170/真実を告げる夢(再)

 …………。

 ……。

 さあっ、と風が吹いた時、自分が草の上に立っていることに気づいた。
 見える景色は懐かしいもの。
 もはや伸ばしても触れることすらできない風景を前に、ただ少し、寂しさを抱く。

「あらん? ごぉ主人様ったぁ〜るぁん、意外と冷静ねぇん?」
「同じ景色を見ることがあったら、絶対に心の準備をしとこうって決めてたし」

 無視するわけにもいかず、景色から視線をソレに向けてみれば、忘れもしないいつかのモンゴルマッチョ。
 自称貂蝉で自称踊り子らしい彼が───

「彼って誰ぇっ!! 彼って何処ぉおっ!!」

 ……人の心を読むなよ……。
 というかそれはなにか? 自分のことは彼女と言えと言いたいのか?
 …………考えている途中で、ものすげぇ笑顔でサムズアップされた。
 なんだろ、訊きたいことがあるのに早速帰りたい。

「あー、えと。貂……蝉?」
「きゃんっ、名前を覚えててくれるなんて、さっすがご主人様ねぇん! そう、私は貂蝉。か弱くてしがなくてか弱い踊り子よん」

 なんで“か弱い”二回言ったんだろう……。
 ああうん、まあいいや、気になることはそれじゃないし。

「また来たってことは、何か伝えることがあるからって考えていいんだよな」
「えぇ〜〜〜えええその通りよぉん。そっちでどの程度時間が経っているのかは知らないけぇ〜れどもぉ……こっちでもいろいろあってねぇん? ちょいと情報交換でもどぉ〜ぅかしぃらって、逸る気持ちを抑えきれずに会いに着ちゃったのん」
「わざわざ“ええ”をそんなに伸ばさなくていいから。俺も気になってたことがあるから訊かせてくれ。……あんたが言ってた左慈っていう奴はいつ来るんだ? あれからずっと鍛錬もしてるし準備もしてるつもりだけど、訪れない漠然としたものに備えるのって、正直に言うと……気持ちが悪いんだ」

 それは、平和が続けば続くほど。
 だからもし解るのであれば、教えてほしい。
 そんな期待を込めた言葉はしかし、

「もぉ〜ちろよぉん? というかそういうのを話すために繋げたんですもにょぉん」
「…………」

 エッ!? ……いやあの……エ!?
 もしかしなくても知ってるのか!? このパターンだと大体。実はまだ解ってないのとかそういうことを言われると思ってたのに!
 驚きつつも逸る気持ちを抑えきれず、「でっ……で!? いつなんだ!?」と急かしてしまう。貂蝉はそんな俺を落ち着いた風情で見つめたのち、息を吸って語ってくれた。

「よぉく聞いてねんご主人様ん。左慈ちゃんがそっちの世界に行くのは……」
「《ごく……》行くのは……!?」
「……そっちの外史が終わる前よん」
「………」

 こっちの外史が……終わる、前?
 ちょっと待て、訊いておいてなんだけど、なんだってそんな具体的なんだ?
 ああいや、日時が解らない以上、具体的でもないのか?

「それって、俺がなんらかのきっかけでこの外史から消えることになるとしたら、その前ってことか?」
「それはちょっと違うのよぉご主人様。ご主人様は急に消えたりなんかしないの。きちんとその外史の終わりまでを見届けられるから、問題はないはずよん」
「えっ……ってちょっと待て! なんだってそんなことが解るんだ!?」
「踊り子ですもにょん!《ズビシィーーーン!!》」
「関係ねぇ!!《がーーーん!》」

 大迫力のサムズアップも発言が謎な所為で意味がなかった。

「そうねぇ……そいじゃあまずはそこらへんから徹底的に教えちゃうわん」

 ……サムズアップは無視するとして、ゆったりとした動作で息を吐いた貂蝉は、俺の目を見ながらじっくりと話し始めてくれた。

「まずご主人様がその世界から弾かれる瞬間についてだけれどもぉ……それは曹操ちゃんが死ぬあたりまでは確実に大丈夫と言っておくわん」
「確実って……いや、本当に一方的に訊いておいて悪いんだけど、なんだってそんなことが解るんだ?」
「そこが曹操ちゃんが軸の外史で、曹操ちゃんの願いがそういうものだからに決まってるじゃなぁ〜〜〜ぁい?」
「華琳の……」

 じゃあ、あれか?
 やっぱり俺は、華琳に願われたからもう一度この世界に?
 や、でも待て。願っただけで来れるなら、どうしてもっと早くに来れなかったんだ? ……口に出して心から願わなかったからだとかそんなところだろうなぁ、なにせ華琳だし。

「でもさ、その理屈でいうなら、華琳の願いは叶うものなんだろ? じゃあ俺が天に帰る必要なんてなかったんじゃないか?」
「あらん、それは無理よん。だってその時、まだそっちの外史は曹操ちゃんの外史じゃなかったんだものん」

 …………え?
 今……え? 今なんて言った?

「いぃ〜ぃい? ご主人様ぁん。これからご主人様がそっちの外史で消えた理由と、その外史が消えなかった理由を教えてあげる。もちろん確実だと言える言葉でもないのだけれど、なんというか私たちも納得出来ちゃったわけであるからしてぇ」
「理由か……聞かせてくれるか?」
「……相変わらず些細なところで甘くないんだからん。こちらの話は気にしないで人の話はちゃっかり訊くなんて、ご主人様ったら随分と逞しくなっちゃってぇ〜ん」
「いーから、ほら」

 呆れつつも促す。
 と、貂蝉は深呼吸したのちに話してくれた。

「まず前提。ご主人様が降りたその世界は、最初は曹操ちゃんの外史ではなかったのよ」
「……そうだとして、でも華琳は天下を取ったぞ?」
「ええそうね、天下取っちゃったわん。自分の外史でもないのに、“願われた世界の意味”を捻じ曲げちゃったのよね。……さて、その時に一番動いたのは……どぅぁ〜れだったかしらん?」
「………………俺?」

 返事の代わりに、モンゴルマッチョがサムズアップする。せんでいい。
 しかし、考えてみた。
 他人が勝つ姿を願われて作られた外史で、全然別の誰かが王となる瞬間を。
 自分ならそれをどう思うだろう。
 自分なら……そうした存在を邪魔だと思う。排除したいと思う。
 それってつまり───

「……頭痛とか眩暈とか、自分の存在が消えていくようなあの感覚って……」
「そう。あの外史で曹操ちゃんに天下を取らせようと動くご主人様の存在は、その外史を願った者たちにとっては邪魔な存在でしかなかった。そのために、曹操ちゃんが有利になることをするたびに存在が消えかけた」
「! え……俺が消えかけたこととか、知ってるのか!?」
「そりゃ〜そうよ? 伊達に数ある外史を見守ってきたりしていないわぁ? ある時はともに戦ったり、またある時は服屋で働いてみたりと、様々な面で外史というものを見守ってきたの。もちろん、力及ばず戦に負けて、他国に吸収される外史というのも存在していたわけだけど」
「そうなのか……」

 服屋……服屋か。
 そういえば服屋でこんな巨漢を見たような見なかったような……!
 あ、あれ? 記憶が美化されてる? “居た”って考えると、格好はアレだけど気の良い人ってイメージが湧いて、“居なかった”って考えると途端に身の危険を感じるような謎の悪寒が走る……!
 そ、そうだよなー! なんか華琳が見つけたら本能的に嫌がりそうな外見してるし、店を構えるなんてことを許したとして、こんな格好でさせるわけがないよなー! ききき気の所為だ気の所為!

