0以上があるとはな……/賑やか艦隊げきじょー

◆ふと思いついた艦これ小話(再)

第一話:妖精さんのお話

-_-/U-s-K

 それは俺達がこの世界に大分馴染んできてからの出来事だ。

声 『鎧袖一触よ。心配要らないわ』

 ミ゙ゥウウウン……と空を飛ぶは、加賀が放った艦載機。
 放った矢が空中で艦載機に変化するなんて、なんというカッパーフィールド、というのは彰利の言葉だ。

彰利 「ホヘー……アタイてっきりキミんとこは第六駆逐隊だけでいくもんかと思っとったわ」
中井出「や、僕もそれでいこうカナって思ってたんだけどね。
    でもなんか任務こなしてたら一航戦が贈られた、なんて晦一等兵が言うもんだから、
    僕も欲しいカナーなんて」
彰利 「オ〜、解るわいその気持ち。
    アタイも誰かが手に入れた〜とか言われたら欲しくなるけぇ。
    でもあれ? 悠介のは赤ェエエエエけど、キミのとこ青いよ?」
中井出「“2Pキャラ?”って訊いたら“頭にきました”って言って艦爆された」
彰利 「おお、ノリの解るおなごやね」
中井出「だよね!? 僕一発で気に入っちゃってさ!」
悠介 「あのな……ちったぁ相手の気持ちも考えてやれよ……」

 ここは司令室。
 そこに集まってなにをしているのかといえば、デイリー合同演習だ。
 どれだけ錬度が上がっても、演習は必要だしデイリー報酬は正直ありがたい。
 なので、一日に10回は必ず行なっているのがこのデイリー演習。

悠介 「ちなみに彰利、お前のところに空母は?」
彰利 「おるよ? 瑞鶴さんっていう、なんかやたらと七面鳥嫌いなおなご」
中井出「え? 七面鳥嫌いなの?」
彰利 「そうなんよ。空母が来たってんで、七面鳥焼いて出迎えて見たら、
    アツアツのところをドッパーンって顔面に」
悠介 「……どうしてお前のところにはクセの強いヤツばっかり集まるのか」
彰利 「いやいやァ、これで結構ええ子らよ?」

 クソ提督呼ばわりする曙、こんな艦隊呼ばわりする満潮、北上ラヴなのに北上が居なくて荒れている大井に、出撃するたびに被弾しまくる扶桑姉妹、夜になると騒ぎまくる川内に、艦隊の癒しである綾波。
 バランスは……取れているのか取れていないのか。

彰利「じゃけんどもあれじゃね? こうなると潜水艦も欲しくなるよね」
悠介「ああ、それはな」
彰利「ちなみに誤解なきよう今さら言うけど、アタイの“あれじゃね?”はね?
   若者やチャラリーナさんが言う“あれじゃないか?”的な言葉じゃなくて、
   老人語を若者っぽくしただけだから誤解なきよう。
   老人語っぽい言葉を扱う人がホレ、“あれじゃな?”って言うのと同じ」
悠介「今さらすぎるわ。というかだな。
   お前の場合は普段からYOとか言ってるから余計に解りづらいんだよ」
彰利「あー、解るわー。でも違うから覚えておいてね? して、潜水艦だけど。
   そこいらに転がってたりはしないんかね。あ、ところで二人とも気づいた?」

 いきなり話を戻していきなり話題を変えたな。
 忙しいやつだ。

中井出「ん?」
悠介 「気づくって、なににだ?」
彰利 「や、ほれ、艦載機に乗っておる妖精さんのこと」

 妖精さん? と小首を傾げて司令室の画面を見てみる。
 俺が創造した巨大モニターだが、演習の時にこれがあるととても助かる。
 ともあれ艦載機だ。
 丁度二戦目の演習が始まって、ウチの赤城と提督のところの加賀が艦載機を飛ばしたところだ。
 そこで、別窓を画面の中に精製、ズームして見てみれば、

田辺『ヒャッハァー出番だぜ〜〜〜っ! 艦爆隊、出る!』
藍田『スミスさんのように華麗に舞ってみせる! ボラボラボラボラボラ!!』
島田『藍田ーーーっ! もっとよく狙えってぇええっ!!』
閏璃『喰らうものか! よっしゃあ鷹志! 援護は任せるぞ! 魚雷発射ァーーーッ!』
鷹志『任せとけっ! 艦戦、対空迎撃に移る!』
柿崎『ロックオン機能とかはさすがにないか……よし、ギリギリまで引き付けて……!』

 ……。いや、ちょっと待て。

悠介「え? あ、いや……なにぃ!? あいつらなにやってるんだ!?」
彰利「オウヨ、なんか知らんけど武器妖精やっとるみたい。
   ほれ、この世界って武器毎にくっついてる妖精さんが違うっしょ?
   その役割としてあげな感じに───」

 彰利が画面を促す。と、丁度引き付けすぎて藍田の艦戦射撃をまともにくらってしまった者の姿が。

柿崎『《ボッゴォオオン!》うわぁあああああっ!!!』
全員『柿崎ぃいいいいいっ!!』

 柿崎が落ちた。
 マクロスを嫌でも思い出させる死に様であった。
 もちろんマクロスを知る我らは当然のように叫んでしまった。

悠介 「ちょっと待てぇえ!!
    あれどうなるんだ!? 墜落しても生きていられるのか!?」
彰利 「じゃーじょーぶじゃーじょーぶ。きちんと補給すれば直るでよ」
悠介 「《ホッ……》そうなのか……」
中井出「でも航空戦のたびに誰かが墜落するのは間違いないよな……」
彰利 「ア」
悠介 「あー……」
彰利 「けどまあアレやね。とりあえず」
中井出「柿崎……女好きのいいヤツだった……」
悠介 「誤解しか生まない言い方はやめろ」

 それは速雄のほうだ。
 それはそれとして、どうやらこちら側が制空権を手に入れられたらしい。

中井出「うわ、こりゃいかんっ!
    メイツどもよ! どうにかして制空権を奪い返せないか!」
田辺 『提督!? その声は提督か!? 貴様もここに来ていたでありますか!』
中井出「いや貴様って……まあいつものことか。それよりもなんとかならんか!?」
田辺 『無理でありますSir! 柿崎を堕とすので精一杯であったであります!
    こちらは藍田も島田も堕ちたであります!』
中井出「なんでそこまで柿崎くん堕とすことに全力注いでるの!?」
田辺 『フフフ、こちらを十分に引き付けたところで、
    我ら田圃ファミリーの総攻撃を喰らって見事に堕ちよったわあの女好きめ。
    きっと我らが女集団であったなら、
    “こいつはいいや!”とか言っていたに違いねぇでありますSir』
中井出「加賀さん、そいつに地獄をみせてあげて」
加賀 『いい判断ね。さすがに気分が高揚します』
田辺 『えぇっ!? や、ちょっ、加賀の姐さん!?
    さっきは“みんな優秀な子たちですから”って……!』
中井出「報酬は間宮アイスで」
加賀 『殺りました』
田辺 『《メゴッシィイァ!》オヴァアーーーーッ!!?』

 戻ってきた九九式艦爆(田辺隊)が、加賀の手で握り潰された。
 擬音がなんかジョジョっぽかったが気にしなくていい。

悠介 「まあ、柿崎だけ狙って制空権取られてりゃ世話ないわな……」
彰利 「だぁねぇ……こりゃ、妖精さんの性格もよく考えて艦載機積まんと」
悠介 「……ん? あ……ちょっと待て彰利。
    武器に妖精が宿るんなら、もしかして魚雷とかもか?」
彰利 「ホ? ……おーおーおー、そういやついとった気がするぜ〜〜〜〜っ!
    開発した酸素魚雷にちっこいのが」
悠介 「じゃあ、なんだ。その。発射したらそいつらも爆発して?
    セルフ回天みたいなことに……?」
彰利 「あ」
中井出「あ」

 チラリと画面を見る。
 と、丁度砲撃戦が終わり、駆逐艦や軽巡が魚雷を装填しているところで───

電 「魚雷装填です!《ドシュンッ!》」

 ───今、それが発射された。
 もちろん気になった俺は再び別窓を展開させてズームに───

柿崎『う、うう……あれ? ここはどこ? 僕は誰?
   たしか艦載機で……え? あ、どうも───え? なに?
   《どごぉおおおん!!》うわぁああああああっ!!』
全員『柿崎ぃいいいいいっ!!」』

 した途端に死んだ!
 ていうかなんでまた柿崎!? さっきまで艦載機だっただろ!

