161/父としての彼

 曹丕の誕生を喜んだ日も遠く、早くも自分の子供が6人も産まれた。
 それぞれ蓮華との子を孫登、穏との子供を陸延、明命との子供を周邵、祭さんとの子供を黄柄、亞莎との子供を呂j、思春との子供を甘述と名づけ、自分の血を引く子供が7人に。
 連日喜びっぱなしの俺はあっちへ行ったりこっちへ行ったりで忙しい。
 みんな見たこともない穏やかな笑みで我が子を抱いて、そんな笑みを見てしまえば“頑張らなきゃ”って気持ちが溢れ出してじっとしていられない。
 衝動に突き動かされるままにがむしゃらに仕事して、時間が空けば子供の顔を見に行ってを繰り返し、とある日に「ホウぅ……」と息を吐いてみたら全身から力の全てが抜けて昏倒。華佗に頑張りすぎの烙印を押された上に華琳に絶対休息命令を出され、やる気は空回りしたまま東屋のベンチでぼーっと日々を過ごす俺が発見された。
 昼間っから公園のベンチで脱力したまま、空を見上げるお父さんを発見してしまったようだとは言わないでほしい。ちょっと状況が似ていてシャレになってない。

「主様主様、しっかりしてたも?」
「ふふ……空が青いなぁ、美羽……」

 青空の下なのに黄昏る俺の傍、大人なままの美羽が困った顔で励まそうとしてくれる。
 自分の容姿のこともあって、「うほほほほ? 産まれてきた子供らに大人の在り方というものを教えてくれようぞ?」とか怪しい顔で仰っていた。なんとなくそれって元の姿に戻るフラグなんじゃ……とか思ってしまっても仕方ないと思う。
 というか隠れて大人薬をちびちびと飲んでいるんじゃなかろうかこの子は。原液を飲むのはここまで危険なのか……覚えておこう。

「大人の在り方より、お姉ちゃんとしての在り方を教えてあげてくれな」
「むっ。主様がそう言うのなら、そうするのじゃ。姉、あねー……うみゅう……姉なぞおらなんだから、どういった振る舞いをしたらいいのか解らぬの……」
「姉って。一応ってカタチでは麗羽が───ごめんなんでもない」
「おおなるほどのっ! アレの真似をすればよいのじゃなっ!? おーーーっほっほっほげーーっほごほげほっ!」

 高笑いした途端に咽た。
 そんな美羽に、お願いだからそれだけはやめてくださいと……ソッと背中を撫でてやりながら優しく呟いた。むしろ麗羽をアレ呼ばわりとか、この子も強くなったなぁとしみじみ思ってしまう。

「麗羽の真似はだめなのじゃ……! こんなことをしていたら喉を潰してしまうのじゃああ……!!」

 散々と咽た所為で涙目だった。
 大人の在り方を教えたかった人の末がこれなのだ……じいちゃん、世界は広いなぁ。

「麗羽には姉っぽいことされたりしたのか?」
「散々弄くられたのじゃ」
「じゃあ逆にやさしくしてやろうな」
「う、うみゅ……妾も誰かを弄くってみたいと思うのはだめかの……」
「やられたことをしてみたいって気持ちは……まあ、少しは解るけどさ。もし自分がやられて嫌だったことを、他人にした時に“楽しい”って感じちゃったら、もう元の自分には戻れないと思うんだ。楽しいって思えたら後悔も出来ない。あいつはこんな楽しいことをしてたのかなんて考えたら、した相手さえ許す勢いで他人にひどいことをしていく。いつかそんなことを誰かに問い詰められて、美羽はその時なんて言うと思う?」
「………」

 すぅ、と息を吸って、美羽は目を閉じた。
 頭の中で自分の行動するをイメージしてみているんだろう。
 それはほんの少しで終わり、美羽は申し訳なさそうな顔で首を横に振った。

「……麗羽の所為にしておったのじゃ。麗羽が妾にそうしたから妾もそうしたと」
「………」

 そんな顔をしてくれたことが嬉しくて、美羽の頭を撫でた。
 やっぱり、人って成長出来る。
 そんなことを目の前で見せてくれるこの世界の人たちは、俺の中での人間の可能性の塊ばっかりな人たちだ。この世界には“出来るわけがない”が少ない。それが、今は勇気にしかならないんだから面白い。

「美羽。自分がやられて嫌なことを他人には絶対するな、なんて言わない。でもな、自分がその人にしてしまったことに、原因になった人のことなんて関係ないんだ。恨むならあいつを恨めなんて言われたって、やったのが美羽なら美羽が恨まれて当然だ。だからな、美羽。どうせやったのが自分になるなら、やられた人が嬉しくなることをしてみるんだ」
「う、うむ。妾、主様が喜ぶことならいっぱいいっぱいしてあげたいのじゃ」
「……俺限定?」
「他の者にやっても妾を小ばかにする者ばかりであろ! やったところで無駄なことなどするだけ無駄なのじゃ!」
「………」

 ぽむぽむと頭の上で軽く手を弾ませてから、さらりと髪を撫でる。
 美羽はムゥウ……と頬を膨らませながら俺を見上げてくるが、しばらく撫でていると猫のように自分から頭や頬を押し付けてきた。

「美〜羽。それは“今までの自分”が他の人にそうさせてるだけなんだ。今の自分が変わっていけば、変わった自分を見てくれる人だってきっと居る。居なかったら俺が見るよ。だから、少しずつでいいから……他人のやさしく出来る自分になってみないか?」
「……うみゅううう……いくら主様の言葉とはいえ、少なくとも呉の連中には無理な話なのじゃ……。あ、あうっ……もちろん主様の期待には応えたいのじゃぞっ!? 妾っ、主様の信頼だけは裏切りたくないのじゃっ!」
「ん、解ってる。だから、今ここからなら一歩が踏み出せるんだ」
「……? どういう意味かの……?」
「うん。なぁ美羽? 変わる前の美羽に対して小ばかにする人が多いなら、変わる前の美羽を知らない誰かはほら、ありのままをそのまま見てくれるだろ?」
「?」
「だからさ。いい“お姉さん”であってくれな、美羽」
「───! お……おおおお! なるほどの! 子供は以前の妾を知らぬと、そういうことなのじゃな!? うほほっ、主様も案外腹黒いお方よの……!」
「人聞きの悪いこと言わないっ!」
「隠さずともよいであろっ? よいであろぉっ? ……ふふっ、うははははーーーっ! そういうことなら妾にどーんと任せてたもっ!? 産まれたばかりの子供に、妾の凄さをどどんと思い知らせてくれるのじゃーーーっ!」
「………」

 どうやったらやさしく届けた助言がこうまでねじれるのか。
 俺はこの時……袁家の血の凄まじさを静かに感じながら、笑みを浮かべた遠い目で、空の青を眺めていた。

……。

 仕事が忙しい日は逆に張り切る現状。
 何故って、娘と遊ぶ時間を作るためだ。
 もちろん仕事中に大慌てしたり必死の形相で机にかじりつく姿は見せたりしない。
 仕事中は部屋に入ってはいけませんと言い聞かせてある。
 華琳は何故か「それでいいのね?」と訊ねてきたが……なんだったんだろ、あれ。

「丕っ、ここに居たのかっ! さあ、ととさまと遊ぼう!」
「はいっ」

 俺の娘であり華琳の娘である曹丕、字を子桓。
 肩まで伸びた髪は金を主体に、メッシュ調に間隔を空けて存在する黒がなんというか嬉しい。これでも地毛なのだから、この世界ってなんか凄い。
 子供ながらに凛々しさを持った、しかし元気な時は実に元気な子供だ。
 華琳の教育の賜物なのか元々の才なのか、勉強が出来て運動も見事。ちっこいのに喋り方が結構ハッキリしていて、物事への理解力が随分と高いとくる。実は今現在で、迂闊なことを言えない相手No.1でもある。
 そんな丕だが……蜀の学校に通わせるかって話は出たものの、華琳は自分で育てると言って蜀行きを却下し、現在も城や城下で元気に生活している。桂花塾には通っているようだが、妙な洗脳をされたりしてはいないかと不安ではある。
 それから……まあその。友人関係が心配だ。
 勉強づくしじゃなく、体作りもやっているためにもやし的なことになることはないものの、大人ばっかりと付き合ってる所為で同世代との付き合い方を知らないままに育ったら、なんというか……相手を見下す大人になってしまいそうで怖い。
 なのでここは俺の出番であるとばかりに父参上。
 遊びというものを教え、街に連れ出しては同世代の子供とも遊ばせる。
 しかしながら……これが結構難しい。
 主にタイミングってものは最大の敵なのだ。

