【プロローグ2】

 夏休みも終わり、また騒がしい日々が続く。
 キャップの所為で全然帰れなかったことを、京や小雪に散々怒られ(無言でじーっと見つめてくる)、それでもなんとか機嫌を取り戻してもらった僕は、なんかもういろいろと騒がしい日々に身を置いていた。

一子 「川神流〜〜奥義ぃっ!」
百代 「静から動に転ずるのが遅いぞ。もっと速く」
一子 「は、はいっ、お姉様っ!」
中井出「モモー! SUMOUやるべー!」
百代 「おっ、久しぶりだなぁヒロ。ということはキャップも帰ってきたのか」
中井出「うむ!」
百代 「と、いうかだな、ヒロ。
    この川神院は関係者以外は許可無く入っちゃいけないんだが」
中井出「あ、大丈夫。ちゃんと川爺の許可は得てるから」
鉄心 「こりゃあーーーっ! おぬしっ、また許可無く入ってきおってぇーーーっ!!」
中井出「ゲゲェもうバレた! 何モンだよあの爺ぃ!
    こりゃやべぇ……とんずらぁーーーーーーっ!!」
一子 「あははははっ、博光は相変わらずねー♪」
百代 「あれは生涯治らんだろ。ある意味キャップより奔放だ」

 そんなアホゥを続ける毎日はとても刺激的です。
 他にも道はあったろうに、みんなして同じ場所に通おうってことになって、中学では試験に悩まされたし(主に岳人が)。
 しかし無事に高校……川神学園に入学。
 右も左も解らんままにやんちゃを続け、大和は交流の輪を着実と広げ、僕らは奔放。
 一つ上であるモモとは永遠に同じクラスにはなれんが、まあ退屈はしていない。
 この川神学園、振り分け制度っつーか妙な風習があるみたいで、出来の悪い者とそうでないものをクラス分けすることを良しとしている。
 で、僕らは例に漏れず問題児揃いのFクラス。
 大和、僕、京はSクラス入り出来るほどの成績はあるものの、つまらんからこっちに居る。
 ユキはSクラスだけど、あいつらのお陰で楽しくやってるらしいし。
 気楽ってのは何より大事だしね。
 で、なんだかんだでいろいろあって、現在は二年に上がろうって時が今。

中井出「閻魔刀ォゥ、そっちはどう?」
大和 「平穏無事。危なっかしい新入生は今の所無しかな」
中井出「そかそか。しかしまあなんだね。
    ここ数年いろいろあったけど、やっぱり川神はいいねぇ。
    あ、昨日ヴァンプ将軍に美味しい漬物の付け方教わって作ったんだ。
    明日辺りにでも朝飯に届けるな」
大和 「悪い、助かるよ。
    しっかしあの人も、秘密結社って割には全然なんにも秘密にしてないよな」
中井出「そっちの方が好感もてるって。正義のヒーローが全然ヒーローじゃないんだし、
    あれくらいじゃないとバランスとれないだろ」
大和 「そりゃそうか」

 その日は新入生案内係りを承っていた。
 平穏な学生生活を送るには、教師の信頼を得てナンボ。
 なので誰もが面倒くさがる仕事を受け容れ、現在は新入生案内をしていた。
 まだまだ初々しいお子がドキドキしながら入ってくるのを見ると、僕もまた微笑ましく思えてしまうのです。

中井出「……自分が新入生として入ってきた時のことを思い出すな」
大和 「ああ……校門に閻魔が居たな」

 俺達の時はモモがソレだった。
 胸の下で腕を組んだ仁王がそこに居たのだ。
 そしらぬフリで通り過ぎようとしたら捕まり、たくさん可愛がられた。
 だって教師も居たし、新入生がドンパチやらかしたらマークされてしまう。
 それを知ってか知らずか好き放題可愛がられたのだ。

中井出「しかしまあ、賑やかなのはイイコトね」
大和 「だなー」

 一人一人にやあと挨拶をしていく。
 そんな中、タトトトトっと駆けてくる音を感知。
 振り向いた途端にどんっという衝撃! 多少勢いに体を持っていかれたが、倒れることなく前を見ると───

???「はっ! 後ろ回り受け身!」

 ぶつかった本人は倒れたんじゃと心配する僕なぞほうって、彼女は回転すると見事に着地してみせた。……拍子に鞄とかが地面に落ちてしまったが。

???「………」
中井出「………」

 目が合った。
 長い黒髪の、大和撫子って感じの新入生が、そこに居た。
 刀が入っているっぽい長い鞘袋を大事に抱え、その脇に落ちた鞄には……まったく色あせることも欠けることもなく眩しく輝く、校務仮面キーホルダーが。

中井出「……もしかして、ユッキー?」
由紀江「! え、あ、あの……はわわぁーーーーっ!!?」

 俺がちらりと鞄を見ていたことに気づいた彼女は、すぐさまに鞄を拾うとその鞄よりむしろ、キーホルダーに傷が付いていないかを確認した。しかしオリハルコン製のソレが傷つくことなどある筈もなく、彼女は深く安堵するに至った。
 ……ていうかうん、声がね、あの頃も思ってたけど朱里や雛里にそっくりだ。

