166/血ってものを感じる日々

-_-/北郷さん

 Q:いつもより建業が遠い気がするのは何故ですか?
 A:金剛爆斧を持っているから

「アンサァアーーーーーッ!!!」

 道端でひとり叫んだ。
 朝日が眩しい空の下、今日も地を駆ける北郷です。

「木刀も持ってきてるのに、どうしてこれを持っていこうだなんて思ったのか……! いや解ってる、解ってるんだ。ただ俺は、いつもより負荷のかかるなにかが欲しかっただけなんだ……!」

 それが金剛爆斧だっただけ。
 もっと重いものがあるのなら、きっと鈍砕骨でもよかったはずだ。

「考えても始まらないし、これも鍛錬!」

 道着姿で地を駆ける御遣い(金剛爆斧持ち)。
 肩と腰に通した縄で背中に括りつけながら走って、氣が安定したら摩破人星くんと交換するように手に持ち、空をゆく。
 これを持ちながらのアグナコトることは大変危険なので、多少、氣に余裕があるうちに降りることを前提として空をゆく。

「ゲームとかのガーゴイルみたいな格好だよなー……」

 槍ではないものの、長柄のものを手に空をゆく者。
 足をだらーんとして、フォークみたいな槍みたいなのを持って空を飛んでるアレ。
 ……ガーゴイルって石造的化物だったら翼が生えてなくてもいいんだっけ?

「重いもの持ってるから、いつもより氣の消費が激しい……」

 なにせ浮くために必要な回転数を増やさなきゃいけないのだ。
 いつも通りにいかないソレは、茨の道ならぬ土中の道を進呈してくれます。
 ええまあ、潜るどころかジョリジョリ回転しながら大地を滑るだけなんだが。
 しかしながら氣だろうが筋肉だろうが、成長させる方法はやっぱり負荷なわけで。使えば使うほど拡張される気脈なのだから、それが悪いというわけでもない。辿り着く時間がいつもより掛かるってだけで。

「よし、急ぐか」

 空から降りるとバッグに絡繰を仕舞って、金剛爆斧とバッグを背負って駆け出す。
 氣ではなく己の足で走って、ただし極僅かではあるものの気での関節クッションをつけて。生憎と氣の残りが微妙だ。全力で走れるほど残っちゃいない。

「さてと……次の邑は…………まだまだ先だったなぁ」

 邑や街を見つけるたびに寄って、そこで休憩をしつつも、駐屯している兵や将に頼まれて仕事のコツなどを教えてゆく。
 他の人なら“泣き言を言うな!”とか言うのだろうが、泣き言を言いたくなる気持ちが痛いほど解る俺としては見捨てておけない。みんなスペックが高すぎるくせに、他人にまでそれを望んじゃうところがあるからなぁ。

「……けどなぁ」

 最近、若い衆の中にやたらと俺と戦いたがる人が増えた気がする。
 寝所を提供してもらったさっきの邑でだって、見張りの兵が“ほほほほほ北郷様! 無礼を承知でお願いします! 稽古っ……稽古をつけてくださいぃいっ!”って。
 俺なんかじゃなくて、責任者として場を任されていた将に言えばよかったのに。……まあ、そんなこと思ってたら、その将にこそ“お願いします!”と言われたのだが。

(兵の手前、御遣いや支柱って意味もあって、手加減してくれたんだろうなぁ)

 じゃなきゃこの世界の将相手に俺が真正面から勝てるなんて。無理無理。
 しばらく打ち合ってから“本気で行きます!”とか言ってても、結局は手加減してくれるんだから……うん、いい人だ。

「勝てる、といえば……」

 8年前から今まで、華雄が何度も雪蓮に挑んだけど……雪蓮ってやっぱりどうかしてるよなぁ。鍛錬しなくてもあの華雄に勝てちゃうんだから。
 もしかして知らない場所で鍛錬してるとか?

「……………」

 …………雪蓮だぞ? ないない。
 やっぱり鍛錬なんてしてないだろう。

「よ、っほっほっほ……」

 考え事をしながら道をゆく。
 世の中平和になったもので、山賊が現れて人を襲う、ということも随分無くなった。
 やったところで国に潰されると解っているのだから当然だろう。
 代わりと言えるのかは疑問なものの、山賊のアジトだった場所などは商人の休憩場になっていて、長い道を歩く中でのありがたい癒しとなっている。
 さすがに食料とかがあるわけでもないが、お粗末ながら布団くらいは存在する。
 立ち寄った者が使用後に乾かしていくのがいつの間にかのルールになっているとか。
 立ち寄って休憩している最中に干して、夜になったら寝て、と。そんな感じ。
 俺も一度立ち寄ってみたものの、夫婦で行商している二人が布団の上で熱く燃え盛っていたので直ちに逃走したのは……忘れたい過去だ。俺はなにも見なかった。
 あんなの見てしまったら、もうあの布団使えないよ俺……。

「ほっほっほっほ……」

 忘れるように駆ける。
 駆けるのだが……氣を使って走る距離の半分にも見たない時点で疲れてしまった。
 筋肉は鍛えようがないのだから仕方が無いわけだけど、もうちょっと保ってほしい。

「ほんと俺って……氣がないとダメだなぁ」

 たはぁ……と溜め息を吐きつつ、息を荒くしててほてほと歩いた。
 この調子じゃあいつ建業に着けるのか。
 やっぱり片春屠くんで行ったほうがよかったかな。
 いやしかし、空を自由に飛べる喜びはこんな時じゃないと味わえない。
 これでよかったのだ。

「《ぽつっ……》へっ? ……雨!?」

 頬に当たった感触に、バッと空を見上げる。
 天気がいいと思っていたのに、気づけば空はどんよりとしていた。
 恵みの雨ちょー! とか言って喜ぶべきかと言われれば、現在の俺からすれば勘弁だ。

「どこか雨を凌げる場所はっ……」

 見渡してみてもあるのは山道に差し掛かる道のみ。
 大きな木も無く、このまま降られればずぶ濡れ確定だった。

「はぁっ……んっ!!」

 溜め息ひとつ、氣を無理矢理絞って足に込めると、大急ぎで地を駆けた。
 途中気持ち悪くなりながらも、強引に。
 やがてぽつぽつがしとしとに、しとしとがざあああに変わる頃。
 山道の途中で洞穴を見つけて、その中に潜り込んだ。

「ふへぇっ……結構濡れウェエエエ……!!」

 ……のはよかったんだが、辿り着いたことで気が抜けて、氣の枯渇の気持ち悪さが一気にきた。ふらふらとふらつきながら洞穴の壁に手を付いて、揺れる景色を視界に納めるままに体勢を崩し、その場に腰を下ろした。

(あ…………やば…………)

 多少濡れてもいいから、枯渇するまで使うんじゃなかった。
 こうなるともう、氣が回復するまで立てない。
 一点を見ているつもりなのに視界が揺れて、高熱に浮かされるみたいにボーっとする。

『…………《のそり》』
「!?」

 そんな僕の視界に、のそりとご降臨あそばれたのは……ホワイトタイガー先生だった。
 しかもその巨体を以って近づき、俺の匂いをすんすんと嗅いで……いやっ、ちょっ、待っ……死ぬ!? え!? 俺死ぬの!? ま、待ってくれ! 俺……俺まだ死ねない! まだろくに国に返してないし、みんなと一緒に国のこれからをもっと見たい! 娘たちの誤解も解いてないし、やりたいことがまだまだたくさん───!

