23/おかしな世界

 多分、今のこの外史は異常だ。
 そげなことを思いつつ、今を思う……こんにちは、中井出博光です。
 そんな僕は今、自然要塞内の庭の東屋にて……なにやら話し合っている二人に声をかけるとこアマス。

中井出「おーい左慈ー于吉ー、同盟者らしくメシでも食い行くべー」
左慈 「同盟? なにを勘違いしている。俺がお前らを利用しているだけだ」
中井出「ねぇ于吉。この人いつデレるの?」
于吉 「フフフッ、左慈のツンとデレの比率は10対0。デレはありませんよ」
中井出「アー……男版筍ケか。そりゃ性質が悪い」

 現在、日輪は五胡……というよりは、左慈と于吉と協力関係にありました。
 何故かといいますとまあ、ひどく単純な話。
 北郷一刀を殺す前に自分たちが消滅させられては意味がないと、于吉が僕を誘いに来たのですよ。じゃあどうせならと、先の出会いで話しておいた“協力”をすることになりまして。
 いやぁ〜〜〜……連絡を受けてやってきた左慈ちゃんてば、かずピー見るなり“殺す!”だったから驚きましたさ。急に飛び掛ったもんだからウェスタンラリアットからのカイザースープレックス⇒ウルトラファイナルアトミックバスターという肉体言語で説得することで落ち着いてくれたが、ほんとに恐ろしいお子よ……!

中井出「しかし、五胡がほぼきみらの傀儡で成り立ってる国とは。
    傀儡が居なけりゃどうなるのそこ」
于吉 「国として機能しないのでは? まあ、そんなものに興味はありませんがね」

 ちなみにこの二人、様々な世界を行き来したりしているそうで、まあいろんな外史に飛んではかずピーをコロがそうとしてるんだから当然だが、横文字チックなことも結構いけます。
 まさかツンデレまで知ってるとは思わなかった。

中井出「デレが無いくせに協力関係にはなるんだもの。
    もしかして0.1くらいはデレあるんじゃない?」
于吉 「ふむ。いえ、それはやはり利用というカテゴリからは脱しませんね。
    利用し終えればポイと捨てる男ですよ、左慈は」
中井出「こ、こいつ……!」
于吉 「クズだ……!」
左慈 「聞こえているぞ」
于吉 「少しノってみただけですよ、左慈。そう怒らずとも、私はあなたの味方です」
中井出「おぉやおや相方が僕に合わせたことに嫉妬したんでちゅかー!
    デレあるじゃないの! んもう于吉っちゃんたら嘘つきめ!」
于吉 「デレではありませんよ。私も利用されているだけですから」
中井出「わお! すっげぇクズ!」
左慈 「だから。聞こえているぞ。というか揃いも揃って人を挟んで会話をするな!」
中井出「円の動き」
于吉 「円の動き」
左慈 「回転もするな!!」

 しかし、同盟を結んでみて解ったことがひとつ。
 左慈はツン100%だけど、于吉は結構ノリがいい。
 命ってものを軽く考えるところはアレだけど、基本は愉快さを大事にする男らしい。
 そんな二人を迎えるにあたり、もちろん反対意見も出たのだが……まあアレですよ。洗脳しようとしたらジェノサイドカウンターが発動するようにしたから、それはそれで安心してもらった。
 ジェノサイドカウンターの恐ろしさは于吉が召喚した白装束の傀儡を以って知っていただきましたさ。こう、傀儡に僕を洗脳させるように操ってもらって、みんなが見てる前で“ぶるぁあああっ!!”って。
 でもそれ以降、みんなから距離を置かれている気がするんだ……。

中井出(僕、悪く……悪いぜ!)

 悪くないと言おうと思ったけど、なんか悪いほうがステキだったので堂々悪。
 ファブレなルークくんももっと開き直ればよかったのになぁ。
 俺が悪いんだぜぇ! って感じで。
 いやまて、他人にばかり望むのってどうだ? じゃあ僕がそんな状況になったら───

中井出(………)

 他人に擦り付けるフリをしてみんなにクズ呼ばわりされる男が、思考内で大絶賛上映された。うん、俺だ。
 アー……でもルークくんもセンセーに擦り付けようとして失敗したんだっけ。テイルズオブジアビスはなんというか、弱さと強さが混ざった奥が深くも大変なRPGだったなぁ。
 あそこで“俺は悪くねぇ!”じゃなくて、“そう! このルークこそが悪よッッ! そしてヤツは我が師にして共犯よッッ!《バァアーーーン!》”とか言ってたらどうなってたんだろうか。
 ……ぶっ潰されるだけだね、うん。
 なんてことを無駄にジョジョ立ちしながら考えていたら、むすっとした顔の左慈くんに睨まれた。さっちゃんって呼んだら怒るだろうか。

中井出「ねぇさっちゃん」
左慈 「殺すぞ貴様」

 いきなりな殺人宣言だった。

左慈 「ふざけたことをやっていないで、
    いい加減に氣を強く持つ北郷一刀の居場所を教えろ」
中井出「え? やだ。だってそうするとキミ殺すじゃない。ダメよそれは。
    俺達の目的は外史統一。全ての外史をひとつにして、
    みんなが歳取って死ねる、俺達だけの“正史”を作ることだ。
    そのためにはどっちもが全力を以って相手を打倒、決着をつける必要がある。
    今の強いKIを持つかずピー相手じゃ、左慈の一方的ななぶり殺しになるわい。
    全力を出して決着をつける。それが意味に繋がるの。
    外史ってものが“意味”に左右されるもんなら、
    急に出てきた野郎かずピー殺してハイ終わりなんて、誰もが望むわけがねー。
    それじゃあ外史は終わらねぇわい」
于吉 「なるほど。願われて作られた外史なのだから、
    ポッと出の私たちに急に主人公が殺される外史なぞ、
    誰が望むかというわけですね。しかし私たちは外史否定者ですよ?
    肯定をみすみす見逃すことは出来ません」

 ナルホロ、そりゃそうだ。
 でもねぇ……。

中井出「外史否定でしょ? 否定して正史にしようとしてるんだから問題ねーでしょ」
于吉 「おや」

 解決した。

左慈 「…………簡単に言ってくれるな。
    本当に貴様が言う方法で外史が終わるとでもいうのか?」
中井出「終わるよ? まあその時にはモノスゲー無茶をして、
    最悪僕の中のマナが枯渇するやもだけど。でも大丈夫。
    苦労したヤツが楽しめねぇ未来なんてクソくらえだ。
    だから必ず笑える未来へ辿り着きましょうぞ」
左慈 「知ったふうな口を叩くな。貴様に俺のなにが解る」
中井出「あっはっはっはっはなんも知らねー!
    知ってもらう努力もしねーで好き勝手言ってくれるわこのクゾガキャアめが!
    つーわけで俺の記憶見ろっつーか見せる!
    そんでテメーの記憶も勝手に覗いてやるから覚悟しろ!」
左慈 「見る? 勝手に? どうやるかは知らんが、それを俺がさせるとでも」
中井出「パウッ!」
左慈 「《ドボォ!》ゲブゥ!!?」

 拳から小指だけを飛び出させた状態で、腹部を割りと強く殴った。
 するとあっさり力なく崩れてゆく体。しかしゲェエエフェフェフェフェ、気絶はしてねぇから大丈夫……!

