37/えほんのきずな

 ……。

「うう……《ズキズキズキズキ……!!》」

 ぎっくり腰とまではいかないものの、強烈な痛みを抱えたままに進むのはなかなか辛かった。
 老人が多少の段差で腰を庇う理由が解ったような……。

「たはは……朱里に“もしも”の話をしたけど……どの国に下りようが、やっぱり俺の在り方なんて変わらなかったんじゃないかな……」

 だって、どこに居ようと結局は北郷一刀だ。
 相手の受け取りかたもあるだろうけど、下りたのが俺なら、やっぱり警備隊長をやりつつみんなと仲良くなるくらいしか想像がつかない。
 ……や、仲良くなるっていっても、決してその、ああいったことを想像しているわけでは───って消えろ消えろ! イメージが得意になったからって沸いてこないでくれ頼むからっ!

「……と、えっと……冥琳は……っと」

 痛む腰を庇いながら周囲を見渡す。
 思えば小川小川〜としょっちゅうここにはお世話になっているわりに、探検などはしたことがなかったりする。
 いっつも森を抜けると丁度見える滝と岩と小川を眺めつつ、汗を流したり頭を冷やしたりと…………頭を冷やす理由は察してくれるとありがたい。

「……居ない?」

 ハテ。たしかに腰痛の所為で、登るまでに時間はかかったものの……見渡しても居ないなんて、いったいどこに……。

(…………)

 ───鳥がさえずる、空気のいい景色を見渡してみる……けど、それらしき人物は見当たらない。
 耳を澄ましてみても、聞こえてくるのは小川の流れる音と、小さな滝からこぼれる水が、水を打つ音ばかり。
 注意して見渡してみても、特に目立つものは───……え?

「……? なんの音……?」

 滝の音に混じり、嫌な音が聞こえた気がした。
 それはまるで、重病患者が出したくもない咳を無理矢理絞り出されているような、苦しげな……ッ!?

「冥琳!!」

 注意深く眺めたなんて、どこがだ。
 景色の先、木と大きめの岩とが並ぶその場所に、一瞬だが綺麗な黒髪が見えた。
 地を蹴り、今聞こえた音が冥琳が出した音かなんて確信も持てないのに走り、その途中でどうしてか冥琳に「来るな」と言われるのも構わず近寄り……───

  ───俺は、赤を見た。

「……冥琳っ!? それっ……」

 屈み、咳き込んでいたのだろう。
 自嘲めいた笑みを見せながら俺を見上げる冥琳の手には、赤い液体がべっとりと……

「血を、吐いて───!?」

 驚くよりすることがある。咄嗟に駆け出そうとしたのは、自分にしてみればいい判断だったはずだ。
 すぐに誰か、信頼のおける医者───華佗を呼ぼう。そう思ったのに、駆け出そうとした俺の手が、赤に染まる手で掴まれた。

「……め、冥琳?」
「すまないな、北郷……悪いが、皆に知られるわけにはいかない」
「な、なに言ってるんだよっ! 血を吐くなんて普通じゃないだろ!? すぐに華佗に見てもらわないとっ!」
「……見てもらわなかった、とでも思うか? “ようやくこれから”という時だというのに、ほったらかしにするとでも思うか」
「───」

 自嘲の笑みは消えない。そして、俺の中の“駆け出そうとした自分”が急速に冷えていってしまうのが、自分でも解った。

「今まで保ったのが不思議なくらい、だそうだ。赤壁の頃から違和感を感じていたが、終戦し……ああ、そうだな。北郷、お前が消えたという報せを受けた夜、苦痛は消えた」
「え……?」

 俺が消えてから? なにかの偶然ってこともあるんだろうけど、たとえば。そう、たとえば……俺が存在することで捻じ曲がった正史があるとして、すでに外史めいた軌道を進む今がある。
 この世界では雪蓮……孫策が死ぬことも、夏侯淵が死ぬことも、曹操が敗北することもなかった。
 同じく病で倒れるはずの周公瑾は健在でいて、でも……もしそれが、俺が係わったことで一時的に捻じ曲がっていたものだとするのなら───

「………あ」

 これもまたたとえば。
 俺が係わることで、死ななかった命があるなら……逆に、係わったことで死んでしまう命もあるのでは……?
 孫策が死ななかったために散る兵が居る、夏侯淵が死ななかったために散る兵が居る、曹操が敗北しなかったために…………つまり、そういうこと。
 辻褄合わせのいたちごっこをするわけじゃなく、たしかにそういった事実が存在するんだ。
 そう、散る兵が居るのなら、孫策が、夏侯淵が生きていたおかげで生きていられる兵も居る。
 俺がこの世界から消えることで、捻じ曲がった辻褄合わせをする必要が無くなった途端、冥琳の病気が治ったっていうのなら、そこには少なからず歴史改変の影響が出ているのだろう。

「……もしかして、冥琳は自分の病気に俺が関係してるの、知ってたのか?」

 だから聞いてみる。思い出したのは、必要だからといっても急に言われた言葉。
 やるべきことを成したのなら出ていくべきだと言われ……思えばあそこには多少なりの焦りが見えた気がした。
 そしてさっき感じた違和感の正体は……そっか、なるほど。

「知ってたから、原因かもしれない俺を遠ざけようとしてたんじゃないのか?」

 思い当たったのはそんなこと。そうかもしれないしそうじゃないかもしれない、曖昧すぎることだけど、冥琳はもはや関係もなしといったふうに溜め息を吐いた。

「そうであろうとそうでなかろうと、もはや関係のないことだ、北郷。人はいずれ死ぬ。この病がたとえお前に影響していることだろうが、私がお前を恨む道理はない。感謝さえしているくらいだ」

 岩に背を預けた冥琳は、もう落ち着いたのか、咳をすることもなく言葉を吐く。

「お前が天より大陸に戻った途端、少しずつ蝕まれていったのは事実と受け取るべきなのだろう。一年という時間が多少の回復を見せてくれたのだろうが、完治には至らなかったらしい」
「冥琳……」
「そんな顔をするな。むしろ、逆に解けない難問に向かうようで楽しく思う自分さえ居る。何故、お前が消えるだけで癒えたのか……それを考えながら死んでいくのも、悪くない」
「───……」

 悪くないなんて、そんなことない。悪いに……悪いに決まってる。
 せっかく平和の只中に居て、ようやく騒ぎも治まってきたっていうのに……報告に騒ぎのことがない、って喜んでくれていたのに、病気って形で終わるなんて……そんなのあんまりじゃないか。
 どういうことなんだ、これ。俺が消えると治まる病なんて、どんな性質の悪い冗談だ。
 “俺”っていう存在の所為で歴史に亀裂が走った? 誰かが生きる代わりに誰かが死ななきゃいけなくなった? それとも……変わってしまった歴史の中に“俺”が残るためには、他の誰かが居なくなる必要が───……!?