「《がぶり》うわああーーーーーーーっ!!!」

 噛まれた。襟が。
 しかしべちょりと少々湿った鼻が首筋に押し当てられて、生きた心地がしなかった。
 あ、で、でも食べない!? 食べないのか!? じゃああの、ここが巣ならすぐに去りますから是非とも離してくれるとそのっ…………あ、あの? なんで引っ張るのでせうか!? 何故洞穴の奥へと引っ張るので!?
 去りますから! 去りますからどうかほうっておいて!?
 あ、もしかして周々のお知り合いの方ですか!?
 どどどどうも北郷一刀です! 周々さんにはいつもお世話になっていて……あの!? 何故奥の千切ってきた草を敷いたような場所にたくさんの小さなタイガーさんが!?
 もしかしてアレですか!? 俺を餌に子供たちに狩りの仕方を教えるとかいうアレですか!? ぃやああばばばばばやめてやめてぇえええっ!!? どどどどうせ殺すなら一思いに───いややっぱり死ねない死にたくギャアアーーーーーッ!!


───……。


 …………。

「…………」

 世の中って解らない。
 どうして俺、虎の子に混じって大きな虎様に包まれているのでしょうか。
 恐怖が抜けずにカタカタ震えていると、それを寒さからの震えと判断したのかホワイトタイガー先生がヴェロォリと頬を舐めてきます。断じて味見しているわけではないと思いたい。

(……ア、アレかナ。これって美以にも例があった、動物に好かれやすい匂いのお陰とか……)

 だったら嬉しいナ。違ったらこれって絶対味見です。

(どどどどちらにしろ刺激を与えるのはマズイ……! 無心だ……! 心を無にして、いやいっそ子供の虎のように無邪気になるつもりで───!)

 ハルルル……と喉を鳴らすタイガーさんを前に、こう……子虎になったつもりで!

「ニャッ……ニャー♪」
『グァォオオ!!』
「ごめんなさい!?」

 やってみたら吼えられた! もの凄い迫力だ!
 でもなんかグァオオっていうかワーオに聞こえた! なにこれ!
 虎の鳴き声ってこんなのだっけ!? 外国人の喉がイガイガしてそうなおじさまがくぐもった声でワーオとか言ったらこんな声になるよ!
 そして俺の馬鹿! 虎のつもりでって決めてたのに心が猫になってた! だって怖いんだもんしょうがないじゃない! 誰に言い訳してるんだ俺!
 いやダメ! 死ぬ! 猫なで声なんて自殺行為以外のなにものでもない! 子猫を可愛がる女性の声を真似てやってみたけど絶・対・無理! 漫画的表現だったらもうタイガーさんの眉間に青筋浮いてるって!
 アワワワワどうすれば……!? これ絶対怒ってるよ……! なにやらハルルルルって唸ってるし……アレ? でも俺を見てるわけじゃない……? 後ろ……後ろ?

「?」

 ちらりと、体が震えるのも構わず振り返ってみる。
 するとどうでしょう。
 いつの間に居たのか、音も無く近寄ってきていたらしいホワイトタイガー先生が、威風堂々とその場にいらっしゃった……!!

「───」

 お、雄の方……デスヨネ?
 あ、あはは、僕北郷一刀イイマス。
 イエ違いますヨ? 僕米屋的なものじゃなくてデスネ?
 タタタタただソノ、雨宿りを少々サセテイタダキタクーーーーーーッ!!

「ハワッ……ハワワーーーーーッ!!?」

 TSUTSUMOTASE。
 何故かそんな言葉が僕の脳裏に浮かんだ瞬間だった。

(ぬ、ぬう……! やりおるわこの虎め……! よもやこの北郷が弱りきっているところに雌の虎を向かわせ、多少なりとも心が安心に向かった途端に自分が現れるとは……!)

 なんてことを渦巻き状になった目で混乱しながら考えていた。
 余裕? あろうはずがございません。
 余裕がなかったらこんな口調の思考が浮かぶわけがない? ……余裕がないから混乱しているのです助けてください!

『………』

 コルルルル……と喉を鳴らし、どすんどすんと歩み寄ってくる巨体。
 俺、もう頭の中真っ白。
 この真っ白なキャンヴァスに何を描きたいですかと訊かれたら、きっと僕はこう答えます。自分が五体満足で生きている未来を描きたいと。
 色は何色がいいかなぁ! あっ……青がいい! 青空をそのまま画板に移したような少し白っぽさが混じった蒼がいいなぁ! 赤だけは嫌だ! 白骨を連想させる、血の赤が混じった白は嫌だぁああっ!! 嫌だから近づかないでくれ!

(お、俺は、何回こんな危機に直面するんだ!? これを乗り越えたとして、次はど……どこから……! い……いつ“襲って”くるんだ!? 俺は! 俺はッ!)

 俺のそばに近寄るなああーーーーーーーーーッ!!




-_-/曹丕

 ……苛々が募っている。

「すっきりしないわ……それもこれも」

 あのぐうたらの所為だ。
 聞いた時はまたかと思った。どうしようもない存在だとも思った。
 普段から仕事もしない上、まさか無断で呉に向かうなど。

「やはり相応しくないわ。何故、どうしてあれが父なの」

 納得がいかないことばかりだ。
 もっと全てに真っ直ぐな存在であったならばと何度も思ってしまう。
 ……自覚はそれほどなかったが、周囲からすれば私は潔癖症のきらいがあるらしい。
 こうでなければいけないと思うことに真っ直ぐすぎて、それから逸れるものを嫌う。
 なるほど、私だろう。
 けれどあの北郷一刀という存在を、私は認めたくない。
 幼い頃は……なるほど、自分に構ってくれた彼が好きだった。この人の傍に居れば自分は寂しくなどないと思っていたものだ。
 それが反転してしまったのは、彼が仕事をしていないと知ってからだ。
 誰かにそう訊いたわけでもない。
 けれど、いつもふらふらとそこらを歩いている姿を見れば、誰だってそう思うはずだ。
 皆が仕事で忙しく走っている中、彼だけが人に遊ぼうなんて言ってくれば、当然誰だって“そうなのだろう”と思うはずだ。

「………」

 私は、信じられないような無茶な仕事をしている父が見たかったんじゃあない。
 それが些細なものでもよかった。自分が、これが自分の父だと胸を張れる仕事をしてさえくれればそれでよかったのに。
 娘と遊ぶことが仕事だなんていうのなら、私はそれを認めない。
 呂jはそう思っているようだけれど、とんでもない。だってそんなもの、私たちが成長してしまえば無くなってしまう仕事だ。
 仕事もしていない、鍛錬もしない、料理も普通で、女性の尻に敷かれるような性格。
 あんな存在をどう受け入れろというのだ。
 無理だ。私には無理だ。

「───」

 あの人は自分になにをくれただろうか。なにをしてくれただろうか。
 顔を合わせれば遊ばないかと言うばかりで、いつまで人を子供として見ているのか。
 ……もしやすれば、彼にとっての私はいつまでも子供の姿でしか映っていないのかもしれない。これから、どれだけ成長しようとも。

