END/終端

 傷が完治して少し経った頃のことを話そうか。

「《ズパァーーーン!!》ムグオオオ!!?」

 完治記念に久しぶりにじいちゃんと仕合うことになった。もちろん家の道場で。
 で……まあ、なんと言いますか、圧勝。
 竹刀がじいちゃんの頭部を叩くと、あっさりと勝敗は決まったわけで。

「……むう。よもやこうもあっさり負けるとは……。一刀、入院中に何かを掴んだか?」
「いや、むしろ入院前に何かを掴みまくったから、あんなズタボロだったわけで」
「……そうか。泣き叫ぶお前を見た時は、まだまだ小僧だと嘆息したものだがな。時折病室に顔を出してみれば、妙に迷いの晴れた顔をしておる。なにかあったか、とは思ったがな」
「ああうん。ちょっと歴史と戦ってきた」
「───……そうか。守りたかったものは守れたか?」
「へ? あ、ああ、えっと……うん。みんなは“守ってもらった”って言ったよ。俺に自覚がなくても、みんな幸せそうだった」
「………」

 そう返すと、じいちゃんは俺の話を笑うでもなく真剣な顔で聞いて、頷いてくれた。
 仕合いを見ていた及川でさえ、「言ったって解られへんてー……」と寂しがっているのに。

「世迷言をと切って捨てるのは容易いのだろうな。だが、お前の目は嘘をついてはおらん。儂はそんな目をして話す孫の言葉を鼻で笑うほど耄碌しとらんつもりだ。世の中というのは己が知らんだけで、理解に追いつかん物事がごろごろと転がっておるものよ。どれほどの科学者や権威を持ったものが知識を並べようが、説明し切れんものこそ溢れるほどよ」

 言いながら俺に近づいて、ポムと頭に手を乗せる。
 それから俺の目をじっと見つめて……言った。

「おう、良い目だ。世の何も知らん孺子には出来ぬ目よ。故に、なぁ、一刀よ───」
「じ、じいちゃん?《ドンッ》うわっ!? ……っと」
「道場は、お前が継げ。今なら受け取れるな?」
「───」

 なにを、なんて返さない。
 免許皆伝。
 もはや教えることなど無いと、あのじいちゃんが俺の胸を殴りつけ、言ったのだ。
 断る? いや、そんな選択肢は無かった。
 人に何かを託す時の期待感はよく知っている。
 父になった。祖父にもなった。
 そんな自分が、自分の何かを誰かに託す瞬間を、何度も経験してきた。
 あの時の感情を、じいちゃんも感じてくれているのだろうか。
 こんな、じいちゃんからしてみれば、急に怪我をして入院しただけの男に。

「でも俺、技とか全然教えてもらって───」
「そんなものは倉の書物でも好きに漁って学んでゆけばよいわ。基礎さえ学べば、そのための骨組みなんぞは気づけば仕上がっているものぞ」
「……ごめんじいちゃん、基礎忘れた」
「ぬおっ!?《がーーーん!》……叩き込み終えたばかりであろうが!!」
「ごめんなさい!?」

 でも50年以上もあんな世界で生きてたら、自然と型とかも変わりますよ!?
 俺悪くないよね!? こればっかりは悪くないよねぇ!?
 あーこら! 及川! 笑うな!

「ええいもういい! 叩き込み直してくれるわ! ……ム、だが待て、そろそろ“らじお”が……」
「おぉう!? かずピーのじっちゃん、ラジオなんて聞くのん!?」
「野球の実況だよ。テレビ見ればいいのに、ラジオを聞いて状況を想像するのが好きらしい」
「うへぇぁ……なんやさすがかずピーのじっちゃんやね……。妙なところでちょいおかしいわ」
「え? 俺おかしいか?」

 ラジオをつける。
 ご丁寧に道場まで持ってきてあるのは、どれだけ好きなのかを現すのに丁度いいというか。
 神聖な道場になにを───! なんてことは言わないのだ。これでこの人、結構いい加減だし。厳しいけど程よくいい加減。そんな人だ。

「んお? なーかずピー? かずピーんとこのおかん、なんや入り口で呼んどるでー?」
「? なんだろ……って、呼ばれてるのじいちゃんじゃないか」
「なんじゃいこの忙しい時に……! 儂は今らじおを…………なに!? 道場破り!?」
「ウッヒャーーーオ!? 俺、生の道場破りなんて見るのも聞くのも、産まれて初めてやで!?」
「俺だってそうだよ! っへぇえ……! 居るんだなぁ道場破りなんて……!」
「応、ではゆけ一刀。儂もう道場のこと任せたから関係ないし、お前に任せた」
『えぇええええーーーーーーーーーっ!!!?』

 及川と俺、じいちゃんの言葉に絶叫。
 でも確かに託されてしまい、しかもその託す時の気持ちとやらも解ってしまったわけで。
 それでもじいちゃんがこんなに簡単に人にものを任せる性格とは……! ……あの、もしかしてあっさり負けたことにイジケてらっしゃりとか……ハ、ハハ!? まさかねぇ!?

「どどどどどどないすんねやかずピー! おまっ……これ、負けたら道場の看板下ろすことに……! ……。負け? あー……まあ、うん、殺さへんようにな?」
「真顔で心配するところ、そこなのか」

 及川があんまりにも慌てたりするもんだから、逆に冷静になれた。
 軽くツッコミつつも、早くと急かす母さんに苦笑しながらも歩く。
 ほんと、どの世界でも意識していないだけで、これで案外……退屈なんてものは出来ないように出来ているのかもしれない。

「じゃあ相手側に弟子とか居たら、先鋒は任せた」
「俺になに期待しとんの!? いやいやもし相手が木刀とか持っとったら俺死ぬわ!」
「いや、案外相手は、剣の道に生きた大和撫子美人とかだったり───」
「よっしゃあ先鋒任されたわ! 勝負方法は寝技限定で!《どーーーん!》」
「……お前さ、そんなんだからフラレるんじゃないか?」
「ほっといたって!? えーやんべつに自分に正直で!」

 騒ぎながらも歩く今は、重荷が下りたからなのか、はたまた背負ったからこそ強く在れるのか。前よりもひどく軽い一歩にわくわくしつつ、及川と二人、入り口へと急いだ。
 道場破りの勝負を受け入れるのか断るのかは、まあもちろん考え中なんだけど……たまにはそういう冒険もいいのかもしれない。
 負けたら看板下ろすことになるわけだけど、じいちゃんがそれでいいと頷いているのなら。両親は滅茶苦茶怒りそうだけどね。

「あ、ほんなら前口上は俺が言うなー? “ふふふ、よー来たな道場破り! お前はかずピーに触れることすら出来ずに負けることになるでぇ!”とか。どや? これどないやー!?」
「先鋒の及川が相手に抱き付いて自爆して勝つのか。なるほど、俺に触れてもいないな」
「俺何処のサイバイマン!? そもそも俺に自爆能力なんてあらへんよ!?」

 日々は刺激に事欠かない。
 自分が気づいていないだけで、手を伸ばせば掴めるものは、自分が思うよりも沢山あると思う。
 そんなものへと自分から一歩近づくだけで、世界は大きく色を変える。
 そっちへ進まなきゃよかった、なんて後悔することもあるだろう。
 あちらへ進んでおけばと泣きたくなることなんて、きっと呆れるほど。
 でも……───そうだなぁ。
 そんな時間もいつかは笑い飛ばせる日が来るから。
 そんな日々を笑い話に出来るほど、今を謳歌する努力をしようか。
 休む暇なんてないくらい、それこそ……全ての時間を精一杯に楽しむように。

「よっしゃあ道場破りは何処やぁーーーっ!! この道場の主たる北郷一刀サマが相手になるでぇーーーっ!!?」
「馬鹿っ! 言葉で言われただけで、まだ正式に主になったわけじゃないだろがっ!」
「あー! 馬鹿ってゆーたー! へへーん馬鹿って言うほうが馬鹿やこの馬鹿! かずピーの馬鹿! 馬鹿ピー!」

 騒ぐだけ騒いだままに道場の外へ。
 母の呆れ顔に迎えられながら、新しい刺激を求めた一歩が、今───



「やれやれ、騒がしいことよなぁ。あれでしっかりやっていけるのか。……いや、それはもはや儂が心配することでもないか。どぅれ、らじおの方は……」

『《ザザッ……》続いてのニュースです。数日前、○○○に落下が確認された流星群ですが、調査班が向かったところ、クレーターがあるのみであり、なにがあるわけでもなかったという話が───』



 ───ゆっくりと、踏み出された。

「───って、左慈ぃいいいっ!? おまっ……なんでここに!?」
「はぁ〜いご主人様ぁん! 左慈ちゃんと于吉ちゃんめっけちゃったから挨拶しにきたわよん!」
「貂蝉まで!? 挨拶って…………そのマッスル白衣でか……!? もうちょっとこっちに気を使った格好をしてほしいんだが……!」
「フン、何が挨拶だ。俺が来た理由は言葉通り、道場破りだ。……北郷一刀。あの時の借りを返してもらいにきたぞ……!」
「へ? なに? コレが“サジ”とかゆーやつなん? なんかトゲトゲしとるけど、決着ついたのとちゃうのん?」
「ああついたな。だから来たに決まっているだろう。外史もなにも関係無い……純粋な勝負をしに来てやったんだ」
「うっは、えらっそうやなぁこのにーちゃん。態度めっちゃデカいやん。背ぇ低いくせに」
「殺すぞ貴様!!」

