11/子は親の背中とか上下関係とか情けないところとかをしっかり見たり聞いたりして育つから子が居ない過去にだって注意が必要

 ───どうも、ネギです。
 修学旅行が終わって、麻帆良に戻ってきてから数日が経ちました。
 フェルダールで戦い方を学ぶ傍ら、西の長である詠春さんにもらった書物を解いて父さんの手掛かりを探しています。
 もちろん僕だけじゃあ解けないものもあるわけで、ギャバンの証で繋がった仲間であるみんなにも協力を仰いで、手掛かりを探すんですが───相談を持ちかけたその日、あっさりと夕映さんとのどかさんが発見してしまいました。
 貰った書物……麻帆良の地図に書かれた父さんの落書きのような文字、“オレノテガカリ”。それだけでした。

  ゴォオオオオオオッ!!!

ネギ 「わぁあーーーーーっ!!? 熱い熱いあつつつあぶぶぶぶっ!!?」
夕映 「ネギ先生、さすがに敵わないです! ここは退くべきで───」
ネギ 「で、でも父さんの手掛かりがーっ!」
のどか「ゆ、ゆえー! 次、右から来るよー!」
夕映 「くっ……フォア・ゾ・クラティカ・ソクラティカ!
    “大 気 の 風 よ 息 づ く 風 よ”(エレメンテ・アエリアーリア・ウェンテ・スピランテース)!
    “疾 く 来 り て 我 が 敵 よ り 我 を 守 れ”(キトー・アデウンテース・アブ・イニミーキス・メイス・メーデー・フェンダント)! “風 塵 結 界”(リーメス・アエリアーリス)!」

 で……その手掛かりなんですが、探検隊の血が騒いでしまったのか、夕映さんが是非私達だけで今すぐに行きましょう、と言いだしてしまいまして。
 押し切られるままに図書館島の奥へと来た僕らは今……

  ボファァアンッ!!

のどか「わっ、弾いたっ! すごーいゆえー!」
夕映 「ただの一時凌ぎです! それよりネギ先生、すぐに逃げるです!」
ネギ 「は、はいっ!」

 僕らは……僕らは今……

ワイバーン『ゴギャァアアォオオオッ!!!』
三人   『ピキャーーーーーッ!!!?』

 ……ワイバーンに襲われてました。




-_-/一刀

 まあ、あれだ。
 こうしてフェルダールの大地に降り立ったからには、いろいろとやることもあるわけで。

一刀 「そうそう。基本はもう出来てるから、相手の先の先を読むように───
    相手に自分の氣を付着させておくと、案外読みやすいぞ」
刹那 「は、はいっ!」

 “場が安定するまでは、魏呉蜀のみんなとは別の場所で鍛えること”と提督さんに言われ、ずっと才人と一緒にレゾンデートルで冒険をしていたわけだが。
 こうしてフェルダールに降りてからすることが、この少女……刹那ちゃんの鍛錬相手なのはどうしてなんだろうか。

刹那 「フッ───斬岩剣!!」
一刀 「敵が隙を作るまでは安易に技は使わない」

 振るわれる、氣を纏った刀───(夕凪だったっけ?)に向けて、氣を込めた左手を突き出す。
 十分な氣に纏われているソレは裂傷すら負うことなく、刹那ちゃんの一撃を吸収。
 右手に持つ黒檀木刀に装填、隙だらけの彼女にお返しする。

  ドガァアンッ!!

刹那 「くあっ!? ───っ……あ、づっ……! こ、これは……斬岩剣……!?」
一刀 「受けた力を返しただけだよ。
    何年も何年も練習して、氣の扱いと武術だけは多少の心得があるつもりだから。
    だから、先に言っておくぞ? 俺の左手はどんな攻撃も受け流す。
    左手で受けた力は右の木刀に装填されて、同じ力を振るえるようになる。
    ───“陽陰操氣法”(よういんそうきほう)。
    提督たちはそう呼んでる、二種類の氣を持つ天の御遣い流の氣の使い方だ」
刹那 「つまり、陰と陽の氣を……? そ、それはまるで───」

 カタチこそ違えど、反発するものを融合させて使う……咸卦法ではないか。
 彼女はそう言って俺の目を見た。
 俺はといえば───特別なにかすごいことをしている覚えがないから、苦笑してみせるしかない。
 磁石とは違うから同じ極……たとえばS極を陽とするならば、陽と陽が反発し合うこともない。
 むしろくっつき増幅されて然るべきだが、逆に陰と陽は反発し合う。いわゆる光と闇だからだろう。
 それを自在に操れるようになるまで途方もない時間が必要だったのは、まあ言うまでもないんだが、自分を高めることが必要なことだったために、それが特別だったなんて自覚は全然無かったりする。

刹那 「そんなすごい奥義を平然と……あ、貴方はいったい……」
一刀 「あ、ちょっと待った。
    じいちゃんの教えに従い、俺が学んで俺が振るう流派に奥義の二文字はないよ。
    唯一をあげるなら、学んで鍛えたこの五体こそが奥義だ。
    だから、こんなものは奥義でもなんでもない。ただの錬氣のひとつだよ」
刹那 「…………《ぽかーん……》」

 待ったをかけてまで言ってみせると、少女はぽかんと口を開けて動かなくなった。
 そう、特別なことはなにもしていない。
 ただ守るため、笑顔のためにと鍛えてきた。
 俺も、他の外史の俺も。もちろん違う意識のヤツも居たが……どれも俺だ、統一されてからはその意識も一つになっている。

一刀 「ああ、じゃあ刹那ちゃん。
    その奥義を常に斬撃に織り交ぜられるように鍛えていこうか」
刹那 「えぇっ!? お、奥義を……ですか!? 全てに!?」
一刀 「そう。大丈夫だって、ここでなら時間はたっぷり取れるし、
    俺じゃなくても付き合ってくれる人は山ほど居る。
    今、ネギが晦や弦月やエヴァンジェリンと一緒に鍛えてるようにさ。
    ……まあ、逆に小太郎を俺と才人と提督さんでってことになってるんだけど」
刹那 「え? ……あの、最後がよく聞き取れなかったのですが……」
一刀 「あぁははっ、いやいやなんでもないなんでもっ! うんっ!
    じゃあ続きだ。まずは氣の底上げから始めようか。
    刹那ちゃんは人間と鳥族のハーフだって聞いてる。
    刹那ちゃんとしてはそれは嫌なことなのかもしれないけど、
    逆に言えば人と鳥族の能力を二つとも使えるってことだ。
    それは提督さんも太鼓判を殴り壊して認めさせたいとか言ってたから、大丈夫」
刹那 「え……ととさまが?」

 …………ととさま。
 最初はなんていう呼び方させてるんだとツッコんだものだが、なるほど。
 目の前で“ととさま”なんて言われたら、クるものがあるのは俺も解る。
 丕も子供の頃はよく俺のことを「ととしゃま〜」って……!
 それが物心ついたら、母親に似たのか人の失敗にとことん目を光らせる娘になっちゃって……。

刹那 「……? あの?」
一刀 「え? …………あ、あぁあごめんっ、ちょっと子供のこと思い出してたっ」
刹那 「子供……? 見たところ学生のようですが……」
一刀 「いやいやなんでもないなんでもないっ、忘れてくれていいからっ!」

 ヒョンッと振るった木刀を構え、続きをと促す。
 修学旅行から戻ってはやどれくらいなのか……ここで過ごしていると、外の感覚が解らなくなるから困る。

刹那 「では───いきますっ!」
一刀 「ああっ! ───覚悟、完了!」

 学校行事っていうのもまた懐かしい。
 今頃提督さんたちはなにをやっているんだか───




【中井出博光/愉快なる日々よ】

 ヴォオリングというのをご存知?
 実はこの博光、あまりやったことがなかったりする。
 玉を転がして棒を倒す……それのどこが面白いのかを掴む前にやめちゃったからね。
 だから今こうして、何故か僕の金でボーリングしに来ている生徒たちとともに、実際にボーリングを体験しているわけであります。
 もちろん、その面白さがどこに存在するのかを確かめるために。

中井出「優雅に───そして力強く!」

 キュッと持ったボーリングの玉を、滑るように滑らかに転がす!
 するとゴロゴロというよりはゴオオオと音を立てて滑る玉が、左端のピン一本を倒して奥の闇へと消えた。

中井出「素晴らしい……」
ハルナ「いやいやせんせっ!?
    これは倒しづらいものを倒して喜ぶものじゃないからっ!!」
中井出「ええっ!? 違うの!?」

 しかしさすがは学園都市。
 まさか敷地内にボーリング場があるとは思わなんだよ。
 ぬら様ってもしかしなくても相当な金持ち?
 なんて思いながら、隣のレーンの小さき彼女を見やる。

エヴァ「あ、あー……ここに指を入れて、転がして、あの棒を……」

 なんぞぶつぶつ仰ってる。
 そして覚悟を決めたのか、クワッと目を光らせると───

エヴァ「てやぁああああああああっ《すぽーーーんっ》はわぇっ!?
    うわぁああーーーーーーーーーーーっ!!!」

 振り切った手が穴から離れず、玉の重みに振り回されてレーンを滑走していった。
 さすがに漫画みたいに玉が出てくるところから救出されるわけもないので、春菜さんのカードを解放、影縫いでキティの影を縫いつけて事無きを得た。
 救出されたキティが物凄く悔しそうだったのは、言うまでもない。

中井出「うーむ……すぐに能力が使えないのは痛いなぁ」

 カードを引き出さなきゃ万足に使えん。
 それに、前までは多少は平気だったけど、武具たちが眠りについてる状態。
 だから武具から能力を引き出すことが出来なかったりする。
 意思、というか自然の声を聞くこととかはまだ出来るんだけどね。もちろん武具の声も。
 それ以外の能力が悉く……いや、器詠の理力と人器は未だ使えるんだけどさ……えーと……ヌムー。

中井出「そーいやネギとのどっちと夕映きちは?」
ハルナ「んん? なんか朝から居なかったんだよね。何処に行ったのか知らないけど」
中井出「そか。せっかくのおごり祭りなのにもったいのない」
ハルナ「あっはははは、だよねーっ!」

 ともあれ投げる。
 転がして、全部を倒せばいいとのことなので。
 しかし悲しいかな、武具と意思疎通する以外に才能の無い僕は、ここでも大失敗ばかり。
 ああっ、皆様のくすくす笑いが胸に痛いっ……!

エヴァ「……なんだ、お前も出来ないのか」
中井出「ヌ? おおマクダウェル。いやいや甘く見てもらっちゃあ困る。
    この博光、テレビゲームといわず、ゲーム全般では無双と言われた猛者よ!
    パイロットウィングスではまず彰利に負けたけど。
    こんなもの、僕が本気を出せば一発ストライクさ!」
エヴァ「ほう? では勝負だヒロミツ。どちらが先にピンを全部倒しきるか」
中井出「望むところよ〜〜〜〜っ!!」

 こうして始まった無駄な対決。
 しかし僕らは本気だった! パルちーがカズP(ややこしいから朝倉でいいや)と結託してトトカルチョを開始しようが、本気だったのだ!
 本気だったから───

エヴァ「おおっ! 見ろ茶々丸っ! 五本倒したぞ!
    幸先がいいな……ヒロミツ、お前はどう───」

 ブンッ───バゴシャゴガンガランッ!!