彰利「お、恐ろしい、ジョジョ……! きっとあれはアレに違いねー……!
   ホレ……工廠で艦娘建造しとる時、たまに妖精さんが少ねーときあるデショ……?
   アレと同じで、武器に宿る妖精さんは循環しているのよきっと……!」
悠介「つまりなんだ、妖精がついている時もあれば、いない時もある、と……?」
彰利「さすがに今回はたまたまだろうけどね」

 そんな毎回だったら柿崎が廃人になるわ。

彰利「……アンソニーで空に飛んだキャシャリンみたいな反応だったなぁ柿崎くん」

 どうでもいいわ。



第二話:デース!

 資源も集まってきたことだしと、建造に力を入れてみるようになって幾日。
 隣接した鎮守府を仕切る俺達三人は互いの意見を出し合って、いわゆる建造レシピというものを纏め上げていた。
 一部の“艦これ”、というものを知っている猛者どもにしてみれば、“やっぱ地道にレシピ作ってた頃が一番燃えた”とのこと。
 手探り時代はなんでも楽しいもんだ。思い返せばドキドキが満載だ。

悠介 「五月雨、建造に旗艦の、あー……種類? 艦種? は関係あるのか?
    駆逐艦だったら駆逐艦が出やすいとか」
五月雨「頑張るのは妖精さんなので、あったとしても微々たるものだと思います」
悠介 「なるほど、そりゃそうだ。じゃあ今回はこの数で建造を頼む。
    ああ、高速建造を使ってくれ」
五月雨「はい」

 五月雨は本当に優秀だ。
 最初から今までずうっと旗艦で、錬度も一番高い。
 この世界に来て、なにが一番嬉しいって……ルナの嫉妬がないことだよなぁ。
 安心して提督業に専念できる。
 その合間に縁側で茶菓子と緑茶。ああ、もちろん部屋の模様替えは完了済みだ。創造でなんとかしようと思ったが、この世界には家具コインというものがあって、それさえあれば模様替えが出来るというじゃないか。
 だから頑張った。主に遠征班が。
 そうだよ、こういう生活をしたかったんだ、俺は。
 だってのに巨大生物と戦ったり面倒ごとに巻き込まれたり巨大生物と戦ったり。
 前の時だって、ただ相手が巨大生物だからって理由だけで、人を進撃の巨人世界に蹴落としてくれやがったベリーには、今度仕置きが必要だ。

五月雨「提督、建造が終了しました!
    どんな娘でしょう! 早く会いたいですね〜!」
悠介 「っと、さすが高速」

 建造が終了したようなので、意識を目の前へと向ける。
 眩い光が消えてゆく中、そこに居たのは───

ライデン「アイアムライデェン」

 ライデンだった。

ライデン「《バゴシャア!》ラバァォ!?」

 で、とりあえず殴って、消えたと思った光の隣を見てみると───

ジャガーノート「アァ〜イム! アンストッパブル!!《バゴシャア!》ヴォーウ!?」

 ゴツイ円形アーマーを着た腹巻マッチョが居たので殴っておいた。

悠介 「なにしに来やがったてめぇら……!」
彰利 「建造するって聞いたのでアタイ参上!《パチンッ♪》」
中井出「やっぱりこの瞬間の緊張感はみんなで味わいたいよネ!《パチンッ♪》」

 ウィンクした目からヒトデをゴボチャアと落下させて言う二人の変態が居た。
 ……ウソでもいいからもうちょっと小さな星型の何かを飛ばせよ。

彰利 「いやーアタイ前から疑問だったのよネ。
    なして漫画キャラとかってウィンクでヒトデ召喚しとんのか」
中井出「そうそう、あれスゲー不思議だよなー」
悠介 「……実際やってみてどうだ?」
彰利 「磯くせぇ!」
中井出「めっちゃ磯くせぇ!」
彰利 「そして見て見てダーリン! そんな磯臭さの中で、新たな艦娘が誕生したよ!」
中井出「やべぇな……早くもあだ名が決定しそうだぜ……!《ゴクリ》」
悠介 「ごくりじゃねぇ」

 ともあれ新しい艦娘だ。
 思うことはただひとつ。
 ……大人しい娘でありますように。

金剛「英国で産まれた帰国子女の金剛デース! ヨッロシクオネガイシマース!」

 ……なんでだろう。心が静かに思った。すまん、キミ、終わった。と。

彰利 「アラガミだぁあーーーーーーっ!!」
中井出「お、おのれ妖怪!
    強敵なアラガミが出現する度にワンパンで死ぬ貴様がいったい何用かァア!!
    リンドウさん!? リンドウさぁーーーん!! たすけてぇええ!!」

 予想通りに騒ぎだしたふたりを拳骨で黙らせようと動いた。
 が、なんとその拳骨をシェェエエイと奇妙な音とともに避ける二人。
 そして急に叫ばれて驚いている金剛へ、これでもかと詰め寄り始めた。

彰利 「ねぇねぇ、きさん雌個体なの!?
    それともシオちゃんみたいに人型アラガミに進化したの!?
    極地適応型って氷属性だけじゃないんだ!
    あ、でも弾けるように笑うと破顔金剛! なんつってブッシャシャシャ!!」
中井出「ばかもん彰利一等兵! このお方はきっと番長だ! 金剛番長なのだ!
    きっとその理不尽な強さでライジングインパクトもびっくりの成長を遂げる!」
彰利 「マジで!?」
金剛 「What's!? なんデスか!? アラガミ!? バンチョー!?」
彰利 「ところでこの頭の横のこれってなんなの!? ドライバーかなんか!?」
中井出「バッカこれアレだよ!
    キュポンと引き抜くとなんかパワーアップするんだよクインシーみたいに!
    そしてマユリ様を倒すんだ!
    砲撃技術が一時的に強化されるけどなんかその後能力が使えなくなるんだ!」
彰利 「マジで!? 名前が似てるけど全然関係ねークジンシーもびっくりだぜ!」
金剛 「だからなんのことデース!」
彰利 「てゆゥか髪型すごいですね! え!? これどーやって纏めてるん!?
    そしてWAKIMIKOすごいですね」
中井出「オーウMIKOHUKU! でも悲しいかな! 巫女装束ではない!」
彰利 「クォックォックォッ、
    メイドさんを愛するアタイにしてみりゃこれはこれでええんでないかい?
    でもチミ、袴はきちんと長くないと巫女さんを愛する者に悲しまれるよ?
    ほれ、たとえばあちらの古き日本を愛するお方に───」

 ───とりあえず、雷が落ちた。いや、艦娘のほうではなくて。
 雷を纏った光速拳骨が二人を襲い、彼らは痺れて動かなくなった。

金剛「ア、アウウ……?」
悠介「あ〜……その、すまん。生まれた途端に随分と怖がらせたな。
   俺がここの鎮守府の提督だ。こいつらが迷惑をかけたら俺に言ってくれ。
   深海棲艦とやらは倒せないが、馬鹿の始末くらいでならお前を守ってやれる」
金剛「…………《きゅん》」

