番外のろく/抵抗もなく、悩むこともなかったらすごいと思うんだ

 魏側の屋敷、その一角の個室にて、のんびりとお茶を楽しむ珍しい三人組を発見。
 結婚式についてを相談しようと人を探していたところに、沙和から誘いがあったのだ。連れてこられたこの個室には、三羽烏しか居ない。むしろこの三人が外でお茶をしないなんて、なんと珍しい……。
 と、まあ現状確認はそれとして。

「というわけで、結婚式についてなんだけどさ」
「おー、前に訊いてきた“うぃーびんぐどれすー”っちゅうのを使うやつやろー?」
「ウェディングドレスな」

 ウィービングすな。ボクシングでもする気かお前は。

「そうだよ真桜ちゃん! あれをウィービングと間違えるなんて、ちょっといただけないの! ……ところで隊長、うぃーびんぐってなに?」
「ボクシングの技法で、上体を動かして相手の攻撃を避けたり、勢いをつけたりすることだよ」

 デンプシーロールとかの動きもウィービングになるらしい。
 って、そんなことを言いたくて来たんじゃないんだって、俺は。

「やー、賛成しといてなんやけど、あないヒラヒラしたのん着てみんなに見られるの、恥ずかしいやん……なぁ凪ー?」
「たっ……たた隊長が望むのでしたらっ、じじじ自分はどんな格好でももももも!!」
「ちょい落ち着き」
「《ドス》くひゅう!?」

 顔を真っ赤にして口早で、どもりつつ叫んでいた凪が、脇腹を真桜に突かれておかしな悲鳴をあげた。
 ありがとう真桜。そしてほんと落ち着いてくれ凪。

「相変わらず隊長のことになると暴走しがちなのー……」
「うぐっ……そ、そんなことはっ……! ……あの、隊長……隊長はその、もしかしなくても迷惑で───」
「ばしっと言ったり! 隊長!」
「甘やかすとだめなの! 隊長、ここはバシッと言うの!」
「真桜、沙和。俺のことを好きになってくれてありがとう。でも迷惑だ」
『《ザグシャア!!》はぐぅあぁああっ!!?』

 バシッと言ってみた。方向を変えて。
 すると胸を押さえて驚愕の顔をしたのち、二人はぼてりと宅の上に突っ伏した。ぼてりというか、ドゴォンって感じで。

「はいはい、自分でも苦しいことを他人に強要しない。凪、気持ちをぶつけてくれるのはすごく嬉しいから、素直にありがとう」
「は、はいっ!」
「でも、やっぱりちょっと落ち着こうな? 行動に移る前に、一度考える余裕を持とう」
「よく言うで、隊長〜……」
「そうなのー……隊長の場合、そうして悩むとすっごく長いくせにー……」
「経験してるから言ってるんだよっ! 悪かったなっ!」

 ともかくだ。一度深呼吸をして、そもそもの目的を思い出す。結婚式について。そう、結婚式についてだ。
 家族で盛大にパレードをするか、主要人物のみを招いてのささやかなものにするか。
 ちなみに家族で盛大にだと三国に住む者が漏れなくついてくる。なにせ家族だし。
 じゃあ主要人物のみで? ……総勢100人以上との結婚式を、数人の前でするのって、式場だけが立派なのに、知り合いや友人がまるで居ない人達の結婚式みたいじゃないか?
 ということを話してみると───

「あー……たいちょ、たいちょ〜? そらちょおっとばかし無茶やで〜……?」
「そうだよたいちょー……」
「はい。たとえ数人を招いてのものにしようとしても、確実に広まります。というよりは、我々が黙っていたところで必ず情報を漏らす者が出てくるでしょう」
「あっははぁ、そうそう〜、呉の大将とか、むしろ自分から言い触らしそうやん〜」

 呉の大将……ああ、雪蓮か。雪蓮……雪蓮ねぇ。
 想像してみた。……するとどうだろう。酒の勢いでべらべら言い触らす元呉王様の姿が、物凄く鮮明に脳内に描かれた。
 じゃあ彼女を監禁したらどうなる? ……雪蓮じゃなくても、華雄あたりが適当な質問をされたついでに、ぽろりとこぼしてしまいそうな気がする。
 あれ? なんだいこれ、秘密のお話なんて到底無理じゃないか。到底……とう…………あれ? いまさらだ。俺がみんなに対して秘密に出来たことなんて、ほんの一握りくらいしかなかった。だってみんな異常なくらいに鋭いし。

「あ、ところで隊長〜? これ、の方はどーにかなったん?」

 真桜が、広げた手の人差し指と親指で○を作る。ようするに金だ。大仏とかの印では断じてない。

「あれ……真桜に、……いや、俺、誰かに金の相談とかしたっけ」
「んや、相談はなかったで?」
「でもさすがにねー?」
「全員分の、と考えれば」
「……そりゃそうだ」

 誰だってそこに行き着くだろう。けれど、かなりの反則的事実に助けてもらったわけで。それを話してみれば、案の定三人ともあんぐり。
 だよなぁ、俺だけがおかしいわけじゃないよなぁ。

「隊長……ウチらがおらんくなって、そないに寂しかったんやね……」
「エ?」
「お金の使い道も解らなくなるくらい寂しくなるなんて……沙和、ちょっときゅんときちゃったの……」
「いや、ちょっと待てお前ら、俺は」
「隊長……! 隊長がお辛い時に傍に居ることが出来ず……!」
「待って!? いやほんと待って!? なんか論点違うぞ!? 今はお金の心配はなかったって話だろ!?」

 何故か真桜が普段からは考えられないくらいにとてもやさしい目をして、沙和は瞳をきゃららんと潤ませて、凪が自分の力不足を嘆くように俯いて……そんな状態でにじり寄ってくる。待て! 当時の俺を思ってくれるのは嬉しいけど、何故ににじり寄ってくる!?
 と、三人が一定距離まで近づいた瞬間、俺の背後から無言の圧力。振り向けばそこに、朱の君が居た。

「うぐっ……やっぱおった……!」
「思春さん、そこどいてなの!」
「だめだ。この男は他にもやることがある。出来れば早いほうがいい」
「やること……思春殿、それは? 出来ることならば、私も隊長の手伝いを───」
「他の将や娘らに、婚儀についての相談をすることだ」
「んお? や、それってみんなを一箇所に集めて質問すればええだけの話しとちゃうん?」
「我の強い100人以上を一箇所に集めて質問をして、話が纏まると思うのか」
「あ、無理やわ」
「無理なの」
「無理ですね」

 すげぇ即答だなオイ。っとと、口調口調。
 うーん、やっぱり他の外史の北郷一刀の影響の所為で、どうにもこう……。

「あ、そんなら姐さんや華雄にはウチらが訊いてくるわ。さっき向こうの酒屋に行くの見たし」
「真桜ちゃん解ってないのー……結婚の相談なら、相手にきちんとされたいものでしょー?」
「だったら探してここに集めればいい。行くぞ! 真桜! 沙和!」
「わっ! 凪ちゃんがやる気なのっ!」
「そら、まさかの婚儀相談を隊長自らしてくれたんやもんなー♪ よしゃあーっ! ウチも気合入れんでー!」
「そこはよっしゃあじゃないの?」
「や、今はべつに細かいツッコミとかいらんから」
「では隊長! 失礼します!」
「待っててねーたいちょー♪ すぐにみぃんな連れてくるからー!」
「ここおってやー!? 寂しいからって追ってきたらあかんでー!? あ、でもそんな隊長もちょっとええかも」
「ほらほら真桜ちゃん! はやく来るのー!」
「あーあー解とる解とるってー! 走ると胸イタイんやからしゃあないやろー!?」

 ……止める間もなく行ってしまった。
 え? 俺、ここで待ってなきゃだめなの?

「………」
「………」
「……座るか」
「ああ」

 思春を促して椅子に座る。
 個室には大き目の円卓、その上に茶器と……入ってきた時のまま、三人がのんびりと楽しむはずだったお茶が、湯気をあげたまま残っていた。
 残すのももったいないので口にしてみると、ちょっと茶葉が多くて濃い。淹れるの失敗したんだろうか。少しお湯を足して口にすると、丁度いい感じになる。

「ところでだが、北郷」
「ん? なに?《ズズゥ》」

 孤独を愛する井之頭さんのように茶をすすってみる。
 このパターンだと大体思春がとんでもないことを言い出して、俺がお茶を噴き出してしまう〜とかいう事態が起こる。自分の人生経験がそう絶叫している。
 しかし心配には及びません。永き時を生きたこの北郷、覚悟を以って相手と対峙していれば、どれほどとんでもない言葉だろうと冷静に受け止められます。

「ウェディングドレスのことを皆に訊く際、どういう訊き方をした?」
「え? その時も一緒に来てくれてたんじゃないのか?」
「傍には居たが、重要な話だと感じた。あまり重要なことを耳にしすぎるわけにもいかないだろう。だから少し離れて見守っていた」
「……思春もさ」
「? なんだ」
「いや。思春もさ、すっかり守護者っていうか……守衛に慣れたよな。まさか見守っていた、なんて普通に言ってくれるとは思わなかった」
「───」

 ひくっ、と、彼女の喉の奥から小さな声が聞こえた。けど、実際思っていることだ。俺自身、他の外史の自分との記憶の重複で、許容できていたものに抵抗がある部分もあるのに、思春はそんな素振りも見せずに俺に就いていてくれている。
 “呉を離れて俺の下に就いた”なんて外史がそこかしこにあったわけでもないのにだ。そんな俺の疑問を真正面から受け止めて、その上で……彼女は、静かに“ふふっ”と笑った。
 ……唖然。
 それが本当にやさしい笑みだったから、言葉もなく固まってしまった。

「……当然、だろうな。“他の私”は“気持ちの在り方”を知らなかった。自分の奥底から湧き出した気持ちの意味さえ知らなかった。が、私はそれがなんなのかを知っていた。知っているのなら受け入れるだけであり、私はその感情を認めている」

 ならば何故否定する必要がある。そう言って、彼女は目を閉じてフフッと笑うのだ。……他の人が居る前では絶対に見せない表情だ。どうやら、心を落ち着けてくれているらしい。
 ……遠いいつか、“惚れ薬”を飲む機会があった。
 名前の通りに“惚れるだけ”の薬で、惚れるというのがどういう感情を指すのかを知ることが出来た……そんな日があった。
 そんないつかを思い出しているのだろう……思春はやさしい笑顔のままに俺を見つめて、俺も見つめ返して、やがて顔が赤くなり、ふるふると震え出し、俯き、頭を抱えだした───あれぇ!? さっきまでの余裕たっぷりのやさしい笑みは!?