「そうよ。なにも知らないのよなにも───…………なにも?」

 言ってみて、ふと気づく。
 じゃあ私は彼の何を知っているのか。
 ぐうたら? ああぐうたらだ。女性にだらしないし、愛想を振りまくだけしか能が無いに違いないって思ってる。
 ……そう、思っているだけだ。
 じゃあ実際が違ったらどうするのだろう。

「………」

 見直す? 見直して、あなたを父として認めますとでも言うのだろうか。

「……っは」

 一度だけ吐き捨てるように、肩で笑う。
 それこそ冗談だろう。
 そんなことが叶うほど、今の自分と彼の関係は穏やかではない。
 散々と見下した目で見ておいて、実際は違ったからと掌を返すなど、私が最も嫌う行為だ。あの日、友達だと思っていた存在が急に子桓さまなどと呼び出してからずっと、掌を返すという行為は許せないものになっている。

「今さら引き返せないのよ。歩んだ道に後悔を抱こうと、私は私を生きるしかないのだから」

 姿見に映る情けない顔の自分にため息をこぼし、金色の髪の中で主張している黒を撫でた。昔からの癖だ。自分の髪の中にある黒を見ると触れたくなる。

(……無意識に、ととさ───っ……あの男を思っているとでもいうのかしら)

 あの男がだらしがないと知ってから嫌いになった筈の黒の髪。
 それをもう一度撫でてから、部屋を出た。
 いちいち気にしていても始まらない。
 せっかくの自由な日なのだ、つまらないことは考えず、私は私の時間のために───

「あ……」

 ……動こうとして、ふと思う。
 あの男は居ないのだ。
 ならば、普段は絶対に立ち入りを禁止されているあの男の部屋に、入ることが出来るのでは。

「………」

 入るな入るなと言われ続けてきた。
 そのくせに、公嗣だけは入ることを許可されている。
 大人気なく“なんで公嗣だけ”と思ってしまったこともある。
 そんな自分が嫌で、興味ごと捨てたつもりだったけれど……つもりはつもりだったようだ。一度気になってしまったら気になって仕方が無い。
 そもそも女を連れ込んでいるから入ってはいけないのだと思っていた。それが事実であるなら余計呆れるだけだが、もし。もし違うのなら───

「っ……」

 気づくと足は既に、その部屋を目指して動いていた。
 多くは望まない。
 ただそこにある真実が、“この国のため”に向いていてくれるのなら、自分はわざわざ人を嫌う意味を作らなくても済むのだ。
 人を嫌ったって辛いだけだ。つまらないだけだ。そんなことは解っている。
 その相手が家族だというのなら余計だ。
 だから、出来ることなら───……もう、満足な会話が出来なくても、向けてくれる笑みにひどい言葉を返さなくてもいいように───!

「あ……」
「? あ……」

 いつしか走っていた自分の脚がぴたりと止まる。
 あの人の部屋から出てきた存在に、勢いを殺されてしまった。
 途端、普段から彼を嫌っている私が“この部屋を目指すこと”自体に奇妙な罪悪感のようなものが生まれ、言い訳めいたことを吐きそうになるのをなんとか耐える。

「子桓ちゃん、どうしたの?」

 にこりと笑顔を向けてくるのは月という真名を持つ、侍女姿の女性だった。
 布団を抱えている様子から、彼の部屋の掃除をしていたのだろうと想像がつく。

「え? 子桓? ……ほんとだ。珍しいこともあるわね、あんたがここに来るなんて」

 その後に部屋から出てきたのは詠という真名を持つ、同じく侍女姿の女性。
 自分が出てきた部屋を見て、「掃除する部屋、間違えてないわよね」と呟いている。呟きつつ、月が抱える布団を横取りして、そこいらの欄干によいしょと掛けてしまった。ものすごい適当っぷりだ。

「なんの用か知らないけど、ここは立ち入り禁止だって知ってるでしょ? 来てもしょうがないわよ」
「……知っているわ。知っているけれど、理由を訊いてもいいかしら」
「理由ねぇ。……子供は知らなくていいことだから、でいいんじゃない? 知る必要もないでしょ。あんた、あいつのこと嫌いだし」
「え、詠ちゃんっ……」

 じろりと半眼めいた目で見つめてくる。
 彼女は本当に、相手が誰だろうと遠慮しない。
 それが癪に障るどころか、ありがたく思える自分はどうかしているのだろうか。

「詠ちゃん。知る努力を始めてくれた子桓ちゃんを、そんな風に言っちゃだめだよ」
「知る努力? この子の場合は知る努力じゃなくて知識欲でしょ。ちょっと疑問が浮かんだからそれを満たしてやらなきゃすっきりしないだけ。あいつのことが気になるからじゃなくて、自分のもやもやを消したいだけよ」
「───」

 遠慮無い物言いに、胸がずぐんと痛んだ。
 ああ、本当に遠慮がない。
 そしてその通りだ。私は私がこの状況から脱したいだけなのだ。
 真実呆れる他無い人ならそれでいい。尊敬出来る人であってくれたならそれでいい。
 私はただ、中途半端な今が嫌なだけだ。
 つまらなそうに目を向けられ、そう言われたって仕方が無いだろう。

「ねぇ子桓。あんたはこの部屋を見て、たとえばあのばかち───コホン。北郷一刀って存在があんたが願うような立派な人だったらどうするつもり?」
「変わらないわよ。掌返しは趣味じゃないわ」
「まあ、そうだろうとは思ったけどね。だったらべつに見なくてもいいじゃない。ここにはあんたの知識欲を満たすものなんてないんだし」

 変わらず、半眼でこちらを見ながら言ってくる。
 この人は私が嫌いなんだろうか。言うにしたってもう少し言葉を選んでもいいと思う……って、私が言えた義理ではないのか。こんな態度、私があの人にやっているのと大差ない。

「うー……!」
「……あ、あの……月? どうしてそこで月が睨んでくるの?」

 けれど、そんな詠を月が睨む。
 ……そういえば、出会って早々に真名を教えられたけど、私は彼女らの姓名を知らない。当然、字もだ。母が言うには、侍女の仕事はしているけれど、将と変わらぬ態度で接しなさいとのこと。
 言われたからにはとそう接してきたものの、本当に……何者なのか。

「うー……じゃあ月に免じて訊いてあげるけど。なんで今さらなのよ。もっと小さい頃───あんたがあいつの過ごし方に疑問を抱いた時点で、どうしてこうやって動かなかったの?」
「……それは」

 一言で言えば余裕がなかった。
 急に周囲の態度が変わって、父が頼りない人だと感じてしまって、このまま頼るわけにはいかないと思って、そんなくだらないことで母に相談するわけにはいかないと自分で決めてしまった。
 その時点で───

「どうせ、余裕を無くして相談相手も居なくて、じゃあ自分で覚悟を決めてしまえって意地を張って、その無理矢理固めた意地を貫くことで自分を保っているとかでしょ」
「!? なっ───」

 ……その時点で、私はとっくにただの意地っ張りになっていた。
 言われた言葉に自分の中身を見透かされたようで、顔に熱がこもるのが解る。
 咄嗟に声を張り上げて反論しそうになるのを、なんとか抑えるだけで精一杯だ。