中井出「ディエエエフェフェフェフェ……!!
    さぁああどぉおおしてくれましょうかねぇえ〜〜ぇええ……!!
    あ、まずは僕の過去を無理矢理見せなきゃね!
    おぉっと抵抗しても無駄だかんなー! 逃げようとしたらシメる!」
左慈 「こ、こいつ……!」
于吉 「真性のクズですね」
左慈 「っ……そう思うなら……! さっさと、助けろ……!」
于吉 「いえ、面白そうなのでお断りします。私も彼の過去には興味がありますしね」
左慈 「貴様……!」
于吉 「ふふっ……そのギリリと歯を食い縛り睨む姿も愛らしい……。
    もっと、もっと見せてください左慈……!」
左慈 「《ぞわわわわわっ!》〜〜〜〜っ……! 気色の悪いことを言うな!」

 叫んでももはや手遅れよ!
 キングクリムゾンッ! 時は吹ッ飛ぶ!!

……。

 そんなわけで過去を見せたそののち。

左慈 「人に忘れられる呪いか。馬鹿なのか貴様。
    つまり貴様が今やっているこれはとんだ茶番ということだろう。
    この世界でまでその効果があるかは解らんが、
    恐らくそれは貴様に根付いてしまったものだ。
    貴様はいずれ忘れられ、やってきたことも無駄になる」
中井出「んなこたぁ予想ついてますわい。
    じゃあなに? 忘れられるから何もするなって?
    いやだねそんなつまらんこと。忘れられるから出来るんじゃあないか。
    いずれみんなが俺を忘れるんだとしても、
    この世界にはその呪いが来ていなかったとしても、この博光。
    自分のやりたいことには嘘はつかぬ!
    なにせ自分のためにしか動かない僕だから!
    あ、ところで今、きみの過去を見てるんだけど」
左慈 「せめて一声かけてからやれっ! 殺されたいのか!」
中井出「ゲェエエフェフェフェフェ返り討ちよクズめが……!」
左慈 「ぐぅうぅ……っ……いい性格してるな貴様……!」

 平気でクズとかカスとか呼ばれる人生歩んできましたもの。
 で、だけど。
 あー……なるほどなるほどー、そりゃ外史ってもん終わらせたくもなるか。
 でもなぁ、こりゃあなぁ。

中井出「なんだい、きみらっていわゆるかずピーの先輩じゃん」
左慈 「………」
于吉 「ええ、終わる世界に舞い戻り、自分の世界から離れた北郷一刀も……
    このまま生きればいずれは私たちのようになりますよ。
    自分の世界に忘れられ、老いることもなく時を彷徨う存在に。
    成長するのは氣のみで、ただ少々が変わった程度の世界を何度も見せられる。
    貂蝉らはそれを受け入れ、私たちは否定した。
    そんな世界をどうにかしたくて縋った銅鏡は知っての通り、壊れました」
中井出「あぁ、なるほど。容姿がそれなのにいやに力があるのは、
    鍛えられるのが氣だけだからか」
于吉 「卑弥呼や貂蝉には負けますがね。
    私たちは力というよりは知の方への氣が強かったので、ああはなりません」
中井出「ふむ? ほいじゃあ力と守りの氣を持つかずピーが強くなったら……」
于吉 「よい勝負になるのでは? あくまで“強くなったら”ですが。
    二つの氣を成長させるとなると、かかる時間は眩暈がするほどでしょうがねぇ」

 ありゃ、そらいかんわ。
 誰かが都合よくかずピーの氣をひとつに纏めてくれるとかしてくれんでしょうか。
 ……こうなりゃ俺が行く? 向こうのほうも結構気になってたし、KIを辿ることが出来たから、そこへ歴間移動すれば済む話だ。

中井出「あ、じゃあ僕ちょっと行って様子見てくるね?」
左慈 「なに!? 行けるのか!?」
中井出「行けるよ? 飛ぶとしても、僕一人が行くので精一杯だけど」
左慈 「だったら貴様じゃなく俺を飛ばせ!」
中井出「悪いな左慈。この能力、一人用なんだ」
左慈 「だったら今すぐ二人出来るようにしろ!」
中井出「……ねぇ于吉。こいつ案外さ、ツンじゃなくてデレなんじゃない?
    相手のこと考えすぎて、いつしかそれが恋に反転したアルクェイドさんみたい」
于吉 「なるほど、その考え方はしませんでしたね。
    デレも過ぎれば毒となる、ですか。で、実際のところはどうなんですか?」
左慈 「誰が恋などするか! 殺すぞ貴様ら!」

 顔を真っ赤にして怒鳴ってきた。
 おお、本気で怒ってらっしゃる。
 どうどう、となだめつつ……まあやっぱりこやつは連れていけないね、絶対に殺しにかかります。
 なのでここは俺だけで「いいから連れていけ! 無茶をすれば行ける!」……わぁ、行く気満々ですよこの人。もう殴られた場所も回復したのか、人の胸倉掴んでまで迫ってきましてござい。

中井出「パウッ!」
左慈 「《ドボォ!》ゲブゥ!!?」

 なのでもう一度。
 今度はさらに強くキメたので、これでしばらくは大丈夫でしょう。
 赤かった顔が真っ青になり、やがて彼がゴシャアと大地に沈むのを見守ったのち、反応がなくなったと見るやニコリと笑顔。
 すぐに月空力を解放して、KIの強いかずピーの世界へと旅立った。


───……。


 そして僕はここに居る。
 この世界に降りてから何日経ったっけ。
 いやまあ、大げさに語るほどではないんだけどね。
 今現在、新しく建てられたという学校に体験入学しているところです。
 なんとまあ、そこではかずピーが先生をしているじゃあないですか。
 かずピー自身も初めてなのかどうなのか、相当緊張しまくってるようだが、きちんと先生やってます。というかなんだろこのチョーク。めっちゃバキボキ折れますな。

一刀「〜〜っと。これを見本に、壱を書いてみよう」
子供「かいたーっ♪」
子供「にーちゃんかいたー!」
子供「みてみてー!」
一刀「早ッ!?」

 ほっほっほ、周囲のお子も元気に文字を書いておるわ。
 ならばこの博光も───誠意を以って応えねばならんな! 俺がなにかされたわけじゃないけど!

中井出「ふむ」

 しかしここで馬鹿丁寧に壱と書くのはどうか。
 やはりいつか思ったように……うむ!

中井出「へっへっへ……」

 なんかこういう時って、ちょっとイタズラゴコロが沸くよね。
 笑い方もちょっといけない感じになっております。
 ……と、笑っているうちに書けたので、丁度近くに来ていたかずピーに周囲の子供のように見せてみる。
 ちなみに、念を押して顔は変えてあります。年齢自体いじくってあるから、まあどこかでまた会っても解らんとは思うが。

中井出「っし、と。へへっ、どーですかい御遣い様、上手く書けてるでしょう」

 小さな黒板に、ポキポキ折れるチョークで書いたのは“壱”ではなく“売”。
 うむ! 途中までは一緒というところが素晴らしい!
 しかも画数は同じ!! ……あ、あれ? 同じだよね?
 どうも僕、そういう単純な部分は苦手で……。
 だがどーです!
 これを見たかずピーも、あまりの独創性に……あ、あら? 呆れてる?