「………」

 嫌な予感っていうのは当たるものだ。でも、こればっかりは当たってほしくない。
 だって、そうなればきっと冥琳は助からない。あの日、消えたくないと思っても華琳の前から消えるしかなかった俺と同じように。
 ……この世界が続くには、“枠”が必要なのか? 誰かが増えれば誰かが消えるなんて、そんな枠が。
 普通なら居るはずのない俺が、この世界に下りたから、冥琳に限ったことじゃなく、他の誰かが……

(それって……)

 考えてみたらゾッとした。だって、もしかしたらそれは華琳かもしれなかったんだ。華琳じゃなくても、魏の誰かかもしれなかった。
 仮説にこんなに怯えてどうするんだって思う……思うけど、理屈じゃない。目の前で病に侵されている人が居て、その人は俺の存在の有無で苦しんでいる。それは……たとえ仮説だったとしても、心が凍るくらいに恐ろしいことだった。

「華佗に……自分を呼んだのは冥琳だ、って聞いた。その意味がこれで、華佗でも治せなかった……のか?」
「ああ……そういうことらしい。すでに思い付く限りのことはした。病であることは間違いがないのだが、華佗でも治せないそうだ……病の気を辿ってみたところで、病の底……気の淀みが見切れないと言っていた。似たような事例など、北郷。お前の時以来だと聞いたぞ」
「そんな……」

 たしかに“周瑜”は病死するって歴史がある。でもそれは、俺が係わってどうこうって話であるはずがない。
 助けようと思えば助けられたのが今までで、その度に俺は“存在”を削りながら生きてきた。
 でも、じゃあもし、それが“存在”を削る程度では救えないものだとしたら? たとえば……俺が存在を削ることで、この世界の歴史が完全に“正史”の枠から外れたために、“冥琳が死んで当然”という世界になってしまっているのなら?
 ……救えるのは以前俺が下りた世界までで、もう一度こうして下りたこの世界は、すでに完全に“世界”として確立されていて……存在を削るくらいじゃあ助けられるものがなにもなかったら?

(……あ)

 なにか、繋がった気がした。
 俺は歴史を知っていたから自分の存在を削ることで歴史を捻じ曲げてこれた。
 でも、この歴史はすでに華琳が天下を治めた新たな歴史。俺が歴史の先で知る三国志にはない世界だ。
 だからもう、未来の知識を活かすことで誰かを救うことなんて出来ないし、それによって俺の“存在”が欠けることもない。
 その代わり……死が誰かを迎えにきた時、それはまるでそうなるのが当然のようにその者を殺す。俺が、どれだけ未来における知識を駆使してもだ。
 だから華佗でも救えない。祭さんが助かったのはあくまで世界が捻じ曲がり切る前であったからであって、今こうして未来が読めない世界に至った時点で、重い病を患っている冥琳は───…………きっと、助からない。

(……な、なんだ、それ……はは……)

 乾いた笑いがこぼれそうになるのを、なんとか留める。
 死ぬ? 死ぬだって? そんなに簡単にか?
 死ぬのがもうさだめられたことだから、医者が手を打とうとしても助けられないって?

「……冥り───っ……え?」

 ……ちょっと待て。救えない? 未来の知識をどれだけ駆使しようと?

「なぁ、冥琳。華佗は? 諦めてたか?」
「……? いや……可能性は低いだろうが、最後まで諦めるつもりはないと……言っていたな」
「そっか」

 それだけ聞ければ十分だ。華佗は俺の力が必要になるかもしれないと言った。
 氣を高めろと。気配をべつの何かに溶け込ませることの出来る自分に至れと。
 ……そこに、治療の鍵があるんじゃないか?

「冥琳、華佗のところへ行こう」
「なに? ……無駄だ、と言ったはずだが?」
「ちょっと考えがある。無駄がどうした、そんなの歴史をもっと捻じ曲げてでも変えてやる」
「…………」

 きょとんとした顔で見られた。次の瞬間には咳き込む冥琳だが、どれだけ促しても動こうとしてくれない。まるで自分の死をすでに受け入れているかのように。
 ……くそっ、どうしてこの時代の人はこうなんだ。死ぬことは天命だとか仕方のないことだとか───どうして最後まで、無様だろうが生にしがみつこうとしないんだよっ……!

「周々! 善々! 言葉が通じるかどうかじゃなくて直感で受け取ってくれ! 今すぐ医者を───華佗を連れてきてくれ!!」

 滝の下へと声を張り上げるが……果たして、届いたかどうか。

「やめろ北郷、私は無様にもがくつもりなど───」
「だめだ、もがいてもらう。無様でも生きて、死ぬならおばあちゃんになってからゆっくり、娘にでも孫にでも見守られながら逝ってくれ。じゃなきゃ───俺が嫌だっ!」
「……な……っ!?」

 そうだ、相手が万策尽きて死を受け入れようとしてたって知るもんか。
 やれることがあるかもしれないならなんでもやる。やれないことがあるなら、やれるようになれるまで頑張ってやる。
 だって───そのために、今まで自分を鍛えてきたんだから。

「……北郷。無駄な努力ほど見苦しいものはない。お前も魏で軍師まがいのことをしていたのなら解るだろう」
「解らないよ……解るわけないだろ、そんなの。努力に無駄もなにもあるもんか。出来ないから努力する。やれるようになるために努力する。出来ないことがあるなら、出来るようになるまで努力すればいい。時間が無くたって、最後まで諦めないことが努力だろ……! 無駄な努力なんて、ない……あるもんか……! 死んでほしくないって意思が固まってるなら……死なせないようにする以外のなにが努力だよ!!」
「…………北郷……」

 ……決めろ、覚悟を。
 確実な答えはもう出ている。“絶対に失敗できない”。そして、“絶対に簡単にはいかない”。
 最悪、冗談抜きで死ぬ可能性だってある。あるけど……やるって決めたならな、一刀。怯える必要も、躊躇する必要もないんだ。ただ真っ直ぐに、自分のやりたいことをやってみろ。
 その果てが死であったなら、幽霊になってでも魏のみんなに謝りにいけ。

(魏に生き魏に死ぬって、誓ったくせに……)

 本当に、俺ってやつは優柔不断の八方美人だ。どれか一つって選択肢をいつもいつも選べないでいる。
 でも……はは、仕方ない、よな。そうしたいって、そうしてやりたいって思っちゃったんだから。

「冥琳。今からやることに、あまり口を出さないでくれると嬉しい。俺が勝手にやることだし、最悪の場合は本当に嫌な思いをさせると思う。だから、全部終わって全部上手くいったら、もう本当に、引っ叩いたりしてもいいから」
「……待て。本当に、お前はなにをする気だ……」
「治すんだ。未来の知識じゃなくて、“この世界で学んだ知識”で」

 ……未来の知識を振り絞っても治せない。もはやそういった影響力は消えてしまっている。
 だったら、この世界で得た知識、経験の全てを以って、冥琳を治す。
 出来る保証なんて何処にもなく、本当に覚えたばかりで曖昧な方法での治療……いや、もはや治療と呼べるのかも解らない。
 だから、全ては華佗が来てからで決まる。華佗が、もし“それでいい”と頷いてくれるなら───!

「頼むぞ、周々、善々……! 早く華佗を───」
「───連れてきたぞ」
「へ?」

 まだかまだかと待っていると、誰よりも早く……周々や善々よりも早く、小脇に男を抱えた思春が……駆け込む動作も見せず、立っていた。
 速ッ!! なんて速い! ───なんて驚いている暇はないっ!