「どうせ誰かが言わなきゃ今のあんたには届かないんだろうから言うけどね。あんたが掌返しだと思っていることって、覚悟の問題どころじゃなくて子供が意地張ってるだけよ。自分が誤解していることに対して、真実が見えたのに態度を変えずに嫌い続ける? そんなの、人の意見も聞かない、聞いたところで自分が正しいって言い続ける、器の小さな存在のすることじゃない」
「っ……あなたになにがっ───!」
「……なるほどね。こういう時は解りやすいわね、あのばかチ……あいつの言う通りだ。……あのね、自分から歩み寄るとかせず、相手が侍女だからって理由で距離を取ってるあんたがそれを言うの? 知ってもらう努力を放棄している時点で、その言葉は戯言の域を出ないわよ。解るわけないじゃない。あんたが勝手に距離を取ったり、自分のことを話そうとしないんだから」
「〜〜〜っ……!」

 睨む。
 けれど、言われた通りだ。
 掌返しは嫌いなのに、私はあの日の……友達だと思ってた子達と同じことをしている。
 自分のことを知って、変わらず友達のままで居てほしかったのに……話も聞かずに勝手に距離を取って。それでも遊ぶ中で“様、じゃないよ、私は偉くないよ”って言っても気まずそうに距離を取る姿に悲しくなったあの日を今でも覚えているのに……私は、同じことをしていた。
 でも、じゃあどうしろというのだ。
 私はただ、父が私が思う父らしくあってくれたらと願っただけだ。
 その答えが仕事もせずに愛想を振りまくだけの存在だと知って、それでも私に変わらぬ態度を取れというのか。

「わっ……解ったふうな口を利かないで!」
「解ってないとでも思ってる? これでも一応経験から言ってるんだから、難しくても受け取れるところから少しずつでも受け取っておきなさい」
「…………うー」
「だ、だから。どうしてそこで月が睨んでくるのよ……」
「いいよ。詠ちゃんがそうなら、私にだって考えがあるから」
「考え? ちょ、月? なにを───」

 続く言葉も封じられ、歯噛みする私に……月が私の傍まで歩み寄って、ひそりと言う。

「あのね。詠ちゃんってこうは言ってるけど、ずっと前は子桓ちゃんみたいに意地っ張りで、人の意見を聞かない器の小さな───」
「月!? なななななんてこと教えてるの!?」
「あ、でもそのことについては知ってもらおうとしてるんだよ? ちゃんと、“これでも一応経験から言ってるんだから”って言ってたでしょ?」
「やめて月やめて! 言ったは言ったけど、前のことはあまり思い出したくないの!」

 …………ぽかん、だ。
 さっきまでの余裕な顔が嘘だと思うほど、詠が狼狽している。

「ご主人様の前ではいっつも、今の子桓ちゃんみたいに───」
「月ぇえええ〜〜〜っ! お願いぃい〜〜〜〜っ!!」

 ……終いには泣き始めた。
 二人の力関係がいまいち見えない。
 月……やさしそうな人だけど、実は凄い人なのかもしれない。

「……結局、なにが言いたいのよ」
「うう……ほらぁ、月の所為で話がややこしくなったじゃない……」
「へぅ……ご、ごめんね詠ちゃん。……でも、えへへ」
「……なに? 急に笑ったりして」
「ううん? 前までの詠ちゃんだったら、“月の所為で”なんて絶対に言わなかったなって」
「うっ……」
「へぅ……」

 ……人のことを放置して、なにを照れ合っているのだろうかこの二人は。

「はぁ。じゃあ話を戻すけど。器の大きさを自覚したいなら、“自分がやられて嫌だったから”ってその行為の全てを嫌うのをやめるところから進んでみればいいわ。あんなこと言ったけど、知識欲がきっかけだろうと知ろうとすることが悪いって言ってるんじゃないんだから」
「じゃあどうして邪魔をするのよ」
「そんなの。掌返しを嫌っているあんたのままで知ってほしくないからに決まってんじゃない。まずは見直せるところがあったら見直せる自分になりなさい。ううん、なれ。そうじゃなきゃ、たとえあんたが覇王の娘だろうがこの部屋に入ることは許さないわ」
「…………そこまで言える真実がその部屋にはあるということ?」
「そんなの無いわよ。私物もろくにない、面白みもない部屋があるだけだし」
「え、詠ちゃんっ!」
「なによ、ほんとのことじゃない」

 面白みもない部屋。
 言われて、軽く想像してみるが、全然広がらない。
 ぐうたらで女にだらしがないとくれば、遊ぶためのなにかがそこかしこにある部屋なのだと勝手に思い込んでいた。
 でも、じゃあそんな部屋を立ち入り禁止にする理由はなんなのだろうか。

「……あなたたちにとって、北郷一刀は……」
「ばかちんこ《ぎうううう!》いたぁーーーったたたたた!? 月っ!? ちょっと月!? なんでつねるの痛い痛い痛い!!」
「ご主人様は見境無くああいうことをする人じゃないんだから、そんなこと言っちゃだめ。詠ちゃんだって解ってるでしょ?」
「う、うぅうう……月がぁあ……あの月がぁあああ……!」

 また泣いた。
 成長を喜んでいるのか、虫も殺せないようなやさしげな人からの抓りが涙腺を刺激しているのかは解らないけれど、泣いた。

「ねぇ子桓ちゃん。私たちはいろいろあって、そのことについては深くは言えないけど……でも、想像してみているだけの“その人”を嫌い続けることで、本当の“その人”まで……その、嫌いにならないでほしいな」
「うう……月? 私も今からそれを言おうと……」
「詠ちゃんのはそこまでいくのに遠回りしすぎなの。すぐに言ってあげればいいのに、いじめるみたいにいろいろ言うのは、詠ちゃんの……その、へぅ……わ、悪いくせ……だと思うよ……?」
「《ざぐしゃあっ!》……! ……!!」

 ……詠が言葉に出来ない傷を負ったような切ない顔で、ぱくぱくと声にならない声をだしている。……そして何故か私を涙目で睨んできた。私がなにをした。

「嫌うのも、掌返しをしたくないなんて言うのも、その……もっと大人になってからでもいいと思うの。だから……」
「…………だから?」

 言葉を探す様子もないようで、用意された言葉を話す雰囲気はあるのに、どうしてか少し躊躇のようなものを見せる月。
 多分……いいえ、絶対に、この人は他人に対してどうしようもない冗談なんて言わない人だと容易く受け取れる。だから待った。言ってくれる言葉くらいは受け止めるつもりで、待った。

「……一度何かに呆れても、もう二度とそれを見ることをやめる、なんてことだけは……絶対にしちゃだめだよ? 自分が見て経験したものだから絶対に正しいなんてこと、それこそ絶対にないんだから」
「───……」

 キッと、真っ直ぐに私の目を見て言われる言葉。
 ……驚いた。
 この人、こんな顔が出来るんだ。
 とても侍女だなんて器じゃない、もっと大きなものさえも包めるような、人としての大きさを感じた気がした。
 そんな人の前で、気づけば静かに、こくりと頷いている自分。すると、キッとしていた表情がほにゃりと崩れて、にこーと笑ってくれる。
 なんなんだろうこの人。よく解らない。