「いや……その、だな。様々な世界が統一されたのは、まあ、解る。が、解りすぎて困る、というかだな」
「…………ああっ」

 反応を見ていて理解が追いついた。そしてそれは俺も同じ意見だった。

「まさか思春とこんな話をするとは思ってなかったけど……まあその。好きすぎて困るよな」
「ぐっ……! わざわざ口に出して言うなっ……! 他の世界の自分がどれほど自分の想いに鈍いのか、痛感しているところだ……! 気づくまでは私もそうだったなどと、恥の極みだ、こんなものは……!」
「いやそんな、極みとまでいかなくても」
「……“呉のみに居た貴様”にとって、三国を抱いた自分がそうでないと一切感じなかったと言えるか?」
「産まれてきてごめんなさァァアアアいぃっ!!」

 客観的な想像を働かせてみれば、もう穴があったら入りたかった。しかも今は三国どころかかつての娘とまでだ……!
 誰かもう穴に入った俺の上に石碑でも乗せてくれ……。
 と、思春と同じく頭を抱えた辺りで、急に思春が姿勢を正して表情を改めた───次の拍子に、とんとんと聞こえるノック。
 ハテ、誰? ……って、凪たちが呼びかけてくれた内の誰かかな?

「鍵はかかってないぞー」

 なのでいつも通りの言葉を、この部屋の主人でもないのに言ってみる。
 ノックの主はゆっくりと扉を開けて、ひょこりと顔を覗かせると───

『おぅにーちゃん、相談があるって言うから来てやったぜー』

 ───と言って、ペロペロキャンディーを揺らしてみせた。
 名を、宝ャという。

「宝ャか。よく来たな。これから大事な話をするから、お前だけ来てくれ」

 そんな特別ゲストさんをそっと何者かの頭から外すと、宝ャを手にパタムと扉を閉ざした。
 ……そしてもちろん、動くこともなく喋ることもなくなる宝ャさん。

「おおぅ……まさかの取り外しぷれいとは。お兄さんも随分と意地悪になりましたねー……」

 そして、扉の外で、怒るでもなく淡々とツッコミを入れるは風さん。

「それともお兄さんは風なんかよりも、実は宝ャに恋をしていて、大事な話というのは宝ャに着せるうぇでぃんぐどれすの相談を───」
「《バターム!》よく来たな風! 入ってくれ話してくれさあさあさあ!!」
「《がばぁっ!》ふひゃうっ!? お、おおっ……!?」

 謎のぬいぐるみ的物体との婚儀を疑われたので全力で招き入れた。具体的には扉を開けて抱き締めたのちに姫様抱っこして扉を足で閉めて歩いて運んで円卓にスチャーンと座らせた。
 よっぽど驚いたのか、なにやら可愛い声が出た気がするけど……なにやら顔が赤いので、ここは踏み込まないのが吉だ。絶対に吉だ。乙女心が解らない俺でもこれは解る。

「こんな隅の個室に女の子を無理矢理連れ込むなんて、お兄さんも大胆になりましたねー。風はこれから、こんな片隅の部屋でどんなことをされるのでしょうかー……」
「はいはい、宝ャ返すからおかしなこと言わない」

 糸目で少し機嫌が悪そうな風の口に、宝ャが持っていたキャンディーを突っ込む。それから宝ャをちょこんと頭の上に乗せてあげれば、いつもの風の完成だ。
 桂花ほどではないにしろ、風も結構誤解を招く言い回しが好きだから、先手先手で誤解を生まない状況を構築していって───ってそういう話がしたくて呼んでもらったわけじゃない。

「お〜……訪ねて早々に部屋に連れ込まれて、硬くてべとべとしたものを口に突っ込まれてしまいました……」
「だからなんで誤解しか招かない言い回しを───」

 と、言っている途中、廊下からばたーんという音。

「───……する……のかなぁ……もう……」
「ちなみにですねぇお兄さん。廊下には一緒に来ていた稟ちゃんがー」
「うん……予想ついてたからやめて……?」

 かつての特訓の甲斐もなく、合わさった外史の数だけ興奮度が高まった気がしてならない稟の鼻血癖は、全てが合わさったこの世界でも変わることなく溢れ出る。
 立ち上がって歩き、扉を開けてみれば……ほうら、血まみれ劇場。……なのだが、なんと気絶していない稟がそこに居た! だっ……いやいや落ち着け俺! 意外性という気持ちを貫かれたからって、“誰だ貴様”はもう絶対にやめるんだ!

「だ……あー、その、大丈夫かー……? 稟ー……?」

 声をかけた所為で余計に妄想が加速して、ひどいことにならないかと躊躇したものの、このままほうっておくわけにもいかない。なので声をかけると、気絶はしていないものの倒れてはいる稟が俺の姿を確認。
 その視線が、俺の目からどうしてか股間に下りてゆき、またしてもバシュッと血を噴き出して……彼女は気絶した。
 そんな彼女を、俺の脇からひょこりと顔を出した風と、いつも通りの光景にもはやツッコむのも疲れた俺が見つめていた。

「稟ちゃんも変わりませんねー」
「……変わらないものに憧れる、心がおじいちゃんな自分としては、ここくらいは変わってほしかったなぁ」

 さすがに気絶している相手にとんとんはしないのか、血の海の傍で彼女を揺する風。
 俺と思春はといえば、もはや手馴れたものとばかりにテキパキと掃除をして、稟を部屋に連れ込むと扉を閉めた。

……。

 話し合いは案外スムーズに……行くはずもなかった。行くわけないじゃないか。むしろみんな、結婚式に対して己の願望をぶつけまくって、やれあれがしたいこれがしたいと、要求出来る贅沢の限りを尽くし───! っていうわけでもないんだけど、言うだけは言うみたいな提案が続いた。
 真桜たちは出会う将に片っ端から声をかけているようで、来る人来る人、みんなバラバラ。でも案外意見が合うようで、提案と妥協案とをそれぞれが相談し合うと、じゃああとでとばかりに解散。
 こうして様々な将が自分の持つ結婚式像を語り、無理なものは無理と断言する俺と、それらを纏める風と稟とが解決案を口にすることで、結構な速度で話し合いは進んだ。
 一番最初に来てくれたのが風と稟でよかった。あえて言うなら、その次に来たのが麗羽でよかった。あそこまで無茶を言わなければ、風や稟もこの場に留まらず、他の将のように部屋を出て行ってしまったのに違いない。

「様々な人のいろいろな希望を聞くのも、これはこれで面白いものですねー……風としましては予算が間に合う限界まで、願いを聞き届けたいところですがー……」
「同じ女性として、願いたい気持ちは解りますから」

 というのが風と稟の意見。
 言う通り、きちんと聞くだけ聞いて、その要望が現実として実現可能なのかをきちんと分けてくれている。
 さらに他の軍師が来るとそれを相談し合い、そうするとその軍師もこの場に残って、他の子が口にする願望を耳にするようになる。

「ご主人様は……愛されてますね……」
「愛してくれてるなら、もうちょっとやさしい式への願望を聞きたかった」

 帽子の位置を変えて語るのは雛里だ。その隣には曲げた指を顎に添えて思考にふける朱里さん。
 麗羽の提案した“優雅で華麗で美しくも可愛く、気品溢れて浪漫輝くわたくしに相応しい式”というのをどんなものにするか、考えているのだろうか。
 浪漫輝くとか聞くとエス○ールのプラチナダイヤモンドファッションリングを思い出さずにいられない。

「式をどうするか、ですか。様々な意見を聞いても、飛びぬけたものばかりでどうしたものか。そもそも基準が飛びぬけている時点で、どう纏めたものかも見えづらいものがあります」
「おおぅ……そうですねー……。それをなんとかするのが軍師というものとはいえ、いつも通りといえばいつも通り、無茶を言ってくれますねー……」

 稟は先ほどの鼻血などなかったかのように思考のまとめにかかり、風は風で糸目のままにキャンディーを舐めて、ぐでーと円卓に上半身を投げ出している。……ちなみに何故か俺の膝の上だ。
 稟が時折ちらちらとこちらを見るけど、妄想するような出来事は一切起こらないから、だんだんと赤くなっていってるその顔をなんとかしてください。戻ってきた凪たちが第一に見るのが血まみれの部屋とか、勘弁だ。

「じゃあ、軽くでいいから纏めてみようか。まだ訊いてない人も居るけど、似たような案件は混ぜちゃう方向で」
「ええ、それが妥当でしょう。壱から拾まで受け入れていては、式だけで何日かかるか」
「そですねー。お兄さんにはその後、日本に伝わる伝説伝統伝承伝記、“初夜”をしてもらわないといけませんからねー」
「───」

 心が叫んだ。シニタクナーイ!!
 あとべつに初夜は日本だけってわけじゃないでしょ……他の国が実際のところどうなのかは知らないけど。
 初夜/しょや。新婚夫婦が初めて迎える夜を指す。……もちろんこの場合、そのままの意味だけでは終わらない。むしろそんな名前がただの夜につけられている時点で、重要な意味がアルノデス。
 人々よ……偉大なる先人たちよ。何故、何故夜にした。べつに初昼でもよかったじゃないか。初夕方でもよかったじゃないか。何故夜に。やはりそういう行為を意識したからなのですか?

