09/遠い道を歩く時は歌を歌えば近いことはセーラに学べ

 メラメラメラメラ……!!

中井出「さーてそろそろ焼けるからねー? 未来のオコジョの丸焼きだ〜♪」
ネギ 「うあーーーーん許してくださーーーーーーい!!」

 やあ僕博光。
 本日修学旅行ニ日目、散々とキティとともに京都の一部を堪能してきた僕らは、ホテルに戻るなり大変なことを聞きまして。
 いやぁそれが聞いてくださいよぉおくさぁん、このお子めが、あろうことか朝倉さんに魔法使いだってことバレやがりまして。
 だからこうして、ホテルの外の庭で燃やした焚き火の上にネギを吊るし、メラメーラ状態です。

中井出「なぁネギよ……そのままでいいから聞きなさい」
ネギ 「このままにしないでよっ! 僕焦げちゃうよ!?」
中井出「なにぃ!? ならばもっと位置を下げて……」
ネギ 「うわーーーんこのままでいいこのままでいいよぅ!!」
中井出「なに!? せっかく降ろしてやろうと思ったのに焼かれたいとは!
    貴様のその在り方……覚悟として受け取ろう! じゃ、話続けるね?」
ネギ 「助けてぇええーーーーーっ!!」

 明日菜くんとせっちゃんも立ち会ってくれているのだが、むしろ焼かれて当然といった感じに見守っていたりした。

中井出「貴様このままでは本当にオコジョだよ?
    それでいいっていうなら止めないけど、どれだけバレれば気が済むの」
ネギ 「だ、だってあそこで使わなかったら猫が車にっ……!
    それに飛んでるところを写真で撮られちゃって、
    協力しなきゃメールで配信するって……!」
中井出「バカモン! そんなのは相手にしてみりゃ最強の脅しネタでしょうが!
    そんなものは本人が認めずただの合成だと言い張れば、貴様が勝っていたのだ!」
ネギ 「え……あ、あぁあーーーーーっ!!?」
カモ 『し、しまったぁあーーーーーっ!!
    バレたことに焦るあまりに簡単なことを見逃してたぜ……!!』
中井出「故に燃えなさい?」
ネギ 「《メラメラ》うあーーーーん!!? たたた助けてアスナさーーーん!!」

 本当にいろいろなものを見逃すお子です。
 ここで一度お仕置きが必要だと判断した僕は、止めずにコクリと頷く明日菜くんとともにお灸をすえていった。
 続く摂関の数々にせっちゃんが止めようとした頃には、こちらもさすがに摂関を終了させましたがね?

中井出「じゃ、次です。……朝倉さん?《ニヤァアア……!!》」
朝倉 「ぎっ……や、やっ……だだ大丈夫っ! バラさないバラしませんからっ!!」

 一部始終を縄で縛られつつ眺めていた朝倉さんは、もうカタカタと怯え放題です。
 そりゃね、まさか火あぶりにするだなんて誰もが思わないだろう。
 最初こそは明日菜くんもカモもせっちゃんも、着火と同時に叫んでたくらいだし。
 あ、ちなみにこのちゃんにはさすがに見せられないので、部屋に戻ってもらってます。
 キティは温泉中だ、また酒でも飲んでるんだろう。

中井出「誓える?」
朝倉 「ちち誓います誓いますっ!」
中井出「じゃ、バラした時の選択肢を選ばせてあげよう。
    1、記憶を消して今まで通り普通の生活を送ってもらい、ある日何故か轢死。
    2、デデニーランドに乗り込みジーラくんの正体を暴き、ある日何故か轢死。
    3、常に誰かに見つめられ、写真を撮られまくる。そしてある日何故か轢死」
朝倉 「なんで全部轢死!? 特に1なんて記憶まで消されて轢死!?
    ていうかここまで庇うってことは中井出せんせももしかして魔法使い!?
    ───ハッ!? まさかさよちゃんのことも!?」
中井出「フフフ、知りたがり屋は早死にするぞ。貴様は選べばいい。ただそれだけだ」
朝倉 「《ぞくり……》え、えはは……!? ちょちょちょ、ちょっと待ってね?
    じじじ自分の生き死にのことなんて、かかか考えたこともっ……」

 目を白黒させて混乱する朝倉さん。
 さあ、どうでる朝倉さん。俺は選択肢を与えた……四つの選択肢だ。
 問題は貴様がそれに気づくかどうかだ。
 明日菜くんや、救出されて震えてるネギウスはピンと来ているようだが……

朝倉 「2! あ、いやでも3、うぅううっ……1はあまりに悲惨だし……!
    3はカメラを持つ者としてはやられたくないし……!
    えーとえーとあーあーあーあーーーーーーっ!!
    イヤーーーッ!? どれもやだぁあーーーーーーっ!!」

 そして暴走。
 中学生に生き死にの判断はやっぱキツイもんがあるよね。
 しかし明日菜くんは決意してみせたし、せっちゃんはこのちゃんを護るためならばと立ち上がった。
 そして今貴様も、第四の選択肢を見事に選んでみせたわ。

中井出「よろしい。ではどれもイヤだという第四の選択肢を選べた貴様に、
    我らの同胞と書いて“はらから”と読むになることを認めよう」
朝倉 「へ……? え、え……? ここ、殺さないの?」
中井出「だって僕選べって言っただけだし。
    もし1〜3の選択肢を選んだ上でバラしてたら、本気で抹殺してたけど」

 こう、社会的に。
 社会の歯車で見事轢いてあげるつもりだったんだけどね?

中井出「よいか朝倉。貴様には仲間の証としてこれを……」

 チャラリと、出現させたのはネックレス。もちろんヒロライン用のナビネックレスだ。
 それを見るや明日菜くんもせっちゃんも、当然ネギウスも「あっ」と声を出す。

朝倉 「え? え? なに? ヤバイもんなのこれっ!?」
中井出「いや、仲間の証……その名もギャバンの証だ」
朝倉 「ギャバン!? アバンじゃなくて!?」
中井出「これを貴様の首にかけると……ハイ、消えましたね?
    これをつけた状態で知っている人以外にバラすと、ある日突然轢死するから」
朝倉 「ひぃいいいいいいいっ!!?」
明日菜「えぇえっ!? ちょっとせんせ!? そんなの聞いてないんですけど!?」
中井出「うん、今適当に思いついただけだし」

 ……あ、ズッコケた。

明日菜「言うにしたって心にやさしい冗談を言ってくださいよーーーっ!?」
中井出「な、なにを馬鹿な! 僕やさしいよ!? 主に自分に対して!」
明日菜「他人にもやさしくなってくださいって言ってるんですよ!」
中井出「ウ、ウーン……わ、解った……ど、努力……し、してみる……」
刹那 「そこまでどもらなければならないくらいに、
    やさしくするのが苦手なのですか……」
明日菜「その割にはエヴァンジェリンちゃんとは仲がいいみたいだけど」
中井出「うむ。殴り合い、互いに認め合った仲さ。
    とまあそんな話は置いておいてと」

 ちらりと混乱中の朝倉さんを見やる。
 彼女の情報収集能力は意外に役立つかもしれん……ここで死なすには惜しいおなごよ。
 や、べつに殺す気はないんだけどさ。

中井出「ともかく朝倉、
    キミも今日から我らがスプリングフィールド破壊神化計画委員会の仲間だ」
朝倉 「破壊神!? えぇええ!?
    ネギくんそんな大それた計画を!? これは大……いや、超スクープだ!」
ネギ 「してないですよ!? ぼぼぼ僕はそんな大それたことは……っ!」
中井出「うむ。この博光は平気でウソを吐くので、早い段階から慣れておくように」
朝倉 「うわー…………あ、うん、死ぬんじゃないならもうなんでも受け容れるけどさ。
    た、大変なことになったなぁああ……誰かに告られた〜なんてこと、
    詮索したりしなければよかったかも……」