「まあとにかくそういうことだから、ここに入ったってあんたの願いは叶わないわ。そうね、あいつのことを知りたいなら、手っ取り早い方法があるんだけど」
「…………べつに知りたく───」
「知りたくないならこんなところまで来る理由がないでしょ」
「ぐっ……!」

 もういい、確定だ。私はこの詠という人物が苦手だ。
 私の行動を先読みしているようにずけずけと言葉を続ける様に、どうしても苛立ちを覚えてしまう。

「私たちが言われてるのって、実はあんたたち子供をこの部屋に入れないこと、だけなのよね。だからべつに他の部屋に入るのは止めないの」
「……だからなんだというのよ」
「べつに。それだけ」

 言うだけ言って満足したのか、欄干に掛けた布団を持って、歩いていってしまう。

「あっ、詠ちゃん、それは私が……」
「いいわよべつにこれくらい。じゃないとボクの月が穢れて───」
「……詠ちゃん、そんなにぎゅってしたら皺になっちゃうよ?」
「ぎっ……べべべつに抱き締めてなんか! 布団なんてこれくらいの扱いがいいの!」

 …………騒がしくも、そのまま行ってしまった。
 残されたのは、どうしろというのよと呟く私と……閉ざされた、北郷一刀の自室。
 鍵をかけた様子もないし、押し開けば入れる。
 入れるけれど……

「………」

 禁止されていることを破るつもりはない。
 これまで、母に誇れる自分たれと自分を律してきたのだ、それはしたくない。
 だったらどうしてこんなところにまで来てしまい、説教まがいのことまでされてしまったのか。……情けない。

「……あ」

 けど、おかしなことも聞いた。
 立ち入り禁止を言われているのはここだけ、とか。

「………」

 だからなんだというのよ。そんなことは解っている。
 だからこうしてもやもやしているんじゃないか。

「……もういい」

 部屋の扉に興味を無くし、振り返ってから歩く。
 何を言われようがやっぱり私は私のままでいるのがいいに決まっている。
 母のように、意志を曲げぬ自分で───

「っ!《ビッ》」

 ───歩く途中、見回りをしているらしい兵と合い、姿勢を正してからの敬礼をされた。私はそれを一瞥しつつそのまま歩き去ろうとしたのだけれど……

「ねぇあなた」
「はっ」

 気づくと声をかけていた。
 理由は……言うまでもない、妹たちが仕出かした夜襲のこと。
 誰が話さなくても、こういうものは漏れるものだ。
 というか偶然見つけて、今まで注意しなかっただけ。

「妹たちが迷惑をかけたようね」
「えっ、あ、あー……な、なんのことでしょう。自分はなにも見ていませんが?」

 目を少し逸らしたのち、しかしもう一度しっかりと目を見て言ってくる。
 こういう行為をしてくる兵は、実のところ珍しい。
 位置的に偉いというだけで私と目を合わさない存在は結構居るというのに、なにが違うのか、兵の中にはこういうのが何人か居る。
 しかも、どうやら妹たちのことを見逃すつもりでいるらしい。
 罰には相応しい罰を、とこちらが構えているのに、言うつもりはないようだ。

「……あなた、所属している隊はどこだったかしら」
「え? は……北郷隊ですが」
「北郷?」

 ……北郷。
 あの人の隊、よね。
 耳にはしていたけれど、あの人の隊ということで距離を取っていた隊だ。
 当然、調べることもしなかった。

「───あ」

 その時だ。

  “私たちが言われてるのって、実はあんたたち子供をこの部屋に入れないこと、だけなのよね”

 ふと、ひとつの言葉が頭の中に浮かぶ。
 そうだ。つまり、あの人の隊がある。
 そしてそこは立ち入り禁止ではないのだ。
 あの人の隊ということは、隊長はあの人。そして当然、それらの仕事を纏めた書簡なり竹簡なりが隊舎か倉庫にある筈。

「行動報告は当然、竹簡なり書簡なりに纏めてあるのよね?」
「はい。そうでなければ改善案も出しにくいですから」
「で、で……その、だけど。その纏めた書簡とかはその。何処にあるのっ? かしら?」
「………………」

 キリッと格好よく言おうとしたら、一言目から躓いた。
 兵はそんな私を見てきょとんとしたのち、本当に小さく口角を持ち上げた。

「あー、そうですねー。一応それは隊のものでありまして、たとえ娘様であれど、おいそれと見せたり教えたりすることはできないものでありましてー」

 続いて物凄くわざとらしく声を大にして喋り始めた。

「ですから、そうですね。隊を知りたいのでしたら、一度隊に入って仕事をしてみてはどうでしょう」
「へ?」

 そんなわざとらしい様相からそんな言葉が続くなど、誰が予想するだろう。
 それが不意を突くカタチになって、へんな声で返事をしてしまうのだが……目の前の兵はにこりと笑うともう一度姿勢を正して「どうでしょう」と訊ねてきた。
 下から覗くように見上げたその顔は、なかなか歳をくってそうな感じ。
 でも、まだまだ若さの残る顔立ちだ。
 だから気になって訊いてみた。

「……隊に務めて長いの?」
「魏に居た頃から、北郷隊が出来る前より街の警備をしておりました」
「ふぅん」

 語る顔は楽しそうだ。
 というより、懐かしささえ浮かべて私を見ている。
 そんな顔のままに言うのだ。「北郷隊が出来る前にも、隊に入って隊の内情や警備体制を調べるために無茶をした人が居まして」と。心底楽しそうに。
 つまりあれだろう。
 内情を知りたいのであれば、その人のように入ってみろというのだろう。

「簡単に言ってくれるわね。私自身にも仕事があるのだけれど?」
「失礼を承知で申し上げますと、その方は魏国の在り方もろくに知らぬまま、十日で警備体制の下地と改善案を出して見せましたが?」
「十日!?」
「さらに申し上げますと、当時は随分と人手不足でして。今のように平和な頃とは違い、民同士の諍いなど茶飯事。間を置かずして問題が起こり、それを止めるために己が身ひとつで止めに入ったものです。当然、武器を手に脅してみれば威圧にしかならないため、その身を以って止めるしかないわけで。怪我がない日などありませんでした」
「………」

 ごくりと喉が鳴る。
 きっとその十日でいろいろと為してみせた人は、知力も武力もある将に違いない。
 当時というからには、まだ将としての活躍も見せていなかったのだろう。
 生きているのなら会ってみたい。

「その者の名は?」
「さて。それは隊の内情なので言えません」
「なっ……!」

 ここにきてはぐらかされた。
 随分としたたかな兵だ。けれど、そういう、きちんとした“自分”を持つ者は嫌いじゃない。気骨ある者と言えばいいのか、ともかく興味が持てる。

「いいわ。だったらその隊に入ってやろうじゃない。そしてその人物のことを───」
「それは無理です。新米に全てを見せるほどに警備の緩い警備隊がありますか?」
「くぁっ……! あ、あなたねぇっ! いいわ、だったら同じく十日で信頼を……!」
「ほほう。平和になったこの蒼の下、乱世の下と同じ日数で満足する気で?」
「じゃあ三日でいいわよっ!!」

 売り言葉に買い言葉。
 気づけば勢いのままに叫び、そのまま手続きは滞り無く進められ───報告に行った際、どうしてか母と秋蘭が顔を見合わせたのちに笑い出したのを最後に……私は、北郷隊(警備隊)に入ることとなった。
 こととなった、というか…………───