「あの。え? 俺、一日に100人以上……え?」

 だってそんな、義務感でするものじゃないだろそういうのって! かつては後継を理由にいろいろと頷かされた俺ではあるけどさ!
 そそそそういうのはさ、ホラ、ネ? きちんと愛し合った二人が、義務としてでなく互いを求めた時にそっと、なんというか救われながらするものなんじゃないのか? 二人で静かで豊かで……。
 そんなことを心を込めて語ってみた。

「一刀殿、女々しいです」
「女々しい言われた!?」

 そしたら女々しいって言われた。ちなみに一般の女性の大半が義務としてそういう行為をするのはイヤと応えているらしい。どこ調べだ。
 じゃあべつに初夜じゃなくても! と言ってみれば、「ええ、義務ではないのですから問題はありません」とけろりとした表情で言われた。あれぇ稟さん!? そういう行為について話してるのに、いつもの鼻血はないの!? 鼻───あ。

「誕生日でもないのに誕生日を祝われて首を傾げない人が居ますか? 私としてはそういった日を義務としてでなくめでたい日として迎え、抱かれることを善しと言っているまでです《キリャァアーーーン!!》」
「う、うおお……!?」

 稟が立派だ……! 凛々しい顔で、妄想が捗って鼻血を出しそうなことへ、きちんと意見を出している……!
 …………これで、凛々しい顔つきのままに鼻血をたらしてなければ完璧だったのに。

「そうですね。それに私たちは、婚儀もしませんでしたから。あの白い着衣を身に付け、ご主人様と……はわわ、はわわわわ……!」
「あわわ、あわわわわ……! しゅ、朱里ちゃん、どんな髪型が似合うかな……!」

 はわあわと意見を出しては赤くなる朱里と雛里は、一度思う存分に想像の世界へ羽撃いてもらおう。
 穏や冥琳も別方向で纏めてみると言って出て行ったし、今はここで纏められることを。うんと頷いて今この場に居る人───思春、風、稟、朱里、雛里を見る。……朱里と雛里は想像の世界に羽ばたいているから放置で。
 じゃあ風と稟と思春で…………あ。

「稟? 稟〜……? ………………」
「稟ちゃん? 稟ちゃ〜ん? …………」
「………気絶しているぞ、この女」
「稟ーーーっ!?」

 さっきまで顔が赤かったのに、今はなんだか土気色。もしかして鼻血を必死で我慢してたのか!? そして我慢の限界の果てを目指した結果、本能が気絶を選んで……!

「………」
「………」
「………」

 とりあえず、目を開け、凛々しい顔のままに往生した(*してません)稟に、静かに敬礼。俺と思春と風とで、纏めに入った。

……。

 さて。“纏めるのは軍師の仕事ですよー”と風に任せることになりそうだったのを捻じ曲げて、部屋に篭っていても明るい案は見つからないぞと外に出た俺達。
 凛々しく散った稟は医療班に任せるとして、俺はといえば……何故か風を肩車して、蒼い空の下、賑わう街の中を歩いていた。
 朱里と雛里は、他の軍師と別の方向で纏めておきますと言って、別行動だ。大変ありがたい。
 ありがたいんだけど……。

「あのー……風さん? どうして俺、あなたを肩車してるのでしょうか……」
「いえいえべつにこれといった理由はありませんがねー。思い出してもみてくださいお兄さん。お兄さんは街に出るたび、誰かしら小さい子の股間に首をうずめていたではありませんかー」
「肩車をそこまで誤解を招く方向で説明した人初めて見たよ!! やめて!? さっきまで挨拶してくれてた皆様の笑顔が一気にひきつったからやめて!?」
「そんなわけで風もお兄さんに身を任せたい一人としましては、こうして全てを委ねる覚悟でしてー」
「何気なくやってた肩車がここまで自分の首を絞めることになるなんて、俺……知りたくなかった……」

 外に出た途端泣かされた。軍師怖い。

「まあまあお兄さん。風のことなど首にじゃれつく猫程度に認識してくれていればいいのですよ。にゃー」
「ね、猫……猫ねぇ……」
「そうすればお兄さんは、猫のお腹に頭をうずめながら街を歩く人に」
「なんで俺そんな方向で街歩かなきゃいけないの!? 肩車でいいから! 普通に肩車している人って認識でいいから!」
「おおっ……そうですかー。お兄さんはそんなにも女性の股に首をうずめるのが」
「ちがぁああああああう!!」
「……貴様ら、少しは静かにしろ……」

 ともかくだ。散々と皆様に訊ねた結果、結婚式は盛大に、誰に内緒にするでもなくすることに決定した。100人以上と結婚することを“ドン引きして見るもの”として受け取るのではなく、きちんと愛し合い、国で認められているのだからこそ盛大に。
 日本ではそりゃあもうドン引きされるものだろう。そもそも複数人に手を出した時点でいろいろとドン引きだ。誰と婚儀をするでもなく子宝にも恵まれまくって、いやもうほんといろいろありすぎた。
 だからこそ、今こそ責任を取ろう。王となって、全てを受け止めよう。恥じることなどないのだと皆が頷いてくれるのなら、俺だって恥と受け取る理由はない。
 いろいろと考えることがないわけじゃあない。……言い訳をさせてもらえるなら、様々な北郷が一つになったことで、いろいろな部分がフォローされている。上手く説明できないけど、たとえば別の自分が鍛錬が嫌いだったとして、鍛錬好きな俺が居たって外史があれば、そこは“より能力の高い方”が優先された。
 もちろん統一される前の世界じゃあ筋肉は鍛えられなかったから、主に知識や氣ばかりが伸びていた俺だけど……そういった知識の先で、どこの北郷一刀が何を、何が、誰を一番に考えていたかで優先されるものはそれはもう当然の如く変わっていった。
 つまりは、呉に降りた俺が蓮華が一番好きだったとして、他の外史では他の人が好きだったとしよう。じゃあ“誰が好きか”という感情がただ一人だけズバ抜けているかといったらそうじゃない。
 困ったことに好きならば好きなだけ、その人に対する好きが優先されてしまった。全ての世界を合わせて見てみたとして、凪ならばどの世界の北郷一刀が一番愛していたか、その一番が凪に対しての感情として優先された。
 ええっと、つまり様々な外史の中から、一番の感情が選ばれたってことは、みんなのことを一番好きってわけが解らん俺が誕生してしまったわけで……ええいやっぱり説明しづらい。

  で、ともかく責任の話になるわけだけど。

 全員を好きすぎるなら、なんとかしてやろうって思わないわけがないのだ。当然幸せにしてあげたいって思ってしまう。
 じゃあ何故娘の場合は躊躇したか? ……娘だからだろ。娘を持った外史が“俺”の外史とほんの少しの例しかなかったんだから、躊躇は当然だ。そこに“他の一番”は無いし、優先される感情もなかったのだ、仕方ない。
 ただ。ただだ。他の北郷一刀にしてみれば、俺にとっては娘でも“他人”なんだよね……。だからか、ふとした時に娘ではなく普通の可愛い女の子として見えてしまう時がある。大変困ったことに、外見年齢だけで言うなら自分とほぼ同じだから余計に。
 呉の北郷一刀は辛うじて、登、延、述、柄、邵、jは娘として認識しているけど、残念ながら子供の頃までだ。現代では成長している上に、血の繋がりはもう薄すぎる彼女たちを見て思うことは───……まあその、娘というよりは、なぁ……。
 他の外史にも“娘が居た”って経験はあるんだけど、呉の娘だけで他の子は一切無しだった。どころか、他の外史じゃあ丕も禅も他の子……姫や平たちが生まれた記憶はない。せいぜいで桂花が身籠った、ということくらいだった。
 外史って本当に様々がありすぎたよな……他の外史にはアレがあってもこっちの外史にはこれは起こらなかった〜とか、そういうこともあるからどれをどう基準に置けばいいものか。

(幸せにしてやりたい、かぁ)

 “いろいろ”あった。
 様々な外史、願われた結末、結末の先のなにもない世界。“それからずっと、みんな幸せに暮らしましたとさ”の先には、俺達が望む未来は存在しなかった。
 結末に辿り着くために懸命に生きて、戦って、願って、泣いて、それでも進んで。
 ようやく結末に辿り着いても結末は結末でしかなくて、ハッピーエンドの笑顔のままに世界は終わって、ただ崩れる時を待つだけだった。
 物語の中の自分たちがどれだけ明日を夢に描こうと、それを決めるのは世界。そんな世界を“自分”の数だけ覚えている。

  だからこそ───今こそ、左慈の気持ちも解るのだ。

 どれだけ心の中で描こうと抱こうと、世界の匙加減ひとつで曲げられ、“自分こそが辿り着きたい未来”には決して辿り着けない世界を恨む気持ち。
 そこへ向かおうとすれば頭痛や消失感に襲われ、御遣いとしての在り方ごと消される世界。
 物語は物語を願った者の願いしか叶えない。必死に生きている自分たちは、ただ物語を願った者の願いまでを描くだけだ。結末に辿り着いた途端、必死に生きた者たちは、そんな笑顔のままに世界とともに凍りつき、やがて崩れる。