中井出「ストライ〜〜〜ク♪《ニコッ……!》」

 投げたボーリングの球でピンを全部ブチ倒し、僕を見るキティにVサインを───

エヴァ「たっ……玉をサイドスローで投擲する奴があるかぁあああっ!!
    見ろっ、ピンが粉々じゃないか!!」
中井出「なに言ってんだよマクダウェル。ルールは玉でピンを倒すことだろ?
    ほら、ちゃんと全部倒れてるし」
エヴァ「粉々なだけだろうがぁああっ!! お、おい早乙女ハルナ!
    この勝負、私の勝ちだな!? あれはどう見ても反則だろっ!?」
中井出「甘いわ! 勝負とは非情……!
    言葉通りのルールに則っていれば、勝ちは勝ちなのだ!」
エヴァ「ななな納得がいくかぁああーーーーーっ!!
    いいっ! だったら今のは無効だ!
    私だって投げれば簡単にストライクが出せること、教えてやる!」
中井出「望むところだマクダウェル!!」
明日菜「まままま待ったぁああーーーーーっ!! なにやってんの中井出先生!
    怒られるどころじゃなくて弁償させられますよっ!?」
中井出「任せておけ明日菜くん。たとえ核を撃ち込まれても、この博光が守ってやる」
明日菜「撃ち込まれないようにする努力をしてほしいんですけどっ!!?」

 程なく、店の人に追い出されました。
 気絶させて遊びこもうとしたけど、さすがに皆様に止められては仕方もなし。


───……。


 学園に戻ると、ボロボロになったネギ、のどっち、夕映きちが発見された。
 なんでもワイバーンと戦ってたらしい。
 とりあえずヒロラインとは違い、生き返れないことの恐ろしさをみっちり教えるべく説教。
 それが終わると翌日、さらに翌日と遊びまわったり授業したり。
 学園生活もこれで楽しい。僕もヒロラインと教師生活とを存分に楽しんでます。
 馬鹿レンジャーの面々がヒロラインを遊ぶ限り、彼女らの勉学での失態は許されない。
 何故って、勉学で遅れを取れば、冒険には出られないから。
 みんな必死になって勉強して、知識を高めていらっしゃるよ。
 とまあ、そんなとある日々のこと。

まき絵「ネ、ネギくん……二ノ宮センセが私の演技、子供っぽいって……」
ネギ 「そんなことありません! まき絵さんにはまき絵さんの良さがあります!」
中井出「そうだ!」
エヴァ「その通りだ!」
明日菜「よく言った!」
まき絵「え? あ、あの、中井出センセもエヴァちゃんもアスナも、いつの間に……?」

 日々というからには今日だけに限らず、ボーリングはもちろん、みんなで燥げることはとことんしました。
 遊びってやっぱり大事だ。
 ヒロラインもそりゃあステキだが、こういった場でしかできないことってやっぱりあるし。

中井出「そんなことはどうでもヨロシ!
    演技が子供っぽいというのならば、大人の迫力を見せれば良いわ!
    えーと……今からリボン回すから、よく見ててね? んー……《クワッ!!》」
まき絵「ひえっ!?《ビクゥッ!!》」
明日菜「うひゃっ……!」
中井出「───どう!?《ニコッバゴシャア!》ボッシュ!!」
エヴァ「殺気を込めることの何処が大人の迫力なんだ!!」

 早速殴られましたが。
 う、うーむ……僕らの世界じゃ迫力=殺気みたいな感があったんだが。

中井出「うーむ、しかし迫力ねぇ……よし。まきちゃん、ちょっと演技してみてくれ」
まき絵「えーーっ!? そんなのダ───」
中井出「ダメだやれ」《どーーん!》
まき絵「えうっ!? は、はははいー……」
明日菜「先生が脅迫してどーすんですかっ!?」
中井出「し、失礼だな明日菜くん! これは脅迫じゃなくて強要と言ってだね!」
ネギ 「どっちも似たようなものだよっ! もうヒロミツはっ!」
中井出「い、いいじゃんかよう! どーせ貴様らも見たかったくせにっ!」
明日菜「うっ」
ネギ 「そ、それは……」
中井出「というわけでほれ」

 言いつつ、リボンを渡す。
 どこから出したか、なんて質問は……トリッシュ、いつの間にか着ている黒衣に訊いてください。
 と、そんなわけで演技をしてくれたわけだが……

まき絵「え、えと……どうだったかな」
明日菜「パンツが丸見えだった」《どーーーん!》
まき絵「そういうこと訊いてるんじゃなくてぇええーーーーーーっ!!!」
明日菜「あ、あぁああごめんごめんっ!
    恥ずかしくないのかなーとか思ってたら自然とっ!」
まき絵「う、うぅう……ネギくん、中井出センセ、み、見た……?」
中井出「うむ。演技は中々のものだった。中学でソレって、上手いんじゃない?」
ネギ 「はいっ! 全然よかったですよっ!
    僕新体操のこととかよく解りませんけど、とってもよかったです!
    もっと自信を持ってください!」
まき絵「えうっ!? や、あの、それもそうなんだけどそのー……パパパパンツ……」
中井出「む? 見たが……なに?」
まき絵「な、なにって」
エヴァ「無駄だよ佐々木まき絵。
    こいつは自分が好きにならなきゃ恥じらいとかはどーでもいいんだ。
    たとえ裸の女が居ようが、自分が好きじゃあなきゃ欲情もしない」
まき絵「…………紳士だ……」
明日菜「紳士だ……」

 つーか聞いてたの? あの時の言葉。
 ともかく迫力がないと言うのなら特訓あるのみよ。
 僕はマキエーさんの頭をぽむぽむと撫でつつ、これからの方針をいろいろと説明していった。
 よーするにニッコニコしてるから、そこが子供っぽいって思われてるに違いねーと。
 だからキリッとしながらやることを皮切りに、動きのひとつひとつにもこう、圧倒させるような雰囲気を。


───……。


 で、後日選抜テストを合格したという報せを受け、ネギウスに抱き付くマキエーさんの姿を発見。
 その頃には微弱ながらラヴオーラを感じたので、これはこれでOKと僕も頷いたのでした。

中井出「プラクテ・ビギナル〜〜……目よ、大きくなれ(ケント・デリカット)!!《クワッ!!》」
エヴァ「アール・デスカットだ、ばか」
中井出「うーむ。やっぱ俺には才能ないなぁ。魔力のまの字も充実せん」

 現在の僕が何をしているのかといえば、ヒロライン内の上空、飛行するエーテルアロワノンの天井を開いた砲台広場で魔法の練習。
 って言っても、適性があるかどうかを調べてみただけであり、結果はマイナス値。
 貴様はどれだけ練習しても、貴様自身だけでは魔法を使えんよって確認が取れた。

エヴァ「こうまで才能に恵まれない人間も珍しいな……。
    普通、努力すれば天には届かなくても多少は力をつけられるものだが」
中井出「それってつまり、ヒロラインでもなけりゃあ俺って、
    一生かかっても凡人以上にはなれなかったってことね」

 しかもその凡人の中でも下の下とくる。
 いや、それはそれでギャップがあるから嬉しいんだけどね?

エヴァ「しかし、空を飛んでいるのにあのデスゲイズとかいうのは来ないのか?」
中井出「飛空艇に乗るか、よっぽど近づかなきゃ襲ってこないさ。
    ストームドラゴンも縄張り意識を持ってるから、
    縄張りに近づかない限りは襲ってこない」
エヴァ「そうなのか……まあ、今となってはどーでもいいけどな」

 含み笑いをするキティが怪しかったんだけど、なにやら嬉しそうだったしほっとくことにした。
 と、そんな中で……浮遊するところを見てみたいと燥いでいたネギ一行は、魔導砲発射台……要塞の中でももっとも外側に飛び出ている部分に集まって、なにやらやっていた。
 あー……時期的なものを考えるに、ネギの過去の映像かな?

中井出「マクダウェル、今ネギが面白いことやってるみたいだから、見に行かん?」
エヴァ「なに? ───……あれはシンクロの魔法陣か。ということは───」

 ニヤリと笑い合い、レッツ記憶訪問。
 砲台広場から直接飛び降りるようにして、僕らはネギウスの記憶を───隠れていどのえにっきで覗いているのどっち、夕映きち、パルちーの傍へと降りた。
 しかしながらこれでは絵日記では迫力がないってことで、レバイアタンのカードを解放、映像の式を描いて記憶の映像を展開したところで、外のメンバーもぞろぞろと集まりだした。


───……。


 ……うむ。
 間近で、というか実際に映像としてみると、なんとも惨たらしい事態よ……。
 これを小僧が受け容れるとなると、相当な苦しみや歪もあっただろう。
 なるほど、闇の魔法も受け容れられるわけだ。

中井出「石化はしても、死者がないのが救い……なのかねぇ」

 生きてる限りはいつかは助けられるって、多少の救いはある。
 ……死んだ命は死んだ命だ。たとえ助けられる能力があっても、助け続けるわけにはいかない。
 月操力は便利だけどね、死者を蘇らせることだけは、俺は絶対にしないだろう。
 そんなことを、感動しつつネギを囲む皆様を見ながら思った。
 と───そんな中で、一歩を歩んで一冊の本を片手に皆様に声をかける人が一人。

エヴァ「ぼーやたち。記憶の干渉ついでに、いいものを見せてやろうか」

 キティである。
 いーものってなに? と思いつつ、その手に持った本をチラリと見てみれば───マア!

中井出「……な〜るほど、だから“今となってはどうでもいい”だなんて」

 強行したんだろうか、自力で辿り着いたんだろうか。
 どちらにせよ時間はたっぷりあったんだ、一万二千レベルもあって、取りにいけない場所でもない。

ネギ 「師匠(マスター)、それは?」
エヴァ「“創世の猫”。中井出博光が生きた全ての歴史が記された、一つの歴史書だよ」
ネギ 「ヒロミツの……? それって───」
ハルナ「見たいっ!!《ギュピィーーン!》」
朝倉 「それは見るべきでしょ!」
木乃香「ウチも見たいーーっ♪」
刹那 「あ、あの、私も……」
のどか「ゆ、ゆえー、どうするー……?」
夕映 「一応ネギ先生との関連性も気になりますし、見るべきかと……」
明日菜「エヴァちゃん、是非見せてっ!」
エヴァ「エヴァちゃんとか気安く呼ぶなっ!《ひょいっ》あっ、こらっ!」
古菲 「フムフム? 創世の猫……アルか?」
楓  「猫の物語でござるかな?」
茶々丸「興味があります」

 燥ぎ始めるとほんと止まらないね、このお子めらは……。
 でもまあ、手に入れることが出来たなら僕が止める理由は無ッシャブル。
 存分に堪能してもらいましょう。一応、コタくんにも映像を送ることも忘れずに。

エヴァ「……見るって言うのは勝手だけどな。ただし、相当にツライぞ。
    半端な気持ちで見ることは……同胞として、私が許さん」
ハルナ「同胞? えーと、たしかエヴァちゃんって……」
朝倉 「えぇっ!? 中井出師父って吸血鬼!?」
エヴァ「どーでもいいから覚悟は決めておけって言ってるんだ。
    お前たちが足を踏み入れた世界がこれほど危険だとは言わないが、
    もしかしたならこういった未来もあるかもしれない。
    そういう世界を、お前らに見せてやる」

 僕が頭をコリコリ掻きつつ生えさせた樹のテーブルに、コトリと“創世の猫”を置くキティ。
 僕はその本に手を伸ばして、精霊たちと一緒に纏めておいた仕掛けを混入させる。
 名前は創世の猫のままだが、内容を増幅。しかし全てを見るために必要な時間はほんの少しと。
 中身は“軸”であるSpringHazeからFutureまで存在し、“イフ”であるFortuneDreamからWind&Windowまでを記したもの。
 さらにはSolitudeDiaryから今、俺が立っているこの世界までを辿る物語とする。
 タイトルは適当に決めてもらったものだ、俺がつけたものじゃない。

中井出「マクダウェルの言う通り、これはちょっとどころじゃなく相当にキツイ。
    人間の汚いところとか残酷な描写とか、異常って思えるくらいに存在する。
    見せられない部分だけはどうあっても省かせてもらうけど、
    これは俺達が生きた証だ。
    見るか見ないかはお前たちに任せるけど、これだけは言っておく」
全員 『……《ごくっ》』
中井出「……トイレ、絶対に済ませておきなさい?」

 ───……僕は当然の注意をした。
 したんだよ……なのに殴られました。全力で。


───……。


 さて、ともあれ始まった僕らの世界の歴史。
 まずはホギーや蒼木くんらの歴史、スプリングヘイズから。

ネギ 「あ、最初は穂岸さんなんですね」
エヴァ「ヒロミツの歴史だけじゃないのか……
    こいつの馬鹿げた詠唱速度には疑問があった。その正体を見させてもらおう」