「新入りー! 喧嘩騒ぎがあったらしいから鎮圧急ぐぞー!」
「またなの!? さっき起きたばかりじゃない!」
「言ってる暇があったら急げー!」
「解っているわよ! というか、問題を起こすのが将ばかりってどういう───」
「新入りー!」
「解っていると言っているでしょう!?」

 明日から、と言ったら間髪入れずに「今すぐよ」と言った母に困惑しつつ、今日から。しかも王の子だからと特別扱いなどはなく、新入りは新入りとして扱うようにと言われたために、扱いは本当に下っ端のそれだ。
 それは別にいい。
 受け入れられるし、初めてやることなのだから下っ端なのは頷けることだ。
 問題なのは、自分が思っていた以上に街というものには問題があったこと。
 あっちへ行ったりこっちへ行ったり、事が済んだと思えば迷子が見つかり、親が見つかったと思えば喧嘩騒ぎ。仲裁出来たと思えば壊れた椅子の修理を頼まれたり、そんなものは専門の者にやらせればと言おうものなら、壊れる度に呼んでいたら金がいくらあっても足りないという。専門に頼むのは直しようがなくなった時のみなのだそうだ。
 目が回る。
 直す際に槌で指を打ってもんどり。
 涙しながら、砂まみれになりながら、それでも隊の仕事は続く。
 今日初めて身につけた隊の服はとっくに汚れきって、それを見下ろす自分が惨めに思えた。
 こんなことが、治安の悪い、下地も改善案も無い乱世の頃からあったというのだ。
 それはどんなに大変なことだったのだろう。
 思うことはいろいろあるけど、自分が出来ることなどただひとつだ。

「………負けるもんか」

 汗まみれの顔を拭って、自分を呼ぶ声に向かって駆けてゆく。
 その人が十日を駆けたのなら、三日でどうのの問題ではない。
 信頼がどうとかではない……私は国というものを、仕事というものを知らなきゃいけない。
 だから弱音は吐いても挫けないつもりだ。

「また迷子だー! 新入りー! 任せたぞー!」

 辿り着いた先で指示され、した者は別の問題解決に走ってゆく。
 一瞬、人に任せておいて、自分はさぼるんじゃないだろうかなんてことを考えてしまうけれど、そんな自分を氣を込めた拳で殴った。
 だからどうした。さぼろうがさぼるまいが、そんなことは私の目的には関係がない。
 ただ知ってゆこう。
 信頼を得て、過去を知って、何故この隊の名前があの人の姓とともにあるのか。
 そして、三国の人々が行き来するこの都で頑張ることで、三国というものがどういった人々の集いの下にあるのかを。




-_-/一刀くん

 雨が上がった。
 ふと目をあけると白。
 もふもふしているホワイトタイガー先生に包まれ、目を閉じる前を思い出す。

「……生きてる」

 のっしのっしと歩いてきたホワイトタイガー先生を前に、“画王!”と吼えられて気絶したんだっけ。……思っておいてなんだけど、懐かしいなぁ画王。TVのCMだったっけ。
 などと暢気に考えていられるのは、とりあえず命の危険がなかったことへの安堵のお陰だろう。あと、気絶とはいえ眠ったからか、氣も少しは回復している。

「………」

 現在、ホワイトタイガー先生はお二方ともお眠りあそばれている。
 子供らも眠っているようで、抜け出るなら今……! なのだが、お二方……どうしてか俺を囲むように丸くなっているんだよね。
 しかも子虎が眠りながらも俺の道着をがじがじ噛んでらっしゃって、無理矢理でも取ろうものならガオオと唸って起きそう……!

(トリアエズ……ア、アレカナー……! 虎の気配に自分の氣を合わせて、同じ種族デスヨーとか思わせつつ抜け出る作戦を……!)

 と、氣を変化させた途端、ホワイトタイガー先生の眉間にビシィッと皺が寄った!
 なので我が身を疑う速度で氣を元通りにして寝たフリをした。

「……! ……!《ドキドキドキドキドキドキ……!!》」

 アレですよね!? 種族に似せたってことは、縄張りに別のタイガーさんが来たとか思われても仕方ないってことだよね!? やりきらなくてよかったァアアア!! やりきってたら敵とみなされてバクゥリだったかもしれないッッ……!!
 そろりと薄目を開けて見てみれば、あたりをキョロリと見渡したのちにどすんと再び眠りにつくタイガーさん。(雄)
 ドキドキどころかドドドドドとうるさい心臓をなんとか押さえようとしつつ、とりあえずは安堵。
 再びぐっすりになるまで、しばらくの時を待つのでした。

……。

 そしてしばらく。

(………………)

 もはや恐怖にも慣れた(つもりな)俺は、キリッとしつつ遠い目をして、次のプランを組み立てた。名を、“大人タイガーがダメなら子供タイガーの氣を真似ればいいじゃない”だ。
 子虎も俺の道着から離れてくれた今こそ───!

(今こそ好機! 全軍討って出よ!)
(も、孟徳さん!)

 そう、今こそ好機!

(油断せず……無邪気な子供タイガーの氣を真似つつ、キャイキャイと外へ抜け出る)

 ここで浮かぶ心配なのだが、子供が勝手に外に出ることを親タイガーが止めるのでは、という部分にある。だが大丈夫。きっとそこまで過保護じゃないに違いない!(言えた義理ではない)
 そんな部分を勝手に信じて行動に移ることにしたのだ。

(そうと決まれば……!)

 氣を、子虎に似せて、のそりと動き出す。
 時に素早く解きに大胆に、悪戯っ子を演出しつつ、とてとて〜っと。
 そして一定距離を稼いだところで、次は空をゆく鳥の氣を真似て、あなたたちとは無関係の無邪気な鳥デスヨとばかりに距離を取る!

(途中でバッグを拾うことも忘れずに《ゴッシャア!!》キャーーーッ!!?」

 よっぽど緊張していたからか、ガッシと掴んだ手が震え、絡繰入りのバッグがゴシャアと落ちた。途端、俺は悲鳴をあげてしまい、洞穴の奥からは何かが動く音!
 こうなったらもう涙目でバッグを開けて、絡繰背負って氣を流して、走り迫るホワイトタイガー先生の気配から逃げ出すように疾駆! その勢いのままに洞穴から出ると、回転しだした絡繰の導くままに空に逃げた───直後、俺が走っていた場所をホワイトタイガー先生の前足がガォンっと空振った。

「ホワァッ!? お、おぉおおっ……!?」

 見下ろせば、空を見上げて『ヷーオ゙ォオゥ!!』と吼えるタイガーさん。
 なんでワーオ!? と思いつつ、アレがトラの鳴き声なのかなぁと震えながら考えた。

「………」

 ……本当はただ、いい匂いに惹かれて暖めてくれただけなのかもしれない。
 けれど死ぬかもしれない心配ごとには、出来るだけ身を置いておくわけにはいかないのだ。もし善意だったとするなら、ごめん。

(だって美以も、いい匂いがするとか言いながら噛んできたし……!)