一刀 「これは壱を書こうとしたってことで……いいのかな」
中井出「いいえ違いまさぁ、
    同じものばかりを書いていては新しい道は開けないと思ったんで、
    少しばかりいじってみたんでさ」
一刀 「…………いや、考え方はいいかもだけど、これってそういう授業じゃないから」

 ダメ出しされた。
 ぬうう、こういう授業の中だからこそこうした常識破壊に意味があるのだろうに!
 ……なんて思ってたんだが、この後かずピーが数学の時間でやってくださいました。
 黒板にね、絵を描いたんですよ。彼はそれを犬と言う。
 しかしどう見ても謎の生命体。名づけよう! モンスターザクロパスと! とか言いたくなるくらい、独創性に溢れていた。
 フフッ……かずピー、貴様にゃ負けたぜ……。
 まさか人に注意しておいて、自分でその常識を破壊してくるたぁよぉ……!

……。 

 次の時間は理科でした。
 おお、ちゃんと学校だ。なんか懐かしい。
 懐かしさのあまり、まあ一応人器のお陰で人のアレコレを知っていながらもかずピーに積極的に質問を投げた。
 そして……何故かその理科の授業では、粘土で好きなものを作れと言われた。
 ホワイ何故?
 だが作れというのなら作ろう……ある意味で独創性の塊な筈のアレを……!

中井出「へっへっへ……」

 また怪しく笑いながら粘土をこねる。
 まずは粘土をちょちょいと三つに分けて……

子供 「ねーねー、おじさんはなにをつくるのー?」
中井出「おじさんかい? おじさんはねー……」

 笑いながらこねているのが気になったのか、隣のお子がこの博光に声をかけてきおったわ。なので説明しながら作ってゆく。
 まずは三つのうち二つを丸め、残りの一本を棒状に。
 棒を立てて玉二つで支えてやれば、ハイ完成!

女性「キャーーーッ!!?」

 ……したと思ったら、お子とは反対側に居た女性に悲鳴をあげられた。
 おいおいどうしちゃったのこの人。奥歯にもやしでも詰まったのか?

女性 「あ、あなた、子供の前でなんてものを! そんな、卑猥な!」
中井出「へ? 卑猥? いやいやなに言ってんのお前。お前これアレだよ?
    ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲だよ?
    いやはや我ながら完成度高けーなオイ」
女性 「なにが完成度よ! こんなものっ!」
中井出「《グチャア!》アーーーッ!!」

 我が渾身のネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲が、女性が振り下ろした拳によってグチャリと潰れた! い、いったいなにが気に入らなかったというんだ! 完成度は高かったはずなのに!
 ……ハッ!? いや、よく考えたらこれ、拳つけてみたらいいんじゃねーか?
 なにせネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲は独創性の塊。誰かが作っていたものを参考に追加すればするほど完成度が高まる作品、それがネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲だ。
 なので棒の横に粘土で作った拳を置いてみた。
 ……二秒で潰されました。

……。

 この世界に身を置いて数日。
 なんかかずピーがすげぇ出来る人で驚きだ。
 この世界のかずピーにいったいなにが怒った。もとい、起こった。
 あ、ところでなんだけど、この世界はとっくに魏の華琳さんによって統一されたらしいです。だから争いらしい争いなんてなく、この世界のかずピーは魏に降りた御遣いさまだったらしい。
 しかも魏の種馬なんて二つ名をもらっているほどの凄い人物だそうな。
 あの華琳率いる魏でですよ? きっと百合百合しいスタイルのまま進んでいくのだと思っていたのに、まさかなぁ。俺はほら……ねぇ? CHRいじくってアレをアレしたから解るったって……かずピー、すごい子っ……!

中井出「まあそれはそれとして」

 平和で愉快な日々が続いております。
 どうやらこの世界のかずピー、一度役目を終えて自分の世界に帰ったらしい。
 けれど“その時、不思議なことが起こった!”的ななにかが働いて、この世界に戻ってきたと。これだね、于吉が言ってたの。終わる筈だった外史が意味を持っちゃった所為で、消えるはずだった欠片が消えるどころか力を持ってしまった。
 だから左慈はこの世界のかずピーをなんとかしたいわけだ。
 力を持った世界から他の外史が派生しないとは限らない。意味を持ってしまったら消えないかもしれない。だから壊す必要がある。でも、この世界の軸って誰なんだろね。外史全ての主役は左慈とかずピーってのは聞いたけど、じゃあこの世界がかずピーが居なくなっても動いてた理由は?

中井出「主役が居なくなったら止まるのがその外史。
    っつーことは、かずピーも自分の世界に戻った時は、
    この世界に飛んだ時と同じ時間に戻ったはずだよね。
    つまり、この世界にかずピーを求めることが出来た誰かがこの世界の軸で……」

 ああ、つまり華琳なのかな。
 つまりこの世界は、軸の華琳が召されるか主役のかずピーが死んだりすれば崩れていくってことなのかな? ああいや、違うか。于吉は“意味を持った”って言った。
 外史が意味を持つってことは結構大変なことなのでしょう。
 困ったことに、この世界の軸である華琳様が世界に持たせた意味ってのは、多分だけど“簡単だけど消えない思い”ってあたりなんだと思う。
 あー……例えば? 自分の世界に戻ったかずピーを待つ〜だとか、自分の物語を生きていくからそっちはそっちで頑張りなさい〜と考えておきながら、実はまた会いましょうとか思っちゃった所為で“御遣いが来るのを待ち、訪れるまで待ち続けられる世界”とか、まあいろいろ考えられるけど……あの華琳だもんね! ないない! オホホホホホ!!

中井出「でもあの華琳だからこそ、好きになったら絶対に離さないとかありそう……!」

 おお、恐ろしい……!
 でもなぁ、そうするとかずピーが戻ってきた途端に終わるだろうし。ううむ解らん。
 あ、もしかしてアレか? いつだって自分をわくわくさせたり楽しませてくれる一刀を待ち望んでいたりするから、この世界は終わりませんとかそんなトキメケチックな世界がここ!?
 …………あ、はい、ごめんなさい。さすがにないよね……ないよね?
 そういった意味では、華琳さんが興じきるまでこの世界ったら終わらないもの。
 そんな年がら年中、全てを興じてこその王だとか言ってるわけじゃあるまいし、ねぇ?

