【プロローグ13】

 翌朝。
 じっくりと体を休ませたワン子は今日も元気にメシを食って、庭先で僕と一緒に某師範のように「うおおおおおおおおおーーーーっ!!」と叫んでいた。
 そうしてから氣を静める練習。
 ……うん、キッパリ言うけど一日で土台作りは無理だった。
 一応イジメぬいた筋肉は柔軟なままに回復を遂げ、ワン子も一昨日から比べりゃ格段にレベルアップしたわけだが……それはあくまで一般的な話であって、超人視点から見れば僅かすぎるもの。不公平だなもー!と叫びたくなる状況が解るだけに、才能がないってのは辛いことだと改めて頷いてしまう。
 ほんと、解るんだよね。
 だから俺も、武具が褒められれば嬉しいけど、俺が褒められてもちぃとも嬉しくねぇ。
 能力は自慢するけど、俺自身がすげぇなんて、ふざけてでしか言いたくもない。

一子「はふーぅうう……!」

 制服に身を包んだワン子が、キリっとした顔で氣を落ち着かせた。
 それでも気配を消すまではいけない。
 ……うん、すごい漢な師範はほんとすごいな。あれだけ騒がしいのに気配どころか姿を消せるなんて、あれ絶対忍者だろ。汚いなさすが忍者きたない。……でも忍者にしては忍んでなさすぎだ。さすが師範。
 とまあそんなことは捨てておいて、ワン子も混ぜた登校、途中でのファミリーとの合流を果たし、学校へ向かうは我らの足。

百代 「みんなに囲まれてしまった。今日はこいつらと行くっ。
    おおっとまゆまゆとクリ、お前らもこっちだ〜♪」
由紀江「《がばしっ!》ふひょわっ!?」
クリス「うわぁっ!?」

 が、その途中、ファンに囲まれたモモが緩んだ笑顔でそう言って離れていくのを、僕らはハンケチーフを振ることで潔く見送った。まゆっちやクリスを救おうとも思ったが、モモのファンに囲まれて目を回してるので……まあその、暖かく見守ることにした。

百代 「我ながらいいハーレムを構築したな……極楽極楽〜♪」
中井出「フッ、馬鹿め。この博光などファミリーハーレムだ。
    行こうキャップ、ヤツはもうだめだ」
翔一 「おうっ! エターナルドッキング!」
卓也 「え? なに《がばぁっ!》うわぁああっ!?」
中井出「ドッキィーーーング!!」

 モロを抱えて肩車し、跳んだキャップを咄嗟に肩車で受け止め、バッと横へ伸ばした両腕へと京とユキが座る!
 そしてその天高く聳えるファミリータワーの頂上、モロへと目掛けてワン子が駆け登り、肩に立つことで真・ファミリータワーへの進化を遂げる……!!

卓也 「《メリメリメリメリ……!》いたたたたたた!!
    ちょ、ワン子! せめて靴は脱ごうよ!」
一子 「これが……これが天! アタシは今天を見ているわ!」
卓也 「人の肩踏んどいて興奮してないでよ! うわわバランスが!」
準  「おーぅしモロー、少し我慢しとけー?
    んじゃあそこの逃げようとしている直江サン? ちょっとこっち来なさいねぇ」
大和 「いや、俺は是非このまま空気で」
準  「はい却下ァ。お姫様抱っこの刑である。
    よっしゃあワン公、真上に飛べぇーーい!」
一子 「あいさーっ!」

 ワン子が跳ぶ! その瞬間、既に我らの肩などを利用して駆け上っていた準がモロをスパーンと回収、ガクトへ向けて放り投げるとキャップの肩にすとんと着地した。……足で。
 さらにその上にワン子が着地。キャップも面白がって俺の肩に立って、究極ファミリータワーが完成した。

大和「ていうか準、俺めっちゃくちゃ恥ずかしいんだけど」
準 「俺も出来ることならば、
   この手で幼女を抱き上げたかった……ッ!!《ギリッ……ギヂヂ……!!》」
大和「歯ァ食い縛りすぎて血ィ出てるんですけどこの人!」