 第一歩の先に待つなにかを、たとえば少し想像してみたとして。
 そんな一歩で欲しいものが手に入る、なんてことが現実として有り得るかと誰かが問うた。
 その問いに、ある人は笑って答えた。
 “そんなものは気持ちの持ちようだ”と。
 手に入ったと思わなければ、たとえ本当にソレを手に持っていたとしても、いつまで経っても手に入れたとは思えないものなのだと。

「あ、及川? こいつの口癖、この“殺す”だから、あんまり気にすることないぞ」
「なっ……! 勘違いするなよ北郷一刀……! 俺がその気になれば、貴様など……!」
「はいはい、それくらいにしておきなさい左慈。今日は礼を言いに来たのでしょう?」
「だっ!? だだ誰がこんな男に礼を!」

 ───今、俺はなにを手に入れることが出来ただろう。
 ここに至るまでの日々を思い返して、小さくそう考えた。
 退屈しない日常は確かにある。
 なにかが足りなくても、いつかはそれに順応していく自分を想像していたのに、騒がしさっていうものは自分をほうっておいてはくれないらしいから。
 そう思えば、手に入れることが出来たものなんて、やっぱり意識していなかっただけで、もうとっくにそこにはあったのだ。
 うんざりするくらいの騒がしさの中に居ても、その中の些細で少し笑えたら、意識してしまえばそれは確かに……笑顔を手に入れたってことにもなるのだから。

「あぁ〜〜らぁ〜〜〜素直じゃないわね左ぁ〜〜慈ちゃぁあん。そんなアータには、貂蝉ちゃんが素直になれるお・ま・じ・な・い・を、ぶちゅっとホッペに」
「やめろ肉ダルマ! 頬が腐る!」
「あぁら失礼しちゃぁ〜う! 誰が骨すら溶かす妖怪ダルマですってん!?」
「いえ貂蝉、その役目はこの于吉が。では左慈、私が素直になれるまじないとやら」
「やめろ気色悪い! いいから黙っていろ! 〜〜〜……北郷一刀!」
「へ? あ、ああ……えと、なんだ?」
「き、きさっ……貴様、は……、その……、〜〜〜……北郷一刀!」
「だ、だからなんだよ!」
「……、……拳を出せ」
「?」

 付き出した拳に、左慈の拳がゴツっとぶつけられた。
 左慈はまるで叱られた後に仕方なく仲直りをしようとする少年のように、そっぽを向いて。
 俺は、そんな左慈と自分の拳とを見下ろして。

「お? なになに? もしかして友達の儀式とかゆーやつ? あぁ、そういや全力で殴り合ったんやったなぁ。殴り合って友情芽生えるなんて、いつの時代の青春や〜って話やなぁ。ま、俺とあきちゃんもやったけど」
「あらぁん? 喧嘩して仲直りするのに、いつの時代も関係ないわよ及川ちゃん。むしろあんな過去で殴り合ったかぁ〜〜らこそぉん、こんな青臭いのがぴったりなんじゃないのん」
「あ、そらそーや! 言われてみればせやった!」
「なにが儀式だ! 誰が友達だ! 勘違いするなよ貴様ら! 俺はただ! ……た、ただ、だな。その。…………くだらない連鎖から解放してくれたことに、だな」
「……え? なに? もしかして俺、ツン10割がデレる瞬間とかに出くわしとるの?」
「ええ、よい着眼点です。左慈は本当に面倒くさいツンですからね。長く連れ添った私にさえデレてくれないというのに。やれやれ」
「蹴り殺すぞ貴様らぁ!! 〜〜〜っ……どいつもこいつも……! いいか北郷一刀! つまりだな……っ!」
「あ、ああ……?」
「………〜〜〜……!!」

 顔、真っ赤。
 どれだけの葛藤が彼の中で渦巻いているのか。
 そんな疑問を抱いた途端、彼が俺の耳に一気に顔を近づけ、一言を言った。

「え!? なにー!? 聞こえんかったからもっかいゆーてー!?」
「誰が言うかっ! そもそも貴様に聞かせる理由がどこにある!」
「俺が聞きたいだけやぁあーーーっ!!《どーーーん!》」
「……北郷一刀。友達は選ぶべきだぞ」
「友人関連でお前に心配されるとは思わなかったよ。言えてるけど」
「えぇ!? ひどない!?」

 少しずつ少しずつ、何かをきっかけに暖かな何かが近づいてきている予感。
 漠然としたものなのに、寒い日が続いたあとに、急に暖かな日が訪れるみたいに。
 小さな暖かさが、ゆっくりとやってきていた。

  ……俺を肯定してくれて───

 そんな暖かさに笑みを浮かべる。
 生憎と、耳の傍で放たれた言葉は最後が聞こえなかったけど。真っ赤な顔を見れば、それに続く言葉も少しは想像ができた。
 おそらくこれからは一生、俺にそんなことは言わないんだろう。

「それでなんだけどご主人様ん? これからちょぉ〜〜〜ぃとばっかしぃ、散歩でもしなぁ〜〜ぁい? お空がとぉってもぉぅ、い〜い天気にゃ〜にょよん」
「待て貂蝉! 俺は道場破りをすると言っただろう!」
「そして勝って、北郷流の正統伝承者になるわけですね? ああ、流派は適当に言っただけなのでお気になさらず。ふふっ、しかし左慈にもこの時代でやりたいことが見つかりましたか。ええ、結構」
「ちょっと待て! 何故俺が北郷一刀の流派なぞ継がなければならん!」
「知りませんでしたか? 道場破りとはそういう結果に繋がるのですよ?」
「そっ……そうなのか!?」
「ええまあ嘘ですが」
「貴様殺す!!」

 散歩の提案ののちに漫才を始めたかつての敵を前に、なんかもう笑うしか無くなってくる。
 こうなれば乗らない手はない。
 息抜きがてらに道着のままに外に出て、行き先も決めずに歩き出す。
 歩く先でもやかましいのは、なんかもういっそ吼えたがりの犬の散歩をしている気分で行こうと、心が頷いた。
 ビキニパンツの白衣マッチョや、妙な……法衣? を来た男達と、道着姿の俺が道をゆく光景に、擦れ違うご近所さんに早速おかしな目で見られたのは……きっと気にしてはいけないことだ。

「けどかずピーんとこのおかん、このムチムチ白衣マッチョを前によく腰抜かしたりせぇへんかったなぁ」
「道場ってだけで、結構いろいろな人が出入りするからなぁ」
「……おかんがそれで、なんでかずピーはそうなんかなぁ」
「抱き付かれた経験があるから」
「……ごめん」

 素で謝られた。

「で、貂蝉。散歩って何処へ? 当てもなくだと本当に適当になるぞ?」
「資料館とォかァ、行ってみたくなぁ〜〜ぁい?」
「資料館って……フランチェスカの?」
「そう。私の漢女チックなハートがドキンドキンしてるの。きっとそろそろなんじゃないかって」
「ほへ? そろそろて、なにがや?」
「つ・じ・つ・ま♪ むしろ気づいてないだけでぇ、ご主人様とかはもう無意識に感じちゃってたりするんじゃなぁ〜〜ぁい?」
「俺? 俺はべつに───……あ」

 あった。
 そういえば、道場を出る時、なんだか体が異様なくらい軽くて───

「………」

 その軽さに懐かしさを覚えた頃、懐かしい匂いを感じた瞬間。踏み出した一歩というのはいい方向へ進んでくれたんだなって、静かに……けれど深く、心から思うことが出来た。
 意識を目の前に戻してみれば、目の前に広がる近所の広い公園。
 子供が燥ぐ声や、誰かの楽しげな大声。
 ここらじゃ珍しいたい焼きの露店が出ていて、今も何人かの女性が姦しく集まっていた。

「なに? かずピー気づいたことでもあるん?」
「ああ。さっきさ、」
「食い逃げだぁあーーーーーっ!!」
「そう、食い逃───……あー……」

 ───さて。
 じゃあ、ゆっくりとした日常のことも話したことだし、物語の続きを話そうか。
 そうだなぁ、まずは何から話したものか。
 ああそうそう、踏み出した一歩から何十歩歩いたあとのこと。
 勉強に遊びに鍛錬に、日々を面白おかしく過ごしていた所為で気づけなかったことがあったんだ。
 なんでも数日前、近くの山に流星群が落ちたらしい。
 流星が落ちるだけでも珍しいっていうのに、それが群れで落ちてきたというのだ。
 でも、編成された調査班が調べに行ってもなにもなく。
 それどころか何人かの調査班が何者かに気絶させられ、その顔に怖いくらいの悪戯書きをされていたとか。

「……財布、持ってたっけ。……あるな」

 そんなことをしでかした“彼女ら”だが、この世界の通貨なんぞ持っている筈もなく、美味しい匂いに誘われて喰らったらしいたい焼き屋の前で、そんな騒ぎはよーく耳に届いたわけで。

「し、失礼した! 食べるつもりはなかったのだ! ……こらっ! 食い意地を張るにしても我らの状況を考えてからだな……!」

 さらりと揺れる黒に、目を奪われた。
 思えば困っている顔か怒っている顔ばかりを見ていたな、なんて思い出すのは、彼女に失礼だろうか。

「だってお腹が空いたのだ! もう何日も食べてなくて、お腹と背中がくっつくのだー!」

 騒ぐ姿はいつかのまま。
 記憶はどうなのかな、なんて考えるのは野暮だろうか。

「か、華琳様! 鈴々がとうとうやらかしたそうで! ───私もいただいてしまっていいでしょうか!」
「いいわけがないでしょう! それよりも今は、一刻も早く……!」
「しかし華琳様。フランチェスカ、という名のみを頼りに歩むのも限界が……」
「他に頼る当てがあるのなら是非聞いてみたいわね、秋蘭。なに? 人の体ばかりににやにやと目をやり近づいてくる、そんな男どもの案内を受けよとでも言うつもりかしら」

