永遠の0/貧困鎮守府無法地帯

 提督が鎮守府に着任しました。
 これより、作戦の指揮をとります。

中井出「…………エッ!?」

 ハッと気づいた時、そこは何処とも知れぬ世界だった。
 なんか急に視界が広くなって、そんでもって急に旗艦を決めてくださいとか言われた。
 よく解らんが心に広大なるロリコニアを持つ自分にとって、選ぶべきは当然ロリィ存在である。
 誰がよかろう、と考える間も無くキミに決めた。

電 「電の本気を見るのです!」

 電と書いて“いなづま”と読むらしい。
 そんなこんなで、提督としての変わらぬ日々が始まりました。
 ……なんで俺、ここに居るんだろうね。

……。

 まず最初に求められたものは、任務というものだった。
 なにか視界にちらつくけど知らない。猫をぶらさげた小さなお子など見えませぬ。
 謎のメガネおなごがニョキリと現れ、お疲れ様ですとねぎらってくれた。
 うんごめん、まだなんにもやってないんだ僕。
 名前は大淀(仮)。おおよど、と読むらしい。

大淀 「初任務ですか?」
中井出「お、押忍。よろしゅう。ちなみに任務ってなにをすればいいの?
    いきなりこげなところに飛ばしておいて、
    大した説明もなくいきなり任務ってなにがなんだかもう。
    いやね、そりゃ電ちゃん選んだあとにいろいろ言葉を叩き込まれたよ?
    でもその後は執務室に突っ込んで“さあ頑張れや”は無いと思うんだ」
電  「はわわわわ、おち、落ち着くのです司令官さんっ」
中井出「うん、電ちゃんこそ落ち着こうね?」

 そげなわけで任務開始。
 初めての……ハテ。

中井出「あの……ヨドバシカメラさん、
    俺にはこの文字が、初めての編成に見えるのですが」
大淀 「“おおよど”です」
中井出「……あの。ウチ、まだ電ちゃんしかおらへんのですが」
大淀 「………」
中井出「………」
電  「…………な、なのです」
大淀 「受けるだけならタダです」
中井出「ダヨね!」

 一気に五つまで受けられるそうなので、受けておきました。

中井出「さぁて! じゃあまずは無視してたチュートリアル娘に話しかけよう!」
電  「知ってて無視していたのですか!?」
中井出「ウヌ!《どーーーん!》」

 そんなワケで任務室から出て執務室へ。
 すると両手で猫の前足を掴んでぶら下げている、謎のちっこい娘が……!

中井出 「………」
チュー娘「………」
電   「あのっ……あ、あのっ……」

 見つめ合う。
 ていうか猫大丈夫?
 とりあえず何も言ってくれないので以心伝心。
 そう、まるで武具の意志に語りかけるようにしてみると、

『工廠で新しい艦娘を建造しよう!』

 ……と、声が聞こえた。

中井出 「オウ? ……新しい艦娘を建造すればいいの?」
チュー娘「!」
電   「はわっ!? 司令官さん、聞こえるのです!?」
中井出 「ゴハハハハ、この博光にかかれば喋れぬ者の声くらい、胸に届くさ」

 聞こえたことがおかしいってくらいに驚かれた。
 むしろチュートリアル娘に足を引っ張られ、さっさと来いとばかりに促されておりマッスル。
 いやね、このお子、ちっこいの。妖精さんって言われればアーナルホドーって頷けるくらいちっこい。
 そんなお子に導かれるままに歩いてみれば、なんというかだだっぴろい場所。
 工廠、と書かれただだっぴろい吹きぬけの場所へと辿り着いた。
 そこにはなにやらいろいろな機材があって、電ちゃんの話では

電 「ここで資材を振り分けて依頼をすれば、新しい艦娘が出来るのです!」

 とのこと。

中井出「ところで電ちゃんや?」
電  「なのです?」
中井出「……艦娘ってなに?」
電  「!?《がーーーん!》」

 まずはそこからでございました。

……。

 さて。
 とりあえずどうしたらいいかも手探りな状況なので、資材は適当な分量で建造を開始。
 その最中に電ちゃんに艦娘とはなんぞやを教わって、フムフムホホーと頷いた。
 艦娘とは武器を手に、深海棲艦とやらと戦う娘、らしい。
 それぞれに過去に実剤した水上艦の名が宛がわれ、彼女らはそれらを元とした装備を武器に戦うのだとか。

中井出「するってぇとあれですか? 電ちゃんも元は戦艦?」
電  「私は駆逐艦なのです」
中井出「駆逐艦……なんか強そうな響きだね」
電  「? 響は二番艦なのです」
中井出「?」
電  「?」

 疑問符が飛び交った。
 まあそれはそれとして、暇だ。

中井出「建造って結構時間かかるのね」
電  「建造を一瞬で終わらせる、高速建造というものもあるのです」
中井出「なんですって!? じゃあ早速それを」
電  「高速資材が無くなるけど、良いのでしょうか……」
中井出「あるなら使う! 困るのは無くなってから! ハイオーケー!」
電  「では妖精さん、お願いするのですっ」
妖精 『《ババッ!》』

 電ちゃんが、パタパタと動き回っていた妖精さんに声をかけると、妖精さんが海軍式の敬礼を。
 直後に何故か火炎放射器で積んでいた資材をゴシャーと燃やしてホギャアーーーーッ!!?

中井出「いやちょっ……電ちゃん!? 電ちゃァアーーーん!!
    なんか燃やしちゃってるんですけど!? 大丈夫なのこれ!」
電  「だ、大丈夫なのです、落ち着いてください司令官さんっ」

 俺の心配を余所に、妖精さんが火炎放射器を放ち終えると、何故かそこから眩いばかりの光が!

中井出「ごぉおわぁっ!! 目がぁっ! 目がぁああーーーーっ!!」
電  「ふにゃあーーーーっ!!?」

 なんというか、建造ひとつに大騒ぎである。
 ほら、妖精さん呆れてらっしゃる。
 だがしかし、眩しさが収まってからぱちりと目を開けば……

暁 「暁型駆逐艦の一番艦、暁よ。一人前のレディーとして扱ってよね」

 ……なにやら電ちゃんと同じ制服を着たお子がちょこんと立っておりました。

中井出「………」

 いや……なにここ。天国か?

暁  「あなたが司令官ね? 暁が来たからにはどーんと胸を張っていいわよ?」
中井出「ロリコニアへようこそレィディ。
    あなたをエスコートさせていただく提督、中井出です」
暁  「えっ? レディー? え、あ、そ、そうよ、うん。レディー。私レディー。
    ところでろりこにあってなに?」
中井出「幼女たちが集う、ロリコンどもの約束された楽園の名前」
暁  「一人前のレディーだってば! 幼女じゃないわよ! ぷんすか!」
中井出「やべぇ電ちゃんこやつめんこい! ああもうなでなでしちゃる!」
暁  「《がばしー!》はわーーーっ!? ちょなななななにするのよぅ!
    レディーを急に抱き締め《なでででででで!!》ふにゃーーーっ!!?」

 ちっこいレディーを抱き締めて振り回してなでなでしまくりました。
 ……散々堪能してから解放すると、レディーはぐったりとして弱々しかった。

中井出「ど、どうしたレディー! しっかりしろレディー!」
暁  「う、うぅうう……だ、誰の所為だと……!」
中井出「……こんな話、知ってるか?
    かつての世、自分を一人前のレディーと謳った女性は、
    どれだけ周囲に振り回されようとも弱った姿を見せなかったそうだぞ」
暁  「《シャキィン!》さ、最初の洗礼としては中々の歓迎だったわ司令官。
    これからはこの暁がこの艦隊を引っ張っていってあげるんだから、感謝なさい?」
中井出「いやいやなに言ってんだレディーこの野郎。
    この艦隊の旗艦は電ちゃんだから、貴様が引っ張るものなんてなにもないぞ?」
暁  「エスコートするって言ったじゃない!」
中井出「それと旗艦とは別だレディーこの野郎!」
暁  「レディーなんだからこの野郎つけないでよ! ……って、電!? 電じゃない!
    なんでこんなところに!?」
電  「はわわわわ、そ、それがその、司令官さんに旗艦として選ばれまして……」
暁  「……苦労したわね」
中井出「ねぇ電ちゃん、このレディーにアイアンクローしていい?」
暁  「そっちの“くろう”じゃないわよう!」

 騒ぐのもそこそこに、とりあえずは次だ。
 えーと?