大和 「? 知り合い?」
中井出「知り合いっていうか大事な友達だよ。いつの日か必ず会おうと誓った。
    ほら、何年前かの夏休みにキャップと一緒に旅に出たろ? その時に会った」
大和 「あー」

 そっかあの時かと頷く大和をよそに、僕は嬉しさのあまりにユッキーを抱き締めた。
 途端にヒアーと驚きの声が上がるが、それでも突き飛ばされたりはせず、相手が俺だときちんと確認するや、ユッキーも盛大に喜んでくれた。

中井出「そっかそっかぁ、ユッキー川神に来たかぁ!
    これ大和、赤飯の用意をせい!」
大和 「いろいろツッコミたいこと満載だけど、無茶言わない」
由紀江「博光さんもお変わりなさそうで……!」
中井出「うむ! いつでも健在な博光である! わはは、やっぱりすぐに解ったなぁ。
    まだそのキーホルダー持っててくれたんだな、嬉しいよ」
由紀江「は、初めてのプレゼントで、友達の証でしたから……!《ギンッ》」
大和 「うおっ!」
中井出「ユ、ユッキー!? 何故睨む!?」
由紀江「えっ、あの、笑ったつもりだったんですが……?」
中井出「笑ったの!? い、いや待て待て、怖い。
    あれは笑うんじゃなくて睨むっていうんだよユッキー。
    いいかいユッキー、笑顔ってのはこうして……」
由紀江「は、はい……?」

 ユッキーの頬に触れて、軽く撫でる。
 眉間に寄ってしまう引き攣りを軽く直してやり、ついでに久しぶりに頭を撫でて。
 その時にハイ、と手鏡で自分の顔を見せてやる。
 すると、その鏡の中には綺麗に笑む少女。

大和 「うわ……お前こういうの得意だよな」
中井出「せっかく可愛いのだから、綺麗に笑めればってね。
    ……ユッキー、まだ緊張する?」
由紀江「え? あ……いえ。なんだか懐かしいです。
    言われてみれば、どういうわけか博光さんの傍では、
    そこまで緊張した記憶がないですね」

 そりゃまあ、月清力で緊張ほぐしてたし。

中井出「ん、その調子。なんにせよ、ようこそ川神学園へ。歓迎するよユッキー」
由紀江「は、はいっ! 私ごときとまだ友達で《ずびしぃっ!》はにゅっ!?」

 そしてようこそ言った途端にデコピンが炸裂した。
 オデコを抑えて涙目の彼女に対して、我が言う言葉なぞ一つよ。

中井出「ユッキー、自分のことをごときとか言ったらだめだ。
    友達として、俺はユッキーが自分をごとき扱いすることに怒るぞ。
    それは俺の友達に対する侮辱だ」
由紀江「え……あの……」
大和 「ごめんな。こいつ、友達や家族のことになると容赦なくて。
    でも、そうだな。本気で友達って思ってるヤツの前で、
    たとえ自分自身のことだろうと自分をごとき扱いは侮辱だ」
中井出「うむ。自信をお持ち、ユッキー。
    そしてすまん、話し込んでたらそろそろ時間がヤバイ。
    ほら、新入生の薔薇飾り。胸元につけて〜っと。はいOK!」
大和 「お前ってそういう時、物怖じしないよな。
    女の子の胸に触るかもとか、ガクトっぽいこと考えないのか?」
中井出「考えないね。差別とかあまり好きじゃないし。
    あ、黛さん元気? 結局見つかって大目玉くらったっきりだけど」
由紀江「あ───はい、勝手に布団など置いていきおって、って笑っていました」
大和 「何をやったのかが、会話からまるで見えてこないな」
中井出「いろいろあったのさ。な、ユッキー」
由紀江「えと、はい。いろいろと……《ギンッ》」
中井出「ヒィッ!? だから怖いって!」
由紀江「えぇっ!? また笑めてませんでしたか!?」

 いろいろありましたが、なんとかユッキーを集合場所へ案内した。
 あとは案内が終了するまでをだるーく過ごして……なにやらプレミアムプレミアム言ってたお子を最後に、案内は終了した。


───……。


 ユッキーは、大和やキャップやゲンさんが利用する島津寮に住むことが決定した。
 ゲンさんってのはあれだ、ワン子がかつて居た孤児院で一緒だった男の子。
 健康不良男児だ。出会う前からワン子に散々と話されたお陰で、会う前から他人って感じがしなかったのよね。
 孤児院ではイジメられそうだったワン子をいっつも守ってくれていたそうで、お兄ちゃん的存在だったんだとか。
 なので出会いといったらとてもステキなものでした。