 差し出した手に、金剛がおそるおそる手を伸ばして、握った。
 気の所為か顔が赤い……が、まあそりゃそうか。
 この馬鹿どもに振り回されりゃ、頭痛もするし疲れもする。
 悔しいことに楽しくはあるんだけどなぁ……はぁ。

彰利 (クォックォックォッ……!
    生まれた途端に最悪の印象を与え、その中に在る救いに心を奪わせる……!
    全て計算通りよ!《ク、クワッ!》)
中井出(あー、でも久しぶりに見たかも。晦相手に心掴まれるお子の顔)
彰利 (キミってばもう相手のことへの意識が“お子”で定着しとるねぇ)
中井出(ウヌ、長く生き過ぎた。誰もが子供に思えて仕方ない)

 二人がなにかボソボソ言っていたものの、やがて調子を取り戻したらしい金剛の声に掻き消されて、聞こえなかった。
 ……ここで聞こえていれば、いろいろと注意も出来たんだろうなぁと……いつか、思った。

……。

 書類整理中。

金剛「Hey! 提督ゥ! バァアアアニングッ! ラァアアーーーーヴッ!」

 司令室をの扉をどっぱーんと開けて、何故か飛んでくる金剛。
 扉から机までの距離を、助走も無しに跳躍ひとつでだ。
 どうなってるんだこいつの脚力は。

彰利 「ヘイボブ! ピッチャービビッテルーーッ!!」
中井出「ウィイイーーーッ!!」
金剛 「《ボチュンッ!》ぱぎゅわっ!?」

 で、跳躍途中で彰利と中井出に絡まれ、空中でウェスタンラリアットをくらって扉まで戻された。ピッチャー返し……ではないよなぁ。
 あとわざわざスーパーファイヤープロレスリングのラリアットHIT音を鳴らすのはやめなさい。

金剛 「イタタタタ……! な、なにするデース!」
彰利 「ゴホホホホ、なにをするとは愚かな……ラリアットだ!!《どーーーん!》」
中井出「我らがここに在る限り、貴様の好きにはさせーーーーん!!」
金剛 「ワタシはただ提督にバーニングなラヴを届けたいだけネ!
    それを邪魔するっていうなら、隣の提督といえど敵と見做しマーース!」
彰利 「フッ……愚かな。そもそも貴様は前提として間違っている」
中井出「晦一等兵に燃える愛をとな?
    ヌフフハハハハハ……! その格好でよくも吼えよる」
彰利 「よいですかジェシー・メイピア。
    ダーリンは巫女っぽい姿じゃなくて巫女がえーの。
    じゃってぇのに上はまだ許せるとしても下がそげに短けーとは。
    ……これ中井出、あれを持て」
中井出「ここに《サム》」
彰利 「オウヨ。さ、これを手に取るでおじゃ」
金剛 「……? これはなんデス?」
彰利 「サブリガだ。穿きたまえ」
悠介 「巫女装束関係ねぇじゃねぇかばかたれがぁあああああっ!!!」
彰利 「え? あ、キャア違うダーリンこれ違う! アタイただノせられただけで!
    アタイきちんと長い袴を寄越せと言ったつも《ヂガァアンガガガガガ!!》
    アギョォオガガガグガガガガガアガァアーーーーッ!!!」

 頭を掴んで直接裁き。
 エレクトリッガーが炸裂したようなスパークが発生して、煙を噴いた親友は床に沈んだ。

中井出「……悪は去った《バゴシャア!》ベボルボ!?」
悠介 「静かな顔で部外者ヅラしてるんじゃあない、共犯」

 窓から吹く風に髪をなびかせていた提督を殴り鎮めて、戸惑う金剛に向き直る。
 ……と、サブリガを手に顔を真っ赤にしておろおろしていた。

金剛 「コ、コレを穿けば提督はワタシを見てくれるノ?」
悠介 「落ち着け金剛! こいつらの言葉は真に受けなくていい!」
中井出「ウソの中に時々真実を混ぜることで、もしかしたらを植え込みます。
    ちなみに彼女に緑茶の美味しい淹れ方を教えて、
    キミに褒めてもらった時の顔はナンバーワンフェイスだった」
彰利 「ディエエエフェフェフェ、そんな前例があると、
    迂闊に全てを疑えねぇのさムヒョヒョヒョ……!!」
悠介 「おぉおおおおもうほんといい性格してやがんなぁお前らぁあ!!
    ていうかお前ら少しはこたえろよ! なんでそんなにピンピンしてるんだ!」
中井出「え? なんでってそりゃ……博光ですもの、いつでも元気だよ?」
彰利 「そうだぜダーリンなに言っとんの?
    アタイが元気なことなんて昔っからじゃない」

 ああそうだった。そうだったよなぁ。
 じゃあなにか、無視してりゃいいのか。
 ……無理だな、無視してても無理矢理つっこんでくるし。
 じゃああれだ、まずは金剛に、こいつらの言うことは聞かないようにとキッチリ教えるべきだ。
 というわけで再度向き直って、きっちりと───!

悠介「金剛っ、いいかっ!? こいつらからものを教わっちゃ───」

 と、向き直ってみれば、どこから出したのか黒板と勉強机を用意して、金剛を座らせている彰利と提督。
 おぉおおいお前らさっきそっちに居ただろうがぁああっ!!

彰利 「えーかねコンちゃん。まずこちらの提督の名前じゃけどね?
    晦悠介っていって、幼少の頃の写真がこちらになります」
金剛 「Wow! とってもキュートネ!」
中井出「こいつ自分のこと話さないでしょ〜……?
    まったく、こんな調子だからいっつも友達が出来なくてねぇ……。
    あ、和菓子が好きだけど、半端なものあげるくらいならビエネッタがいいぞ」
金剛 「フムフム……! ためになりマース!」
悠介 「言った傍から変なこと吹き込むなたわけぇぇえっ!!」

 どうしてこいつらはいっつもこうなのかまったくぅううっ!!
 って、いいから話やめろ! “えー”って不満そうな顔で見るな!

彰利 「じゃあなんだよー、教えたことが間違ってるってのかよー」
中井出「晦一等兵……僕への罵倒は構わない。だがビエネッタを馬鹿にするなら、
    僕のなんか急に丸太のように太くなった足がキミの股間を襲う《ゴボムッ!》」
悠介 「足が急に太くなるか! ……いやっ、なるなよ! 怖いだろ!?
    って、いやっ……けどなっ……!
    たしかにビエネッタは好きだし、その写真は俺の写真だけどなっ……!」
彰利 「ぬぇえ〜〜〜っ? 言った通りでしょォォ〜〜〜ッ?」
中井出「というわけでレッスンレッスンレッスン!
    まず晦を語ることで外せないのがこの話題!」
悠介 「だからちょっと待て! どうせこのパターンだとあることないこと───」
彰利 「モミアゲのことから話そう」
悠介 「本気で待てコラ」
中井出「外せないよなぁ……迂闊にいじれば殴られるし」
悠介 「うぐっ……!? い、いや待て、それだって別にからかわなきゃだな……!」
金剛 「OH! 提督のモミアゲはワタシも気になっていたネー!」
悠介 「おいそこの戦艦ちょっと待て」
金剛 「No! 全てを知って、提督のハートを掴むのはワタシデース!」
悠介 「掴むもなにも俺は妻子《がぼっ》ふぐむっ!?」

 妻子持ちだ、と言おうとしたところで彰利の黒が俺の口を塞ぐ。
 ちょっと待て、他のことをどう邪魔しようと、これは大事なことだろ!