中井出「電ちゃん、次は編成任務でよかったっけ」
電  「あ、はいなのです。この書類によると……《ぱらららら……》」
暁  「……《うずうず……》し、仕方ないわねぇ電は。ほら、暁に貸してみなさい?
    私がきっちり書類整理も報告もやってあげるんだから」
中井出「いやいや引っ込んでなさいレディーこの野郎。
    着任したばかりのレディーに仕事を任せては提督の名が廃る」
暁  「レディーをこの野郎よばわりしておいて、今さら廃る名があるの!?」
中井出「知らなかったのかレディー。これが今時のエスコートの仕方なんだぞ?」
暁  「えっ───し、知ってるわよ、レディーだもん!
    ぞ、存分にこの野郎呼ばわりするがいいわ!」
中井出「ちなみに嘘だ」
暁  「ぷんすかーーーっ!!」

 顔を真っ赤にしたレディーにぽかぽか殴られた。
 ぽかぽかというか、ドゴォドゴォと。
 おおう、兵装積んでるだけあって腕力すごい。
 だがVITに振り分けたこの博光に死角無し。全て受け止めてくれよう。

中井出「しかしあれだね。この世界はこう、めんこいのしか居ないのかね。
    だとしたらもう天国以外のなにものでもないのだが」
電  「めんこい? ……はい、かわいい人ばかりなのです」
中井出「マジか」
電  「まじなのです」

 つい素な声で訊ね返してしまった。
 ぷんすか怒りながらドカドカ殴ってくるレディーを右腕で抱え、左腕では書類を改める電ちゃんを抱え。
 肩に乗せる形で編成ドックへと歩いた。

電  「はわわわわ!? し、司令官さんっ、重くないですか!?」
中井出「オウ? いや、軽すぎるくらいだけど」
暁  「レッ……うん、レディーに対しては万点の対応ね」
中井出「……レディーに対してなら、普通は腕を差し出すだけだと思うなぁ」
暁  「うー! うーーーっ!!」
中井出「《ボゴドスドゴドゴ!》あだっ! いだだだだ! これ! 殴るでないよ!」

 そんなわけで、レディーをからかいつつ次の任務消化へ。
 といっても編成するだけなので、すぐに終わった。

電  「第一艦隊、第一水雷戦隊、出撃……じゃなくて、編成なのですっ」
暁  「ちょっと司令官! なんで暁が旗艦じゃないの!? 一番艦なのに!」
中井出「それは電ちゃんが秘書であり旗艦だからだよレィディ。
    お姉ちゃんなんだから我慢なさい、なんて言葉は嫌いなので言いません。
    だが! ……レディーなら、聞き分けなさい」
暁  「うぅっ……い、いいわよ!? だってレディーだもん!」
中井出(エエ子や……!)
暁  「《なでなでなで》だだだだから気安くディーの頭をぉおーーーーっ!!」
中井出「しかしなぁレディー。レディーがそんな、制服姿というのはいかん。
    もっとこう、洒落たドレスとかをだな」
暁  「えっ? ドレスッ?《ぱああっ……!》」

 ───ドレス。
 その昔、甲板で一人の男が外国人男性をヌンチャクに見たて、振り回したことからその名がつけられた。
 装いとされるその名の通り、高速で振り回される者の姿が残像として残り、まるでドレスのようだったからと言われ───

中井出「覚悟はよいか」
暁  「よくないわよぅ!!」

 泣かれた。

……。

 建造任務、編成任務に続き───

中井出「電ちゃん、この近代化改修ってなに?」
電  「あ、はいなのです。えっと、近代化改修。
    艦娘を艦娘に溶け込ませて、パワーアップさせることらしいです」
中井出「ほう。艦娘と艦娘を……《ちらり》」
暁  「え? え、あの……え?」
中井出「任務だもんなぁ……上からの命令だもんなぁ……」
暁  「やっ……やだ! こんな、産まれたばかりで消されるなんて、やだよぅ!」
中井出「……レディーよ。これもレディーの務めぞ。
    前途ある者のため、己の力をのちに残す……これぞ淑女ではないのか」
暁  「ひうっ……!? だ、だって、でも、でもっ……!」
中井出「選ぶのですレディー。
    一人前のレディーとして電ちゃんのパワーアップ資材となるか、
    ひとりのおなごとしてともに生きてともに戦うか!」
暁  「う、うぅ……あ、暁は……! 暁は……!」

 突如として始まったドラマ。
 暁は怯え、提督は真剣な眼差しでもって見つめ、

電 (話についていけないのです……!)

 電は混乱していた。

中井出「レディーとはなんぞや! レディーとは!」
暁  「お、男とは死ぬことと見つけたりって言葉があるのよ!
    だからレディーは生きないとだめなの! だから───死にたくない!
    産まれたばっかりだもん! 消えたくないよぅ!」
中井出「フッフフ、それが貴様の答えか。改修に使われたくないと」
暁  「な、なによ。また馬鹿にするの?
    すればいいでしょ? なによ、人のこと───」
中井出「合格!《ずぱぁーーーん!》」
暁&電『ふにゃあーーーーーーっ!!?』

 突如、特大のクラッカーが鳴った。
 そこからは紙吹雪が舞い、狼狽える二人へと降り注いだ。
 ……肩車したままで。

中井出「OK素敵だレィディ! これですぐに自分の命を捨てるようなこと言ったら、
    そのままブッ叩いておったわ!」
暁  「えっ……しないの? 近代化改修の資材に」
中井出「しない!」
暁  「いいの? 暁、ここに居て、いいの?」
中井出「いいとも!」
暁  「う……うう、うううぅう……!」
中井出「おおっほっほっほ、これこれ、レディーがこんなことで泣くでないよ。
    いいかいレディー、命を粗末にする者は、この鎮守府には要りませぬ。
    己を大事になさい。たとえ命令だろうが、
    死ぬと解ってて突撃する者を俺は愚者と呼びましょう。
    だから生きてください。どんな出撃でも、必ず生きて帰りなさい。
    あなたがたの家は、ここなのですから」
暁  「司令官……《なでなでなでなで》あぁああうぅうう!!
    頭をなでなでしないでよ! もう子供じゃないって言ってるでしょ!?」
中井出「なんと!? そげなことは初めてきいたわこのうそつきレディーめ!」
暁  「ていうか肩車しながら頭に手が届くってどういう───ひきゃーーーっ!?
    てっ、てててっててて手が伸びっ!? 伸びぃいーーーーっ!!?」
中井出「? そりゃ博光ですもの、伸びますよ?」
暁  「当たり前のように!?」
中井出「あ、それで電ちゃん、次の任務は?」

 肩車した状態でボコボコに殴られる俺をよそに、はわわと言いながら書類をめくる電ちゃん。
 さて、あと何があったかな。

電  「えと、はじめての出撃と、はじめての演習があるのです」
中井出「演習と出撃……演習っていうのは?」
電  「他の提督さんのところの艦隊と、模擬戦闘をするのです。
    もちろん戦うわけですが、演習ですので轟沈したりはしないのです」
中井出「よし演習だ! まず演習で慣れてから出撃!」
暁  「あ、暁はもう一人前だから、演習なんてしなくても」
中井出「だめだ」
暁  「最後まで言わせなさいよぅ!」

 さあでは演習!
 ……でも演習ってどうすりゃいいんだろう。

中井出「なぁレディー。演習ってどうやればいいか知ってるか?」
暁  「えっ? えと、それはその。…………う、うー」
中井出「ま……まさか知らないのかレディー」
暁  「そっ!? そそそんなわけないじゃないっ!
    レディーはなんでも知ってるものよっ!?
    演習をするには、ええっと、えーーーっと……!
    そう! 隣の提督に演習要請をするのよ!」
中井出「そうなの? 電ちゃん」
暁  「なんで電に確認とるのよぅ!」

 ああもうやばいこのお子、からかい甲斐があってかわゆいです。
 そんなお子を肩に乗せながら、隣の提督の執務室を目指しました。
 いや、書類を送ればいいそうなんだけど、ここは直接ってことで。





-_-/晦悠介

 ハッと気が付けばよく解らない場所に居た。
 旗艦を選べと言われてとりあえず選び、チュートリアルだかなんだかを進め、現在は演習で詰まっているところであり……

悠介 「五月雨、演習要請はどうなってる?」
五月雨「はい、提督。ただいま同レベルの提督との連絡を待っているところです」
悠介 「そっか。悪いな、正直なにをやっていいかも解らないんだ。
    しばらく迷惑をかける」
五月雨「いえっ! 一生懸命、頑張りますっ!」

 大人しそうな雰囲気かと思いきや、結構元気な子だった。
 さて、このよく解らん世界に飛ばされてからどれくらい経っただろう。
 間違いようもなく、提督……中井出の辻褄の旅に巻き込まれたんだろうが……。
 と、眉間に寄っていくシワをほぐしつつ、これからのことを考えていると、コンコンとノックされるドア。