「あ、しかんさまだ」
「しかんさまー」

 つい先日までは“子桓ちゃん”だった呼び名が、今日になって“子桓さま”になった。
 親に注意されたのだろう。
 子桓への接し方もどこか遠慮を混ぜたものになり、親ばかだから言うんじゃないが、賢い丕がそんな接し方に違和感を覚えないはずもなく。楽しみにしていた街での遊びの中でも、いつしか無邪気な笑顔を見せなくなっていた。子供のうちから作り笑いを覚えてしまったのだ。

「ととさま」
「……どした?」

 陽が落ちる頃、丕の手を引いて帰る途中。
 繋いだ手にきゅっと力が篭り、丕は俺を見上げながら言った。

「……もう、遊びには出たくないです」
「ん……街には来たくないか?」
「もう……楽しいって思えないから、いいです」
「……そっか。じゃあ、璃々ちゃんか美羽に遊んでもらうか」
「遊びはもう……いいです」
「………」

 俺の手を握る小さな手は震えていた。
 王の子として生まれた者が通る、どうしようもない孤独感。
 それを今まさに経験している丕はしかし、涙を見せようとはしなかった。
 溜め息ひとつ、くっと強く手を引っ張ると、驚いた表情の丕を抱き上げて、そこからさらに持ち上げて肩車にした。

「あ、う……ととさまっ」

 急に高くなった視界に戸惑いの声をあげる。
 そんな娘のまだ小さな両足をそっと支え、歌を歌いながら道を歩く。

「と、ととさま、みんな見てます……恥ずかしいです……」
「ん、いいんだよ。娘と仲良くしてなにが悪い。父さんはみんなに笑われても、丕との繋がりを選ぶぞ。馬鹿にされても、馬鹿になる勇気も持てないやつの言葉なんて笑って受け止めればいい」
「うぅ……よく、解らないです……」
「お前は難しく考えすぎなんだよ。全を大事にしていたのに一が崩れたら全を諦めるなんてもったいない。大事に出来るものは……自分が本当に大事にしたいって思ったものは、自分の中の何かが多少欠けようが掴んでいなきゃ、いつか後悔するかもしれないぞ?」
「………」
「あと、子供のうちからそんな、意識して丁寧に喋ることないんじゃないか? 語尾をですますにしてるだけで、敬語としてはちょっと崩れてるし」
「あぅう……」
「《ぎゅみー》あだだだだ! こ、こらっ! 丕っ! 耳を捻るんじゃありませんっ!」

 犬とかに跨って耳を掴んでバイクの真似をする子供かお前はっ!
 などと怒鳴るようなこと、この北郷はいたしません。
 華琳が厳しくいくのなら、せめて俺はどこまでもやさしい親であろう。
 辛い時にこぼれる愚痴くらい聞こう。
 つまらない時は一緒に楽しいことでも探してみよう。
 どうすれば親らしいのかなんてのは、父親初心者な俺には解るわけもないが、辛さを吐き出す場所くらいにはなれるだろう。父親らしいことのひとつも解らないなら、出来ることくらいはしてやりたいし。

(これでいいのか、なんて……解らないよなぁ)

 躓きながらでも親をやっていくしかない。
 親ってすごいんだなぁ、未知のことを一歩一歩知っていく強さが必要だったなんて……俺、親ってものを自分の中でもっともっと軽く考えていた。
 相手にしてみれば失礼な話だろうが、自分がきっかけとなって産まれたのだから、多少は自分の思い通りになるものだなんてことを勝手に思っていたのかもしれない。
 もちろんそんなことなどあるわけがないのに。
 子供だろうと人は人なのだ。自分で考えて、子供ながらに出来ることを精一杯探している。知識が無い分、空回りばかりだろうと……それがきっといいことになると思うからやるのだ。だったら俺も、いいことになると思ったことくらいは……やってやりたい。
 親になるのが難しいなら隣人から始めようか。友達からでもいいし、知り合いからでもいい……と思う。や、親なんだから親だと言い張ればいいんだろうが、不安はどうしようもなく湧き出てくる。
 親らしいことってなんだろうとか以前に、なにをやろうにも“いいところを見せよう”とか“無様は見せられない”とか無駄な力が入ってダメだ。だからいっそ、親としてじゃなく友達と接するみたいな気持ちでいいのだ。と思う。解らないのは仕方ないだろ、だって初めてのパパなんだもの。

「なぁ、丕〜」
「……は、はい、なんでしょう、ととさま」
「……お前のその妙におどおどしたところは俺に似ちゃったんだろうなぁ……。まあその、なんだ。お前から見てこの都はどう映る?」
「みんな笑ってます。なんか……私だけ笑ってないみたいで、ちょっと嫌です」
「混ぜればいいんだよ。混ざって、無理矢理にでも笑ってみるんだ。苦笑もいつか笑いになるまで、楽しいことに埋没してみりゃいい」
「……………………」
「ん?」
「…………ひとりじゃ、無理だよぅ」

 子供然とした声が、小さく漏れた。
 俺の頭をきゅっと抱き締めるように体を折る娘の体温を感じると、嬉しいやら心配やら、苦笑が漏れる。

「大丈夫だって。不安なら手を伸ばしてみればいい。ここには丕の手を取ってくれる人がたくさん居るんだぞ? 丕はそれを、自分から無いって決め付けてるだけだ」
「でも……みんなは私のこと、かかさまの……王様の娘としか見ていないです。そんな人と手なんて繋いでも、きっと楽しくないです」
「まあ……そうだなぁ。みんなの反応も思いっきりそんな感じだ。特に桂花と春蘭」

 “さすが華琳様の娘!”が口癖みたいなもんだしなぁあの二人。
 どれだけ頑張っても華琳の娘だからで済ませられるのは、丕にとっては果ての見えない道を歩きれと言っているようなもんだ。だって、追いつくべきが、見習うべきが、比べられる相手が覇王なのだ。走ったって追いつけやしない。三国を統一して平和を齎した人を超えるようなことを、この平和な世界でどう成し遂げろっていうんだ。
 追い越せない、果ての無い道を歩き続けろなんて言われて喜べるわけもない。歩いたって比べられるだけ。褒められるのは華琳の娘である事実のみで、丕は褒められてなどいないのだ。

「……なぁ、丕。華琳のこと、嫌いか?」
「………」
「《ぎりりり》いだぁあだだだだだ! だから耳を捻るなとっ! 解った解った! 愚問だったのは解ったからっ!」

 嫌いと言えればきっと楽で……憎めれば軽くなるだろうに。
 我が娘は、困ったことに母である華琳を誇りに思っているくらい好きだ。
 逆に期待に応えきれない自分を不甲斐なく思い、強くなれない自分に嫌気を覚える。
 俺から見れば十分すぎるくらいに頑張ってもなお、この小さな体で頑張りまくっているのが曹丕という娘だ。親としては鼻が高い……と言いたいところだけど、正直に言えば危うい感じがして仕方ない。こういう子は、頑張った果てに失敗してしまうと……様々を我慢していた分、心を折ってしまうことが多いのだ。

「あ、じゃあこの父のことは?」
「………」
「ワー」

 耳を捻りもしない愛に、北郷ちょっぴり泣きそうになりました。

「まあ、いいや。追いかけるのが華琳ってのがハードル高いけど、お前ならいけるよ」
「……勝手なこと言わないでくださいです」
「まあまあ。役に立たないととさまだが、華琳についてならいろいろ助言できるぞー? 華琳に認められたいなら、まずは華琳が教えてくれること全てをがむしゃらに覚えていけ。そうすれば全ては解決。あとはお前の頑張り次第だ」
「かかさまがそんなことで喜んでくれるはずがありません」