「華佗!」
「あー……北郷? 俺に用か? 何も説明されないうちから無理矢理連れてこられたんだが……」
「再会の挨拶よりこっちだ! 冥琳が───!」
「───」

 小脇から解放された華佗が、岩に背を預けて呼吸の安定に集中している冥琳を見る。
 その目は、冥琳の言う通り……助けることの出来ない無力感を抱いており、ただ俯き、首を左右に振るだけだった。

「悪いが北郷、今のままでは俺に彼女は救えない。無力を噛み締めることしか出来ない俺は、もはや五斗米道を名乗る資格さえ……くっ!!」
「いや、“くっ!”じゃなくて! なぁ華佗! ひとつ訊きたいことがあるんだっ!」

 いっそ、胸倉を掴むくらいの勢いで顔を近づけ、口早に言う。

「な、なんだ……? 俺に訊きたいこと……?」
「───華佗、お前はたしか、体に宿る病魔をその目で見分けて、危険なものだけを鍼で突くことで消していく……んだったよな!?」
「ああ。我が五斗米道は氣の流れの中に蔓延る病魔を的確に突き、淀みを無くすことで人々を救う業。だがしかし……! お前の病魔と周瑜の病魔、これを見分けることが俺には出来なかった……! それは俺がまだまだ未熟者である証拠! くああっ……! このままではこの技を授けてくれた師匠に顔向けすることもできーーーん!!」
「わざわざ頭抱えて叫ばなくていいからっ! とにかくっ、病魔が何処に居るのかが解れば、助けることが出来るんだろっ!?」
「あ、ああ……それはそうだが……今の俺には見つけることが出来なかった。それは俺が未熟───」
「それはいいからっ!! ……ってごめん、もうひとつ訊きたい! 華佗がその目で見る病魔っていうのはどんな形をしてるんだ!?」
「形……形というよりは気脈に詰まった黒いモヤのようなものだ。それは体の中に幾つも存在するが、全ての病魔が悪というわけじゃない。善い方向に作用する病魔も居るからな。それを消してしまっては、逆に体調を崩すことに繋がる」
「モヤ……モヤだな!? ───よし!」

 ヒントは得た。得たら、待ってなんかいられない。
 冥琳の傍に座り、彼女の手を握ると───早朝、明命に教えてもらったばかりの方法で、氣を解放する。

「北郷っ……? なにを───」
「病人は黙ってるっ! ───華佗! ちょっと無茶をする! けど、意地でも成功させてみせるから、俺が指示した場所に鍼を落としてくれ!」
「なんだって……? まさか北郷、お前はすでに氣の変換を会得して───!? そうか! ならばいけるかもしれない!」
「いやごめん! 実は今朝教わったばっかりだ!」
「なっ……!? なにぃーーーっ!!? い、いや……だがそれでもやろうとするお前の意思、俺は覚悟として受け取ろう! 人を救おうとする男の覚悟を止める理由が、俺には存在しない!」

 正直に言ってみたら、しこたま驚かれた。
 絶対量の拡張はやっていたけど、自分の氣をべつの何かに溶け込ませる業は、本当に今朝教わったばかりだ。
 だがしかしだ。血を見てしまったからには彼女がいつ力尽きてしまうのか気が気ではなく、一週間氣を鍛えてから〜とかそういった悠長なことは言ってられそうもなかった。

「華佗……! なにを申し合わせたように熱く語ろうとしているのかは解らんが、止められるなら止めろ!」
「だめだ。北郷はもう覚悟を決めている。医術を学んだ者としては止めるべき行為だろうが、この俺も医者である以前に───一人の男! ……熱き男の魂は、たとえ病魔であろうが止められはしないっ!!《クワッ!!》」

 俺の覚悟に華佗が共鳴するように叫び、その肩越しに見える景色が赤く燃えてゆく!
 そうだ……やるって決めたなら、躊躇するだけ自分の覚悟にも失礼なんだ!

「な、なにを言っているんだこの男は……! 思春、お前からもなにか───」
「……今だけは北郷と同意見です。私は、貴女が死ぬ事実を呉にとっての善として受け取れない」
「っ……」

 思えば、ひどい“勝手”の押し付けだ。
 死んでほしくないから死なせない……本人が諦めているというのに無理矢理生かそうとすることに善はあるのだろうか。
 ……いや、たとえなくても構わない。今だけは本当に、自分勝手でもいいから“生きてほしい”って心から願える。
 願えるなら───人の命を救おうとしているのなら───!

「───錬氣、集中!」

 意識を沈めていく。未熟で、完成もされていない氣を以って。
 自分の形として確立できてもいない、中途半端な氣を以って。
 一ヶ月やそこらで誰かに追いつけるほどの実力もないままに、頑張って頑張って覚えようとしたところで、自分よりもっと前から鍛錬を続けていた物に追いつくこと……それは全然まったく容易じゃない。
 でも……今はそんな未熟に感謝しよう。未熟だからこそ、完成されていないからこそ、“俺”の氣はイメージにも景色にも溶け込むことが出来るのだろうから。

(っ……)

 イメージは、空気になろうとした自分、水になろうとした自分、熊を真似ようとした自分、様々だ。
 しかし鮮明に呼び起こさんとするのは、思春の気配を真似ようとした自分。
 誰かの氣を真似ることでその人に近づけるなら、俺は俺の全てを行使して冥琳の氣を真似きってみせる。
 真似て、そして内側から冥琳の中に存在する“淀み”を見つけ、そこへと……華佗の鍼、を……!

「かっ……ぐ、……」

 まず初めに感じたのは鋭い頭痛。
 次に、“自分”がばらばらになるような、なにも掴めない場所で溺れるような、ひどい孤独感。
 それは、そうだ。自分であったものの全てを、冥琳に書き換えようとしているようなものだ。
 冥琳の手を握る自分の手から一番遠い場所から、じわじわと溶かされていっている幻覚めいた痛み。
 幻覚のはずなのに確かに痛みとして走り、座るという格好を保てずに“崩れた”。

「北郷……よせと言っているだろう……! 今日明日に死ぬというわけでも───」
「じゃあ明後日は! 一週間後は生きてるのかっ!? そんな血を吐いて! 真っ青な顔をしてっ! こんな場所にまで来なきゃ苦しめないヤツを、死ぬ瞬間まで見て見ぬフリをしろって言うのかよ!」
「っ……北郷、お前は……」

 そんなこと頷けるわけがない。俺は、そういうことを見過ごさないために強くなろうって思ったんだ!
 それを、運命だからだとか天命だからだとか……そんなことで諦めたくない!
 天命がなんだ! 冥琳がそんなにあっさり死ぬことが天が決めた“正史”だっていうなら───華琳が望んだ天の御遣いである俺が! そんな運命を捻じ曲げた未来を、この世界の“正史”にしてやる!

「───北郷! 目で見るんじゃない……心の目で見るんだ! 氣を集中させ、相手の氣の流れを手で、目で、心で感じろ!」
「っ……簡単に言ってくれるなよ……!」
「……おい貴様。よく解らんが貴様は今北郷がやろうとしている方法を知っているような口ぶりだな。何故すぐに実行に移さなかった」
「この方法は酷く集中が必要となる。氣での治療は知っているだろう? 己の氣を対象の氣へと変化させ、傷口に当てることで傷を癒す。氣の力で治癒能力を高めてやるんだ」
「ああ」
「今、北郷がやろうとしていることは、そのさらに上を行く方法……己の中にある氣を相手の気脈へと流し、その中から氣の淀みを探知するといった、いわば自殺行為にも等しい方法だ」

 いや……そりゃ解ってるけど、こういう場面ではっきりそういう言い方をだなっ……!
 くはっ……しゅ、集中、集中……!