五月雨「あ、はい。どなたでしょう」
声  「レディーである!《どーーーん!》」
声  「ほわっ!? ちょ、レディーは私っ……ていうか司令官!
    暁の名前、レディーだとか思ってないわよね!? ねぇ!?」
声  「え? 暁型の一番艦で、レディーでしょ?」
声  「暁型のネームシップだから暁でいいのよぅ!!」
声  「なんだとレディーてめぇ! 貴様この博光をたばかりおったか!」
声  「はわわわわ!? 落ち着くのですふたりとも……!」
五月雨「………」

 出迎えをしようとした五月雨が固まってる。
 ああ、解るよ五月雨。戸惑うよなぁ、開けていいものかって迷うよなぁ。
 けどそっか、提督もこっちに来てたのか。

悠介 「五月雨、入れてやってくれ。俺の知り合いだ」
五月雨「あ、はい提督っ」

 五月雨の手で扉が開かれ、一人の男が入って《ドゴォ!!》

暁  「はがおっ!?」
中井出「ややっ!? レディー!?」
電  「はわわわ!? 暁ちゃん!? しっかりするのです!」

 ……提督の肩に乗っていたうちの一人が、出入り口に頭をぶつけて悶絶した。
 もう一人はきちんと頭を下げたのに。

中井出「大丈夫かレディー! しっかりしろレディー!
    ところで“ハガ夫”って誰!? ねぇねぇ誰!? ねぇったらレディー!!」
暁  「ふぅうううんぐぐぐぐぐぐぅうう〜〜〜〜っ……!!!!」

 ああそっか……この世界でのいじられ役はキミなんだな……。
 まあ、なんだ……強く生きろ……?

五月雨「あ、あの。あなた方は……」
中井出「おっとこりゃ失礼! 手前、姓は中井出、名は博光と申すもの!
    隣で提督をやっとる者でゴワス!
    今日はちと初演習の相手をしてもらえればと自ら来ました! ハイ!」
五月雨「隣の!? あ……て、提督っ」
悠介 「ん、言った通り知り合いだから。前の世界ぶりだな、提督」
中井出「あれ? ややっ!? 晦ではないか! 貴様何故ここに!?
    あ、でもそんなことは捨てておいてとりあえず、やあ」

 やあ、と手を上げられたので、やあと返す。

中井出「そっかそっか、隣は晦だったか。あれ? じゃあ逆の隣は?」
悠介 「このパターンだと彰利じゃないか?」
中井出「まあ、そうだよなぁ。あ、ところで演習OK?
    これやらんと任務が達成出来んのだ」
悠介 「こっちこそ頼む。丁度相手を探そうとしていたところだ」
中井出「ほかほか。ところで晦一等兵、もう建造やったんだよね? お二人目は?」

 提督がキョロキョロと執務室を見渡す。
 が、居ないのは当然だ。
 なにせまだ建造自体が済んでいない。

中井出「おや。高速建造やらなかったのか。うじゃ、ちょっと一緒に見にいかん?
    どんな娘か気になる気になる!」
暁  「先輩レディーとして、身の振るい方を教えてあげるわ!」
中井出「いや、うちの艦娘じゃないからね?」
暁  「あっ……《かぁあ……!》解ってるわよぅそんなこと!」
中井出「やべぇかわいい……! 電ちゃんどうしようレディーかわいい!」
電  「すっかりおもちゃさんなのです……」
暁  「誰が誰の玩具よ!」
悠介 「あーはいはいやかましい。いいからほら、工廠いくぞー」
暁  「暁の出番ね!? 見てなさい!?」
電  「電の本気を見るのです!」
悠介 「なんで出撃する気満々な体勢なんだよ……」
五月雨「い、いよいよ私たちの出番ですねっ!」
悠介 「真似せんでよろしい」

 相変わらず、提督には奇妙な影響力があるらしい。
 主に人を巻き込むかたちで。

……。

 工廠。
 こうじょう、と読むだだっぴろいそこで、俺達を待っていたのは眩い光だった。

暁  「《びくぅっ》きゃあっ!?」
中井出「………」
電  「………」
暁  「……な、なによ。ちょっと光ったからびっくりしただけじゃない!
    べつに怖かったわけじゃないんだから!」
中井出「ブホッシュ。いやいや僕別に思ってないよ? お子様だなんて」
暁  「お子様言うなぁっ!」

 提督と少女のやりとりはこの際ほうっておこう。
 俺自身、なにが生まれるのかが非常に気になっている。
 くじを引く時の気持ちとは明らかに違う、頼もしいなにかが生まれるこの期待感……!

少女「初めまして、弥生、着任……。
   あ、気を使わないでくれていい……です」

 ……。なんだか、もの凄く大人しそうな子が誕生した。

電  「はわわわわわ! 綺麗な人なのです!」
中井出「ぬ、ぬう! これはロリとして判断すべきかどうすべきか!
    いや、これはロリと呼ぶにはあまりにスラッとしすぎている! よってノン!」
暁  「あ、暁は!? 暁はレディーよね!? ロリじゃないでしょ!?」
中井出「なにを言っとるんだこのロリっ子は……」
暁  「ぷんすかーーーっ!!」
五月雨「あの……提督。お隣さんが喧嘩を……」
悠介 「捨て置け」

 弥生、と名乗った少女がトコトコと歩いてくる。
 歩いて歩いて……

弥生 「あなたが…………司令官……」
中井出「え? 俺?」

 ……盛大に間違えた。

中井出「やべぇぞ晦! このお子天然だ!」
悠介 「わざわざ大声で言うなぁっ!!」
弥生 「え……え?」
中井出「えーと、弥生さん? 俺隣の提督。キミを建造したの、あっちの提督」
弥生 「…………、───……《シュボッ!》」
中井出「ワーオ顔真っ赤!」
弥生 「だ、大丈夫……べつに、怒ってないです……から……!」
中井出「いやでもちょっとすごい顔赤いよ!? 大丈夫!? 平気!?」
弥生 「だ、だから、気を使わないでくださいったら……!」
中井出「電ちゃんおしぼりだ! 顔を拭くおしぼりを!」
電  「は、はい! すぐ用意するのです!」
弥生 「き、気をつかわなっ───」
中井出「ほらこれで顔拭いて!? あーあー涙出ちゃってるじゃないか!
    ほらほら動かないで拭いてあげるけぇ!」
弥生 「や、だからっ……!」
電  「動いちゃだめなのです!」
弥生 「気をっ……気を使われるとっ……」
暁  「一人前のレディーとしてやさしくするわ! えーとやさしくやさしく……」
中井出「あっ! これっ! レディーそうじゃない!」
暁  「えっ!? そうなの!?」
中井出「うそじゃ」
暁  「むきぃーーーーーっ!!」

 こっちが心配になるくらい真っ赤な、えーと、弥生。
 しかも中井出に絡まれまくって恥ずかしさを刺激されまくり、涙目である。
 あーうん、提督ー? あんまり人のところの艦娘をいじめないでくれなー?
 ……だからって、あまり自分のところの艦娘もいじめないでやってくれな。

中井出「よっしゃあソィじゃあ演習してみよう!」
悠介 「いや、ちょっと待ってやってくれ。
    建造したばっかりで戦わせるっていうのも、ちょっとな」
中井出「ム。ナルホロそりゃ確かに」
弥生 「し、司令官……弥生に気遣いは……」
悠介 「はーいはいはい、お黙りなさい産まれたて。
    そんな涙目で何を言う。寝言は寝てから言えこのたわけ。
    とにかくそういうわけだから、先にちと彰利の方を見てみないか?」
中井出「おお、そりゃ良い提案。あやつめ、誰を旗艦にしたかなぁ」
悠介 「順当にいって、叢雲あたりじゃないか?」
中井出「どっちかっつーと、晦がそっちでいくかと思った」
悠介 「叢雲の頭の上のあれがなぁ……封冠に見えてなぁ……」
中井出「アー……」

 俺達にしか解らないことで、ひどく深く、頷き合った。
 ともかく、留守を五月雨と弥生に任せて、俺と提督は隣の隣の鎮守府へ。




-_-/弦月彰利

 ……コ〜〜〜ン……

悠介 「で……辿り着いて早々、なんでこいつはこんなに落ち込んでるのかな……」
中井出「なにかとんでもねぇ失敗やらかしたんじゃないかね」
彰利 「……任務の近代化改修で、旗艦を新規の艦娘に合成した……」
悠介 「ぐわぁあーーーーーっ!!」
中井出「イッタァアーーーーーーッ!!」

 なにやら中井出とダーリンがやってきた。
 そんな二人に今の悲しみを打ち明けると、二人はそれはもう悲しみを口にして叫びました。
 うん、アタイ悲しい。

中井出「なんだってそんなことに……新規の子を合成させるなら解るったって」
彰利 「システムがよー解らんかったんじゃい!
    なんか吹雪っつぁんが涙しながら
    “ご武運を”とか言うから変だな〜とは思ってたけど」
中井出「ヒギャァアアーーーーーッ!!」
悠介 「聞いただけで胸が痛いなおい!
    不思議に思ったなら止めておけこのたわけ!」
彰利 「だってYO! だってYOォオ!!」

 全てが手遅れだったんじゃ……アタイだって出来ることなら時を戻したいわい……!
 あの涙が……忘れられぬのですよ……!