中井出「さて」

 いろいろ考えることはございますが、そんな推理ごっこなんてバーローに任せよう。
 居ないけど。
 ここで俺が考えたって答えなんて見えない見えない。

中井出「いやしかし、平和だねぇ」

 現在は夜の魏に這い寄っている僕。
 かずピーは随分と緊張を解いているようで、我が家に戻ってきたお方って感じでモノスゲー緩んでる。そんな様を街中で見かけては、なんだか少々嬉しい気分になったり。
 いやしかし、魏っていいね。夜でも店やってるよ。ちょいと寄ってみれば、頭に黄巾巻いた男が迎えてくれました。

アニキ「おぅらっしぇい───っと、初めて見る顔だな」
中井出「あ、ちっす。明かりに誘われてやってきた紳士にござる。
    適当にメシ作ってもらっていいすか? あ、酒は飲めないんでご勘弁を」
アニキ「酒も飲めねぇのにここに来るたぁ、珍しいな。
    まあいいや、ほらそこ、詰めろ詰めろ」

 一人で回しているのか、店主っぽい男がそう言うと、まるで旧知の友を迎えるように客が詰めてくれて席をあけてくれた。
 そこへ座ると「なんでも好きなもん頼め」と店主さん。
 ここは是非とも珍しいものでと適当に頼んでみれば、出てきた料理の美味しいこと。
 隣のおっさんが同じものを食べていて、酒と一緒に飲むと「くぅううっふぃいいい!」と目をギウウウと瞑りつつ笑顔のままに唸っていた。ぬ、ぬう、これは困った。どうやらこれ、酒と一緒に食うと相当美味らしい。
 し、しかしこの博光は下戸。酒は飲めぬのです。でもいいのさ、これ美味しい。
 この時代でこんな美味なるものを……! 美味なるものには音があるとか昔CMでやってたけど、音なくても美味は美味ですな! これはいいものアマス!

中井出「おやっさん! これ───」
アニキ「おやっさんじゃねぇ、俺のことはアニキって呼べ」
中井出「お、おう。ではその、アニキさん! これ、お持ち帰りとか出来る!?
    もう一品欲しい! どうしても!」
アニキ「そりゃ、冷めれば味がどうしても落ちることを解った上で言ってんだな?」
中井出「ほっほ、言ってくれるでおじゃ。
    これ、もう冷めても美味しいように工夫してあるでしょ」
アニキ「だとしても美味ぇ状態で食ってもらいてぇもんさ。
    そりゃ、料理人じゃなくてもメシ作るやつなら誰でも思うことだ。そうだろ?」
中井出「アッ……アニキッ……!」

 すげぇ! この人“ワカッテル”!!
 決して適当に探した職が料理人だからって手を抜いて作る人じゃあない!
 この人には、来る客を喜ばせようと思う懐の広さと温かみがあるッッ!!

中井出「アニキ! 俺、酒は飲めないけどその代わりに料理いっぱい食べるよ!」
アニキ「おかしな野郎だなぁ、ったく」
おやじ「だっはっは! 言うわりにゃあ顔がゆるんでるぜぇアニキよぉ!」
アニキ「だぁっ! うるせっ! おらお前もぼさっとしてねぇで頼みやがれ!
    なに食うんだ! さっさとしろ!」
中井出「大の大人の照れ隠し、俺実はめっちゃくちゃ好きです。
    なんか、気取ってない自然体って感じがしていいよねっ!」
おやじ「おー! 解ってんなぁおめぇさん!
    親だから、大人だからって照れちゃいけねぇなんてことねーんだよぉ!
    なぁあ!? アニキよぉおぅ!!」
アニキ「いーからおめぇはだぁってろ! ったく、酔っ払うとすーぐこれだっ!」

 やー……いいもんだね、おやじのたまり場。
 お子には解らん、奇妙な温かさがある。
 ほら、あるでしょ、人前では出来ないこと言えないこと。それすらもがおやじギャグで全て許される……そんな空気がここにはあります。
 でも、そういうことが出来るのも、客とアニキが、客と客同士が心を許し合っているから出来ることだろう。ここにはそんな“なにか”がある。……なんか、それが嬉しいです。

中井出「《ピキュリリリィイン!》ぬう!」

 しかしそんな楽しい時間も束の間、我が気配探知がかずピーの気配を察知!
 ここで見つかるわけにもいかんし……もうちょい味わって食べたかったけど、仕方ないね。一気に食べて……と。

中井出「ヘイお勘定! ここに置いておくね! じゃあちょっと急ぐから!」
アニキ「騒がしいやつだなぁ……っておいこら! 多いぞこれ!」
中井出「賑やかなお店の雰囲気に感謝をー! 感謝料として受け取ってー!」

 店を出るッ!
 すると、暗がりの奥からこの裏路地へと入ってくる人影が!
 ぬう、こっちはダメだ! ならば反対側から!
 ……いや、べつに普通に去ればよかったんだろうけどね? 違う時間軸の相手との顔合わせって、しないと決めたら意地でもしない方向でいく方が面白いじゃあないですか。
 や、そりゃあ歩いてきてたのが100%かずピーかっていったら、解らんのですが。

……。

 時は流れて青空の下。
 今日も今日とて魏におります。今日もかずピーはあっちへいったりこっちへ行ったり。
 そんな様を、城の一番高いところに座りつつ弁当をつつきながら見下ろしております。
 何弁かって? うっふっふ、今回はちょいと工夫してみたのですよ。
 なんでも日本では“きゃらべん”なるものが世の話題を欲しいままにしているそうではないですか! だからこそこの博光もそのあとをちょいと追ってみたのです!
 ふふふ、地味に苦労したぜ? なにせ必要な色をした食材が中々見つからなかったのだからな……! しかし上手くは出来ていると思うのだ。
 え? どんなキャラかって? ウフフ,仕方ないなぁ、じゃあヒントをあげるね?

中井出「不破刃」

 アッチャー、もう解っちゃうかナー。
 などと酷く寂しい一人芝居はやめましょうね。
 ええ、正解は……すごい漢です。
 答えとヒントが逆だっていうツッコミも納得の答えさ。
 ご飯の上で半裸頭巾がポージング───……すごい漢だ。
 ほぼ二、三色弁当になってしまったが、んんんんーーーっ! うおおおおおとか叫びながら食えば雰囲気でるよきっと。

中井出「味もすごい」

 肉は使ってないのに肉の味がするのだ。ステキ。
 まあそれはそれとしてだよ。
 あれからちょくちょくと元の外史に戻ってはこちらへ来てを繰り返して、結構先の時間まで飛んでみた。今現在は都を作ろうって話で盛り上がっているらしい。
 でもワタァシ、よくない噂、自然から聞きました。
 なんでも作り途中の都を狙う山賊がおるんだとか。
 こりゃあもう潰すしかないでしょう。
 なのでまずは山賊に志願して、内部から破壊するか懐柔するかしましょうってことになり───

……。

 現在、山賊をとめられないままに夜の未完成な都地帯を駆けておりました。
 味方には気づかれずに山賊の首をコキャリと捻っては気絶させを繰り返し、確実にかずピーと興覇先生の敵を減らしていっている。
 この調子でバレナイように暗躍して、彼らを勝利へ……! あ、大丈夫、かずピーは殺しとかはしないつもりらしいから、気絶させてるだけですとも。でも最初、矢を放ってきた時は本気でビビりました。あの距離から届きますかってくらいだったさ。
 まあお陰で司令塔潰れたんで、こっちは統率もなにもあったもんじゃない。
 あとは時間の問題カナーなんて思ってたんですけどね? なにせ皆様逃げ出し始めたんですもの。や、もちろんこの博光も焦りました。ここで逃げられればまた徒党を組んで襲うことでしょう。なので全員シメなければなりませぬ。
 そんな意味も込めて、逃げる者どもを後ろから襲うという外道チックなことを繰り返していたんですよ。で、次はどいつだーって、走っていた勢いのままにターンしてみたら───