「曹操ちゃんのもとでご主人様が頑張る外史はいくつかあったけれども、その中で生きるご主人様は大きな物事が起こるたびに頭痛に襲われていたわねん……なんとかしてあげようと駆け寄ったこともあったのだけれども……曹操ちゃんに悲鳴をあげられてからは、近寄ることすら出来なくなったこともあってねん……」

 ……想像してみると納得出来てしまうあたり……うん、なんかごめん。

「ともかく、今ご主人様が居る外史は曹操ちゃんが天下を統一することが出来た外史。それも、曹操ちゃんが天下を取ることを願われて作られた外史ではない世界よ」
「…………ああ。そうだってことで進めていこう。俺が消えることになったのも、その外史に邪魔者だと認識されたからってことでいいんだよな? けどさ、どうあれ華琳は勝ったわけだろ? 俺が他の誰かに拾われる可能性を考えたとして、あの流れだと華琳以外にはないと思う。アニキさんたちに襲われて、星に助けられて、あの時点で星や風や稟についていくって方法もあっただろうけど、あの時の三人が出会ったばかりの俺を連れていってくれる保証なんてないし」
「近くの街まで連れて行ってくれと頼んで、あとはその道中でいかに三人からの信頼を得るか。それだけでも“歴史が変わる枝分かれ”を望む“願い”だって、呆れるくらいにあるの。“そうであるわけがない”は個人の考えでしかなくて、他が考える“もしも”までもがあるのが外史というものなのだからねん」

 くねりとしなを作りつつ、貂蝉は言う。
 格好はアレだが、目は本気だった。

「そうねん。曹操ちゃんに拾われるまでが確定していたとして、ご主人様ん? ぅあ〜なたの知る物語というものにはぁ……幸せな結末しか作っちゃいけないという定義なんてものがあったりしたの?」
「───! あ……」

 言われて思い出す。
 そうだ。物語はいつもいつもハッピーエンドとは限らない。
 不幸なままで終わるものもあれば、死んで終わりなものもある。
 戦に負けてから始まる物語もあれば、死んだのちに始まる物語だって。
 だから俺が華琳に拾われるまでは突端だったとしても、それが必ず天下統一に繋がるとは限らない。
 俺が降りた外史は確かに華琳の物語だったかもしれないが、俺が頭痛や眩暈に負けて華琳に自分の知る知識を伝えることを怠れば、確かに俺は消えずに華琳が敗北するなんていう“その外史でいう正史”が成立していたかもしれないのだ。
 “魏のお話=彼女の勝利”とは限らない。
 俺が歩いた道も、そういう外史だったのだろう。

「最初こそそちらの外史がどんな外史かも解らなかったけれど、お話して知ることが出来れば交換できることも増えてくる……それでも、終わる筈だった外史が意味を持ったことに関しては私も驚いているのよご主人様ぁん」
「意味? ……あ。そっか。そもそも俺が捻じ曲げたことで、華琳が天下を取るって外史になったのが俺が居る場所なら、それはもう元の世界からすれば願われもしない外史ってことになるんだよな。……おかしな質問だけどさ、なんで無事なんだ? 考えれば考えるほど、俺が消えるのと一緒に消えちゃってもいいくらいだろ、この外史」

 考えれば不思議なんだよな。
 願われたものとは違う結末に到ったのに消えないなんて。
 期待したものとは違うなら消えちゃってもいいじゃないかって思われても仕方ない。
 ……? 期待? ───って、そうか。

「どんな結末で終わっても、その先が見たいって願う人は居るってことか?」
「ぬふん? そうねん、それもそ〜うだけれぇど〜ぅもぉぅ? 曹操ちゃんが打ち勝つことで、その外史は完全に曹操ちゃんの外史になったのよん。あ、もちろん憶測でしかなぁ〜いのだけれどもぉ」
「華琳の外史に? ……そうなったとして、どうなるんだ?」
「強く胸に抱き、口にしたお願いが叶っちゃう〜なんてこともあるのよ。そう、そこは曹操ちゃんの世界。曹操ちゃんが死ぬまで続いて、存在する意味が無くなるまでは続く世界。だからご主人様は曹操ちゃんが死ぬまではその世界に居られるし、そこは“あなたの世界”ではないから、歳を取ることもなぁいのよん」
「………」

 俺の世界ではないから。
 その言葉を聞いて、歳を取らないと聞いて、なるほどって思うよりも先にストンと落ちるなにかがあった。
 そんな言葉で納得するよりも、もう既に自分が歳を取らずに生きているのだから、確認する必要もなかったというのに……それでも誰かに言ってほしかったのかもしれない。

「人は自分が産まれた自分の世界でしか時の流れに乗れない。外史っていうのはそういうものなの。たとえば時の流れが速い世界に降りたところで、自分の時の流れはその世界のものとは違う。流れが速い世界で生まれた人はあっという間に死にゆくけれど、遅い世界で生まれた人はその世界でもゆっくりと死にゆく。それと似たようなもので、この外史というものは別の外史から来た者に時の影響を与えないものなのよ。だから髪も伸びないし歳も取らない。やってきた頃の姿を世界が認識して、傷が出来れば元の状態にしようとするし、髪が切れれば元の状態に戻すために“人の治癒速度”をなぞって“そこまで”は伸びる。けれど、それだけなのよ」
「……試合の時、髪を切られたときが何度かあったけど……そこまでは戻っても、それ以上は伸びなかったのはそういうことか。でも───」
「そう、でも。……でも、唯一変化するものがある」
「ああ」

 そう、きっと唯一。
 筋力は変わらないし髪も伸びない。
 傷は治るけどそれもあくまで“人の治癒力の常識範囲”の問題。
 けど、唯一変わるものもあった。それが───氣だ。

「この外史という世界では、氣というのはほぼ誰もが使えるもの。産まれた頃から攻守いずれかの氣を持っていて、武に長けているか知に長けているかも大体はそこで分かれるわねん。そう、つまり、産まれた時点で常識的にあるものなの。“無ければおかしいもの”として、降り立った瞬間に浮かび上がると考えて」
「それって、歳を取るって常識よりも先にくるものなのか?」
「歳を取らない方法なんて、お腹の中に居る内から存在するものよん。とっても残酷で、既に生命としては成り立たないけれども」
「……別の世界に飛ぶっていう、常識を外れたような土台の上にある物語なら、生命にとっての常識なんて忘れろってことか……」

 なるほど、それは確かに残酷だ。
 想像したくもない。けど、確かに死んでいれば歳なんてとらない。とる意味も無い。
 けど、そもそもこの世界では氣がなければろくに戦えもしないのだ。
 ある意味ではなによりも優先されるべきものなのかもしれない。
 ……嫌な優先順位だが、自分の世界を生きていないっていうのは、他の世界からすれば死んでいるのと似たようなものなのかもしれない。……いや、この考えはやめよう。死んだように生きているって考えると泣ける。

「むふん……ようするにそういった理由で成長はしないの。氣を除いてはねん」
「そっか……まあ、一応……納得しとく。他に納得のための材料がごろごろあるわけでもないし、正直いろいろ立てていた仮説の中にも似たようなものはあったし……」