中井出「えーと、それで新規のお子は?」
彰利 「うす……あっち」

 サム、と手で促してみれば、窓際に立ってこちらの様子を見ているおなご。
 名を……

彰利「(^ω^)綾波!」
綾波「!?《ビクゥッ!》」

 そう、綾波と申す者。
 綾波型駆逐艦の一番艦で吹雪さんの魂を受け継ぐもの。
 いや、なんかもうごめんなさい吹雪さん。

彰利 「えーと、ところでキミら我が家にどげな用?
    アタイこれから建造するつもりじゃけぇ、
    演習のお誘いとかだったらもうちょい待ってくれん……?」
中井出「(^ω^)綾波! は建造で造ったお子?」
彰利 「んにゃ。(^ω^)綾波! ははじめての出撃でドロップした」
悠介 「お前……出撃させて、艦娘まで連れてきてくれた吹雪を……」
彰利 「言わんといてアタイもう泣きたい……!」

 吹雪さん……今度会えたら大事にします。
 絶対に大事にしますけぇ……それまで、待っていてくだせぇ。

彰利「えー! ちゅーわけなんでー!
   工廠の妖精さんに30オールで作って頂戴要請ゴー!
   あ、高速建造材使用オッケーで!」

 別に(^ω^)綾波!だけの艦隊が不安だとかそういうのじゃねーのよ。
 ただね、自分の無知の所為で亡くしてしまった子の命……そげなものを支える何かが欲しいと思うのよネ。
 だからGO! 激しくGO!

綾波「はい! 資材30での建造に入ります!」

 指令を聞いて走り出す(^ω^)綾波!
 その後を追って指令室……執務室? ともかく部屋を出るアタイ!
 後ろからドゴォって音が鳴って、「レディー!? レディー!」って中井出の悲鳴が聞こえたけど、何事デショ。
 まあいいコテ、ともかく後を追って、工廠に辿り着けば、眩い光。
 光が治まる頃、そこに立っておったのは……!

曙 「綾波型駆逐艦、曙よ……って、こっち見んなこの糞提督!」
彰利「───……」

 ザドッ! ズシャアアア……!!

中井出「アアッ! 辿り着いて早々、弦月が膝から崩れ落ちた!」
悠介 「彰利!? 彰利ーーーーっ!!」

 糞提督……糞提督……!
 フ、フフフ……!? そうザマスね……手違いで大事な艦娘を消してしまったアタイには、なんとお似合いな名前……!

中井出「あ、でもあいつ、昔ホムンクルスのアレ飲んで……」
悠介 「いや……もう馬糞には触れてやるな」
彰利 「聞こえとりますが!?」
悠介 「あー、そこの艦娘。すまないがこいつにあまり厳しいこと言ってやらないでくれ。
    ついさっき大事な仲間を失ったばっかりなんだ」
曙  「うぃっ!? ……着任早々、なんでそんな重いことに……!」
悠介 「こいつが自爆した」
曙  「自業自得じゃないの!!」

 おおまったくその通りでゴンス。
 もしやこの建造で吹雪さんが出てきてくれるんじゃ、なんて淡い期待を持ってたアホゥさ。
 そィでも未来は諦めぬ!
 いつか吹雪さんに会って、心から謝罪するまで───!

彰利 「ちゅーわけで演習すっべー!」
中井出「おぉ望むところじゃー!」
彰利 「男じゃわしゃーーーっ!!」
悠介 「いや、お前な……生まれたばっかりの娘にもう演習させるのか」
彰利 「いけますね曙さん! 人を糞提督って言える元気があるならオッケーザマス!」
曙  「余計な気遣いなんていらないわよ」
彰利 「これこの通り! そして(^ω^)綾波!」
綾波 「あ、あの。どうして私を呼ぶ時、
    絶対にその顔で、声を変えて呼ぶんですか……?」
彰利 「淫夢勢がことある毎に“ファッ!?”って言うのと似たようなものヨ。
    “ファッ!?”は真夏の夜の淫夢が元ネタ。ホモ動画だ。
    “(^ω^)綾波!”はレスリングシリーズのボーイスカウト編だ。
    実際に使うと元ネタ知ってる相手によってはドン引きされるから気をつけようね?
    ネットで知った言葉なんて、実際じゃ使わないに限るってことでOK。
    なにはともあれ腕が鳴るぜ〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
中井出「どおれ演習では大暴れしてやるとするか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!」
電  「あ、あの、司令官さん? 演習に出るのは電たち艦娘だけなのです」
中井出「そうなの!?」
彰利 「そうなん!?」

 驚きつつも中井出と二人、腕を大きく伸ばして凄い漢の体操をしつつ、うおーうおーと叫んだ。
 残念じゃけどダーリンはやっぱりノってきちゃくれねー。
 でも僕は負けませんよ?
 さ、そげなわけで演習でゴンス。

彰利 「つーか中井出YOォオ? その両肩のおなごら、何者?」
中井出「ヌ? おお、我が艦隊の旗艦、電ちゃんとレディー。こっちが電ちゃん」
電  「よ、よろしくおねがいしますなのですっ」
中井出「で、こっちがレディーだ」
暁  「暁よ! あ・か・つ・き!」
彰利 「ホ? レディーじゃなかと?」
暁  「もちろんレディーよ! 一人前のね!《どーーーん!》」
彰利 「でも暁なんでしょ?」
暁  「え……だ、だから! レディーで暁なの! 解るでしょ!?」
中井出「えーとね、こやつ、暁型駆逐艦の、レディーなの」
彰利 「あ、あーあーあー! ナルホロね! 暁型の、レディーちゃん!
    なんだそれならそうと最初っから言やぁいいんだよぉ〜〜〜っ!」
暁  「え!? ちょっと、あなた解ってないでしょ!
    暁なんだからね!? レディーでもあるけど!」
彰利 「ん……そうかい、よかったねぇ……」
暁  「いいからちょっと聞きなさいよ! 私は───!」

 なにやら反応のめんこいおなごが必死に語りかけてきました。
 ……ハテ。その隣のおなごは、旗艦選択の時にいた電ちゃんよねィェ?
 そかそか、中井出はこのおなごにしたのね。
 なんか妙に納得。

暁  「ね!? 解るでしょ!? 解るわよね!? 解ってよぅ!」
彰利 「ギャアもうやかましゃあとよ! つまり暁型の駆逐艦なんしょ!?」
暁  「そう! 一番艦! ネームシップ! 暁よ!」
彰利 「で、レディー!」
暁  「そう! そうそう! 一人前のレディー!《バァアーーーン!!》」
彰利 「じゃあレディーでいいんでないのいい加減におし!」
暁  「だから名前は暁でレディーは淑女な意味なんだったら!
    司令官とあなた、絶対暁のこと、名前がレディーだって思ってるでしょ!」
中井出「すまんなぁ弦月……こやつめ、偽名を使ってみたい年頃で」
彰利 「あっ……な〜るほろ。おっほっほ、かわいいやつよのう」
暁  「ちぃいがうったらぁああっ!!
    もう電! あなたもなにか言ってやりなさいよぅ!」
電  「はわっ!? はわわわっ!? び、びっくりしたのです……!」
中井出「レディー! 電ちゃんを巻き込むんじゃありません!」!
彰利 「そうだぜレディーこの野郎! 急に妹を巻き込もうだなんて、
    淑女の風上にも置けん所業……許せる!」
暁  「レディーを二人掛かりで責めてる二人に言われたくないわよ!」
悠介 「もうそのへんにしてやれ……出撃もしてないのに疲労度レッドになってるぞ」

 しかしなるほど、中井出がトロケるのも無理ねーベヨ。
 こりゃあめんこい。
 まさかこげな、背伸びしたい系のおなごを引き当てるたぁ。
 うし、アタイももっと頑張ろう。