 後悔は先に立たんものさ。
 がっくり項垂れている朝倉っちを縛っている縄をほどき、彼女を解放しながらニコリとスマイル。敵には悪魔になり、味方には外道。それが博光イグゼクシヴ。意味不明である。

中井出「安心めされい。貴様はこれより、
    この世界で過ごしていたのでは決して得られなかった世界を見ることになる。
    すぐに後悔なんてものは吹き飛ぶさね。大丈夫大丈夫グオッフォフォ……!!」
朝倉 「あ、あー……ああああのー?
    なんだかちっとも大丈夫じゃなさそうな笑い声が漏れてますけどー?」
明日菜「朝倉───」
朝倉 「あ、アスナ……えと、大丈夫だよね? べつに怪しいこととか……」
明日菜「とりあえず、“人形”って言葉にだけは気をつけなさい」
朝倉 「へ? 人形?」
刹那 「不用意に口走れば、恐怖というものを知ることになります」
朝倉 「え? え?」
ネギ 「朝倉さん……本当にごめんなさい。スクープだからとはいえ、
    こちら側に足を踏み入れることになってしまって……。
    あの、約束してください。
    ヒロミツ……中井出先生の前で、“人形”とは口走らないことを」
朝倉 「………」
中井出「?」

 なにやらぼそぼそ話してるけど、どうにも聞き取れない。
 終始朝倉さんは“?”顔で、たまに「あははまっさか〜」とか言ってるけど……そのたびに三人がマジ顔で慌てながら、ほんとだから本当ですから信じてくださいって叫びまくっている。

朝倉 「じゃあ私が今、言ってみようか?」
三人 『ひぃいいいいっ!!!!《ぞざざざぁぁっ!!》』
朝倉 「……エ?」

 たった一言で、つい今まで朝倉さんの傍で叫んでいた三人が、怯えた表情で彼女から離れた。その尋常ならざる怯えかた、僕はゴクリと息を飲み……

中井出「カズミちゃん、キミなにやったの……?」
朝倉 「へあえっ!? な、なにをって……あのー、中井出せんせ?
    中井出せんせってもしかしなくても、とっても怖い人だったりする?」
中井出「いや、この博光はただ外道なだけで、怖くはないよ?」
朝倉 「……それってどー受け止めればいいのかな」
中井出「うむ! 好きに受け取りめされい! つーわけで仲間には容赦無し!
    ネギ、明日菜くん、せっちゃん、朝倉くんに全てを知ってもらい、
    動きやすいようになってもらおう!」
刹那 「……なるほど、知ってしまえば逆に下手な行動はとれなくなるというわけですね」
中井出「わあ、せっちゃん解ってる」
朝倉 「解ってても本人の前では言ってほしくなかったんだけど……」

 たらりと冷や汗をかく朝倉くんだが、そんな彼女を一先ず黒衣で飲み込み───積もる話はヒロライン内でしてもらうことにした。


───……。


 さて、そんなこんなで夜だがや。

朝倉 「名付けてくちびる争奪、修学旅行でネギ先生とラブラブキッス大作戦!」
まき絵「ええーーーっ!!?」
桜子 「ネギ君とキスーーーッ!!?」
中井出「……大作戦って言葉好きだなぁこの世界のお子めら……」
刹那 「私もなんとなくそう思います……」

 情報通りというべきか、二日目の夜に始まったこの騒ぎ。
 カモと朝倉……カズPでいいや。が、企てた超大型仮契約伝説。
 ホテルを魔法陣で囲んで、ぶっちゅさせれば無理矢理仮契約成立ってな話なわけだ。

朝倉 「あ、ちなみに相手は中井出せんせでもいいよ?」
中井出「はっはっは、何を言うかカズP。
    俺なんぞとキスしたがるお子など居る筈がなかろうよ」
朝倉 「そ? エヴァちゃんとか桜咲さんとか、
    なんとなーくそれっぽい雰囲気に見えるんだけど」
刹那 「えなっ!? そ、そそそそんなことは……!」
中井出「そうだぞカズP、せっちゃんはむしろお嬢様とだな」
刹那 「なわぇあぇええええっ!!? せせせ先生! なにをそんなっ!」

 せっちゃんが大いに慌てる中、「な?」と目配せをすると「なるほど」と目で返すカズPが居た。しかしまあ確かに、言われてみればせっちゃんたら俺の傍によく立ってる。
 ……ああ、もしかして僕警戒されてる?

刹那 「お、お嬢様は護るべきお方であり、せ、先生はその……
    振る舞いが堂々としていて、なんというか頼りになりそうな気がしただけで……」
中井出「いやいや、楽しいこと好きな俺が頼りになるとか。
    むしろ引っ掻き回しそうだよ?」
刹那 「ええそうでしょうね」

 わあ、すっぱり頷かれた。
 しかしむしろ僕はそれを誇ります。我が生き様よ、素晴らしくあれ。

朝倉 「まあでも、あの人数になんだかんだで好かれてるっていうんなら……
    その引っ掻き回しにも、意味があるって思っていいんだろうしね」
刹那 「ええ。まさにその通りです」
中井出「ウワー……」

 モノスゲー買い被られていた。
 僕、そんないい人じゃないのに。
 むしろ悪のほうが動きやすくて大好きなんだが……正義なんて大嫌いだ。

あやか「? さっきから何をゴニョゴニョと話しているのです?」
中井出「ラブラブキッス大作戦についていろいろと。
    えー、ルールはさっき説明した通り。
    武器は枕のみで、誰よりも早くネギにキスをすりゃいい。
    まあべつに定員はないから、したい人はしてもいいんだけど……
    ただし急に何人もの者からキスをされれば、
    小さくても英国紳士の彼は責任だのなんだのをいろいろ考えるでしょう。
    だから───」
あやか「《ごくり……》だから……?」
中井出「じゃんじゃんやりなさい。フォローはこの博光が請け負った」
総員 『イエーーーーーッ♪』
中井出「知っての通り上位入賞者には豪華賞品!
    例の如く新田先生他教師軍の口封じは済んでいるので、自由にやるように!
    ただし旅館内にはトラップが満載なので、それを掻い潜ってネギを狙うこと」
古菲 「《ギクリ》……トラップアルか」
楓  「中井出殿のトラップ……考えたくないでござるなぁ」
刹那 「辞退は可能……なのでしょうか」

 皆様が騒ぐ中、少しずつ声のトーンが下がってゆく“事情”を知る人たち。
 気持ちは解るがここで一緒に燥げんようではまだまだ下の下よ。原中的に。

明日菜「よーするに豪華賞品って仮契約カードでしょ? 私はもう持ってるし……アレ、
    口にキスしないとちゃんとしたの貰えないそうよ?」
古菲 「降りるアル!」《どーーん!》
楓  「むー、口となると少々抵抗が……いやしかし、
    10歳そこらの子供に対してソワソワするのも……」
中井出「くーさんはどうして?」
古菲 「アイヤッ!? ア、アー、その。ワタシ自分より強い男でなくては嫌アルヨ」
朝倉 「へー……じゃあ“中井出師父”にでもしてみる?」
中井出「フハハいいだろう出来るものなら試してみるがよいわ!」《どーーーん!》
古菲 「……無理アルネ、たとえしたかたとしても、捕まえられんアル」
朝倉 「アッハハハ、まあいいじゃないのさ。
    “了承”は得たわけだから、したくなったらいつでもOKってことで」
中井出「───アレ?」

 勢いで言ってみたけど、何故にそげなことに?
 ……しまった謀られたわこの博光ともあろうものが!!