 走って、近づいて、抱き締めてしまうのは、許されないことだろうか。
 そうしてみて、もし彼女たちが俺の知る人たちではなかったら?
 違う外史の辻褄からここへ来た人達だったら?
 ちょっと考えて、笑った。
 途端、ぶつぶつ言いながらも何故か俺の隣を歩いていた左慈が、俺をちらりと見て顎で促した。

「勝者がなにを躊躇う必要がある。貴様が願ったからこそ現れた“御遣いども”だろう」
「え……どうして」
「貂蝉から話は聞いた。つくづく弱いな貴様は。やつらが居なければ今を生きる力もないのか」
「………」

 考えてみる。
 と、そんな考えが纏まる前に及川に殴られた。
 今さら考えることとちゃうやろアホ、と。

「ま、これが約束の一発でえーわ。いいキツケになったやろ、幸せモン」
「…………ああっ!」

 ゲンコツで殴られた頭の痛みさえ今は笑える。
 駆け出した俺の耳に、于吉の溜め息が聞こえたけど……構わずに駆けた。

「まあ、そういうことですよ。物語は終わりを迎えるものです。それは必ず。一種の呪いのように、始まりと終わりは切っても切れません。過去があるから未来があるのなら、今があるなら過去があるんですよ。あなたが過去の記憶を持っている時点で、“そうでなければ成り立たない”のですから」

 途中まで聞こえた声も中途半端に、溜め息を吐く覇王様に抱きついた。
 よっぽど油断していたのかあっさり抱きつかれて悲鳴をあげる覇王様。
 驚き、振り向くと同時に武器───は、ないので拳を構える女性達が、こんなにも懐かしい。

「今まで作った銅鏡も無駄にならずに済みました。まあもっとも、これだけの人数を過去から引っ張るというだけで、願いなんてものは叶え尽くされているとは思いますがね」
「ん? よー解らんけど、外史がひとつになってもーたんなら、別の外史でやったことは覚えてられんよーになるん?」
「それはありませんよ。私たちはいわゆる“例外”ですから。辻褄を多少“ここに至る結果”に引っ張ることは出来て、けれど私たちの知らない過去がくっついたとしても、今持っている知識は消えません。私たちが経験したことは私たちの中では真実です。過去の多少が認識と違っていても、それらが消されると今の私たちが成り立たないでしょう。それは外史の辻褄とは違い、私たち“登場人物”の問題です」
「人と世界は同じやないっちゅーこと?」
「例をあげるのなら猫ですね。猫は時間に囚われない生物、という知識があります。一日を20時間も寝て過ごす猫は、寝ている間になにを見るのでしょう。それは過去とも未来とも言われ、バラバラ過ぎて考えるのも馬鹿らしいものだといいます」
「あー、しゅれてぃんがーなんとか? あれ? シュレディンガーやったっけ?」
「目で見るものでなければ確信には到れません。今ここに猫が居たとして、では私たちはその猫が過去になにをしてきたのか、など知る術は無いし、知らなくて不都合が起きますか?」
「あっ……な〜る。人が人に持つ認識なんて、会ってからのことばっかやもんな」
「そういうことです。これからの日々、他人が私たちにどう干渉しようが、私たちが話さなければ他人が知る術はない。話したとして、笑い話になるだけです。ですから私たちの知識や経験は私達だけが知っていればいいのです。そこには他人の不都合などは関係ないのですから」
「んー……なら過去が変わろうが、知ったことを忘れることは絶対に有り得へんの?」
「そこに、別の強制力が働いていなければ、ですが。ええ、もちろん私たちはそんな野暮はしませんよ」
「ほへー……されたりしたらどうなるん? たとえば〜……あー、目を離さずに、その、なんや、猫をず〜っと見てたとして、“目の前に居る”って認識しとんのに忘れるとかは……」
「どうなのでしょうね。私も猫に会った気がしないでもありませんが───老いて死ぬことが出来るようになった今、その姿ももう思い出せません」
「うわ……やっぱ忘れるっちゅーことなんかなぁ」

 敵意剥き出しで俺の手を払い、振り向いた彼女が、その勢いの分以上に硬直した。
 そんな彼女に挨拶をすると、横から物凄い勢いで鈴々がすっ飛んできて、脇腹にタックルをかましてくれた。

「それもまた、一種の“狸に化かされた状況”に似ているのでしょう。それこそ夢ですね。夢の中で道に迷ったら、猫を探してみるのもいいかもしれません。なにか面白い胡蝶の夢でも見られるかもしれませんよ」
「“俺が主役の夢”を見せてくれる猫やったら、喜んでついてくんやけどなぁ」
「主人公が一番最初に死ぬ物語ですか。なるほど、続きが気になりますね」
「なんで俺いきなり死んどんの!? べつに死なんくてもええやろ!? え!? ダメなん!?」
「嫌な夢ならまた猫を探してみるといいでしょう。やさしい猫なら、夢を見続けるよりも目覚ましになってくれるかもしれませんよ」
「目ぇ覚ましたら、実は俺はモッテモテのナイスガイやった、っちゅーオチは……」
「あなたが今胡蝶だとするなら、現実は恐らく……」
「《ごくり……》お、おそらく……?」
「マンモスマンですね」
「だから違ぇえっつーとるやろぉお!!? 祐は名前であってビッグタスクドリルとかとは全く関係ないの解って!? ちゅーかマンモスマン知っとるん!?」
「ちょっとちょっとお二人さん? 感動の再会の瞬間なのになぁ〜〜にマンモスマンのこと熱く語り合っちゃってるのよん!」
「俺別に好きでマンモスマン語っとんのとちゃうんですけど!?」

 及川の叫びが耳に届いたのか、いろいろなところから見知った顔が現れる。
 いったい何処からここまで辿り着いたのか、みんながみんな疲れた顔をして、でも……俺の顔を見るや、笑ってくれたから。
 俺ももう、“今に辿り着くために存在した過去がどんなものなのか”、なんて考えることなく、辻褄と一緒に攻撃特化の氣にゆっくりと混じってくる守りの氣に安心を抱きながら、おかえりを届けた。
 状況に混乱しながらもただいまを唱え、それはそれとして腹が減ったから何か食わせてくれという大剣様に、耐え切れずに腹を抱えて笑いつつも……怒り顔のたい焼き屋のおやじにお金を払い、食べられるだけ食べさせてもらって。

「あ、あの。ご主人様……? だよね?」
「別人に見えるか?」

 どこか不安そうに訊ねてくるのは桃香。
 傍に寄ってきて、たい焼きを頬張りつつもスンスンと匂いを嗅いでくるのは恋。
 そして……何故か、気配を殺しつつもずぅっと俺の後ろで俺の道着の袖をちょんと摘んだまま俯いてらっしゃるのが……思春さん。

「だ、だって……私たち、死んじゃって。ご主人様、すごく泣いて……それで。なのに」
「あ……やっぱり死んだことも覚えてるのか」

 言った途端に服を引っ張られた。そして何事なのか、振り向いた先で……あろうことか、思春が俺の頭を胸に抱き、頭を撫でてきた。

「へっ!? し、思春っ!? ちょ、なにをっ」
「ずっとずっと、今際の際の、お前の泣き顔が頭から離れなかった……。安心しろ、北郷。もう、お前をあんな顔で泣かせはしない……」
「《なでなで》い、いや……あの、思春……? いい歳した精神ジジイに頭撫ではちょっと……!」
「どういうことなの一刀! 思春の前では泣いたって! わ、私の時は無理に作った笑顔で笑っていたでしょう!?」
「いやちょっと待とう蓮華さん! あの時はそのっ……! “笑顔でいた方が安心して眠れるんじゃないか”って無理矢理笑顔作ってたのが、丁度辛くなってきたところで……! ていうか口の端にあんこが」
「!?《グボッ!》しっ……仕方ないでしょう!? お腹が空いていたのよ!! 死んだと思ったら急に右も左も解らないところに落ちるし! 記憶も子供の頃から臨終の時までのものが一気に溢れ出したみたいにごちゃまぜになっているし……! そんな時に妙な連中が近づいてきたものだから、明命に頼んで気絶させたまではよかったのだけど……結局その場所が何処かも解らない状況で……! たまたま見つけた立て札が、一刀が教えてくれた日本語だったから、ここは天に違いないって思って、それで……!」
「……ええそう。それで、“フランチェスカ”を探せばあなたも見つかると、そう思ったのよ」
「……華琳」

 はぁ、と息を吐く仕草が……どこか芝居掛かっているように見えた。
 そんな様子のままに状況を説明してくれるが……どうやら少し前から日本には落ちていたらしい。
 けれど頼る当てなどあるわけもなく、知っている場所もない。
 まさに最初の頃の俺である。
 そんな時、通行人がフランチェスカの名前を口にしているのを偶然耳にして、数十人で通行人を囲んで話を聞き出したとか……。その人、泣いてなきゃいいな。
 なんとなく気になって、“名前を訊いたりしなかったのか”と訊ねてみると「オリトとか言ってたのだ!」聞かなかったことにしよう。