「お兄さん? どうかしましたか?」
「うん? んー……ああ、はは……うん……」

 幸せにしてやりたい。
 “結末の続き”を自分で描ける世界にやっと辿り着けたのだ。
 だったら願おう。描こう。何度でも夢を抱こう。
 自分の出来る限りを以って、ハッピーエンドを迎えたその先でも、幾度となく描いていこう。
 かつての娘達は誰かと結ばれたけれど、女としての幸せには到れなかったという。親である自分に笑顔を見せても、自分には見せない辛さを抱いていたことだってきっとあったのだ。
 そんな世界はまっぴらだと、様々な北郷一刀が俺の胸を殴りつける。
 他のやつらじゃ幸せに出来ないのなら、そんなやつらには任せるなと。誰なら幸せに出来るのか。誰との幸せを娘たちが願っているのかをよく考えろと、なんともまぁ無責任なことを叫びながら殴ってくれる。
 でも……響くのだ。
 “俺”だって親だ。親だったのだ。
 娘達がどれほどの思いを抱きながら日々を生きていたのか。
 笑顔ばかりに笑顔を向けて、幸せを願いながらも、いつしか自分の結末の先ばかりを見ていた気がする。
 幸せを願うのなら、自分の価値観なんぞほったらかしにして、どうして丕を受け入れてやらなかったと言う自分まで居る現状。
 殴りつけられる胸の内は、殴られるたびに心に響いて、やがて覚悟として固まってゆく。
 時間がとてもかかる、難儀な覚悟だけど……お陰で、ようやく。

「なぁ、風、思春。幸せにしてやりたいって思ったらさ、それをするのは義務であっちゃあいけないよな」
「? そですねー……よく解りませんがー……義務として幸福を手渡されても、たとえばそれをくれるのがお兄さんだとしても、お兄さんが本当に笑っていないのなら、それは風にとっての幸福ではありえませんねー」
「思春は?」
「いつか華雄が言っていたな。義務で受け取れるもので喜べるものなど、給金程度だと。それ以外は自分で掴み取るものだ。……私の幸福には、もはや貴様の幸福が絶対条件だ。貴様が幸福を願うのであれば、その中での絶対条件は貴様が心からの笑顔でいることは譲れない───額に触れるな熱はない」
「え、いや、だってあの……思春? 顔赤いぞ? 熱あるか?《ヒタリ》熱あるの僕でしたごめんなさい!」
「〜〜……───はぁ。……私は。様々な世界を知り、その上でも蓮華様の傍ではなく貴様の傍に居る。その意味を少しは汲め、馬鹿者め」
「え、あ、うあっ……《グボッ!》」
「おおぅ……」

 自分の言葉で女性が真っ赤になるって場面を何度か見たことがある。
 けど、逆はあまり経験がなかった。うわ、やばいこれすごい。顔が熱くて仕方が無い。
 そ、そうだった。あれだけの外史が重なって一つになった世界なのに、思春は蓮華の傍よりも俺の傍に居て、しかも幸せにする宣言までしているのだ。
 さらに今、溜め息のあとには、まるで鈍感な想い人に噛み砕いた告白をするような漫画の主人公みたいな言い回しをされて……俺いつヒロインになったの!? 口調も相まってもう格好よすぎてやばいです思春さん!

「そ、その……」
「ああ」
「えっと」
「ああ……」
「………」
「…………」
「……あ、ありがとう」
「……〜〜……《かぁああ……!》」

 ほんと、どっちがヒロインだって話。
 顔がちりちりと熱くなるのを感じるまま、感謝を口にしてみると、思春も顔を赤くして俯いてしまう。
 ちなみにヒロインとはギリシア神話で喩えるなら、女英雄だそうだ。……ああ無理、俺英雄とか無理。せいぜいで亀の大王に攫われて配管工に助けられる姫っぽい立ち位置だ。そっちのヒロインがお似合いさ、俺。

「お兄さんは思春ちゃんに弱いですねー。このままでは婚儀をし終えた後も、尻に敷かれ続けるのではー?」
「続けるって……」

 ……あ……僕もうキミの中で尻に敷かれてるんですね……否定出来ないけど。

「よし、じゃあ戻ろうか」
「待て貴様。まだ城から出て大した時間も経っていないぞ」
「いや、なんかもう覚悟決まったならなんでも来い状態というか」

 むしろ心が統一されて、時間が経つにつれ馴染んだ結果、なにがなんでも幸せにしてやりたい人がたくさん出来ました状態だ。
 しかも“俺”以外の北郷な皆様が、娘も幸せにしろとか、出来なきゃ男じゃないとか、なんともまあ勝手な後押しを意志に残して……!
 そりゃね!? 俺だって幸せにするのは当然として心得ておりますよ! だからって娘と結婚!? その後は娘と初夜ですか!? 日本人として生まれて、そこに抵抗覚えないって嘘だろ!

(貴様に天下の何が見える? わしを止めたくば、相応の大志を示せ!)
(孟徳さん!?)

 確かに天下の問題に影響する話ではありますがね!? あなたを止めたってなんの解決にも繋がらない気がするのですが!?

「………」

 でも、そうだ。“天下のなにが見える”か。
 幸せにする。これは確定。
 泣かせるにしたって幸せの涙がいい。これも確定。
 じゃあどうするか? 頑張るしかないでしょう。これは確定していた。
 だから……ちと卑怯ではあるけれど、他の北郷一刀の感覚を少し借りようと思う。娘は大事だし幸せにしたいけど、だからといってかつての娘と結婚というのはさすがに抵抗が……!

「……《もやり》」
「? お兄さん?」

 ハテ。なんだかとても懐かしい感情が、我が胸の内に湧き出したのですが。
 幸せにする。それはいい。でもどうやって? 他の北郷一刀の感覚で。幸せにしたいのは“俺”なのに? でも“自分”だって“俺”なんだし、いいんじゃないか? ───…………

「……否である」
「……? ど、どうした? 急に殺気が───」

 思春が心配して俺を見るけど、今はちょっとごめん。
 他の北郷一刀にとっては、娘たちはそりゃあ他人かもしれない。別の外史では好きな女性と北郷一刀の娘だって考えはあっても、全ての外史で考えればそうじゃない。
 “きっと幸せになる”と信じて男に任せた娘たちは、一様にダメだったことをこの世界で唱えた。
 じゃあ相手が北郷一刀ならどんな意志でもいい? それは違う。あいつらがこの人がいいと信じたのは……

「義務感、よくないね」
「……突然どうした」
「いろいろ考えたら目が覚めた。現実に目を向けよう。“娘だから”はもう現実じゃないよな」
「さっきからなにを悩んでいるかと思えば、それか」
「お兄さんは相変わらず悩むと長いですねー……」
「かつての娘と結婚って話になって、ここまで悩まないやつが居たら逆に怖いわ」

 元から娘との結婚願望でもあったんですかって疑いたくなるわ。
 や、そりゃあ宅の娘たちは目に入れても幸せすぎるというか、かわいくて大事でなんというかこういつまでも傍に置きたい存在ではあったけれど。
 でも、現実はそうじゃない。
 いつかは嫁に行くんだろうし、それを認めた時にもいろいろな悶着があった。心の中はいつだって穏やかじゃなくて、大事に思っていた相手にさえ“こいつでいいのか”とか“任せてもいいのか”なんて失礼な思考を散々と働かせたのを覚えている。
 結果は……この世界で娘達から聞かされた通りだ。
 幸福の影には黒がある。昔っから解っていたことだ。
 子供の頃に読んだ絵本にもあったじゃないか。

  英雄は悪を倒してお姫様と幸せになる。

  悪は姫をさらったから殺された。

 じゃあ例えば、悪が最初から平和的な方法で姫に求婚をしていたら、悪は幸せになれただろうか。
 ……そんなことは、きっとないのだ。物語の中、黒には黒の歩き方しか許されない。そんな世界が嫌だから、そんな世界が辛いから、外史は願われて世界が生まれた。
 もし、悪とされた存在がただ純粋にお姫様が好きだっただけなら。攫う以外、傍に来てもらう方法を知らなかっただけだったら。英雄なんて呼ばれた存在は、勘違いをした多種族を斬殺した存在でしかないというのに。

「………」

 俺達は、望んだ未来へ辿り着けて幸せだった。
 幸せの先で、娘達は約束を守って、1800年後へ思いを届けてくれた。

  ……いつかを思い出そう。

 天下が統一されて、雪蓮が呉を、桃香が蜀を任された時のことを。
 他者の天下の下でも誰もが笑っていられる世には辿り着けた。
 桃香が辿り着きたかった平和にも、きちんと辿り着けた。
 じゃあ、俺達が得た統一の先の世界では、生前の娘たちが叶えられなかった幸福は得られないのか?
 それは否だ。とても単純で簡単なことで、それは叶えられる。
 幸福の影で黒を味わった娘たちが、今度こそ幸せで居られるよう───俺が、きちんと俺の意志のままに頷けばいい。
 他の北郷一刀の意識を借りるなんてズルはしないで、だ。

「はぁあ……なんかつくづく、誰かに相談しないと長いなぁ俺……」
「血の繋がりにこだわっていたのはお前だけだろう」
「(あ、“お前”になった……)……思春は賛成なんだな」
「……こんな私でも幸せを感じられている。お前以外に誰が居る」
「…………《トクン》」

 いやトクンじゃなくて! なんでそんな格好いいんですか思春さん!
 そんな薄く笑んだ顔で、風に髪をなびかせながらとか、どこぞのイケメンさんくらいしかやらないと思ってたのに!