金剛 「? サイシ?」
中井出「最新のモミアゲエステに通う必要もなく、天然で美麗なモミアゲなんだ」
金剛 「What's!? 天然であんなにBeautiful!? さっすが提督デース!」
中井出「はい晦〜? 新しい世界で既婚者であることを話すのは無粋というものです。
    いかん、そりゃいかんでしょうキミ」
悠介 「いかんどころか原メイツ時代からそういうことは禁止だったろうが……!」
中井出「だって僕ばっかドリアードにシメられるなんて不公平じゃないか!
    キミなんかあとでたっぷりルナ子さんに切り刻まれればいいんだ!」
悠介 「……お前ってほんと中井出な」
彰利 「清々しいほどの小者っぷりだぜ提督……」
中井出「うるさいよもう!」

 提督の小者っぷりにちょっと救われた。
 ……状況はまるで動いてないんだけどな、どうしてだろう。



第三話:無自覚痴女エリーナラビット

-_-/トンガリーニョ

 やあアタイだ。
 今日はSO……アタイの鎮守府での日々をお報せしようと思う。

藤堂『パスパスパスパァーーース!!』
佐野『タタミカケローーーーッ!!』

 現在、バシーで任務をこなしておるところ。
 ここってEよね、空母も出るし補給艦も出る。
 で、今は武器妖精さんになったメイツどもが、艦娘が撃った弾丸を軌道修正して無理矢理当てたりしているところ。
 いやァ〜ンア卑怯だとは思うんじゃけんどもね? これがまた命中率めっちゃ上がるのYO。

長月「右、砲雷撃戦用意!《ドォンッ!》」

 先ほどお迎えした長月さんが砲撃。
 敵目掛けて飛んで行ったソレはしかし、敵が即座に反応して躱そうとする。
 それを、

夏子 『神の御命においてしりぞけるっ!!《ゴギンッ!》』
殊戸瀬『外式・駆け鳳燐《パギンッ!》』
麻衣香『ジャストガード反射!《ゴギィンッ!》』

 武器に宿り、砲弾と一緒に飛んだメイツどもが角度を無理矢理変えて、これまた無理矢理直撃させる。
 結果、躱したと油断していた駆逐イ級は撃沈。
 こんな感じで僕らは日々を突き進んでおります。
 皆様の疲労が強くなったら休んでもらって、で、その隙にアタイはダーリンのところへ言って金剛さんをからかうの。最強。
 いやぁ〜〜〜ンァ、じゃけんど麻衣香ネーサンももう随分吹っ切ったね。以前は中井出ンことで随分ヘコんどったけど。
 実際アレ、麻衣香ネーサン完全に被害者だもんなぁ。精霊どもに勝手に旦那を殺人者にされて、旦那と別れることになって、旦那はドリ姉サンとラヴでしょ? ……辛いわー、マジヘコむわー。
 それを中井出に話したら、お前ほどじゃないって真顔で言われたけどね。
 ウン、全部を知ったアタイにしてみりゃ、どの口が、ですよね。
 結局元の鞘、ってゆゥのかね。まだ好きならそれでいいんじゃないか? ってことで、タケトの父みたいな状況にはなっとるんじゃけどね。
 え? タケトの父ってなにかって? そりゃおめぇ、アレだぁ、ワイルドハーフのタケトの父だよ。
 あの作者さんが描く“夫婦の夫”が、どの作品でもタケトの父にしか見えないから、原中ン中じゃあ奇跡の重婚者として有名なのYO?
 ……そげな重婚者と一緒にされとるわけですけどね、アタイ。

彰利「メイツもメイツで、泣かせるくらいなら平等に愛してみせやがれとか言い出すし」

 原中大原則の中には愛についてのことももちろんある。
 じゃけど我ら、大原則はもちろん大事にするけどそれよりも“楽しい”を優先する修羅。
 それ考えればね、妙に気まずい雰囲気になるよりゃマシなんだけどね。
 ……アタイから言わせてもらえば、中井出だって相当だよなぁ……。
 いろんな世界を生きてきた所為で、ラヴしてるおなごがいっぱいじゃし。
 とくにミャーコとユキっこ。ありゃやべぇ。
 マクダウェルンゲリオンとかは心の友と書いてシンユウって感じだけど、マジコイの世界のあの二人はやべぇ。
 他にラヴってるお方は……

彰利「ラウラとタバサは忠犬じゃね。ウヌ、これ絶対」

 え? 麻衣香ネーサンの現状? 中井出の傍におりますよ?
 別に意志の中じゃ、辻褄の所為でカルナくんの夫になったわけでもねーザマスし。
 そこんところはVSオリジン前で中井出がビンタ&デンジャラスアーチをキメることで決着はついとる。チャラだって言ったからにはチャラにするからねぇあやつ。
 ンー……まあええよね!
 散々苦労したんだし、今ここにある楽しいを悩みで潰すのはもったいねぇザマス!

彰利「うしゃー! そーときまりゃー話ははえー!
   ながっちゃん、帰っといで! 補給抹殺任務の数は揃えた!」
声 『《ザザッ……》なに? 私はまだ戦えるぞ。侮られては困るな』
彰利「侮っとるんでなくて、別の任務を頼むから帰っておいで。
   動くのは次なる作戦を頭に叩き込んでからYO」
声 『ム。……了解した。これより帰投する』

 通信が切れると、司令室の大画面に映る長月さん、ながっちゃんが帰投準備を始める。
 緑髪ロングのながっちゃんは、どんな攻撃だろうと酸素魚雷と言って譲らない面白いおなごだ。
 12.7cm砲と酸素魚雷にどげな関係があるかは知らんけど、きっとあの子なりの美学があるのよ。

彰利「おっしゃ、ほいじゃあ次の任務はっと」

 最近は資材溜めにハマっております。
 いかに軽い資材や資源で任務をこなすかによってそれも変わってくるから、いやぁやりくりがおもしれーのなんの。
 潜水艦が一番安く行動できるって話じゃけんども、潜水艦なんて見たことねーべヨ。
 その点、睦月型のおなごはコストも低いし砲撃はメイツが強化してくれとるしで、安く戦える。
 戦艦が一気に二人も来てくれたのは嬉しいのだけれどね……これがまた被弾しまくって、その上弾薬も使うし修理に鋼材も使うしで……いや、べつにえーのよ? 見合った火力もあるし。べつに扶桑姉妹を悪く言うつもりはねーのヨ。
 皆が好きに、自分の思うように戦えるのが一番だしね。

声 『……どんなに仲間が増えようと、私を凌駕する艦はいないようだな《ボソリ》』

 ……ろっとぉ、帰投中のながっちゃんが、ぼそりと呟きましたよ?
 あのね、ながっちゃん? 直接の通信は切ったけど、映像と音声は一方的に受信しとるから、聞こえとるのよ?

中井出「からかいの好機の香りがした!《ズシャア!》」
彰利 「来んでええよ!?」

 で、からかいの香りに鼻腔を擽られた我らが提督が、開けっ放しだった窓から素っ飛んで来た。

中井出「何事か彰利一等兵! ……おおあれに見えるは長月ちゃん!
    ……えっと、なに? またなにか愉快なセリフを口にしたの?」
彰利 「来て早々に妙に冷静になるでねぇよ。愉快なセリフだったけどさ」

 一応説明してみると、中井出のヤロウはひどくやさしい顔でコクリと頷いた。
 ……ああ、これ全力でからかう気だコノヤローメ。
 まあアタイも中井出のとことか悠介のとこの艦娘、散々からかっとるから文句は……言うけどね。
 言いたいことは言う、やりたいことはやる。それが我らの原ソウル。

彰利 「つーーーわけでYOォオ? ながっちゃんをからかうのはアタイの特権ぞ。
    貴様なんぞにからかわれてはたまらん! 出ていけぇ!」
声  『なっ!? か、からかうとはどういうことだ司令官!
    あんたはそんな目で私を見ていたのかっ!?』
彰利 「ホイ? あれ? ギャア!」
中井出「おおすげぇな彰利一等兵……からかおうと通信を繋げた矢先に、
    そんな心配をするフリをしつつ全力でからかう宣言だなんて……」
彰利 「なに勝手に人ンところの通信に手ぇ出しとんのキミ!」

 見れば画面の中のながっちゃんが顔を真っ赤にして怒っとる!
 おおなんたること! 今まで築き上げてきた信頼関係が!
 おのれこの野郎! ワタシイマトテモアナタヲナグリタイネー!