「しかし、臨終の際に別れは済ませたというのに、またこうして顔を合わせるのは恥ずかしいものじゃのう」
「ええ、本当に……」
「というかお館様? 何故我らはまた妙に若くなっておるのだろうか。いや、幼少の頃から臨終の頃までを一気に“叩き込まれた”ような感覚なのですが、どうも違和感があるのだ。見るに、他の者とそう歳も変わらんようだ」
「いや、なんとなく。いつか酔った勢いで言ってたことがあっただろ? 歳若い頃に出会い、恋をして子を生してみたかった〜みたいなこと。記憶のことに関しては……えっと……いろいろありましたとしか言いようがないんだけど、姿に関しては一応気を利かせたつもり」
「いいや、実に良い! なるほどなるほど! お館様は懲りず、我らと子を生したいと!」
「しかし、むう。この若さか。……こんな年の瀬となると、あれか? 北郷に初めてを……」
「恋をして、初めてを捧げ、子を……。生まれる子は璃々ではないけれど、どちらも我が子であることに変わりはありませんね。よろしくお願いします、ご主人様」
「ちょっと待ったなんでいろいろすっ飛ばして子作りの話に!? 恋の段階無視!?」
「主様、今さらであろ?」
「……この世界でも認識は種馬ってこと……?」

 泣くぞコノヤロウ。
 悪態を吐くも、顔は笑いっぱなしだ。
 だって、確かに……臨終の際に別れを口に告げたのに、こうして顔を合わせられるのは恥ずかしい。
 華琳なんて、特にだ。
 彼女の芝居掛かった行動や言動も、多分そんなところから来ているもので……───でも、心を掴んで離さない思いは、今、確かに胸の中に溢れている。

  私は、過去形になんて───

 ……その通りだった。
 自分が消える時、過去形にしてしまったことをひどく後悔した。
 愛していた、じゃない。愛しているのだ。
 それはずっと、それこそ……天に戻り、魏に召喚されて、全員を見送ってもまだ好きでいられたほどに。
 過去形になんてしなければよかった。する意味もなかったのに。

「しっかしよくもまぁ〜〜あぁあこれだけ来られたものねん。しかもそんな大胆な格好でぇ」
「いや、お主に言われたくはないぞ、貂蝉」
「あらんっ!? 星ちゃんったら私のこと覚えてるのぉん!?」
「覚えているというか……記憶が妙に混ざっている感覚だ。主と敵対した記憶もあれば、主と天下を手にした記憶もある、と言えばいいのか」
「外史統一の影響ねん。それもじきに辻褄と一緒に馴染むと思うわぁん。私たちみたいな“例外”は別としてぇもぉぅ、星ちゃんたちは外史の数だけ存在したんだもぉお〜にょん」
「む……よくは解らないが、今はいい。今は主との再会を素直に喜ぼう。……しかし、やれやれ。子供な自分と老人な自分が混ざったような、妙な気分だ。少女のように燥ぎたくもあれば、大人のようにどんと構えていたくもある」
「そんな格好で居る間くらい、少女の感情に任せちゃってもいいんじゃなぁ〜〜ぃい?」
「……ふむ。それもそうか。では主! ───早速この世界のメンマの頂点を知りたいのですが!」
「やっぱりメンマなのか!?」

 そんな格好、といってもかつての普段着だ。もちろん若い頃の。
 だから露出が多い。特に呉勢。
 ふんどしもある。主に呉勢。
 そりゃ、ニタニタ顔の男ばっかり寄ってくるでしょうよ。
 むしろごめんなさい。服装のこととか特に考えてなかった。
 “映像の中のみんな”を思い描いたからこんな事態に……。
 ああもう、最後まで締まらない。

「か、一刀」
「え……な、なんだ?」

 華琳に声をかけられ、どもりつつ返す。
 視線が交差すると、やっぱり恥ずかしい。
 遺言みたいなものを伝えておいて、実は死にませんでした、なんてオチがついた時のようだ。
 それでも我らが覇王様は、しっかりと俺に訊ねてきた。

「一刀。天では身分を証明するものが不可欠だと、授業で言っていたことがあったわね?」
「え? あ、ああ、そうだな。そういえばそうだった」

 そうだ。嬉しさで忘れてたけど、やっぱり身分証明は必要なのだ。
 どうするか、なんて考えてると、貂蝉が“それだったらご安心”としなを作りつつ教えてくれる。

「みんなの戸籍ならも〜〜〜〜う用意する目処はついちゃってあったりしちゃうのよねんっ」
「それは言葉として正しいのか? ていうかいつの間に!? どうやって!?」
「ええまあ、行くべき場所へ行って、少々人物全員の洗脳を」
「なにやろうとしてんのちょっとォオオオオーーーーーーーッ!!!!」

 洗脳!? 役所の方々を!? って銅鏡をもらった時に言ってたこと、本気でやるつもりだったのか!? やったほうがいいとは思ったけど、脅迫とかそっち方面は勘弁だぞ本当に!
 そりゃ確かにそれが一番手っ取り早いんだろうけど、いろいろ問題起きません!? 洗脳されていろいろ勝手にやった人がクビになったりとかさぁ!

「ほう? なら貴様に手があるとでも言うのか北郷一刀」
「い、いやっ……そりゃ無いけど……」

 再会出来た途端に犯罪犯しに行きなさいイイマスカ。おおあなたひどい人。

「洗脳以前に女何十人も孕ませといて今さら何言うとんねやかずピー。あっちならまだしも、ここでは重婚は犯罪やで?」
「うぐっ!? そ、それは……」
「あぁ、そういえばそんなことを言っていたわね。それじゃあ一刀」
「あー……な、なんでせう華琳さん。なんだか俺、と〜〜っても嫌な予感が」
「まずはこの国に一夫多妻制度を作るわよ。もちろん見境無しに重婚されても困るでしょうから、きちんと養えることと愛していける事が前提ね」
「いやいやいや待ってくれ! ていうかほんとどの世界でも俺って、扱いも状況も変わらないなぁもう!」
「……ご主人様。その割りに随分と顔が緩んでいるようですが?」
「愛紗さんそこはツッコまないで!?」
「ちょっと華琳、それってつまりどういうことよ」
「あら。言わなきゃ解らないあなたではないでしょう? 雪蓮。つまりこの国の王を一刀にしてしまえば───」
「普通に学生で居させて!? お願いだから!!」
「学生結婚てだけで珍しいのに、その上重婚やなんて初耳やでかずピー! そっ……そこまでの覚悟やったんか……!《ごくり》」
「ごくりじゃなくて!! だぁああっ! いいからまず人の話を聞く努力をしてくれぇえええっ!!!」

 求めてやまないものがあったとする。
 大体の場合、手に入れてみればこんなものだったのかと落ち込むことの方が多い。
 期待が実物を凌駕するなんてこと、よくあることだ。
 じゃあ俺自身に俺が問題を出そう。
 俺が立っている今は、期待していた未来よりもつまらないものだろうか。
 ……そんなの、頬が緩んでしまっていることが答えでいいんだろう。

「あ、そんで時間の話なんやけどな、于吉さんや」
「あなたも大概気安いというか馴れ馴れしいというか」
「馴れ馴れしいだろう」
「あぁん左慈っちゃん厳しい! でも聞く姿勢は取ってくれるあたり、二人ともやさしいなー♪ ……しゃあけどかずピーの親友の位置は俺のモンやさかい、ポっと出の男友達がしゃしゃり出るんやないでコラ」
「おい貴様。頭を蹴っていいか。安心しろ、痛みを感じる余裕無く仕留める」
「えろうすんませんでしたぁあ! 殺さんといてぇえ!! ───で、質問なんやけどな?」
「許すとも言わないうちに謝罪を取り下げるな貴様!」
「や、どー見たって誰が相手でも許すよーに見えんし、なら許しを得るより話、進めよ思ぉてな?」
「……ちぃっ……で、なんだ。質問? なにについてだ」
「や、そんな大したもんやあらへんねやけど。まずはこれやな。みんなのこと御遣いとして呼んでもーて、寿命とか平気なん?」
「あれはねん? 居るべき世界が違うからァ、起きたことなのよん。世界が一つになった今ァ、今の私たちと同じくゥ、もう普通に歳をとってゆくことになるわん。《ンバッ!》ほら見てん!? 以前会った時よりちょぉ〜〜〜っぴりだけ髪の毛が伸びたのよん! ぬふんっ♪《ヴァチーム!》」
「あ……ハイ、解ったからウィンクで突風吹かすのやめたってください……。あ、ほなら次の質問やけど……ほら、あそこでもう“えびす顔”に近いかずピーはまあほっといて、深いトコ聞いとこかなって」
「及川ちゃんはァ、な〜かなか遠慮なく入り込んでくるわねぃ」
「遠慮してなにがあるわけでもあらへんねやろ? せやったらズイズイと入り込んでいかんとなー。で、やけど」

 及川が俺を指差して何かを言っている。
 が、そんな少しの気の逸らしも許さんとばかりに、私を見ろとみんなが俺を引っ張る。
 いやあの、みんな? 最後を看取った瞬間の寂しさとか悲しさとか、なんかいろいろなものが吹き飛ぶから、もう少しやさしくしてくれると嬉しいなぁ。
 外史統一の影響でいろいろな外史の記憶とかも影響してるんだろうけど───……あれ? それってつまり、今さらだけど……俺が桃香のところに降りた外史や、雪蓮か蓮華のところに降りた外史も混ざってるわけで……そこでも恋仲になっていたんだとしたら、みんなの好きとかって感情倍化したり……とか?
 や、そりゃさ、“御遣いの氣”が満ちていくにつれ、俺にもいろんな外史の記憶が染みこんできてるよ? 左慈と違って俺は銅鏡のカケラの数だけ“登場人物”になった結果がある所為か、記憶もそれだけ混同してくるのも解る。解るけど……あぁあああ好きって感情とか大事にしたいって感情がごちゃまぜに! こんなのがみんなの中でも渦巻いてるなら、そりゃじっとしてられないよ!