翔一「タッく〜ん! 僕のことも守って〜ん!《ドボォッ!》オウフ!」

 キャップがからかった途端にローリングソバットだった。
 あんな美しいソバットは見たことねーと、僕らは彼を一発で気に入った次第でして。
 源忠勝。苗字からとってゲンさん。忠勝だからタッくん。
 苗字が本多だったら間違い無く最強武将だったろうってくらいに、喧嘩の腕は一流。
 男版ツンデレキャラみたいに、口癖は“勘違いするんじゃねぇ”。
 嫌々ながらもいろいろと世話を焼いてくれる、遅刻を嫌うのに不良な天邪鬼さんだ。
 ファミリーにと誘ってみても、「馴れ合いはしねぇ」の一言だったよ。
 まあそんなこんなで現在があるわけで。
 僕ら中井出家族は今も京と小雪と僕とで成り立っていて、広い敷地内で育てた野菜などで自生活をしている。
 虐待がひどかった小雪も名前の通り綺麗な肌へと戻り、血色もよく、元気に過ごしておるわ。当然京も同じで、痩せていた体にも瑞々しさが戻り、えー……小雪と同様、スタイルよろしく育ちました。

京  「おはよう博光、そして好き」
中井出「おはよう京、俺も好きだぞ。家族として」

 冗談抜きですっかりホの字らしく、京いわく、俺以外は男ではないとのこと。
 隙あらば唇を奪わんとするその姿は恋する乙女を凌駕する。
 そんな京を真似て、小雪もそういうことをし始めたからシャレにならん。

小雪 「おはよーヒロミツ、僕も好きー」
中井出「家族としてね」

 一人一つの布団をと提案した僕に、二人が却下を出したのが数年前。
 昔は子供だからと一つの布団で寝ていたんだが、もうそろそろ一人一つに……と提案したら見事に却下。なので大きい布団を創造して、買ったってことにして使っている。
 ちなみにユッキーもあの布団が気に入ったらしくて、寮に送ってもらってまで愛用してくれている。いわく、あの布団じゃないと眠れる気がしない、だそうだ。
 しかしまあなんだ。ワン子の声を聞いてると詠ちゃんを思い出すように、京は風、小雪は小蓮を思い出す。小雪は特に。

中井出「ところで京さん、小雪さん? 口に妙な感触が残ってるんですが、まさか……」
京  「…………ぽ」
小雪 「ぽー♪」
中井出「唇奪うのはやめなさいってあれだけ言ったでしょう!?」
京  「大丈夫、外国ではよくあること」
小雪 「したいと思ったら既に行動は終わっているって教えてくれたの、
    ヒロミツだもーんだ」
中井出「ギ、ギィイーーーーッ!!」

 こんな調子で、小さい頃からどんどんと行動がエスカレートしていってます。
 性教育を学んでからは京がやたらと積極的に愛を示すようになり、小雪もそれを真似て……って、いろいろ堂々と巡っております。
 無邪気に育ってくれたのは嬉しいし、笑顔がステキなのはいいんだけどね。
 ……どこで間違えればこんなに積極的になるんだ。

中井出「よっしゃ、じゃあ朝ご飯にしようか。京、小雪、朝はなにがいい?」
京  「朝に雄々しい博光のウインナーで《ぽっ》」
中井出「やめなさい。小雪は?」
小雪 「ましゅまろー」
中井出「メシじゃないだろそれは。
    ……はぁ、リクエストにまともなのが、今までで一度もないとは……」

 最初の頃なんて食べられればなんでもいいってレベルで、慣れてくると俺が作ったものならなんでもいいで、今ではコレである。
 なので仕方ない。適当に和食を作り、それを食べて準備完了。
 栄養バランスはいろいろと細工してあるから十分さ!
 …………あれ? だからこんなに健康的に育ったのかしら。

中井出「はいおそまつさまです。じゃあ次いきましょう」
京  「うん。そろそろ次のステップに進んでもいいと思うの……《ぴとっ》」
中井出「そのステップじゃあありません。
    小雪、あんまりマシュマロ食うなよ、横腹痛めるぞ」
小雪 「だいじょーぶだもーん」

 京は妙に耳年増、逆に小雪は子供っぽく育ってしまった。
 なのに背は小雪の方が高く、スタイルは双方ともにご立派とくる。
 ほんと何処で何を間違えた。
 準に会いたいな。そしてロリ談義に胸を高鳴らせたい。
 差別はせぬが、どうにもホギーの影響か、ロリには一際弱い自分が居る。
 なので、ある日に出会い、深い仲になった準とは妙に気が合った。
 生粋のロリコンなんだよそいつ。

中井出「では始めぇえい!」
京  「───んっ」
小雪 「いっくよー!」

 食後の運動は鍛錬。
 イジメられっこだった二人を救ったきっかけの一つだ。
 我が家に引き取ってから栄養を取らせ、ガリガリだった二人を基準値まで回復させてからはほぼ毎日やらせている。あくまでほぼね。
 休憩は必要だし、あんまりゴリモリマッスルにさせるわけにもいかん。
 なので内側の筋肉を育てている。
 京は弓術に長けた家系らしく、父親から習っていたことの延長で弓術を。
 小雪は生まれながらに身体能力が高く、柔軟性も高かったので、かねてから誰かにやらせてみたかったテコンドーを。
 今ではしっかりKIを使って鳳凰脚まで出来るほどだ。素晴らしい。
 しかしながら、だからといって遠距離なら遠距離、近距離なら近距離を教えるだけではないわけで。二人で戦っているうちに、二人は自分で戦い方を開発していった。
 ……っと、そろそろかな。