彰利 「でも今はこの勢いに乗じてからかうのが先だ」
中井出「ナイス原ソウル」

 そして僕らはからかった。
 ……のちに、帰投したながっちゃんに、中井出もろともボコボコにされた。

……。

 で。

彰利 「いやスゲーヨあれ。躱した弾丸がメイツどもの足とか手で反射してくんの。
    避けられねーのヨあれ。
    背中に直撃受けてた中井出が人目を憚らず泣いてたし」
中井出「なんでわざわざ泣いたとこまで教えるの!?」
悠介 「いや……お前らなぁ……」

 任務も一通りこなしたし、皆に休んでもらっておる間に悠介んとこの鎮守府へ。
 思ったんじゃけども、なんかアタイらの鎮守府って狭ェエエエエのよね。
 それを自覚した上で思ったんじゃけども、もしやここらって三つ合わせてひとつの鎮守府なのでは?
 まあ任務が別々に来る時点で違うとは思うけどね。

悠介 「なんでなにかっていうと俺のところに集まるんだよ……」
彰利 「いやほらやっぱりなんつーの? 実家のような安心感があるってゆゥか」
中井出「おいおいそんなことより茶がねーぞ茶が」
悠介 「床を畳に替えたばっかなんだよ! 雑談なら余所でしろ!
    くつろぎすぎだろどっちも! 五月雨! 茶は用意しなくていいから!」
五月雨「えっ!? はっ!? で、でもっ!」
金剛 「《どばぁーーん!!》Hey提督───ってまた居るデェーース!!?」
中井出「はーい提督だよー!?」
彰利 「ウヒョーホホホ提督でちゅよー!!」

 悠介がアタイらのやかましさに、クロマティ高校の前田くんみたいなことを言い出した。いつものことじゃけど。
 したっけ例の如く扉をやかましく開けてやってきたコンちゃんが、悲しみの悲鳴。
 もちろん提督なアタイらは素晴らしき提督オーラを出しながらコンちゃんを囲み、

中井出「円の動き」
彰利 「円の動き」
金剛 「なんで回るデェーーース!!?」

 棒人間謹製、円の動きでコンちゃんの動きを完全に封殺した。
 なにせコンちゃんは提督が好きなのだから、我ら提督に囲まれてサイクロンされればそれはもう天にも昇る夢心地。
 ほれ見んさい、今も涙目になってあわあわと狼狽えて

彰利 「《バゴシャア!!》つぶつぶーーーっ!!?」
中井出「《ヂガァンシャア!!》ほべげぇーーーっ!!?」

 ええもちろん悠介に殴られました。二人とも。
 ご丁寧に顎が外れて、うきうき叫ぶアタイを無視してコンちゃんを僕らから離すダーリン。
 見ればコンちゃん、涙目ながらも輝く瞳でダーリンを見つめている。
 ……クォックォックォッ……全て計算通りよ!

彰利 (ねぇ中井出? これって恋の応援?)
中井出(え? 違うよ? だって邪魔しかしてないじゃん)
彰利 (だぁねぇ!)
中井出(ところでなんで僕だけ電撃込みだったんだろ)
彰利 (アタイなんか顎外れたけど?)
中井出(いつものことじゃないか)
彰利 (あ、そうだった)

 解決した。
 さあそげなわけで! 昼は○○! 思いっきり生……ハゲ!

彰利「悪い子はアタイ! ヒャッハーなまはげが悪人じゃあ探す意味もねー!」

 やあ僕彰利。
 今日はSOゥ、悠介が手に入れたっつー噂の変態痴女エリーナさんを見にきたのYO。
 で、来たついでにコンちゃんからかって悠介にボコられました。
 ええ、一度では飽き足らずに何度も。
 したっけ……ごらん、中井出が司令室の壁に頭から突っ込んでぐったりしてる。
 模様替え家具でいうなら“装飾”のカテゴリっぽく突き刺さってる。
 え? アタイ? アタイはホレ、檜風呂に捨てられたあと裁きでバリバリーって。
 いやーもう容赦のレベルが人間に向けるもんじゃねぇや。

悠介「お前は……どうしてそうピンピンしていられるんだよ……」
彰利「仰向けに浮かべばべつに苦しゅうないし、シビレももう回復しとるのYO。
   して? 噂の速い子は?」
悠介「島風のことか? 体慣らしのために1ー1に行ってもらってる。
   もう帰ってくる頃だな……よし、行くか」
彰利「ホ? 行くって、何処に?」
悠介「補給が遅いとうるさいんだよ、あいつ」

 補給が遅いと? や、補給なんて速いも遅いもないのでは?
 と思いつつ、ザヴァリと風呂から上がってみれば、中井出も壁からゴボリと出てきたところ。
 ぬう完璧じゃ。
 これで中井出の首が180℃回ってなければ。

中井出「……オワッ!?」

 しかも気づいてなかったらしい。
 こやつもほんと、最初は普通の人間だったなんて信じられないよなぁ……。

中井出「失礼な。俺はまだ生物学的には人間だぞ?
    武具とレベルが無くなれば激烈雑魚だし、
    そのレベルも武具が無ければ発生しないステイトだし。
    空界と世界融合させてからも、俺ゃきちんと人間やってるって。
    もちろん全世界融合の結果もあるから、
    猛者知識やガキャア達の記憶から、
    こうして知らない世界にまでやってきて遊び続けることも出来る。
    僕だけだと思ってたら皆様やってきていて驚きだったけど」
彰利 「まあ、今さら空界でなにがある〜ってわけでもねーべョ。
    天秤の悪魔が地界のコゾーを呼び込んだーとか刺激を用意しとったけど、
    そやつがどれほど今の空界を引っ掻き回すかも解らんしなぁ」
中井出「なにかあったらすぐ行ってやってくれなー?
    遊ぶのはもちろんいいけど、別に空界をないがしろにしたいわけじゃないし」
彰利 「つーかね、きさんもよくもまぁリシュナっちやエミュルにやさしくできたね。
    チャイルドエデンのガキャア相手に思うこととかねーの?」
中井出「? チャイルドエデンのことに、別に子供は関係ないだろ。
    麻衣香が七草とラヴってたとしても、
    意志の方の麻衣香はビンタとデンジャラスアーチで許したし。
    むしろ精霊の勝手に俺達家族が巻き込まれたカタチだから、
    “それがなければ勝てなかった”からって、
    武具融合にこだわった俺や、それを利用してマナを守った精霊の所為だろ」

 ……ナルホロ、そういう考えで動いておったか。
 いろいろ思うところはあったんじゃろーね。
 けどまあ、そりゃそうだって思えるものもある。
 1000年どころか、56億以上も生きてりゃ考え方も変わるってもんだ。
 こやつん中じゃあもう答えは出てるんだろう。

彰利 「そか。ならばもはやな〜んも言わん。今さらだしね。
    そげなこと考える暇があったら、今を楽しまねば」
中井出「そゆこと〜。ところでこの〜……艦隊これくしょん、だっけ?
    誰の知識から来たんだろうね。
    少なくとも俺は早い段階から空界に住んだから、こんな世界は初めてだ」
彰利 「アタイはテイルズオブファンタジアの世界に行きてー。
    ちなみに誰の知識かは知らん。猛者の誰かか、コゾーどもの誰かっしょ」
中井出「だよなぁ。一度でも行ったことがある世界ならぴょんと飛べるんだけどな。
    もちろん“最初から”始めることだって出来るし」
彰利 「じゃあアタイ、この世界が終わったらファンタジアの世界に行くわ。
    ねぇダーリン? ダーリンはどこに行きたい?」