「むしろあの頃のあの屑が……お前に散々と述を幸せに出来るのかと問われ、頷いたくせにこの有様とは……! 今生きているのであれば私が生きていることを後悔させてやりたいほどだ……!」

 格好いいと思っていた朱の君が修羅でございました。
 殺意の波動が体から立ち上っておられる。同意見だけど。

「だから北郷。……述はお前が幸福に導け。不幸にしたら幸せにするまで許さん」
「へっ!? ───……ああ、はははははっ……そりゃ、結末は物凄く幸せそうだ」
「思春ちゃんがいいこと言いました。そですねー、不幸にしたら許さないと言ってしまうよりは、幸せにするまで許さないほうがお兄さん的には効果的ですからねー。ちなみに思春ちゃんはどうお兄さんを許さないつもりですかー……?」
「常に命を狙うつもりで殺気を放ちつつ傍を離れん」
「怖いよ!?」

 僅か一日で胃袋が壊死しそうだった。
 だからもう全力で幸せにします宣言をしました。だだ大丈夫、これ強制されたわけじゃないよ? きちんと自分の奥底から沸きだした生きる目的ダカラ。生きる……生かす。主に胃袋を。

「よ、よぅし! 幸せにするための第一歩! いい加減真名を考えよう!」
「くだらんものだったら殺す」
「第一歩が重てぇえーーーーーーっ!!!」

 幸せにするまで許さない大前提よりよっぽど重かった。

「だだだだだ大丈夫、大丈夫。丕と登と禅のはもう考えてあるんだ……! まずはそこから聞いてくれ……! そこらのセンスから、ちょっと考えてほしいかなーって……! あまりにもだめだったら考え直すから……!」
「ほう……? 述より他を優先した上、それを私に話して聞かせるとはいい度胸だ」
「あれぇ!? 地雷だった!? いやいや誰が先とかそういう問題じゃなくてね!? それだけ真面目に考えてるって受け取り方をしてくれると嬉しいナー!!」
「いつまで経っても、親にとっては子供は子供ですからねー。自分の子が優先されないのは寂しいものなのですよ、お兄さん」
「まあ、その気持ちは解る。解らなきゃここまで悩んでなかったしなぁ」
「というわけで武の真名も出来るだけ早く考えてくださいね。期待してますよ、お兄さん」
「……なんか穏やかな会話のままにハードルだけが穏やかじゃなくなった……!」

 でも考える。
 述と武の真名……甘述と程武、姓名から連想するものは……特にない。
 名前をつけるのって難しいよなぁ……娘たちは言った通り母親側がどんどんとつけていっちゃったから、実質的に俺がつけたのって呂姫くらいなんじゃないかってくらい、名づけの経験がない。
 けれども真面目にいい名前をつけないと、思春さんが怖いデス。
 いい名前、いい名前〜……と、うんうん唸っていると、思春が小さく溜め息。次いで風が「それでお兄さん? 王の娘さまたちにはどんな真名を考えたんですかー?」と訊いてくる。
 ……そうだった、まずは考えたものを教えるって話だった。恐怖と焦りのあまり、記憶が飛んでいた。

「あぁああえっとそうだったな! あはっ、あはははは! は、はぁ…………うん。えっと」

 深呼吸を挟んで、店で肉まんを三つ買ってまた歩く。
 あんがとねー! とおばちゃんに見送られながら食べる肉まんは、なんとも懐かしい味だ。日本のコンビニじゃあ味わえない深い味わい……美味い。

「んとな。まず丕の真名だけど」
「ああ。丕に許可を貰うまでは口にしない。言え」
「え? あ、うん」

 てっきり言う前から不安だとか言われるもんだと思ってたのに。許可を貰うまではってことは、結構期待してくれたり───

「ただし我々でも嫌悪するものであったなら、丕が聞く前に訂正させる」
「やっぱそうですよね! だと思ったよ!」

 大丈夫、泣いてないよ?
 結構自信あるから大丈夫、いい名前だと思うんだ。

「丕の真名は、|華煉《かれん》にしようと思う」

 だから自信たっぷりに口にした。すると、思春からは“ほう……”って小さな息遣い。何故か風は俺の頭を撫でてくる。

「それで? 他二名は? 特に子高様の真名はどうなっている」
「禅のことも気にかけてやってね……子高は|好蓮《はおれん》。禅は───」
「おおっ、きっと二人続けて“れん”がついているので、なにか“れん”の付く名前ですねー」
「残念、桜花だ。桜の花って書く」
「……一人だけのけものだーと文句が飛びませんかー?」
「そういうつもりで名付けたわけじゃないって。で、どうかな」
「悪くない。お前のことだ、その名も相当考えて決めたのだろう?」
「滅茶苦茶考えました。仕事しながらも鍛錬しながらも、とにかく考えました」
「そ、そうか」

 その甲斐あって、思春にOKを貰えるいい真名が完成した。そうと決まれば早速三人に届けてやりたいんだけど───うん。

「なぁ思春、風。……真名ってどうやって授けるものなの?」

 考えてもみよう。赤子に名前をつける時、赤子は意識せずにそれを受け取る。
 やがて成長して、それが自分の名前であると認識するわけだけど───既に自分の姓名も持ってる人に名前を贈るのってどうすればいいんだ? あだ名チックでいいのか? 「お前今日から華煉なー!」って?
 ……はっきり言おう。それはない。
 他がそうであっても俺が無理。
 そうだ、欲していたものをあげるんだ、そんな軽いものじゃあ断じてない。
 なにせ迂闊に口にすれば首が飛ぶとさえ言われる伝説の真名さまだ。つまりこう……おお! 書簡に書き連ねて、それを丸めた状態で贈るんだ! こう、戦略ゲームで忠誠度をあげるために施しを重ねるが如く!

「と、こんな感じでいいのか!? いいよな!?」

 胸のうちを明かしてみる。と、「違いますよー」とばっさり。

「えっ……じゃあどうするんだ!? だってそうしたほうが、迂闊に誰かが口にしたりとかしないだろ!? こう、玉座の間にみんなを集めて、それを授けて……受け取った丕がその場で開いてみんなに見せる〜みたいな……ほらっ!」
「いえいえー、いいですかお兄さん。真名は特別ですから、名付ける親が子と二人きりで渡すものなのですよ。きちんと向かい合って、しっかりと。そこまでするからこそ、認めた相手のみに明かす名、と呼べるのですねー」
「そ……そうだったのか……!」
「うそですけどねー」
「真面目に話して!? 頑張って考えてる自分が物凄く惨めだから!!」
「………」
「おやー、思春ちゃん、そんなに睨んでもこの肉まんはあげませんよー?」
「そんなものはいらん」
「……思春はあんまんの方がよかったのか……気が利かなくてごめん……」
「なっ!? い、いやっ、そうじゃないっ! そういう意味じゃっ……! おい貴様……! あまり私をからかうな……!」
「いえー、からかうだなんてとんでもありません。風としましてはあまりに難しく考えすぎているお兄さんに、落ち着きの瞬間を与えたかっただけなので」
「どこが落ち着いている。明らかに混乱しているだろう」
「思春〜、あんまん買ってきたぞー!」
「うなっ!? こっ……行動が早いにも程がっ……!」
「魏呉蜀、都に、麗羽たちに拾われた世界で得た経験は伊達じゃない!《どーーーん!》」
「……威張れることなのか? それは……」

 呆れられたけど気にしない。
 主に買い食いばっかりしたり、人を案内したり、サボったりばかりだから買い物なら任せておけ!
 そこに俺の氣の操作が混ざれば、もはや買い食いマスターを自称しても許されると思うんだ。誰にとは言わないけど。
 というわけでハイと思春にあんまんを渡して、真名を考えながら歩く。
 うーむ、思春の娘……俺の娘……思春が春だから、夏を混ぜてみるとか? 思夏……シカ? シナツ? いや、ここは“思う”という字を捻って“想”にして、想春……ソウシュン? それともやっぱり夏にしてソウカ、秋だとソウシュウ、冬ではソウトウ。……難しいな。
 ちなみに、無理に俺の名前を入れるとヘンテコになりそうだから却下。
 思刀とかだと死闘とか使徒っぽくなりそうだからだめ。あ、じゃあ俺の一と、思春の四季の文字からもじって一夏……あれ? なんだかどこぞの天然ジゴロっぽく……よしダメだな。人の話を“なんか言ったか?”で流す存在になりそうだからだめだ。
 じゃああれだ。思うと想うをそのままつけて、思想。……死相っぽくてだめだな。逆だとなんか曹一族っぽくなるし。

「んー……」
「真剣に考えてくれていますねー……お兄さん? もちょっと気を抜いてもいいですよ?」
「“もうちょっと”じゃないのか」
「ほんのちょっぴりのほうが、気安さも難しさも兼ね備えているので丁度いいのです。なんとなくですがねー」
「もちょっとか……うーん」

 軽く力を抜いてみる。いつの間にか眉間に力が入っていた。
 ほうっと息を吐いて隣を見てみれば、ほくりとあんまんを半分に割った思春さん。丁度目が合って、わたわたと慌てたあと……なんか半分くれた。

「………」

 ああ、なんだろ。もんのすごく力が抜けた。安心って方向で。

「あぁーーーっ! 隊長ずっこいのーーーっ!」

 と、差し出されたあんまんをぱくりと食べたあたりで聞き慣れた声。
 視線を向けてみれば、沙和を先頭にぱたぱたと駆けてくる三羽烏。

「沙和たち頑張ってみんなに呼びかけてたのに、隊長があの部屋に居ないんじゃ意味ないよー!」
「あかん……隊長、これはあかんで……サボるときはみんな一緒てあの時誓いあったやん……!」
「誓ってないぞ」
「なはは、まぁ固いこと言わんで。なぁなぁ隊長〜? もっちろんウチらにも奢ってくれるんよなぁ〜? ウチら、隊長のために頑張ったんやし〜……なぁ?」
「訊きもしないで奢りであること確定なんだな……まあ奢りだったけどさ。よし凪、なにがいい?」
「あれ!? ウチのこと無視!?」
「お前、奢りってことになると容赦ないからなぁ……まあ冗談だから。肉まんとあんまん、どっちだ?」
「あ、なんや新作でメンマまんとか出とったやん。誰が提案したのか丸解りやけど、あれどない?」
「よし、真桜はメンマな。凪と沙和は?」
「はーい! 沙和はあんまーん!」
「あ……私もあんまんで。あの、私が買ってきますから隊長は───」
「いいっていいって。代わりに風を預かっておいてくれ」

 言いつつ風をひょいと肩から下ろして、はいと渡してみる。

「や、隊長、渡されても困るんやけど」
「にゃー」
「大丈夫、今の風は猫だ。無心で肩車していれば、女の股に首をうずめる変態として映るそうだぞ」
「全っ然大丈夫やないやん! 猫って話どこにいったん!?」
「まあまあ」

 ともかく渡して、早速走る。いろいろ考えた後って、なんだか走りたくなる。これは癖なんだろう。思えば鍛錬ばかりをやっていた頃、考え事が増える度に走っていた気がする。
 ……うん、まあ、今でも鍛錬は続けてるんだけどさ。
 だって筋肉がちゃんと成長するんだぞ!? やらないのは損だろ!