中井出「ヌヌ〜〜〜ッ、い、いいだろう〜〜〜っ!
    だが本気を出したこの博光は究極に大人げないと知れ!」
朝倉 「……それって自分で言ってて情けなくない? せんせ」
中井出「え? なんで?」
朝倉 「わー……それが当然になってるんだ……ほんとヘンな人だ」
中井出「もちろんですとも」

 ヘンであることに誇りを持つ男……博光です。

朝倉 「そういえば……中井出せんせは実際、年齢的にはいくつくらいなの?
    フツーに私たちくらいに見えるけど」
中井出「四千ちょい。もしくは四千よりちょっと下くらい。
    体型年齢は貴様らに合わせてるけど、
    不老不死になったのはもうちょっと成長してある僕さ。
    えーと……ほれ、これが証拠写真」

 皆様がワイワイキャワキャワと準備のために自室に戻って行く中で、どうぞと写真を渡す僕。
 そこには18歳の僕と、あの夏の日に実年齢としてそこに立っているはずだった僕の姿が。

明日菜「《カァアア……!》い、意外……! 渋くて素敵……!」
木乃香「わー、かっこえーなーせんせー!」
朝倉 「こ、これは確かに意外……!
    18歳の方はどこにでも居るような平凡さがあるけど、
    あくまで平均であって逆に“悪いところ”もないのがまたなんとも……!」
刹那 「こ、これは……《じーーー……》」
楓  「ふむふむこれはこれは……」
古菲 「やさしい目をしてるアルネ」
エヴァ「…………」

 少しだけ照れが浮上するが、僕は負けませんよ? ……なににだろう。

中井出「さ。見終わったらさっさとお戻りめされい。
    スタートは部屋からで、標的はネギウスか俺。
    ニセモノも用意してあるから、そこんところは気をつけるよーに」
明日菜「ニセモノ?」
中井出「うむ。せっちゃんにもらった身代わりの紙型ってヤツで作った、
    ホンモノそっくりの物体。
    女性とみるやキッスをしようと襲いかかってくるので気をつけて」
古菲 「全力で近寄りたくないアルな」
中井出「用意されてるニセモノはネギのものだけだから、
    そんなに心配いらないとは思うけど……じゃ、あとは任せた」

 チャッと手を上げて逃走。
 さて、仕切りはカズPに任せるとして、俺は───ラーメン食いたくなってきた。
 京都ラーメンでも食いに行こうか。


───……。


 さて、そんなわけでラーメンを食ったのち、漫画とかでやってるみたいに爪楊枝で歯をしーしーと突付いていた僕ですが。
 戻ってきてみると、旅館内はカオスな場所と化しておりました。

ホギ 『チューーーッ!!』
千雨 「うぎゃああああ寄るな寄るな寄るなぁあああっ!!」
あやか「千雨さん!? ネギ先生を邪険にすること、この雪広あやかが許しません!
    というか代わりなさいいますぐっ!」
千雨 「それ以前に腕が伸びる教師を疑問に思えぇええええええっ!!!!」

 大量生産型ネギコピー、ホギ=ヌプリングフィールドが、ネギを探す女生徒へと襲いかかっておりました。
 それも、ところ構わずに。

ホギ 『チューーーッ!!』
ホギ 『チュチューーーッ!!』
ホギ 『チュゥウウウ!!!』
まき絵「ひえぇええ!? ネギくんがいっぱいぃいーーーっ!!?」
裕奈 「なにこれCG!? ってこらネギくんっ!? 数人がかりで女の子をだねぇっ!
    ……ややややっぱり数人だぁあああーーーーっ!!!?
    えぇええどうなってるのこれっ!!」

 枕での攻撃どころか、必死に抵抗しなければチスを奪われるような状況。
 危機には強い乙女たちはそれでもルールに則り枕でホギを殴り倒すと、紙型のホギたちが次々と爆発してゆく。

古菲 「鍛錬に丁度いいアルネ! ホアッ! ハチョッ! アイヤアイヤアイヤァッ!!」
楓  「結局参戦した挙句が紙型破壊でござるか。
    これだけ沸いて出てくるのであれば、戦い甲斐もあるでござるがなぁ」

 てゆゥかくーさんひどい。
 チュー!と群がるホギを掌底、手刀、蹴り上げ、崩拳、貼山靠を、ドボォッ! ズパァンッ! パガァンドボォンドガァンッ!! と華麗にキメ、次から次へと紙へと戻していっている。
 戻るよりも勢いが強すぎるため、大体が盛大に吹き飛んだのちに紙に戻るわけだが……ありゃひでぇ。
 で、お次は鳴滝姉妹の様子なのですが───

ホギ 『チューーーーッY』
ホギ 『チュウウウウウッ!!』
ホギ 『チューーーッ!!』
風香 「むぶぶぶぶっ!? ふむぶむーーーーっ!!」
史伽 「うわーーーーーーんっ!!?
    ネギせんせーが分身して壊れ《がばーーーっ!》きあーーーーーっ!!?」

 ……見なかったことにしてやるべきだろうか。
 抵抗虚しく数に押され、キッスの嵐です。
 さて、そんな中でひっそりと、だが確実にネギオリジナルに近づくのは……旅館内側ではなく外側の外壁を忍び行く、のどっち&ゆえっちペア。
 だが愚か。この博光が外にこそ何も仕掛けていないと思うてか。

のどか「《カチッ》……? ね、ねぇゆえー……?
    お尻になにか当たっちゃったんだけどー……」
夕映 「……? なにか、とは───、……!? トラップですのどかっ! 離」

 シュカァッ───
 ドォオンガァアアォオオーーーーンッ!!!!

 ……旅館の一角で閃光音爆弾が炸裂。
 10秒間の目眩ましと聴覚異常効果が得られます。
 え? 人体に害? ないヨそんなもの。
 ……あ、ちなみに僕は旅館の外で映像の式を解放、旅館内部をライブで眺めております。

中井出「さてお次は……おやエヴァちゃん」

 映像にて我らがキティを発見。
 誰かを探しているのか、きょろきょろしながら進んでる。
 ホギが襲い掛かるが、その顔面に拳を叩き込んで柔で叩き落すと、その顔面を踏みにじって高笑い。
 ……スプリングフィールドの血筋がよほどに嫌いに見える。同ペアらしいせっちゃんは戸惑うばかりだ。

エヴァ「なにをしている桜咲刹那、さっさとヒロミツを見つけるぞ」
刹那 「あの……何故私が……」
エヴァ「シラケるようなことを言うなよ。
    こういうものがあってこそ修学旅行だとヒロミツが言っていた。
    せっかくならばなにもかもを楽しまないと損だろう?
    ……さて……《スンッ……》───二時の方向に斬岩剣だ」
刹那 「? ───シッ!」

 せっちゃんが指示通りに斬岩剣を放つ。
 屋内でなんてことを───なんて言葉は出ません。
 なぜならばそこには僕が仕掛けたホギMk-IIが居たから。迷彩処理だったのに、見事鼻で見つけられてしまったよ。

刹那 「こ、これはっ……」
エヴァ「紙型に迷彩処理とは面白い工夫だ。
    もし普通に戦場でやられれば、
    実力の浅い者などホイホイ本物だと思いこんでしまう」
刹那 「術式処理が成されているのなら、
    騙される確率は高くなると……そういうことですね」

 うむお見事……と言いたいところだが、知るのだキティよ。
 この博光の迷彩は、ただの迷彩ではないのだ。

エヴァ「さらにヒロミツがこんなもので終わらせる筈がない。とくれば───まず下!」

 キティ、ジャンプ! 直後に迷彩トラバサミがガシャアンと空気を噛み、挟むものもなく合わさったことによって第二のトラップ発動! 通路の壁の一部が開き、そこから大仏枕が発射される!

刹那 「フッ!」

 しかしその全てをせっちゃんが夕凪の鞘で叩き落としおった!
 ゲハハハハしかし残念! それは“当たる”が正解だ!

刹那 「!? 煙が!?」

 人以外に当たった場合は煙幕となるイメージ付き枕さ!
 さらにその煙にはニンニクエキスと葱エキス配合!! ワハハハハ遊戯よ! この俺の最強コンボに苦しむがいい!