-_-/中井出博光

 演習終わって。

電  「はふっ……結構被弾しちゃったのです……」
中井出「おおなるほど、演習ってだけあって、終わってみれば傷もないんだな。
    経験だけが積めるってのはいいことだ。燃料とかはさすがに減るけど。
    ……っと、おやおや電ちゃん?
    頬に煤がついてるね、こっち向きなさい」
電  「ふやっ!? だ、大丈夫なのですっ、自分で出来《こしこし》はうぅっ……!」
中井出「ほら〜、綺麗になった」
電  「あ、ありがとう……なのです」
暁  「…………《じー……そわそわ、そわそわ》」
中井出「おお、新手のダンスかレディー。
    でも急にやると不気味だから、踊る時は事前に声をかけてくれ」
暁  「あなた絶対に解っててやってるでしょ!」

 自分の執務室に戻ってきた我らは、とりあえず軽いミーティングののち、補給を終えるといよいよ出撃の準備に入った。
 任務を完了させると資材等が貰えるようで、今のところ補給しても十分足りている。

中井出「それじゃあこれからついに出撃なわけだけど」
電  「お任せくださいなのです!
    鎮守府近海はそこまで敵艦が確認される場所でもない……という情報なのです。
    すぐに出撃して、あっという間に倒してくるのです!」
暁  「今度こそ、暁の出番ね、見てなさいっ?」
中井出「え? どうやって? まさかついていけと!?」
暁  「揚げ足取らないでよぅ!」

 でもきちんと足につける艤装があれば、海に浮くことくらいは出来るらしい。
 浮けたとして、進めるかどうかはまた別だそうだ。
 言いつつ、工廠で造った装備品を装備させてゆく。
 最初の装備があまりにも頼りなかったから、手探りで造ったもの……なんだが、同じものを装備してらっしゃった。

中井出「同じものですまんなぁ。今度はもっといいもの造れるよう、勉強しとくから」
電  「あ、ありがとう、なのです」
暁  「ありがとう。お礼はちゃんと言えるし」
中井出「おお、さすがレディー」

 両手に同じ装備をして、シャキンと構える電ちゃんとレディー。
 その在り方は…………在り方は……。

中井出「……、……《ボソボソ》」
暁  「え? 装備が大きすぎないかって? 丁度いいに決まってるじゃない!」
中井出「いや、だってさ、どう見ても姉のおさがりをもらって燥ぐ妹にしか……」
暁  「暁が一番艦なの! お姉ちゃんなの! いい加減解ってったら!」
中井出(なんでだろうなぁ……背のびしたがりな妹にしか見えやしない……)

 とりあえず頭を撫でた。
 ……ぷんすかされた。

中井出「よし、じゃあ無事に帰ってきたら美味しいものたっぷり用意しとくな」
暁  「ほんと!?《ぱああ……!》」
中井出「おうほんとだとも! どんなものがいい?」
暁  「えっ!? えっと、そうね。レディーだから、その。ふ、ふるこーす!」
中井出「おお、それっぽいのを頼んできたな。
    でも電ちゃんも居るし、フルコースを一皿に纏めたものでいいか?」
暁  「ふふん、別にいいわよ? そのくらいは妥協できるのよ? お姉ちゃんだもん」

 ……胸を張ってムフーと鼻から息を吐く淑女は、こうして妹と意気揚々と出撃したのでした。
 ああちなみに。
 その少しあと、レディーは大破して戻ってきました。

暁  「な、なによぅ! これでもMVP独り占めだったんだから!」
中井出「おーなんだかキラキラしてる」
暁  「そう! そうなの! これがMVPの証とも言える状態なんだから!
    と、ところで司令官。ご褒美は? ほら、ふるこーすを用意してくれるって」
中井出「おうさ! もちろん、腕によりをかけて作ってあるさ!
    間宮さんというおなごと知り合って、
    どういうのを食べるかを聞いて作った超大作さ!
    味は間宮さんも大絶賛するほどだから無問題!」
電  「す、すごいのです! 楽しみなのです!」
中井出「もちろんデザートも完備! 最後の最後まで味わいつくしてもらいましょう!」
暁  「……! そ、そう。
    でででも、暁はレディーだから燥いだりなんかしないのよ《うずずずずずず》」

 めっちゃうずうずしてました。
 そんなレディーの手を引いてエスコートしつつ、電ちゃんは肩に乗せて、とりあえずは入渠。
 修理ドックかと思ったら、なんか風呂でした。
 どうなってんだろうこの世界。
 あ、ちなみにここでも高速修復剤というのがあるらしいので、レディーにヴァシャアとぶちまけた。
 目に入ったらしくてしこたま怒られました。レディーかわいい。

中井出「さ、そんなわけでこちらがフルコース一纏め!」
暁  「わあー! …………あ? あの、司令官? なんでランチに旗が立ってるの?」
中井出「え? そりゃきみ、お子様ランチだから」
暁  「ムキー! お子様言うなぁ!」
中井出「ノゥ違う! お子様なのはランチだけだ! きみはレディー!
    故に待ってもらおう! いいかねレディー!
    それを味わってもまだお子様扱いと言えるのなら、
    その振り上げた拳も甘んじて受けようじゃないか!」
電  「はわっ!? す、凄い自信なのです……!」
中井出「真のレディーとは見た目で判断しないもの……!
    さあレディーよ、料理を続けましょう……!」
暁  「……レディーの味覚が試されているというわけね。
    いいじゃない、食べてあげるわよ。文句を言うだけがレディーじゃないんだから」

 ウヌ! いざ、実食!
 きちんと席まで案内して、椅子を引いて座らせて、そこからは普通に食事開始。
 マナーだのはいちいち気にしない僕ですから、電ちゃんと普通に賑やかに食べました。
 そしてレディーは……!

暁 「《パパァアアアアアア!!》……♪ ……♪」

 MVPの証とやらの輝きがとんでもないことになっていた。
 ええと。ご機嫌ってことで……いいのかな。
 なんかもうあの光だけでジョジョの世界の吸血鬼が滅びそうなほどなんだけど。

電  「ま、眩しいのです……」
中井出「レディーすげぇな……機嫌だけでああも輝けるなんて。
    あ、電ちゃん、プリンあげる」
電  「え? あ、悪いのです、それは司令官さんの……」
中井出「いいのいいの、余分に作ったもので俺のじゃないよ。
    それに、艦娘用に作ったものは俺が食うとやばいらしいし」
暁  「…………《じーーー…………そわそわ、そわそわ》」
中井出「おおどうしたレディー、今度はシャイニングレディーダンスか。
    夜戦で使ったら狙い撃ちされ放題じゃねーか。完成度高けーなオイ」
暁  「だからそうじゃないったら!
    あ、暁だって頑張ったんだから、なにかくれてもいいのよ!?」
中井出「……《ソッ》」
暁  「旗じゃなくて!
    あっ、やっ……せ、せっかくだから貰ってあげてもいいけど!」
中井出「しかしなぁ、一人前のレディーたる貴様にプリンなんてものをあげるわけには」
暁  「ま、真っ先に旗を渡しておいてこの言い草!!」

 その割には、渡した旗を握る手は物凄くやさしかったりします。
 結局、MVPということなのでデザート一品追加と、良い武器が出来たらあげる約束をしました。
 そうして食事も終われば、気づけば夜。

中井出「さぁて夜でございます。皆様もう部屋に戻ってお眠りなさい」
暁  「部屋ってどこ?」
中井出「……電ちゃん」
電  「はわわわわっ!? え、ええと、ええっと……」