 で、だ。

「でもさ。気になったことがあったんだ。あんたはさ、この外史の基点は俺と左慈ってヤツにあるって言ったよな? 俺とそいつが銅鏡を割ったからって。そして、あんたのことも気になってた。解らないことだらけだけど、引っかかったことがあって───」
「きゃんっ、私が気になるだなんて、ご主人様ったら積極的ぃんっ!《ポッ》」
「そっちの意味じゃないよ!? なに急に頬染めてくねくね動き始めてるの!?」
「んもぉ〜〜〜ぅ照れ屋さんなんだかるぁんっ! でもそんなところもす・て・きっ《ヴァチーームッ!》」

 ……だから。ウィンクで風を巻き起こすのはやめろと何度言ったら……。

「話、続けるぞ? ……そもそも左慈って何者なんだ? 基点になったってことは元々居た存在ってことだよな? そこに俺が混ざって、外史が枝分かれした。そんなやつを知っている貂蝉と、いろんな外史を見てきたって言葉。これってさ、つまり……その。あんたの言うことが正しければ、あんたも歳をとってないってことで───」
「………」

 くねくねと動いていた貂蝉だったが、俺の言葉を聞いてぴたりと止まる。
 真面目な顔で俺の目を真っ直ぐに見つめてきて、目を伏せて息をこぼした。

「ええ、そうね。私も、左慈ちゃんも于吉ちゃんも、卑弥呼も。とっくに元の歴史から忘れられた存在、ということになるわん」
「───! っ……」

 予想が当たってしまった。
 それも、嫌な方向での予想が。

「ど〜ぅ語ったものかしらん……そうね、物語ってものがあるとするわねん?」
「あ、ああ……」
「物語を作るのに、まず必要なのは世界と、登場人物。世界は願われて作られ、登場人物も願われて舞い降りた。“こうだったらいいな”が基点となったその世界は元となった世界よりも歪んでいて、常識というものが元のものよりも随分と外れた世界だった」
「………」

 黙って耳を傾ける。
 貂蝉はまるで御伽噺を子供に聞かせるかのように喋り、時折懐かしむように空を見上げていた。

「願われて作られた世界は、枝分かれを繰り返す世界だった。最初の世界が終わったのは私たちが今の姿になった頃。なにがきっかけで終わったのかなんてとっくに覚えていないけれど、私は続きを願って、左慈ちゃんたちは終わりを願った。それだけね」
「……ん」
「終わるなら終わるでよかったのかもしれないわん。ただ自分が終わりたくなかったってだけで、私たちがどう思おうが世界は続いたの。私たちは願われた世界の数だけ時を生きて、その度に違うことをしては様々な“こうだったらいいな”で作られた世界を叶えてきた。一度目の自分が通った道とは違うことをするのも、これで案外面白かったからねん、ぬふふんっ」
「………」
「ただ……一度や二度で終わると思っていたそれは、永遠に終わらなかった。自分の世界でなくては歳をとれない私たちは、死ぬこともなく氣だけが成長する存在になったわん。最初の頃こそ何度も繰り返せるならなんて、左慈ちゃんも練磨していたのだけれどねん。一定を過ぎた辺りから、目が濁ってしまったの。生きることに疲れたのね、きっと」
「………それは」

 それは、想像してみるだけでもうんざりするようなもの。
 願われた道を辿るしかなく、逸れれば頭痛や眩暈に襲われる。
 そして、訊いてみたが……“自分の世界”がもう無くなってしまった存在がどれだけ“その外史が作られた理由”に逆らっても、苦しむだけで俺の時のように自分の世界に戻されることなどないのだという。
 左慈ってやつは当然それを試して、その果てで……泣いたのだという。

「それからの左慈ちゃんは他者に期待することをやめたの。氣だけが成長するのならと、于吉ちゃんとともに時間をかけて道術を成長させて、とある銅鏡を作った。それが───」
「……一番最初の北郷一刀と割ることになった……?」
「そういうことねん。作った時点でその世界への害敵とみなされて、銅鏡もろとも排除された。けれど、誰かが“銅鏡をどうにかして別の物語が出来たら”と願ったのよ」
「……その外史が───!」
「ええ、ご主人様が居た世界。左慈ちゃんはその外史へは生徒として降りて、願いを叶えるために銅鏡を求めた」

 それを探して、博物館にあったそれを見つけて奪い、その途中で一番最初の俺と出会って……銅鏡を破壊。新たな外史連鎖が作られてしまい、その左慈ってやつは……───

「は、はは……なんだそれ……! 恨まれて当然じゃないか……!」

 世界に絶望して、苦労して作った銅鏡を俺に邪魔されて……!?
 連鎖を壊したかったから作ったそれが、もっと外史を作ってしまった、って……!

「ご主人様。前にも言ったけれど、自分が持っている譲れない何かがある限り、抵抗することだって当然よん。確かに左慈ちゃんにとってはご主人様は憎むべき相手。けれど、同情に乗っかって壊していいほど、ご主人様にとってのこの外史は軽いものかしらん?」
「───それは違う」

 ……それだけは、どれだけ同情しようともはっきり言える。
 自分の帰ることが出来る世界がある自分では、左慈ってやつを説得出来るほどの力もないだろう。けど、だからって壊していいことには繋がらない。
 俺は……この先どうなるかなんて解らないけど、今はまだ“肯定者”だ。
 この外史を否定したくない。

「……そっか。どの道、俺はそいつを否定しなきゃいけないんだ。少なくとも、この外史でだけは」

 もし繰り返すことになったら解らない。
 そこに自分を知っているみんなが居ないのなら意味が無いと否定に走るのかもしれないし、自分を知らないとしてもみんなはみんなだと味方をするのかもしれない。

「覚悟はぁ……決まったかしらぁん?」
「ああ。俺はやっぱり肯定者だ。先のことなんか解らないけど、今は───……うん?」
「あらん? どぅ〜したのぉぅ? ごぉ主人さぁ〜まぁん」
「いや……肯定者といえば前の時、お前達は肯定とか否定から“具現化”したって言ってたよな? あれってどういう意味だ? てっきり最初からそういう存在だって思ってたのに」
「ある意味では間違ってなぁ〜いわよぅ? だって最初の世界が終わったと同時に消えるはずだったのに、願いによって存在を留まらされたんだもの。友好的だった私は“もっといろいろな話が見たい”という肯定から。左慈ちゃんたちは“続かなくていい、ここで終わってくれ”という否定から。最初の世界から外れた時点で人から外れた意識のほうが強かったのよねん。だから、ある意味では私たちはあの時に“具現化”したの。詳しく言うなら、左慈ちゃんが言った言葉を受け取ってからねん」
「……? 言葉? なんて言ったんだ?」

 何気ない質問だった。
 特になにを思ったわけでもなく、ただ、本当になんとなく気になっただけ。
 そうして耳にした言葉がこれだった。

  “老いもせず! 人の願いのままに動き! 逆らえば苦しむだけの身で! これが生きていると言えるのか!?”