「……ところで三人とも、三国と都、ほぼ四国の上に立つ王様に買い物を頼んだ自覚はありますかー?」
『───あ゙』

 今、走りたいのだから走るッッ! なんか後ろから「隊長あかん! 待ってやぁーーーっ!」とか「隊長! やはり自分が! 隊長ぉおお!!」とか「止まってなのたいちょー! 華琳さまに怒られちゃうぅう!!」とか聞こえたけど知らない。
 そうして走り、香りとともに常に湯気を立ち上らせている印象のある肉まん屋まで辿り着くと、財布を取り出して《がしぃっ!》……財布を取り出した右手を、思春に掴まれた。え? なに? と振り向いた瞬間、左手は凪に。

「お、おお? どうしたんだ二人とも。そんな息切らして」
「おっ……お前はっ……! 少しは自分が王である自覚をっ……だなっ……!」
「隊長……! 買い物などは我々がしますからっ……! 今までのような軽い気持ちでの行動は、出来るだけ控えていただけると……!」
「?」

 よっぽど慌てていたのか、珍しくも息を切らしている二人。
 王である自覚っていったって、俺の中の王の象って、視察と称して美味を求めて店の味にダメ出しを叩き付ける金髪王様と、なにかといえば酒を飲んで仕事をサボって民と一緒に果実の収穫をする色黒王様と、子供たちに引っ張られて願われるままに遊んで仕事をほったらかしにして美髪公に怒られる王様、って印象ばっかりなんだが。
 蓮華は立派だね。ほんと立派だ。

「とにかく隊長。いえ、一刀様。あなたは王であるのですから、不用意に単身での行動は控えていただきた───」
「凪。華琳にも散々言った俺だから、常に王であるつもりなんて全然ないぞ? むしろ街に居るときだからこそ羽目を外さなきゃもったいないだろ。あと呼び方変えるのやめて」

 むしろ常に王以外のなにかで居たいとは思っている。思っているだけで、それをやったらいろいろと未来が閉ざされるのでやらない。
 責任問題っていろいろ面倒だよな。個人が個人として動けなくなる。

「はぁ……解った、じゃあ買い物は───」
「私に任せろ」
「はい、ここは私が」
『───』
「え?」

 買い物はどちらかに任せようとしたら、ほぼ同時に思春と凪が手を出した。財布を奪うとかではなく、私に任せてくれとばかりに。
 え? これ、俺が選ばなきゃいけないの? 何故か二人からモシャアアアと謎のKIが溢れて、ソレ越しに見える景色が歪んでらっしゃるのですが。

「思春殿。街のことは私のほうが知っています。ここは私が」
「何を言っている? 街もなにも、買うものは決まっているだろう。場所はここで、買うものは饅頭だ」
「あ、そうそう。喧嘩するなら買わないからな。真桜たちの文句は二人が受け取ってくれ」
「ぐっ……! 北郷、お前は……!」
「……なんというか、慣れてますね、隊長……」
「いろいろと馴染めば、そりゃあなぁ……」

 どの世界でも苦労人してたもの。
 それを支えてくれた人|《(主に愛紗)》ほどじゃないだろうけど。

「じゃあ買うのは凪。持つのは思春でいいか? 断ったら全部俺がやる」
「待て、それは《なでりなでり》ふわっ!? なばばばば貴様なにを!」
「命令だ」
「───」

 待ったをかけた思春の頭を撫でて、にっこり笑顔で言ってみる。
 と、真っ赤な顔のままに固まり、俯いてしまった。
 その隙にハイと凪に財布を渡して饅頭を買ってもらうと、ハッと復活した思春に饅頭が入った袋を渡す。

「〜〜〜……手の上で遊ばれている自分が情けない……!」
「情けないって思える内はまだ大丈夫だよ…………。大丈夫……大丈夫なんだ、思春……」
「当事者のお前が何故そこまで遠い目をする!」
「いろいろあったんだ……いろいろ……」

 御遣いの氣が馴染めば馴染むほど、筋肉が出来て、一層に体に氣脈が増えるほど、様々な自分のかつてが蘇る。
 そうするともう精神おじいちゃんどころか仙人レベルで……かつての自分を思い出すのです。
 蜀で桃香と一緒に愛紗に怒られたこととか、魏で春蘭に追われて叫びながら逃げたこととか、呉でシャオに振り回されたり思春に脅されたり祭さんに叩きのめされたりした日々とか…………ああうん、なんかもう、やっぱりどこに行っても立ち位置あんまり変わんねぇ。
 もはや口調がどうとかそんなことを思う余裕もないくらい、自分の過去がアッチャーな自分が居る。
 そんな自分がこうして集合した俺だ……情けないとかそんな考えをするよりも、なにか出来ることがあるでしょーよと考えるようになってくる。
 プ、プライドで春蘭の剛撃が躱せるもんかぁ! 情けなくても生きたいよ俺!

(進め! 立ちはだかる者はすべて切り伏せよ!)
(孟徳さん!?)

 その場合、切り捨てられるの間違い無く俺だからね!?
 脳内孟徳さんと愉快な問答を繰り返しつつ、まだ納得いかなそうな思春を促して元の場所へ。
 それぞれ望んだ饅頭を配ると、真桜が「意識しとらんかったけど、これって王様にねだって買ぉてもらった饅頭になるんやね……」と。すると沙和がびくりと肩を震わせて、「華琳様に買ってもらった〜とか意識しちゃうと、食べづらいの……!」と。
 まあ、王様といえば自国の王を連想するのは仕方ないもんなぁ。
 しかし出来たての饅頭は温かいうちに。
 さあさと促して、食べてもらった。

「ぬむむっ!? このメンマまん、肉が細かいそぼろ状で入っとって、けどメンマはごろりとしたシャキシャキメンマ……! 噛む度に味が口の中に広がって、なんとも言えぬ“噛み締める喜び”が……!」
「あんまんもいい味なのっ! 落ち着くまでどたばたしてたからろくに味わえなかったけど、やっぱり出来立てって最高〜!」
「隊長、ごちそうさまですっ」
「いろいろ言ってた割りに、きちんと味わってるじゃないか、真桜」
「なはは、そらぁ気持ちの切り替えくらいチャチャッと出来んと、あの世界じゃ生きてけんかったやろ。こんくらい、あの時代やったら子供でも出来るわ」
「むしろ、子供の方が得意か。泣いた子供がもう笑うって感じで」
「そですねー、お兄さんの場合は特に、幼児体系から大人まで、痛がる相手をとろけさせることに関しては達人級でしたしねー」
「天下の往来でやめてください風さん」

 真顔でツッコんだ。
 ともかくこうしていろいろと気持ちの整理は出来た。
 苦笑も悩みもそりゃああるけど、幸せにしたいって思えたなら実行実行! 相手の迷惑にならない程度に全力で、俺達に出来る最高の結婚式を目指そう。

「あー、ところで隊長? ウチら散々といろんなとこ回って声かけてったんやけど……これ、部屋に戻ったら結構な人待たせてたり……なぁ?」
「……お、お昼休みだったーってことでなんとかならないか?」
「お昼休みなー……正直饅頭一個じゃ足らんねやけど、これってやっぱり呼んで回ったウチらにも責任あるんよね?」
「えー? 隊長のために集めたのにー?」
「隊長。部屋にはなにか書き置きでもあったり……?」
「凛々しい顔で気絶している女性が、椅子に座ってる」
「どういった状況ですか!?」

 そういえば稟へのお土産を忘れた。
 仕方ないので、いろいろ文句が飛ぶことを覚悟で桃をいくつか買っていった。
 案の定部屋の前や中には結構な数の人が居て、その大半が娘だったこともあり、なんだかとっても賑やかだった。
 一緒に居るところに三羽烏が呼びに来たのか、丕を筆頭にいつもの娘たちも居る。
 部屋の中で未だに気絶していた稟はこの際そのままで、いろいろと質問をしながら桃を切り分ける俺。
 なんかこういう時、“親”って感じがして嬉しい。
 ひとつのものを切り分けて、複数の子供に分ける……そう、こんなこともしたかった。
 だっていうのに俺が料理をしようとすると、とことん邪魔をしてきて……! ふ、普通で悪かったなー! 普通だから頑張ろうとしたんじゃないかー!
 そう心の中で叫んだこともあったなぁ……。
 遠い目をしながら切り分けた沢山の桃を、娘たちに一人二つまでなーと言って食べさせる。
 休みだった三羽烏の休日を奪ってしまったことを謝りつつ、「ご褒美とか期待してるでー」といつもの笑顔で去っていく真桜や、凪や沙和を見送って、桃に夢中な娘達に結婚についての質問。

「姫は結婚についてどう思う?」
「父と結婚……いい。家族でなくなったの、とても悲しい。だからする。家族なら、ずっと一緒」
「平は?」
「虎がやかましいので早く身を固めたいです……」
「ああ、張虎か……」

 霞の娘だからと言っていいのか、やたらと関平にべったりだもんなぁ。

「はは、逆に“ウチも平もこれできっちり家族になったんやから、もっと一緒に〜”とか言いそうだな」
「ち、父上、この話は無かったことに……!」
「望むところだ《どーーーん!》」
「父さま!?《がーーーん!!》」

 汗をだらだらと流す平に即答で返してみれば、丕が悲鳴にも似た声で叫んだ。
 落ち着きなさい、冗談だから。

「ん。なぁみんな。俺は一度、お前たちの父として生活した。もちろん、他の人の娘として生まれ変わっても、俺からしてみれば確かに娘だ」
「と、父さま、それは、けどっ」
「まあまあ。丕、まずは聞いてくれ。……えっとな、父さん、娘としてはもちろんだけど、きちんとお前たちを女性として見ようと思う。いろいろと考えたんだけど……それはもういろいろ考えたんだけどな? いい加減、現実をきっちりと見据えて、幸せにしたいって思ったなら“出来る今”を大事にしないとって、そう心に決められたから」
「え…………あの。それでは」
「ああ。俺は俺の意志で、流れとかそうしなきゃいけないって強制でもなく、お前たちを受け入れていきたい。だからまあ、まずはその一歩として娘としての名、というよりは……真名を与えて、それで呼びたいと思う。字呼びや名呼びのままじゃ、娘って意識を変えられない気がするからな」
『───!!』

 娘たちが一様に驚愕の表情を見せる。それこそほんと、自分の耳を疑うみたいに。
 ……あ、あれ? そんなに意外か?