 口調からして、喜ばせようと……褒めてもらおうとしたことも一度や二度じゃないのだろう。悲しみと僅かな落胆とが混ざった言葉は、そのくせひどくキッパリとしていた。

「努力は認める人だよ、華琳は。逆に諦める人をひどく嫌う。だから、頑張り続けて全てを受け取ってみればいい。吸収力の高い子供の頃にこそそれをやれば、自慢の娘だって褒めてもらえるぞー《ぎゅみみみ》いだぁーーったたたたた!! いやほんとだぞ!? 嘘じゃないから耳を捻るなったら!! ていうかなんで俺の娘は俺にやさしくないかなぁ!」

 なにが彼女をそうさせるのか……きっと人柄なんだろうね、主に華琳の下で成長した結果というか、そんな感じの。

「ととさまは弱い人ですね……かかさまみたいに仕事もしているように見えないし、いつも暇をしているから、いつでも私と遊べるんですか?」
「む」

 いつかされるんじゃないかなーと思っていた質問がとうとう来た。
 仕事はやってる。ええ、それはもう物凄い量を秘密裏に。
 しかし子供にわざわざそれを教える必要などありましょうか。
 パパはこんなにも仕事をしているんだぞーとアピールするのは、なんというか小さくはないでしょうか。
 どうしよう。

1:ととさまは華琳と同じくらい仕事をしているんだぞー

2:いや……実は全然やってないです

3:実は父さんの仕事は世界の平和を守ることで、見えないところで頑張(略)

4:実は持っている携帯電話で特殊な操作のあと、5を3回押して腰につけ(略)

5:子供達の未来を守るため、日夜暗躍する男! スパイダーマッ!

 結論:2……でいいな。うん。丕の見ているところでは仕事なんてしてないし。

 というわけで。

「仕事かぁ。実は父さんは、いつでも丕と遊べるようにと隠れて仕事を片付けては、時間が出来れば丕と遊ぼうと目論んでいるんだぞー」

 本当のことを、棒読みで言ってみる。
 ……耳を捻られた。

「ととさま。ととさまは将のみなさんになんと呼ばれているか知っていますか?」
「種馬だねぇ」
「……本当にその通りだったのですか? ととさまはかかさまが私を産むためだけに用意された人だったのですか?」
「……実は父さんな、今から約1800年も先の未来から来た、天の御遣いなんだ。いわば珍しさから華琳に拾ってもらって、それから天下統一までを一緒に過ごしたんだ」

 さすがに存在理由が種馬の二文字だけなのは勘弁を。
 なので真実をそのまま伝えた。丕に隠れて仕事って部分でも嘘は言ってない。
 娘にわざわざ嘘をつくのは心が痛いし。
 重くなく、気軽に話せる父をアピールして心をほぐしてみましょうという魂胆でもあるのだが……ど、どうだろうか。ああっ、このくらいの子供って接し方が難しいっ! 季衣や鈴々みたいに突貫型だったら、もう全然受け止めるだけで十分なのに!

「……御遣い?」
「わあ」

 てんで信じてないような口調で“御遣い?”と唱えられた。
 ち、違うぞ? 父さんは痛い設定的なことを言ってるんじゃなくて、ほんとなんだぞ?
 というか……あれ? 父の株どんどん下がっておりませんか?
 ただ気負いしないで華琳のあとを追ってほしいとか、なおかつ自分の自由な時間は自分のために使える人になってほしいとか、そんなことを考えたから話したはずなのに。

「……華琳からは何も聞いてないのか?」
「かかさまは……“あなたが見た一刀という人物があなたの父よ”と言うだけです」
「まあ、そりゃそうだ」

 それ=グータラ親父。
 あはははは! 俺、丕の前じゃ全然仕事してないから、仕事もしないで遊んでばっかの父にしか見えてないやー!
 なんか終わってる! いろいろと終わってる! そんな時だっていうのに周りの子供が丕を特別扱いしたもんだから心がしぼんで、さらにそんな時に父のグータラ説が確定しそうって雰囲気になって、俺の株大暴落だぁーーーっ!

「………」

 あ、やばい、なんか泣きそう。
 ああ、でもいいや、情けない父だって意味ではべつにハズレではないし。
 ここは……もうアレか? 反面教師効果を狙って突き放すが吉なんでせうか。
 今さら“父は仕事たぁーーっくさんしてるんだぞー!(本当に)”とか言ったところで、それが本当に真実として彼女に伝わるかどうか。
 じゃあ仕事している風景を見せてみる? ……いやいやいやっ、子供の頃からあんなカオスな仕事風景を見せてどうしますかっ、大人になりたくねーとか言い出したらどうしますかっ!
 だからもう自然体でいいじゃない? 他のみんなと接するくらいに普通で。

「まあとりあえず、俺は丕の前ではてんで仕事はしてないな。それは事実だ。丕が遊べない時でも暇してるし(仕事を片付けたから)。ただ、華琳のことは真剣に好きだぞ。丕は、後継欲しさに産まされた子なんかじゃ断じてない」
「……格好つかない言葉ですね」
「事実なんだから仕方ないんだよなぁ……俺だって出来れば格好つけたいなーとは思うけどさ。それで話がこじれても、それこそ仕方ない」

 今盛大にこじれてる気がしないでもないが。

「…………。仕事。どんなこと、してるんですか?」

 わあ、口調がすごい淡々なものになってきた!
 仕方ないから聞いてあげるとかそんなことを言ってる時の華琳にそっくり!

「書類書簡の整理が主だな。あとは……支柱をやっております」
「……ふぅん」

 冷たい! 口調が冷たいよ娘よ!
 でもまあ……これがきっかけで完全に華琳寄りになって、妙な影響もなく育ってくれるならそれはそれでいい……んだろうか。愚痴を吐き出す相手くらいにはなれるから、それはそれでいい……のかもなぁ。
 と思っているうちに城へ。
 とすんと丕を下ろすと、丕はなんだか出発前とはえらい違いの視線を父に投げ、言葉もなく走っていってしまった。

「うん、なんかもういろいろ終わった」

 丕が完全に見えなくなってから、膝からドシャアと崩れ、次に両手を大地について落ち込んだ。門番をしてくれていた警備隊の二人が「何事ですか隊長!」と心配してくれたけど、うん……なんかもういろんな意味で終わった。
 まあでもやることは変わらないんだけどね。
 変わらず仕事をこなして、遊びを欲する我が子らに遊びを提供する俺であろう。
 仕事をしていない父だと思われたって構うもんか。ならばいっそ、遊び人と思われようが国のために頑張り続けてくれるわぁあーーーーっ!!


───……。


 時が流れる。
 誰かが争い、死んだりもしない時間がどれだけ過ぎたのか。
 ふとした瞬間に平和に感謝する日々は今も続いていて、何日が何週間になり、何ヶ月になり、何年になると、駆け足だった足もようやく休みを欲した瞬間に休める今がそこにあってくれた。

「南蛮大麻竹で作ったメンマ……ついに、ついに極上の名に相応しい丼に仕上げることに成功した! その名も……極上メンマ丼【真】!!」

 足を休めた先に何があるかといえば、きっとみんな首を傾げる。
 休んだところで変わらぬ日常があるだけなのだから当然だろう。
 それでも……足を止めてみなければ“それが当然だ”なんて気づけない今がここ。
 平和があって、笑顔があって、争いがなくて楽しいがある。
 誰もが笑っていられる世界とは違うけど、限りなくそれに近い今。

「主……あなたという人は私をどれだけ待たせれば気が済むのか」
「ごめん、半ば意地になってた」
「“一刀殿”から“主”に呼び方が変わったというだけで、大麻竹メンマを食させぬと言い出した時は、どうしてくれようかと思ったものですが」
「“なんと殺生なことをお言いなさるか!”とか言って龍牙向けてきたときは殺されるかと思ったよ」
「はっはっは、懇願する愛い少女がそのようなことをするはずがありますまい」
「顔は悲しげだったけど目が本気だった」
「はて。過去のことは覚えておりませぬな。というわけで、さあ! 完成したならば食べさせてくれる約束でありましょう!」
「星、食べたいのは解るけどちょっと落ち着こうね。口調が少しおかしくなってるから」