 ぱらぱらと書類をめくる電ちゃん……だが、困ったことにこの鎮守府、というより俺に宛がわれた場所、宿泊施設がありゃしない。
 まじですか。

中井出「えーと。じゃあなに? 俺達この執務室で寝るしかないと?
    ……ダンボールしかないんだが」
暁  「れ、レディーに対してこんなもので寝ろっていうの!?」
電  「ご、ごめんなさいなのです! すぐにかけあってみるのです!」
中井出「あー、待ちなさい電ちゃん。
    ダンボールというのはコレで中々保温性にすぐれておりましてな。
    これに新聞紙も混ぜれば、立派な暖房素材となるのです」
暁  「……司令官。まさか本当にコレで眠るつもりじゃ」
中井出「眠りますとも。ほれ電ちゃんー、こっちこっちー」
電  「は、はいなのです」
暁  「そんな、レディーが出会ったばかりの男と一緒に夜をともになんて」
中井出「ほぅら、結構あったかいだろー」
電  「あっ……本当なのですっ」
暁  「電は順応早すぎなのよ!
    も、もうちょっとレディーとして警戒心ってものを持つべきだと思うの!」
中井出「アホぬかせレディーこの野郎。ロリコニアの住人はロリに対して不純は抱かん。
    ただ愛でたきを愛でるのみ。そこに性的欲求は微塵も無し。
    勘違いしている者が多いだろうからこの際だから言ってやる。
    幼女に手を出す輩はペド。ペドフィリアだ。
    幼女を愛で、温かく見守る存在がロリコン。ロリータコンプレックスだ。
    間違えるな、世界で性犯罪的に問われるべきはペドであってロリではない。
    調べると似たようなことじゃねーかとか言われるが、よく調べるんだ。
    ペドはより性的な意味だ。
    ロリコンも性的などと説明されがちだが、あくまで嗜好の域!
    実際に手を出すなどロリに対する冒涜よ!
    ……俺はそれを川神で学びました。
    幼女は愛でるもんだ。ハゲとの誓いは俺の誇りだ。
    だからこうして抱き締めたり頭をなでるだけで幸せなのさ」
電  「《なでなで》はぅ……」
暁  「とろけきってる!? だ、だめよ電!
    きっとここで眠ってしまったら、いつの間にか大変なことに……!」
中井出「すやー……」
電  「すぅ……」
暁  「えっ!? あれぇ!? 寝てる!? ねぇ!? ちょっと!
    レ、レディーが居るのにレディーより先に眠る男が居る!?
    ちょっと起きなさい! おきなさいったらぷんすかぁーーーっ!!」
中井出「うう……ドリアード……僕もう縛りプレイは嫌だよぅ……!
    怒るならキミ自身で怒ってよぅ……!」
電  「沈んだ敵も……ふにゅ……できればたすけたいのれふ……できれば……」
暁  「“出来れば”を強調しなくていいの!
    ていうか眠ったばっかりで寝言とかどうなってるの!?
    大体───《ぶるるっ》はう……!? え、うそ……!
    あ、あう、あう、ね、ねぇしれーかん……? しれーかん……!
    ちょ、ちょっと起きて……!? い、電でもいいから……!
    ちょちょっと夜の見回りに……その、つ、付き合ってあげてもいいのよ?」
中井出「ぐごー! ふんごー!」
電  「たすけたいので……まずはしずめるのです……───なのです!」
中井出「《ドボォ!》ォアウチ!! ───ハッ!? なに!? 何事!?
    なんか今、僕のお腹をかつてないプラヅマが襲ったような……!」

 お腹に鈍痛。
 目覚めると、何故か戦場で天使にでも出会ったかのような笑みを浮かべるレディー。

中井出「? おう? ど、どったの?」
暁  「ど、どうって! えと、トイ───こほんっ。
    司令官、ごきげんようです」
中井出「え? あ、あ、うん、ごきげんよう……?」
暁  「早速だけど夜の見回りの時間よ。
    し、司令官はまだここに来て日も浅いから、特別に暁が一緒に見回ってあげる」
中井出「…………いや、キミ俺より日というか時間が浅いでしょうがレディー」
暁  「レディーは時間を超越するのよ!
    ほ、ほらっ、レディーバーストっていう名ゼリフを知らないの!?」
中井出「《ごくり……!》す、すげぇな……!」

 最近の淑女は爆発するらしい。

暁  「だからこの暁が、仕方ないから司令官と一緒に行ってあげてもいいのよ?」
中井出「じゃあキミ先頭ね。レディーファーストなんだし」
暁  「えっ?」
中井出「え?」
暁  「き、騎士はレディーを守る───」
中井出「提督だ」
暁  「男だって女を───」
中井出「キミ艦娘で、守られる側じゃないっしょ」
暁  「………」
中井出「………」
暁  「…………ふっ、うっ、うぐぅう……《ぽろぽろぽろ》」
中井出「レディイイーーーーッ!!? 解った行くから俺が先頭でいいから!!」

 もぞもぞしていたレディーが急にぽろぽろ泣き出した。
 ホワイ何事!? しかし人々に楽しいを提供したこの博光! 人を喜びの涙と笑いの涙以外で泣かせるのは不本意の極み!
 なのでその提案───受け取ろう!

中井出「ならばいざ参らん! さあゆくぞレディー!
    たった一人では困難な道も、たった一人では強敵すぎる相手も!
    世界の都合上、何故か合体すると簡単で、勝てたりもする!
    ゆえに! 我らは孤高にあらず! さあ! ジェントュルドッキング!」
暁  「《がばっ!》へっ!? ひゃわあっ!? え、あ、え!? や、やめ」
中井出「セットオーーーン!!」

 シュバッと起き上がり、その過程でレディーを両手で持ち上げる。
 そして再び肩車状態にガキィーーーンとドッキング! ……すると。

中井出「さあ見回りだレッツ《じわり》ホワッ!?
    あれ? なんかうなじがあったけー」
暁  「ふっ!? ふわっ!? うわぁあああああんっ!!」
中井出「ヒィなに!? いったいレディーになにが!?
    ハッ!? まさか悪霊が乗り移っ《ジワワワワ》あ、あれ?
    なにこれ、ほんとなに───ってオワァアーーーーッ!!?」

 騒々しいままに、夜は過ぎていった。
 ……ちなみに、なんか“レディーに死をも覚悟させる恥をかかせたんだから、責任を取れ”と言われました。
 責任……いや、急に肩車した僕も僕だけどね? 見栄張って見回りであることを譲らなかったレディーも悪いと思うのよね……。
 しかし了承する以外笑顔に戻る方法が無かったため、頷きました。
 ……翌日、目覚めた電が見たものは、どこから生えたのかも解らない謎の蔓により、体中を締め付けられて気絶している男の姿だった。
 え? レディー? 提督服を着て僕の傍で寝ていたところをツッコまれて慌ててたらしいよ? 僕気絶していたから知らないけど。
 ええもちろん、お風呂にも入れましたさ。急造だったけど、きちんとお風呂。
 顔真っ赤にして暴れたけど知りません。今さらおなごの裸に欲情するほど若くありません。浴場だけに。なんてことを言ったらレディーが固まったから、その隙に実力行使ウォッシャー。
 散々っぱら洗って、いい加減欲情すらされていないというか、そういった目でさえ見られていないことを自覚したレディーは、なんだか悟ったような顔で洗われました。
 体のいろいろを洗う時は流石に全力で拒否されましたが知りません。
 知りなさい、ロリっ子。ロリコニアの住人は幼女に欲情したりはしません。ただ愛でたきを心から愛で、慈しむだけなのです。きゅい。


───……。


 今朝もはよから僕らの戦いは始まる。
 開発から始まる、建造などの四回デイリーと解体。
 出撃をしてダメージを負えばドッグ入りクエストをこなして、次に補給。
 出撃で新たに迎えた艦娘は、近代化改修のために───

雷 「いかずちよ。かみなりじゃないわ。そこんとこもよろしく頼むわね!」
響 「響だよ。その活躍振りから、不死鳥の通り名もあるよ」

 無理っす。
 俺には出来ない……! ロリコニアの住人を名乗る自分に、こげにめんこきお子を別の艦娘の餌食にするような真似っ……!
 ということで、第六駆逐隊編成クエストが完了しました。

雷  「あなたが司令官ね。大丈夫、私が守るわっ!
    だからもっと私に頼っていいのよっ?」
中井出「おっほっほ、ほうかほうか。
    でも今は部屋の掃除が先ですけぇ、休んでおってええよ?」
雷  「そんなの私がやるわよ、ほら休んで休んでっ!」
中井出「え? お、おう?
    いや、みんな出撃とかあるんだから、部屋の掃除くらい」
雷  「んっふふ〜♪ もぉっと頼ってくれていいのよっ?」
中井出「いや、僕の仕事───」
雷  「あっ、書類整理がまだじゃない。仕方ないわね、後でやっておくわね」
中井出「やっ、だから───」
雷  「演習要請が隣の鎮守府から着てるわ。電に了解の旨を伝えてもらうわね」
中井出「あの」
雷  「なぁに? 司令官。もしかして不安なの? 大丈夫よ、私が居るじゃない」
中井出「いや───」
雷  「あ、もうこんな時間じゃない! 昼食を作るわ!」
中井出「エ? や、ご飯はいっつも俺が───」
雷  「ほらほら、台所は女の戦場なんだから、司令官は出ていく出ていく!
    そんな顔しないで? 腕によりをかけて作っちゃうんだからっ!」
中井出「そ、そりゃアリガトだけどね? あのね? 話聞いて?」
響  「無駄だよ、司令官。
    雷は一度こうと決めたら、話なんて聞かずに突っ走るんだ」
中井出「えっ!? そうなの!?」

 駆逐艦スーパーフェニックスさんが、僕の服をちょいちょいと引っ張りながら教えてくれた新事実。
 ああでもなんだろう。彼女なら“ああそうかも”って思えてしまう。

中井出「なんというか……恋人にしたら、男の方がとろけきるようなお子だね」
響  「そうなのかい? 女の目から見ると、そういうのは解らないよ」
中井出「戦が終わったら普通のおなごに戻りなさい。
    そういう生き方が出来るようになったら、きっと解るから」
響  「……司令官は、終わらせられるつもりなのかい?
    これだけの鎮守府が存在していて、まだ決着がついていないというのに」
中井出「終わらせられないならそもそも、立ち向かう意味がないって。
    必要ならこの博光、いつでも体を張る覚悟である!」
響  「ふふっ……スパスィーバ。でも、それにはおよばないよ。
    戦には艦娘が出る。あなたが無理に出る必要なんてないさ」
中井出「じゃあ僕はキミたちをめいっぱい愛でよう。
    戦って強くなれるなら、その準備を万全にするのが提督の仕事だ。
    故に、これから開発に移る!」
響  「了解。響、出撃する」

 腕まくりをしていざ工廠へ!
 さーあ武器を開発しよう! 腕が鳴るぜ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!