一子「おっはよー博光ー! もう始まってるー!?」

 ワン子だ。
 体操服(ブルマ)でタイヤを引きずった格好で、勢いよく玄関を開けた彼女が降臨。

中井出「いらっしゃいワン子。もう始まっておるよ。先にご飯にする? それとも水?」
一子 「全部!」《どーーん!》
中井出「うむ。ゆっくりしていきなさい」

 犬のようにハウハウと息を整えるワン子の頭をやさしく撫でてから、まずは栄養水を飲ませる。栄養水ってだけあって、栄養がたくさん詰まっている。ほんとただの栄養水。味はピーチ味でスッキリです。

一子 「ぷあはーーーっ! おいしーーーっ! おかわり!」
中井出「一日一杯限定です。あとはモモの分だから、ワン子はこっちでご飯食べちゃって」
一子 「うぅう……」
中井出「じっと見てもだめ。
    ほら、あんまりのんびりしてるとガッコ行く時間がやばくなる」
一子 「あ、そうだった。京ー! ユキー! アタシも混ざるから待って待ってーーっ!」

 用意された朝食を一気に───ではなくしっかりと三角の順に食べて、よく噛んでからきちんとごちそうさまを言って走る。もちろんさすがにタイヤは外してあるから、結構な速度で簡易道場までを走っていった。
 そろそろあそこも狭くなってきたから、広げたほうがいいかなぁ。

……。

 中井出家の朝はまあ早い。
 起きたら食べて、鍛錬して、植物らの調子を見て、風呂入って。
 それからようやくガッコの準備だ。

一子 「はぁふー……気持ち良かったー……」
中井出「毎朝お疲れさん。あぁほら逃げるな、髪拭くから」
一子 「《わしゃわしゃ》んんんん〜〜〜……」

 髪を拭いて、ニセドライヤー(月操力付加)で髪を健康に保つ風を送って乾かす。
 それから髪を結ってやればハイ、いつものワン子。

京  「博光、私も……」
中井出「自分でやりなさいというのに……ていうかせめて体くらい拭こう!?
    タオル一枚でなにやってんのさ!」
京  「大丈夫。ユキなんて裸」
中井出「だぁああああっ!! こらこらユキィイーーーーーッ!!
    そんな格好で外に出ようとしないぃいいーーーーーーっ!!」
京  「他人へ見せるのは怒るくせに、博光は自分では照れない。それは何故?」
中井出「悟りを開いておるからよ。誰かの裸で狼狽える精神なぞ、既に封印済みよ。
    でも恥じらいは知ってほしいし、誰かに見られるのは許せん」
京  「だったら今からでも一緒にお風呂に」
中井出「僕はそこで冗談を混ぜずに真顔でそう言うお前の将来が心配だ」
京  「もちろん博光のお嫁さん。一夫多妻でもファミリー内なら構わない」
中井出「うわー、すげー包容力」

 言いつつも体や髪を拭いてやる。
 もう、子供の頃からのことだから慣れた。
 長い間生きてりゃエロスへの心も落ち着くってなもんで、ましてや家族だ。
 どこを拭こうとイヤンな気分になったりはしない。

中井出「この歳で他人に体拭かせるなんて、ウチくらいなもんじゃないか……?」
京  「お金持ちならやってそう」
中井出「ウワー、ありそうだって素直に思ったよ……」
小雪 「ヒロミツー、僕も、僕もー」
中井出「でも恥じらいは知ってくださいね? ほんと、お願い」
京  「こんなことするの、博光にだけ」
小雪 「当たり前だよー」
中井出「そりゃどーも。ワン子は?」
一子 「わぅ? ああえっと、アタシはお姉様にしてもらうことがあるけど……」
京  「大胆」
中井出「あの。もちろん髪のことだよね?」
一子 「うわわわわっ、そうっ、もちろんそうっ」

 顔を真っ赤にしながら頷いてくれた。
 うむ、さすがにそれは大変危険だぞモモよ。いや、俺も人のこと言えないけど。

京  「でも博光にも男としての危険な感じがないのはいけない」
一子 「女の子に興味がないんだよ、きっと」
中井出「興味はそりゃああるけど、裸を見たら誰彼構わずってのは全然ないなぁ。
    なにより、大事なものはとことん大事にしたいし」
小雪 「《わしゃわしゃわしゃ》はうー……♪」

 髪と体を拭いて乾かして、下着をつけて制服を着させてはい終了。
 元々は小雪がいろいろなことに無頓着だったのを、とことん俺が教え始めたのがきっかけだったんだよな……これ。
 それを京が羨ましがって、あれもやってこれもやってって。
 ただしそれをするのは極稀。気が向いた時以外は基本知ったことではない。
 依存しないようにと最初に言ったからね。

中井出「ワン子、忘れたものとかやっておいたほうがいい勉強、残してないか?」
一子 「はうっ」
中井出「…………教科書出しなさい。教えながら行くぞ」
一子 「えぇえぅううう……」

 勉強嫌いは昔っから直ってない。
 そのくせ一度集中するとすごいんだから、その集中力を生かせと毎度言ってるんだが。

───……。

 家を出て道をゆき、川沿いにさしかかると大和や岳人といった風間ファミリーと合流する。岳人とモロは今日発売の週間ジャソプを見ていて、トラブルンのエロ描写にドッキンコしていた。