「これは相手の傷のみに、相手の気の波長と同じように変化させた氣を当てるといった……そんなやさしいものじゃない。相手の気脈に自分の氣を変化させたものを満たしてやる必要があるんだ。なぜ満たす必要があるのかといえば、そうしなければ淀みが何処にあるのかを調べようがないからだ」
「淀み……だと?」
「ああ。目で見えないのなら目以外で見つける。俺や北郷はそこに目をつけた。だが一人ではどうやっても解決はしない。淀み……病魔を見つけたところで、その病魔を殺さなければ意味がないからだ。だから───ここに俺が居る!」

 視界の隅で、華佗がババッと妙な構えを取り───一度閉じた目に片手を翳すと、横にザッとずらす───のと同時に開かれた目は、薄ぼんやりと奇妙な輝きを持ち……その眼光が冥琳と俺とを睨むように射抜く!

「周瑜の氣を辿ることが出来ないのなら、北郷が流してゆく変化した氣を辿る! 我が身、我が鍼、そして師に教えられし技を以って───俺は! 誰も死なせはしない!!《クワッ!!》」
(……暑苦しい男だな)

 なんだか、話を聞いていた思春の心の声が聞こえた気分だった。

「北郷! お前の覚悟、お前の勇気、そしてお前の努力を……俺の全て、五斗米道の全てで支えよう!」
「っ……信頼してくれ、るなら……! 一刀、って……呼び捨てにしてくれ……!」
「そうか───解った。だったら俺のことも華佗と───」
「いや、それもう言ってるから……!」
「そ、そうか……? くっ……そうだったか……!」

 ……こいつ、何処か抜けてないか……? なんだか俺が言えた義理じゃない気もするんだけど、

(〜〜〜っ……)

 気づけば、冥琳はもうなにも喋らなかった。
 諦めたのかと思えばそうじゃない……彼女は苦しげに息を荒げながら、気を失っていた。
 口からは血の滲みが小さく零れ、顔はもう真っ青だ。
 急がなければいけない───なのに、どういう冗談なのか───!

「っ……? まずい、雨だ……! 一刀、急がないと周瑜が体を冷やす! そうなれば体力も低下し、病が進行してしまう……!」
「解っ……て、る……!」

 ズキズキと体が痛む……が、城へ移動をするなんて悠長なことは出来ない。
 それに城に移動したとしても、集中してみせるには人が多すぎる。
 だから、冷えるだろうけどここでやるしか……、……?

(あれ……?)

 ふと、雨が途切れる。
 何事かと思ったけど、冥琳だけを見ている自分の視界の隅に、先ほど俺の肩の上にのった白黒のコントラスト。
 それだけで、戻ってきた彼らが屋根代わりになってくれたのだと理解する。
 ……時間はかけられない。雨に濡れなくても、空気が冷えれば一緒だ。もっと、もっと集中して氣を……、氣……を……っ……!? あっ……!

「よし、いいぞ一刀……! その調子で───……はっ!? し、しまったぁっ!」

 気づいた事実に重なるように、華佗の叫びが聞こえる。
 ……なんてこと。予想してはいたけど、ここまで早く……!

「……なんだ、どうした」
「っ……」

 思春が疑問を投げかけると、華佗は一度息を飲むようにして、今が最悪の状況であることを話す。
 そう……ちょっとシャレにならない。
 冥琳の中にある淀みを調べるために、冥琳の体に通る気脈を俺の氣で満たさなきゃいけない……それはいい。
 だが、肝心なのは俺の氣の絶対量と、冥琳の氣の絶対量の問題。
 大体一ヶ月程度しか氣の開発をしていない俺にとって、たとえ前線で戦わぬ冥琳であっても、この世界の武人の氣を満たすには至らない。

「……つまりせっかく変換しても周瑜の気脈を満たすには至らず、それでは数ある病魔の中から“重要な一つ”を見極めることが出来ない。まして、一刀は五斗米道が使えるわけじゃない。気脈の中から害になる淀みだけを特定するなど───不可能だ」
「なんだと……!?」

 そう……いつも、一歩も二歩も足りない。
 こんな後悔をしないために鍛錬をしたっていうのに、それでも足りてくれないのだ。
 移し身みたいなことが出来る未熟な氣だからいい。が、その絶対量が足りなければまるで意味がない。
 冥琳の気脈が細いことを願ったんだけど……ダメ、だった。

(じゃあ……仕方ない、よな……)

 ……本当に、仕方ない。出来ればやりたくなかったけど……ごめん祭さん、またちょっと無茶をする。

「っ……く、ああああっ……!!」

 自分の意識を、繋ぐ手と丹田とに分ける。
 歯を食い縛り、“錬氣”と“変換”の繰り返し───丹田で氣を作った先から変換、冥琳へと流していく……!

「───! よせ一刀! そのやり方じゃあお前の体が先に壊れる!」
「いっ……が、はっ……ぁあああ……!!」

 以前、祭さんに教わった絶対量の拡大と同じ理屈だ。
 自分の体を錬氣工場として意識して、氣を練り続け、変換し、流し込む。
 けれど錬氣する速度も遅ければ、変換する速度も流す速度も遅すぎて話にならない。

「壊れるだけならまだいい! 氣を練ることが出来なくなり、満足に動くことが出来なくなることはおろか、最悪死ぬことにっ……!」
「……!」

 華佗が身を案じてくれている。その隣では思春が息を飲み……でも。
 やめろと言われたってやめられない。それは固めた覚悟を捨てて、自分が辛いからって理由で相手の命を諦めるのと同じだ。
 崖に落ちそうになっている人の手を、自分が疲れたからもういいって理由で手放すのと、状況は違えど理屈は同じ。
 ……俺は離さない。
 手が痺れようが自分まで落ちそうになろうが、死なせたくないって思ったら最後まで一緒に生きるための突破口を探してやる───!

「っ……は、ぐ、う……!」

 俺が今やっているのは、“確立したこの世界”の軸を狂わせることだろうか。
 散々曲げてしまったからこそ、今この世界が確立しているっていうのに……俺はそれを、また捻じ曲げようとしている。
 自分がそうであってほしくないって理由ばかりで“理”(ことわり)を捻じ曲げ、自分にとって都合のいい世界を作ろうとしている。
 この捻じ曲げが成功したとして、そのために誰かがまた苦しんだりするんだろうか。彼女が生きることで、別の誰かに不幸が訪れたりするんだろうか。
 ……いや。仮説に怯えていたって進めない。今は、なによりも彼女の無事を願───

「《ビキィッ!!》がっ───!? あ、ぐあぁあああっ!!」
「一刀!?」
「北郷!」

 ───う、より先に……きてしまった。
 祭さんに教わったやりかたで無理矢理気脈を広げていた時と同じ。
 鋭い痛みが全身を襲い、先ほどまでの痛みとは比べ物にならないくらいの苦しみが全身を支配。
 痛覚がおかしくなったんじゃないかってほど、痛みしか感じられなく───……なってもまだ。