 だからほんと、善意だったらごめん。
 そう思いながら空を飛んだ。飛んで飛んで、うるさい心臓の鼓動が治まるまで飛んで……次の街が見えたあたりで気が緩んで、街近くの草原の大地でアグナコトって涙した。
 ウン……そうだよね……。
 結局あんまり回復しないままだったもんね……。

……。

 街についてしばらく。
 舐められたり齧られたりして唾液まみれだった道着を洗って、服はいつものフランチェスカの制服に着替えた俺は、そこでもいろいろと指示をお願いされた。
 どうして俺なんだろうかと考えながらも、いつかのように実際にこの街の警備体制を自分なりに点検しつつ、そこに合ったやり方をこれまでの経験の中から弾き出して、他の警備隊の意見も混ぜつつ煮詰めてゆく。
 いきなり来た人に一方的な方法を押し付けられたところで、今までのやり方でやっていた人は反発するだけだろうと思ったからだ。思えば警備隊がまだ北郷隊なんて呼ばれる前は、本当に手探りで頑張ったもんだ。
 泥まみれになりながら駆けて、氣なんて満足に使えなかったから鍛えてもいなかった体で走って、何度へこたれそうになったか。

「そういえば……俺のことを新入り新入り言って扱き使ってくれたあの人、元気にやってるかな」

 支柱になって、都暮らしが随分と長くなってからは、隊の仕事は主に報告用の書簡整理ばかりになっていた。
 たまに顔合わせはあったものの、報告と一緒に改善案も出してくれるから困ることも少なくなった。……お陰で会いにいけない。
 街で擦れ違ったら肩を組んで笑ったりとかしてたけど……あの人も長いよなぁ。今でこそ俺のことを隊長とか呼んでくれるけど、あの遠慮の無い性格はきっと一生直らないに違いない。

「御遣い様ー! ここの警備体制について相談があるのですがー!」
「っと、今いくー! あと様はやめてくれって何度言ったら!」
「あっはっはっは! 今さらですよ、北郷様!」
「あっ、御遣い様! 仕事が終わったら稽古つけてもらっていいですか!?」
「あ、俺───っとと、自分もお願いします!」
「俺なんかじゃなくて将の誰かに頼もう!? 俺に勝ったって自慢にもならないだろ!」
「自慢とかそういうんじゃないんですって!」
「というかあのー……御遣い様? ご自分の実力、解ってて言ってます?」
「そんなの解りきってて辛すぎるくらいだよ……。華雄は一人でどんどん強くなるし、美羽もぐんぐん成長するし、桃香だって蒲公英だって……! 春蘭に至っては、本人の前では言えないけどほとんど化物級じゃないか……!」
「いえいえいえいえいえいえ!! あの方たちと比べるのがそもそもどうかしているんですって! というか打ち合える時点で自分もどうかしているって自覚してくださいよ!」
「……きみ、やさしいなぁ。今度奢るからオヤジの店に一緒に行こう」
「慰めたわけではなくてですね!? あぁああ駄目だ! 強すぎる人に囲まれながら生きてきた所為で、自分の実力とか完全に客観視出来なくなってる!」

 思えばあの日から随分と長く歩いた。
 この世界を歩んだ時間にも、もう少しで天の時間に手が届く。
 大人になったら何が待っているんだろうなんて、剣道で負けて腐っていた頃に考えた日は遠い。当時出した結論はもう、周囲の笑顔に埋もれて掘り起こす気にもならないけれど……腐った自分さえ埋め尽くせるほど、自分が笑っていられるようになったなら、掘り起こしてもいいのかもしれない。

(いい天気)

 必死に俺のことを持ち上げようとしてくれる兵や将に苦笑いを浮かべてから空を見る。
 思うことはいろいろ。
 みんなが都に集まっている今だからこそ、こうして一人で暢気に出かけることなんてのが許されるが、以前だったら代わりに仕事を引き受けてくれる人など居やしなかった。
 ……まあ代わりに、立ち寄った場所で何かを頼まれたら断るなと釘を刺されている御遣いさんでございますが。
 稽古もなにも、俺なんかより強い人なんていっぱい居るだろうに。

(もっと頑張らないとな。いつか、ちゃんとみんなを守れるように)

 それはこの8年で物凄く難しい目標だったのだと思い知らされた想い。
 もうやめれば、なんて言われるとコロっと転がってしまいそうな思い。
 頭の中ならなんとでも言えるそれだけど実際には笑って否定する願い。
 目指した覚悟に嘘はない。
 いつか時が過ぎて、成長できない自分が守れる日が来るまで、俺はこの世界を見守る。
 いつになったら国に返しきれるのかなんて、誰が教えてくれるわけでもない。
 それでいいんだろうし、俺だってそう思う。
 好いてくれる人も居れば嫌う人も居る。
 嫌われているからって自分までもが嫌い切る理由にはならないし、自分が好きだからって相手にも自分を好きになれだなんて強要は出来ないしするつもりもない。

(いや……まあ、好いてくれるならそれが一番なんだけどなぁ……ハハ……)

 年頃の子供の気持ちは解らない。
 父や母は偉大だなぁ。

「───……」

 “もしもって言葉が大好きだ”
 いつか、夢に流れた言葉を拾ってみた。
 “もしも”にはいろいろな可能性がたくさんある。
 それはIFだからこその“出来る筈がない”を完成出来る世界。
 現実は出来ないことや叶えられないことが多すぎて、ただ真正直に生きるのは辛い。
 だから笑顔でもしもを謳う。
 夢の中に出てきた白の物語にはいつだって笑顔が存在していた。
 本当に、いろいろな意味を持つ笑顔が。

「……なぁ。人を笑顔にしたいって思うのに、理由は必要だと思うか?」

 急に訊いてみた言葉に、まだ俺の強さについてを話していた数人がきょとんとする。
 返った言葉は要る、要らないの半々。
 じゃあ、俺の答えはというと───……



   ───……たぶん、夢の中の白と同じだった。





-_-/曹丕

 夜が来た。
 お風呂で危うく気絶するように眠りかけて、なんとかふらふらながらも自室へ戻る。
 それというのも氣を使っての行動を母に禁止されたため、己の肉体で頑張るしかなかったからだ。言うまでもないけれど体はもうボロボロ。これがまだ何日も続くという。

「信じられない……! こんなことを、治安の悪い頃に、氣もろくに使えない人が……!?」

 氣を使うなという条件は、当時のその人が氣を使えなかったからという理由から。
 氣を使って体を動かすことに慣れきっていた自分にとって、これはもう拷問だ。
 体中の筋肉という筋肉がじぐんじぐんと断続的に熱を持った痛みを発する。なんと言えばいいのか。沈んでいる痛みを筋肉とともに持ち上げられるみたいな、そんな不快感。

「くぅう……!」

 それでも自分に与えられた仕事が無くなるわけじゃない。
 体が求める休息という安らぎを跳ね除けて机にかじりつく。
 ただ、足を少しでも休ませたい気持ちから、椅子に座ってからは靴を脱いだ。
 火照った体に夜の涼しさがありがたい。
 ともあれ、筆を動かして自分に与えられた書簡整理をこなしてから、一日一度は必ずと言われている氣の鍛錬を始める。