一刀 「せぁあああああっ───あ? あぁあああああっ!!?」
中井出「へっ!? あ、キャーーーッ!!?《バゴシャア!》ジェブゥウウルアッ!!」

 小型のロードローラーみたいなモノにのったかずピーに、モンガロン轢き逃げアタックをされました。見事にキリモミで空を飛び、なんというか“このままでは終わらんぞォオーーーッ!”とかムショーに叫びたくなったが、そこらでドゴシャアと地面に落下。草がなければやばかったぜ……! ってくらいの勢いだったが平気だよ! だって僕強い子だグオオ脳が揺れる……!
 結局、起き上がってから数歩走っただけで脳が揺れて、大地に沈みました。
 ふ、ふふふ……よもやかずピーに負けるとは……。
 強くなったな、御遣いよ……。


───……。


 そんなこんなで時間が飛びまくっております。
 都が出来る様を眺めるのはなんだか気持ちいい。
 なので工夫の皆様に癒しを提供しつつ、建築を影ながらサポート。
 かずピーも指揮とか手伝ったりとかで、夜になるともうぐったり。
 なのでゴゾォと天幕に忍び込んで癒しを送る。
 甘寧さんが見張ってたけど、気配と姿を完全に抹消して近寄ったから安心スマーイル。

中井出「………」

 寝ている姿は随分と歳相応だ。
 こんな年齢でここまで頑張るのなんて、この時代か未来でもどこぞの御曹司くらいでしょうに。若いころの苦労は買ってでもしろって誰かが言ったけど、俺たちみたいな類の苦労は……しちゃいけない方面のものだろうね。
 うしゃ、キミはそんなことにはなるなって意味も込めて、ちと夢でも見せませう。
 えーと……うむ! 出演者は微妙にぼかして、僕の過去とか未来を断片的に纏めたものをどうぞ。未来の方は俺も知らないからドッキドキのドリームでっせ!? 未来視つきの夢なんてハラハラドキドキよ! まあ僕自身も知らない未来だから、どうなるかなんて見たかずピーだけが知るわけですが。
 きっとハッピーじゃぜ!? なにせ僕だもの! 進む道は楽しいに溢れていると勝手に信じております!

中井出「……楽しいさ。楽しくなくちゃいけない」

 なんでかな。
 こんな悪戯みたいなことをしている時に、昔のことを思い出した。
 自分の“楽しい”ばかりに夢中だった自分。自分勝手で好き勝手なもんだから友達もいなくて……ばーさんが死んで両親が死んで、いじめられるようになって。
 自業自得だって解ってたから、殴られても馬鹿にされても仕返しなんてしなかった。
 放たれる言葉は痛くて、殴られた場所ももちろん痛くて。
 でも、やっぱり自業自得だからって、仕返しなんてしないで全部受け止めた。
 全部受け止めるつもりだったんだ。だって、そんなの自分が悪い。
 ばーさんが死んだのは自分の所為だ。ババゴロシって言われたって我慢できた。
 両親が死んだのは俺の所為じゃない。オヤゴロシは許せなかったけど、悪ガキには戻りたくなかったから、拳は握っても殴りかからなかった。
 ただ。


  そのうちこいつ、じじいもころすんじゃねー?

  ああ、あの“ああ”とか“うむ”とかしか言わないじじい?

  そうそう、運動会のときにちょこんと座っててさー、見たとき、なんだこいつって!

  弁当がまたしょべぇんだぜー!? ボロボロのおにぎりがちょこんとさぁ!


 勝手に体が動くことってあるんだなって……その時は思った。
 気づけば俺を囲んでいたクラスメイトが吹っ飛んでいた。
 俺は自分でも意味も解らないことを叫んで、硬く握り締めていた拳を振るって。
 でも、多対一でガキな俺が、才能なんてものがなかった凡人な俺が勝てるわけもなく、呆れるくらいに無様にボコボコにされた。
 何度殴られようがもちろん殴り返した。じーちゃんを馬鹿にすんな、って……それだけを叫んでいたのだけは覚えてる。
 それだけ暴れりゃいろいろあるだろって話だが……最悪だったのが、殴った相手にお偉いさんの息子が混じっていたこと。

  ───どれだけ馬鹿にされても譲れないものがある。

 自分が殴られるよりも守っていたかったものがあることを、俺は初めて知った。
 知った時には目の前でじーさんが背を向けて頭を下げていて、俺はそんな背中を見て俯き、涙しながら拳を握っていた。
 俺はきっと、じーさんを守りたかった。
 もう、最後の一人だった家族を。
 守りたいって真剣に思ったのはあの時で、きっと……じーさんも。
 ばーさんが死んでしまったことに対する罪悪感は今も胸に。
 でも、子供ってのは自分の感情に正直なくせに、妙なプライドを持っている。

「なんで謝ったりするんだよ! 俺がいじめられてたんだぞ!? じーちゃんは悪くない! 悪いのはじーちゃんを悪く言ったあいつらじゃないか!」

 謝りたかった言葉はそんな、どうでもいい自分のくだらないプライドに覆い隠されてしまって。夕暮れの帰り道、一緒に歩くじーさんは困った顔をしながら……けど、胸を一度ノックしてから……大して見せたこともない笑顔を見せて、俺を見下ろした。
 その時……じーさんが覚悟の魔法でどんなものを胸に刻み込んだのか、今も解らない。
 ただ、それはきっと……じーさんにとっては覚悟を決めなきゃいけないくらいの大事なことで、ばーさんの思い出の魔法を使わなければいけないくらいに辛いことで……それをずっと考えていれば、いつかの縁側で言ってくれた言葉の意味も、本当の意味で解ってあげられる気がしたから。

  ───お前の所為じゃないよ、博光

 人の関係っていうのは上手くいかない。
 偉ければ悪くても相手に謝らせることが出来て、偉くなければ謝らなきゃいけない。
 だけど思うんだ。
 謝りたいと思ったとき、謝りたい相手が傍に居ない時、いったいその想いはどこにぶつければいいんだろうって。
 許されたいと思っても、今ようやくあの夕焼けの空の下のじーさんの魔法の意味が解りかけても、俺は謝ることも許しを乞うことさえもが許されない。
 
中井出「どうか───」

 だから願う。
 この、天の御遣いさまに。
 今を精一杯生きている、自分が持っていないものをたくさん持っている人に。
 たくさんの後悔を抱いても構わない。
 やり直したいくらい辛い出来事に直面しても……どうか諦めず、幸せに。

中井出「たぶん……俺、この世界に弾かれたら……なにもかも忘れるんだろうねぇ。
    俺が俺で居られてるのは、
    ここが“そういう非常識が許された世界”だから……なんだろうね。
    忘れるのも怖いし無くすのも怖いけどさ。
    作り出していけるキミらが頑張ってくれるなら、果てはきっと幸せなんだ。
    俺も……頑張ってみるよ。忘れても思い出せるように、笑っていられるように。
    まずはなにをするかなぁ。友達を作ってみるとか?
    あ、いや、まずはアレだよな。
    “自分はここに居るんだー!”って、誰かに気づいてほしい」