「っ……は……! め、いりん……! …………っ……冥、琳……!」

 握った手は離さず、息を荒げ、痛みのあまりに吐息が嗚咽に変わろうとも、彼女の気脈を満たすために氣を練ることをやめはしなかった。

「一刀……お前って男は……! 俺達も負けていられないな……甘寧、あんたはたしか、自分の気配を周囲に溶け込ませることが得意だったな」
「あ、ああ……」
「だったら、一刀がやっているのと同じように、一刀か周瑜の氣に合わせて流してやってほしい。……いや、ここで周瑜に氣を混ぜるのは危険か。病魔不可視の病に侵されたことのある一刀だからこそ、今の状態が保てていると、慎重に考えたほうが良さそうだ。となれば……できるか?」
「……やってみよう。多少の付き合いだ、北郷の氣の在り方くらいは理解している」
「なに? ……ふっ、どうやら一刀は他国の者にも想われているらし《ヒタリ》うわっ!?」
「それ以上口にすれば手が滑るぞ」
「……、わ、わかった、すまない……!」

 ……ていうか、あの……? 人が苦しんでいる横で、いったいなにを……!?
 思春さん……!? 今は曲刀で人を脅してる時じゃないんじゃ……っ……づぐっ……だ、だめだ……! 集中、しろ……!
 痛い……! すごく、痛さ以外のことがどうでもよくなったみたいに、体が痛みしか感じてくれない。
 瞬きでさえ痛く感じて、息をすることだけでも体内に焼きごてを沈められているような鋭い痛みが……!
 死ぬ、冗談抜きで、死ぬ……! 体が死を選びたがっているくらいに辛い……!
 いっそ死んでしまえ、そうすれば楽になる、って、祭さんの時のように体が勝手に意識を手放そうとする……!

「は、ぐっ……い、ぎぃいぁああっ……!!」

 それを、歯を食い縛ることで襲いかかるさらなる痛みで塗りつぶし、溢れる涙を拭うこともなく流し、集中を続ける……!

  ……本当にこんな方法で見つかるのか?

 するとどうだ。
 今度は体が、頭が、こんな“馬鹿げたこと”をやめる言い訳を探し始めた。
 誰かを救う覚悟ってものを、もう頭が“馬鹿げたこと”だと言い張っているのが悔しい。
 なのにやめろやめろと投げかけられる信号を受け取った先から捨てて、少しずつ作られる氣を変換、流すことをやめない。

  彼女が助かったからって、なんだっていうんだよ。

 弱音ばかりが聞こえる。
 助けたところで何があるわけでもない。“運命なんだから仕方ないだろ?”とでも言うように。

  それよりも俺が五体満足で魏に帰るほうが重要だろ?

 死んでしまっては意味がないと。
 お前の身も心も、全ては魏のためにあるんだ。死んでどうする。
 命を張る理由がどこにある。相手がいつか死ぬって受け入れてるなら、そっとしておけばいいじゃないか。
 そんな言葉を、何度も何度も浴びせてくる。

  誰もお前を責めないさ。むしろ助けようとしたことを褒めてくれる。

 だから、な? もうやめろ。
 ……ジワジワと、俺の体までもを止めさせようと信号を送る。
 無意味だ、無価値だ、適当にやって適当に甘い汁でも吸っていろよ、と。

  お前は民たちだけ笑わせてればいいんだ。それが仕事だ。

 ざわざわと胸がざわめく。
 感情が殺さていくように心が冷たくなっていき、自分が生きるためにそんな命は捨ててしまえって心が、じわじわと……

  な? 命張る理由なんてないだろ。捨てちゃえばいいじゃないか、そんな───

「《ギリッ……》……ふっ……ざぁ……けるなぁあああああっ!!!」
「おぉぅわっ!?」
「! 貴様、急に声を───」

 捨てろ!? 仕事!? だからなんだ! そんな理由で人との繋がりを簡単に手放して、そんな先で拾った命をこれからの人生に費やして、笑っていられるもんか!!

「命を張る理由が、っ……ない、だって……!? 理由ならあるさ……! 誰か一人の命を救おうとしてるんだぞ……! 自分が命を張らなくて、そんなことが出来るもんかぁあああっ!!」

 メキメキと体が軋む音さえ聞こえてきそうなくらいの激痛の中で叫び、さらにさらにと氣を練ってゆく……!
 そうだ、命を救いたいなら、己の命すらもかけるほどの覚悟を……!
 命と命が等価だっていうなら……それを救いたいなら、代償に命を賭けなくてどうする!
 勝負に勝てば命が救え、負ければ消える……ただそれだけの、単純な賭けだ!
 それを成し遂げるまでは、自分の弱音になんか耳を貸してやらない……そんなにもヤワなら、これから先の鍛錬なんてやっていけない! きっと、誰も守っていけない!
 だから……俺の中の臆病な自分にだって届くように、何度だって叫んでやる!
 一度覚悟を決めたなら最後までそれを貫き通してみろ! それが、俺がこの世界で学んだ、未来の知識よりも大切なものだろう!?
 諦めるもんか! “今日や明日死ぬわけじゃない”って、じゃあ時間が経てば死んでしまうってことじゃないか!
 血を吐いて! 苦しそうに気を失ったりまでして! 心配させたくないからって、人目を気にして……こんなところで独りで苦しまなきゃいけない人を、他人事だからってなにもせずにほうっておけるか!

「《ビキィッ!》があぁっ!! ……ぅ、あ……!」

 ───頭痛がする。頭が割れるくらいの……ああくそ、まいった。
 漫画や小説で見るものに、どんなものなのかって思っていた時期もあったけど……これほどの痛みか、“頭が割れるくらいの”っていうのは……。
 光を受けたわけでもないのに視界が点滅して、バランスを保っているはずなのに体が傾いて。
 痛み以外の感覚を呼び起こそうにも、今は氣を送るので精一杯で……他の機能なんて、痛がるか涙を流すか以外に働いてくれない。
 ……ああ、そうだ。馬鹿なことをしてるって自覚はあるよ。
 他人のため他人のためって動いて、それで死んでしまったら本当に馬鹿かもしれない。
 こうでありたいと歯を食い縛ったところで、人間の体には悔しいけど限界ってものがある。
 どれだけ救いたいと願っても、どれだけ“これを耐えれば”と思っても、叶えられる願いとそうじゃないものがどの世界にも存在する。
 出来ないと確信が持てるものをやろうとすることは、本当に……呆れるくらいに馬鹿なことかもしれないけど。

(で、も……!)

 そう。“でも”だ。
 誰がそれを、“俺には出来ない”と確認したというのだろう。
 こんなことをするのは初めてだし、経験からすれば無理だとは言いたくもなる。
 俺だって出来るだなんて確信を持っているわけじゃない。───わけじゃないけど、出来ないって確信だって持ってない。
 どれだけ苦しくても辛くても、助けたいって思ったんだ。それを“俺じゃあ無理だからやめておく”って逃げたら、それは一生俺の中の後悔に変わる。
 もちろん助けようとして助けられなかった辛さのほうが重く圧し掛かるだろう。自分が係わって、なのに助けられなかったんだ。他人事だ〜って笑いながら気取って逃げるのとはわけが違う。
 けど……けどさ。付き合いはほんの一ヶ月程度だけど、俺はもう係わってしまったから。
 抜けているな、とか仕方のないヤツだとか、いろいろ呆れられたりもして……思い返せば苦笑しか残らないようなことばっかりの係わりだけどさ。
 ああ、そうだ。どんな些細なことでもいい。心残りがあるのなら、別れたくないって思えるのなら、手を伸ばすのは当然なんだ。

(だから……だからぁあっ……!!)