 エーテルアロワノンを大きな膜が包み込み、一つの真っ暗な空間を作る。
 遮蔽物を一切無くしたような虚空だ。下を見たって暗闇しかない。
 そんな場所に、ホギーが経験した世界の景色……稲岬町が映し出され、まるで自分らがその場に居るように辺りを見渡した。

明日菜「ネギの時と違って、裸じゃないのね……あはは、よかったー」
ネギ 「ううっ……ごめんなさい」

 そんな会話も気にせず、景色は流れる。
 幼年期にやってきた謎の少女フレアのことや、妹が死んだこと、両親が嫌いで必死に勉強して遠くの高校に受験、一人暮らしを始めたこと。
 そこでサクラやノアと出会い、蒼木と会って友達になって、ウィルスに侵されて桜の樹になって。
 同じ歴史の数だけをこの目で見ているのに、過ぎるのはあっという間だ。
 そののち、サクラが天界に戻った瞬間や、郭鷺悠季美に宿ったノアのこと。
 様々を映し、舞台は冬───閏璃凍弥の歴史、プロミスへ。

エヴァ「この時点では魔法のまの字もなしか……」
明日菜「やっぱりアレ? この世界で鍛えたのが原因なのかな」
ネギ 「あ、いえ、いろいろあって思考が精霊寄りだって言ってましたから、
    桜の樹になったことにも原因があるのかも───」

 最初からやんちゃ満載のクソガキャア。それが閏璃凍弥。
 相手をからかうことに生き甲斐を持ち、子供のまま大きくなったような男。
 特に誰かが死ぬ過去も持たず、高校まで生き───しかし、そこで幼馴染を事故で亡くす。
 大人になってから約束の教室に行くことで、かつてを後悔する彼だったが、そんな涙もいつかは───そんな物語だった。

ハルナ「あのお姉さんの強さ、ちょっと一般人としては異常じゃない?」
古菲 「あれくらい鍛えれば簡単アルヨ」
楓  「自分を基準に置いての判断は濁るだけでござるよ、古」

 さて、やってきちまいました秋、ルナカレンダー。
 きっちり晦の幼少時代から始まるわけだが、うわー……しっかり僕が居る。
 散々騒いだりしてエロマニアの声援を欲しいままにした僕が……

刹那 「その。本当にエロマニア、と呼ばれていたんですね……」
中井出「ほっといて……お願い……僕もう泣きたい……」

 お恥ずかしい。きっと今の僕は顔が真っ赤です。
 い、いや、それより続きだ。
 歴史の通り十六夜逝屠に一家を惨殺されるわけだが、この歴史では晦が助けに入ることはない。
 これはあくまで“歴史通り”の世界だ。
 晦の姉が生きていた歴史ではないし、彼はこののちに十六夜に引き取られ、そこでも一家心中に遭う。
 その前に彰利と弦月屋敷の前にある約束の木で出会い、喧嘩を。
 一家心中からはルナ子さんに助けられ、契約をして記憶を封印してもらい、創造の理力を得る。
 あとは……まあ、本当にいろいろだ。
 中学に上がって僕と出会い、迷惑部を作って一緒に騒ぎまくって。

ネギ 「ああっ、これで提督って言われるようになったんだっ」
朝倉 「へー、なるほどねー!」
エヴァ「しかしこの頃は率いているというよりは、振り回されている感が強いな」
中井出「フツーの中学生になに望んでんのキミ」

 中学を卒業して、俺達と別れ、腐った高校生活へ。
 ルナ子さんとの再会、セレスさんやらとの邂逅、ゼノとの衝突、無限地獄の開始。
 つくづく親友な二人の物語りを描き、秋が終了する。

ハルナ「いいねぇ、深いねぇ……!」
ネギ 「ていうかゼノさんって最初敵だったの!?」
中井出「うむ」
明日菜「え、あの……彰利さん、死んでるんだけど……!?」
中井出「全部見れば納得出来るから」

 続いて夏、マサキチくん物語りのサマーデイズウィンド。
 閏璃凍弥の話の続きということもあって、皆様はぐぐっと目に力を込めたような気もする。
 振り返ってみれば日常的なものが多く、突然の居候との生活から始まったそれは、幼い頃に出会った相模ってクズ野郎との因縁を見せつけるものだった。
 かつて由未絵っちを轢き殺した男の息子に恋した幼馴染の涙、なにも出来なかった少年の悔しさ、そういったものを描き、最後には別れと再会を。
 まさかここでウルーリィが死ぬとは思わなかったのか、やはり皆様騒然。

古菲 「いったいここまでで何人死んだアルカ!?」
ネギ 「穂岸さんの妹とフレアさんと、レイチェルさんとノアさんと穂岸さんと……」
中井出「いーから黙って見なさいってば」

 舞台は春夏秋冬へ。
 ここで様々な季節の物語りが交差する。
 過去から現在にかけて、月の家系のことや天の世界のこと、そして空界からの来訪者のことから未来のことまで、様々と。

ネギ 「これが悠介さんと彰利さんの……」
エヴァ「血の中の死神か……なるほど、強いはずだ」
のどか「あ……この景色……」
夕映 「なるほど……だからここで、死んだはずのツンツン頭さんと出会ったわけですね」
明日菜「秋の物語りの疑問が解けた……すごいね、親友って……」

 考えてみりゃあ、みんながみんな重い過去背負ってたりするんだよね。
 彰利や晦、ゼットとかみさおちゃんあたりはかなりだ。
 彰利は無限地獄、晦は一家惨殺&一家心中で、ゼットは狭界の魔物に引きずり込まれて、生きるために竜化。戻ってくるきっかけが好きな人の生贄って事実で、みさおちゃんは実際生贄だし楔だしで……。

エヴァ「……? これで終わりか?」
中井出「んや。これから今見た物語りを軸にした“イフ”が始まる。
    別の時間軸での俺達が生きた歴史だな、つまり。
    ……っていっても、このイフのほうの我らが今ここに居る我らなわけだが」
茶々丸「……つまり、時間軸の中でもっとも繰り返しが多い歴史を“軸”と呼び、
    奇跡的に様々なものが解決に繋がった歴史を“イフ”と呼んでいるのですね」
中井出「おお茶々さん、まさにそれっ!」

 というわけで、始まりましたフォーチュンドリーム。
 これがまた結構辛くてね……是非ともヒナちゃんやフレアちゃんとは会ってみたかったが……こればっかりは上手くはいかない。

ネギ 「……あれ……? この景色……」
ハルナ「フューチャーの中で、凍弥少年が見た幸せの夢と……同じ……?」
中井出「そ。全部夢だったんだ。妹が生きてた現在も、知り合った子が生きていた現在も。
    掻き集めた奇跡の魔法を使うことで起きた、最後の奇跡。
    時間軸を越えるなんていう奇跡の夢を見せたソレは、
    妹のヒナちゃんと出会ったフレアちゃんとが奇跡の生贄になることで叶った。
    だから今俺達が立つ時間軸にはヒナちゃんもフレアちゃんも居ない。
    “奇跡を使った誰か”が居ないと、この時間軸が成り立たないからだ。
    二人が犠牲になったからレイチェルさんが居て、
    奇跡の果てにこの時間軸に飛ばされた穂岸と蒼木だけが記憶と経験を継承してる。
    名前の通り“幸せの夢”なんだよ、この物語りは」
ネギ 「……そんな……誰かが犠牲にならなきゃ得られない幸せなんて……。
    ほ、穂岸さんは納得してるんですかっ!?」
中井出「してるよ。二人が導いてくれた“幸せな時間軸”だ。
    受け取ってやらなきゃ、それこそ犠牲になった彼女らに失礼だ」
ネギ 「あ……」

 続いてもう一つのプロミス。
 たった一つの選択で全てが変わった軸の話。
 ここでは、取るべき行動の一つで、命も未来も簡単に変わってしまうんだってことが解る。

ハルナ「ラヴだ……!」
朝倉 「いやーいいねぇ、ラヴだねぇ!」
のどか「はうえっ……よよよ夜の学校で……ちゅ、ちゅちゅちゅチュー……!」
木乃香「ラヴやな〜……♪」
夕映 「ひ、人目を憚らずに……!」
中井出「いや、記憶だから俺達なんて見えてないからね?」

 さて、やってきましたデスティニーブレイカー&ルナカーニバル。
 彰利の視点で始まるそれは、彼の幼年期から始まり、幾度も歴史を繰り返し、ようやく無限地獄から抜け出したところでようやく光を見る。
 抜けてしまえばあとは愉快なもので、彼は彼なりの幸せな日々を堪能し、結果として……まあその、経験の幸せ太りを体感してました。
 いやー、無限地獄に苦しんでいた頃とは別人かと思うほどののんびりさん。
 逝屠とのバトルを越えてもそれは大して変わらず、しかしまあ……あれだけ苦労したんだ。
 報われた分、幸せに浸れないのはウソってもんだろう。

明日菜「この弧月日ってコ……ほんとに二人の子孫?」
中井出「それもまあ見てれば解る。いろいろなことと一緒に」
明日菜「……?」

 ここまでくると、もはや死神程度じゃ驚かない。
 まあ気持ちは解る。
 間を挟んだパストメモリーズも肥溜めだったり過去との決着だったりと、まあ本当に忙しない。

エヴァ「なんというか……この世界のほうがよっぽど魔法的なものに溢れてやしないか?」
中井出「異能力とか超常現象が多いからじゃない?
    初っ端から奇跡の魔法とか、ブッ飛んでらっしゃる」
刹那 「そうですね……あれは驚きました」

 さて……デイバイデイです。
 フューチャーの世界から戻った彰利が、日余二等兵に盛大にフられるところから始まります。

明日菜「うああ痛っ……! これ最初から痛いっ……!」
ハルナ「頑張って帰ってきたのに最初からこれはないよ日余さ〜ん!」
古菲 「にゃむ? この咲桜って誰アルか? セツナアル?」
刹那 「い、いえ、私は桜咲ですから」
中井出「乱闘殿様です。神降町におわす伝説の御仁だ」
朝倉 「おっ、また過去の話に……って猫だ」
木乃香「かわええな〜♪」
夕映 「……なにやらこれを見ていると、篠瀬という人がひたすらに気の毒になるです」
中井出「同感です」

 竹尾タケオと出会ったりロディエルと出会ったり、空界でシュバルドラインと激闘を繰り広げたり創造世界を展開したり。

ネギ 「あぶぶぶぶぶっ!!? 竜がっ! 竜がぁあーーーーーっ!!」
茶々丸「落ち着いてくださいネギ先生、これは映像です」
ハルナ「そうと解っててもこれは怖いって! ってうわぁ勝っちゃったぁあーーーっ!!」
朝倉 「スゴイ! モミアゲの人スゴイ!」

 同窓会では僕らのドッキリ誕生祝いで見事に騙されてくれたりと、まあいろいろあった。
 殊戸瀬がウエストポーチとか言い出した時はどうなることかと思ったよ。
 いやしかし、月永と朋燐の連言もまた懐かしい。
 “越せぬ壁など我が身に在らず、我が意思こそが無限の自由”って部分、好きなんだよね俺。
 ともあれ、後悔の旅と銘打たれた“たわけモン道中記”が始まる。
 神降方面のことを少々知ることになるこの旅では、魔王アヤーホやら乱闘殿様やらマサルドやらとの邂逅がいろいろとあった。
 彰利がメイド秘術書を託した頃でもあったっけ。
 で、ファンタスティックファンタジアに移るわけだが───

ハルナ「おおおっ! きたっ! 本格的ファンタジー編っ!
    っていきなりベヒーモスと戦ってるよ!? 大丈夫なの!?」
朝倉 「ていうか頭のほうが平気なの!? 正気じゃないでしょこれ!」
中井出「正気じゃない……正気じゃないが、これが漢というものさ。
    俺なら逃げるけど」
楓  「なんだかんだで勝ってるでござるな。ひやひやさせられてばかりでござるが」
ネギ 「また竜と戦ってますよ!? 蒼竜王とかいう相手と!」
古菲 「ム? そういえば師父、修学旅行で渡されたカード、
    シュバルドラインいったアルが、アレは……」
中井出「うむ。さっき出てきた黄竜王がそうです」
古菲 「もうなんでもアリアルナ……」