(───)

 けど。
 “老後や臨終まで”を覚えているのは、俺が知っている外史だけだった。
 他の外史での記憶は途中で完全に消えている。
 恐らくこれが、“終端に辿り着いた外史”の結果なのだろう。
 “めでたしめでたし”で、童話が終わるみたいに……普通なら続く世界も、そこで途切れてしまったんだな───って、あの!? 今真面目に思考を纏めてるんだから、みんな引っ張るのやめて!?
 ていうかみんな腕力とか上がってない? 確実に上がってるよね!?
 どうし───て、って御遣いの氣の影響か!? 御遣いとして呼んだから!?
 ちょ、ちょっと待ってくれ! さすがにそれは想定外っていうかっ! 会えることばかりを夢見てて、そっちまで考える余裕がなかったっていうか!

「……。なるほど、どういった過去がこの軸へ繋げてくれたか、ですか」
「かずピーは、自分自身が願ったんだから〜とかゆーてるけど、そういうのって基準とかあったりするんかなーって。や、そら前例がないのは解っとんねんけどな? 結局かずピー、過去で娘さんたち守ってやれへんかったの、めっちゃ気にしてるみたいやから……まあ、なぁ」
「ふふふっ……なるほど、影ながら友人を支える姿。いいものです。その素晴らしき動機に免じて基準のひとつでも聞かせましょうか」
「あらあら于吉ちゃんとぅぁるぁ、め〜ずらしく気前がい〜じゃなぁい? いつもは左慈ちゃんのことばっかりで、他のことになんて目がいかないのにねぃ?」
「……見ていて気持ちの良い、裏表のない友情。そういったものを真っ直ぐに見せられては、邪険にする理由もありません」
「うぅ〜〜ん、愛ねん!」
「ええ、愛でしょう」
「なんか熱ぅなっとるとこ悪いんやけど別に俺とかずピー、アハンな関係やのぉて───」
「いいの、解ってる、ぜぇ〜〜んぶ解ってるわよ及川ちゃァん……!」
「最初は誰もが恥ずかしがるものです。さあ、説明を続けましょう」
「あれぇ!? なんや俺勝手に怪しい道にいざなわれとらん!? さ、左慈っちゃん!? 左慈っちゃんはちゃうよね!? ソッチの道やないやろ!?」
「貴様今度俺をそういった目で見たら殺すぞ……!!」
「あぁんどっちにしろひどい目にぃい! 助けてかずピー!」

 むしろこっちが助けてもらいたっ……痛ッ! 痛い痛い引っ張るな引っ張る……ギャアーーーッ!! ちちち千切れるぅ! 大岡越前たすけてぇええ!!

「……そうですねぇ。銅鏡は、より強い願いや想いに誘われるものです。それは人の想いにも似たものと言えるでしょう」
「え……人の? せやろか」
「及川ちゃん。あなたも、ものすご〜く一生懸命に何かを叶えようとしてるコが居たら、応援したくなったりしなぁ〜ぃ?」
「べっぴんさんならそらぁもう! ……あ、でも、見てて辛くなるくらい頑張っとるんなら、相手が男でも……まあ、そらぁなぁ」
「でしょん? つまり、そういうことなのよん」
「私も、左慈の歪んだ真っ直ぐさと、からかえばすぐに意地になるところがとてもとても好きでしてね。そんな彼の行く末を見届けるのが、私流の応援ということで」
「貴様はただ楽しんでいるだけだろう!!」
「ええもちろんです。夢も見れて同時に楽しめる。これ以上の幸福などないでしょう」
「っはー……想いにもいろいろあんねんなぁ。あ、ほなら過去に宛がわれた強い願いや想いってなんなんやろな?」
「それは……今となっては私たちにも解りませんね」
「方術や道術は使えても、もう過去や未来を覗く術は使えないからねぃ。外史が束ねられた今、猫ちゃんのように時間に干渉する、なんてことが出来なくなっちゃったのよん」

 みんなちょっと落ち着いて!? 一息入れよう!?
 むしろもう食べるのやめて!? たい焼き屋のおっちゃん作業が追いつかなくてて泣いてるから! ……追いつかないからって急かすのやめてあげて春蘭! 桂花さん!? 焼く速度に男であることは関係ないから罵らないの!
 あぁああ恋! 鈴々! 二人して生地とか餡子に手を出そうとしない!
 さすがにそこまで財布は豊かじゃっ……いやぁあああそろそろ食べること自体やめてぇええ!! 俺こっちじゃただの学生で、あっちほど金があるわけじゃぁああーーーーっ!!

「ただねん? 力強い想いはァ、今もずぅ〜〜〜っと感じているわぁんっ」
「え? どんなんどんなんっ!? “今もずっと”て、誰それ、不老不死な人なんか!?」
「そういう意味ではありませんよ。そうですね……たとえば───……」
「えぇ〜〜ぇえ、果たしたい約束のためにぃ、先人を敬う者たちがァ、頑張り続けているって……そんな想いかしらねん?」
「頑張り続けてる想い……あぁ、何代も続く想いとかやな? っはぁ〜、なるほどなぁ。想いは死なん〜っちゅうやつやなっ!」
「それがどんな過去で、誰の想いかは、もはや想像するしかないわけですが……」
「想像と創造の世界やし、それ考えるのもそれぞれの自由?」
「ええ。結果はいつか見えるでしょう。それこそ、辻褄が追いついた今あたりにでも───」

 あ、あの。焔耶? ねね? 守ってくれるのはありがたいけど、なんで腕に抱き付いて……え? 生まれ変わったからには遠慮しないってどういう……いやいや星ちょっと待った星! 餡子じゃなくてメンマが具になったたい焼きなんて無いから無茶な注文しない!
 しぇぇええれぇええん!! たい焼き屋で酒なんて注文して出てくるわけないだろっ!? ───祭さん、そこであからさまにショック受けられても困るんだけど……。
 朱里も雛里も、困ってる顔が好きなのは解るけど、“もう二度と見られないと思ってたものを見る事ができた……!”みたいな顔されたってどう反応しろと……!
 華琳さん!? 笑ってないで助けて欲しいんですけど!? いやっ、うん、そりゃね!? 俺が願ったことではあるけどさぁ! ああもうそうだよ! 口ではいろいろ言っても顔は緩みっぱなしだよ! だからって国を乗っ取ろうなんて大それたことする勢いなんて無いからね!? いやっ、行くわよ、じゃなくて!
 ……はあぁ。それでも追わない理由がないんだよなぁ、ちくしょうめぇえ……。


  ───視線の先に、姿勢良く歩く姿。


 つい追いかけたくなる姿に、体中にしがみつかれている人達と視線を交わして、たはっと笑った。
 あの日、みんなで見た覇道っていう夢は終わってしまったのだろうか。
 それともまだ続いているのか。
 途切れてしまったとしても目指せるものが夢ならば、そんな夢をまた、この世界でも。なんて願うのは、贅沢かな。

  振り向いた覇王が、早くなさいと急かす。

 慌てて追う自分たちに苦笑して、また新しい一歩を踏み出す。
 この一歩はどんな先へと続いているだろう。
 少なくとも退屈だけはしない。そんな事実はどこであろうと変わらないだろう。
 どんな変化を望むのかといえば、やることはあっても平凡だった日々へのさようなら? だろうか。

  何処へ行くのかと訊ねると、身分証明を作りにと言う覇王に悲鳴で返す。

 そのあとは俺の家族へ挨拶に向かうと言う。資料館へ、なんて言葉は右から左だ。
 ……ああなるほど、退屈はしてなかったけど、これからは忙しい以上に家族への説明が大変なわけで。
 むしろ俺、じいちゃんに殺されたりしないカナ……。
 そんな俺の呟きも笑って返して、彼女は俺へと手を伸ばした。

  行くわよ、一刀。

 伸ばした手は“紡ぎ”のカタチ。
 誰かと誰かじゃ届かない手も、自分が間に入ることで届くような手になりたいと、いつか自分で願った。
 それを思い出しながら伸ばした手が、伸ばされた手と重なった。

  自分は、そんな手になれただろうか。

 手を取り引っ張る覇王の背中を見て、そんなことを小さく呟いた。
 すると、傍を歩く、なんだかんだでずっと傍に居てくれた朱の彼女が、“そうであったからこそ今があるんだろう”と言ってくれた。
 それだけでひどく嬉しくて、暖かくて。
 やっぱり自然と笑んでしまう状況に、ありがとうを唱えた。
 その途端。




 ───え? あ───、…………ああ。



               …………うん。




 ───ざあ、と風が吹いた時に……懐かしい景色を、頭の中で見た気がする。
 懐かしい氣が氣脈に満ちて、自分の氣と完全に混ざった時にさ。忘れてしまった様々な笑顔を思い出したんだ。
 “ここまで来れたよ”って言葉が喉からこぼれた時、耐え切れずに涙が溢れた。
 記憶の中に広がる懐かしい景色の中で、別れも言えずに眠ってしまったみんなが笑顔で敬礼してくれていた。
 都合のいい記憶の捏造なのかもしれない。
 幸せだけに浸りたいからって、記憶が作り出したずるい光景なのかもしれない。
 ……でも。でもさ。
 その中の一人が、馬鹿みたいな数の桃を抱えて、苦笑いして言ったんだ。