 さっきから無言で歩くダーリンに言葉を投げる。
 心配そうに、秘書艦の五月雨ちゃんが隣を歩いておるけど、やぁめんこい。じゃなくて。

悠介 「ん……俺か? 俺は……とりあえず静かな世界が……いいな……」
中井出「うわー、すっげぇ遠い目」
彰利 「あの……ダーリン?
    アタイが言うのもなんだけど、もーちっと外見に見合った表情しねー?」
悠介 「全力で“お前が言うな”」

 うん、アタイ自身もそう思う。

悠介 「提督は? どこか行きたい世界とかはないのか?
    自分で知ってる世界でも、行ったことのない世界くらいあるだろ?」
中井出「え? 俺はどこでもいいかも。
    どこでもいいから、この世界みたいにみんなでわいわい“生きたい”なぁ」
悠介 「………」
彰利 「……やっべ……断る言葉が見つからねぇ……」
中井出「断る言葉から探すなよ! 泣くぞてめぇ!」
彰利 「そういう意味で言ったんじゃねィェーーーッ!!」

 と、首が180度回った状態で器用に歩くバケモノと話しながら歩いておるわけですが。
 ……すげぇな、平気で歩いとる。
 首外して歌って踊れるアタイが言うのもなんだけど、すげえなこやつ。
 思わず顎を拭いながらごくりと息を飲んでしもうたわ。

悠介「……なぁ彰利。俺達も、なんというか……慣れたもんだよなぁ……」
彰利「オウヨ……最初の頃の、死神にさえ驚いて逃げてたダーリンが懐かしいわ」
悠介「……遠いところまで来たよなぁ……」
彰利「親友が世界を救ったあたりで、なんかもう超常現象どんとこいだったね」
悠介「俺もそうだった筈だったんだけどなぁ……。
   どうしてだろうなぁ、かつてのクラスメイツたちの行動のほうが、
   よっぽど驚きの連続なのは」
彰利「曲がった常識が正常に戻ったと思ったら、そっちのほうが非常識だったんしょ」
悠介「……はぁ。まぁ、なぁ……。
   こうしていろんな世界で遊べるのは、本気でありがたくはあるんだけどな」
彰利「あ、それはアタイも同じ。
   なによりみんな意志体みてーなもんだから、もはや忘れられることもねーし」

 そう。それがなにより大事なこと。
 表情がやっぱりどっか硬かった中井出も、随分とE笑顔になれるようになったよ。
 こげな調子で旅をしてーもんじゃね。
 まあ、お呼びがかかればフェル・マデオネス……融合空界にゃあ戻らんとだけど。

彰利 「むしろ中井出YOォオ?
    きみいっちょ、記憶を真理の扉に弾かれたあたりにまで戻して、
    “意志は奪われなかった”って記憶を植えつけて出会いから始めてみれば?」
悠介 「……そうだな、案外それもいいんじゃないか?
    忘れられて別れてばっかだったろ。
    覚えてもらえたまま別れるのも、いいんじゃないか?」
中井出「ん……それは」
彰利 「んーでもって、敵としてしか出会えなかった、
    テイルズオブファンタジアの世界とかでも楽しんでいきゃあいいさね。
    あー、ほれ。ダオスが無茶せんように、えーと。
    ウィノナ・ピックフォード、だっけ? あのおなごと頑張ってみるとか」
中井出「なっつかしー名前だなぁあ……小説版だっけ?」
彰利 「そうそう、ヒロインの名前が、ええっと……? 4だっけ? おう4!
    エイリアン4のヒロインを演じた人の名前を参考に書かれたアレ」

 伊吹萃香の萃める力で一点に集められた意志や記憶は、こうしてアタイらとともにある。
 それらをアタイらの力で少々いじくれば、いつでもどこからでも強くてニューゲームみてーなことが可能だ。
 誰が主人公でも構わないってな世界だから、結構楽しい。
 ちなみにベリっ子ヤムヤムと一緒に悠介を進撃の巨人の世界に落としたら、帰ってきたダーリンにめっちゃボコボコにされた。かつてないほどにボコボコにされた。ヤムヤムは先に逃げてたから平気だったけど、逃げよーったってそーはいかねー! いつか酷い目に遭ってもらうんだ!

中井出「そっかー……いいかもなぁ……」

 中井出のヤローはどこか遠い目でうんうんと頷いておる。
 ……首の神経とかどうなっとんのかね、こやつ。
 ワオ、五月雨ちゃんが怯えとる。
 日々を深海棲艦と戦って、バケモノには慣れとる筈なのに。
 すげぇや! さっすが天下の中井出さんだ!

彰利 「まあなんつーの?
    そもそもキミ、常識破壊が好きなくせにちといろいろと縛りすぎじゃよ。
    もっと自由にすりゃえーのに」
悠介 「ああ、それは俺も思ったな。
    もっと他人のことなんか気にせず、自由にしてみればいいだろ。
    あいつとの約束があるからこれだけはしねー、とか、そういうの抜きにして」
中井出「一度それやって、辻堂さんといくとこまで行きそうになってね……」
彰利 「あーーーーーー……」
悠介 「あれはなぁ……まぁ……なぁ……」

 ラヴな方面での自由は、ちとまずいよね。

彰利 「ほいじゃあラヴ方面は固めるとしても」
中井出「そうして自由にしてたら、
    その気もないのにやさしくするなと怒られてなぁ……」
悠介 「あーーーーーー……」
彰利 「アッチャー……」

 打つ手無しじゃわい!
 中井出の場合、好き勝手振る舞っててもそれが結果として相手へのやさしさになるから、そりゃ厳しいわなぁ……。
 じゃけどもそれじゃあなにをどうしろってんだって話になる。
 だから、ええんじゃない? ラヴに発展しようと、その先は中井出がどうするかで。

彰利 「それでも自由にしてええんじゃない?
    別に今さら、アタイらの中じゃあ恋仲がどうとか言わんよ。
    そりゃあ嫉妬もあるでしょうけどもねぇ」
悠介 「俺はちとそういうのは想像出来ないな」
彰利 「きさんは真面目すぎんのYO。むしろアタイはこう言おう。
    きちんと相手を養えて、寂しくさせない自信と実力があるなら、
    もう全員娶っちまえYOって。
    ちなみにこの世界にはケッコンカッコカリってのがあって、
    錬度99になった艦娘とケッコンできるらしーよ?
    しかも指輪さえ用意すりゃ複数と」
中井出「タケトの父カッコカリか……いやだなぁあああ……!!」

 ウワー、自分で言っといてなんだけど、スゲー気持ち解るわー。

彰利 「まあでも、浮気を助長するわけじゃあねぇザマスが、もっとほれ。
    えーと? おおそうそう。
    キミね、もうちょいマシな制約の中で生きりゃよかったのYO。
    相手が誰々だから〜とか、内側に居るからアレコレ〜だとか、
    あまり深く考えずに。ねぇダーリン?」
悠介 「信じて忘れられるのは提督だろ? 勝手なことなんて言えないだろ」
彰利 「ぬう。そりゃ、アタイも何度も人生やり直しした側だから、
    戻ってみればみんなとの関係がリセットされてる、なんて茶飯事だったけど」
中井出「まぁま。なんだかんだで人間が好きだからね、僕。
    裏切られるなら自分からとことん信じてみたかったんだよ。
    ほら、人間の絆の中にある可能性っていうのかな。憧れた。ああいうのに。
    だってのに、その可能性を見せてくれたのが萃香だけだったんだもんなぁ」

 人間の敵の鬼がその可能性を見せたってんだから、こやつの信頼ってとことんまでに浮かばれねぇよね……。
 てゆゥかね、中井出。そろそろ首がやばくなってきてるから、そろそろ戻さんかね。

悠介 「あー……提督?
    いいから提督はまず首を戻してから喋ってくれ、五月雨が怯えてる」
中井出「そんなことないよねー!? 五月雨ちゃん!」
五月雨「ぴやぁああああっ!!?」

 nakaide の 180度大回転ネックスマイルが発動!
 samidare は 竦みあがった!