「……北郷。自分がかつてはどんな態度で娘らと接していたか、少しは考えてみろ」
「え? 最近じゃ常に考えてるけど」
「ならば考え方が甘い。つまり───」

 それから思春さんが語ってくれた。
 結局、生まれてから俺が消えるまで、一度たりとも真名を与えられなかった彼女たちだ。そんな、あの世界でのある意味での“親の責任”を投げっぱなしていた俺が自分に真名を与え、しかも女性として意識するためにその名を呼ぶ、なんて言うんだから───それはもちろん驚くのは当たり前だ、なんてことを。なるほど、説明された俺も驚いている。

「と、父さまっ! とととと父さま父さまっ! 父さまぁっ!」
「《グイグイググイグイ!》おわぁあたたたた!? ちょ、丕!? なんで引っ張るんだやめなさい!」
「欲しいです! 真名っ……真名、欲しいです! ください! 呼ばれたいです! 父さまに!」
「待て待て待てっ、さすがにまだ全員分は考えてないんだっ! だからまずは三人、な?」
『───』
「……ばかもの」

 あれ? さっきまでの団欒風景が一瞬にして絶対零度空間に変わった。
 え? 思春さん? 馬鹿者ってなに!? なんでいきなり馬鹿者発言!? そんな額に手を当てて溜め息まで吐くほど馬鹿ですか今の俺!

「三人……たった三人……」
「誰が……? いったい誰の真名を……?」

 ───アー、ナルホドー。
 この人数の中、たった三人にしか真名をつけないって、そりゃいろいろな意味で角も立つヨネー。
 ……失敗した。あとで自室にでも呼んでから、じっくりと授ければよかった。

「いろいろと期待しているところ、ごめんな。まずは各国の王の娘として、丕」
「!! あ……は、〜〜〜……! はいぃっ!」
「登」
「え!? わ、わたっ……はいっ!」
「禅」
「はいっ!」
「この三人に真名を贈る。他のみんなはもうちょっと待っててくれな。きちんとよ〜く考えて決めたいんだ」

 言ってみる……が、明らかに悔しそうだったり寂しそうだったり悲しそうだったり。
 うん……なんかごめん。どうやら思いっきり期待させてしまったようで……。
 名を呼んだ三人が俺の前に歩いてきて、綺麗に横並びになる。言われたわけでもないのにこうなるのは、染み付いたものなんだろうなぁ。

「じゃあ、まずは丕」
「はい」

 名を呼べば一歩前へ。俺はそんな彼女へ、用意しておいた紙に筆を走らせ文字を連ねる。
 書かれた文字は“華煉”。あの時代を生き、無駄に達筆になったそれでの、綺麗な文字だ。

「“かれん”。この真名をお前に贈る。……いっぱい待たせた。受け取ってくれるか?」

 真名とは言っても相手が気に入ってくれなきゃ意味が無「は、はい! 受け取ります! もう返しませんから!」……あ、うん。泣きそうな顔で受け取ってくれました。泣きそう……だったのに、その文字を見てほにゃあああとどうしようもなく顔が緩んでゆく。

「次に、登」
「はいっ」

 やはり一歩前へ。再び筆を走らせると“好蓮”の文字を書き連ねて、登に渡す。

「“はおれん”。この真名をお前に贈る。呉の王族なら、やっぱり“蓮”はないとな」
「〜〜〜っ……《ぱああっ……!》あ、ありがとうございます父さま! ありっ……ううっ……ありがど……うぅううう〜〜……!!」
「ホワーーーッ!? えなぁあななな泣くほどのことか!? ごめんなほんと! 待たせ過ぎたよな! ごめんな!」

 考えてみれば、呉の王族は“蓮”で繋がっている。
 なのに自分にはそれが無くて、そのままずぅっと生きてきたんだ。……そりゃ、嬉しいに決まっている。
 本人にしてみれば、ようやく“孫家”になれたって意識もあるのかもしれない。
 そんな考えに到ってしまえば、頭に浮かぶのは後悔ばかりだ。申し訳なさを胸に、泣きながら大事そうに自分の真名が書かれた紙を抱く子高───好蓮の頭を撫でた。あ、あとあんまり抱き締めたら千切れるから……やめて。それ以上、いけない。

「……うん。じゃあ……次、禅」
「はい」

 禅は他の二人と比べて、随分と落ち着いた様子で返事をする。
 一歩前に出る姿勢も随分と様になっていた。
 一時は末っ子ってことでいろいろあったもんなぁ……。反面教師とは違うけど、癖のある将や姉を見てきて、一番成長出来たのって禅なんじゃなかろうか。
 かつてを懐かしみながら筆を走らせて、“桜花”の文字を。その紙を禅の前へ。

「“おうか”。この真名をお前に贈る。……いろいろと苦労させたな。これからは俺も、もっと頑張れると思うから」
「ととさ……お父さまの苦労は随分と身近で見てきましたから、大丈夫です。それは、私も苦労しましたけど……」
「……禅? ととさまでいいぞ?」
「うぐっ……だ、だって恥ずかしいじゃないですか、前世では老いるまで生きたのに、子供になったからって子供の口調って。そ、そりゃあまた、産まれるところからやり直したよ? でも《ぽんぽん》はうっ」
「あのな。親にとって、子供はいつまで経っても子供だ。成長がどうとか以前に、そういうものなんだよ。だから無理するくらいならそのままでいいし、むしろ禅……桜花に丁寧口調で喋られると違和感がすごい」
「そこまでなの!?《がーーーん!》」

 禅……桜花が、真名が書かれた紙を受け取りながら、それはもうとても驚いた顔をした。
 だってなぁ……老いるところまで、とか言ってるけど、老いた時でも二人きりの時に、たまにととさま発言して顔を赤くしてたくらいだし。
 そういう迂闊さと言えばいいのか、そういうところってやっぱり桃香の娘だなぁって思わせるのだ。

「とにかく。無理に大人になろうとしないでよろしい。子供の意識に自分を引っ張られそうなら、むしろ悟ったものの考えよりもそっちを優先させるように。みんなもいいな?」
「でしたら父上! 子供としてひとつ“おねだり”をしたいことが!」
「いきなりだなおい!」

 言った途端に関平がシュザァと滑り込んできて、俺の服の袖をグイィと引っ張る。
 言った手前、一応聞いてみれば───

「真名をください!」
『私も!!』

 平の声に合わせて、子供たちの声が一斉に放たれた。

「そうだぞ父! 大体私と関平とで呼び方が似ていて難しいとかで、以前は難儀していただろうに!」
「ですですっ! 私と袁尚とでもそうですよ!」
「いや、尚は母親の麗羽さまとも被っているだろう……あれはどうなんだ? 私も述で、袁術姉さま……美羽姉さまと被っているし」
「そうですねぇ〜、むしろお父さん? 先に産まれた私たちを差し置いて、禅ちゃんを三番目にだなんてぇ〜……」
「お手伝いさん、順番よりむしろ素晴らしい名をください。偉大なる父と母に並ぶ素晴らしい名を!」

 ……心が一度解き放たれてしまえば、躊躇っていうものはなくなるものだ。
 娘たちは遠慮無用に“おねだり”をして、四方八方から俺の服を引っ張る。その中心で、服を引っ張られまくるシャイニング・御遣い・北郷。
 助けを求めて思春を見てみれば、“自業自得だ”と溜め息とともに視線で応えられた。

「あ、あのな、みんな。急いだっていい名前っていうのは完成しないものでだな。特に俺はネーミングセンスってものが皆無であって、今与えた三つの真名だって、受け取ってもらえた俺こそが感動の嵐であるからしてだなっ……!」
「では父よ! 思いついたものをずばっと言ってみてくれ!」
「ロドリゲス《ずばっ》」

 ───その瞬間、娘たちで構築された輪は、一瞬で分解したという。

「というのは流石に冗談だけどな。女の子なのにこんなのをつけられるの、嫌だろ?」
「ぐっ……ひ、卑怯だぞ父よ! 例えだろうとさすがにあれはないだろう!」
「じゃあ柄には……そうだなぁ」
「うぅっ……もらえるって期待しているのに、あんな例を出されたあとだと怖い……! ち、父? いいのを頼むぞ? 一番いいのを頼むぞ? 絶対だぞ?」
「じゃあイーノックで」
「父のばかぁーーーーーっ!!《だっ!》」
「ああっ!? 柄が逃げた!? ちょっ……冗談だ冗談! 冗談だから戻ってこい! 柄!? 柄ぃいいーーーーっ!!」

 慌てて後を追う。足に氣を込めて、誰に遠慮することもなく全力で。
 ……結果としてすぐに捕まえられたものの、向かう先が間違い無く呉の屋敷方面だったことに、本当に本当にすぐに追ってよかったと安堵。
 祭さんに報告されていたら、どうなっていたことか……!
 そもそも真名っていう大事なものを考えるところで、冗談なんて混ぜた俺がいけなかった。反省。
 そんなこともあって、まずは柄の真名を考えることになり……