大和 「そういえばヒロから色っぽい話って聞かないよな。興味ゼロ?」
中井出「一度思いっきり恋をして、全てが終わった。それ以降はとんと」
京  「!」
小雪 「!!」
卓也 「へー初耳。ヒロからそういう話全然聞かないから、
    てっきり興味ないのかと思ってたよ───って、フラれたの!?」
中井出「フラれたっていうか別れなきゃいけなかったんだ。
    で、相手はもう俺のことを忘れた。ホラ、終わってるだろ?」
大和 「忘れたって確証は───」
中井出「生憎とバッチリ得た」
大和 「……ご愁傷様」
中井出「あんがと」
岳人 「まあお前って恋人ってよりはお友達って感じだもんなぁ。
    俺様見たいなナイスガイ見習って、もっと鍛えるべきだろ。フラれないためにも」

 そう言って、ガクトが自慢の筋肉をムキーンと見せる。いわゆるポージングだ。
 肉汁とプロテインを愛する彼は、今も昔もマッチョになればモテると思っているらしい。

卓也 「ヒロの場合、女の子なら間に合ってるでしょ。
    京やユキが居るんだもん」
大和 「ワン子にも異様に懐かれてるしな」
一子 「おばあちゃんが死んじゃった時、
    迷わず引き取るって言ってくれたこと、覚えてるもん。
    それからもいろいろ構ってくれるし」
京  「落ち着けワン子、それは孔明の罠だ!」
小雪 「そうだよー。きっとヒロミツはその頃からロリコンで」
中井出「いきなりなに言い出してんの!?」
岳人 「そういえばこの間、準のやつと熱く語ってたよな」
中井出「うむ。愛でるべき少女についてを少々」
京  「……もっと幼児体型に育つべきだった」
小雪 「う〜〜〜、う〜〜〜〜……!」
卓也 「いや、体型って願って育て方を変えられるものじゃないでしょ……」
中井出「そうそう。俺はありのままが好きなんだ。だから二人はそれでいいの」
京  「博光が私を好きって……《ぽぽぽ》」
中井出「ありのままが好きー! ありのまま! ね!? 話聞いてー!?」

 そうして騒ぐ中、ふと川沿いに人垣を見る。
 おや、あれはなんだべさ、と話を振ってみれば、岳人が騒ぎよりも自分に目が来るようにと熱烈ポージングを開始する。……当然みんな無視した。

中井出「大和ョゥ」
大和 「その、イビルメイクライの閻魔刀を呼ぶみたいな言い方やめてくれってば」
岳人 「つってもあれ、明らかにモモ先輩だろ。お前が止めずに誰が止めるんだよ」
大和 「ヒロ、お願い」
中井出「よし解った! おーいモモー!」
岳人 「だいじょぶか?」
大和 「大丈夫だろ。なんだか解らないけど、姉さんヒロの言うことは聞くし」
中井出「俺も混ぜろーーーーっ!!」
総員 『そもそも止める気がなかったぁあーーーーっ!!』

 みなさまが後方で叫ぶ中、僕はいかにもな不良たちに囲まれたモモを発見。
 ズシャアとそこへと辿り着いてみれば、モモが「うわ……来たよ」って顔を……つーか今思いっきり言ったよね!? うわ……って言ったよね!?

中井出「なんだよそんな言い方ってないだろ!?
    僕は貴様のことを思って言ってるのに!」
百代 「それはクッキーの真似か?」
中井出「ま〜ったく、体ばっかり成長して、心がまるで成長してないよ」
百代 「ルー師範代みたいなことを言うなよ。なんならお前を相手にしてもいいんだぞ」
中井出「のんびりしてられる時間、あんまりないぞ。いーからさっさと片付けなさい。
    ……ああ、テトリスとかいいかもなぁ。
    一人を大勢で狙う奴らの末路なんて、それで十分だ」
百代 「テトリス? ……ああ、いいかもなぁ。私も久しぶりにやりたい気分だ」
不良1「あぁんっ!? なにシカトこいてんだぁラァッ!」
中井出「ということで任せた。あんまり目立って平穏生活ブチ壊しにしたくないし」
百代 「はっ、よく言う。お前騒がしいの好きじゃないか」
中井出「俺がよくても京とユキが嫌がるの。
    あ、お前がやったってことにしてくれるならやるけど」
百代 「ああ。お前に譲ってやる。代わりに腕がナマってないか見ててやるさ」
中井出「OK」

 ポムと、胸の前で両手を合わせる。明命の真似だ。
 そんなにこやか動作に不良さんがビキッとコメカミを震わせたあたりで、俺は地面を蹴っていた。
 不良の軍団が空を飛ぶ。
 疾風と烈風での高速移動攻撃で、ほんの一瞬で不良さんたちは地面に倒れ伏した。
 きちんとテトリス風に、かしょんかしょんと列になって。