 歯を食い縛る。途端に歯に電流が走ったような痛みが走るのに、もはや全身が痛すぎて怯んでもいられない。
 そんな中で、ふと感じたのは暖かさ。
 痛みしかない点滅した世界で、背中にやさしく触れるその暖かさが、無理矢理の錬気や拡張のために弱っていた気脈に流れてゆく。

「……集中しろ。貴様の氣に合わせたものを流してやる。失敗は許さん」

 “なにが……?”と振り向くことも出来ない俺の耳に、聞こえる声がやさしかった。
 こんな時じゃあなければドスの利いた声に聞こえたんだろうけど……本当に責めるような言葉なら、こんな温かさは流れてこないだろうから。

「……、……」

 満たしてゆく。
 自分と、自分に流れてくる思春の暖かさで冥琳を暖めるように。
 それはゆっくりとだが確実に、冥琳の中へと流れていき…………やがて、雨に塗れた華佗が見届けた者の目で頷いた時───冥琳の気脈を満たす行為は、ついに完了を迎えた。

(っ……つ、は……) 

 繋いだ掌から伝わる、氣の充実感。
 むしろ空っぽになりかけの俺の気脈へと逆流しそうになるそれを暖かく感じながら───気が緩んでしまった。
 俺は、手放したくもない意識を手放してしまい、冥琳の手を握ったままに、その場に倒れた。

(……、待ってくれ…………。まだ、……淀みが……)

 もはや痛みしかない体は限界を迎えていた。
 意識を保とうとしても意識は遠ざかるばかりで、俺は……繋がれた冥琳の手から少しずつ流れる暖かさを感じながら、完全に意識を断った。



-_-/公瑾

 …………なにが優れていた、というわけでもない。
 他人との差という意味で明確に離れる理由があるのなら、それは単に受け取り方に問題があった。
 幼い頃から他人に連れられ、学を得て戦を学び、人の死を見て人の生を見る。
 文台という存在は絶対的であり、国の象徴とさえ呼べた。厳格であるかと思えば飄々とし、娘には厳しくあたるというのに影では心配ばかりをしていた。口には出さなかったけれど、態度を見れば解りそうなものだった。
 そんな人に連れられ、今日もまた戦を見る。死と生、どれだけ上手くことを運ばせても、戦である限りはこれ以上にもこれ以下にもならない。
 絶対的な存在。周りからはそう見られていたけれど、私にしてみれば子の未来を思う母親以外のなにものにも見えなかった。
 子、というのはもちろん、実際の娘であり。また、呉という国でもあった。

 その娘である者と知り合い、ともに明日を夢見た。
 子供の頃の自分といえば、特に物事に口を出すほうではなく、国のためにというよりは自分のために学び、自分のために生きていた。
 一言で言えば自分勝手で生意気な小娘、といったところだろう。
 他の者よりも一歩でも二歩でも前へと進み、気づけば自分と同じ考えを持つ者はあまり居なくなっていた。 
 子供心に思ったものだ───周囲の者の考えは自分とは明らかに違う、自分が特別なのではない、周りがおかしいだけなのだと。
 しかしそれが違うことに気づくのに、時間はそう必要ではなかった。
 周りがまず言い出した。“お前は他の者とは違う”と。
 その才能を埋もれさせるのは惜しい、これからの国のために役立ててくれ、思い返すだけでもいろいろだ。
 その言葉に惹かれるものがあったから学を学んできたわけでもないが、その頃の世では学を生かせる方法が国のため以外のどこにも存在してはいなかった。

 特別な者として扱われ始めた自分は、より多くの学を得て、戦をこの目で見て学んでゆく。
 孫文台という大きな存在の下、彼女が死するまでを長く、そして短く。
 ……いつだっただろう。周りが特別なのではなく自分が特別だということを教えられてしばらく、自分は周りへの関心が薄れていっていた。
 当然だろう、己の思考に追い付けない者へ、わざわざ後ろを向いて手を差し伸べる余裕などない。
 特別だどうだと言われようと、自分が特別であるのは思考の回転の早さを買われたにすぎないのだから。
 味方であろうと上を目指すのであれば叩き落とす。自分のためになることを率先して選び、己が生のために知恵を絞る。
 そうした生きかたを続けてきたある日、私はある意味での“本物”に出会う。

 ……いや、出会うという喩えは適当じゃない。
 その存在のことは随分前から知っていたし、なにより彼女は孫文台の娘であった。
 ともに戦場で育ち、戦をこの眼で見ながら育った、いわば馴染みの深い存在。私が知恵で特別に至ったのなら、彼女は産まれた瞬間から特別だったに違いない。
 そんな彼女がその日、急にだが私に語りかけてきた。
 「この戦場の末をどう見る?」と。まるで遊戯を楽しむかのように、にこーと笑って言ってくるのだ。
 私はまだ発達しきっていない頭を駆使し、目の前の戦場の行く末を唱えた。
 するとどうだろう。
 彼女は一度きょとんと不思議そうにすると、「そっかー」とまた笑う。
 そして……私が出した答えにさらに補足を唱え、「なぜそう思う」と問いかける私に言ってみせた。

  ただの勘だ、と。

 その後のことと言ったら笑えもしない。
 予測した通りの終わりを迎えた戦を前に、私は……予測通りだったというのに唖然とした。
 人が精一杯考え、出した答えに補足をした彼女……雪蓮の言った通りの結果が待っていたからだ。
 他人が他人に興味を持つ、なんてことは、案外なんでもないことから始まる。
 “特別”であることに意味など要らない、特別というのはこんな存在のことをいうのだ……それを知った私が自分から“特別”を脱ぎ去った時、私の頭は彼女の行く末を知りたいという気持ちでいっぱいになっていた。

 意識して交流を持つようになってみてまず感じたことは、この女がとても我が儘で自分勝手だということだった。
 私も恐らくはそうなのだろうが、彼女には負ける自信がある。というか負けたい。
 しかしながら、そんな勝手な彼女の周りにはいつも人が居た。
 彼女が持つ資質……と受け取るべきなのか。人を惹き寄せるなにか、というよりは自分から怯まず突っ込んでいく度胸が彼女にはあった。
 魅力と呼ばないのは、それがあまりに魅力と呼ぶに相応しくない行為だからだと、本能的に唱えられるからだろう。