 耳にしてしまえば、もう聞かないフリなんて出来ない。
 帰るべき世界があるだけ、自分はきっと幸せなのだと受け止めてしまった。
 受け止めてしまったら……もう決着をつけなくてはいけないということしか頭に思い浮かべることしかできなかった。

「私たちはこれから銅鏡を作るわん。それをいつか、ご主人様か左慈ちゃん、勝った方に渡すつもり。この外史の枝の全ての基点が左慈ちゃんとご主人様なら、決着をつけてから銅鏡を使えば連鎖も終わるはず」
「それって……左慈が願えば否定で、俺が願えば肯定ってことで……?」
「……ええ、そうねん。どちらが願ったとしても、それで終わり。続くか続かないかの問題だけれども……」
「?」

 貂蝉は途中で言葉を切ると、ふと俺を見つめ直して……ふっとやさしく微笑んだ。

「ご主人様ん? 否定にも肯定にも、いろいろな方法がある。どうかそれを忘れないでいてあげて。願い方ひとつで、広い世界は変わらなくてもあなたの見る世界は変わるかもしれない。そのきっかけを決して取りこぼさずにいてちょーだい」

 真面目だけど、やさしい顔だった。最後だけ少しからかうような口調になったけど、その目はどこまでもやさしかった。……まるで、自分の子供を見守る親のように。

「それじゃあまた会いましょ。次会うことがあるとしたら、ご〜主人様が左慈ちゃんに勝ったあとだろうけれどぉもぉぅ……まあその時にそっちに向かっても、主の居ない外史は壊れるだけだろうからご主人様も元の世界に戻されるだけ。だったらそっちで待っていたほうがいいわねん」
「行く場所なんて選べるのか?」
「その外史が終わった時にだけねん。終わってない外史から別の外史へ飛ぶことは出来ないけれど、こうして氣を辿って話しかけたりは出来るみたいねん。ささやかな贈り物をすることくらいも出来るけれど」
「贈り物? へぇ」

 夢の中に出現して抱擁するとかだったら是非勘弁だ。
 けどまあさすがにそんなものは───

「そう、贈り物。そうねぇん、例えばぁ……惚れ薬とか大人薬とか子供薬とか」
「あれお前かぁあああああああああっ!!!!」

 おぉおお信じられねぇ! こんなところに犯人が! 民からの献上品とか聞いてたけど変だと思ったんだ! 普通に考えて、あんなのどうやって作れってんだって話しだ!!

「お、お、お前っ! あれの所為でこっちがどれだけ大変だったかっ!!」
「えぇんっ!? まさかの不評っ!? それは私としても本位じゃないわぁ……迷惑なら引き取るわよぅ?」
「あ、いえ、年長組に殺されるんで勘弁してください」

 ええ、つまりはこの状況も“大変”の内に含まれております。
 とりあえず薬が尽きるまでは若さを楽しんでもらおう。それがいい。
 なにかに混ぜたりしなければ、俺の時のように記憶まで巻き戻ることもないみたいだし。それは誘惑に負けた紫苑が確認してくれた。というか、気を失ったりしないで意識と自分を保っていれば、記憶もそのままなんだと思う。
 俺とみんなとでは作りが違うのだ……薄めたものを飲んだくせにあっさりと気絶した俺よ、ある意味でさすがです。

「あ、ところで話は強引に変えるわけだけど、貂蝉はどっち側の氣を持ってるんだ? 左慈ってやつは?」
「帰ろうとする漢女を引き止める質問に、貂蝉ちゃんったら胸板の奥がきゅんきゅんしちゃう……! でもいいわ、答えたげる。……私はいつも恋に燃える漢女。もぉちろん攻の氣よんっ!《ヴァチィーーーン!!》」
「《ゴヒュー!!》……だからウィンクで風をだな……って、うん、なんか、うん。予想通りだった」
「あぁあ〜〜らぁあ〜〜〜んっ、やっぱり溢れ出る恋に燃える心は隠しきれないものな〜のぬぇえぃっ。ご主人様が私のことを漢女と認めてくれたわぁん!」
「あ、ああいや、うん……予想通りだったのは氣の方なんだけどな……」

 言ってもきっと都合のいいように受け取られるんだろうと、詳しく否定するのは諦めた。それがいい。それでいい。
 で、だけど……この自称貂蝉さんは俺なんかよりよっぽど生きているわけで。
 その上、どうやら俺の“先輩”ってことになるかもしれないっぽい人なわけで。

「それでさ、えっと。参考までに……氣しか強くならない状態で、どれだけ強くなれたのか訊いてもいいか?」
「きゃんっ、ご主人様ったら私に興味津々?」
「や、それは前もやった気がするんだけど」
「そうねぃ、私の力はというとぉぅ……」
「無視!?」
「辺境に居る龍くらいならきゅっと一捻りできちゃう程度の───」
「それもう化物だろ!! あんたどんだけ強いんだよいったい!!」
「どぅぁあああーーーーれが龍も指先で殺せる筋肉ゴリモリで頭の中までパワーでいっぱいの化物ですってぇえええんっ!!?」
「まんまお前だぁあっ!! え、だっ……龍だぞ!? りゅっ……龍!? 居るの!?」

 噂では聞いたことがあったけど、眉唾ものだと思っていたのですが!?
 ていうかパワーとかそういう言葉、普通に使うんですね。そりゃ使うか。左慈ってやつがフランチェスカの生徒として降りた歴史があるなら、そっちの言葉だって知っていても不思議は無い。

「えぇ〜ぇえ居るわよん? 別の外史で華佗ちゃんと一緒に倒したものん」
「華佗と!? ……氣の量が異常だとは思ってたけど、龍まで倒せるのかあいつ……」

 前略おじいさま。
 身近に居た男の知り合いが龍を倒した経験がありました。
 世界は広いのか狭いのか。

「他に質問はないかしらぁん? 無ぁ〜いならそろそろぉ、お話も終わりになりそうなのだけれどもぉ」
「あ、あー……その。左慈ってやつも、龍を倒せるくらい強い、とかは……」
「左慈ちゃんは攻守で言えば守のほうなんだけぇれぇどぉもぉぅ、その身のこなしは思わず目を奪われるくらいでぇ…………ぶっちゃけちゃうと愛紗ちゃんと互角に渡り合えるくらい強いわよん」

 はい死んだァアアーーーーーッ!!!
 互角!? 愛紗と!? 無茶でしょう!?
 そんなヤツ相手に俺にどうしろと!?

「あらあらまあまあ、そんなヤツ相手にどうしろとって顔してるわねぇぃ」
「するだろ! 普通するよ!? 愛紗と互角な相手って……! あれから8年、散々鍛錬しても、愛紗にはてんで勝てる気がしないんだぞ!?」

 なのにそんな愛紗さんと互角ですか!? 攻撃側の氣じゃないのに!?
 ぬ、ぬう信じられん……! 伊達に長い歴史を生きてはいないということか……!

「ご主人様のほうはどうなのん?」
「お、俺? 俺は……一時期は攻守をひとつずつ鍛えて、結構順調だなーって思ってたところに氣の融合をして、また一から鍛え直した感があるかな……氣の使い方もふりだしに戻るみたいに複雑になったし、簡単にはいかないって」
「んまっ、もう氣の結合は済んでるのねんっ? それってばやぁ〜〜っぱり華佗ちゃんのお陰ぇぃ?」
「そうだけど……なんで知って、って……もしかしてそっちにも“俺”って居る?」
「ええ居るわよん? 今目の前に居るご主人さまよりもかなぁ〜りひょろっとしているけれどねぃ。でもそこが守ってあげたくなっちゃう感じがしていいのよぬぇえ〜〜ん……! あ、ちなみに目の前のご主人様は守ってもらいたくなるような、そんな暖かさがあるわん《ポッ》」
「そんなこと訊いてないんですが!? ちょ、頬染めるな! しなをつくるな! だからって近寄ってくるなぁああっ!!」