 平和の場所に似つかわしい平和な会話は笑顔を呼ぶ。
 南蛮から持ち帰った竹は腐ることもなく悪くなることもなく、むしろメンマにして寝かせれば寝かせるほどに味が成熟し、美味しくなった。
 そんなメンマで作った丼を前に、星の目は爛々に輝いていた。

「それじゃ、どうぞ。量が少ないのはじっくり味わってほしいから───って言うまでもないか」
「ふふっ、もちろん。しかし無粋とは言いますまい。正直なところ、極上を目の前に興奮が理性に勝りかけておりますからなぁ。軽くでも止めてくれなければ───……襲い掛かってでも奪い、乱暴に食い散らかしてしまいそうだ《じゅるり》」
「構えてる構えてる! もう言ってる傍から龍牙構えてるから!」
「おっと、これは失敬。では……大事に、頂かせていただきます」

 向けていた槍もしゃらんと仕舞い(どこにかはツッコんじゃいけない)、早速厨房の卓に着いて食べ始める星。
 穏やかな昼の頃、実に平和的だった空気はその日───

「《ぱくり》───ふぅうううおおおおおおおおおおおおーーーーーっ!!!!?」
「《ズキィイイーーーン!!》うわぁっひゃああーーーーーっ!!?」

 ───言葉に氣を乗せた絶叫によって、ぶち壊された。
 痛っ! 響くっ! 耳がズキーンって!

「こ、これは……っ……この味はぁあっ……!!」

 一口噛んでは震え、咀嚼しては震え、星は一回一回の咀嚼にカタカタと震え続けていた。何事? と訊いてみても震えるばかりで返事はない。
 ただ、星が持っていた箸がベキャアと折れた時点でなんとなく理由を悟った。
 美味さに震えてるのも確かだけど、これ……乱暴に食い散らかしそうな自分を必死に押さえて、じっくり食べているだけだ。

「フッ……罪な丼だ……! 私にここまで我慢をさせるなど……!」

 あなたはいったいなにと戦ってるんだ……───メンマか。
 
「くっ、ぬっ、ふぅうう……っ……! ぬっ!? はぅっ!? あ、あ、あああああ《ズキィーーーン!》はぐぅうう!!?」
「星っ!? って、力込めすぎて腕が攣った?」
「……!!《こくこくこくこくこく!!》」

 過去の英雄の像になにをやってんですかアータはとツッコミたい衝動を抑えこみつつ、腕と顔を引き攣らせて、しかし丼はソッと卓に置いてから盛大に苦しむメンマの修羅様の傍へ寄る。ここまでメンマを愛せる人って普通居ないよな……なんて余計なことを考えた頭を振って、ソッと腕に触れてから氣を込めて、キュッと腕の筋を伸ばしてやる。すると星の顔から苦痛が抜け、彼女はふぅっと大きく息を吐いて───吸ったら丼に襲い掛かっていた。
 メンマの香りが彼女を狂わせたのだ……! とか出来る限り壮大っぽいお話にしようとしたのだが、傍目から見た光景はあまりにアレで、しかも途端に星が理性を働かせて強引に止まるもんだから、あっさりまた腕を攣らせた。

「………」

 うん、大丈夫、別にかわいいところもあるんだなとか思ってない。思ってないとも。
 なので星の手から丼と箸をソッと取って、

「星。はい、あーん」
「!?」

 グボッと瞬間沸騰する彼女の言葉は完全にスルーで、無理矢理食べさせた。
 これなら一気に食べ過ぎることもないだろうという言葉も効いたようで、腕を攣らせない代わりに恥ずかしいという状況を受け取ってもらいつつ、食事は続いた。

「う、うむむ……恥ずかしさのあまり、味がどうにも解りづらく……」
「いつもからかうみたいに余裕でやってみせればいいじゃないか」
「主よ……人が弱さを見せている時にそれは、少々おいたがすぎますぞ……」

 赤らめた顔で目を伏せる姿は、なんというか……可愛らしいって言葉が似合ってた。
 いっつも飄々としているイメージが強いから妙に新鮮だ。もちろん言ったら怒られるか拗ねられるのは予想がつくので言わない。言う勇気と言わないやさしさの使い分けくらい、今の俺にならきっと余裕だといいかもしれないこともなきにしもあらずだ。自信ないですごめんなさい。

「ところで主。何故急に私にメンマ丼を? ここしばらくは子桓様を始めとした子女らに付きっ切りだったでしょうに」
「あ、あー……その、うん。手料理でも作ってあげようかなって思ったんだけど、いざ作ろうとすると緊張して。だから……って、これだけは解っておいてもらいたいけど、別に慣れるためだけに星の分を作ったわけじゃないからな?」
「はっはっは、解っておりますとも。主はどこまでもお人好しなのはここ数年で十二分に理解しておりますゆえ。そして、娘らを愛しすぎて、距離感を掴めていないところも」
「うぐっ……」

 呉の娘たちが生まれてから既に数年。
 無事に桃香も子供を産み、姓名を劉禅、字を公嗣とされた。
 真名はまだ娘の誰にもつけられておらず、みんなそのまま名や字で呼んでいる。

「……しかしなるほど。幼い頃からこれだけの味のメンマを食させるつもりとは。主、さすがですな」
「いや、べつに幼い頃からメンマの園に染めようとしてるわけじゃないからな?」
「ふふっ、隠さずともよろしい。志を同じくする者同士、メンマについては嘘はつかぬよう誓い合ったではありませんか」
「いつ!? え───本気でいつ!?」
「ともにメンマ道を極めんとし、手を繋いだ時ですが。ふふっ……あの瞬間、私は主の手から様々な意思を受け取ったのです。私が作ったメンマが主の心に火をつけ、主が作った極上メンマ丼が私の心に火をつけた。面白い連鎖もあるものです。そこにメンマが無ければ産まれなかった絆がここにある……なんと神秘的でやさしい絆か《うっとり……》」
「うわぁすげぇいい笑顔!」
「ああ主、次をお願いしたい。口寂しいと要らぬことまで喋ってしまいそうです」
「少しは話の切り替えに間ってものを挟んでくれ……ほら」
「はむ……んむんむ……───ふおお……!《ほわぁああ……!》」

 ほっぺたが落ちそうになっているのか、目をきゅっと瞑ってふるふる震える星。
 メンマ丼でこんなになれるのはきっと星だけだろうなと思いつつ、いい香りなので俺もぱくりと食べてみる。───すると体を芯から震わせるような、良曲を耳にした瞬間のあのじぃんとした感覚を強くした何かが走った───途端、目の前の星から恨みがましい視線がメラメラと……!

「あ、主……っ……主よ……! 量が……量が少ないと言っておきながら、まさかのつまみ食いとは……!《ぽろぽろ……》」
「メッ……泣くなぁああーーーーっ!! 作るから! また作るからぁあっ!!」

 一瞬、メンマ丼くらいで泣くなと言いそうになったものの、瞬時に思いとどまって全力で泣くなとツッコミ。彼女の前でメンマを“メンマくらい”なんて言ったらどんな暴動が起こるか。なので再び“あ〜ん”をしつつ必死に宥めてしばらく。
 ようやく星の食事は終わり、食べさせるという行為自体にいろいろと疲れを感じた俺は、結局娘たちの食事はどうするかを考えた。

……。

 俺には娘が居る。
 現在8人。
 自分としての感覚で言えば、長女に曹丕、次女に孫登、三女に陸延、四女に甘述、五女に黄柄、六女に周邵、七女に呂j、末っ子として劉禅。
 産まれた順番で唱えてみたが、陸延から周邵までの三女から六女まではほぼ同時っていっていいくらいに産まれている。少し遅れて産まれた呂jはその中でもまだ小さく、劉禅はもっとだ。
 しかし全員とても元気であり……何故か父である俺を蹴る。
 俺がなにかしたのかと問い詰めたい気分ではあるが、子供の頃から親に問い詰められまくるのはいい気分じゃないのでは……とつい距離を取ってしまう。むしろ丕は甘やかしすぎたために、丕からの俺のイメージはあまりよろしくない。華琳の話じゃあ、“娘に甘く、女にだらしのない、仕事もしないので性質が悪い男”だと思われているっぽい。