 そんな彼女と長い時を生き、気づけば子供であった頃などずっと以前に置いてきてしまって───私達は大人になっていた。
 仲間も増え、国として確立し、掲げた旗を誇りとして戦い……だが、ついには敗れた。
 雪蓮は確かに特別だっただろうが、向けられた目が天下統一よりも民の笑顔だったことが、今では勝利に一歩届かなかった原因なのでは、と……嫌な夢を見る自分が居る。
 その夢を見る私は決まって子供で、膝を抱えながら暗闇に差す光の下で、ずっと絵本を読んでいる。
 誰かの夢を叶えるために“特別”を脱いだ自分。そんな自分は間違っていたんだと、“ここまでに至った私”を突き放すように……子供の頃の私は絵本だけを読んでいた。
 特別であった頃のほうがよかった。皆が驚き、褒めてくれた。私は天狗になっていただろうが、よく出来たという事実は私を決して裏切らなかった。
 比べて、今の自分はどうだろう。
 彼女の行く末を見届けようと“特別”を脱ぎ捨て、ともに国のためにと立ったというのに……辿り着いた場所には別の意思によってもたらされた統一。
 それが悪いと言うわけではない……確かに“宿願”は果たされた。
 笑顔で満ちた民たちを見ていれば、回り道をしたけれど間違ってはいなかったと思える。
 思えるのに……どれだけ知恵を絞っても、もう誰も自分を褒めてくれないことが、悲しいといえば悲しかった。

 最後にあの人に頭をワシワシと撫でられ、あの料理を食べさせてもらったのはいつだっただろう。
 よくやったと言われ、不覚にも嬉しさで自然と笑顔になってしまったのはいつが最後だっただろう。
 もはや出来て当然、出来なければ落ち度にしかならない世界で、私は……いや、小さな私はなにを求め、この場で絵本を読み続けるのか。

  ……そんなことを考えていると、ふと……光が強くなる。

 暗闇と、小さな私しか映さない夢の中、暗闇の空から差す光だけが強く眩しく輝いていた。
 ……なにか気配を感じて、小さな私が顔をあげる。
 絵本しか見ていなかった目が、初めて眩しい光を見ようとした。
 天から伸びているのだろうか……果てもないような光の先を仰ごうとして、小さな目が……人影を捉えた。
 頭から光を浴びている所為か、暗闇だらけのこの世界ではよく顔が見えない。
 それでも…………ああ、それでも。

「……やっと、見つけた」

 “それ”が誰なのか、私はどうしてか解っていた。
 ずっと感じていた、両手だけにある暖かい感触。やがて全身に広がる暖かさが、“それ”からは感じることが出来たから。

  くしゃり、と……頭を撫でられた。

 くすぐったくて暖かくて、久しく忘れていた暖かさが頭から体を暖かく、もっともっと暖かくしてくれる。
 あの日、“特別”を脱ぎ捨てることで置き去りにしてしまった子供の頃の私までもを、ひどく暖かく、そして……やさしく包みこんでくれた。

「……どうしてなでるの? わたし、なにもえらいことしてないのに」

 だというのに、“わたし”は意地っ張りだった。
 嬉しいはずなのに不思議そうな顔で、そんなことを言った。
 困らせたいだけなのか、甘えたかっただけなのか───そんなことすらもう忘れてしまった私の視界の中で、“それ”はそれが当然のように……言ってくれた。

「絵本、貸してくれただろ? 最初は気づいてあげられなかったけど、ちゃんと手を伸ばしてくれたじゃないか。……思い出したから、ここに届けた。絵本って繋がりがなかったら、キミを助けられなかった」

 そう言って、繋ごうかどうしようかと彷徨っていた手をやさしく握ると……座りこんでいた“わたし”を、絵本ごと引き寄せ、抱き上げた。

「わっ……」
「それにな? 頭を撫でるのは偉いことをした時じゃなくていいんだ。俺は、撫でたかったから撫でたんだよ」
「………」

 眼鏡をかけていない、常にへの字口の“わたし”を肩車し、より光に届く位置へと持ち上げる。
 “わたし”は戸惑い、だが……自分で“それ”の頭を抱くようにすると、込み上げる思いを抑えることもできずに───

「……また、なでてくれる?」
「もちろん」
「“いいこだね”っていってくれる?」
「ああ」
「わたしも、おにいちゃんのことほめていい?」
「ははっ、褒めたくなったらだぞ?」
「……いやなかおしないで、いっしょにいてくれる?」
「嫌な人のために、ここまで来ないって。な?」
「〜〜〜……じゃあ、じゃあっ……」

 ……光が強くなる。
 暗闇を照らし、影を消し、黒の空を蒼の空へと変え───

「じゃあっ……わたしたち、ともだちだねっ───♪」

 …………最後に。
 目を覆い尽くすほどの眩い光の景色の中で、私は───
 初めて、子供の頃の自分の……“満面の笑顔”を見た。



-_-/一刀

 ───バヅンッ!!

「───! つ、はっ───……!!」

 ブレーカーが持ち上げられたみたいな衝撃とともに意識が浮上する。
 気を失っていたのはどれくらいか───いや、失うのとは違った。
 なんの冗談か、俺の氣で冥琳の気脈を満たした途端、俺の意識は冥琳の意識と重なっていた。
 さっき見たのは……恐らく冥琳の過去と、その深淵と呼べる場所。
 誰も居ない真っ暗な闇の中で、ずっと一人ぼっちだった少女と出会った。
 そして───そして。

「はっ───華佗!!」
「《キィンッ───》……ああ! 任せておけっ! っ……はぁああああああああっ!!!」

 満たした気脈の中、一際濃い淀みを発見した俺は、華佗にその位置を即座に伝える。
 途端、華佗の両目が薄緑色の輝きを放つと───彼の体から放たれる氣の量に、息を飲む。
 ……それは、ある意味で幸いだった。こんな氣圧でもぶつけられなきゃ、内側がボロボロな今の俺じゃあ今度は本当に意識が途切れる。

「今こそ我が全てをこの鍼に込めて! 我が身、我が鍼と一つなり! 一鍼同体(いっしんどうたい)全力全快! 必察必治癒病魔覆滅(ひっさつひっちゅうびょうまふくめつ)! 我が金鍼(きんしん)に全ての力、()して相成(あいな)るこの一撃! 輝けぇええっ!! 賦相成(ふぁいなる)・五斗米道ォオオオッ!!」

 取り出されたのは金色の鍼。
 そこへと持てる限りの氣を集め、華佗がそれを高く高く振り上げる。
 続けて言う言葉は───俺の時には成功しなかった、あの言葉だと解っていたから。

「元っ───!」
「気にぃいっ───!」
『なれぇえええええええええええっ!!!!』

 彼の言葉に声を合わせ、声帯が許す限りに高らかに叫んだ。
 淀みの奥底で、たった独りで居た彼女にも、この声が届きますようにと願いながら。

  ……やがて。

  鍼は、逸れることなく真っ直ぐに、気脈の淀みを……断ち切った。



38/“悪くない”世界

 -_-/周瑜

 とたたたたっ……ばたばた……どたたっ……!