 でも、そっか。
 鍛えてない俺なんてそんな風に見えるのか。
 ……一年だけど、必死だったもんな。
 そこにきちんと違いがあると誰かに言ってもらえただけでも、報われた気がする。現在の自分と前の自分なんて、写真かなんかで見比べでもしない限りはよく解らないものだし。

「それで、えぇと。そっちの俺ってどんな感じだ? 何処の国に居るんだ?」

 やっぱり魏か? なんて思っていたが、ばっさりと否定された。

「私たちは今、ある目的のために団結し合っていると・こ・ろぉん♪ こればっかりは、い〜くらご主人様が相手でぇもぉぅ、そう簡単に口にするわけにはいかないの。ごぉ〜めんなさいねぃ」
「だっ……抱き締めてやるって言ったら?」
「ぬふぅうううんっ!!? もぉおう全部話しちゃうわん! だから今すぐ抱き締めてモナムゥウーーーーーッ!!」
「ひおぎゃああああああっ!!? 嘘です冗談です言ってみただけです目ぇ光らせながらこっち来んなぁあーーーーっ!!!」

 ゴカァアアアとか音が鳴りそうなくらいに目から光を放ったマッチョが、両手を広げてズドドドドドと迫ってくるのを逃げながら叫び、止まってもらった。
 相手が女性で“あなたー、お帰りー!”とか言って飛びついてくるなら解る! 新婚さんの嬉し恥ずかしの一場面としてなら有り得ると思うよ!? でも相手が彼で、唇突き出して突進してくるのはさすがに勘弁!
 友情の確認とかでガッチリと抱き合うとかならまだしも、唇突き出してくるのは勘弁! ていうかあの!? 俺抱き締めるって言っただけですよね!?
 やっ……俺だって別に、最初こそこの格好に驚いたし引きもしたぞ!? でも話してみればいい人だし、質問にも答えてくれるし、ふっと微笑む顔はなんていうかやさしい感じだしで嫌う要素は無いよ!? でも唇突き出して抱き締めに来る男に抵抗するなってのは無茶じゃないかなぁ!! いい人なんだろうけどそこのところはなんとかしてほしいなぁ!

「とっ……とにかく……! そうやすやすとは話せないってことで……いいんだな……!?」
「抱き締めてくれたら話すって言ってるのにぃん。んもう、ご主人様ったらつれないお・か・た。ぬふんっ♪《バチーーーン!》」
「《ドヒュウッ!》…………」

 もう、ウィンクによる風にはツッコむまい。
 髪を乱暴に撫でていった突風を思いつつ、半眼&疲れた表情でこくりと頷くのが限界だった。

「やることは……まあ、解った。ウン……つまり……愛紗に勝てるくらいじゃなくちゃ、俺には未来がないってことで…………」

 ふと、鼻の奥にツンとした刺激。ああ泣きそう。
 だって愛紗だよ? 戦が終わった今でもなお高みを目指して、鈴々と武を磨くあの愛紗さんですよ?
 8年。
 俺が頑張った年月だが、あの世界の武の才がある人と、俺の8年とじゃあ異常かと思えるくらいに意味が違ってくる。
 いつか凪が俺には氣の行使の素質がある的なことを言ってくれた。うん、ほんとね、氣に関してはあったみたいだよ? 毎日頑張って、時に天に召されかけたりもしてようやくここまでってくらいのものだけど!
 そんな俺があの愛紗さんに? 愛紗さんに勝てるほど強くならなきゃいけない試練を受けるハメに!? そりゃ死んだーとか言いたくもなるわぁっ!!

「………」

 でも……でもだ。
 貂蝉の言うところによると……あまり考えたくはないけど、この外史は華琳が死ぬまで続くらしい。元の外史を上書きして、華琳の世界となったこの世界では彼女こそが軸そのもの。
 本来なら願い通りの外史の未来に辿り着くと、俺は元の世界に帰ることもなくその外史とともに消えるのだという。願いが成立した時点で天へと帰る道は閉ざされて、その外史になじみ、やがては寿命で死ぬ。その後にその外史は消えるから、そっちの北郷一刀は崩れる世界のことも知らずに死んでいくのだ。
 ただ、上書きされた外史は消えず、その世界のままにもう一度意味を持った外史となる。つまりは“こうなる筈だった世界なのにそうなったら、彼女はどうなるのか”を願われた外史に。当然基点となる世界はそのままこの世界であり、その外史へ降りる天の御遣いも必要となり……彼女に願われたからこそ、彼女が必要とした俺が御遣いとして降りた、と。
 ただ適当に“一刀、来なさい”的な願いだったら、別の外史の俺が呼ばれた可能性もあったんだとか。……ありがとう華琳、本気で願ってくれて本当にありがとう。

(ああいやいや)

 そうじゃない。そうだけどそうじゃない。
 ともかく、華琳が死ぬまで何年あるかは解らないが、少なくとも華佗が居る限りは病で死んだりしない。落盤事故に遭おうが、死んで少し経った状態だろうと復活させることが出来るのが五斗米道だ。死人生き返らせられるんだよ? この目で見たときは世界の在り方を疑った。そのあと喜んだけど。
 だから……彼女が死ぬ心配を続けるよりも、強くなる努力を続けよう。
 今まで通り、そして今まで以上に。以上を異常に変えてもいいほどに。
 相手が否定するならこっちは肯定だ。
 自分がそこに居て楽しいとか嬉しいとかを感じた世界を否定されるのは嫌だ。
 悲しいことにだって、辛いことにだって思い入れがたくさんある。
 それを否定しようというのだ……俺は肯定の意志を以って、それに抵抗しよう。

「氣しかないんだからな……」

 なら、終わりに辿り着くまでとことん氣を高めよう。
 高めるだけじゃなくて、応用も強化するたびに慣れさせないとな……難しそうだ。
 あ……この外史を守るって意味では、それは国に返す以上に返すことになるのかな。
 だったら……絶対に負けられない。

「あらぁん……決意に充ちた男の顔ってス・テ・キぃいん……!」

 そんな決意が艶かしい声によって、脱力とともにすぽーんと飛んで行った。
 緊張感が欲しい。
 あ、あー、そりゃ、やることなんてどうやったって変わらないんだろうけどさ。
 とどのつまり、勝てなきゃ否定されて、俺が勝てば肯定できる。それだけ。
 勝つためにやらなきゃいけないのはたった一つのことだ。
 みんなと一緒に戦えたらってどうしても思ってしまうけど、相手は華琳が死んだあとに来るという。どうあってもみんな戦える状況にないに違いない。
 それとも子供薬を保存しておいて、その時に備えておく? ……無理だろうなぁ、液体ってのはそんなに保存できるものじゃない。それに……あくまで決着は俺と左慈がつけなきゃいけないのだろうから。

(最悪、孫にお供を───孫?)

 孫ってアレか。つまり丕とかがどこぞの馬の骨とこここここ子供ヲヲヲヲ!!
 こここ子供ってことは、つまりどこぞの馬の骨が丕を寝台に押し倒して、お、おおおお押し倒してオォオオオッ!?

「貂蝉! 俺っ、強くなるよ! 一人で左慈ってやつをブチノメせるくらい!」
「え、えぇ? そうぉ?」

 一人でブチノメせれば文句はなかろう!? 宅の娘は絶対に嫁にはやらんからな!?
 そのためには……そう、そのためにはまず……!