 竜と戦ったり召喚獣と戦ったり、精霊と戦ったりなんだりと、我らがモミアゲ一等兵は本当に大変だ。

刹那 「……剣捌きの異常な巧みさ、理解が出来ました」
明日菜「あー……こりゃ勝てるわけが無いわねー……」

 で、最後はゼットと限界ブッチギリバトルをするわけだが───そういやこの世界で一度人として殺されて、竜としての心臓のお陰で助かったんだっけ。
 奇妙な人生生きてるよなぁ、晦一等兵も。
 そうそう、ここでノートン先生が創造神ソードであることも解ったわけで───

朝倉 「うっわっ! そうきたかっ!
    予想できなかったわけじゃないのに、なんか悔しいっ!」
ハルナ「たっはー、そっかそっかー、だから契約で“創造”なんて能力が……」

 さて、デイバイデイ2。
 ここでは主に狭界での話が広がるわけだが、しつこき男、十六夜逝屠見参。
 ……した途端に皆様にいい加減消えろとか言われたい放題でした。
 気持ちは解る。

エヴァ「……なぁ。この尻を見せながらヒョオオ〜〜とか叫んでいる男って……」
中井出「ただの変態です」

 司会者だって人間であることを叫んだ僕が映像の中に居ました。
 ほんと懐かしい。

楓  「しかし強いでござるなぁ晦殿は」
古菲 「光の武具とかゆーの、チト反則アルヨ」
中井出「得た能力を自在に使ってるだけなんだから、反則ではないですさ」
刹那 「なんにせよ、ととさまがエロマニアをやめてくれて何よりです」
中井出「娘よ。何気に突き刺さる言葉をありがとう」

 本当にいろいろありましたが、校務仮面については一切映像に出ません。
 何故ならば、そのほうが面白いからだ。

エヴァ「この時点でもヒロミツはただの人間……
    ああいや、式とやらが使える分、普通よりは……」
ハルナ「この式とかゆーの、今も使えるの?」
中井出「いえ全然」

 僕自身はからっきしです、と身振りも合わせてお伝えしました。
 人に生きることを選んで四千年近く……こんにちは、博光です。
 と、そんなわけで物語りは幸せのうちに終了。
 十数年の時を経て───舞台は未来、ウィンド&ウィンドウへ。

エヴァ「……表情が変わったな。とすると、ここがお前の分岐点か」
中井出「分岐? 馬鹿言っちゃいかん。分岐などない。ここが俺の墓標だよ」
エヴァ「墓標……?」

 キティの疑問も半端に、その歴史の頁は開かれた。
 “俺”の歴史の始まり、俺の幼少の景色から。

木乃香「……? ここ……」
夕映 「静かな景色ですね……雪が降ってるです」
中井出「俺のガキの頃の記憶だ。これは多分……親父と雪だるま作ってた頃の」
ネギ 「ヒロミツの? へー……あ、じゃああれがヒロミツ?」
ハルナ「おおっ!? 意外にカワイイッ!」
中井出「えっ!? 今ハンサムって言った!?」
エヴァ「どうしたらそう聞こえるっ!」

 平和な日々だった。
 何処にでもあるような、なんでもない日々だ。
 今さら眺めたところで、懐かしいとは思っても涙は出ない。

明日菜「この人たちが中井出先生の両親? へー、若作り〜」
中井出「もっとシヴいほうがよかった?」
明日菜「い、いえべつにっ!?」
木乃香「わー、やさしそうなおばあちゃんやー」
刹那 「お爺様は……少々対人が苦手そうですね」

 戸惑いもそこそこに、景色は進む。
 ばーさんの家に預けられて、謎の猫の集団やナギーと会い、OLAPをされて女相手でも容赦することを良しとしない心を手に入れたりして。
 で……ばーさんが死んで両親が殺されて、じーさんに養ってもらいながら中学行って、迷惑部で騒いで、卒業してつまらない高校生活送って───
 卒業して、働いて、じーさんが親戚連中に殺されて、頼る場所がなくて、空界を紹介されて……

ネギ 「………」
明日菜「なにこれ……ひどい……」
中井出「んにゃ、月の家系のものと比べりゃあ軽いもんだよ。
    晦たちのとそう変わらない」
エヴァ「……聞いていなかったよな。ヒロミツ、お前……肉親は?」
中井出「誰も居ない。み〜んな死んじまった。今見てる全てが真実だ」
エヴァ「…………そうか」

 その景色はいっそ、呪われてるんじゃないかってくらいにやさしくない。
 空界での暮らしは、そりゃあ少しは俺の心を安らげてくれたけど……唯一残っていたじーさんが死んだ。
 そのショックは、周りには見せようとはしなかったけど、相当に重いものだった。

ハルナ「あ、でもほら、
    空界ってところじゃあ映像の式っていうのを使えるようになってるし」
朝倉 「エロパワーもここまでいくと感心するねー……」
中井出「え!? 何!? 今言ったよね!? 絶対に言ったよねハンサムって!」
エヴァ「言ってないから黙ってろ!」

 けれど、そんな重さなぞはやがて飲み込み、約束通りみんなで集まるって時にはすっかりいつもの博光へと戻っていた。
 マンサムさんの真似もほどほどに、舞台はいよいよヒロライン。

エヴァ「……ここでようやく、か?
    身の振るい方から剣の持ち方、なにからなにまでド素人じゃないか」
中井出「最高の褒め言葉だ」
ネギ 「そっかー、ヒロミツもプレイヤーの一人だったんだー」
明日菜「なんか新鮮。やることなすこと手探りって感じで、ちょっと前の私達みたい」
木乃香「人数多すぎて、なんや解らへんわ〜……」
夕映 「あ。やられたです」
朝倉 「あ。神父に喧嘩売って死んだ」
ハルナ「あ。また喧嘩売って───」
エヴァ「…………」
中井出「同士を見つけたって顔で見上げるの、やめません?」

 未熟ながらも楽しむ心は忘れません。
 ひたすらに楽しみつつがむしゃらに突き進み、VSアンデッドキングダムを通り、飛竜から逃げたりナギーと出会ったり、属性の宝玉を取りに行ったり武器を鍛えたり。

明日菜「あ。ここでナギーちゃんが加わるんだ」
エヴァ「あっはっはっはっはっは! あっはっはっはっはっはっは!!
    あはっ! アハハハハハハ! プハハハハハハ!!」
中井出「……ねぇ。マクダウェルが学級王ヒロミツを聞いてから、笑い続けてるんだけど」
ハルナ「やはははははっ、あははははっ、あれは笑うなってほうがっ……!」

 笑われつつも冒険を続け、レウクサムじーさんと出会って霊章輪や武具強化をしてもらったりして。

エヴァ「これか! これが稀少石の恩恵の……!」
中井出「はいはい燥がない燥がない」

 これから様々な能力を得るわけだが……中でも異常だったのが灼闇だったね。
 狂人の指輪をガイアフォレスティアから貰ったあと、我が身にたびたび起こった片鱗は本当に不気味だったよ。
 まさかそこからバルバトスが誕生するなど、誰も夢にも思うまい。
 元素大会が終わって、元素の宝玉を手に入れてからは随分と好調。
 義聖剣で思う存分戦いまくっている頃が懐かしい。

エヴァ「お前はよっぽどのアホか無謀者だな」
中井出「いきなりひどいねキミ……」

 映像の中ではカイザードラゴンとタイマンを張るこの博光。
 さらには主神オーディンのグングニルを強奪、氷と地の守護竜と戦ったり、鋼鉄郎の真似をしてパパダスよーと叫んだり、彰利が姫さん使ってサタンクロスやったり。

刹那 「基本的に皆さん、緊張感を持ってませんね……」
中井出「楽しむものは楽しむってのが信条だったし。
    あ、それよりちょっとうどん食べない? 丁度美味いのが出来たんだ」
エヴァ「伝記の途中でなに作ってるんだお前は……」
中井出「ていうかむしろ恥ずかしいから僕の伝記なんてスルーしてほしいんだけど。
    ほら、みんなの伝記みたいにスパーっとさ」
エヴァ「私はそもそもお前の過去が気になっただけだ」
中井出「……そうでしたね」

 仕方ないので見る。
 どの道、瞬きしようが見えるようになってるんだし、今はうどんを食おう。
 あ、きちんとコタロにも送ってと……

中井出(え? 関西出汁でやれ? 俺のうどんはどっちもいける味だバカモン!)

 文句を言ってきたコタロくんに文句を返しつつ、ずぞぞーとすする。
 ううむ、やはり煮込みうどんは美味である。
 咀嚼のひと時を味わいつつ、視線をあげれば現在時空放浪モミ列伝。
 消化しきれていない晦や彰利の過去の清算と、僕の過去の清算。
 死神の鎌を手に入れて、それが我が家族の魂から生成されたものと知り、自分の武具と融合させることで器詠の理力を手に入れた。
 ほんと嫌な偶然もあったもんだよ。

明日菜「あ……この場面って───!」
ネギ 「ひ、ヒロミツ!? おばあさんが!」

 猫となって降りたかつての僕ら。
 その視線の先で、幼少の頃の映像の通りにばーさんが庇いに入る。
 しかし猫の俺は傍観するだけで、助けようともせずに……

エヴァ「……まあ、当然だな」
中井出「何度見てもいい気分じゃないけどね。フフ、この博光、もはや涙も枯れたわ」
エヴァ「いや、泣いてるぞ?」
中井出「なんだと!? うおおほんとだ! 馬鹿な! この博光が!」

 流れる涙にホーコラびっくり!
 ネギが「どうして助けなかったの!?」と裂帛の気合いとともに迫ってくるが、そこはほら、「ぬぅうぉぁああっ! なんだその裂帛の気合いはぁあ!」と返して。
 知りたいことは猫の僕が喋ってくれてるしね。

ネギ 「……そんな……だからって……」
中井出「知りなさいネギよ。誰かの過去の改変を邪魔しようとしている者が、
    好き勝手に過去を改変していい筈がない。
    それが誰かの一生や世界に影響するものなら余計である。
    そりゃあ簡単に済む問題ならいいかもだが、
    関連ってのはどこで繋がっているかなんて解らん。
    車に轢かれた子供が居たから過去に戻って助けてみたら、
    そいつの将来が大量殺人犯だった〜なんて、笑い話にもならんだろ」
ネギ 「………」
中井出「綺麗なだけでは生きてはいけぬ。だから、我が物語りを糧にひたすらに学べ。
    苦労の教科書くらいには……まあ、なれるつもりはあるから」
ネギ 「……うん」

 キティが映像内で涙を流す僕をじーっと……ああいや、キティだけじゃないや、皆様がじーっと見てらっしゃる。
 なんと恥ずかしい。

中井出(……気を取り直して)

 はい、再びヒロライン。
 エィネさん救出から悪の魔術師バトル、ガルフビーストバトルやデスゲイズバトル、ドラゴンズカーニバルやらラグナロク強奪、博打スキルの制覇まで行って、刻震竜イベント勃発。

明日菜「わ……これ、あの時の……」
ネギ 「ほんとに戦ったの!?」
中井出「戦ったとも! そして勝ったとも!」
古菲 「オ? ケド肝心の中井出師父、他のやつらと戦テルアル」
中井出「若かったな……」

 VS僕⇒VSバルバトスときて、ベルセルクまで行った頃にはもうみんな喋ろうとはしませんでした。
 うん……今の僕が見ても、こいつとは戦いたくない。

エヴァ「しかしこのサウザンドドラゴン……だったか? 無茶苦茶だな」
中井出「時の竜の名は伊達じゃねぇぜ!」
明日菜「うわー……勝てなくて悔しいなーとか思ってたけど、
    これは勝てるわけなかったわ……」
夕映 「それでも斬り滅ぼしてるですよ……」