  こんなに食べきれませんよ、隊長。

 って。
 その笑顔が鮮明で、思い出せなくなってしまったことなんて全然恨んでなくて。あまりにも温かかったから……涙は止まらず、溢れ続けた。
 みんなが心配してくれる中で、何度も何度もありがとうを言いながら。
 ……やがて、そんな頭の中の光景が、記憶として薄れてゆくまで。

  ───泣きはしたけど笑いながら、ようやく止まった涙を拭った。

 さて、それじゃあまた、新しい一歩を踏み出そうか。
 きっかけを見つける度に、心に刻むように一歩ずつを。






  ……胡蝶の夢って言葉がある。

 あの世界が本物なのか、この世界が本物なのか。
 それとも、今見ているこの景色こそが全部夢で、産まれた日から今日までの全てが、蝶が見ているものなのか。
 長い長い時間を生きて、人の死も誕生も見届けて、少しは悟った風な考え方が出来るようになっても、目指すものなんて変わらない。歩きたい道だって、あの頃からちっとも変わってやしないのだろう。それこそ、夢であろうと現実であろうと。
 だから、まあ。
 俺達が所詮、夢を見ている蝶なのだとしても───蝶ならば舞おう。
 人であるなら歩いてゆこう。
 それだけの違いだ、生きる事実は変わらない。

「ていうかさ! 身分証を作るにしても、全員この格好で行くのか!?」
「? 当然じゃない」
「あっちではそうでもこっちじゃ当然じゃないからね!? ああもうとりあえず全員家に来てくれ! こっちの服、出来るだけ用意するから!」
『《ピクリ》───家に……』
「ヒィ!? なんか一瞬にして空気が凍った!?」
「おーーーっほっほっほ! ではこのわたくしが! まずは一刀さんのご家族に優雅な挨拶をしてさしあげますわっ!」
「か、家族に挨拶かぁ……。したいけど、その家族にまで“なんだか普通な人ですね”とか言われたらどーしよ……いやいやっ、むしろこの中で、その普通さが気に入られたり……!」
「お嬢様っ? ここは一刀さんのご家族に、私たちを売り込む良い機会ですっ! 上手く気に入られれば、華琳さんを出し抜いて正妻に……!」
「おおっ!? それはなかなかよい考えじゃのっ! でも主様に迷惑がかからんかの……」
「そんなことをいちいち気にしていては正妻の座は手に入れられませんよー? むしろ迷惑をかけるくらいが丁度いいんですっ、はいっ《ピンッ♪》」
「お前はちょっとは人の迷惑っていうのを考えような!?」

 一気に騒がしくなった大所帯。
 みんながみんな、家に行く=ご家族への挨拶と受け取ってしまったようで、騒がしさも一入だ。

「むうっ……天では武を競う催し物が何度も行われていると、いつか北郷が言っていたな……。その武で頂点を取れば……いや、今は武は忘れ、女として……いやしかし武は……いや……武……」
「あっはっは、華雄は相変わらずやなぁ。けど、一刀の家族かぁ。ウチは一刀のじーちゃんに会いたいなぁ」
「応。なにせ北郷の祖父じゃ、いい酒が飲めるじゃろう」
「楽しみよなぁ。ただまあ心配ごとがあるとすれば……この姿で、果たしてお館様の祖父が酒に付き合ってくれるかどうか」
「二人とも? それ以前に、こんな大勢を受け入れてくれるかの問題を忘れているわよ」
「紫苑は固いのぅ。まあ……かっかっか、酔わせてしまえばどうとでもなるじゃろ」
「ねーちぃちゃん。アイドルとして売り出せば、一刀のご両親にも気に入られるかなぁ」
「そりゃもちろんでしょ! 天下に轟く数え役萬☆姉妹の名は伊達じゃないわっ!」
「待って姉さん。一刀さんに聞いた話だと、アイドル活動を嫌う人も居るって……」
「えぇえっ!? そうなの!?《がーーーん!》」

 なんかもう、騒がしさなんて自分の日常を構成するものの一部だ、なんて思ったほうが楽しいんだろうな、なんて奇妙な諦めも走る。
 諦めなのに、顔は笑ってるんだからどうしようもない。

「おおぅ……皆さん必死です……。確かに気に入られるなら第一歩が肝心ですねー……。稟ちゃんはなにか良い策はありますかー?」
「無理に飾らず正攻法で。これに勝るものはないかと」
「ですねー」
「た、隊長の家族に……隊長のご両親にご挨拶……! あ、あわわわわ……!」
「おわー! 沙和!? 沙和ー! 凪が真っ赤になって目ぇ回しとるーーーっ!」
「凪ちゃん!? しっかりするのーーーっ!」
「お、お義父さま! お義母さま! 隊長を……私にください!《どーーーん!》」
「いきなりなに!? ちゅうかウチにそれ言ってどないすんねん!」
「そもそも隊長って言ったって、相手には通じないと思うの……」
「なんだなんだ情けない。挨拶と言っても相手は北郷の親だろう? 気負う必要などあるまいっ」
「それはもちろんだが、姉者。なにか良い挨拶でも思いついたのか?」
「ああっ! 北郷自身が言っていたことだっ! 人心は胃袋で掴む! というわけで私は料理の材料を調達してくる! 金などなくとも、そこらの山で猪でも狩れば問題あるまいっ!《ダッ!》」
「だ、だめだ姉者……料理はだめだ……! 早まるな姉者ぁあああーーーっ!!」

 いろいろと危険な話題が耳に届くも、あくまで服を取りに行く意識を前に出している俺は、嫌な汗を流すだけで顔は笑顔だ。顔は。
 これも日常……だよなぁ。うん、あの世界での日々と大差ない日常だ。

「ねーねーお姉さまー? お姉さまはどんな挨拶するつもりなのー?」
「そりゃお前、こう……なんだっけ? やまぶきいろの菓子? を用意するんだっけ?」
「……お姉さま」
「な、なんだよ蒲公英その目は!! か、菓子を用意して挨拶するんだろ!? そうだったよな!?」
「馬超。山吹色の菓子、というのは北郷から得た知識によると、賄賂の意味に近いぞ。相手に金を渡して秘密を守ってもらうのに使う、と授業で聞いた記憶がある」
「うえぇっ!? そそそそうなのか!? そうだったっけ!?」
「そういうこーきんさんは、挨拶とかは考えてるの?」
「郭嘉と変わらん。こういう時に策を弄してもいい結果は得られんさ」
「うー……愛紗ちゃんはいいよねー、真っ黒い髪だし、ご主人様が言ってた“やまとなでしこー”とかいう雰囲気だよきっと……」
「と、桃香さま、私はべつに……」
「と言いつつ、先ほどから髪をいじっているなぁ愛紗よ」
「うぐっ!?」
「愛紗ちゃん……」
「い、いえ桃香さま! これに深い意味は! ───星っ! 妙な言いがかりはっ!」
「あら。うちの冥琳だって綺麗な黒髪よー? ちょっと肌黒いけど」
「雪蓮はどんな挨拶をするのだー?」
「酒呑みにとって、お酒に勝る言葉はないわよ。交わせば解るわ」
「あのー……雪蓮さまぁ? もし一刀さんのお義父さま方が下戸だったら、どうするんですかぁ?」
「え? 知らない」
「はぁ……姉さま、あなたという人は……」
「そうやって溜め息ついてるお姉ちゃんはどうなの? あ、もちろんシャオは大人の余裕でばっちり挨拶するつもりだけどー♪」
「私も普通にするわ。一刀の家族だもの、妙に緊張するのは相手にとっても嬉しくないわ」
「へー、立派になったわねー蓮華も。これで、言葉の割りに視線がうろうろしてなきゃよかったのにねー」
「ねっ、姉さまっ!!」

 騒がしさに当てられたのか、左慈が片目を隠すような手の当て方で頭を抱え、于吉がくすりと笑う。
 これも、昨日の敵はなんとやらってことでいいんだろうか。
 まさか彼らのこんな姿が見られるとは。なんだかそれも嬉しい。

「うへー……挨拶とかって苦手だぜー……。なぁきょっちー、きょっちーはどんなこと言うんだー?」
「ボクは難しいこととか苦手だから、普通にするだけかなぁ。流琉は料理で攻めるの?」
「あのねぇ季衣、挨拶しに行って図々しくもいきなり厨房借りられるわけないでしょ……」
「あぅ……そうでした……」
「斗詩は料理で行く気だったのかー。あー、あたいやっぱりこういうの苦手だー!」
「挨拶……かぁ。な、なぁねね。アタシたちもなにか考えるべきか?」
「むしろどっしり構えるのですよ、焔耶。せっかく生まれ変わったと言ってもいいくらいの状況が整ったのです。経験を生かし、友として知った北郷一刀の在りのままを受け入れる姿勢で向かえば、障害などはそもそもあってないようなものです。恋殿を見るがいいのです。このどっしりとした構え。恐怖のかけらもないのです」
「ご主人様の親……ご主人様の……。気に入られなきゃ……捨てられる……? ……、……! ……!《ガタタタタタ》」
「……なんか、アタシの目にはもの凄い勢いで動揺してるように見えるんだが」
「恋殿!? しっかりしてくだされ恋殿ぉおーーーーっ!!」