「愛紗……アイシャ、タオス……! オレサマ、アイシャ、マルカジリ……!!」

 なんだか志がおかしな方向へと向かっていた。
 解っているのに、娘が絡むと止まらない。親ばかって、これはこれで一つの加速装置のひとつなんだと思うんだ。
 打倒愛紗! 突撃粉砕勝利! 突撃最高突撃最強!
 オノレ! オノレ! 孫策オノレ!! 孫───ハッ!? いやいや落ち着け! なんか途中から華雄に叩き込まれた嫌な方向のトラウマが……!

「ご主人様ん?」
「なんぞね!」

 そして混乱中の俺は、返事までおかしくなっていた。
 まるで近所の頑固おばあさんのようだ。

「人の恋愛は自由であるべきよん? あなたがもし親に、曹操ちゃんとの恋を禁じられたら、あなたは二つ返事で受け入れられるのかしらん?」
「………」

 言われて、真剣に考えてみた。
 …………木刀持って真剣勝負挑んで、氣も全力で解放して意地でも勝ちに走る自分が大絶賛脳内放映された。
 奔る怒号。じいちゃんとボッコボコの打ち合いをして、認めろ、認めんの応酬を続け、……ああ、無理、想像の中だろうが俺、まだまだじいちゃんには勝てない。
 だから結局俺は折れるしかなかった。親に否定されて、折れるしか。
 うん、親に認めさせるってことを折れた。みんなへの愛は折れない。
 俺達の旅は、始まったばかりなのだから───!




                                   〜fin〜



 …………。

 うん。

「きょ、許容の心、大事デス」
「でしょうぅん?」

 バチーンとウィンクとともにサムズアップ。
 いろいろ方法も考えたけど、やっぱり……できれば親には認めてもらいたい。
 祝福の上で一緒に歩きたい。
 いつか娘たちにも連れ添う相手が出来るのだろう。
 その事実を受け入れて、涙とともに一発殴る。あ、いや、違う違う! なんで殴るになるかなぁ! そうそう、まずは縛って、片春屠くんで引きずり回して───ってだから違う!
 うおおしっかりしろ俺! 頭の中がもうすっかり支柱らしくないぞ!?
 俺、普段からこんなこと考えてたのか!? 客観的に見たら凄く怖くなってきた!
 よ、よーし落ち着け、落ち着くんだぞー、俺ー……!

「そ、そうだな。氣で殴るのもダメ。氣で動くもので引きずるのもダメ。氣ってものから離したものの見方でいこう」

 ……これだ! そう、そうだよな! 氣を使う日々が続くあまり、氣ってものが行動の基準になりすぎてたんだ! だからここで俺が取るべき行動の一つはッッ!!

「屋根の上からキン肉バスターだな!《どーーーん!》」(*死にます)

 あ、でもそれだと俺の腰とか尾てい骨もやばいな……仕方ない。じゃあ残る50%のアタル版マッスルスパークでいこう。ああいや、空中で相手をブリッヂホールドってのは無茶がある。
 ……もう垂直落下式天空カーフブランディングでいいんじゃないかな。(*死にます)
 ───ハッ!? だから落ち着けって俺!
 今考えるべきはそうじゃないだろ!? そう、打倒愛紗!
 愛紗に勝てるくらいにならなければ、左慈ってやつには勝てないんだから……!

「貂蝉、ありがとう! 俺もういかなきゃ! 目を覚まして、すぐにでも鍛錬だ!」
「あぁ〜〜〜らぁあん……! やっぱり目標に向かって突き進む殿方って素敵ねん……! でも待ってご主人様ん。見たところご主人様の氣脈、ずぅ〜〜いぶんと痛んじゃってるようだけどぉん?」

 う、と詰まる。
 無茶をして気絶して、そのあとに貂蝉が来た、と正直に言うのは実にアレだ。
 アレなんだが、もはや恥じている場合ではないとばかりに暴露。
 全てを吐き出して、先駆者である彼───

「彼って誰ェ! 彼って何処ォ!!」

 ───……め、目の前の漢女に、どうすれば効率よく氣を強く出来るのかを相談した。
 あとは……そういえばと、どうしてそんなに左慈がこちらへ来るタイミングについて詳しいのかを───

「どうしてって。一緒に居るからに決まってるでしょ〜ぅがぁ」
「ちょっと待てぇえええええええっ!! 否定と肯定の話はどうなったぁっ!!」
「否定と肯定でも、同じ場所を目指せないってわけじゃあないのよん? そう、これは長く続いたわたしたちの物語を、肯定も否定もするひとつの希望のお話。だ〜からご主人様ぁん? 中途半端でなくて、全力で未来を掴む力を手に入れてちょ〜だい。真正面から左慈ちゃんを止められるくらい、否定の意志ごと叩き壊すくらい、全力で。そうじゃなければ、決着がついたとしても未練が残るわん」
「……えっ……な、……う……」

 ……戸惑いのさなか、貂蝉はどこか悲しみを孕んだような目でそう言った。
 言葉を届けられた俺はといえば……戸惑ったままに、けれどその目があんまりにも寂しそうで、悲しそうで……だから。

「……出来るだけのことはやるよ。というか、それしか出来ないからさ。だから───」

 彼……もとい、目の前の漢女の前まで歩いて、握り拳でその熱い胸板をノックした。
 ……ゴツンと、まるで金属を殴ったような感触だったのは忘れるべきだろう。

「約束は出来ない。けど、気持ちは一緒に持っていく。いつになるか解らないけど、天で待っててくれ。肯定の意志を貫けたら、銅鏡で馬鹿みたいに無茶な願いを叶えてもらうから」

 言って、ニカッと笑う。
 貂蝉は、彼……もとい漢女にしては珍しくぽかんとした顔をしてから、少し目を潤ませて笑った。
 それから俺に意志を託すかのように、同じように握り拳で俺の胸をノック

「《ドゴォオオンッ!!》ぐぶぉはぁあああああああっ!!!?」

 ……その日、天の御遣いは夢の中で……漢女のノックで星になった。



───……。


 す、と目を開く。
 ひどくだるい身体は、起こそうとしてもぎしりと軋んで動いてくれない。
 どうやら夢から覚めたようで、もう目の前に貂蝉は居ない。

「………」

 夢から覚める前に言われたことはほんの少し。
 とりあえず今はひたすらに休むこと。
 そして、氣を生み出す場所を出来るだけ開くこと、だそうだ。
 で、その開く場所なんだが……丹田を合わせると7つあるらしく、えーと、まあその。俺が自分の内側を覗いて、穿った場所も7つなわけで。しかも丹田も含めて。
 …………おそるおそる訊いてみましたが、ええ、ビンゴでした。
 普通なら長い時をかけてゆっくり開いていくものらしいが、俺はそれを一気にこじ開けてしまったためにこんな状態。
 きっぱり言われたね。「よくもまあそれだけやって生きていられたわねぇん」と。

「だはぁ……」

 ええ、無自覚に死ぬほどの痛みを予測したのか、身体が勝手に気絶するほどでしたよ。
 そりゃ死ななかったことを感心されるわ。
 うん、だからつまり、今の俺に出来ることは、こじ開けた孔が塞がらないように気をつけつつ、氣脈が治るまで休むだけだ。
 治ったら、溢れ出そうとする氣を制御出来るように頑張りんさい、とのことだ。
 ……なんで最後だけ頑張りんさいだったのかは謎だが、気負いすぎだから力を抜けって意味も込めてあったんだろう。

「……困った」

 でも困った。眠気が無い。そして身体全体が痛い。
 ああ……こんな時に思春が居れば、殴ってでも気絶……は、しちゃだめか。
 開けた孔が塞がらないようにちょくちょく確認しなきゃいけないんだもんな。