 その間に何度死んだか解ったもんじゃないや。
 ───画面はレゾンデートルへの転移や僕の封印状態などを映しておられる。
 うむ、ここまで来たら、そろそろアレの出番だ。

中井出「はいみんなー、これ持っておいてー」
エヴァ「? なんだこ───……いや、解った」
明日菜「? なんですか? これ」
中井出「エチケット袋。これから残酷な描写があるから、気をしっかり持っておくように」
のどか「はうぇっ!? あ、あわわわ……!?」
中井出「のどっち〜? 弦月惨殺風景の時にも言ったけど、
    目を閉じても映像消えないからね〜?」
夕映 「気絶しても同じ……でしたね」
中井出「うむ」

 阿部さんやら写真撮影やら、気力充実のオフ日と闇鍋、ホムンクルスを食った思い出や、海原雄山とレストラム中野に繰り出したこと、いろいろあった。
 でも、今の自分にとっては一番気持ちが篭る瞬間ってのは……やっぱり、写真を大樹の下に埋めに行った時で。

明日菜「あっ、忘却の猫っ!」
木乃香「はうう〜〜、かわええなー!」
中井出「ハンサムって言った!?」
エヴァ「いいから落ち着け……緊張をほぐしてやりたい気持ちも解るが」
中井出「ぬ、ぬう……全て解っておいでか」

 キティはもう、あれが俺だということを知っている。
 どんな過去の先に、この森に居るのかも。
 断片的で早送りではあったが、アレが俺だと知る要素(映像)は十分に与えたのだから。
 そんなわけでルドラと邂逅して散々からかって罵倒して殺されかけて、漢神の祝福でピンピンになって武具を強奪して。
 それらを融合させた───その時。

中井出「はい、紙袋用意〜」
ネギ 「え……え?」
刹那 「ととさま!? これは───」
エヴァ「………」

 キティには、憎しみのうちに殺したのではないと言った。
 その理由はここにあり、俺は───イドの仕掛けに操られるまま、空界の人をまず一人、殺した。

明日菜「ひっ!? ……え、あ……」

 目を瞑っても逃れられない。
 やめてくれと叫ぶ体の内側の俺と、そんな叫びを聞かずに人を殺し続ける体。
 人を殺すのが当然の風景と、その中に響く俺の叫びだけが、この場を支配し続ける。
 子供を殺した。赤子を殺した。青年を殺し、中年を殺し、そして───老人を。
 そう。操られるままに殺した。操られるままに動く“人形”のように。
 最後の一人を殺した時、内側の俺は気が狂うほどの絶叫を発した。
 雨に打たれながら泣き叫び、実の娘の友人たちまで殺したというのに、それらを受け入れ、みんなが待っている地界へ。
 そこで様々な人に否定され、忘れられ───俺は……

エヴァ「《きゅむ》うわっ!? ───…………ふん」

 真っ黒な地面に腰掛け、キティを足の間に引き込むと後ろから抱き締めた。
 ……うん、やっぱ辛い。
 どれだけ強くなろうが経験しようが、辛いものは辛いままだ。
 笑い飛ばせるだけの余裕が、そう簡単には沸かない。

ネギ 「───」

 みんな、さすがに吐いている。
 それでもネギだけは、涙を流しながらも怯えながらも、その光景から目を逸らすことなく真っ直ぐに見ていた。
 ……ああ、それはキティもか。
 心の中で小さくありがとうを唱えて、続きを見た。

 ───……景色は再びヒロライン。
 フェルダール歴から十年、レゾンデートルと改名された歴史の中で、封印されていた僕は例の如く常識を破ってチャチャブーとして体現。
 マラジンと呼ばれたり王様になったり、あっさり蹴って旅に出たり然の塔に恐怖したり。
 そんな中で皆様も着実に力をつけてゆき、やがて辿り着くモッドナイトバトル。
 その先にあるVSジェノサイドハートなど……随分と長い歴史を見直している。

 晦たちにも忘れられて、映像の中の俺が泣いた頃、キティを抱き締め座る僕の横に、せっちゃんが腰を下ろした。
 そんな彼女にありがとうを唱えながら頭をやさしく撫でると、視線を再び映像へ。
 VSスカルドラゴン、レベルの底上げ、やがてかつての仲間全てに忘れられる瞬間。
 無駄に感情が流れてくる分、ズキズキと胸が痛みます。
 それでも立って前を向いて、拾った子供たちや姫さんがかつての仲間に殺されたことを知っても……それでも。
 デスゲイズと戦い、晦が俺を庇って、世界崩壊が始まって───みんなに責められ、囮めいたものの役目を受け容れろと身勝手に言われても、俺は───

  結局、最後まで仲間を優先しちまったのだ。

 単身で黒の精鋭と戦うなんて本当に馬鹿だ。
 散々自分を罵倒したやつらを逃がすためなんて、よっぽど馬鹿。
 それでもそれが自分のためになることだからと言い聞かせて、飽きることなく剣を振るった。
 戦って戦って、無傷ではいられなくなっても、それでも戦って。

エヴァ「……馬鹿だな、本当に。全て見捨てて逃げればよかったのに」
中井出「そーいうわけにもいかんのさ。
    ……俺は、自分から仲間を裏切ることだけは絶対にしないって、
    中学ン時から決めてたんだから」

 その理由が目の前にある。
 黒の軍勢と戦い、隙をついてイドを破壊。
 一瞬の油断で腹を貫かれ、操られて……ラスペランツァで晦と対峙した。

明日菜「そんな……逃がすために戦ったのに、こんなのって!」
朝倉 「……センセ、これってほんとにあったこと……なんだよね?」
中井出「冗談抜きでだ。腹を貫かれたし、操られた上で晦と対峙した」

 決着はあっけないもの。
 油断したイドから体の自由を取り戻して、自分の腹を貫いた。
 イドはそれで消滅した。けど───

明日菜「やっ……だめっ! なんでこんなことっ……死んじゃう! 死んじゃうよ!?」

 ガトウさんの死が頭のどこかにこびりついているんだろうか。
 他の誰よりも反応を見せ、転送装置の横に背を預ける俺へと明日菜くんが駆け寄る。
 けど、手遅れにもほどがある。
 立ち上がるのだって辛いくせに、装置をいじってる晦を押して、自分だけが残って。
 イドの置き土産と対峙して、本当に情けないくらいボロボロになりながら戦って。
 提督って呼ばれたのが嬉しくて、振り返ってガキみたいに笑って。
 それで……それで。

中井出「………」

 武具を融合させ、倒れている俺の傍らで、明日菜くんが泣いていた。
 えぐえぐと子供のように、しかし伸ばした手はすり抜けて。
 やがて、なんの救いも暖かさもない世界で、爆発と同時に辺りを包んだ閃光によって、フェルダールの歴史は幕を閉じた。
 ……そんな光の暖かさくらいしか救いと受け取れなかった、ボロボロの俺を包みながら。

中井出「明日菜くん、こっちこっち」

 僕はといえば、そんな映像に恥ずかしさやあの時の苦しさと寂しさを思い出しながら、泣きじゃくる明日菜くんを呼んで、せっちゃんとは反対側に座らせた。
 未だ泣く明日菜くんの頭をよしよしと撫でてやり、それでも視線は映像へ。

エヴァ「……まあ、なんだな。こんな状況でなんだが、
    あれだけのことがあったというのにラーメンなんぞ食いに行ってるこいつらを、
    いっそ捻り潰してやりたいんだが」
中井出「忘れてるんだから仕方ないって。それよりラストバトルじゃい」

 月詠町での戦いが始まる。
 皆様がそれぞれ、全力を尽くして戦い、人が潰れようがどうしようが目的達成のための全力で。
 いやしかしひとつの町を完全にぺしゃんこにするとか、どういう魔力量をお持ちですか、我らがホギーは。

ハルナ「……なんか……うん、なんか……ごめん、せんせ……。
    応援するべきなんだろうけどさ、なんか……応援できないよ……」
朝倉 「この場合……さ。悪ってどっちになるのかな……。
    辿り着いた未来があんまりに辛かったから過去を変えようとしたのに、
    それまで散々過去を変えてきた自分たちに邪魔されて……」
中井出「応援なんてしなくていい。ただ、見届けてやってくれ。
    俺達は譲れないもののために戦った。
    そこには善も悪もなくて、ただ自分が生きるための環境のための戦いだった。
    消えてほしくない人が居た。消えてほしくない現在が在った。
    だからそれを壊そうとしているヤツが許せなくて……ただそれだけの戦いだった」
ネギ 「…………ヒロミツは……それでよかったの?
    ルドラさんの言葉じゃないけど、死ぬって解ってて、こっちに残って……」
中井出「良かったさ、当たり前だ。───だって、仲間が居た。
    俺にはそれだけで、命を懸ける理由になったんだから」
ネギ 「〜〜〜っ……」

 戦いは続く。
 みんなが融合してカオスになって、全力で戦ったけどダメで。
 それでも、救いが無い未来なんて我慢出来なくて、結局俺はその場に降り立った。

明日菜「───! え……生きて……?」
中井出「あのね、死んでたら今の僕って何者ですか?」

 ボロボロになったみんなを蒼空院邸に飛ばし、結局バトル。
 生きることが出来た理由を回想で振り返りつつ、相手の黒を引き出すために無駄な挑発をして、いろいろヤバくなって。
 それでも、まあ。諦めることだけはしなかった。

エヴァ「……一人の人間が決めるには、重すぎるよ。お前の覚悟は」
中井出「……そっか」

 とすんと体重を預けてきたキティを受け止めつつ、続く映像を見る。
 俺の人間をくれてやると言った通り、灼紅蒼藍剣からナモナキツルギへと移行、それまで拘ってきた“人”の全てを懸けて───オリジンを斬滅した。
 ……けど、そこが限界。
 全ての力を失った俺は、アハツィオンの力の全力解放のために人であることをやめることになる。
 人であったが故の自分が人ではない何かになった瞬間、記憶の全てを奪われ……空間の切れ目へと落ちた。

  しかしまあ、全てを忘れるより早く、別の扉を開いてしまったらしく。

 気づけば流星となって恋姫世界の五行山の麓へ落ち、桃香たちと出会った。
 そこからは天の御遣いと呼ばれたり戦ったりの連続。
 全てが終わり、恋姫、真・恋姫の外史が一つになり、フランチェスカへと戻ることで終了。俺はそこで武具を受け取り、意思をもらい、返した上で───次元の狭間へと身を落とした。
 自分の記憶が今度こそ消えることを理解した上で、空界に落ち、忘却の猫になって。

朝倉 「───! うそでしょ!? この猫って……!」
のどか「あ……大樹の近くに居た……!?」
夕映 「ではあれは……」

 映像は続く。
 ノートン先生と戦い、勝利を治めるが、黒の彰利に心臓を貫かれ……命を落とす晦と。
 奪われたと思っていた思いの力を使い、未来への架け橋になってくれた晦の両親と彰利の手によって、滅びたルドラ。
 奇跡の魔法を使ったために誰の記憶にも残らず晦は消え、“全て”を知る者が誰一人居なくなっても、それからの日々は続いた。

中井出「………」

 変わっていく町を見た。
 変わっていく人を見た。
 辛そうにしていたけれど、全てを受け容れて……もはや子供が居ないチャイルドエデンで、自分ではない誰かと幸せそうに暮らす、かつての妻を見た。
 ふと、隣に座っていたせっちゃんが頬をハンカチで拭いてくれた。……涙が、止まらず流れていたことに気づいた。
 きっと見るたびに思うのだろう。
 どうしてこの変わってゆく景色の中に、自分は立っていられなかったのだろうと。
 小さな頃は、自分が別のところで暮らすことなんて考えもしなかった。
 ずっと親と一緒に生きていくんだと思っていた。それが……

  ───……景色は巡る。
  幾度も場面を切り替え、自分が知る仲間たちのその後を映しながら。
  やがて一人の老人と一人の少年との喧嘩が終わる頃、物語りは終盤へと向かう。
  転生した彼と、精霊となる彼とが出会う、もっともっと先の未来へ。