エヴァ「〜〜〜〜〜っ!! ヒッ……ヒロミツゥウウーーーーーッ!!!!」

 キティさんが激怒してらっしゃった。知ったことではないわ!
 さて、さらにその煙も吹き飛ばしたりすると発動するトラップコンボ付き。
 しばらく苦しんでいてもらいましょう。
 ……べ、べつに遊戯王カードゲームでトラップコンボくらったから、その仕返しをしてるんじゃないんだからねっ!?《ポッ》

中井出「さーて次は〜と」

 見てる分には面白いね、うん。
 と、これで大体アウトか? ……と思いきや、復活して行動に出るゆえっちのどっちペア。
 一方では楓殿とくーさんがホギを探して突き進む。……当然、トラップは正面から破壊。
 裏を掻くのが好きな僕としては、トラップに敢えてかかりに行く人対策はあまりしていない。
 そのため、むしろ楽々と突き進まれている……いかん、このままではトラップが全部潰される。

楓  「元気でござるなぁ古」
古菲 「考えてみたらなにもキスする必要なかたアル。
    ケド合理的に中井出師父と戦える好機アルヨ」
楓  「なるほど、狙いはそれでござるか」

 ……ほんと戦い好きだねぇこのお子は。
 だがその意気や良し。無事僕のところへ辿り着けたら外道の限りを尽くして……叩きのめしてくれるぜ〜〜〜っ!!


───……。


 ……ええまあ、そんなイベントがあったわけですがね?
 結局のところは一万二千のキティさんがブチギレて暴走。
 罠という罠を誘発させながら僕を探していた彼女がくーさんたちと遭遇、盛大なる枕バトルを始めたところからいろいろと狂い始めた。
 って、そうだよ。枕以外の攻撃を禁止してたのに、くーさんたら崩拳やら手刀やら使ってた。
 ハイ失格。

古菲 「《ガコォンッ!》ニョホ? ───……アイヤァアアアーーーーーーッ!!!?」

 コシュッと指を鳴らし損なうと、くーさんの足下がパカリと開き、落下。
 華麗にパチンッと鳴らしたかったけど、こんなの出来なくたって生きていけるもん。いいよもう。

中井出「えー、くー選手、枕以外の攻撃方法使用につき退場となりました。
    ちなみにさっきまでどうして落とさなかったのかといえば、
    ラーメン食いに行ってたからです」

 きちんとアナウンスを通すことも忘れません。モニタの中の皆様(特にキティ)がぷんすか叫んでおられるが、僕知らない。
 と、そうこうしているうちにネギウスの部屋へと辿り着くゆえっち&のどっちペア!
 ドキドキしながらもその手が扉へと届いて───

あやか「お待ちなさいっ! そうはさせません!!」

 ───雪広あやか参上!!
 ズシャーーアアアと滑り込んできた彼女の隣には、息も荒くところどころにキスマークを残したまき絵さん。
 どうやらあれらがニセモノだと判断できたようで、ホギワールドから抜け出してきたらしく、彼女らが奮戦していたらしき場には紙型が何枚か落ちていた。

中井出「さてと、そろそろ僕も内部へと侵入しますか」

 トラップ強化するのも面白そうだし。
 式を消していざ出陣!
 自分が混ざる時っていうのは様子が解らないほうが面白いってものさ!


───……。


 デーン……テンテーンテーンテーン……テケテーン♪
 デゲデデデデ、デゲデデデ……バシャァアアアアア!!

エヴァ「ぷわぁあっはあっ!!?」

 カタカタカタカタカタカタカタカタカタカタ!!!!
 ……ハイ、そんなわけで扉を開けた瞬間に頭から水を被るキティを確認、肩を盛大に揺らして迎えました。
 これぞスパイ&スパイ。
 そしてもちろん水にはニンニクエキスと葱エキス配合で

エヴァ「キィイサマァアアアアアアアッ!!!!」
中井出「キャーーーーッ!!?」

 通路の先で肩を揺らす僕を発見するや、彼女はツリ白目で血管を浮き上がらせながら襲いかかってきました。
 もちろん僕はそんな無邪気な少女を捨て置けるはずもなく、両手を広げて跪き、飛び込んでこーいと迎えたのです。
 そして放たれた拳をスッと避けると真正面からやさしく抱擁。「はぴぅっ!?」とよく解らん言葉を彼女が放った時には、M11型デンジャラスアーチは見事な虹を描いて彼女を大地に沈めていました。

中井出「若すぎる……遅すぎる……そしてなんと弱い……」
エヴァ「キ、キキキ、キサ、キササ……!!」

 さて。痙攣しているキティは放置するとして───せっちゃんが居ないね。
 それに楓殿も一緒だったはずだが───と、辺りを見渡したのがいけなかった。
 僕の足をきゅっと掴む手。見下ろしてみれば、仰向け状態のキティが震える手で僕の足を掴んでおり、ヤバイと思った時には我が足に烈海王でも倒れるほどの激痛が走る!!
 いわゆる三陰光圧痛をされたわけだが、倒れる僕目掛けてキティが拳を重ねようとしたんですよ。
 こう、倒れる速度と起き上がりの拳とを合わせて大ダメージを繰り出そうと。
 それが、本当にいけなかったんですよ。
 ニンニクエキスとネギエキスを散々浴びた彼女は、頭から床に落とされたこともありふらつき……拳を外してしまった。
 当然僕はそのまま倒れるだけであり、ハッとした時にはもう遅い。

刹那 「エヴァンジェリンさ───なぁっ!?」
楓  「……おお、これは」

 キティを追って走ってきたらしいせっちゃんと楓殿の前で、僕とキティは倒れた勢いのままに熱いヴェーゼを交わしたのでした。


───……。


 あとは予想通りだ絶対に。
 顔面をボコボコに殴られた僕と、「穢された……穢されたぁああ……」と生娘のように泣きじゃくるキティさんの図です。

中井出「あの……不可抗力って言葉、知ってる……?」

 通路の床に正座しつつ、頭に拳骨落とされたキティとユグドラシル内で頭を押さえて蹲るドリアードに言う。
 キティに殴られ自然に殴られ、ひどい目に遭った僕としましては、当然仕返しとばかりに殴りました。
 え? 女を殴るのは最低? ゴワハハハ吼えておるがよいわ差別主義者どもが。
 この博光とて唇を奪われた身。だというのに男ばかりが襲われる理不尽を返したまでのこと。

中井出「ひどく顔面が痛いですが、ネギも無事にのどっちに唇奪われたようだし……あ」
エヴァ「……? ど、どうした……?」

 ぐしゅりと鼻を鳴らしつつ、映像の式で様子を見ていた僕の肩越し、背中に抱きつくような体勢で映像を覗き込む。
 その映像の中ではチスをして真っ赤になるのどっちと、それを眺めてにこりと穏やかに微笑むゆえっちが。
 そんなゆえっちが、チスされても眠っている良い子のネギウスの寝顔をなんの気なしに覗こうとした───まさにその時!