百代 「んなっ……」
中井出「キャーーーッ! さっすが百代さん! 不良どもを一瞬だぁーーーーっ!!」

 そして直後にそう叫んでみれば、動きを追えなかった百代ファンはハワーと叫ぶだけ。
 人だかりという名の百代ファンは、それだけで嬉しそうだった。
 あくまで(KI)は使わずに、レベル操作だけで片付ける。
 そうすれば僕の強さがどうとか言うやつはまず出て来ない。
 これ、平穏に生きるための知恵。
 達人になればなるほどKIで人を見るから、こーゆーのって便利。

百代 「な……なんなんだよお前はー……。目で追えなかったら、
    言われた私でさえ誰がやったのかを疑うところだったぞー……?」
中井出「追えただけで十分だろオイ」

 このお子ったら人間じゃねぇ。
 しかしまあ、軽く睨んでくる姿がめんこかったので頭をわしゃわしゃ撫でた───ら、ファンから怒号が飛んできた。ギャア怖いごめんなさいもうしません!

中井出「どの時代、どの世界でもファンって怖いや……」
百代 「お前も力を見せ付ければファンくらい出来るんじゃないか?」
中井出「ガラじゃないよ。俺はね、こーして仲間と馬鹿やってられりゃあそれでいいの。
    未来永劫そうやって家族を大事にするコヨーテでいたいのよ」
百代 「もったいないなぁ。
    それだけ強くて顔も平均なら、口説けば誰かしらオチそうなのに」
中井出「オトした時点で俺が京と小雪に殺されますが」
百代 「その時は私も協力してお前を倒す」
中井出「返り討ちじゃバカモン」

 ニカッと笑えばニカッと返される。
 割と本気で言ってるみたいだから恐ろしいが、でもまあ、刺激が足らんって気持ちは解る。このお子ったら戦闘狂として育っちゃって、誰かと戦わなきゃ気が済まないのよ。
 なので定期的に、川爺には内緒で仕合ったりしているんだが、今のところは全戦全勝。
 どーしても勝てないからって連続で挑まれて、とうとう泣かせてしまったのはまあその、割といい思い出。

中井出「ほれ行くよ。みんな待ってるから」
百代 「いや待て、取り巻きに新しい娘を発見した。今からオトしてくる」
中井出「そーかい。ほどほどにな」

 キラリと歯を輝かせたモモが、自分のファンの間を縫って、恐らく新一年生であろう女の子に声をかける。なにかしら喋ってるのを横目にファミリーのところへ戻り、説明しながら移動開始。
 何故か新一年生をお姫様抱っこしているモモを置いて、僕らの旅は再開した。
 ……置いて行くなとか言って、あとでゲンコツされたが。

岳人「美人の女好きって超もったいねぇよ……」
百代「おいおい、私はべつに根っからの女好きじゃないぞガクト。
   ただ周囲の男に魅力がなくちゃな、女にちょっかいも出すさ」
卓也「先輩のハードルが高すぎるんだって。
   皆、“俺には無理”って言ってアピールすらしないし」
岳人「俺様はそんな軟弱コンブとは一味違うぜ。
   タフガイな俺様と付き合ってくれ! 男の素晴らしさを教えてやる!」

 解ったからポージングとりながらにじり寄ってくるのをやめなさい。
 ……いやまあ、登校しながらなんだから、歩きながらになるのは当然なんだが。

京  「いきなり告白とか、頭大丈夫? ガクト」
小雪 「もう手遅れなんだよ、あははははは」
中井出「お前らも平気で告白してきてるでしょーが」
京  「私のは女と見れば誰でも告白する節操無しのガクトとは違う」
小雪 「かいしょーなしー」
岳人 「甲斐性じゃねぇ節操だユキっ子! 大体俺様、金にはちょっとだけ自信が───」
卓也 「モテグッズとか買って、すぐに無くすのによく言うよ」
岳人 「これでモテる! とか書かれてれば買うだろ普通!」

 きっと今井属性が混ざってるキミがモテることはまずなさそうだ。
 でも不思議と年下からは人気があるんだよな。
 なのに年下に興味がないっていう悲しい男。

岳人「それでどうだモモ先輩! 俺様の彼女に───」
百代「だめだ魂がこもってない。それ以前にムサすぎてアウトだ」

 そしてあっさりフラれた。

中井出「魂か。ならば俺が魂を以って告白しよう」
百代 「お? なんだお前も私に気があったのか?」
中井出「モモ。昼飯おごるから一緒に食うべ」
百代 「了解だ」
中井出「コレモンよ《ニコリどすどすどどすどすっ!》いたっ! あいたたたっ! ちょ!
    こ、これ京! ユキ! なんでアリキックしてくるの! おやめなさい!」
大和 「いや、でも無駄に魂こもってたな」
卓也 「なんだか“うん”って頷いちゃう凄みを感じた……」
岳人 「なるほどぉ……俺様も魂を込めれば、年上のお姉さんを落とし放題ってわけか」
卓也 「だから、その落とし放題って考えをなんとかしないと無理だってば!」
岳人 「そんなことねーよ、だってモモ先輩だってオトしまくってるじゃねぇか」
中井出「平和やねぇ……」

 ギャースカと騒ぐファミリーに囲まれながら歩く。
 キャップはま〜たどっかに行っているらしく、ここには居ない。
 とまあそんなわけで多馬大橋へ到着。
 この橋、別名変態の橋と呼ばれている。
 何故って、奇抜な生徒が次々と登校していくからだ。
 ここに居れば様々な変態に会える。……まあ、その変態の大半が川神学園関係者だってんだから笑えるが。