 空界に召喚された彼が、森に辿り着くまでそう時間は要らなかった。
 そこで少年は精霊と出会い、猫は全てを思い出す。
 けど、少年が大樹の下の楕円形の物体に触れた時、見ていた光景は空界の創世へと遡る。

エヴァ「…………来たな」
中井出「ああ。みんな〜、新しいエチケット配るからどうぞ」
ネギ 「……配るってことは、つまり……」
中井出「気休め言っても仕方ないからな。……マクダウェルでも吐いた。覚悟しとけ」
ネギ 「っ……」

 創世の猫って言葉の意味がここにある。
 空界の創世の瞬間に空間の渦から弾かれた、全ての記憶を無くした猫の話。
 それが俺だと知っているからこそ、見ている彼女らは目を逸らすことなく映像を見続け、その生きた道に……絶望した。
 “四千年近くを生きた”と言った。
 その大半をくだらない実験に費やし、殴られ、砕かれ、斬られ、潰され。
 試さない実験が無いってくらいに千切られ続け、技術が進めばその度に試すように潰され、魔法技術が増えればそれだけ実験に使われた。
 未完成な魔法実験にも当然使われ、爆発しようが破裂しようが死ねない体で、幾度も幾度も、何年も何十年も、何百年も何千年も。
 いつかセシルが自分を助けてくれるまで、ずっとそうして生きてきた。

  願ったのは暖かい未来だった。

 自分を提督って呼んでくれるみんなが笑ってくれて、そんな中で自分も笑える。
 家族を亡くしてしまった分、自分にとってはきっと、自分に笑い掛けてくれる全ての人が……家族に違いなかったのだから。
 それなのに何も残らない。
 あったのは抵抗できない自分と、迫る痛みにいつまで経っても慣れてくれない、死ぬことを許してくれない体だけだった。

ネギ 「う、ぐっ…………!!」

 ネギが吐いた。
 他のみんなはもう吐いてしまっている。
 唯一、一度見たことのあるキティだけは、身を震わせながらも耐えていた。

中井出「………」

 友達を祝福しようとした猫が居た。
 きっかけなんて、たったそれだけの……ひどくちっぽけなものだった。
 友達の好物の人参をプレゼントしてやりたかった。
 たったそれだけだったのに、友達は死に、自分は……

中井出「………」

 首を振るい、続きを眺める。
 ずっと続く地獄の日々。
 逃げ出しても空腹で歩けないで、逃げて当然なのに「ごめんなさい」と叫ぶ自分。
 そんな猫が再び潰され、バラバラにされ、見世物にされ。
 それでも……セシルがやってきてくれることで、ようやくその地獄からも解放されたんだと……そう思った。

明日菜「……あ……ぐすっ……この人……」
ネギ 「たしか……みさおさんの前世の……」

 自分は確かに救われた。
 なのに、その幸せも長くは続かず───ゼットが狭界に飲み込まれ、セシルは生贄にされて、ようやく幸せを感じ始めていた住まいは焼かれ……自分はまた一人になっていた。
 黒竜王ミルハザードがそこに降りるまで、ずっと家の前で呆然としていた。
 たまに聞こえる“セシルは生贄になった”って言葉の意味が辛かった。

ネギ 「ヒロミツは……空界人を恨まなかった?」
中井出「そりゃ恨んださ。でも、もう過ぎたことなんだよ、ネギ。
    過去を受け容れるのは大事だが、俺は復讐なんかよりも楽しむことを選んだ。
    だって……俺も、殺しちまってる。
    自分だけが辛いと思って振るう力は、虚しさしか残しちゃくれないんだ」
ネギ 「で、でもっ!」
中井出「……ネギ。よく思い出して、よく刻み込め。
    お前がお前の村の崩壊とともに感じた心は復讐心か?
    ……ああ、そうだな。確かにそれもあったかもしれない。
    けどな、石化はしたけど死んじゃいない。
    いつかは石化を解く方法も得られるだろうし、なにより……
    お前は今、父親を追って駆けている。
    復讐に心を燃やすのはやめろ。理由を知って、受け容れられる自分であれ。
    復讐すべきはお前じゃない。石化させられた人たちであるべきなんだ。
    だから……な。お前はナギの背中を追え。追って、全てを知れ。
    痛み、辛さ、苦しみなんてものは、俺が全部受け取ってやるから。
    だからな? ───ガキはガキらしく、笑っていてくれ。それが俺の願いだよ」

 近寄ってきたネギの頭を撫でてやる。
 誰かが誰からしくある世界を、俺はきっと望んできた。
 だから、子供が復讐に身を焦がす世界なんてのは俺が嫌だ。
 ガキはガキらしく騒いで燥いで元気で居ればそれでいい。
 復讐だの恨みだのなんていう汚い部分は、大人が背負えばいいもんだ。

中井出「………」

 映像の中では、晦がマナの樹を救ってくれていた。
 そこからようやく猫の生活は穏やかなものへと変わり、彩られてゆく。
 見ていたみんなもようやく安堵してくれて、モミアゲさまに感謝の念を捧げていた。
 実際、猫の暮らしは平和なものになった。
 普通に生きて、普通に食事をとれて。
 時を平穏に過ごし、流れる時節のほぼを刻まれることのない睡眠の中で過ごした。

茶々丸「あ……」
のどか「ゆえー、この景色ってー……」
夕映 「はい。恐らくは───」
ネギ 「あ、来た来たっ、ヒロミツが写真を埋めに来た時のだっ」

 繋がる景色がある。
 ナギーとシードの頭を撫でる奇妙な猫と、そんな自分を見れなかったこの博光と。
 そんな景色が訪れるまでを平穏に過ごせるようになった猫は、やはりそれからも平穏を生きる。
 人間が……というか、俺が空界人のほぼを殺した時も、とある日にドリアードが猫のことを博光さんと呼ぶようになってからも。
 彰がやってくる瞬間や、俺の記憶が浮上するまで、自分は確かに幸せの中にいて───そして今、記憶を浮上させた瞬間から、“楽しい”を探せる自分に戻ることが出来た。

木乃香「わっ、熱い抱擁や……!」
朝倉 「グッドエンドがようやくきた! もう胃の中カラッポだよ〜!」
中井出「うどんをどうぞ」
ハルナ「ああっ……なんか今、うどんが大好きになれそう……!」
中井出(《ギシャーーーン♪》計画通り……!)

 などとうどん同盟を築いていないでと。
 ここからはつい最近のことだね。って言っても、僕にしてみりゃ長い道のりだったけど。
 ゼロ魔世界を終えて、この世界に来たこと云々。ただし校務仮面など、バレてはいけないことは悉く抜いてある。

中井出「えー、はい。そんなわけで───映像を終了したいと思います」
ハルナ「ぷっはぁあーーーっ……濃かったぁああ〜〜……」
朝倉 「しみじみ思ったね……興味本位で人の過去なんて見るもんじゃないって……」
明日菜「ぐすっ……や、あんたがそれ言う?」
朝倉 「いいじゃん、言うならタダだし。
    ていうかアスナ? あんたいつの間にセンセとそんな、寄り添う関係に?」
明日菜「へあっ!? やっ、これはっ……!」

 景色も元のフェルダールへと戻る頃には、もう皆様普通通り。
 元気にワイワイ騒ぎながら、思ったこと感じたことを話し合っている。

中井出「よしっ! ではこれより映像拝見お疲れさんパーチーを開催する!
    胃の中をカラッポにした分、うどん以外にももっとぎょーさん入れなさい!
    大丈夫! ここで食べる分には絶対に太らん!!」
古菲 「肉まんはアルカ!?」
中井出「あるとも! つーか途中から全然喋らなくなったけど、どしたの?」
古菲 「静かに見る派アル」
楓  「というか途中から夢中で見ていたでござるな」
中井出「そかそか! さあ、約束通り宴会だ! 大宴会だぁーーーっ!!」
古菲 「約束なんていつしたアル?」
中井出「今この時!!」《どーーん!》

 等しく今を生きる男……こんにちは、博光です。

中井出「ほらネギ、ぼーっとしてないで手伝えぃ!」
ネギ 「え……あ、うん。えと……ねぇヒロミツ? 世界を救うってどんな感じだった?」
中井出「つまらん。仲間と笑ってるほうがまだ有意義だよ。
    英雄になんてなろうとするもんじゃない。
    いいかネギ、もし世界を救う〜っていうような、
    大げさな場面に辿り着くことがあったら、
    世界のためじゃなく自分が守りたいもののために動け。
    世界なんてのはな、お前らが思うよりも頑丈で、
    お前らに救えるほどちっぽけじゃない。
    “力があるから救う”んじゃない、
    “自分の在るべき場所”を守るため、自分のための行動を取っていけ。
    そうすりゃあ、いつか間違いを犯しても自分だけを責めれるから」
ネギ 「……うん。そうかもしれない」

 どこか寂しげに言うネギをひょいと肩車し、歩く。
 と、さっきまで抱き締めていたキティが何故か不機嫌になり、僕の足をげしげしと蹴ってきてアオアーーーッ!!

中井出「な、なにしやがるこの野郎!!」
エヴァ「うるさいなっ! 小さければ誰でもいいのかお前はっ!」
中井出「え? なにが?」
エヴァ「なんでもないっ! いーから茶を入れろ茶をっ!」
中井出「なに怒ってるんだこのお子は……。茶々さーん、お茶淹れてもらっていいー?」
茶々丸「はい」

 蹴られた脚の痛みに首を傾げつつ、歩きました。
 さて、うどんで元気もチャージできたし……ってあの?

中井出「ねぇせっちゃんに明日菜くん? なんで僕の服掴んでるのかな」
刹那 「あ、い、いえ……その。ととさまはその……この世界で、
    “やるべきこと”を終えたら去ってしまう……んですよね?」
中井出「うむ。そうなるね」
刹那 「……そ、そのっ。その時になって、私に守るべきものが無くなっていたら───
    一緒に連れていってもらえますかっ?」
中井出「……本気? 二度と戻れんぞ?」
刹那 「本気……今は確かに本気です。
    これからどういった未練に縛られるかは解りませんが、少なくとも今は」
中井出「………………」

 これといった説得はない。
 ただ、「そか」とだけ言って、その頭をポムリと撫でた。
 で……こちらのお子は───

中井出「明日菜くん?」
アスナ「………」

 あ……ちょっとおかしなスイッチ入ったかも。
 少々“人の死”を見せすぎたか。
 まあ……しゃーねーわな。

中井出「《ポムンッ》……うむ。今日はちとオジサマモードで行きたい気分だから、
    この博光、中年ダンディで行きましょう」
ハルナ「おおっ!? シヴイ!」
朝倉 「なにか決め台詞とポーズとって! さんのーが、はいっ!」
中井出「ご婦人方にまたモテそうだ《メギャァアーーーン!!》」
ハルナ「ぶわーーーーはははははは!! あははははははは!!」
朝倉 「いいっ! 中井出師父いいっ!! あんたはサイコーだ! あはははははは!!」

 無精髭も生えて、すっかりダンディな僕に皆さん爆笑。
 近寄りやすい雰囲気でも出てるのか、いつの間にやらみんなに囲まれてわやわやと談笑してました。

中井出「お。そうそうネギ、貴様に紹介しておきたいヤツが居るんだが」
ネギ 「え? 僕に?」

 肩車したまま、僕を見下ろす彼を見上げて言う。
 そうしてから皆さまに「少し離れてて」と告げ、管理者の権限でこの場にせっちゃんの他の一人の家族を転移させる。

中井出「我が義理の息子であり、義理の娘であるせっちゃんの弟ってことになる───
    紹介しよう、犬上小太郎くんだ」
小太郎「とーちゃん、いきなりの召喚はやめぇゆーとるや───あぁああーーーーっ!!?
    ネギ=スプリングフィールドッ!!」
ネギ 「あぁっ!? 修学旅行の時のっ!」
小太郎「ここであったが百年目やっ! 修行の成果、今こそ───」
中井出「《ニコリ》止まりなさい」
小太郎「《ビクゥッ!》サッ……サーイェッサー!!」