雷  「はーい妖精さん、さくっと開発やっちゃってね!
    同じのが出すぎて装備しきれない場合は廃棄するのよ?
    無駄は出来るだけ避けないといけないんだから」
中井出「───」
響  「………」

 で、工廠に言ったら雷さんが指示を出しまくっていました。

雷  「あ。司令官? 休んでいてくれていいのよ?
    司令官の苦労は、ぜ〜〜〜んぶ雷が受け止めちゃうんだからっ!」
中井出「………」
響  「………」

 僕は静かに響を肩車して歩きだした。

響  「その……司令官」
中井出「僕……もう要らないのカナ……」
響  「そんなことはないよ。みんな司令官のために頑張りたいのさ。
    仕事を奪いたいわけじゃない。どうか解ってほしい」
中井出「……エエ子」

 頭を撫でた。え? 届くのかって? 届きますよ、博光ですもの。
 腕の伸縮など自在じざ〜〜い。

響  「その。司令官は存在自体が独特なんだね。
    司令官というのは全員がそうなのかい?」
中井出「エ? アー……」

 僕の知ってる提督を思い、考えてみる。
 晦。天下無敵のアルマデライズブレイバー。
 彰利。死神の頂点に立つ十八翼のトンガリーニョ。
 ……うん。

中井出「うん。規格外だ。でも深海棲艦は艦娘じゃないと倒せないとくる。
    ほいじゃあお前たちに頼むしか策はないわけだ。
    ……僕らは無力だね。頼るしかない僕らを許しておくれ……?」
響  「…………───大丈夫。
    私は司令官の力になるよ。きっと守ってみせる。
    不死鳥の名は伊達じゃない。
    司令官が平和を願うなら、私は沈まず、何度だって戦うよ」
中井出「無理はしない方向でね。
    あ、ところでスーパーフェニックスさん? 好きな食べ物はあるかい?
    第六駆逐隊ようこそ歓迎会を開きたいから、みんなの好物を聞いておきたい」
響  「好物……そうだね。“みんなで食べる”、美味しい料理……かな」
中井出「ほう おもえはなかなかわかっているな ジュースをおごってやろう」

 そう。好物なぞなくとも、みんなで食べるものは楽しいもんだ。
 なにせ美味しくないならネタに出来る。
 歓迎会っていうのはもちろんおもてなしの心も大事だが、なにより雰囲気を壊さないことが大事なのです。
 それを解ってくれているスーパーフェニックスさんの頭を、ウニョニョニョウニョと伸ばした手で撫でた。
 さあ参りましょう。目指すは───厨房だ!

……。

 で。

雷  「ああ司令官? もうすぐでご飯が出来るから、そこに座っていい子で待っててねっ!」

 厨房に行ったら雷が居た。
 …………エェッ!? あれ!? さっき工廠に居なかった!?

中井出「ねぇキョーちゃん。このお子、何人居るの?」
響  「“母性”の数だけじゃないかな。
    とりあえずキョーちゃんというのは私のことだと受け止める。ハラショー」
中井出「“母星”の数だけ!? す、すげぇ……!
    北斗七星でさえ七個もあるっていうのに、それが星の数ほどなんて……!」
響  「むしろ雷が料理が出来たなんて初耳だ。こいつは力を感じる」
中井出「雷〜、ちょっと味見してみてー?」
雷  「はーい司令官! いっきますよぅ!?《ぺろりゴドシャアッ!》」
中井出「悪は去った」

 一撃でぶっ倒れた。
 掻き混ぜられていた鍋をみれば、ゴボゴボと異臭を放つダークマター……ダークっていうかパープル。
 こ、こういう時ってパープルマターっていうのかしら。

中井出「じゃ、料理作るな。あ、キョーちゃん? 肩車したままでも平気?」
響  「ハラショー、これは信頼できる《……パァア……!》」
中井出「………」

 心なしか、キラキラ輝き始めている不死鳥がおった。
 テンションが上がっているらしい。

中井出「よぅしそれじゃあレェッツクッキィーン!」
響  「ypaaaa(ウラー)!!」

 料理開始。
 まずリンゴの皮を剥いて空中に投げて、キョーちゃんが受け止めてシャクリと齧る。

中井出「突然ですが、CMじゃい」
響  「リンゴを噛むと、歯茎から血がでないかい?」

 ネタをちくちくと混ぜつつ、料理は続いた。

中井出「鯛がッ食ァべッたァーーーい!!」
響  「ボルシッチィイ! ……司令官、それはドイツ語かい?」
中井出「ロシアで言うならYahはDaだね」

 熱くなった者の勢いは、止める人が居なければ際限なく暴走する。
 冷静っぽいキョーちゃんもやがては暴走し始めて、料理が完成する頃にはいい顔でシャバリと額の汗を拭い払い、「ハラショー……!」とやり遂げた顔をしていた。

響  「ところで、司令官は結局、なにを造っていたんだい?」
中井出「ボルシチとかカレーとか」

 結局なにが好物とか、絞れなかったしね。
 そう説明して、厨房でやることはなくなった。
 では料理を運ぼう。
 ……と、その前に。

中井出「キョーちゃん、キョーちゃん、腕、腕をこう、左右に広げて?」
響  「? 司令官、なんだい?」
中井出「いいからいいから。ほら、こう。そしてちょっとビシィッと勢いをつけて」
響  「こうかい?」
中井出「そう。覚えておいてくれキョーちゃん。
    これが今、巷で密かに人気のある構え、あらぶる不死鳥のポーズだ」
響  「……! 不死鳥の……!《ぽああああ……!!》ウ、ypaaaaa!!」

 あ、なんか目を輝かせて顔が赤くなっていってる。そしてすげぇ! 輝きすげぇ! ものすっごいキラキラしてる!
 ……ちなみにポーズはただのトーテムポールである。ええ、肩車しっぱなしだし。
 なんにせよ、駆逐艦の呼び名が決まったでおじゃる。
 電は(でん)ちゃん。雷は……雷。そのまま。
 レディーはレディー以外には考えられんだろう。だってレディーだし。
 で、駆逐艦スーパーフェニックスさんはキョーちゃんだ。響ちゃんでも可。
 これでいこう。


───……。


……。

 それからの話をしよう。ダイジェストチックに。
 第六駆逐隊を歓迎してから沢山の時間が過ぎました。
 細かく言うとキリがないのでいろいろすっとばすとしても、それはもういろいろと。

中井出「演習だぁーーーーーっ!!」
響  「Daーーーーーッ!!」

 演習で錬度を上げて、自力の底上げをしたり、デイリー任務で出来た4つほどの武器を四人に与えて強化したり。

中井出「入電! 右方向より敵深海棲艦接近中! 注意されたし!」
声  『司令室に居るのにどうしてわかるのです!?《がーーーん!》』
中井出「僕の妖精さん、マールを飛ばしてそっちの様子を見ているからサ!」
声  『妖精さん……? ふにゃああーーーっ!?
    なんかちいさな子が目玉を持って飛んでいるのですーーーっ!!』

 司令室で待つことしか出来ないので、せめて自分の目玉を飛ばして彩雲(物理)で索敵機代わりになってみたり。

中井出「レディー! 右に避けろ!」
声  『レディーは華麗に敵の攻撃を避けるわっ!』
中井出「レディー! 右腕を真っ直ぐ右に伸ばして砲撃!」
声  『攻撃するからね!』
中井出「ばかもんレディー! 敵に攻撃を教える淑女がおるか!」
声  『あっ……避けるなんてやるじゃない!』
中井出「それ見たことかこのレディーめ!」
声  『レ、レディーを罵倒文句みたいに言わないでよぅ!』

 進行は順調。
 梃子摺りはしたものの、僕らは第六駆逐隊のみで鎮守府正面海域を攻略。
 次なる海の領域へと踏み出したのです。

声  『そんな攻撃、当たんないわよっ!?』
声  『《ギャボシャア!!》ギョァアアアーーーーーッ!!』
声  『司令官? 資材不足だって、な〜んにも気にしないでいいんだからねっ?
    敵なんてこの雷さまが、このトールハンマー(碇)でやっつけちゃうんだから!』

 そして雷マジかーちゃん。
 や、つい口調が崩れたけど、ほんと尽くしてくださいます。
 せっかく造れた10cm連装高角砲も使わず、右手に強く握った工房試作型雷槌【威狩】で、確実にツブしている。
 ……信じられる? 砲撃を行う敵に接近して、碇で殴って沈めるんですよ……?