(聞いたその日は枕を濡らしたなぁ……)

 しかし華琳のことはとても好きで尊敬に値する母らしく、かかさまかかさまとあとをついていく様子は実に可愛い。……つい少しまえまでは俺のこともととさまととさま呼んでくれていたのに、今ではととさまどころか父とも呼んでもらえず、ねぇとかちょっととか声をかけられ、振り向いたら話を始める始末。父と呼んでもらえない事実に気づいた時も枕を濡らしたさ。

「そんなわけで華琳。どうしたら丕にととさまと呼んでもらえるんだろうか」
「……あなたね。そんなことを他人に訊く父がどこに居るのよ」
「……ハイ……」
「泣きそうな顔で挙手はやめなさい」

 ふふふ、甘いわ覇王よ。涙ならとうに流しまくったわ。
 などと悲しく胸を張るのはやめよう。余計に泣ける。

「丕はもう俺のこと、遊び人としてしか見てないようだし、登は俺のこと蹴るし、むしろ呉側の子供は俺のことを何故か蹴るし……禅だけかなぁ、俺に懐いてくれてるのって」
「自業自得ね。あなたが“子供に仕事をしている姿を見せたくない”なんて言い出すからでしょう? 傍から見れば、仕事もせずに子供たちと遊んでいるだけの暇人じゃない」
「いや、これでも徹夜に近い勢いで仕事頑張ってるんだけど……」
「ええ、知っているわよ。それを知らないのは子供達だけだもの。で? あなたはいまさらそれを子供たちに知ってもらいたいとでも?」
「………」

 少し考えて首を横に振った。
 知らないなら知らないままでいいだろう。
 俺が嫌われる分、母側に愛が向かうならどんとこいだ。

「鍛錬も夜にやっていると聞いたのだけれど?」
「ああ、やってるやってる。集中しながらも外側にも注意を向けられる鍛錬。これで子供たちがたまたま来ても、暇潰しに夜間散歩をしていた父の出来上がりだ」
「…………ねぇ一刀。私に相談をした理由はなんだったかしら」
「? あー……どうしたら丕にととさまと呼んでもらえるか?」
「ええそうね、解っているのならいいわ。一発殴らせなさい」
「ええっ!? なんでっ!?」

 うわぁ、めっちゃいい笑顔! でもコメカミで青筋がバルバル躍動してらっしゃる!
 と思ったら両手を腰に当てて飛び頭突きでもしてくるんじゃないかってくらいずずいと前傾になり、叫んできなすった。

「目的から遠ざかるようなことをやっておいてよくもまあそんなことが言えるわね! 素直に鍛錬をする姿でも見せればいいでしょう!」
「な、なに言ってんだ! そんなことしたらせっかく作り上げてきた優しい父の姿が崩れるじゃないか! 氣を高めるために城壁を黙々と全力疾走し続ける父なんて見たら、やさしさどころか余計に引かれるわ!!」
「やさしいどころか怠け者の父としてしか映ってないわよ!」
「《ゾグシャア!》ゲブゥウハァッ!!」

 言葉の槍が胸をえぐっていった。
 も、物凄いダメージだ……! 解っていたこととはいえ、改めて言われると泣きたくなる……!

「いや……最初は反面教師的なことで、娘達が強く成長出来るならって……そう思ってたんだぞ……? そしたら嫌われ度ばかりが加速したみたいな感じで、なんかもう目も合わせてくれないし……特に丕」
「ええそうね。暇があればあなたの悪口ばかりこぼしているわよ」
「………《はらはらはら……》」
「だから。静かに泣くのはやめなさい」
「自業自得っていうのは解ってるんだよぅ。でもさ、でもさぁ。見つけたら駆けつけてまで蹴りこんでくる呉の娘たちや、目も合わせようとしてくれない丕とかはさぁ……」
「禅とは上手くやっているのね」
「禅はほら、桃香がポカして仕事中の俺の部屋に連れてきちゃって。それ以来、何故だか妙に爛々と輝く目で見られてる」
「……それを知っていて人に頼むということが、どれほど失礼か解ってて言ってるんでしょうね」
「や、今さら仕事風景見せたって、“どうせ好かれたくて今さら始めたに違いない”とか思われるのがオチだろ」
「……はぁ」

 「だからあの時、それでいいのねと訊いたじゃない」と続ける華琳に、なんだか申し訳ない気持ちを抱く。しかし俺自身もこうまで複雑になるとは思っていなかったのだ。
 子育てって難しい。うん、難しい。

「今までの経験を生かしてなんとか……とも思ったんだけどさ。あ、呉と蜀に行ってた頃の話な?」
「解っているわよ。そうね、あなたを嫌っていた連中は、嫌いつつも向かっていくような者たちばかりだったわね。丕のように避け続けるというのは、逆にあなたにしてみれば珍しいというわけね」
「そうなんだよ……だからなんとか出来ないかなぁと」
「それこそ自業自得でしょう? 好かれようと思ってなにかを為したところで、それは好転したりなどしないわよ。機会を待ちなさい」
「機会かぁ……難しいなぁ」
「…………」

 はぁ、と溜め息を吐く俺を、何故か華琳は困ったような呆れたような、なんともむず痒いような苦笑を混ぜた顔で見つめてきていた。
 何? とばかりにその目を見ると、

「まあ、この件に関しては特に心配はしないわ。……する必要がないと言うべきね」
「うっ……た、他人事ってことか?」
「あなた相手に、人間関係についてを悩むのは馬鹿馬鹿しいと言っているのよ」
「?」

 あっさりした口調でそう言ってきた。
 ハテ……俺の人間関係ってそんなに複雑だっただろうか。
 そりゃあ桂花に嫌われたり愛紗に嫌われたり焔耶に嫌われたり……いややめよう、考えてると気が滅入りそうだ。
 確かに嫌われたのは自業自得だもんな。うん、あるがままを受け入れていこう。
 動く時は積極的に動く方向で。


───……。


 時は過ぎて、曹丕8歳の誕生日。
 毎年毎年、子供の誕生日は賑やかなこの空の下、俺はといえば……

「ハッピーバ〜スデ〜……お前〜……ハッピーバースデェ〜ィ……うぬ〜……ハッピーバースデェ〜ィ親愛なる〜……曹丕〜……ハッピーバースディだ! あんたァ!」

 歌の練習をしていた。
 もちろん一瞬で却下された。にっこり笑顔で却下をくだすったのは、紫苑である。

「紫苑! 紫苑んんっ! 解らない! 子供の好みが解らないんだ!」
「あ、あらあら……ご主人様? 歌うのなら、もっと子供が喜びそうな歌を……。子桓さまがではなく、子供が喜びそうな歌を歌ってみてはどうでしょう」
「こ、子供が……!」

 都は今日も賑やかだ。
 みんなが玉座の間で祝う中、俺は中庭の東屋でひっそりと練習。
 親子関係は……うん、まあ、かなりひどい。
 俺は子桓が大好きなのに、子桓は俺を嫌っている。
 丕って……丕って呼んだら睨むんだよ。字で呼ぶことを強要してきてるんだよ視線で。

「おかしい……どこで間違えたんだろう……」
「やさしいばかりでは、なにをやっても許されると思われてしまうものですよ。時には叱ることも大事ということを覚えていてください」
「叱るって……」

 あー……そういえば、美羽の時も拳骨してからいろいろ変わったんだっけ……?
 じゃあ……なんだろう。俺は最初っから間違っていたのか……?
 俺はただ、自覚もなしに厳しい人ばかりのこの世界において、せめて俺くらいはオアシスになろうとやさしく在ったというのに、その全てが間違いだったと……!?