小雪 「あー。ハゲー♪」
中井出「ややっ!? あのツルっと輝くステキなドタマは!」
準  「誰だ人様を唐突にハゲ呼ばわりするやつは! ……って、やっぱお前か」

 輝く頭を見つけるや、俺と小雪と京はファミリーに断りを入れていざ、輝きのもとへ。

中井出「よ、準」
準  「よおソウルファミリー、朝から楽しそうな、お前らのグループ」
中井出「お前も朝から輝いてるな。物理的に」
準  「うるせぇ!
    人をハゲ頭にしたのはお前ンところのアルビノさんじゃあねぇかァァァァ!!」
中井出「お前って声も相まって、ツッコミが銀さんみたいだよね。
    まぁとりあえず髪についてはマジですまんかった。
    しかしお前も悪いんだぞ、あんなところで寝てるから」
準  「気ままに昼寝してたら髪を切られていた俺の気持ちはお前なんかにゃ解らんよ」
中井出「まあ俺も経験あるから気にすんな」

 頭がハゲな彼は井上準。生粋の、というか生来のロリコンである。
 といっても可愛いものは愛でるべきを知っている僕にとっては、ロリコンというよりはなにか別の呼び方で呼んでやりたくもある。

冬馬 「やあ博光。元気そうですね」
中井出「やあ冬馬。愛しの大和ならあっちだぞ」
冬馬 「いえいえ、私は個人的にあなたに用があって話し掛けたんですよ」
中井出「病院のことについてなら、もう耳にオクトパスだが」
冬馬 「それでもし足りない感謝というのもあります。
    そうでなければ準ともども、路頭に迷って死んでいたかもしれませんし」
中井出「告発したのはお前の勇気だろ。お陰で評判のいい病院を潰しちまった。
    俺がやったのはつまり、そーゆーことの手引きみたいなもんだ。
    感謝される謂れなんて僅かだろーに」
冬馬 「路頭に迷う筈だった私と準を救ってくれたではありませんか。
    私たちにはそれで十分だったのですよ」

 この肌が黒くてショートウェーヴヘヤーの男は葵冬馬。
 川神に存在したデッケェ病院の一人息子……だったんだが、親が不正の連続の悪だった。
 ガキの頃にワン子が病気を患ったことがあって、その薬を病院に侵入して強奪しようとしたことがありまして。丁度、能力に頼りすぎるのもなとか思ってた時だから、ワン子には辛い思いをさせました。

 で、その時に聞いてしまったのよね、その話。それ以前にユキ関係で冬馬と準とは知り合ってはいたんだけど。あの時は身辺調査だ〜とか思っていろいろやった。若かったのよ。
 パパりんもまだそう何度も悪さを重ねている時じゃあなかったから、その息子たる冬馬くんにいろいろ話し掛けてみたのだ。いきなり現れていきなり不正がどーのを言う俺に、若干引いてたみたいだけど。
 ちなみに準の親は冬馬のパパりんの右腕。副院長ってやつだね。

 そんなこともあって、冬馬のことは“若”と呼んだりする仲で、しかし従者ではなく友としてそこに居る。なお、その副院長までいろいろやっていたという恐ろしい病院です。表の評判はよかったのにね。
 ともあれそれからなんだかんだと二人とは交流をもっていたりする。
 そもそもが告発のあとのことで、親が捕まればそりゃあ風評も悪くなる。それを知っても「立派な父であって欲しかった」と願った彼は親の裏の顔を書類とともに警察に届け、親をしょっぴかせた。
 二人は住む家さえ追い出されるようなカタチになったわけだが───そんなことは当然させません。俺はいつか京や小雪を招いたように、二人を受け容れました。
 中井出家にいたこともあったくらいで、かつては兄弟として住んだもんさ。
 ……準の髪が小雪によって切られたのはその時である。

中井出「まあ、元気そうでなによりだよ」
冬馬 「博光こそ、それは毎朝聞いていますよ」
中井出「やーかましい。元気なこと、なによりじゃねぇか」
冬馬 「《わしゃわしゃ》おっと、はは……博光には敵いませんねぇ」

 差別をしない僕は冬馬の頭をわしゃわしゃと撫でて、最後に背をぽんと押して歩きだす。
 準はユキに頭を撫でられてるからOKでしょう。

小雪 「つるつる〜、ハゲハゲ〜♪」
準  「妙な歌謳うのやめなさい!」
中井出「で、今の所不自由は? つーか最近二人が過激になってきたから、
    お兄さんとしては二人に家に戻ってきてもらいたいんだけどね」
京  「生涯を博光に捧げてます。10点」
中井出「妙なことを人前で言うのはやめなさい!」
冬馬 「博光は少々過保護ですからね。私や準としましても、
    あそこに居ては全てを甘えきってしまうと判断してのことですよ。
    大丈夫、もう過去のことは振り返りません。
    受け容れた上で、今を歩いています。なので仕送りをもっと増やしてください」
中井出「うわーいいきなりおねだり来たよちくしょー!
    でもOK、どっかに借金とかしてないね? してたら張り倒すよ?」
準  「若がそんなことするはずねーでしょ。
    相変わらずのバイセクシャルではあらせられるが」
中井出「ロリコンとバイの親友同士ってどうなんだろうなって思うよ」
冬馬 「ははは……ともかく、お世話になった分は必ず返しますよ」
中井出「家族なんだから気にすんな。……っと、そろそろ行かないと遅刻だな」