響 「……! 電、危ない!」
電 「えっ!? はぅ、はわわっ……!?」
雷 「守るわっ!《ゴギャーーーン!》」
暁 「ふええっ!?」

 あと、電ちゃんからの提案で旗艦を何回か変えながら海域を進んでみては、というものがあったので、実際やってみれば……いや、雷が攻撃を弾く弾く。
 旗艦ガードというか……電ちゃん目掛けて飛んできた砲撃を、こう……右手に強く握った碇型の艤装でパゴォンと弾くのですよ。右手に碇を持って腕まくりをする姿は実に美しいロリかーちゃん。
 お、おっかしいなぁあ……弾丸って普通、接触すれば爆発くらいするだろうに。
 あれかなぁ、なんかやたらキラキラしてるのが効いてるのかなぁ。
 出撃する前に、今日の旗艦役だからって“頼りにしてる”って言っただけなのに、いきなり太陽拳を放ったくらいにキラキラし出したからなぁ。
 ……あ、ちなみに敵を倒すことで現れた艦娘は全員、第六駆逐隊の礎となりました。
 近代化改修は順調です。

暁 「レディーより入電! 南西諸島沖にて、軽巡ヘ級を確認したわ!」
声 『マジでかレディー! ど、どうだ、強そうか!?』
暁 「司令官だってそっちから見えてるでしょ!?」
声 『ぬう。鎮守府前の海域で見たホ級とはちょっと違うんだなぁ。よし、じゃあいくか。
   電ちゃん、雷、響ちゃん、レディーをサポートしつつ、駆逐イ・ロ・ハ級を抑えろ!
   レディーは指示の通りに行動せよ! 絶対に勝利へと導こう!』
暁 「と、当然よっ! 暁達が戦うんだから、今回も勝利できるに決まってるんだからっ!」
響 「ハラショー」
電 「なのです!」
雷 「そうそう、も〜っと私に頼ってくれていいんだからっ!」
声 『き、貴様ら……。ではこれより戦闘を開始する! まずレディー!』
暁 「暁の出番ね!? 見てなさい!?」
声 『うむ! 最初の指示だ! まず右手を前に突き出せ!』
暁 「こっちに敵が居るのね!?《ジャキッ》」
声 『左手は後ろ側だ!』
暁 「へやうっ!? はっ、挟み撃ちにされてるの!?」
声 『次に右足を思い切り後ろに突き出して、左足だけで体を支える!』
暁 「!? す、すぐ近くに居るの!?
   蹴るのねっ!? レディーは華麗に敵を蹴りつけるわっ!《バッ!》」
声 『これで完成!
   トゥルーマァーーーン! ジョォオーーーッ!!』
暁 「………」
電 「………」
雷 「………」
響 「……ハラショー……!《キラキラ……!》」

 ボスマス前でトゥルーマン・ジョーをさせたらレデイーが激怒した。
 でもボス艦隊壊滅させてきた。レディーすげぇ。
 ちなみに帰投した響ちゃんに、やたらと興奮した様子で「司令官、あれはなんだい? あのポーズをしてからの暁は、まるで戦艦みたいな強さだった。力を感じた」と熱く語ってくれた。
 どうやらあらぶる不死鳥のポーズに加え、なにかしらの力を感じたらしかった。
 もちろんきちんと説明しました。
 トゥルーマン・JOEとはうなぎ怪人イールマンと戦う存在だと。
 詳しくは“ぼ・ん・ど”というペンギン漫画をどうぞ。
 ……言わないでおいたのは、レディーはただ敵に怒りをぶつけただけであって、ポーズの所為でパワーアップしたわけじゃないってことで。

暁 「はふー、お風呂きもちいー…………まったく。
   激しい戦闘ばかりに駆りだされて困っちゃうわ」
電 「大活躍だったのです」
雷 「そうね。疲れてるんだったら雷が癒してあげる。
   ほらほらこっち来て? 頭洗ってあげるわっ」
暁 「必要ないわよ! 一人前のレディーは、頭くらい一人で洗えるんだからっ!」
響 「シャンプーハットを使う人を一人前のレディーとは言わないって司令官が言っていたよ」
暁 「な、なんで司令官がそれ知ってるのよぅ!」
雷 「え? 私が教えたわよ?」
暁 「なんで!?《がーーーん!》」
雷 「司令官はすべてを知っている上で、この雷様が支えてあげるんだからっ!
   なにも知らなくちゃ支え甲斐がないじゃない」
暁 「教えるなら自分のことだけにしなさいよぅ!」

 出撃の後は入渠。
 といっても時間はかからずに終わるので、出ればアイスなどを振る舞ってコミュニケーションタイム。
 むしろ遊ぶ時間である。
 さてこの鎮守府。ハッキリ言うがこの四人しか居ねぇズラ。
 手に入れた艦娘は、前に言った通り近代化改修に使った。全てだ。
 日々煽りまくって様々な鍛錬におびき出しては、激しい演習をもこなしている第六駆逐隊に隙はねェズラ。
 限界なんてやりようで超えられると思うのよ。
 だから実はみんなが寝静まった後に艤装を改造したりしているのは内緒。
 僕らのアイルーの皆様にかかれば、小さな砲台を秘密裏に改良することなどグオッフォフォ……!!

雷  「じゃーーーんっ! パワーアップしたわっ!」
電  「改なのですっ!」
暁  「レディーだもの、遅すぎたくらいだわっ!」
響  「ハラショー、これは信頼できる」
電  「…………響ちゃんだけやたら白くなってませんか?」
響  「……改装を重ねた駆逐艦、信頼ことヴェールヌイだ。
    呼び方はそのまま響で構わない」
暁  「な、なにそれ! 呼び方が変わるなんて!
    司令官! 暁は!? 暁にはないの!?」
中井出「え? 呼び方? あ〜……じゃあとっておきのものが」
暁  「ふふんっ、どんな呼び名でもどどんときなさい?
    レディーは名に恥じぬ生き方を以って、それを証明してみせるんだからっ」
中井出「ま、マジか。すげぇなレディー。それが淑女のなら生き方止められん」
暁  「そうでしょそうでしょっ、なにせ一人前だもの!《どーーーん!》
    それで!? 次の改装でつけられるレディーの名前はなんなのっ?」
中井出「秘湯混浴刑事エバラ」

 その日私は秘湯混浴刑事エバラの砲撃でボコボコにされた。

……。

エバラ「暁、水雷戦隊、出撃するわね」
中井出「おいおい待てエバラてめぇ、主砲忘れてるぞ主砲」
電  「エバラちゃんっ、任務設定も忘れているのですっ!」
雷  「仕方ないわねぇエバラは。
    今日の旗艦、雷が代わってあげるから休んでてくれていいのよ?」
響  「エバラ、どこか具合が悪いのか? なら無理はいけない」
エバラ「主に呼ばれ方が悪いわよぅ!!」
中井出「それにしてもどうしたんだエバラ。最近ずぅっと疲労度MAXじゃないか」
エバラ「え、演習で隣の鎮守府に出撃名簿出して、
    相手に秘湯混浴刑事エバラって呼ばれた暁の気持ちは司令官には解らないわよぅ!」
中井出「ああ、あれなぁ……。普段爆笑しない晦一等兵が、
    指示も出せないで完全敗北するほど笑ってたなぁ……」
電  「四人しか居ないのに、名前が一人だけエバラだったのです」
響  「指折り数えていたね。電、雷、響……エバラブフォウ! ……って」
エバラ「エバラいうなーーっ!! 暁は暁よ!
    大体二回目の改装もしてないんだから、暁のままでいいじゃない!
    立派なレディーにエバラなんて名前は似合わないんだからっ!」
中井出「エバラ……」
エバラ「暁よっ!《ポムッ……》え、あ……司令官?」
中井出「大丈夫。お前はもう……立派なエバラだよ」
エバラ「目指してるのは立派なレディーであってエバラじゃないわよ!」

 今日も鎮守府は平和です。


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