「でも……今さら怒ってみせても“なんだこいつ”って思われるだけだよなぁ……」
「えぇっと……恐らくは」
「ですよね!」

 じゃあもう手遅れなのですね!
 ……だったらもういいかなぁ。無理に頑張っても嫌われるだけなら、普通通りで。
 もはや遊んでとねだってくるのは公嗣くらいだし。

「親って難しいなぁ。紫苑はどうやって璃々ちゃんをあそこまで良い子に……?」
「私もそう、璃々と一緒にいられたわけではありませんよ。外せない仕事があって、どうしても一人にさせてしまったことなど一度や二度ではありませんから」
「……この場合、俺との違いは“仕事をしていることを子供が知ってるか否か”?」
「………」

 苦笑とともに頷かれてしまった。
 さよなら我が子らからの信頼よ。

「ええいちくしょうもう構うもんかぁ! こうなりゃ反面教師貫き続けてやるぅ! 娘たちよ! だらしのない父と笑わば笑え! そして“ああはなるまい”と口々に唱えて立派になるがいいのさうわぁーーーははははぁーーーんっ!!」

 笑おうと思ったら号泣してました。
 フフフ、だがこの北郷、後悔はしても先を悔やむことなどはせぬ! 絶対に悔やむと知ってなお、進まなければいけない道が父にはあるのだ!!
 ……でも、いつか好かれる父になってやる……!

  ……そんなわけで。

「さぁ叫ぼう! 人生の楽しさをぉおーーーーっ!!」
「あっはっはっはっはっは! いいわよ一刀ー!」
『………』

 娘らに引かれようとも誕生日の集いの場を盛り上げたり、

「それでは聞いてください……道化師の夜明け!」
「あははははは! 無様ね北郷! なんてあなたにぴったりの曲なのかしら!」
「じゃあ今一番盛り上がってる桂花! 次に歌ってくれ!」
「なぁぅっ!? うぅう歌うわけないでしょなに言ってるのこの液体男は!」
「液体男!? 白濁男から進化した!? 進……え!? 進化なの!? 退化なの!?」

 皆それぞれが沸き立つ歌を一曲歌っては、それに絡んでくる人を次に歌わせてみたり、

「料理リベンジだ! いつかの“普通”な味覚を修正しにきたぞ、蓮華!」
「毒味が先だ」
「思春!? こんな時くらい毒から離れよう!?」
「そうよ思春。子の前で毒がどうのと言うべきではないわ」
「蓮華さま……いえ、子の前だからこそと」
「夫が作った料理に毒が入っている可能性を語られる子の気持ちと、実際に言われた夫の気持ちも考えてくださいお願いします……」
「あ、う、い、いやっ……こほんっ! ………………すまん」
「……思春が俺に謝った!? ななな何者だ貴様《ヒタリ》冗談ですごめんなさいどっから出したのその鈴音!!」

 料理リベンジと題して料理を作ってみて、さらに夫婦漫才もどきを展開しては……なんというか母の強さと父の弱さを存分に披露してしまったりいたしまして……。
 それから……一週間後。
 子からの評価は母10、父0となっておりましたとさ……。

……。

 都より離れた魏の街。
 既に暗くなったその場のとある裏路地の店で、俺は一人静かに酒を飲んでいた。

「娘がさぁ……娘がさぁああ……!」
「おめぇさんもまた随分と無茶すんなぁ……嫌われてまで娘の成長を願うなんざ、立派なのか阿呆なのか」
「後者でお願いします……」
「いや願うなよ……」

 アニキさんが作ってくれたツマミを咀嚼しつつ、傾ける酒はちびちび。
 ええまあ、愚痴りたくなったらアニキさんの店に来るのは、実は一度や二度じゃない。
 仕事を片付けても誰も遊んでくれなくなった現状、父親って立場になった今、なんの気兼ねもなく“おやじの店”に来れるようになった俺は、いつしか他の客との会話に物凄い勢いでついていけるようになってしまっていた。

「ああ……解る、解るぜぇ御遣いの旦那ぁ……。娘なんてのはちぃと成長しちまうと、すぐに男親のことなんざ居なくて当然みたいになぁ……」
「散々働いて帰ってみても、いつでもカカァにべったりさ。共働きなのに、俺とあいつでなにが違うってんだろうなぁ……」
「俺はなんかもう……修復不可能なくらい、見事に連鎖反応が……」
「れんさはんのー? なんだいそりゃ」

 呟いた言葉に、隣で飲んでたおやじがしゃっくりをあげつつ訊ねてくる。
 それにほろりと涙しつつ返した。
 連鎖反応。
 まず自分は既にぐうたら親父扱い。
 仕事はやっておらず、女とばかり遊んでいると見られている。
 街に出ても女性の民と話しているところばかりを目撃されている。
 その所為で男と話してても、女と話す布石に違いないと勝手に思われてる。
 だったら実は以前から仕事をしてたんだぞーとアピールしようにも、“俺”のことだからどうせ今さら始めてそう見せているだけに違いないと睨まれる。
 やたらと将らと気安く話せているのは、きっと暇人であり好きあらば女性をたらしこんでいるからに違いないとまで思われてる。
 働いている将らに金をもらって生活しているに違いないと思われている。
 完全にヒモ扱いである。

『………』

 話し終わったら、おやじら全員が目頭を押さえて静かに嗚咽を漏らした。
 アニキさんも無言で歯を食い縛りながら酌してくれて、“おごりだ、飲め”と顎で促すと、後ろを向いて調理を始めた。
 ……他のおやじらも食べていた料理を少しずつ分けてくれて……俺はここにきてようやく、おやじの店の客として迎えられた気がしたんだ───……!