「うう……地味なのに大変だ……」

 地味だから大変なのか?
 ああいや、もういい、小難しいことは考えず、今は痛みを和らげることだけを考えよう。
 で、治ったら……

「頑張らなきゃな……いろいろと」

 出来ることを出来るだけやっていこう。
 ただ、それだけだ。




ネタ曝しです *筋肉ゴリモリ頭の中までパワーでいっぱい  佐伯弥四郎さんのスターオーシャン2ndのアンソロより。  言われてみれば筋肉キャラが居なかったなぁと。  とびこんでこーい。 *抱き締めてモナムゥー!  タイトルは“ふぁんたじあ”でよかっただろうか。  もはや詳しく覚えておりませぬ。  ただ、大漁だったりトリカブトだったりラブレター貰った先生がモナムーだったりと、愉快な漫画でした。  ……調べてみたら見つけました。バンブーコミックスらしい。  確かこれでよかったはず。 *あなたー! お帰りー!  記憶が確かかは別として、ジャンプ放送局あたりの投稿モノより。  第三形態のフリーザ様がピッコロさん目掛けて両手を広げて襲い掛かっておりました。 *オレサマ、アイシャ、マルカジリ  オレサマオマエマルカジリ。  女神転生シリーズの魔物が言う台詞の壱。  魔物との会話、面白いですよねー。 *なんぞね!  ……なんかもう普通に書いているつもりなのにネタが……。  サイボーグじいちゃんGより、腕を掴まれた爆弾付きのばーさんの返事。  「ひょっ!? 待つんじゃばあさん!」  「《がしぃ!》なんぞね!」  ……この会話ののち、「ダメじゃ間に合わん!」の言葉とともに投げ捨てられ、空中で爆発。  昔の漫画は過激だけど、だからこそ面白かった。断言します。 *屋根の上からキン肉バスター  男子高校生の日常より。  この場合、ベランダからです。  うん、まあ……あれって絶対に仕掛けたほうの身体がボロボロになるよね。  残る50%のアタル版マッスルスパーク、カーフブランディングはキン肉マンより。  117、118をお送りします、凍傷です。  32話から数えて86話ぶりの貂蝉さん。  外史考察は相変わらず凍傷の妄想です。  他のSSを見る時に“こんなお話なかったっけ”、なんて思い出してはいけませぬ。  前にも書いたような気もしますが、凍傷はこう……後に謎の答えを一気に出す、とかいうのが苦手です。複線と言いましょうか、苦手です。  結論を急ぐ性格といいましょうか、どうにも説明せずにそのまま進むのに抵抗があるといいましょうか。  左慈がやってくるタイミングについてもまさにそんな感じですね。  32話を書いている時点でも既に決まっておったことなので、変えるつもりも無しです。   しかし86話……暴露までの話数が長すぎですね。  でも戦闘より日常が好きなので、どうも。  苦手と言っている傍から86話も先送りたぁどういう了見でぃと言われたら、その時はまだ貂蝉さんも知らなかったとしか言いようがないわけでして。  なお、惚れ薬など以降にあちらから贈り物があることはございません。  さて……頭の中にある物語を文章に起こしたら、あと何話で終わるというのか。  150話前には終わる……と思いたい。いえ終わらせましょう。がんばー!  ただ外史考察についても物語終盤についても、きっとこれといった意外性はないと思われます。過度の期待はしない方向でどうぞ。  こんな外史考察くらい余裕で組み立てられてたぜ〜〜〜っ! とキン肉メンチックに言える人はご安心を。まさにその通りな進み方しか書けません。  逆に“意外ッ! それは意味不明ッ!”などとブラフォードチックに呆れるか、 もしくは“そうきたかァ〜〜ッ!”と烈海王のように感心してもらえたならば……そ、そんな思いを最終話まで引っ張っていければいいなぁと思いつつ書きます。  しかしこうカタカタ書いている途中、他の方のSSを見ていると無性にファンタジーもの書きたくなります。  ヒロラインリメイクでも書こうかしら。  ストーリーとかイベントはそのままで、別の誰かを主人公にするとか……。  ああいやいや、今はギャフターに集中しませう。  ……さて! ……息抜きにSS読んできます。読み始めたら止まらない……!  ではまた次回で。 -_-/番外的なIF  お題:もしも献上品に性転換薬があったら  ……。  ある晴れた昼下がり。  市場へ続く道───をずんずんとゆく一人の覇王がおった。 「〜♪」  見るからに上機嫌。  鼻歌まで歌ってずかずか歩く姿は、まるでおもちゃを手に入れた子供のようであり…… 「さあっ! 服を買うわよ一刀っ!」  そんな彼女に引き連れられた俺は……女性用の呉服屋の前で、黄昏た。 ……。  覇王がおる。  目がらんらんと輝いている。  ある薬を飲んでから、いやむしろ飲まされて……俺があろうことか私になってしまってから、華琳のテンションは異常だ。  いやまあうん、解るよ? 理由はなんとなく解る。  我らが覇王さまの女性好きは有名ですもの。  そこにきて、好いている男性を女性に変える薬があって、変化した姿が彼女の琴線に触れたらしく、まるでデートに行くわよと言うかのようにフスー!と鼻息を荒くした彼女は、政務そっちのけで俺を連れ……ここへ来たわけで。 「一刀。あなた、下着の色はどれがいい?」 「し」 「だめよ、黒になさい」 「なんで訊いたの!?」 「あら、そんなこと。あなたのその慌てる顔が見たかったからに決まっているでしょう?」  Sな笑みを浮かべ、つつっと俺の顎を人差し指と中指で持ち上げる。  ……その際、自分の視線を少し高くするために、踏み台の上にわざわざ乗ったことについてはツッコんでいはいけない。 「あ、あの、華琳? 俺べつにフランチェスカの制服のままで」 「だめよ」 「だ、だってな、いくら女になっ」 「だめよ」 「いや、服は男物で」 「だめよ」 「華琳って綺麗だよね!」 「そう? ありがとう」 「やっぱり服は男」 「だめよ」 「服の話になった途端に即答!?」  なんだか滅茶苦茶だった。  なのに俺の前まで服を持ってきて、合わせてみている華琳の顔は緩みっぱなし。  うわーい、こんな顔、男の時になんて見たことないやー。 「とっ……ところでさぁ華琳っ? べつにその、服なんか買わなくたってさ。ほらっ、どうせすぐに元に戻るだろうし……」 「だめよ」 「うぅっ……参考までに、なんで?」 「着させなきゃ脱がせられないじゃない」 「俺になにするつもりだあんたぁああーーーーーーーっ!!!」  なにを当然のことを言っているのよとばかりに言われ、思わず絶叫!  え!? なに!? え!? 俺、これ着たら脱がされるの!? 何処で!?  つか、なんですかそのうっとり顔! なにを楽しみにすればそんな顔が出来るので!? 「あぁ一刀。一応訊いておいてあげる。初めては私と同じ場所がいい? それとも寝台?」 「なにが!? ねぇなにが!?」  なんかよく解らないけどこのまま付き合っていたら危険だってことは本能のレベルで受け取った! 逃げ《がしぃ!》捕まったァアーーーーーッ!!! 「いやちょちょちょ怖い! なんか今の華琳怖い!」 「怖がる必要はないわよ。私も通った道よ。私とともに歩むというのなら、何処までもついてくればいいの。