 それで友達作って、笑って笑って、ずっと楽しいを謳歌していきたい。
 そうすれば、全部を忘れても……きっと楽しい。きっと幸せだろうから。
 ───だから大丈夫。
 最後に至った俺は、きっと幸せだ。
 俺はその果てを見てはいないけど───御遣いさま。
 どうか、俺の果てを見終えたら……夢から覚めたら笑ってくれ。
 それだけで俺は、きっとまだまだ頑張れるから。
 まあ、寝起きの顔を見届けるわけにもいかないから、もう帰るけど……、───
 楽しい世界にしようね。忘れられる俺が羨むくらい、楽しい世界に。
 くっつける時に全部を御遣いさまに託すから、そん時は殴られてやってくれ。
 その瞬間がどこの御遣いさまになっているのかは正直解らんが。
 なんかもう全然関係ない軸の御遣いさまを殴っちまったらゴメンナサーイ。
 だが男がおなごを託す時は、相手を殴ると昔から決まってイルノデス。
 湿っぽいのはなしだね、さあ、帰ろうか。


───……。


 ……と、帰るつもりだったのだが。
 座標間違えて、少々先の未来に落ちました。
 なにやら都も随分発展していて、人の波もとても賑やか。
 おお、ここまで発展させるとは……! とこの博光も驚いておるわ。
 立派に支柱やってるんだね……すげぇやかずピー。

中井出「で、ではこの博光も楽しまねばなるまい〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

 都への貢献ッッ! それは買い物ッッ!
 なので適当に買い物することにした。
 賑やかになった場所での買い物……心躍るッッ!
 もちろんどこかで歪みが出ないようにと姿は子供にしてと。

中井出「ま、まずはなにがいいかな《ゲルググゥ〜》……
    ゲフェフェフェフェ、正直な腹よ」

 腹減りました。
 まさか彰利みたいにゲルググ鳴るとは思わなかったが、腹減った。
 まずは腹ごしらえだね。

中井出「そういえば、腹ごしらえって“こしらえる”って言葉が入ってるのに、
    どうして腹を満たす意味でとられてるんだろね」

 こしらえるって、作るとか整えるとか見せかけるとか、そういう意味じゃなかったか?
 あ、でも“なだめる”って意味も混ざってるんだっけ?
 なるほど! やかましい腹をなだめる! 意味は通っている!
 などと一人で納得してると、「いらっしゃいいらっしゃーい!」と大きな声が耳に届いた。なんだろうと見てみれば、なんと肉まんを売っているじゃあないですか。

中井出(肉まん! いいね!)

 それだけではこの博光、満足は出来ないだろうけど駆けつけで食べるならなんというか肉と適量のなにかがいい。米を食べるのとも違ってて、なんというか……そう、肉まん、いいね!

中井出 「美しいお姉さん、肉まん一つくださいな」
おばさま「おやっ、可愛いお客さんだねぇ。お金は持ってるのかい?」
中井出 「押忍! えーと、はいこれ」
おばさま「あいよ毎度ありっ! 今度は親も連れて買いにきておくれな!」

 アツアツの肉まんをほぅれと渡してくれる。
 代金と交換で受け取ったそれを、まずは香りを堪能しつつハムリと食べる。

中井出(うん美味い)

 なんというか現代日本の肉まんとは違った、味は少々薄いのだけれど手間暇を感じさせる味だ。シンプルだけど重みがある……なんかいいなこういうの。肉まんの味って冬の味だよな。

中井出「んむんむんむんむ《ドジュウ!》あちぃ!!」

 調子に乗ってガボリと食べた途端、めちゃくちゃ熱い芯の部分に舌が直撃。
 反射で手を離してしまったために落ちる肉まん!
 咄嗟に拾おうと足が動き《ズパァン!》とドライブシュートが炸裂!

中井出「ゲェーーーーーーッ!!」

 飛びゆく肉まん! 待ってとばかりに差し伸べた手は届く筈もなく、見回りをしていたらしい警備隊の男の顔面にドッパァーーーンと

中井出「ゲゲェーーーーーーッ!!!」

 大驚愕!
 ほわちゃああああああああ!!とカンフー映画の男優のように叫ぶ彼は突然の事態に混乱。しかし火傷してはたまらんとばかりに他の警備隊の連中に連れていかれ、残された僕は、結局落下した肉まんを見下ろしてしくしくと泣いた。
 なんということ……せっかく買ったのに、無駄にしてしまうとは……!

中井出「……うぐっ……ひっく……うぇえ……」
一刀 「迷子……か? ああいやいや、考えるより行動っ。なぁ、どうかしたのかな」

 と、泣いていると誰かに声をかけられた。
 見れば……なんとかずピー!?
 御遣い様の急な登場に驚いたが、心配して声をかけてきてくれるのなら誠意を以って応えねばならん! 悲しみの真っ只中だけど!

中井出「せっかく買った肉まん……落とした……」
一刀 「あ、あー……なんとありがちな……」
中井出「しかも落とした拍子に咄嗟に足で受け止めようとして、
    力が入りすぎて蹴っちゃって……」
一刀 「新しいなオイ」

 ズビシとツッコミを入れられた。でも事実なのですほんとうです。

中井出「その熱々の肉まんが中身をぶちまけながら警備隊のお兄さんの顔面に直撃しちゃって……」
一刀 「肉まんを相手の顔面にシュゥウウーーーッ!!?」

 超ォオオウ! エキサイティン!!
 おお、このかずピー、ノリがいい!

中井出「警備隊のお兄さん、怒ってないかなぁ……」
一刀 「こっ……ここに居ないってことは、どこかに運ばれたんだよな……。
    まあ、大丈夫だと思う……ぞ? で、きみは迷子かなんかなのかな」
中井出「ああ迷子さ……人生という名の、長く険しい道の…………ね」

 少し中二的に髪をファサァと撫で付けて《ファ》……髪が短いからファサァとまでいかなかったが、べべべつに気にしてなんてないんだからねっ!?《ポッ》

一刀 「……最近の子供の感性が解らない」
中井出「大人ぶりたいんだ、僕」
一刀 「自覚があるだけマシなのか……」

 肉まんが潰れたのは悲しいが、これも現実と受け入れましょう。
 そしてまだ見る食を堪能するためにもこんなところでもじもじくんしている場合ではない。なので感謝を述べつつ動き出すと、次なる楽しいを求めて歩き出した。
 それからは散々っぱら毎日が祭りみたいな都の出し物を堪能して……ええ、そのままもとの時間に戻りました。


───……。


 元の軸に戻った先───自然要塞の先端広場(高さで言うと5階くらい)で僕を待っていたのは左慈でした。

中井出「出迎えご苦労!《マゴシャア!》ドズル!」

 そして殴られた。

左慈 「貴様……! 何度俺も連れて行けといったら解る!」
中井出「あらあらそんなに僕と出かけたかったの?
    でもだめよ、パパだって忙しいんだから」
左慈 「なんの話をしている!?」

 最初こそ戻ってきたら日輪を洗脳されて乗っ取られてたらどうしよう……とか思ったんだけど、結構彼らもノリ気らしい。
 外史を終わらせる確率が少しでもあるのならと、協力体勢を崩すつもりはないようだ。

