしや敵スタンドの攻撃!?」
エヴァ「いい加減そこから離れろ!」
中井出「いい加減って言われるほどマクダウェルの前では言ってないと思うのだけど!?
    と、ともかくキツケを! ネギ!? ネギ起きなさい!
    起きるんだ! 起きっ───ヨオオしっかりしてくれよォオ!!」
ネギ 「《ズパァアン!!》めロッ!?《……ガクッ》」
エヴァ「トドメ刺してどーするっ!!」
中井出「えぇっ!? ただビンタでキツケしただけだよ!?」
明日菜「どー見たってトドメですよっ!」
中井出「ややっ!? これは明日菜くん! パル子さんに夕映さん、このちゃんまで!」

 一同揃い踏み! 何故ここに!? ……きっと覗いてたんだろうね、うん。

中井出「せっちゃん……キミまでこんな覗きまがいのことを……」
刹那 「はぅぇっ!? い、いえこれはそのっ……こここのちゃんがっ……!」
ハルナ「大変! 38度もあるよ!」
夕映 「知恵熱というやつですね」
中井出「あーあー仕方のない……ネギはこの博光が運んどくから、
    キミたち走り去っていったのどっちをお願い。
    あんまり走りすぎてヘンなところに迷い込んでも困るから」
夕映 「! そ、そうでした、見事と思うあまりに私としたことが……!」
ハルナ「んっ、すぐ追うよゆえゆえ!」
夕映 「任せるです!」

 シュパァーと走ってゆく二人を見送り、ネギを抱えると明日菜くんとせっちゃんも促す。
 修学旅行は心行くまで堪能してこそだとしっかり伝えて。
 そうすると二人ともこくりと頷き、「?」と疑問符を出しているこのちゃんを連れて走っていった。

中井出「よしっ、それじゃあネギはホテルに送り届けるとして……」
エヴァ「それが終わったら別のところ、だな? まだまだ今日は時間がある」
中井出「うむ! ではゆこうマクダウェル! まずはホテルだーっ!」
エヴァ「おーーーっ!」

 不老不死同士の喜び……プライスレス。
 もはやノリにもノったキティとともに、僕はホテルへと駆けました。
 しかし……僕らはまだ知らなかったのだ。
 ホテルにネギを戻したことで、まさかあんなことになるなんて……。




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