ホギ 『チューーーーッ!!』
夕映 「!? ま、まだ残って《ずりゃあっ!》あわっ!?」
のどか「ゆ、ゆえー!?」

 バイオハザードのクロゼットゾンビのように、押入れの中から飛び出したホギに驚愕!
 慌てたためにネギが寝ている布団の端に足を取られてしまい、身を捻るように転倒。
 その唇が、どういう偶然なのか眠ったままのネギウスの口へとむちゅりと───

中井出「…………」
エヴァ「………」
刹那 「………」
楓  「…………」

 …………まあ。ネギま……だしね?
 ありえない体勢からのアクシデントなんて日常茶飯事だよ。

中井出「……寝ようか」
エヴァ「そうだな……」
刹那 「明日もいろいろ面倒がありそうですし……」
楓  「……ハテ。そういえば古は……」

 様々な思いを残し、僕らは部屋へと戻っていきました。
 もうね、ゆえっちとの戦いの最中にホギに唇奪われて、現在絶賛気絶中のあやかさんとかまき絵さんもそのまんまで。
 くーさんは……そういえばあの落とし穴ってどんな感じだったっけと考えて、そういえば転移魔法陣がついてて風呂場に飛ばされるんだっけと確認してから帰室。
 なんだかんだでスカカードと三つの仮契約カードを手に入れ、ホクホク笑顔なカモとカズPを前に、さっさと寝なさいと告げたのでした。


───……。


 さて朝です。
 情報によれば、今日はコタロくんが襲ってくるはずなんだが───っとその前に。

裕奈 「へーーー、これが豪華賞品かぁ」
風香 「あーー、見して見してーーーっ!」
夕映 (わわわわわ私はなんということを……! のどかが勇気を出して告白した相手に、
    しかも私の前にのどかがキスをした男性だというのにくくくくくちづけを……!)
のどか(えへへー、私のカード……大切にしなきゃー。
    ネギ先生とのファーストキキキキキスの証です、幸せー♪)
裕奈 「キスした人自身の絵がつくのかー、あちゃー、これは欲しかったなー……」
まき絵「あんなにニセモノが居たんじゃあどれが本物かなんて解んないよー」

 遠目に見る皆様方が、きゃいきゃいと騒いでおります。
 もちろん僕らは離れた位置できゃいきゃいと騒いでいるわけですが。

エヴァ「この場合私がマスターでお前が従者だろっ!?
    どーして私のカードが出るんだ!」
中井出「俺のほうが強ぇえからよ」《どーーーん!!》

 眉間に皺を寄せて顎を上げて軽い剥き歯で見下しつつ言ってやりました。
 その際、親指で自分を指差すのも忘れませ《パゴォ!!》……殴られました。

中井出「あたたたた……まったく無茶をする……。
    ま、ともかく。これで貴様と僕は並々ならぬ関係よ。
    俺はハーン! よろしく頼むぜ!」
エヴァ「さらりと偽名を使うのはやめろ……。
    まったく、こんなどんな効果が出るのかも解らんものを……」
中井出「試してみたら? ほれ、アデアットアデアット」
エヴァ「…………“来れ”(アデアット)」

 面白くなさそうにカードを構え、唱えるキティさん。
 そこからほんのちょっと離れた人垣では、ネギウスが明日菜くんに掴まってお説教をくらってました。
 何故って、そりゃあもうあれだけカードを作ればねぇ? ……本人はただ寝てただけだけど。

のどか(…………?)

 その時、僕らは気づかなかったのだ。
 気分が悪いと、人垣の中から離れた夕映ちぃを追って歩いてきたのどっちが、まさか離れた位置で聞き耳を立てていただなんて。
 ……いや、僕とキティは気づいてたけどね?

エヴァ「……“闇天月下の黒き魔女”(ヴェネスカラム・アラバ・ソリス)……?」
中井出「ふむ? 宝具はどんなもん?」
エヴァ「この黒衣だ。飛翼にもなり、“夜”の展開が可能だそうだ。
    これを身につけている場合に限り、結界や呪いに支配されずに能力を発揮できる。
    ……と、上手くいけばよかったんだがな。あくまで補助だ。
    力が復活するのではなく、この黒衣が力を担ってくれている。
    空も飛べるし魔法も使えるが、黒衣を脱げば能力もなにもない私の出来上がりだ。
    これは“さすがはヒロミツとの仮契約だ”と感心するところか?」
中井出「すげぇ……さすが俺」

 武具が無かったら能力発動できないなんて、まさしく僕の従者用のアイテムじゃないか。

エヴァ「だが悪いところばかりじゃない。魔力は貴様から延々と吸収出来るし、
    なにより───ほら、どうだっ!? 格好いいだろう!」

 バサァと黒衣を広げ、ワハハハハと笑ってみせるキティさん。
 く、悔しいがなんか格好いい黒衣を前に、僕はハンケチーフを噛んで本気で悔しがった。

中井出「よ、よこせ! コピーしてくれる!」
エヴァ「ハン! だめだな! これは私がもらった正当な豪華賞品だ!
    貴様にコピーさせる理由など微塵にもない!」
中井出「な、なんだってーーーーっ!!?」

 歯を覗かせながら笑う彼女はとても楽しそうでした。
 そしてそんなお子からカードを強奪し、「やめろー! やめろー!」と叫ぶ彼女の前でコピーを実行しようとする僕もとても楽しそうだった。

中井出「はっはっは、まあ冗談である。
    それよりも、せっかく仮契約したんだからもっともっと楽しまなければ」
エヴァ「お前は元々私の従者だろ!?」
中井出「なにを言う!
    この博光、誰の従者になった覚えもないわ! 寝言を言わんでもらおう!」
エヴァ「い、言っただろ!? 言っただろうが! 校務───ハッ!?」
中井出「グエフェフェフェ、そういうことだ小娘ェエ……!
    この博光は誰の従者でもなく、むしろ貴様が従者!
    そして貴様の従者は茶々丸と校務仮面のみよ! この博光ではないわ!」
エヴァ「だったらお前も私の従者になれよぅ!
    いちいち紙袋被らないと言うこときかない従者なんて私はいやだーーっ!!」
中井出「紙袋じゃない! 校務仮面だ!」

 とまあそんな子供みたいな喧嘩の脇で、のどかさんがアーティファクト出して驚いたり、それを夕映さんに教えて夕映さんも出して驚いたりといろいろありましたが───


───……


 ……結局はこうなるわけで。

エヴァ「はっはっはっはっは! 討ち下してやったぞヒロミツ!」
中井出「グギリギギギィイイイイイイ〜〜〜〜ッ!!!! かかか勝てねえええっ!!!」

 自由行動にとあるゲーセンにやってきた僕らは、班行動もシカトで対戦ゲームをしてました。
 強ぇえ……何気に強いよキティさん! なに!? もしかしてゲームの才能でもおありになるの!? まるで勝てる気がしねぇ!!

中井出「くそぅだったらカードゲームで勝負だ!」
エヴァ「いいぞいいぞどんどん来い! 再び貴様に涙を流させてやる!」

 続行してカードゲーム。
 そこで何故か5班の皆様とゲームをするネギウスくんを見つけたわけですが、腕試しにブチノメしてみたら周りのお子めらに「大人げない」と言われました。
 容姿はキミらと変わらんというのに大人げないって……いやいいんだけどね?
 ネギウスくんに勝つことで調子をよくした僕はキティと再戦! ───あっさり負けて泣きました。

少年 「……隣、入ってええか?」
中井出「ぬう!? よろしい! どこからでもかかってこーーーい!」

 途中、乱入してきた少年を全力でブチノメし、再挑戦を乞われる端から叩き潰し、大人げないと言われようが叩き潰し、がっくり肩を落としながら去ってゆく様に「悪は去った……」と外道発言をして鋭気を養いいざ再戦!! ───敗北!!

中井出「ち、ちくしょう勝てねぇえーーーーーーーっ!!!
    こっ……こここっこここの博光ともあろう者がぁあああーーーーーっ!!!
    だったらユーエフォーキャッチャーだ!
    金は俺が出すから、どっちが多く取れるか勝負だ! 小さいのが1点!
    フツーサイズが2点とし、大きいのが3点で巨大なものが4点!」
エヴァ「ふはははははは!! 逃げも隠れもせずに正面から叩き潰してやるよ!
    そらさっさと行くぞ!」
中井出「やらいでか!!」

 ユーエフォーキャッチャーに走り、一発キャッチを繰り返す!
 バカデカいもので点数を稼ぐよりも、小さいのでコツコツ! それがユーエフォーキャッチャーの常套手段!
 だが知りなさい。常套手段なぞを選ぶのは常識人のやり方。
 この博光にしてみればそれは逃げの一手よ! 漢は黙って巨大生物バトル!! いや、本当の巨大生物バトルは晦に任せるべきだけどね?