  ……うん、まあ、そういう一体感とは別の意味ででも、盛大に泣いたんだけどさ。

  親って……難しいなぁ……。




ネタ曝しです。 *公園のベンチでぼーっと  最近久しぶりにデスノートを見まして。  いえ、だからこのネタを使ったとかではなく、自然の流れです。  どちらかというと公園のベンチというよりはキャバクラで働く五代くんを思い出す。  五代くんのことは、めぞん一刻をどうぞ。 *金髪と黒髪ミックスさん  丕の髪の色については、前髪の中心あたりとモミアゲあたりのみが黒髪と考えてください。  歴史的には存在していてもオリジナルキャラという状態ですが、出さないと構想ENDに辿り着けないので生暖かい心でどうか。  でもなぁ、真名がなぁ、難しいなぁ。  最初の案としては天の御遣いと華琳の娘だから“天華”なんてどうだろうと一瞬だけ考えたのですが、どうしても封神演義を思い出してあかんのです。  だったら天といえば神だろうとばかりに“神華”。  ……しばらくして某モリサマーがアニメで活躍してた。案は流れた。 *携帯電話で5を3回押して  仮面ライダー555より。指紋マンでは断じてない。 *スパイダーマッ  犬笛にむせび泣く男! スパイダーマッ!  和製スパイダーマン。言葉の多さは“スパイダーマッボタン”で結構知れます。 *ふぅおおおおーーーーっ!!  もの食べてふおおーーっていうのは、なんというかまほろまてぃっくな感じですよね。 *これは……この味は……  トラサルディーマジック。  ジョジョの奇妙な冒険第4部より。これはぁーーーっ! この味はァーーーッ!!  トニオの料理が食べたい。イタリアのピッツァマルガリータより食べたい。 *ハッピーバスデーお前  トゥーユーとは言わずに、お前、うぬ、貴様などで済ませる。  アニメ、魁クロマティ高校より。 *うわぁーははははぁーーん!  声優が変わる前のカツオの泣き声。  「うわははうわははは〜〜〜ん!」とよく泣いていた。  107、108をお届けします、凍傷です。  11月にUPする予定がこのザマでございます。  いえ実は、先日仕事場で給料をもらうまで、昨日が11月ラストとはてんで思わず。  まだ一日ある……! なんてアホゥなこと思ってたら見事に終わりました。  そして先日、今日のうちになんとか……と既にここの文まで書いておいて……まさかの寝オチ。下の方の子供の設定まで書いてあったんですが、もうなんて書いてあるのか謎すぎました。“気上手くて配を消す”とか妙なことが書いてありました。周邵の説明の部分ですね。気配を消すのが上手くて、と書きたかったんだと思います。  予定は未定ですね本当に。  そんなわけで出来れば入れたくは無いオリキャラです。オリキャラなしで今まで書いていたのだから、当然といえば当然で。  曹丕は知られているでしょうが、それがオリジナルとなると難しいものです。  さて、こうなると娘らの真名とかが問題になってくるわけですが。  真名はなしで名だけでいくか、真名はつけるか。  ああもう、こうなるだろうから萌将伝には期待していたのに……!  出番が無くとも、せめて真名くらい出してくれれば……!  ところで真名ってなんというかこー……元服祝いみたいな感じでつけられるに違いない……などと思っていたのですが、どうなんでしょうね。  それとも幼名から抜けた時につけられるとか?  解りませぬ。  呼ぶときに「丕! 丕ー!」とか叫ぶのも妙なので、真名を考えるべきかと思っております。呉側の子供だけでも真名があればなぁ。 ◆子供たちのアレコレ 姓:曹-そう 名:丕-ひ 字:子桓-しかん  華琳の娘。  語尾に無理矢理“です”をつける子だったが、父親に呆れてからは華琳に近い口調に。  父が嫌い……なわけではなく、苦手。どう接していいのか解らないといったところ。  あの母が傍に置いているのだから、なにかがあるに違いないと踏んでいはいるものの、一刀の仕事については全然知らない。  こういう人なのだと思ってしまうと頭に叩き込んで覚えてしまうという“第一印象を固定するタイプ”の子なため、父はぐうたらだと決め込んでしまっている。  つまり父にはなにかがあるが、それは母しか理解できないものに違いないという印象のままに、父への興味を少しずつ削っていっているのが現状。  お陰で一刀には極力近寄らないし目を合わせようともしない。  新しいものや珍しいもの好きであり、中でも都でしか作られていない“ぷりん”、“あいす”、“にほんしゅを使った料理”が大好物。作っているのが父だということは知らず、誰が作ったのかを街の人や将らに訊いてははぐらかされている。  女が将で男が兵というこの世界で育ったために、少々男を見下して見る感覚が強まっている。そこに桂花の教育もプラスされて、やはり父への興味はどんどんと削られていっている。 姓:孫-そん 名:登-とう 字:子高-しこう  蓮華の娘。  子桓のように髪の遺伝はなく、孫家に相応しい綺麗なさくら色。  むしろミニ蓮華。呉側の子ってみんなそんな感じだよね。  甘述とやたらと仲がよく、なにかというと父を蹴る。  打たれ弱いところもあり、姉妹間では一番泣きやすい。  父を蹴る理由は母の愛が自分より父に向いている気がして、かつその父がぐうたらに見えるから。  しかし父が教えてくれる遊びは大変興味を引くものばかりで、自分が楽しいと感じていたのも事実。父は嫌いではなくむしろ好き。  好きだから気にかけてほしくて蹴るという悪ガキスパイラル理論が完成している。  逆にガミガミと説教くさい蓮華に苦手意識を持ってはいるが、不器用なりに自分に構おうとしてくれる母を嫌ったことはあまりない。 姓:劉-りゅう 名:禅-ぜん 字:公嗣-こうし  桃香の娘。  とてもおおらか。人の笑顔が好きで、喧嘩や怒鳴り声が苦手。  平和を愛するために産まれてきたような子で、8人姉妹の中で唯一一刀にべったり。  娘の中では一刀の仕事のことを唯一知る子でもあり、一番あとで産まれたこともあり、みんなから可愛がられて育っている。  なのだが、孫登からはよくジト目で睨まれている。一刀にべったりなのが気に入らないらしい。  なにかというとポカをやらかす母をくすくすと笑いつつ、自分がしっかり母を支えようと背伸びをしようとするも、張り切るとポカをやらかすところは母からの遺伝のようだ。 姓:陸-りく 名:延-えん 字:?  穏の娘。  ぽややんしているのは母と同じく、しかし読書で興奮することはない。  しかしながら異常なほどに寝ることが好きで、目を離すとよく寝ている。  読書に物凄い集中を見せるが、途切れるとまず眠る。そんな子。  武の方面は最初から捨ててしまっていて、のほほんとしているところを祭に引き摺られて運動をさせられている。  休憩を入れると、分を待たずに眠るために休憩無しの猛特訓を強いられすぎ、親子揃って祭が苦手とくる。  一刀のことは普通に父であると認識しているくらいで、好きでも嫌いでもない、家族というレベルでの付き合い。ただし眠りたいのに遊ぼう遊ぼう言ってくる一刀が苦手なため、完全に一刀が空回りし続けている。  ただし一刀の氣に包まれて眠ることを至上の喜びと認識していることもあり、遊べばそうしてくれる誘惑と、目前にある睡魔との板ばさみの日々と、常に戦っている。  うん、つまりは一刀のことは好きでも嫌いでもない家族としてって感じだが、一刀の氣に包まれて眠るゆったり感が好き。つまり一刀の氣は好きなのだ。一刀ではなく。 姓:甘-かん 名:述-じゅつ 字:-?  思春の娘。  孫登や黄柄と仲がいい、無駄が嫌いなちょっとしたせっかちさんタイプ。  周囲の出来事には気がつき自分のことには疎い、少々困ったちゃん。  思春から一刀のダメなところばかりを聞かされて育ったために父が嫌い。  残念なことに武の才には恵まれず、しかし武を磨きたいと張り切る頑張り屋さん。  自分が日夜やっている鍛錬法が一刀が教えて回った方法だとは知らない。  頑張る姿が蓮華に好かれ、蓮華のお気に入りな子。  お陰で時折孫登に睨まれているが、仲は良い。 姓:周-しゅう 名:邵-しょう 字:?  明命の娘。  親と同じく猫は好きなのに、何故か猫には嫌われやすい体質。  氣の扱いが上手く、気配を消すことも見事。   甘えたがりで、一刀の首に抱きついてぶらさがることが大好き……だった。が、今では姉妹仲を気にするあまりにそう出来ないでいる。自分も嫌わなければいけないという、妙な連帯の中の脅迫観念に引きずられているといったところが現状。  明命が猫に夢中になりすぎることもあり、“猫に母を取られた……!”と猫に嫉妬したこともある。そういった意味で、猫は好きだけど苦手。  周々と善々とは仲が良く、跨ってはいつかの小蓮のように散歩をしている。  自己の意見を表に出すのが苦手であり、出さなくても自分に構ってくれる父が好きなのに、上記のように嫌わなければいけない状況にあり、素直に甘える劉禅を羨ましく思っている。 姓:黄-こう 名:柄-へい 字:?  