 もう、この空の蒼もあの頃の空と繋がっただろうか。
 ただ平凡に生きていた頃よりも人の感情の傍に立てた、あの頃の空と。

「あちこち建物だらけなのにゃ! もっと森が欲しいのにゃ! じゃないとみぃの心は満たされないのにゃー!」
「だいおーさま! 口のまわりが“あんこ”でいっぱいなのにゃ!」
「うぐっ!? お、おなかは満たされたのにゃ!? こっ……これは心の問題だから関係ないのにゃ!?」
「美衣ちゃんはお腹がいっぱいになっても心は満たされないの? 食べた後に眠ってる美衣ちゃん、幸せそうだけどなー」
「はう!? り、璃々はいじわるにゃ! そりゃみぃはお昼寝は好きだけど、それとこれとは話が別にゃ!」
「はああぁぁぁぅぅ〜〜〜ん……! お猫様最高で……ハッ!? ち、違います違います、美衣さんはお猫様ではなくて“しんゆー”で《きゅるるぅ》はうっ!?」
「自分の分まで“たい焼き”をあげる必要はないだろう……食え。半分だ」
「うぅ、ごめんなさい思春殿……」
「思春も随分と世話焼きになったのお……以前までならば権殿が相手ならばまだ解ったが。……ふむ。思春よ、北郷の家族への挨拶、お主ならばどう出る」
「!?《グボッ!》い、いえ、挨拶など、私は」
「なんじゃつまらん。もう北郷に寂しい顔はさせぬのではなかったのか?」
「!《ハッ!》……だ、大丈夫だ北郷、私に任せろ。全て上手くいく。……お前は安心して待っていればいい《にこり》」
「なんかもういろいろツッコミたいけどとりあえず立場逆じゃないかなぁこれ」
「性別が逆なら感動モンやったりするんかなぁコレ……男らしいわー、(ねー)ちんめっちゃ男らしいわー」

 繋がっているのなら、過去の歴史を紐解いて、その生き様を見てみたい。
 自分が知っている歴史がそこにあったなら、ただただ胸を張って誇ろう。
 そこで生きた人々は、必死に、今日を生きていたんだと。

「“たいやき”……焼きもので餡子を包む……この手法、ごま団子に通ずるものが……? あ、油で揚げるのではなくて、あえて焼いてみるごま団子……《ごくり》」
「亞莎、お前は落ち着け」
「はうっ!?《ビクゥッ!》ごごごごめんなさっ…………!」
「亞莎さん! 餡子を作ったお菓子なら私と雛里ちゃんも出来ますから、力になれると思いますっ! ……《ハッ!?》か、噛まずに言えましゅた! ……はわっ!?《がーーーん!》」
「しゅ、朱里ちゃん、落ち着いて……!」
「……頭の回転は速いだろうに、どうしていっつも噛むのかしら。蜀の軍師って解らないわ。私なら、華琳様を思えばどんなに長い言葉も早口言葉も語り尽くせるわ」
「おー! せやったらこれゆーてみてー!? “孟徳さまが早々に猛特訓を冒涜した猛毒どもを葬送した”! ハイ!」
「ひぃ男!? 近寄るんじゃないわよなんで私があんたなんかの願い通りに動かなきゃいけないのよそこで白骨化して黙りなさいよ瞬時に!」
「なんで白骨化に対してみんな瞬時にこだわるん!? てかほんまに早口すごいわ! 早口暴言凄まじい!」

 ……かつて、戦いがあった。
 正史をなぞった、けれど少し違う不思議な戦。
 物語が願われて、物語が始まって、物語を歩いて、終わりを迎えて。
 その先になにが待っているのかは、辿り着いてみなければ解らない。一歩先さえ解らない道なのだ、果てに待つもののことなんて解るわけがない。
 解らないのは怖いことだ。
 それでも進む理由はなにかと訊かれれば、自分はなんと答えるだろう。

「なぁ華佗。あっちの白い髪と髭の筋肉って誰? いつの間にか混ざってて、華佗と俺のことをじーっと見てるけど」
「卑弥呼だ。貂蝉の知り合いだ」
「───」
「一刀。“やっぱり”って言葉を顔に貼り付けたみたいな表情になっているわよ」
「うん。華琳、平気って顔をしつつも俺の腕を折るくらいに抱き締めるのはやめてください。あと滅茶苦茶震えてる。誤魔化しがきかないくらい震えてるから」
「……一刀。あなた、私たちのことを守ってくれると、そう言ったわよね? ま、ままままずはあの、じりじりとにじり寄ってくる筋肉二人から私を守りなさい!」
「ちょっと待てぇええっ!! さすがにそれはないだろ!? もっと別の機会に聞きたかったよその言葉!!」
「守れだなんて失礼しちゃうわねぇん! 別になにもしたりはしなぁ〜〜いわよぉぅ!」
「曹操よ! うぬもメノコであるならば、この迸る漢女の波動を感じるであろう! 女とは己のものだけでなく、相手の乙女心をも解ってこそ真の漢女! それで覇王を名乗るなぞまだまだ真の乙女とは呼べ───」
「いやぁあああああっ!!! 一刀っ! 一刀ぉっ!」
「だわぁあっだっ!? 人の影に隠れるなっ……って押すな押す───えぇっ!? なにこの可愛い反応!」
「ぬっ! こやつめ、やりおるわ! 我らの接近をダシに、オノコに抱き付き甘える機会を合法的に作りおった!」
「あぁ〜〜らぁん! 曹操ちゃんてばやるじゃなぁ〜〜ぁい!? これは私たちもぉぅ、ウカウカなんてしてられなぁ〜いわねぇい!」
「どう見ても本気で嫌がってるだけだろ!」

 答えるべき言葉は……今はまだ無い。
 この世界で、自分の命の許す限りの果てに辿り着いたら、その時にでも見つかるんじゃないかな。
 なんのために生きてたんだろうって振り返って、思い出に浸って、ようやくそれまでの自分に気づける。そんな人生で、その時にこそ満足して笑える自分で居たいって思うのだ。
 あの時は一緒に歳を取ることもできなかったけど、今度は一緒に、笑顔で眠りたい。

「とにかく華琳が怯えるからそっちに居てくれ。ほんと、悪いとは思うけど」
「むう。好みのオノコに頼まれては嫌とは言えぬが漢女心。うぬもなかなかに漢女泣かせよ」
「そりゃぁ〜〜そうよぅ卑弥呼っとぅぁらん! ご主人様は今や、様々な外史で様々な曹操ちゃんたちを虜にしてきた百戦錬磨のツワモノなんだからん! 経験だけで言えば、私たちよりも強者である可能性だってぇ、あぁ〜るかもしれないのよぉん!?」
「ぬうそうか! この卑弥呼一生の不覚! 道理でこの私の胸も、だぁりんの前だというのに早鐘を打っていると思ったわ!」
「華佗、助けてくれ。この人達が話を聞いてくれないんだ」
「あ、ああ。二人は俺の知り合いだ、俺が話をつけておく」
「助かる……いやほんと、助かる……」

 老いて、眠る時が来た時、自分はいったいなにを思って眠るのだろう。
 ふと、そんなことを考えた。
 誰かを思って眠る? それとも過去を振り返るだけ振り返って、懐かしんで眠る?
 考えてみても、やっぱり特には思い浮かばない。
 ただ、“これだけは”と思うものは確かにあった。

  どうか、自分を先に眠りにつかせてほしい。

 ……大切な人を、何度も見送ってきたのだから。
 それだけは約束された先で、眠りたいと……そう思うのだ。
 だからまあ、それまでは思う様に生きよう。
 “地”から続くこの“天”で、命尽きるまで。

「女性というのは元気ですね。挨拶挨拶と言っていますが、あなたたちは自分達が認められるとでも?」
「……? 急になによアンタ」
「え、詠ちゃんっ、喧嘩腰はだめだよっ……!」
「いえ、べつに構いませんよ。一応、あなたたちよりも世界というものを知っている私から、ひとつ質問をさせてもらいます」
「だから、なによ」
「詠ちゃんっ」
「……この世界でろくに職も持たぬ者が、相手に簡単に認められるとでも?」
『───!《びしり》』
「あぁそれとも学生で通すのでしょうか。ええ、確かに見た目は学生のそれですね。皆お若い。ですが学生と口にして、果たしてそれだけの学が、常識が、あなたがたにありますかね」
「う、うー、うー……! か、華佗のおじさんは医者なのだ!《どーーーん!》」
「いや、俺はべつに北郷の親に認めらようとする意味がないんだが。───ハッ! そうだ、この姿なら言える! 俺はおじさんではない!」
「ていうか、華佗がこの世界で医者になったら、もうゴッドハンドレベルだろ。治せない病気がないぞ?」
「───一刀」
「へ? な、なに? 華琳」
「仕事を紹介なさい。お義父───ごほんっ! ご家族への挨拶はそれからよ」
「紹介って……あれ? 今華琳、お義父さんって」
「お黙りなさい!」
「ごめんなさいっ!?」