中井出「ギャアアアアアアアア勝てねぇええええっ!!!」
エヴァ「ほらほらどうしたぁ中井出先生?
    従者に勝てないとあってはマスターの名が泣くぞ? んん?」
中井出「ギッ……ギィイイイイイーーーーーーーッ!!!!」

 結局負ける僕が居た。
 何度やっても結果は同じで、お小遣い(給料の中の一部)を使い終えるまで続いたそれは、結局僕の惨敗。
 それでも一度もミスをしなかったそれら(ぬいぐるみやオモチャやお菓子)を5班の皆様に譲渡。
 僕は僕でパル姉さんとこのちゃんとせっちゃんがゲームに夢中になる中、のどっちとゆえっちが走っていったネギウスと明日菜くんを追う姿を───正々堂々、尾行開始!
 情報から得た原作内容とは違う展開を前に、首を傾げながらキティとともに走ったわけですよ。
 ああいや、肩車してるから走ったのは俺だけだね。


───……。


 結論から言おう。コタロくんが可哀想だった。

小太郎「女に守ってもらって恥ずかしいと思わへんか?
    だから西洋魔術師はキラ《ドボォッ!!》まろっ!!?」

 無限ループの鳥居地獄での戦闘。
 脇に逸れた場所で、夕映きちさんとのどかさんが戦いを見守る中、ネギウスくんは真っ直ぐ走ってただ掌底を放ちました。
 吹き飛ぶコタロ! 跳ね転がるコタロ! しかしすぐに起き上がると肉迫されていることに気づ───いた時には追撃崩拳を腹に埋められ血を吐くコタロ!

小太郎「かぺっ……!? ちょ、ちょい待てや……!?
    こんなんっ……! 聞いとらへんで……!」

 それからも無言の攻防が続き、一分が経とうとする頃にはコタロくんはぐったり夢気分でした。

ネギ 「どうだ! これが西洋魔術師(ぼく)の力だ!」《どーーん!!》
小太郎「いやっ……魔術、使てへんやろ……!」

 うん、使ってないね。
 のどっちも夕映きちさんも、子供先生の動きに唖然としてらっしゃる。
 ヒロラインでみっちり鍛えられたネギにしてみれば、コタロくんは雑魚だからなぁ……可哀想だけどこれが現実です。
 ……ちなみに今、ネギくんはヒロラインパワーを使用してはいません。
 純粋に鍛錬を積んだお陰で得た力と、その精神に追いつこうとする肉体とで底上げされたもの。
 くーさんに学び、キティに学び、ヒロラインに生きる意志たちに学んだ力は……コタロくん、残念だが今のキミが敵うものではないのだよ。

小太郎「ぐっ……まだや、まだやで……!《メコッ! メキメキメキ……!》
    こっからが本番や!!《シャキィーーン!!》」
中井出(おおっ!?)

 コタロくん、獣化! 邪魔な上着を破り捨て、ギラつく目でネギへと襲いかかドボォオッホォオンッ!!

小太郎『ゲホッ……!?』

 ……る、前に躍歩頂肘が減り込んでいました。腹ですね、ありゃ痛みで息出来んです。
 もちろん怯んだ相手にゃ容赦すんなと叩き込まれているネギくんです。無詠唱で右手に凝縮させた魔法の射手をそのまま───拳として一気に放つ!!

ネギ 「雷華崩拳(らいかほうけん)”!!」

 ドガォシャァアアーーーーッ!!!
 突き抜ける雷光! 吹き飛ぶコタロくん! というか余波で崩れる鳥居の数々!! こ、コタくん死んだーーーっ!?

のどか「きゃーーーーっ!!?」
夕映 「くぅうっ……!?」
カモ 『うわわわわわぁあーーーーっ!!?』
明日菜「し、しししし死んだーーーーっ!!?
    ちょちょちょっとネギ!? 加減ってものをーーーーっ!!」
エヴァ「うわぁあああ鳥居がぁあーーーーっ!!? ぼぼぼぼーや貴様!
    歴史ある建造物を破壊するとは何事だぁあーーーーっ!!」

 ネギの傍に居た明日菜くんやカモくん、博光の傍に居るのどっちゆえっちキティらが思い思いに叫びますが……こりゃひでぇ。
 鳥居巻き込んで破壊したお陰でループの呪符は燃え尽きたみたいだけど……うーひゃー、コタくん焦げてらっしゃる。
 ていうかほぼ死んでるね、虫の息にもほどがある。

中井出「…………」

 うむ。丁度気絶していることだし、コタくん拾って鍛えてあげましょう。
 原作ではネギに差をつけられてばかりだったからね、鍛えに鍛えまくってやる。
 差し当たり、京都イベント中はずぅ〜っと鍛錬に励んでもらうとしましょう。
 ではジュルリ……と。影を伸ばしてそのままダークセンチネルとアモルファスで飲み込むと、ヒロラインへとご招待。

中井出「うむ! ……さて、夕映きちさんにのどかさん?」
のどか「《ビクゥッ!》!? !?」
夕映 「な、中井出先生……!? あ、いえっ、これはその」
中井出「ああいい、言わんで結構。キミたちが見たもの全てが真実だ。
    そしてこの博光も、そちら側の人間。
    さらにたった今、キミたちもこちら側の人間となった」
夕映 「……では。やはりあれは“魔法”……?」
中井出「うむ。そしてキミたちに渡した豪華景品、それは仮契約カードといって、
    選ばれし者しか手にすることの出来ない魔法カードだ。今朝、もう確認したね?
    いどのえにっきと世界図絵、どちらも本のアーティファクト……だったかな?」

 情報から得た知識を口にすると、彼女らは驚いた顔をしたのちにこくりと頷いてくれた。

中井出「話が早くて大変よろしい。では二人には仲間の証としてこれを」

 ニコリと笑って、戸惑う二人にナビネックレスを。
 しかし当然というべきか、二人は警戒の色を宿した目で俺を睨むと、受け取る仕草も見せない。

夕映 「……状況確認を先決させてほしいですよ、中井出先生。
    まず1、貴方やネギ先生は魔法使い……これは間違いないですか?」
中井出「答えはNOである。ネギは魔法使いだが、俺はただの人間だ。手品師だけどね。
    理由あって、マクダウェルとネギのサポートをしている」
エヴァ「脅迫されてだけどな」
夕映 「……では2。アスナさんとエヴァンジェリンさんは───」
中井出「魔法のことを知っている。明日菜くんとマクダウェルには初日にバレてね、
    いやぁ本当に隠す気があるのかと叱ってやったくらいに暢気なもんだ」
エヴァ「火炙りにしてな」
のどか「ひぃいっ!?」
中井出「これっ! 怖いこと言わないの! 事実だけど」
のどか「事実なんですかー!?」

 事実である。
 だが自業自得だと言っておきましょう。

夕映 「では三つ目。これを知る者はいくらくらい居るですか?」
中井出「茶々丸さん、朝倉くん、このちゃんにせっちゃん、学園長にタカミチくん。
    瀬流彦せんせにガンドルフィーニくん、まあ……教師の大体は知っていると思う。
    しずなせんせや新田せんせなんかは知らないかもだけど。
    あ、幽霊のさよちゃんも知ってる。……と、こんなところだっけ?
    ああいや、美空っちも知ってるか。
    古菲に長瀬も知ってるし、龍宮や超も知ってる」
夕映 「……そこまで知られていて、オコジョにならなかったですか。
    むしろそこに驚きを隠せません」
中井出「美空っちと龍宮と超は、向こう側が知ってるだけであって、
    むしろネギたちは彼女らが知っていることを知らない。
    いろいろ複雑なんだよね、これでも。
    あ、仲間に迎える前にひとつ約束をしてほしい。
    魔法のことがバレたことが上の人間にバレると、
    ネギがオコジョになって強制送還されることになる。
    そうなることは彼にとって、生きる標を失うことに繋がる。
    だから、故意に誰かに魔法を教えるようなことは、絶対にやめてほしい」
夕映 「………」

 訊ねられるままにべらべら喋る僕を余所に、ネギくんたちはといえば……“消えた”コタロくんに戸惑ったり慌てたりの連続。
 この博光に飲み込まれたなど、夢にも思うまいが……うん、今は教えるべきことではない。
 ライヴァルとして立てるようになったら、改めてぶつけさせよう。それまでは鍛錬と実戦あるのみよ!