 止まった。

ネギ 「え? えっと……息子って……」
中井出「身寄りがないかもしれんから拾ってきた。きっちりとーちゃんと呼ばせている。
    そしてネギよ。これからキミが、この小太郎のライヴァルよ」
小太郎「……ライバルなぁ……。おいネギ、お前あれからきっちり強ぉなっとるやろぉな」
ネギ 「《むっ……》な、なってるよ」
小太郎「そか。せやったら文句ないわ。
    ライバルがあんまり弱いんじゃ、俺も張り合いがないしな《ニカッ》」
ネギ 「え……う、うん……」

 うむ、よろしい。
 きっちり挨拶出来たようで、父さんうれしいよ。
 これがまたもー、ナギーとシードとはとことん反発してくれちゃって、ナギーにはOLAPで潰されるわシードにはパロスペシャルで潰されるわ、ろくなお子じゃあなかったよ最初は。

中井出「で、コタロ。こっちの彼女が前に話した貴様の姉になる、桜咲刹那だ」
小太郎「おっ……へー、あんたがそーなんか。
    俺は犬上小太郎や。よろしくな、刹那姉ちゃん」
刹那 「え……あ、はあ……」
中井出「しゃきっとしなさいせっちゃん。急な家族編成だろうが、我らは家族!
    もはや一切の遠慮も要らぬ! ───でも急に攻撃仕掛けたら沈めるからね?」
小太郎「《ビクゥッ!》サッ……サーイェッサー!!」
刹那 「どういう教育をしたんですか……」
中井出「跳ねッ返りが強いから、強制的にVSベルセルクを」
刹那 「可哀想に……! わ、私が姉だ、なんでも頼ってくれていいっ!」
小太郎「へっ? お、おう……?」
中井出「せっちゃん……」

 案外人情的なものに弱かったのね……。
 早速仲が良さそうでなによりだ。

小太郎「そんでとーちゃん、そろそろ大会に出たいんやけどー……」
中井出「ランク外で終わるのが目に見えておるわ。
    せめて1000レベルくらいまでは上げなさい」
小太郎「せやったら戦争イベントをっ!」
中井出「前に華琳にボロ負けしたの、忘れた?」
小太郎「……分身全部潰した上で、本体まで潰されたのは初めてやったわ……。
    当面の目標はあのちっこい姉ちゃんを倒すことやっ!」
中井出「華琳の前に凪か春蘭に潰されるのがオチだな」
小太郎「とーちゃんは俺にどうしろっちゅーねんっ!!」
中井出「鍛錬だ! 鍛錬あるのみ!
    今の華琳を一人で倒すには、一人で飛竜くらい倒せなきゃだめだ」
小太郎「どんだけ強いんやあの姉ちゃん! けど熱ぅなってきたっ!
    次会うたら勝つんは俺やーーーーっ!!」
中井出「……と、素直な良いお子です」
エヴァ「魔王の子といいそいつといい、好き勝手にノセて楽しんでいるだけだろ……」
中井出「し、失礼なっ!! 楽しんでいるのは事実とはいえ、
    好き勝手とは心外だぞマクダウェル!」

 ともあれ、紹介も終わればにぎやかなるパーチーだ。
 僕らは楽しんだ。
 料理を作り、料理を食べ、飲み、笑い。
 これからのことを話し合ったり住まいのことで相談したりしたのでした。


───……。


 それからの話をしませう。
 まあそのー……結局のところな〜んも変わっておらぬ。
 せっちゃんは今まで通り寮生活みたいなもんで、この博光もコタロとともにテント暮らし。
 強いて上げる変わったことといえば……テントとキティログハウスとを繋げたことくらいだ。
 だからね、もうね、退屈だから相手しろとか晦を呼んで日本について話をさせろとか。
 「俺はドラえもんじゃねー!」って言ってるのにてんで聞きやしないよこのお子は。
 いやほんとね? 解らんことだらけなのだ。
 創世の猫を皆さんが見てからというもの、僕の平穏が侵されつつある。

ネギ 「ヒロミツ! 稽古つけてもらっていいかなっ!」
中井出「断る!」《どーーん!》
ネギ 「えぇええっ!?」
中井出「コタロのライバルである貴様はいわばこの博光の怨敵!
    晦や彰利、穂岸に教わるならOKだが我から教えることなど何も無し!」
刹那 「あ……ととさま、稽古を───」
中井出「OKせっちゃん相手になろう!」
ネギ 「えうぅっ!? 早いっ!? た、対応が違いすぎるよヒロミツ!」
中井出「すまんなぁネギよ……義理とはいえ息子がライバルならば、
    手の内を見せるわけにはいかんのよ。
    つーか俺なんかに稽古つけてもらって、上達するわけないでしょもう」
ネギ 「全力でぶつかっても翻弄してくれる人と戦いたいんだってばっ!
    状況対応能力をあげたほうがいいって悠介さんに言われたからっ……!」
中井出「そうか。だが断る!」《どーーん!》
ネギ 「えぇええっ!?」

 ネギウスが稽古つけてとせがんでくるし、せっちゃんもやたらとせがんでくるし。
 あ、それを言うならコタロもだ。……ああいや、くーさんも楓殿もか?

アスナ「………………《じーーー……》」
中井出「ん、んん? ど、どうしたのかい? 明日菜くん」
アスナ「………………《じーーー……》」
中井出「どうしたのかいって不思議な問いかけしてみたんだから、
    反応くらいほしいんだけど───」
アスナ「………………《じーーー……》」
中井出「あの……」
アスナ「…………」

 なにやら時折、明日菜くんにじーーーっと見られるんだよね。
 移動する時も後ろついてきたりするし。
 けどまあそういう時は大体寝惚けてる時だったりするんだけど……こう、ね? 明日菜じゃなくてアスナって喩えたほうが近い目をしてるんだよね、そういう時って。
 で、ダンディバージョンで迎えてやると、「タバコ吸って」とかせがんできたり……もうワケが解りません。

ナギー『オォラァアァアーーーーップ!!』
エヴァ「《グワキィッ!!》いだぁあああだだだだだぁあーーーーっ!!?」
ナギー『人が冒険をしている隙に、ヒロミツの肩を横取りするとはいい度胸なのじゃー!』
エヴァ「横取りじゃないっ! あれは私の特等席だっ!」
美羽 「では博光の足の間が妾の特等席じゃのっ♪」
ナギー『何を世迷言を言っておるのじゃっ! どっちもわしのなのじゃーーーっ!』
シード『フッ……全然なんにも解っちゃ居ないな……父上の全てこそがこの僕のものだ』
小太郎「それ、聞き方によったら変態的にしか聞こえへんで。
    けどあんな人が親なら、無理ないわなぁ。
    本人嫌ごうとるけど、世界救った英雄やからな。俺も鼻が高いで」
刹那 「英雄が父……一族から忌み子扱いされた私が……英雄を父に……。
    こ───っ……光栄です……!《じぃいいいん……!》」

 なにやらお子どもが騒ぎあって、そんな中でキティがナギーにOLAPされたりして、とても賑やかなんだけど……僕が近づくと一様にニコリと笑って『取り込み中だ』と言うのです。
 肩が寂しいから誰か乗っけたいなーって思ってたのに。
 だからネギを乗っけたら何故かみんな激怒して足をドカドカ蹴りまくってくるし。
 ……え? ええもちろん、せっちゃんにはポセイドンウェーブ、コタロにはジャスティスハリケーン、美羽にはイカロスクラッシュ、シードにはヘラクレスルー、ナギーにはグリフォンタワー⇒グリフォールで仕返ししました。
 キティは血まで吸ってきたのでビッグフォールグリフォンをMAX版で。

ハルナ「ねぇセンセ、じゃなかった中井出師父。
    師父とも仮契約したら、カード増えたりするのかな」
中井出「するけど、どうも補助っぽいものしか発動しないみたいだぞ?
    今のところ武器っぽいのが出たヤツは…………あれ? 居ない?」

 えーと……藍田のが灼熱外套、佐知子さんのも破魔外套、俺のも能力のみで、彰利のも黒衣。
 晦のは白衣で、ホギーと蒼木っちのは法衣。才人のはマフラー一体型の外套で、一刀のは白銀の光と黒色の光。
 キティのも黒衣で…………うわー、武器出てないよ多分。

中井出「うむ、悪いことは言わん。やめときなさい」
ハルナ「や、落書帝国もこれはこれで漫画家の夢の具現ではあるんだけど……もう一声、
    もう一声が欲しいのだよ師父さん」
中井出「もう一声……ふむ。よく使う絵には経験が入って、強くなるとか?」
ハルナ「ディ・モールト・グラッツェ! そういうふうに既存破壊とか出来ないかなっ!」
中井出「出来るが断る。小利口なのはよろしくないぞパルちー。
    よろしいか? 漫画……じゃないな、絵が具現化する。これは大切だ。
    恐らく描き込めば描き込むほど、それは力を増すであろう。
    だが絵とはうつろいやすいもの……! 描きたいものが別に増えてしまえば、
    たとえレベルを上げていようが別のものを書いてしまう!
    だからダメ。原初を大切にせぬ者に、この博光は協力を惜しむ」
ハルナ「あー……そういえば師父の剣って、元はグレートソードなんだっけ」
中井出「世界のどこを探してもこれほどグレートなソードはあるまいよ。
    だからねパルちー、キミはそのアーティファクトを強化しなさい。
    武具と融合させるのも、モンスターと融合させるのもヨロシ。
    鍛えていけば、いつかはキミの納得に届くものへと近づくだろう。
    武具を成長させるのは持ち主と鍛冶屋だ。
    そこに“楽”があっては面白くもなんともないのです。
    武具とともに育て! 武具とともに頂へゆけ! この世界ではそれが出来る!」
ハルナ「……提督さん。師父ではなく、提督さんと呼ばせてもらうよ?
    提督さん、アンタ漢だねっ! その意気、確かに受け取った!
    このパル様の武器がこの落書帝国だというのなら、
    これを成長させるのは持ち主である私の野望にして希望!」
中井出「オッケーよく言ってくれた!
    漫画を愛するキミならきっと解ってくれると思っていた!」
ハルナ「提督さん!」
中井出「パルちー!」

 バシィッ!と合わせた手が痛かったがまあ腕相撲のごとく繋いだ。
 それから目元を真っ黒にしつつ、ピシガシグッグと希望を確かめ合ったりしたのですよ。

朝倉 「で、センセって世界征服とかする気ってないの?」

 あっちが済めばこっち、といった感じでしょうか。
 パルちーと別れて久しぶりに鍛冶工房に行こうとしたら、朝倉さんに捕まった。

中井出「世界征服? どうせならフロシャイムに征服された世界を見てみたいけど」
朝倉 「むしろ平和になりそうだよね、あれ」
中井出「だよねぇ。ゴミの分別とかきっちりして、
    健康にいい料理とか独身男性にはありがたいレシピとか放映しそう……」
朝倉 「欲しい独身男性なんて、知識持ってるだけでコロリとイチコロそうだし。
    その点センセは……」
中井出「家事炊事洗濯掃除!
    全てを普通にこなす男! スパイダーマッ!!《バッババッバッバッ!!》」
朝倉 「普通ってつまり、ソツがないってことなんだよねー。
    センセっていい旦那になれるよ絶対。で、そのウネウネした動きってなに?」
中井出「スパイダーマッ!!《バッババッバッバッ!!》」

 うん、意味はない。

朝倉 「それでそれで?
    お相手のドリアードさんは家庭的なところとかってどーなんでしょ」
中井出「どうであろうが構わぬ!! この博光が養ってくれる!!」
朝倉 「うわー! なんて男らしい台詞!! そ、その自信はどこから?」
中井出「愛しているからだ!」《ドギャァアア〜〜ンッ!》
朝倉 「あ、う……うーわー!! 本気の目で言っちゃったよこの人!
    は、恥ずかしさとかは───」
中井出「馬鹿者! 人の愛を恥と唱えるとは無礼千万!
    この博光、好きでもない者からの告白は悉く断るという心情を内に宿した時点で、
    愛する者には愛していると伝えられる猛者よ!」
朝倉 「ドリアードさんの前でも?」
中井出「《ピタリ》…………」
朝倉 「………」
中井出「……愛している人に向かって愛してる。正直な言葉。OK?」
朝倉 「OK」
中井出「ハゲのヤクザにハゲって言う。出来る?」
朝倉 「…………うん……どれくらい難しいか、よく解ったかも……」

 好きだと伝えた。
 しかし愛してるはキツイ! 解ってほしい、この切ない思い!