「集中、して……」

 丹田より生まれ出でるそれを全身に流して、丹田に溜まったものをからっぽに。
 それからもう一度丹田から氣を生み出して、気脈をほんの少しだけ広げる。
 やりすぎると気絶するほどの激痛に襲われるから、本当に少しだけ。
 力ってものを望んだ甘述がそれを味わう様を見た。あれは本当に危険だ。

「………」

 そういえばあの時は誰が助けてくれたんだっけ。
 急に絶叫して苦しむ妹を前に、私は震えて泣き出すことしか出来なかった。
 泣いて、怯えているうちに周囲は静かになって。
 それから……それから。結局、怖くて訊くことは出来なかったんだっけ。
 あの時のことは甘述も話したがらない。
 ただ、あんな苦しさを味わってもまだ、強くなりたい気持ちは消えないらしい。
 激痛に襲われない程度の気脈拡張はいつもやっているし、その伸びが武力側の気脈よりも僅かにしか広がらないと解っていてもずっと続けている。
 母親である甘寧にそのあたりのことはキッパリと言われたそうだ。
 でも諦めていない。
 武から知に切り替えたらしい呂蒙の話を知っているからこそ、知から武も出来るはずだと。出来なければおかしいと。

「すぅう…………ふぅうう……」

 気脈を少しだけ押し広げる。
 肺一杯に空気を取り込んで、さらに吸い込んだような膨張感。
 それが全身に走る感覚はいつまで経っても慣れない。
 ただ、この無理の無い気脈拡張を鍛錬に組み込んだらしい人は、今でも暇さえあれば……いや、仕事をしながらでもやっているらしい。
 それを考えると、その人の氣はいったいどんなことになっているのか。
 想像するだけで恐ろしい。

「……はぁ」

 安定。
 あとは広げた状態をこのまま保っていればいい。
 体中に氣を満たすことで、体中の痛みも少しだけ軽減出来るし、氣で体を動かせば痛んでいる筋肉を無理に動かす必要もない。
 お風呂で“まっさーじ”もしたし、氣のお陰で体もまだ温かい。
 仕事も片付けたし、あとはゆっくり…………寝台、で…………うう、寝台が遠い……。
 だめ……眠気に勝てない…………このまま机で…………


───……。


 朝である。

「《ズキィーーーン!!》はぐぅううーーーーっ!!?」

 目が覚めたら机で寝ていた。
 おかしな体勢を長時間続けていたからか、関節が痛いし筋肉も痛いしでろくなことがない。しかし仕事はあるので泣き言は言っていられないので、これまた鍛錬の前準備として組み込まれたとされる“らじお体操”とやらをして体を起こしてゆく。
 その最中も体の痛みに終始涙目だったけれど、終わったあとはましにはなっていた。
 あくまでほんの少しだけ。辛いからってまた椅子に座った時点で、足が根を張ったかのように動かなくなったけれど、こんなものは気力だ。気力だけど……

「く、ぅううう……! 関節いたい……! 筋肉いたい……!」

 涙ぽろぽろ。
 ふふふ、しかし舐めてくれるなよ我が肉体。
 この子桓をこの程度の痛みで縛り付けられると思ったら大間違いぞ。
 我は曹丕! 曹孟徳が一子!
 これしきの苦しみに泣き言を唱えて蹲るつもりなぞ《ゴヅゥ!!》

「小指ぃいいいいいーーーーーーーっ!!?」

 ふらふらと椅子から立ち、歩き出した途端に小指を机の角にぶつけた。
 体を休ませたいからと靴を脱いでいたのが仇となった。

「あぅう……! あうぅうううう……!! 痛い……痛いよぅう……!」

 泣き言を唱えて蹲って涙した。
 ごめんなさい我が肉体。もう我が儘言いませんからこの痛みをなんとかしてください。
 この痛みは無理だ。これにはきっと誰だって勝てない。
 勝てないから───今日はもう、休む──────……

「っ……違うっ!」

 ハッとして首を振った。
 ここで休んだら投げ出すのと同じだ。
 私は、私は違う。あの人とは違う。
 こ、こんなの全然痛くない! そうだ、自分は痛みには強かったじゃないか!
 転んでも最初は痛いのにすぐに痛くなくなって、怪我をしたってすぐに痛みなんかなくなって! いっつも傍について回っていたととさまに、凄いでしょって胸を張って───!

「あ……れ……?」

 ……その筈なのに、いつまで経っても痛みは消えない。
 すぐだ。すぐな筈なんだ。
 ぽっ、て体が温かくなって、こんな痛みなんて。

「………」

 そうか、きっと疲れているからだ。
 普段だったらこんなこときっとない。
 ただ……痛みのあとにはいつもあった温かさが今はない。
 それが、ひどく寂しく感じた。

「───」

 さあ、今日も仕事だ。
 きっかけはいろいろだけど、きっかけ以上に知りたいものは増えたのだ。
 北郷一刀の過去を知ることもそうだし、様々な国で様々を成し遂げた人が居る筈なのに、その人のことが語られない理由も知る必要がある。
 こんな痛みで挫けてなど《ゴヅゥッ!!》

「はぐぅっ!? あ、っ……〜〜〜〜〜〜っ……!!」

 今度は手のほうの小指を机の端にぶつけた。


  ……前略母上さま。

  その……く、挫けても……いいでしょうか……っ……!!




ネタ曝しです *恵みの雨ちょー!  浦安鉄筋家族より、春巻龍。  春巻は言う。「梅雨って大好きだちょー」 *子供たちに狩りのやり方を教えるアレ  思い出したのはリオレイアの生態でした。 *どうせ殺すなら一思いに  「ヤクザ殿ー! どうか苦しまないよう一思いに」  「それはだめ」  「苦しむのは必須条件じゃったのねーーっ!?」  そういえばモテモテ王国って結局どうなったのだろう。 *ハルルルル……!  刃牙的な獰猛生物の唸り声。  ピクルもやってた。 *ワーオ!  グーグル先生かなにかで“虎の鳴き声”で検索すると見つかります。  本当にワーォオオウ! って鳴いてます。 *TSUTSUMOTASE  つつもたせ。美人局と書く。  おなごが男を連れ込み、コトに勤しんだあとに男がやってきて、「よぉもワイのスケに手ェ出してくれたのォオオ……金、出せ」って、そんな感じのアレ。 *俺の傍に近寄るなァアーーッ!!  ジョジョの奇妙な冒険第5部、ディアヴォロの名言。  その前の“いつ襲ってくるんだ”なども。 *ガォン  ジョジョ的な削り取る音。  クリームやザ・ハンドなどのスタンドが攻撃するとこの音が鳴る。  114話をお送りします、凍傷です。  今回はどれだけ嫌っても誤解でも、似たところはあるものですよというお話。  原作ではそこまで目立たないけど、モブである兵ってやっぱり随分と頑張っていますよね。  彼らが居なければ治安維持などとてもとても……!  主人公ってポジションキャラはそりゃあ好きですが、脇役が居るからこそ輝く物語が大好きです。  そして思ったこと。  宅の一刀くんのように鍛錬を頑張ってみても、周りに居る人が強すぎたらどれだけ強くなれたんじゃと思っても、叩き潰された時点で“俺ってまだまだだよな……”と落ち込むと思うのです。  その結果が現在の一刀くん。  周囲が優秀すぎるのも考え物だと思います。  ではまた次回で。 Next Top Back