 ───天命は“我ら”にあり。
 さあ、共に舞おうではないか。
 夢幻を飛ぶ蝶としてでもいい、ここから始まる覇道の中を。
 いつまでも、みんなで。



「あれ? そーいやかずピー、なんで子桓ちゃん達おらへんの?」

「え? いや、フランチェスカ探すために別行動とってるとかじゃないのか?」

「……いえ、ご主人様……。この世界に下りた中に、平……娘達は居ませんでした」

「璃々は居るのに、妙な話よの」

「ハッ!? まさかかずピー、娘がおったら安心して子作りが出来んからって、意識的に除外を───!」

「そんなわけあるかぁっ!!」

「でゅふふ、きっと大丈夫よん。“役目”を果たせばァ、きっとひょっこり現れるわん」

「もしくは“産まれる”でしょうか」

「貴様らが思うよりも、人の絆とやらは強いということだろう。……北郷一刀」

「え? な、なんだ?」

「出来るだけ早く“行ってやれ”。果たされなければ眠りにつけない想いというものもある」

『…………』

「熱はないっ! いちいち額に触るな貴様らっ!!」


───……


……。






───/───

 ……白みかけた空を眺めた。
 荒れる息はようやく整い、生きている今にとりあえずは安堵する。

「氣が残っている者は負傷者の手当てに当たれ! それ以外の動ける者は白装束の残りが居ないかを警戒せよ!」

 夜通し続いた争いは、こちらの勝利でなんとか幕を閉じた。
 呆れるほどに生まれ続ける敵を、それこそ全国力で潰しにかかるような、ひどい乱戦だった。
 相手には戦法なんてものはなく、ただただ殺しにかかるという厄介な存在。
 痛みも感じないのか、怯むことさえなく、怯ませてから繋げる技法などがそもそも通じなかった。

「丕姉さま」
「禅か。死者数は?」
「重傷者は居ますが、なんとか」
「……そうか。よかった」
「……はい。氣や戦い方を教わっていなかったらと思うと、眩暈がしますよ。民であった者たちも兵であった人達も、皆が学んでくれたからこそ得られた勝利です」
「ああ。そうでなければ今頃……」
「………」

 血を流す者は沢山。
 それを癒し、生かす者も沢山。
 その技術が無ければ死んでいたものが大半であり、それを思えば先人には感謝以外のなにも浮かばない。

「……ふふっ、見ろ、禅。武や氣を学びつつもどこか腑抜けていた者たちが、生きていることを噛み締めている」
「無理もありませんよ。実際に戦うなんてことにならなければ、学んできたことなんて何処で活かせばいいのかも解らなかったのです。気の長い結果にはなりましたが……学んだからこそ生きています」
「ああ。その通りだ」

 夜が完全に明けてゆく。
 自分の体についた赤は、返り血などではなく全部自分や味方のものだ。
 敵は切り捨てれば煙のように消える。
 傍で味方が斬られるたびにその血を浴び、下がって癒せと命令しては敵を斬った。
 経験が少ないという事実は、随分とこちらの寿命を減らしてくれたと思う。
 なるほど、こんな経験をしてしまっては、戦なんて馬鹿げたものだと心底頷ける。
 それは、ここに居る皆の総意だろう。
 が、逆にそんな経験は未来に繋がる。
 平和に呆けた時にやってくる脅威ほど恐ろしいものはないのだ。
 父の教えに従い、続けてきたことは無駄ではなかった。
 それが嬉しい。生きていられることが嬉しい。
 嬉しいが……

「……父さまは、もう行かれたのだな」
「そのようです」
「1800年後か。父さまがその時代から来た、という話は聞いていたが、約束のことをお前から聞かされた時は驚いたものだ。……また、気の長い約束だな」
「ええ。けれど、きっと届かせましょう。そして───」
「ああ。帰ってくるのを待つとしよう。母さまの時にも帰ってきたというのだ、きっとまた帰ってきてくれる。それが1800年後だというのなら、それまでに国を育て、うんと豊かになったこの大陸に驚いてもらおう」
「はい。では、まずはそのために」
「とりあえずは皆の治療だな。それから、今日の恐怖をのちの世にも伝えてゆこう」
「はい。……ああえっと、それとは別に柄姉さまの提案なのですが、大陸の名を“北郷”に───」
「却下だ。それは父さまから厳重に言われている。“それだけはやめてくれ”と」
「根回しは完了済みですか。さすがは“ととさま”」
「その呼び方も懐かしいな」

 父さまはもう居ない。
 居ないのなら、先へ届けよう。
 私たちの頑張った証が、その目に、耳に届くように。
 それが私たちの進む理由であり、父さまとの確かな約束だから。

「さて、では行こうか。───未来で、父さまが待っている」
「はい。命果てても、想いこそは、いつまでも」

 黒から白へ、やがて蒼に変わる空の下───こんな歳になってからの私たちの突端は、始まりを告げた。
 私達に残された時間はそう長いものではないし、終端なんてあっさりと迎えてしまうのだろうが……自分達が遺す何かが、遠い未来へ届くよう、死する瞬間まで頑張ろう。
 向かう先が“天”という未来なら、私たちはこの“地”から歩いてゆく。
 きっと届くよう、胸に覚悟を叩き込んで。

「覚悟完了、か。ふふっ……生まれ変われたら、意志が娘でも婚儀は可能だろうか」
「まだ諦めてなかったのですか!?」

 そしていつか、果ての未来に想いが届いたなら……たくさんたくさん唱えよう。
 ───帰ってきてくれた父へと、“おかえりなさい”と。
 何度でも、何度でも。






                     真・恋姫†無双 魏伝アフター / 了




 お疲れ様でした。  そして結局3月中には間に合いませんでした。  平均二万文字……と思ってたのに気づけば3万。  書いている途中で書きたい事がわんさか増えて、誤字チェック中に書きたいことがわんさか増えて、その見直し中に誤字を発見して、修正中に書きたいことがわんさか……終わらないループ。  気づけば4万7千……結局“なろう”の文字制限を越えてしまい、3話目を二話に分けました。  それでも一応終わらせることが出来ましたから。ええ。  このあと北郷宅に突撃して、女性の皆様が挨拶を……なんてイベントが、脳内で賑やかに行われております。  当然おじいさま激怒。  二股どころの騒ぎではござんせんし。  あとは、海を渡って大陸へと帰った場所で、盛大に歓迎されるかずピーとか。  ……いえ、大陸の名前が北郷になっているなんてことは……な、無いと思うヨ?  では、終了の余韻があるかは別として、いつも通りネタ曝しといきましょう。  今回のネタ曝しは三話分纏めてあります。 *ボールを投げて自分で打つ  この部分を書いている途中、たまたま見たMMDでしゅしゅミクさんが頑張ってました。  ネタのつもりはなかったのに、せっかくなので。  “しゅしゅミクのひとり野球”より。 *ライデイン  ドラゴンクエストより、雷系呪文。  今思うとテイルズシリーズって早い段階から雷操れて、すごいよなぁ。  弱いけど。 *超神水  いわゆる毒である。  ドラゴンボールの名物。  飲み、毒に打ち勝つことで力を底上げさせる。 *時間は普通に過ぎていった  ONE輝く季節へより。  自然なことなのに、この文字を見るとみさき先輩とベンチを思い出す一行。 *そういうの、逆恨みっていうんだぞ  天地無用!魎皇鬼より。  魎呼の「怒りのぶつけどころが欲しいだけ」って言葉に天地くんが返した言葉。 *野菜星の王子  ベジータさん。  トランクスが産まれたあたりから、もう王を名乗っても良かったんじゃないかな。 *ステーキが好きな、どこぞのお嬢様のボディーガード  暁の護衛より、宮川尊徳。ただの声優繋がり。  でも怒った時の反応は、きっと似ていると思うのです。 *実は人造人間で、ロケットパンチが出来たりとか  人造人間16号。やはり声優つながりの、ドラゴンボールなお話。  ドラゴンボールやワンピースの同じ声優を使い回すのってあまり好きじゃないです。 *ぶっちぎりにイカレた変態  男子高校生の日常より、りんごちゃんさんへの生徒会メンバーの認識。  ぶっちぎりでイカレた女だ。 *ギャッ……ヤヤッ……!  神聖モテモテ王国より、ファーザーの震える悲鳴。  どんな状況だったかは思い出せませぬが。  ズボン穿かされた時だったっけ。  それともファー様好きのヤクザ殿に襲われかけた時だったっけ。 *えひゃい!  北斗の拳より、アミバの悲鳴。  《ズババババ!》えひゃい!  なんともおかしな魅力のある男であった。 *勝負方法は寝技限定  真剣で私に恋しなさいより、モモさんの欲望垂れ流しの一言。 *サイバイマン  ドラゴンボールより、自爆で有名なニクイあんちくしょう。 *大岡越前たすけてぇ!  例によりファーザー。  神聖モテモテ王国より、服を脱がされそうなファー様。  大岡越前はあれです。子供を引っ張り合う親。  現実では見たくない。  では、ここまでです。  どうか誤字がありませんようにと願うばかりですが……チェックしたのにどうしてか毎回残ってる憎い誤字様。  さてさてそれではご閉幕。  特に書き残すことは……ありました。 「エイプリルフールになにかネタ的小説書きたかったぁーーーっ!!」  心の叫びにございます。  あと恋姫HP……ではなく、ベースソンさんのHPでのエイプリルフールネタで地味にニヤニヤしてしまいました。   いいかしらん? ご主人様のアソコに、漢女の証を刻むのよん  漢女これくしょん。漢女と書いてカノジョと読むらしいです。  漢体これくしょんではなかった。  丁度その頃、貂蝉と卑弥呼の会話部分を書いていたので余計にニヤニヤでした。  とりあえず登録出来たら、最初の旗漢にはアニキさんが欲しいなぁと思いました。  えーと、あと書き忘れたこととかは……無いと思いたい。  ではではこれでおしまいとさせていただきます。  外史結合しても、最後がやっぱり華琳側に傾いてばっかりだったけど……だって魏伝アフターですもの!  無理矢理詰め込んだ感がたっぷりでしょうが、少しでも楽しんでいただけたなら幸いです。  これまでの閲覧、応援、ありがとうございましたー!  ……大ポカやらかしたら、このありがとうも恥ずかしい結果に終わるんだろうなぁなんて思いつつ。                          おしまい Top Back