夕映 「では最後に。隠していたというのに、知った途端に全てを語るのはなぜですか?」
中井出「うむ。“俺には”隠す理由が無いし、仲間が多いほうがネギの助けにもなる。
    ヤツはまだまだ未熟よ。だからキミたちに見守ってやってほしいのだ」
のどか「え……で、でもー、さっきのネギ先生、すごく強くて格好よくてー……」
中井出「のどかくん。強いだけではつまらん。強いのと未熟なのとはワケが違う。
    今は自分の道へと力を使えているが、
    力を得る者が力に飲まれず進むことは“まず不可能”だ。
    俺は───俺はね。そうなってしまったネギを止められるキミたちにこそ、
    ネギの傍に居てほしいと思うよ」
夕映 「……私達ならば止められると、そう思う理由はなんですか?」

 おや? 質問が増えてる気が……まあいいや。

中井出「いずれキミたちは、ネギの過去を知ることになる。
    ネギ自身が話すだろうし、それはキミたちが考えるよりもずっと重いものだ。
    しかしな、夕映くん。仲間ってのはいいもんだ。
    キミたちがネギにとって大切な存在にならなければ、
    そもそも彼は過去を話さない。しかし話したからにはキミたちは大切な存在。
    そんなキミたちの声が、たとえ感情に飲まれようともネギに届かぬわけがない」
夕映 「───……随分……買いかぶられている気がするですね……」
中井出「買い被るの大好きですから」

 言った直後に本の角で殴られました。
 FFで学者がジョブに入ってたけど、ありゃ強いわ。だって痛いもん。
 はいはいキティさん、笑わない。

中井出「とまあそんなわけでだ。これ、受け取ってほしいんだけど。
    これが僕らの世界の扉を開くマスターキーとなります。
    その名も友情証明品“ギャバンの証”!!」
夕映 「いりません《きっぱり》」

 ひどく真顔な即答でした。

中井出「なに!? ではのどかくん! キミだけでも!
    これをつければネギくんがどういったことを考え、
    どういった鍛錬をしているのか!
    普段では絶対に見ることの出来ない世界が見れますぞ!!」
のどか「ネ……ネギ先生の、絶対に見れない世界……?《ぽー……》」
夕映 「のどかっ! 騙されてはだめですっ!
    思えばタダでそんなものを寄越すこと自体が既におかしいのです!
    だから《チャラリ》ってなにを勝手に首に下げてるですかーーーーっ!!?」
中井出「話が進まないからごねないの! ほらのどちゃんも!」
のどか「《ちゃらり》あっ……あ、え、えー? き、消えちゃったー……?」
中井出「視界の隅に妙な文字が見えるね? それを意識で押せばいろいろ解るからっ!
    そしてすまん、ちょっとこのちゃんたちに緊急事態発生!
    詳しい事情は中の人たちに聞いてくれ! 適役はえーーーと……ドリアード!
    キミに決めたーーーーーっ!!」

 有無も言わさずゆえっちのどっち両名を黒衣で飲み込みユグドラシルへ!
 僕はといえばネギたちより一足お先、ジークフリードを虚空へ寝かせてからキティを肩車し、跳びのるや各馬一斉にスタート!
 反応があるシネマ村へと一気に飛ぶのでした。


───……。


 グォオルヒヒィイイイインッ!!!

杉平健一「大暴れ、将軍!!」

 でげてーーーーーんっ!! デッ・テッ・テッ・テェエエーーーーーーーン!!!
 シネマ村ですよドドリアさん!
 借り衣装も借りずにすっかり大暴れ将軍な僕、博光がただいま参上!!
 え? キティ? キティはね……むこーのほうで劇に巻き込まれて、頬を緩ませながらも参加してるよ。そっとしとこーと思ったので、僕だけで探しに来ました。
 さーて……せっちゃんどこー……?

杉平健一「これ、そこの者」
ハルナ 「へ? なに───ってうひゃあああっ!?」
杉平健一「あれ?」

 後ろからみればゴキブリに見えなくもない姿にたまたま声をかけてみれば、それがなんとパル姉さん。
 ちなみに僕は今、カリユガンホースに乗っているために黒王号に跨ったラオウなみの高さに居ます。
 そんな人に声かけられれば誰だって驚くか。素晴らしいぜ杉平さん。

杉平健一「拙者、杉平健一と申す者。少々人探しをしているのだが……」
ハルナ 「うわー……せんせ、これホンモノ?」
杉平健一「ち、違う! 僕は先生ではなく杉平健一である!」

 そしていきなりバレました。
 どうやらこの博光では杉平さんの溢れ出す煮汁のごとき魅力を引き出せなかったらしい。
 カリユガンホースに触れようとするパル姉さんに待ったをかけて、地面に降りてから彼には走り去ってもらう。
 「放しちゃって大丈夫なの!?」と驚くパルさんには大丈夫の一言で十分さ!
 ……ちなみに溢れてやまないガンホースの炎は、黒をコーティングさせることで黒色の馬として演出してました。

中井出「で、パルちー、せっちゃんとこのちゃん見なかった?」
ハルナ「あ、うん。私もそれを追ってきたんだけどねー。
    気づけばゆえきちものどかも居なくなってるし、
    桜咲さんもこのかも走り出すしで」
中井出「ふぅむ……」

 殿様衣装はやっぱり乱闘殿様にしか似合わんか。と衣装を脱ぎつつ、その内側を武士っぽいものにしてチェンジ完了。

ハルナ「おおっ、新撰組っ!?」
中井出「いえ、はぐれ透波(すっぱ)です。ってそれじゃあ忍者か。ただの雇われ武士にございます」

 言いながら辺りを見渡してみるが……うーむ、それらしい存在は発見出来ぬ。
 ならば気配を探りましょうか。自然さん自然さん、僕に彼女らの居場所を教えておくれやす?

中井出「《ピキーーーン♪》見えたっ!
    《ダッ───ドグシャアッ!!》ギャアアアアアアスッ!!」
ハルナ「うひゃーーーーっ!!? せせせせんせーーーっ!!?」

 走り出した途端、江戸っぽい剥き出しの路上を駆ける馬車に轢かれました。
 だが大丈夫! 生憎このワシの武具は……強ぇえのよ。

声  「どうもーー、神鳴流で《コキンッ》うきっ!?」

 で、止まった馬車から降りてきた貴婦人の格好をした月詠さん。そんな彼女が彼女として確認されるより早く“ねぎま姉さん流首折り”をして黙らせた。
 ちなみにねぎま姉さんとは、浦安鉄筋家族に登場するサザエさんのパロディキャラである。
 血を吐き出して倒れる月詠さんはレッツシカトで、さあせっちゃんはと……

中井出「ぬ、ぬうう! こやつの所為で気配を見失ってしもうたわ!!」
ハルナ「いやいやいやいや焦るところはそこじゃないっしょせんせ!
    大丈夫なのこの娘!」
中井出「大丈夫! そのくらいで止まってくれるなら僕も安心だぜってくらいだよもう!
    ってゲェエエーーーーーーッ!!!」

 とか思ってたらやっぱり平気で、口の端から血をこぼしながらもパル子さんを捕まえてニヤリと笑う貴婦人さん!
 あ、でものろのろ起き上がるところを見ると、やっぱりダメージはあったのかな。

月詠 「さあおにーさん? この子と引き換えにお姫様を差し出してもらいますえー」
ハルナ「え? え? これって劇!? うわっ、ちょっと待って!
    私衣装とかなんにも着てないのにっ!」
中井出「じゃあパルさん、僕探しものがあるんで」
ハルナ「えぇええーーーーーっ!!?
    ちょっ……巻き込まれ劇やってるのにそれ無視していくの!?」
中井出「否! こうしたほうが演出が盛り上がると思っただけである!
    そんなわけで月詠さん? さっさとそのお子をお離しやす?」

 ニコリと笑みながら睨むが、当の月詠さんは目の色を変異させながらニヤァアと笑うだけ。
 ……なっとらん、邪悪な笑みというのはもっとねちっこさを含めてだね……。
 っとせっちゃん発見! 向こうも僕に気づいたようで、軽く目配せをするとこのちゃんを抱きかかえて疾駆!