「…………ん……」

 いつの間に目を閉じていたのか。ふと開けた視界が映すのは、毎日飽きることなく見上げる天井。
 いや、横たわっているのなら見上げるという言い方は適当ではないか?
 ……小さなことだな、忘れよう。

「……ここは」

 体を起こし、辺りを見渡してみれば自分の部屋。
 天井を見た時点で解りきっていたことだが、何故自分がここで眠っていたのかが解らない。
 ……それよりも気になることが、先ほどから部屋の外で騒いでいるわけだが。

「ふむ」

 耳を澄ますまでもなく、どたばたと何かが走り回る音。
 そして……慌しい音に混じって耳に届く、人の声。

「……ったわよっ……蓮華っ───」
「……い! ……蓮姉っ……!」

 聞こえてきたのは雪蓮と蓮華様の声……だけではなさそうだ。
 呉の将総出でなにかをしているのか、少なくとも知らない声はない騒がしさを耳に、これ以上は眠れそうもないなと溜め息を。

「やれやれ……落ち着いて眠っていられもしないか」

 自国の、自分の部屋だというのに。つくづく自分の周りには騒がしい者が集いやすいらしい。
 溜め息を吐きながら立ち上がろうとするのだが、体を襲うだるさは酷く重く、どうやら立ち上がれても歩けそうにはなかった。

「ほれ亞莎っ! そこじゃっ!」
「ひゃうっ!? ごご、ごめんなさい一刀様っ!」
「ごめんって言いながら暗器を飛ばっ……っと、たわっ!? ギャアーーーーッ!!」

 …………。騒ぎの元凶は、どうやら北郷らしい。
 丁度部屋の前を通ったのだろう、はっきりと聞こえた声に…………

「うん……?」

 普段なら呆れるだけで終わるはずが、どうしてか心が暖かく、そして寂しいと感じる。
 皆の輪から半歩ずれた位置に立ち、傍観することが自分の生き方のはずなのに……なぜ、こんな寂しさに襲われるのか。

「………」

 寂しいのだとしても、体は思うようには動かない。まるで自分の中が、自分のものではないもので埋め尽くされている気分だ。
 ……本当にどうかしている。自分の体が自分のものではないような曖昧な気分だというのに、私はそんな気分にこそ、“嫌悪”を感じるどころか満たされているのだから。

「…………?」

 ふぅ、と息を吐き、すぅ……と息を吸ってみると、どこか懐かしい香りに頭が覚醒し切る。
 どこかぼうっとしていた睡眠への欲求も完全に吹き飛び、香りのもとを視線で辿ってみれば……

「………………」

 机の上に、懐かしいものが乗っている。
 あの方の気が向かない限りは作られないそれは、あの頃となんら変わり無い香りで、この部屋を満たしていた。

「あ……」

 やれやれ、といった大人びた溜め息など出たりはしない。
 代わりに、“小難しいことは考えずにあれを食べたい”と思うのに、立ち上がることさえ満足にできない我が身を、少し呪いたくなった。呪いたくなったのに、全身を満たしているこの感覚が暖かくて嬉しいのだから救えない。

「重症だな……」

 他人事のように呟き、仕方も無しに寝床に身を預ける。
 今は……眠るだけでいいだろう。体が何かに満たされ、心も何かに満たされ、鼻腔までもが何かに満たされている今……不思議と確信していることがあって、私は笑った。

(おそらくは……もうあの夢を見ることもないのだろうな)

 思い出すのは、暗闇の中で独りきりの子供の頃の自分。
 どんな言葉を投げかけてみても届かなかったというのに、あっさりと……本当にあっさりと暗闇の外へ出ていった“彼女”は、いったいなにを望んだのか。
 ……今は、その全てがこの部屋と自分の中を満たしている確信がある。だからもう、あんな夢を見ることもないのだろう。

「あ、あっ……あのなぁ雪蓮んんっ! 病み上がりの人にこの仕打ちってどうなんだー!?」
「一刀が逃げるからでしょー!? 大人しくお礼受け取ってって言ってるのにー!」
「冥琳が無事だったならそれでいいじゃないかっ! なのにそのお礼が呉の女性とよよよ夜をともにするとかっ……滅多なこと言うなこのばかっ!」
「あー! 馬鹿って言ったー! 一国の王を馬鹿呼ばわりしてただで済むって思わないでよ一刀ーーーっ!」
「みんなが冥琳のことをどれだけ大切に思ってたのかは、そのお礼の内容だけで十分解ったからっ! だだだけど俺は魏に全てをだなっ……!」
「いいじゃないのよー、華琳から許可は得てるんだしー! いっそほらー、蜀の子たちも落としちゃって、大陸の父になっちゃえばいいのよ。私、今さら誰か適当な男との間に子供なんて欲しくないし───って、あー! 逃げたーっ!!」
「逃げるわぁあああっ!!」

 ……人の部屋の前でなにを騒いでいるのか。
 呆れ果てるくらいの会話の内容だというのに、誰も見ていないのをいいことに、私は表情を崩して笑っていた。
 ふっ……と冷ややかに笑むのではなく、もう……どれくらいかぶりに、小さく声を上げて。

(……子供か。ああ、悪くないかもしれないな……)

 いずれ我々も老いてゆく。
 次代の呉を担う者も、それなりのものを持つ者でなければならない。
 そういった意味では天の御遣いの血は……今の民にも親しまれ、大事にされることだろう。
 ああ、なるほど。雪蓮の行動は、全然これっぽっちも間違ってはいない。
 たった一月と半分程度の時間で、呉という国の信頼を得た彼が国の父になるというのなら、民も兵も将も、大多数の人が笑顔でいられるのだろう。
 ……いや、そんなことを抜きにしても、雪蓮の言う通り……今さら誰とも知らぬ者と子を成すためにともになる、というのは怖気しか生まれない。
 そこまで考えてみれば、祭殿はおろか亞莎までもが北郷を追う理由も頷ける気がした。

「はっ───くふっ、ふふふふふ……あっはっはっはっはっは!」

 いろいろと問題になることはありそうだが……今は笑っていよう、たった一人の存在が変えてしまった呉という国と、これからの呉を思って……子供のように。
 そして、自分の体が回復したら、同じく北郷を誘惑してみるのも悪くない。
 やりたいことなど山ほどある。それをやれる今があることを、それをやりたいと思える自分が居ることを、この天の下に感謝しよう。
 望んだ平穏ではなかったかもしれないが……なるほど、民の心に届くはずだ。こんなにも楽しいと思えるのなら、もっと早くに解り合えればよかった。

「文台様……呉は、今に笑顔で満たされます。言うほど容易ではないでしょうが、必ずそれは叶うと……我が名に懸けて誓いましょう。……貴女は、笑ってくれますか?」

 ……。私の言葉に応える声など、もう返ってきはしない。当然だ、もうこの世には居ない人だ。
 それでもあの方が望んだ呉の未来が“誰もが笑っていられる国”だというのなら、皆が笑っている中であの方だけが笑っていないはずがない。そう考えれば私も自然と笑み、笑っていた。

(…………)

 ……さて。それでは少し休むとしようか。原因は解らないが、体がひどくだるい。
 ゆっくりと眠り、体が動くようになったら……冷めていてもいい、机の上の青椒肉絲をいただくとしよう。
 そして、空腹も満たしたら…………

  “友達”に、絵本の感想でも訊きに行くとしようか───




ネタ曝し……はとくにないだろうか。 ちなみに。家にはホワッツマイケルの絵本があったりします。 そしてシリアス場面での誤字ほど、ぐったりとするものはありませんね、ごめんなさい。 今回、加筆した大部分がこの周瑜騒動なわけですが……うん、無い知恵なんて絞るものじゃあござんせん。 読み返してみるとツッコミどころ満載です。 でもあまりにも周瑜のエピソードが少ないと思い、加筆。 元々、呉以外での周瑜の病気はどうなったのかなーと疑問に思ってはいましたので、書いてみました。 出来は……うん、喉に骨が痞える感じです。 Next Top Back