于吉 「ふふふっ……振り回される左慈もまた愛らしい。
    と、常にねっとりと見つめていた気持ちではありますが、博光」
中井出「ホ? なんぞね」
于吉 「蜀が南蛮を平定、勢力を増大させたのは知っていますね?
    魏も勢力を増やし、呉も孫策の後を継いだ孫権によって、
    順調に力を取り戻しています」
中井出「うす」
于吉 「現在の三国は一種の三竦み状態。
    どちらかを狙ってどちらかが動いた瞬間を狙う気満々ですね。
    それを誘発するためにちくちくと小さな小競り合いを続けています」
中井出「あー……そりゃまた、なんとも」

 一番突撃確率の高い華琳がまず一歩を踏み出すだろうと踏んでるけど、たぶん……秋蘭のことで慎重になってるんだろうね。
 大事な仲間がまた削られるのではって。
 でもそんな恐怖もあっさり乗り越えるんだろうね、なにせ華琳だ。
 いろんな力を得たから平然としていられるけど、ヒロラインパワーがなければ絶対に戦いたくない相手No.1だろうし。

于吉「日輪はどう動きますか?
   幸い、勢力不足のために三国からはさほどの脅威と見られてはいません。
   奇襲をかけるのならいつでもといった状態です」

 ふむり。そうさのう。

中井出「別に俺が天下統一したいってわけでもないんだよね、実は。
    我らの目的は外史統一。どっちかっつーとこの歴史を長引かせる必要がある。
    どこかが統一して終わり、じゃ困るんだ」
于吉 「なるほど? つまり適度に引っ掻き回しつつ、外史を長引かせると」
中井出「そゆこと。まあ、終着する場所は出来れば───」

 ───たとえいずこにあれど───

中井出「……んにゃ、なんでもない。
    みんな頑張ってるんだもの、私情の入れ込みすぎはいかんね。
    兵のみなさまの成長はどげな感じ?」
于吉 「現在ようやく1000を越えたところでしょうか。
    まあ、戦死(する寸前に回収)した者や動けなくなった老人らを集めた衆。
    使えるようになった者が1000という意味であり、
    数だけならば既に万を越えています」
中井出「募集する必要がないのはいいことだよね。あ、ところでさ。
    かずピーの先輩らのキミらに訊きたいことがあるんだけど」
于吉 「聞きましょう」
中井出「サンクス。えーと。かずピーはほら、攻守の氣を持ってるじゃない?
    でもきみらは守りのものだけ。守りっつーか……知力?
    きみらも外史の影響で自分の世界に忘れられた存在なら、
    別の氣を持ってたりはしないの?」

 訊いてみれば、ああそういうことですかと于吉は笑った。
 さっきからムスッとした顔で聞き耳だけは立てている左慈は、相変わらずのムスっとさんだ。

于吉 「それはとても単純な話です。我々は確かに別の世界から来た者ですが、
    北郷一刀とは違い、誰かに望まれて現れたわけではありませんから」
中井出「ホ? それって……どゆ意味?」
左慈 「根源の話だ。根源、根底、根っこに存在しなければならない土台。
    この世界が外史で、北郷一刀が割った欠片の数だけあるとする。
    舞台は俺が居た世界。その世界が作られるために世界が欲するものとはなんだ」
中井出「あ……登場人物?」
左慈 「ふん。馬鹿ヅラの割りに意外と理解が早いじゃないか。
    そういうことだ。俺達は人に願われたのではなく世界に願われた。
    だから御遣いなどという存在に必要な氣などは付加されなかったし、
    自分が元より持っている力を鍛えることしか出来なかった」
于吉 「まあ、代わりに道術や方術を会得しましたがね。
    いわば私たちの力は元の氣と、世界から託された人物像というものですよ」
中井出「人物像か。登場人物としてその能力を得たとかそんな感じの?」
于吉 「ええ。ちなみに、私たちも忘れられた存在であるからには、
    恐らくはあなたのことを忘れることもない。
    北郷一刀は元の世界に戻り、再びここへ戻ってきた例外中の例外ですが───
    考えてみれば不思議なものですね」

 顎に親指と曲げた人差し指を軽く当て、思考のポーズを取って言う。
 不思議というのは……戻ってきた、というところにあるんだろうか。

于吉 「ほとんどの場合、御遣いは天……元の世界に戻ることなく外史に居続けます。
    私たちが見てきた蜀と呉の勝利の世界でもそうでした。
    魏ではどういうわけか、元の世界に戻るばかりか世界が意味を持ってしまった。
    他と魏との違いはなんなのかと考えているのですが……さて」
中井出「解らんこと考えてても仕方ないよ。俺が言うのもなんだけど。
    きっと“その外史のあるべき”から外れすぎたんじゃない?
    たとえばその外史では華琳じゃなくて別の誰かが勝つ筈だったとか。
    なのに捻じ曲げたから、外史から異物として弾かれたと」
于吉 「ふむ? つまり魏の外史では、魏の外史だと思っていたが実は違っていて?
    曹操が北郷一刀の力を借りて勝利したからこそ外史が捻じ曲がり?」
左慈 「曹操が軸となる世界として再構築された、と?」
中井出「そ。だから、その時点で華琳が願えば御遣いは新たに呼び込まれる!
    ……と、適当に考えときゃいーじゃない?」

 猛者知識によれば、その外史でかずピーが一番に会うのは……なんとあのアニキさんら三人。そのあとで言うなら星が一番最初だ。
 言葉さえ間違わなければ一緒に行動して、いずれは白蓮と出会い、桃香と出会っていたかもしれない。そういう意味では魏ではあったが魏のルートではなかったのかもしれないのだ。

左慈 「……チッ、なるほど。崩れる筈だった外史が意味を持った理由が解ったぞ」
于吉 「迂闊でしたね、これはつ───」
中井出「いや、キミ于吉でしょ」
于吉 「迂闊と于吉をかけた洒落ではありません。
    ……これはつまり、外史に新たな可能性が生まれたことになります。
    待っていれば崩れる世界ばかりではなくなったということですか。
    やれやれ、世界はいつだって否定者にはやさしくないですね」
中井出「ゲフェフェフェフェ、そんな世界も統合しちまえば一緒よ。
    ……そこじゃあきみらももう否定者ってカテゴリから外される。
    一つの世界だからね。もう忘れられることなくその世界で生きられるさ。
    謳歌して満喫して、満足しながら死んでいきなさい」
于吉 「年老いて死ぬことを夢見ることなど、幼い頃には考えもしませんでしたがね」
中井出「俺としては貂蝉の幼少の頃が想像出来ん」
左慈 「同感だ」

 あんなゴリモリマッチョなお方の幼少。
 ひょろい姿がまるで想像出来ぬわ。
 生まれた頃からモンゴルマッチョでしたって言われたほうがまだ頷ける。

于吉 「さて。話し合いもここまでにしますか。
    兵の調練は賈駆、華雄に任せてあります。
    戦いに出せる兵はどんどんと増えるでしょう。
    この外史は随分と歴史が滅茶苦茶ですが……ふふっ、まあ。
    たまにはこういう予想外続きも悪くはありません」
左慈 「…………フン」
中井出「おっほっほっほ〜〜っ♪」
左慈 「《なでなでなでなで》やめろ貴様気色悪い! 何故頭を撫でる!」