中井出「………」
彰利 「あ、今素で傷ついた」
中井出「傷ついてなんかないよ!? 僕、近所でも丈夫な子だって有名だもん!」
悠介 「そーだな、主に金剛にバケモノ呼ばわりされるほど丈夫だな」
彰利 「この前なんてあの弥生ちゃんに悲鳴あげさせたもんねェ〜〜〜ィェ」
中井出「……なにが悪かったんだろうね?」
彰利 「……とりあえず、自分の生首小脇に抱えて歩くのはまずいんじゃね?」
悠介 「とりあえずでそれってお前……」
中井出「いや違うよ!? べつに千切って持ち歩いてたとかじゃなくてね!?
    ただ自分で自分の膝枕で耳かきをしてみたいって思っただけなんだ!
    そしたら頭ごとだから耳の中を見られないことに気づいてしまって……。
    僕は変態じゃないよ……仮に変態だとしても、変態という名の紳士だよ」
悠介 「千切ったんじゃなかったらどうやれば生首抱えられるんだたわけ!」
中井出「どうって。次元の穴を調整して、首から先を移動させただけなんだけど」

 抱えて歩いてはいたけど、別にちぎったわけじゃないよ? と語る中井出。
 アタイが言うのもなんだけど、なして急にそげな耳かきしたくなったんじゃろね。
 と、そこまで考えたところで鎮守府から出て、空の下へとやってくる。
 いつ見てもダーリンの鎮守府風景ってゆゥか、周囲……周辺? 庭っつーのかね。
 そこは日本……古き日本? 武家屋敷みてーな場所ザマス。
 中井出ンところは大自然鎮守府って感じで、アタイのところはあんまり変わらんとです。まさか死神っぽくするわけにもいかねーし。メイドさんが生える洋館っぽくするのも、なんだかためらわれたんよ。
 で、ですよ。
 出てからしばらく歩いとったら、海側の方からゾシャーと結構な勢いで近づいてくるなにかを発見。

彰利「ぬう何者!? アルティメットアイ!《パワ〜》」

 ケビンマスクとかスカーフェイスの真似をして、ただの遠見をしてみる。
 すると……なにやら兎の耳みてーに上に伸びたリボンをつけた、なんか常に大破してるような格好のおなごがこちらへ向けて突っ込んできているではないかッツ!

彰利 「やべぇぞ中井出! 痴女がこっちに突っ込んできてる!」
中井出「なんだって!? アルティメットアイ!《パワ〜》」

 同じく中井出もパワ〜とアルティメットアイをするも、その頃には結構な近くまで来ている兎さん。

悠介    「痴女って言ってやってくれるな……。
       あいつ、あの格好のこと恥ずかしいとかって方向で気にしてないんだ」
彰利&中井出『マジで!?』

 あの格好で!?
 すげぇ! ある意味大物だよ!

島風「提督ー! 島風、帰投しましたー!」
悠介「よし来いっ!」
彰利「え? え? なに? なにが起こるの?」

 大声で元気に、笑顔で叫ぶ島風さん。
 まだ距離は空いてるものの、そろそろ減速したほうがよくなかと? とアタイらがどれだけ思おうが、彼女は止まらんかった。
 それどころかそのままの勢いで悠介目掛けて飛び掛ると、悠介はそれを抱き留めて勢いのままに回転。すとんと下ろすと、……なんとすでに補給が完了しているじゃあないかッツ!!

島風「えへへぇっ、提督、はっやーいっ♪」
悠介「お前はもうちょっと落ち着きを持とうな……」
島風「《がしがし》んんんぅぅう〜〜〜……♪」

 で、頭をちょっと強めに撫でられても、目を閉じて口は猫っぽく。とろけてらっしゃる。

悠介 「っと、島風。ちと紹介したい奴らがいる。この二人なんだが」
彰利 「俺はハーン! よろしく頼むぜ!!」
中井出「オイラワンタン!」
島風 「駆逐艦、島風です。
    スピードなら誰にも負けません。速きこと、島風の如し、です」
彰利 「そうなん!?」
悠介 「あーちょっと待てそこの馬鹿者。あくまで艦娘の中ではって意味だからな?」

 ギャア先読みされた! せっかく競争しようとしたのに!

中井出「しかし随分とまぁ懐いてるな」
彰利 「悠介ならきっと、
    アタイんところに新たに来た天龍ちゃんとのほうが仲良くできると思うの」
中井出「え? プロレス技とか使うの?」
彰利 「その天龍じゃねーザマス」
悠介 「懐いてるって意味ではどうなのかな……。
    ただ、補給遅いとか言うから素早くやってみたらこうなった」
島風 「だって速いもんっ《ふんすっ》」

 どうやらこの兎さん、速いのがお好きらしい。
 ホホー……だからこげに軽装なんかね。
 じゃけんどもそげな理由だったら真っ先に悠介が修正しそうな気がする。

彰利 「のう悠介? なしてこのおなご……」
悠介 「あー、皆まで言うな、言いたいことは解る」
中井出「マジでか。じゃあどうすりゃ天龍さんが艦娘建造で出てくるか教えてくれ」
悠介 「だからその天龍じゃねぇ!!」
中井出「《ビビクゥ!》ヒィ!? な、なんだよー! 解るって言ったくせにー!」

 プロレス界の雄、天龍さんが海の上に立って戦う姿を夢想した。
 ……ある意味痛快だった。

悠介 「で、島風。俺が渡した服は、どうしたんだ?」
島風 「え? 金剛が持っていきましたよ?」
悠介 「………」
彰利 「ジェラシーストームか……やべぇ、またコンちゃんからかえそう」
中井出「いやしかし、元気っ子なわりに晦にはきちんと敬語なんだな。
    なんか普通に感心。格好はアレだけど」
彰利 「あ、それアタイも思った。格好はアレだけど」
悠介 「だから……言ってやるなよ……」

 言いつつも服を創造、兎さんに渡すと、兎さんちょっと戸惑い顔。

島風「もっともっと速くなってもいいの……?」
悠介「ああ、いいぞ。好きなだけ速くなっていい。俺が許可する」
島風「……!《ぱああっ……!》」

 兎さん、花開くような笑顔。
 いやァ〜〜ンァ、なんつーか悠介ってああいう笑顔させるのウメーよね。
 こう、パッと笑顔になるんじゃなくて、フワァアアって感じで徐々に笑顔。眩しい。
 で、兎さんが喜び、渡された服に目を閉じて顔をうずめてる間、はふーと溜め息を吐くダーリン。 やぁ、相変わらずダーリンもダーリンしとるね。溜め息吐かない日なんてねーんでないの?
 そげなダーリンは試着室みてーなものまで創造して、兎さんをその中へ促した。
 素直に中に入った兎さんは当然着替えて出てくる……と、おっほ、これはこれは。

島風 「えへへぇ、これ以上速くなっても知らないからっ」
中井出「なんの、宅の秘湯混浴刑事エバラだって速ぇえぞ。
    この前もっと隊の先頭に立って戦いたいって言うから、
    浮水艦装にジェットバースト装置つけてやったら敵重巡を一撃で沈めたし」
彰利 「すげぇなそれ。ちなみに決め手は?」
中井出「ダンターク流奥義」
悠介 「ただのぶちかましだろうがそれは!!」
中井出「頭にたんこぶつけて、
    泣かないように堪えながら戻ってきたエバラの可愛いこと可愛いこと……!
    故に名づけたのだ。カタパルト・エバラ・インパクトと!
    って、今はそれよりもだな」
彰利 「オウヨオウヨ、ホレ悠介、忘れとる忘れとる。
    つーか普通にエバラ呼びなのね。レディー泣くぞ」
中井出「まあきちんとフォローしてるから大丈夫。
    それより晦〜? こういう場合に一等兵言うのは無粋だもんな、ほれ。
    きちんと言ってやらなきゃ男じゃねぇぜー? そういう差別嫌いだけど」
彰利 「当事者になると鈍ルヘイムなくせに、なして他人には敏感なのキミ」
中井出「お前にだけは言われたくない。あと鈍ルヘイムってなに? 鈍いってこと?」
悠介 「………」

 悠介がちらりと兎さんを見る。
 兎さん、目を輝かせながら悠介を見上げる。
 OH、やっぱり感想を待っておる。創造した本人に感想求めるってどうなんだろうなとは思うけどね、そこんところはアタイらには謎の、オトメゴコゥロというものが関係しておるらしいぜ?