祭の娘。  親が酒好きなため、酒などが苦手。  早い内に飲まされて、その気持ち悪さから大変嫌うように。  なので酒を飲んでいる母が嫌いで、飲んでいない母が好き。  父への印象は“割と出来る人に違いない”といったもので、“あの母に自分を産ませた”という時点でわりと感心を持っている。  静かに近寄ろうともすぐに気づかれることもあり、“もしや爪を隠した鷹なのでは……!”と奇妙な期待を抱いているお子。  なので奇襲を仕掛ける意味も込めて駆け込みジャンプキック(陳宮流)を繰り出すと、想像とは違って絶対に当たる。  そのたびに“やっぱりただのぐうたらなのか”と落胆もするのだが……一刀にしてみれば、自分が当たらなければ転んで怪我をするだろうと思って、娘の無邪気を受け止める意味も手伝いわざと受けているだけである。  そんなこんなで距離を取って観察する日々が続くという、父への興味が尽きない子。  でもお陰で、一刀からは“一番蹴ってくるし、一番嫌われているに違いない……”と思われてしまっているという空回りな子。 姓:呂-りょ 名:j-そう 字:?  亞莎の娘。ちっこい。二番目に泣き虫な子。周邵と仲が良く、周邵にべったり。  母親がひどくおろおろしている人物なために、自分がしっかりしなくてはと頑張っては空回りするタイプ。  実は一刀のことは“年中暇な遊び人か、自分たちと遊ぶのが仕事な華琳の臣下”だとしか思っておらず、いろいろな偶然が重なってしまったために父だということを知らなかったりする、少々思い込みが激しく勘違いが多い子供。ひどい話だ。  自分のことを“父”と言っては遊んでくれた一刀に対する印象は、内部からの征服を目論む悪い人に違いないといったところで、度々に幼い体で蹴りを繰り出す。  武の方向に力が恵まれているのだが、興味があるのが知の方である。目は母とは違い恐ろしく良い。祭や紫苑や秋蘭にもったいないとこぼされる子供筆頭。三人になんとかして弓術を覚えさせられないものかと言い寄られている。  思い込みの激しさから、一刀からは将来誰かを好きになったらヤンデレになるのではと心配されている。  子供たちはこんな感じですかね。  うう、原作に子供たちの情報があればなぁ。  とりあえず一応の設定なので、大きくズレを生むことがあります。  話半分程度にか、流し読み程度に頭に入れてくれれば十分です。  いや……しかし今までがてんで飛ばなかった分、時間がとても飛びました。  璃々も美羽も、薬なんぞ飲まなくても十分大人になっていることでしょう。  現時点で8年。  鈴々らの姿も萌将伝のおまけの本に近づくほどのものに…………想像出来ませんな。  萌将伝の時点で、子供を産んでも大して変わらんみなさまだったからか、時間が進んでもずっとあのままの印象が強すぎる。  なので姿に関しては皆様の想像にお任せします。  性格は……多分あまり変わりません。  えーと? 書くとどんな感じになるんだろうか。 =_=/イメージです  三国の中心に位置する都。  その城下である街に、随分と背も成長した娘がおった。  真名を鈴々。かの張翼徳と呼ばれる武人である。 「おっちゃん! 全部乗りラーメン超超超超大盛りで頼むのだ!」 「……嬢ちゃんは、大人になっても変わらねぇなぁ……」 「にゃ? べつに鈴々は鈴々だから困らないのだ」 「いや、口調とかに気をつけておしとやか〜にしてりゃあよぉ、男のほうから言い寄ってくると思うぜぇ? おっちゃんが太鼓判押してやる」 「お兄ちゃんが居るからいいのだ」 「たはっ、こりゃまいった! そーだなぁ、将の皆様方には御遣いのにーちゃんが居たなぁ! けど最近は子供にかかりっきりで寂しいんじゃねぇのかい?」 「にゃはは、おっちゃんお兄ちゃんを甘く見てるのだ。子供たちと遊ぶ時間を作るために仕事なんて終わらせちゃって、子供たちと遊べない時は鈴々と遊んでくれるのだ」 「……嬢ちゃん? もしかすっとぉ……御遣いのにーちゃんは子供に好かれてねぇのかい?」 「んー……よく解らないけど、みんなお兄ちゃんのことに関しては、“にんげんかんけい”の点ではまるで気にしてないよー?」 「ん、まあ、御遣いのにーちゃんだしなぁ。三国歩いて回って、とげとげしかった部分を大分削っていっちまいやがった。将の棘も、民の棘も。他の誰かが歩いてたらどうなっていたんだろうねぇ、もっと上手くやれたのか、悪化させていたのか。……っと、へいお待ち! 全部入りラーメン極盛りっ!」 「おっちゃんさすがに手際がいいのだ!」 「へっへっへ、あたぼーよぉ! ……で、嬢ちゃん? いい加減箸の持ち方なんとかしねぇかい?」 「この方が持ちやすいのだ」 「いやいやァ……たまに来る璃々ちゃんはそりゃあもう綺麗なもんだぞぅ? 箸の持ち方も振る舞い方も。嬢ちゃん、ひょっとしたら御遣いのにーちゃん取られちまうかもしれねぇぞぅ?」 「おっちゃん! 箸の使い方を教えてほしーのだ!」 「そりゃ構わねぇがラーメンで練習するのはやめてくれ嬢ちゃん! 麺がノビちまう!」  ……。 「おじさま、こんにちは」 「おっ、璃々ちゃんか。らっしぇい。今日は一人かい?」 「はい。急にお母さんのところに鈴々ちゃんが来て、箸の使い方がどうとかって。一緒に買い物をするつもりだったんですけど、おかげでひとりぼっちです」 「ははっ、そりゃ悪いことしちまったかなぁ……お、おぉおまあいいや、なんか食ってくかい? っつってもラーメンしかねぇがよ、今日はおっちゃんの奢りだ、食べていくといいやぁ」 「そんな、悪いです」 「璃々ちゃんはいい子だなぁ……これがあの嬢ちゃんだったら、ラーメン極盛り追加なのだーとか平気で言いそうなのによぉ。っと、そうじゃなくてだなぁ……んー……璃々ちゃんのお母さんが嬢ちゃんに襲われたのには、おっちゃんも関係してんだ。だから遠慮するこたぁねぇ! どどぉんと頼むといい!」 「……でも」 「おっと、もちろん遠慮は頼まれねぇぜぇ? ご注文は採譜にあるものでお願いします。ってな、だっはっはっはっは!」 「……じゃあ、ラーメンをお願いします。具はあっさりしたもので」 「脂っこいのは苦手かい? 大きくなれね───ああいや、十分なものをお持ちで」 「おじさま? お母さんと御遣いさまに言いつけますよ?《ゴゴゴゴゴ……!!》」 「ひぇいっ!? い、いや冗談冗談! おっちゃんちょっと口が滑っちゃったかなぁ! たはっ、はははははは!!」 「そうですか、それじゃあ、お願いします《にこり》」 (……璃々ちゃん……静かに怒るところは、黄忠さまに似なくてよかったのになぁ……) 「〜♪」 「っと、どうかしたんかい? なんか楽しそうじゃねぇかい」 「お母さんとの予定は潰れちゃいましたけど、このあと美羽ちゃんと一緒に御遣いさまと出かける予定があるんです」 「おっと、そーかいそーかいっ、璃々ちゃんもすっかり女の子の顔をするようになったなぁ。……将来的には……アレかい? やっぱ御遣いのにーちゃんと?」 「……いえ、その。御遣いさまはなんというかこう、ずっと一緒に居てくれたお兄ちゃんのようなものでして。だから、将来的もなにも……大体お母さんも御遣いさまのこと……」 「お母さん“も”……ねぇ〜〜っ……♪《ニィイイマァアア……!!》」 「───おじさま?《にこり》」 「いやぁああっはぁあああハハハハ!? 料理は楽しいなぁああっはぁあぁっ!!? おっちゃんなんも! なぁんも言ってないぞぉ!?」 「……もうっ。からかわれるのは苦手なんですから、やめてくださいね?」 「いやいやすまねぇなぁ璃々ちゃん。おっちゃんもここんとこからかう相手が少なくてなぁ。メンマ丼に客食われちまって、結構暇してるのさ。ま、翼徳の嬢ちゃんや、あの赤い……呂布の嬢ちゃんか。が、いっぱい食っていってくれるんで、それで保ってるようなもんさ」 「……! に、煮たまご“とっぴんぐ”でお願いしますっ!」 「はっはっは! 璃々ちゃんはやさしいねぇ! だがこりゃあ奢りなんだから、あまり効果がねぇかもなぁ」 「はうっ!? ととと取り消し! 取り消しで!」 「おっと、もう完成しちまった。これじゃあ取り消せないなぁ。へいお待ちっ!」 「……おじさま、意地悪です」 「おうっ、大人はいい方向に意地悪な生き物なのさっ! さあ、食ってくんなっ!」 「……いただきます。……ふー、ふー、……はちちっ……ふー、ふー……!」 「……猫舌は相変わらずか」 「ほ、ほっといてくださいっ!」 「なんつーか、黄忠さまと一緒に居ない璃々ちゃんは隙だらけだなぁ」 「お母さんには心配をかけたくありませんから」 「そかそか。その分御遣いのにーちゃんの前では隙だらけで、前にそこの通りで盛大にスッ転んで───」 「…………《めらり》」 「いやなんでもねぇ! なんでもねぇからその黒い笑顔はやめよう!」  ……。  ……と、こんな感じでしょうか。  よくも悪くも鈴々は鈴々で、璃々は……母の影響を色濃く受け継ぐのではと。  誰かと結婚したら絶対にカカァ天下ですね。物腰穏やかでも強い女は強いです。  では、また次回で。 Next Top Back