……導いてあげるわ、ついてきなさい、我が覇道に」 「かっ……華琳……!《じぃいいんゴソゴソ》ってなに人の制服脱がしてますかぁああーーーっ!! 人がっ、人がせっかくじぃいいんってきてたのに!」 「うるさいわね、いいから脱ぎなさい。そして着なさい。ほら」 「着ろって、これ女性ものの下着じゃないか!」 「当たり前じゃない」 「まっ……真顔でなんてことを!」  いや、そりゃあ今の俺は女だし、女が男ものの下着をつけてるほうがおかしいとは思うよ!? 今は! でも身体は女! 心は男! その名も……北郷一刀! な俺としましては、女ものの下着なんて穿きたくなど《ごそごそ》だから脱がすなぁあーーーーーーっ!! 「……埒が空かないわね。───桂花《パチンッ》」 「《ザァッ!》ここに」 「何処に!? えっ!? ここにって、何処に居たの!? どっから出てきたの!?」  華琳が指パッチンしたら、物凄い速さですっ飛んできた桂花が華琳の前に跪いた!  もしやこれはカッパーフィールド!? 不思議なるカッパーフィールドでござるか!? 「桂花。私が押さえているから一刀の服を脱がしなさい」 「はっ」 「えぇええっ!? 即答!? ま、待て桂花! ほらっ、俺男だぞ!? 男になんて触りたくもないなんて言ってたお前が、俺に触れるどころか服を脱がすなんて───」 「なにを言っているの? ここに男なんて一人もいないじゃない……! ふ、ふふふ……うふふふふ……! ああ、女になったあんたがこんなに可愛いだなんて……! 今、今この汚らわしい男ものの衣服を剥いであげるからね……! だだだ大丈夫、痛くしないから私に全てを委ねなさい……!?」 「《おぞぞぞぞ!!》ヒギャーーーーッ!!? イヤーーーッ!? なんかかつてないほどやさしい顔なのにギャップ萌えとかそんな次元を超越して恐怖しか感じねぇえーーーーーっ!! いやちょ待っ! やめっ! 脱がすなぁあーーーーっ!!」  華琳に羽交い絞めにされ、桂花に服を脱がされてゆく。  抵抗しようにもこの華奢な身体のどこにそれほどのパワーが秘められているのか、俺を羽交い絞めしてらっしゃる華琳はびくともしない。いやほんと……なにこれ!? 冗談抜きでビクともしないんだけど!? 無理矢理背負うように持ち上げることも出来ないとか、地に根でも下ろしてるんですかアータ!! (我が覇道……ここで費えるというのか……) (孟徳さん!? どうせ費えるならこの後ろの孟徳さんの覇道も連れてって!?) (わしにだって……出来ぬことくらい……ある……) (孟徳さん!? もうとっ……誰!? なんか途中からキバヤシみたいになってない!?)  そうこうしている間に衣服は脱がされ、着せられ……叫び疲れた頃には、姿見の前に短髪のおなごがおがったとしぇ……。 「さあ、いくわよ一刀」 「ああ……うん…………えと、どこに……?」  もはや本気で疲れた。  ぐったりしている俺を見て、しかし華琳はとてもつやつや。  やりとげた女の顔になっている。  ……そして桂花がいつの間にか消えていた。  彼女はあれですか? 忍者の末裔かなんかですか?  ……大陸に忍者っているのカナ……。 「もちろん、許昌の川よ。そこじゃないと私と同じ場所とはいえないじゃない」 「ア、アノ。マジでなにをするおつもりで……?」  言いつつも店を出る。  代金は既に桂花が払ったようで、店主はペコーとお辞儀をして送り出してくれました。  引き止めてくれてもよかったのに、と思ったのは秘密だ。 「まじ? ……よく解らないけれど、もちろんあなたを私のものにする大切な儀式をおこなうのよ。私と同じ場所で、私と同じ痛みを以って」 「痛みって?」 「………」 「?」  いや、ほんとなんの話だか。  脱がすだのどうの、初めてはどうのって、なんとなく考えてみたけどそもそも俺は男で…………おと…………オ………… 「アノ」 「なによ」 「ソノ。モシカシナクテモ、俺……襲ワレル?」 「襲わないわよ。同意の上でないと許されないことだもの。だから頷きなさい《チャキリ》」 「ほぼ脅迫だろそれ!! どこから出したんだその絶!! あとこれってもう非道の域だろ!? やめよう!? ほんとやめよう!?」 「…………」  怯える俺を見て、華琳はハッとするとそそくさと絶を仕舞い……あ、あれ? よく見えなかったな。どこに仕舞った? ……あれ!? 何処!? ねぇどこ!? 「そうね。ごめんなさい一刀。私も突然の状況に混乱していたみたいね。覇王にあるまじき失態だわ」 「華琳……《ホッ》」  安堵……ああ、今回ばかりは本気で安堵の息を吐いた。  そうだよな、いくら華琳だって人間なんだ、慌てるときだってあるさ。  そしてすぐに復活出来るのも彼女の強みだ。  今だって落ち着いた顔で近寄ってきて、俺の両肩をやさしく掴んで─── 「だから、頷きなさい?《にっこり♪》」 「《メェエエリキキキキ……!!》肩痛ァアアアーーーーーッ!!!?」  ごめんなさい気の所為でした!! 目ぇぐるぐる回ってらっしゃる!  うわぁいほんとこんな華琳初めてダー!!  いだぁああだだだだ爪が爪が肩に肩に肩にィイイーーーーッ!!  ハッ!? いや、でも死中に活ありだ!  今なら……今なら言ってもらえるかもしれない! 「かっ……華琳っ! 華琳っ! ちょ、華琳っ!」  呼びかける! ……うわぁ興奮してて聞いちゃいねぇ!!  こうなったら強引にでも肩を掴む手を外して……!  よっ……! ほっ……! な、なんと……! お、おがぁああだだだだだぁああっ!!? (な、なんてパワーだ……! オラの十倍ぇはありそうだ……!!)  じゃなくて外れない! なにこの力! 頷くまで離してくれそうもありません!  ええい構うか! 聞こえてなくても届かせる! 届けこの言葉! 「華琳っ……俺───もとい、私のこと……好き……っ……?」  たぶん“俺”って言葉は届かない。なんかそんな気がしたので私でいってみた。  するとびくりと肩を弾かせる華琳さん。  そう……男の時は言ってもらえなかったけれど、今なら───! 「さっ……! ……《ポッ》……察しなさいっ……!」 「チクショォオオーーーーーーッ!!!」  泣いた。  その、男の時とのあまりの反応の差に、涙した。  その日俺は……華琳に言われるまま片春屠くんで許昌へ向かうこととなり───  夕暮れ時の川の傍で、       〜ここから先は書物が塗れ、滲んでいて読めない  そんな番外編IF。  デビッド・カッパーフィールドはマジシャンでした。  そして最後のチクショーはギャグマンガ日和を思い出していただければ。  凍傷小説には女化、記憶喪失、子供化、動物化などがよくあります。  子供化とある意味での記憶喪失はやったので、女化のお話。  動物化は……さすがにやめときます。やる場合は明命や周邵のお話になりそうですが。  さてさて番外までお付き合いいただき、ありがとうございました。  それではまた次回で。  容量的には117話が43kb、118話が48となります。  文字数は……いくつだろう。まあ気にすることないですね。  楽しんでもらえたならそれで最高さ。  ではまた次回で。 Next Top Back