悠介 「あー、その。ほら、な?」
彰利 「服、いらないと思って捨てた強そうな先輩かねキミは」
中井出「っべー」
彰利 「やっべー、すっげ服褒めたくなってきたわ、っべー」
悠介 「………」

 あ。とりあえず頭撫でに逃げた。
 でも兎さんもほにゃりとしてるし、ええんかね。

悠介 「その……似合ってるぞ。大事にしてくれると、嬉しい」
島風 「《ぱああっ……!》〜〜〜……はいっ!」
中井出「おお意外。てっきり“は〜い”とか言うと思ったのに、きっぱりだ」
彰利 「そんだけ嬉しかったんデショ。宅のボノさんもこんだけめんこかったらのぅ。
    いや、めんこいんだよ?
    めんこいんだけどなにかっつゥとクソクソ言ってきてさ。
    ちなみにこっちみんなクソ提督って言ってたから徹底的に見ないでみたら、
    一層クソ提督言われるようになった」
中井出「なんつーか擦れ違い恋愛ドラマみたいなことになってんのな」
彰利 「オウヨ」

 中井出が随分とまあ砕けた口調で語りかけてくる。
 こやつも長生きした分、こうまで砕けて話せる相手が少ないからのう。
 原メイツとマクダウェルンゲリオンくらいなんじゃないかね。
 あ、あと風間ファミリーか。
 ……や、それはまあいいや、こやつも元気にしとるみたいだし。
 それよか、うん。この痴女エリーナさん、ああいや、もう格好も変わったし、えーと……なんて呼ぼう。
 あだ名っぽい方がフレンドリーな感じでええよね?
 つーわけで……トッポチージョ!(*真面目に考えてこれである)
 やべぇ……トッポジージョっぽいところから攻めるなんて、ステキハイセンス・アタイ。

中井出「えっと、ところで……島風、だっけ?」
島風 「駆けっこしたいんですか? 負けませんよっ」
中井出「望むところだ男じゃわしゃァァァァ!!」
悠介 「普通の会話からどうしてそこまで一気に話が飛ぶんだよ!」
?? 「おっとその勝負、この俺を差し置いてすることなど許さんぞ!」
中井出「な、なにぃ!? 何者だ!」
彰利 「俺だ《どーーーん!》」
中井出「よっしゃあ役者はそろった! 追いかけっこするべー!」
彰利 「うしゃー!」
中井出「むしゃー! よっしゃじゃあまずはじゃんけんからなー!
    最初はグー! じゃんけんぽん! ……負けました」
悠介 「機械からまない遊びで弱すぎだろいくらなんでも!」
中井出「ウ、ウルサイワーイ!! いいだもん駆けっこで度肝抜いてやるんだもん!
    そして砂肝みたいに食べてやる! 十数えるから好きなだけ逃げるがよいわ!」
島風 「見ててくださいね、提督っ!
    私がぜったい一番だからっ! だって速いもんっ!」

 連装砲(らしい)の浮き輪に“ぜかまし”って書かれた痴女がゆく。
 ああいやもう格好はフツーなんだからやっぱり痴女呼ばわりは失礼よね。
 兎さん? シマっち? からくりサーカスのレザ・ア・マシオウに倣って、ゼカ・ア・マシオウ?
 闘いのアートならぬ、速度のアート的な意味で。
 ともあれダッシュ。
 鍛えた分と家系の身体能力を活かした速度! 誰にも負けぬわ!
 と思ったら、ぜかまっちゃん速い! 予想以上に速い!

島風 「わあ……! あなたって速いのねっ!」
彰利 「クォックォックォッ、このアタイの速度についてこれ」
中井出「十《ゾンッ!!》」
二人 『速ァアアーーーーーッ!!?』

 ぜかまっちゃんと速度を競おうとした瞬間、なんと目の前に中井出!

彰利 「ゲゲェこのタコ大人げなくステイト移動しやがった! こ、このクズが!
    見なさい! ぜかまっちゃん驚きすぎて固まっとるじゃない!」
中井出「だ、だって仕方なかった! 彰利が気にせず生きろっていうから!
    制約なんて無駄に立てずに自由にしろっていうから! ……このクズが!!」
彰利 「うおおいきなり人の所為にしてきおったわこのクズめ!
    でも事実だから反論が難しい!」
島風 「っ!《ダッ!》」
中井出「ヌッ!?」
彰利 「おお! そういや追いかけっこだから掴まるまでは自由!
    つーわけできさん、普通の身体能力で追ってきんさい! 能力禁止!」
中井出「うむよし! では十を数えるぞ〜!
    ……十! はい数えた逃すかぁあーーーっ!!《ギャオッ!!》」
彰利 「ゲゲェご丁寧に“十”だけ数えやがった!
    だから大人げねぇって言っとんでしょうが!!」
中井出「ばかもん! 遊びで大人げなど必要なものか! 必要なのは童心!
    ネコット農場でカクバッタを追いかけた頃のような無駄な童心が必要なのだ!
    貴様もあの時の閏璃のように、いっそ弾けてしまえばいい!」
彰利 「ク、ククーーーッ!」
中井出「ムウウ〜〜〜〜ッ!!」

 肉チックに唸りながらも走る走る走る!
 ……つーか速ぇえ!! そういやこやつ、ノートン先生に鍛えられたパーフェクトマッスルがあるんだった! 普通でも結構速ぇえよこやつ!

彰利 「だが速度では二番目だ! 一生かかっても追いつけんぞ!」
島風 「私には誰も追いつけないだからっ!」
中井出「そんなことを言うもんじゃないよ、シマちゃん。
    そっと隣に居てくれる人の存在っていうのはありがたいものさ。
    ずっとずっと先頭だけを走って、振り向いてみたら誰も居ない。
    そんなの……寂しすぎるじゃあないか……」
島風 「えっ……ひゃあああーーーーーーっ!!?」
彰利 「ええ話しながらモノスゲー速度で追ってくるって、地味に怖ェエエよ!!」

 まるで救われることこそ食の本質であると語るゴローちゃんのような顔で、中井出が……既に横に!
 そりゃぜかまっちゃんも驚くってなもんだ。
 つーか悠介がこねー。混ざりゃあええのに。

島風 「〜〜〜《きゃらんっ》負けませんよっ!」
中井出「上等である!!《どーーーん!!》」

 あ。ぜかまっちゃんの目が輝いた。
 なんかそれこそ遊び相手……友達と出会えたって感じで。
 ……案外中井出の言う通りだったのやもね。
 速くて、性能も良い。ああいう子って、なんつーのかね。ちと他人に自分を自慢しすぎちまう傾向がありそげだし。
 悠介に懐いてたのも、仲の良い相手が居なかったって理由もあるかもしれねー。
 むしろアタイが断言しよう。あの雰囲気からして、友達も姉妹艦もおらんわ。
 ……OK、ともに、ゆきましょう。ひとりぼっちは寂しいもんね。



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