 ずぱーんと手を叩かれてしまった。しかし構わず抱き締めて頭を撫でまくる。
 いやもう小柄のくせに背伸びちゃんなところが、男にしておくのはもったいないくらい可愛いぞこいつめ! いや、もちろん僕に男色のケはないけど、こやつはこやつでいい味出してる!
 于吉が言っていた“悪くはない”ってところに同感だったのか、少し不機嫌そうに、しかし否定をしないこのお子のなんとかわゆいこと!
 老若男女差別をしないこの博光が、たっぷり撫でちゃる!《ドボォ!》ゲェッフ!?
 ……殴られました。鳩尾です。

左慈 「貴様……自分が利用される立場にあることをまるで理解していないようだな」
中井出「おー!? なんだコラやる気かコラ表出ろコノヤロー!!」
左慈 「望むところだ!《ダッ!》」
中井出「隙ありゃぁあああっ!!!」
左慈 「なっ《がごぉんっ!》ぶぎゅるっ!?」

 我先にと走り出した彼の後頭部にナックルパート。
 吹き飛んだ彼は、見事に先端広場から落下していきました。
 そう、建築物5階建て分くらいの高さから。

于吉 「……落ちましたね」
中井出「大丈夫。緑川さんボイスのキャラは強いんだ。
    16号とリオン=マグナス以外はあまり死なないって話だぞ」
于吉 「なんの話ですか、なんの」

 ともあれ、悪は去った。

左慈 「貴様ァアァァァアッ!!」
中井出「わっ! もう戻ってきた!」

 そして普通に根っこからここまで駆け上ってきたようだ。
 あそこから落ちても平気なんて……すごいね、人体。

左慈 「不意打ちとはやってくれる……!
    貴様が俺を殺そうとしているということはよく解った……!」
中井出「不意打ち? 違うな。表出ろコノヤローと言った時点で戦いは始まってたのさ。
    だというのに貴様は無様にも俺に背を見せた。ただそれだけのことよ」
左慈 「チィッ……一理ある……!」
于吉 「阿呆ですかあなたは」
左慈 「誰が阿呆だ!!」

 あー……うん、あれだ。筍ケのツンと華雄の抜けている部分を足したようなヤツだ。
 本当は頭もキレるんだろうけど、別の意味でキレやすい所為で頭のキレが活かしきれないタイプだね。ううむ、残念ライバルタイプってやつか。

貂蝉「ンもうぅん! さぁあ〜〜っきからぺちゃくちゃうるさいわねぇえ〜〜〜ん!!」

 と、お馬鹿なやりとりをしていたら、先端広場上空からドシーンと巨漢が落ちてきた。
 どうやら上の広場で寝ていたらしい。口の端に涎の跡が。

貂蝉「あらん? だぁ〜れかと思ったらぁん、左慈ちゃんじゃにゃ〜〜いにょぉん」
左慈「……チッ。消えろ。否定者として、貴様の顔など見たくない」
貂蝉「にょほほほほ、ぬぁ〜に言っちゃってるのかしらぁ左慈ちゃ〜んとぅあ〜るぁん。
   否定と肯定を合わせた先にあるのが統合正史世界なんだから、
   私たちがどれだけ仲良くしてもぅ、ぬふんっ? 問題なんかないのよぉん?」
左慈「ああそうか、なら言い方を変えよう。───馴れ合うつもりはない、失せろ!」

 ギンッと眼光鋭く言い放つ左慈。
 そんなシリアスを開始した彼の脇腹を、こう、ギムリと固めた指先でゾスと

左慈「《ゾスッ》ふひゃおああっ!!?」

 うむ!

中井出「《バゴシャア!》ソルベ!」

 蹴られた。
 うむ! と笑顔で頷いた途端でした。

左慈 「いちいち話の腰を折るな貴様!」
中井出「いやいや、べつに正史にしちまえば避けられん道なんだから、いいじゃん。
    馴れ合いじゃなくて協力なんだから。ね?」
左慈 「誰が仲良くなどするか」
中井出「じゃあきみだけ外史に置き去りにするとか───」
左慈 「!? ま、待て! ハッ……いや、そんなことが出来るわけがっ!」
中井出「時空の狭間に置き去りにすれば出来るよ? 飛んでみる?」
左慈 「………………!《だらだらだらだらだら……!!》」
中井出「ずっと、ずぅっとだぁ〜れも居ない、ただ流れるだけの濁流に飲まれるの。
    運がよければどっかの世界に落ちるかもだけど、
    そこが宇宙空間だったらどうしよう。マグマの中だったら?
    そしてキミはそんな場所で、
    キミの望むように馴れ合いも知らないままに、
    考えるのをやめて寂しく時を繰り返すの。
    外史統合の呪縛から解かれてないんだもの、繰り返すしかないよね?」
左慈 「───! ま、待て! 解ったやめろ! 〜〜〜っ……き、貴様ぁあ……!
    俺達が否定がある限り繰り返す存在だと知ってて……!」

 え? そうなの?
 ───っとと、あやうく口に出すところだったぜ……!
 いつも僕ってばこういう時でポカするからね。
 たまには押さえ込んでなんとか騙し徹してみせましょう!

中井出「そう、繰り返す存在だからこそ、辿り着きたい場所がある。
    僕らの夢と希望は目の前なのですよ? そこで手を伸ばさずどうします。
    ……ともに、ゆきましょう?
    俺達の手で世界を正史に変えて、終わりに向かえる人生を歩むのです」
左慈 「終わりに……」
中井出「そう。成長して、知り合った誰かと馬鹿なやりとりしながら、
    つまらないと感じながらも僅かにある楽しいを拾って歩く人生。
    そんな世界を俺達と作ろうぜ。……きみの力が必要なんだ。俺と、来てくれ」
左慈 「あ───」

 手が一瞬、持ち上がりかけた。
 必要だなんていわれたことなどなかったんだろう、見て明らかってくらいに動揺して───

左慈 「っ……かっ……勘違いするな! ……俺は、俺の力で世界を作るんだ。
    その行動に貴様らを巻き込むだけだ! 俺が作る世界に貴様らが協力しろ!」
中井出「あーはいはい、ツンデレツンデレ」
左慈 「だだ黙れ! 貴様、俺がその意味を知らないとでも思っているのか!?」
中井出「もちろん知ってるだろうさ、みんな知ってることだ。
    ツンと突くだけで相手がデッド・レイジングなんだ。すげーよな」
左慈 「……、…………本当なのか!?」
中井出「うそじゃ」
左慈 「貴様殺す!!」

 まあはい、日々はこんな感じです。
 今のところ前面戦争なんてことにはなっていないものの、緊張が続いている。
 俺達のところはまあ、ちょっとヌケてはおりますが。
 そんなふうに馬鹿やりながら兵たちを強化する日々。


 多すぎる魏の精鋭に対抗し、蜀と呉が同盟を結んだと聞いたのは───

 今から少し、後のことだった。




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