朝倉 「じゃあ誰か別の……若いコと付き合ってみる気とか《ゾリュリュガシィッ!!》
    …………へ?」

 その瞬間、彼女の足を樹の蔓が包みました。
 こう、蛇が巻き付くように。
 こうなったらもう……僕には合掌するしか……!

朝倉 「えっ!? いやっ! 冗談! 冗談ですからドリアードさんっ!
    誰かって言っただけでべつに私だなんてヴァーーーーーッ!!!!」

 このフェルダールにおいて、いつの間にか出来ていた暗黙のルール。

  “中井出博光を誘惑するな。然の精霊様は見てらっしゃる。マリア様ばりに”

 「それ、どんなストーカーアルカ?」と言ったくーさんが食人植物に背後から襲われ、セルに飲み込まれかけている17号になったりした。
 でもね、マリアさまもちょっと人の私生活覗きすぎですよ。なんですかあのタイトル。もうタイトルの時点でストーカーじゃないっすか。きっとブタ箱経験豊富だよ、詰められちゃってるよメシも食い放題で、捕まったら「またお前か」って言われる顔パスマリアさまだよ。ストーキングじゃなくてストークイーンとか名乗れそうだよ。意味解らないけど。

中井出「のちに僕は語る。“ええ……まるで悪夢のような出来事だったンワァ”」
朝倉 「そこで仰天ニュースの吹き替えっぽく言われても……」

 ひどいことは起きません。ドリアードだし。
 ただ宙吊り状態になっているだけだ。

朝倉 「で……これから私、どうなるのかなー……とか……」
中井出「その蔓はたしか……ヒルキノコだったな。大丈夫、血を吸われるだけだ」
朝倉 「助けてえぇえええーーーーーーーーっ!!?」

 キノコのくせに蔓を伸ばし、血を吸うことで有名なフェルダール植物です。
 まあなんにせよ、僕の事情を知る生徒たちからやたらと接触が増えたような……そんな感じがするのですよ。

茶々丸「博光先生。マスターが用があるので来いと……」
中井出「また!? エイィ人の睡眠時間を奪いまくって、ヤツは何がしたいのか……!」
茶々丸「お手数をおかけします」
中井出「いやいや茶々さんは悪くないのだよ? これはこれで僕も楽しんでるし。
    でもね、用があるのに自分が来ないマクダウェルには、
    きっちりとお仕置きが必要です。あ、もちろん遊びでね?」
茶々丸「それらも含め、あそこまで楽しそうにするマスターを見るのは初めてです」
中井出「そうか? なら不老不死になった甲斐も……あるのかもな」

 茶々丸さんはどっちかっていうと、ネギウスとのコミニュケーションを望んでるみたいだけど。
 そこらへんをフォローしてみるのが中々面白かったり。

悠介 「王手」
エヴァ「うぐっ!」
遥一郎「チェックメイト」
エヴァ「はぐっ!」
彰利 「ロン。ヒヒヒ……」
エヴァ「あぐっ!」
中井出「遊戯よ、俺はブルーアイズを引いたぞ!
    ワハハハハハ! 滅びのバースト───」
エヴァ「トラップカード発動!! 万能地雷グレイモヤ!!」
中井出「オィイイイイイなんで俺だけぇえーーーーっ!!」

 ケド、なんでしょう。実際楽しんでます。
 キティが将棋だのチェスだの麻雀だのカードゲームだので、いっぺんに我らと対戦したときも、そりゃあもう楽しんだものです。
 他のヤツには勝てなかったくせに、意地でも俺にだけは負けたくねーのか俺にだけは強いキティとか……ちくしょういつか絶対勝ってやる。
 お、俺が弱いんじゃないんだよ!? あいつが俺だけに強すぎるんだよ!? ほんとだよ!?

中井出「しかし……なんだね。キミらほんとにかずピー好きね」
華琳 「こういうのもどうかとは思うのだけどね。
    感情ばかりはそう簡単に制御できるものじゃないのよ。
    一刀が御遣いとして降りた軸は蜀が二回、呉が一回、魏が一回。
    敵としてと決まっていなければ、麗羽のもとへ降りた一回もある。
    いずれにせよ呉以外では私は一刀に会っていて、それなりに認めていた。
    特に蜀の二回のうちの一回がまずいわ。なんなのあれ」
中井出「なんなのと言われても」

 間違い無く“真恋姫無双”ではなく、“恋姫無双”での一回だろうね。
 蜀が二回っていうとアレしか思い当たらないし。

華琳 「私が敵の妖術で操られた挙句に蜀に救われて? 挙句に一刀の下につくなんて。
    しかも一刀のために酒を作ってみたり足しげく一刀を探して歩いたり、
    ごっごごっごっごっごごご主人様なんて呼んだりして……!
    そうまでしたのにあのばかは蜀の連中なんかと居なくなること数回……!
    そう、そうね、二回程度ではなかったわ。
    蜀の将らの人数分と、皆を望んだ一回分。それだけの数を私は……!」
悠介 「ははははは」
彰利 「そィでさー」
中井出「うまい! カツ丼!」
華琳 「聞きなさいよ!!」
楓  「それでも好いているのであれば問題はお主の気持ち次第でござろう?」
古菲 「よく解らヌが、それで解決アル」
華琳 「随分軽く言ってくれるわね、まったく……。───けど博光?
    私はべつに貴方を諦めたわけではないから、そのつもりでいなさい。
    好いているかどうかは別にして、貴方ほどの人材を手放す気は───」
中井出「ウメーよこれ。カツ丼食う?」
華琳 「聞きなさいと言っているでしょう!?」

 結局のところはそう、僕的にはな〜んも変わってない。
 誰がつっかかってこようが適当に受け流しもすれば受け止めもして、僕は僕のままで突っ走っております。

彰利 「えー! ちゅーわけなんでー!
    オイラこれからVS中井出師父をやるんだけど、
    混ざるやつはこの指───テレッテッテー! 彰利はレベルアップゥーーーッ!」
悠介 「こらこら、混ぜるな混ぜるな」
遥一郎「言いつつしっかり指を掴むんだな」
悠介 「せっかくだし圧し折っていいか?」
彰利 「なにを物騒なこと言っとるのかねキミは!」
閏璃 「やーやー皆様方、メールを覗いて飛んできたよ。最強」
彰利 「最強」
凍弥 「で、彰衛門。なんだってまた今なんだ?」
彰利 「クォックォックォッ……!
    なんでもあの野郎、今能力が封印されてるらしいのよ……!
    だから今のうちにブチノメーションして、経験値を……!」
悠介 「お前ってほんと姑息だよな……」
閏璃 「なんていうんだ? 脇役にはなれても主役にはなれない男?」
彰利 「俺がそれなら外道を地でゆく我らが提督様はどーなるんよ!」

 ある日、フェルダールに生きる全員に喧嘩を売られました。
 もちろんボタン一つで強制イベントバトルなこれには僕自身逆らうことが出来ず、正々堂々外道開始。
 能力は引き出せないとはいえレベルも武具レベルも下がっているわけではないので、超重量装備以外を取り出したフル装備状態で、ジークフリードを振り回したのさ。
 ……もうね、魔法弾けないってだけで、あそこまでボコボコにされるとは思ってもみなかった。

中井出「ビッグベンッ! エェーーーーッジ!!」

  ガドォオオンッ!!!

遥一郎「ぐはぁっ……!!」

 だからまず始末したのはホギー。
 烈風が使えなくともステータス移動だけでももはや一線を画したい博光よ!
 ハットリ君ばりの目にも留まらぬ早業で、ホギーをビッグベンエッジで沈めてから、トドメにジークフリードで串刺しにしました。

彰利 『ゲゲェホギーがやられた!』
中井出「だ、大丈夫だ落ち着くのだ彰利一等兵! 一回死んでもあと四回復活出来る!」
彰利 『お、おお、そやったね! ───ってなんでキミこっち側に居んのさ!』
中井出「愛ゆえに……!」
彰利 『あ、愛……』
中井出「死ねぇえええーーーーーっ!!!」
彰利 『オワッ!? ギャアもうほんと会話に前後をつけんやっちゃねぇ!
    負けてたまるか死ねぇええーーーーーーーっ!!!!』

 暴れるに暴れました。
 鎌倉幕府レベルは、この世界でどれほど通用するのかを知るために。
 純粋になんの能力もない武具と、レベルが高いだけの自分とで。
 いや、能力が無いのもなかなか面白かったです。
 そのお陰で背中が弱点ってペナルティも消えてくれてたし、暴れ甲斐があった。

エヴァ「魔法が効くなら話は別だ!
    リク・ラク・ラ・ラック《バサァッ!》ぷわぁっ!?」
中井出「ゲハハハハハ! 砂かけババァーーーーーッ!!!」
エヴァ「め、目がっ……ききき貴様ぁあーーーーーっ!!」
ネギ 「ひ、ヒロミツ! もっと英雄っぽく戦えないの!?」
中井出「馬鹿め! 英雄像なんてのは周りが勝手に決めたものよ!
    この博光は博光らしく生きることに不老不死という名の命を懸ける!
    生き残るためにはどんな手段も用いろう!
    そんな我に勝ちたくば、全力以上の全力で───私を倒してみるがいい!!」
刹那 「……! ととさま、胸を貸していただきま《バゴンシャアッ!》ぷろあっ!?」
彰利 『ゲゲェ喋り途中で顔面ストレートォオオッ!!? ちょいとキミ!?
    その娘ッ子ってばテメーの義理の娘じゃ───今さらだったね』
中井出「だろう?《テコーン♪》」

 ナギーを横目で見つつ、呟いた彼に歯を輝かせて応えた。
 そうしてバトルは続き、どこまで行ってもどんな手段でも使う僕に、やがて敵の数は減り、勢いを無くし───

エヴァ「どぉおおおいう強さしてるんだお前はっ!
    能力が無ければ弱いんじゃあなかったのか!?」
中井出「失礼なことを申すな!
    この博光がジークフリードと駆け抜けた全ての瞬間は決して我を裏切らぬ!
    能力が無くとも、ジークフリードを握る我は最強を自負したいなーとか思ってる!
    ていうかね、この博光と貴様らでは実に千倍近くのレベル差がある。
    たとえ能力がなくとも、そのステータス差だけで十分よ。
    そして……悪いがベルセルクはそんな博光の遙か高みにいらっしゃる。
    一万程度のレベルと+500にも満たぬ武具レベルで満足しているようでは!
    この俺を越えることは出来ぬゥウウウ!!
    だから武具! 武具育てようぜ!? この世界の醍醐味は冒険とまさにそれさ!
    武具成長をやってないなら人生の99%は損してるぜ!?」
エヴァ「おぉおい!? 冒険はどこに行った!?」
中井出「武具が弱けりゃ冒険もままならぬわ!」

 残りをわざとキティのみにして、ニコリとスマーイル。
 そんな彼女にこの世の素晴らしさを説きました。
 レベルだけではだめ、技術だけでもダメ、魔法だけでもだめ。
 「我に届きたくば武具を強くすることだ……!」と三流っぽく笑いながら。
 そう伝えてから、「まだやるかい?」と訊ねると……潔くギブアップを宣言してくれた。
 「バルバトスとベルセルクにギブアップは通用しないから気をつけてね?」と伝え、その日のVSヒロミチュードは終了。
 こんな日々を繰り返しながら、僕らは変わらぬ日常を過ごしています。






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