月詠 「《ぴくり》……見つけましたえ〜〜♪」

 しかし、“ここから逃げる気配”を探っていたであろう彼女にとって、それは巣にかかった虫同然。
 用済みになったパル姉さんをトンと俺へ向けて押し出すと、早々に地を蹴った。
 もちろん俺はつんのめっているパル子さんを抱きとめ───ることもせずに追いかけ、べちゃりと倒れる音を聴覚に治めつつも走りました。
 外道に生きて4千年、博光です。

───……。

 で、舞台は正門横の日本橋に移るわけですが───ウワーイ、なんでここにこんなに見物者が?
 しかもそれを煽っているのが我らがいいんちょさんときますよ。

あやか「桜咲さん! おふたりの愛! 感動しましたわ! お力をお貸しします!」
刹那 「だから違うんですってばいいんちょーーーっ!!」

 どこでどう誤解を得たのかといえば、僕がシネマ村に着くより先にいろいろあったんでしょう。
 二人がギャースカともめる中で、日本橋の中央に立っている月詠は、協力しようとする生徒を蹴散らすために式紙を召喚。
 生徒たちに襲い掛かろうとするのを、仕方も無しに処理することに。

刹那 「中井出先生!?」
中井出「刹那殿! 雑魚はこの博光にお任せを! 貴殿は月詠を!」
刹那 「───はいっ!」

 言った途端にせっちゃんは地を蹴り、同じく疾駆してきていた月詠と激突。
 お芝居とは思えぬ刀捌きに観客たちは大喜びだ。
 さて───どうやら原作通り、ネギウスの紙型がこのちゃんをここから離してくれたらしいが、この群がる式紙たちはさすがに邪魔。
 ということで……ジークフリードさん、出番どすえ。

中井出「久しぶりに大暴れだっ!! いくぜ相棒!!」

 ゴシャンッ! と構えた巨大剣を手に、烈風で近づき悉くを斬り裂く!
 技らしい技など移動以外に一切使わず、ベルセルクのガッツさんが如くただひたすらに斬る! 斬る! 斬る!!

観客A「おおおっ!? なんだありゃ!
    あんなバカデカいもんを木の枝みたいに振り回して!」
観客B「しかも斬られたおばけが爆発して消えてるぞ!」
観客C「最近のCG技術はスゲェなぁ!」
ハルナ「おーーーっY カッコイイよ中井出せんせ! やっちゃえやっちゃえー!」
中井出「あーーーりがとぉーーーーーう!! つーかパルちゃんいつの間に!?」

 テコーンと歯を輝かせつつ、群がる敵を斬る斬る斬るゥウウ!!
 最近じゃあこんなことしてなかったから、いやぁジークも喜んでおります! ……歯ごたえがないとは言ってるけどね。

観客D「アレ見てアレーーッ! ホラお城の上! あんなところでも劇が……!」
中井出「ホエ? ってゲェエエーーーーーーッ!!!!」

 最後の一匹をトチュリと屠殺していると、観客さんが指差す方向に大きなお城。……の、上でなにやら追い詰められているネギウスくん!
 その前にはいつぞやのサル女とその式紙らしい弓を構えたカイブツが!
 って情報ォオーーーッ!! こんなことがあるなんて聞いてねぇぞコノヤロー! え!? なに!? 面白そうだから黙っておいた!? もっ……猛者どもてめぇええええーーーーっ!!!

中井出「ッチィ! せっちゃん!」
刹那 「っ……は、はいっ! 解っているんですが……っ!」
月詠 「あはーY 行かせまへんえー♪」

 橋の上で戦っているせっちゃんを促すが、どうやら月詠に梃子摺っているらしく、この場から離れるという動作を封じられている。
 ええい埒も無し!

中井出「刹那殿、横槍失礼する! そしてちぃと黙ってろヨミ!!」

 肉迫して刀を振るい続けるヨミさんに烈風で接近、その勢いのままに崩拳を繰り出し、吹き飛ばして黙らせる!
 即座に状況を理解したせっちゃんが地を蹴り、城の屋根上へと急ぐが───それを追うように懲りずに走るヨミさん!
 ってほんとしぶといな彼女! いい加減にせんとおいさん、冗談抜きでやっちゃいますよ!?

中井出「はぁ……“風塵縛封”(ふうじんばくふう)!!」

 再び埒もなし。
 建物の上をタタタンッと器用に駆け上り、城へと登るせっちゃんを追うヨミ。
 その姿を風が包み込み、球体となって上空へと飛ばす。
 さらにそこへと超圧縮の風の大群を召喚、衝突させること! これ即ち───

中井出「風塵(ふうじん)ッ……封縛殺(ふうばくさつ)”!!」

  キュボボガドンガァアッ!!!

 対象抹消秘奥義、風塵封縛殺である───!
 虚空に浮いたヨミさんは見事に微塵と消え、舞台から降りた……!
 ……まあ、転移させただけだけどね?
 とか暢気に思っているうちにせっちゃんが城の屋根の上で矢で撃たれたのが見えてオワァアアーーーーーッ!!!?
 スネーク! 応答しろスネーク! こんなの聞いてねーぞコラ! え? なに? やっぱり面白いから黙ってた!? テンメェエエエエエエッ!!!!

中井出「チィイイーーーーッ!!!」

 さすがのせっちゃんもあんな高い位置から落ちたらシャレにならん!
 左肩を射られて、意識遠のいてるっぽいし───ええい千里眼なんぞ使ってる場合にあらず!
 今転移でってオワァアーーーーッ!!?

中井出「ちょっ……このちゃーーーん!!?
    なんでキミまで飛び降りちゃうのちょっとぉおーーーっ!!」

 言ってしまえばこのちゃんを庇ったためにせっちゃんは射られ……勢いを殺しきれずに屋根から落ちたわけだけど、それを追って飛び降りるあなたの勇気は何億パワー!?
 って意識をヘンな方向に向けてないで!

中井出「ええいおいさん素直に驚いてしまったよ!」

 気を散らした所為で、発動させようとしていた月空力が霧散した。
 ならばと人器を解放! ジークフリードを彼女らの落下地点に投擲し、建物を貫いて飛翔するそれが彼女らが地面に激突するより速く辿り着いた時点で変換を発動!
 黒の黒衣となったそれで彼女らを受け止めるや、そのままユグドラシルへと転送して事無きを得た。

中井出「…………あー……もう」

 前略ルドラさま。
 この世界って案外、なんでも出来るような力があっても面倒なものですね。
 キミが世界を守るために“奔走してた理由”、なんとなく解った気がする。
 なんでも出来るからって慌てずに済むかといったら、案外そーでもないんだね……。
 まあ、だからってなんでも守ろうとする理由は解りはしないんだけどね?

中井出「さてと。あの猿女が……懲りておらぬと見える。
    一度コテンパンに───おや?」

 霊章を通して、ユグドラシルから反応。
 起きっぱなしだった黒衣を霊章転移で霊章に戻すと、「なに?」と内側から呼びかけるせっちゃんに問いかけた。




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