 段々と人の数が少なくなってきた。
 といってもゆっくりながら歩いては居たから、橋もそろそろ終わりに───

声 「フハハハハハハハハハ!!」

 ───……なる前に、遠くから聞こえる笑い声。
 視線を向けてみれば、来た道からはガラガラと自転車のトップスピード並みの速度で走ってくる“人力車”。
 現れたのは、黄金の服に身を包んだ変態だった。

英雄「おはよう庶民! 我こそは九鬼英雄(くきひでお)!! 皆のヒーローである!!」

 現れた変態は、人力車の頂点に立った状態で背を向けると、その服に描かれた龍の刺繍を見せた。
 世界に冠たる九鬼財閥の息子にして、2−Sの委員長さんだ。
 ちなみにワン子に惚れている。

中井出「やあ英雄」
冬馬 「今日も元気そうですね、英雄」
英雄 「む? おお! 我が友博光に冬馬! 壮健そうでなによりだ!」

 いろいろなことがきっかけで、友人関係にあります。
 話してみれば結構いいヤツなんだよね。変態っぷりが面白いし。
 容姿を一言で表すならFateのキンピカ英雄。ただし髪は銀髪。
 モモが数少なく認める相手である九鬼揚羽の弟にあたる。
 大変な野球好きで、かなりの腕だったのだが……とある日、テロ集団に襲われ腕を負傷。
 それ以来、腕を思い切り振るうことが出来なくなり、野球の道を諦める。
 その時に栄光のみが目当てだった者は離れ、唯一彼から離れなかった冬馬だけが、彼の友達となった。
 しかしながら心はそう簡単に晴れるものではなく、川で黄昏ているところ、そこで懸命に己を鍛えるワン子を発見。そんながむしゃらなワン子を目で追うようになり、羨むようになり、いつしかそれが恋心に変わったのだとか。
 ちなみにその腕ですが、クッキーをくれたお礼に治させていただきました。それ以来思いっきり感謝されて、今では友です。

中井出「腕の調子はどうだ?」
英雄 「フハハハハ実に良好! 鉄球すら剛速球で投げられるわ!
    ……お前には礼を言っても言い足りぬ。
    何か困ったことがあったなら、必ずや我に言え。それこそ必ず力になろう」
中井出「ん、あんがと」
英雄 「ところで我が友博光よ。一子殿は……」
中井出「ああ、先に行ってもらった。……ほら、今ならまだ見える位置に居るぞ」
英雄 「おお! あの後姿は間違い無く! フハハハハハテンションが上がってきた! 
    あずみ! 人力車発進!」
あずみ「了解です英雄様ぁあああーーーーーっ!!」

 あずみと呼ばれた“一人のメイド”が、人力車を引っ張ってモノスゲー速さで駆けていく。……ね? フツーじゃねぇでしょ? メイドなのにあれだよ? 英雄やロリコンやホモや異常なメイドが平然と歩く場所。そりゃ、変態の橋とか言われるようになるわ。

冬馬 「ところで博光、S組編入申請は……」
中井出「してません。俺あそこの空気苦手だし。
    ああ、なんぞか陰口叩く馬鹿が居たら容赦なくお言い?
    バックに誰がついていよーが容赦なく殴るから」
準  「お前のそういうところは変わらんねぇ。中学の時もそれで番長とか呼ばれてたし。
    隣のガッコだってのに殴り込み入れてきた時はたまげたね」
中井出「家族や仲間や友を侮辱する者どもに容赦など必要無しだ。なぁ京、小雪」
京  「当然」
小雪 「ハゲー♪」
準  「だからハゲ言うのやめなさい!
    このタイミングでハゲ関係ないでしょォォォォ!?」

 毎日がこんな感じに騒がしい。
 なるほど、モモの言う通りだ。騒がしいのが楽しい。

冬馬 「しかし二つも家族を持っているとは。
    博光も女泣かせですねぇ。ああ、今は私と準が分かれていますから、三つですか」
中井出「ヘンな言い回しはやめなさい。どれも大切な家族だ」
小雪 「ハゲー、ハゲー♪」
準  「《ぴしゃんぴしゃん》……なぁ博光よぉ。
    これは愛情表現として受け取るべきなのか?」
中井出「人嫌いなユキにしては最大級って言っていいだろ。家族は大事だ」
準  「だったら家族の髪の毛切ったりしないでくれって言い聞かせておいてくれよ……」
中井出「なんだかんだでその髪型気に入ってるんだからいーじゃない」
準  「おーおー、お陰で寺の住職でもねーのに片手で念仏ポーズが染み付いちまったよ」
中井出「ロリコンは?」
準  「生来だ《ニコリ》」

 相変わらずだった。





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