「大体父は子供のことをほうっておきすぎなんだ。父に理解のある私たちだからまだいいのだろうが、私たちでなければとうに家庭崩壊にだな……!」

 ある程度時間が過ぎて、他の娘がそれぞれの時間のために動き出しても、柄は傍を離れようとしませんでした。
 いや、うん。嬉しいんだけどね? 子供に甘えられる親っていいなぁとか思っていた時期もあった俺だから、とっても嬉しいんだけど。
 今だって執務室の椅子に座る俺の膝の上に、ちょこんと座ってあーでもないこーでもないと言っているかつての娘。既に背格好が同じくらいなこともあって、いつか感じた複雑な気持ちがぶり返してくるのを止められない。
 娘が同じ年の瀬になって、やがて追い抜かれたいつか。
 思い出さずにはいられない複雑な気持ちを胸に、未だに不満を口にして頬を膨らませている柄の頭を撫でる。
 膝の上のお姫様はもっと撫でろとばかりに、逆に俺の手に向かって頭を突き出してくる。まるで猫だ。普段はこんなことはしないのに、どうやら泣いてしまったことで子供の頃を思い出してしまったらしい。

(子供の頃って、無条件に褒められたいって思ってたもんなぁ……)

 自分の歩き方に胸を張って生きるのは難しい。
 子供の頃には出来たそれが、いつしか見当違いって言葉が当て嵌められてゆくと、いろいろと生き辛くなってゆく。
 柄は……そういった意味では胸を張って生きようとするタイプだった。
 だからこそ、逆に褒められ慣れていない。“この子なら大丈夫”って親に勝手に思われてしまうタイプの子だからだ。
 そして、なまじそういうことさえ受け入れてしまう子だから、他の姉妹が褒められていて羨ましいとは思っても、口には出さずに胸にしまう。

「………」

 今日くらい、不満をぶちまけなさいと、無言で頭を撫でまくった。
 いっそ甘やかしまくる気持ちで、後ろから抱き締めるようにして頭やその周辺を撫でまくると、自分から頭を突き出すのをやめて、完全に力を抜いて……やがて、眠った。

「………」

 すぅすぅと眠る柄をそのままに、彼女越しに見る机の上の紙に、真名候補をオガーと書き連ねてゆく。
 パソコンは使わない。こういうのは直筆で書いてこそだ。

「こういうのをあと50個近く……くっはぁあ……! 全国の名づけ親には頭が下がるな……!」

 なにせ、イジメやからかいに繋がるような名前は避けなくてはいけない。
 親が気に入ったからって、子供が受け入れるとは限らないのだ。
 なので子供の立場に立ってみたり、自分がつけられた場合に喜べるか、そしてなにより読み方の違いでヘンテコなものにならないかを考えて……!

「……べつにイーノックだってロドリゲスだって、おかしな名前じゃないんだけどな」

 つける対象にもよるってだけで。片方、一応天使に認められたメタトロンさんらしいが。
 ともあれ考える。
 このあと早速、丕……あーっと、うん。華煉や好蓮や桜花と外に食べに行くことになっているし、時間は出来るだけ取らないとだ。
 なによりまず、俺の中の意識改革が必要だ。
 娘として見てしまう自分を少しは引っ込めておけるようにしないと。
 まさかなぁ、娘と結婚とはなぁ、と。まだ思わずにはいられないものの、それも意識して減らしていこう。
 じゃないと、他人の子として生まれ変わるほどに思ってくれる相手に失礼だ。それが、たとえかつての娘でも。

「黄柄……柄……塚? 束……たばね? いや、それはない」

 出来るだけ姓名や姓字の呼び方から離れたもののほうがいいだろう。
 じゃないと、まだ見ぬ誰かと呼び方が被る可能性もある。
 というわけで。

「刀の柄……いやいや、別に俺の名前を無理に入れる必要はないよな、やっぱり」

 難しいな。相変わらずだけど、難しい。祭さんの文字も一文字だし、応用に使うにもどうにもこうにも。一つの祭りと書いて“かずさ”とか……いやいや落ち着け。

(いやでも、他にいい名前……いや、うーーん……)

 そうしてうんうんと悩んでいる内に、約束の時間になる。
 時折誰かしらが来訪したらしいけど、声をかけても唸るだけだったとか。
 ちなみにその誰かしらが七乃であり、膝に娘を乗せてうんうん唸る御遣いの噂が流れかけたが、そこは僕らの思春さんがシメ……もとい止めてくださり、事無きを得た。




ネタ曝しです。 *デンプシーロール  ジャック・デンプシーが使ったとされる、ウィービング、ダッキング、ブローの複合ナックル。∞を描いて相手を殴るとされるが、映像で見る限りではべつに∞ではなかったりする。  軌道を読んで上手く狙えばカウンターが狙える……らしい。  でも使用者だって相手のことを見ているので、ご丁寧に∞を描き続けるとは限らない。 *孤独を愛する井之頭さん  孤独のグルメより、井之頭五郎。  汁物を飲むと、ズズゥと、確かにそうなんだけどひどく独特な擬音を鳴らす。  なお真剣で私に恋しなさいでは“孤独なグルメ”として登場している。本人ではなく漫画の名前が。 *エス○ールのプラチナダイヤモンドファッションリング  浪漫輝くエステール。  プラチナダイヤモンドリングではない。  プラチナダイヤモンド“ファッション”リングである。  以前はよく聞いた宝石関連の名前でココ山岡があったが、悪徳商法だったとか。  買ってくれたら5年後に買い戻すよー⇒破産で消滅。買戻しはしない。 *シニタクナーイ!  アカギより、通称ダメギさん。  ヤメロー! シニタクナーイ! *二人で静かで豊かで  孤独のグルメより、ゴローちゃんの食事理論。  モノを食べる時はね、誰にも邪魔されず自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ。独りで静かで豊かで……。  凍傷も、ものを食べている時に話しかけられるのは好きじゃないほうです。  あと騒がしいのも。  それが、食事処に来る子供が泣くのが苦手な意味にも繋がっております。  店に来る子供が泣くのは、“そういう場所だから”と親が必要以上に躾るというか、怒るのが原因らしい。  知らん場所⇒いつも以上になんか怖い親⇒逃げ道ない⇒泣く……らしい。 *一夏  ワンサマー。インフィニットストラトスより、よくあるラノベ主人公。  鈍感にもほどがあって、ラッキースケベも多々。  日々、彼のことが気になっている女性たちから殺されかけている。  ちなみに凍傷、告白して恋人になったわけでも結婚して妻になったわけでもないのに、鈍感だからを理由に男を殴ったり一方的に男をダメと決め付ける女性キャラはちと苦手です。  好いている男を殴る勇気があるなら、まずは告白くらいしなさいな。殴った所為で嫌われるであろう覚悟はあるのに、おかしいでしょう。 *羽撃いて───はばたいて  羽撃きなさい劈烏!!  ブリーチより、一貫坂慈楼坊の解放文句。  べつに羽撃いて自体は普通の言葉だけど、読みづらいので羽ばたいてと書けばいい。  でも変換したら羽撃いてになったので、連想で思い出した。  後悔なさい、が口癖の巨体な死神だった。鎌鼬の異名はいったいなんだったんだ……。 *亀の大王に攫われて配管工に助けられる姫  ピーチ姫。毎度毎度護衛とか警備はなにをやっとるんだ。  超マリオ兄弟は、なんというかただ尻拭いをさせられているだけなんだよなぁ……。 *殺意の波動  心の臓! 止めてくれる!  ストリートファイターシリーズより、豪鬼の扱う波動。  今は潰れてしまったゲーム屋でお試しゲーム出来るスペースがあって、それをやっている最中に少年に乱入されたことがありまして。  どうせタダで出来るんだから楽しくやりましょうと、加減をしつつプレイ。  あ、ゲージ溜まった⇒瞬獄殺⇒《ドガタタタタタマキィーーーン!》⇒KO!⇒少年、呆然  ものすごい“やっちまった感”に襲われました。  ところが少年は「すっげぇー! なにこれ! どうやるの!?」と訊いてきた。  苛立ち半分にコントローラーを置いて文句のひとつでも飛ばすのかと思ったら、なんとも嬉しい反応。もちろん丁寧に教えました。  そんな、懐かしくも温かな、おもひで。 *強制されたものではない、自分の奥底から沸き出した生きる目的。  この帽子はな、私に魔法理論のいろはを教えてくれた、恩師の遺品なんだ。  4192年お紙飛行機より、マグナス・ブラッドリー。  テイルズオブファンタジアは僕をテイルズシリーズ好きにした作品です。  ……最後に楽しめたのは、たぶんリメイクTODです。あとは買ってません。 *やめて……それ以上、いけない  あ…やめて! それ以上 いけない  …あいつ…あの目  あーいかんなあ…こんな…いかん いかん  このテンションから次のフトシの回にいくわけです。  そのテンション差がまたたまりません。  孤独のグルメより、東京都板橋区大山町のハンバーグ・ランチ。  いわゆるアームロック回。 *一番いいのを頼む  エルシャダイより、イーノックの台詞。  “大丈夫だ、問題ない”に次ぐ名言であると言われているが、そもそもそれ以外には特に台詞がない。 *束───たばね  篠ノ之さん家の束さん。  たぶん、ISがなければ黄柄の真名になっていた。 ◆後書きです  大変長らくお待たせしております、凍傷です。  いろいろと考えたり読んだりしていたら、いつのまにかこんなに月日が。  ギャフター終了からもう一年ですよ……早いです。  さて、そろそろ恋姫の新作も出るわけですが、いったいどうなることやら。  満足できるのか、不満はあっても楽しめるのか、コレジャナイになってしまうのか。  なんにせよ楽しみです。  それでは、また次回で。  ……ちなみに今回、文字数3万3千いっちゃってますが、いい分割部分がなかったのでそのまま投稿です。  二話〜三話分なので、ちと長いです。  では、また次回で。 Next Top Back