 こんなファミリータワーでも、フツーにステータス移動でどうとでもなります。が、バランス取るのが結構ムズイ。
 だが負けぬ。我はこのままガッコへ行く。
 何故なら今日の僕の服装は“……すごい漢”だからだ。
 すごい漢は退かぬ! 媚びぬ! 省みぬ! でもごめん上半身裸はやっぱり寒い。

冬馬 「朝から無茶をしますね……ふふっ、
    しかしこの自然と笑める瞬間を大変好ましく思います」
岳人 「これで俺様がヒロを肩車して、
    両腕にモロと冬馬を乗せればパーフェクトだぜぇ……!」
中井出「否である! ガクト、我が上に来るのだ! 貴様は上に立つ男なり!」
岳人 「おおっ、解ってるじゃねーかヒロ! んじゃあいくぜモロ、冬馬!」
冬馬 「《がばっ》おっと。……これはこれは、なるほど。
    筋肉質の男性の体もなかなかいいものですね。
    これからはその層も狙ってみましょう」
岳人 「人の腕の中でそういうこと言うんじゃねーよっ!」

 モロと冬馬を腕に抱いた岳人が跳ぶ!
 その瞬間にキャップが合図し、ワン子、準、キャップの順に跳躍!
 次の瞬間にはガクトが俺の肩に乗り、次々と着地し……パーフェクトファミリータワーは完成したのだ……!!

中井出「じゃ、行こう」
卓也 「ほんとにこれで行くのっ!?」
中井出「ワハハハハ! 余裕!! なにせ……すごい漢だからな!」

 そんなわけで上半身裸の僕が今日もゆく。ずしーんずしーんと。
 モモがこっち指差して大笑いしてるが、馬鹿め、それがこの博光の狙いよ。
 誰かを笑わせること、楽しいを知らぬ者に楽しいを与えることこそこの博光の人生。
 なのでこのままGO。

中井出「落ちんなよみんなっ! あそーーれとっかぁーーーーん!!」
岳人 「おぉっととととぉっ! へへっ、超ォオーー余裕だぜぇ!!」
翔一 「おーっほ、速ぇえ速ぇえ!!」
準  「オオッフ! 上空はとても風の影響を受けるねぇ!
    だが視線が高いのはいいことだ。幼児の安全を守る視界がさらに広がる」
大和 「てっぺんのワン子が心配……するまでもないか」
一子 「高くてなお静に徹する……集中集中。
    ……うー…………わーーーい高い高いーーーっ!! いっけぇヒロー!」

 走り始めると、数分も保たない静の鍛錬者が居た。

中井出「ここ曲がるぞー! あ、右ね右! ワン子おもかじいっぱーーーい!!」
一子 「よーそろー! あっはははは!!」
準  「おお体重移動か。こりゃ面白ぇ。揺れんなよーキャップさんよぉ」
翔一 「風と一緒の俺に敵はいねぇ! 余裕にこなすぜ!」
岳人 「俺様も余裕!」
冬馬 「ああガクトくん、少し左側に体重移動を」
卓也 「うわぁああ動きすぎ動きすぎっ!」
大和 「モロは少し右に足伸ばして重心移動!」
卓也 「この体勢で無茶だよねそれぇっ!!」
京  「博光が私のお尻に触れてる……《ぽっ》」
中井出「そういうこと言うのやめましょう!?」
小雪 「あはははははっ、いっけいけいけー♪」

 電線に気をつけつつ駆ける。
 周囲の目? 知らんヨそんなもの!
 楽しくいこう! こんな細かさでも笑ってられるのが“こういう仲”ってもんさ!

中井出「どっか寄るとこある?」
一子 「構わないわ! 右翼を固めて敵を確固撃破!
    準と大和は左に注意を払ってキャップは正面! ガクトは筋肉でトーマは策を!
    モロはツッコミをしつつ左を警戒! 京は弓矢で敵左翼迎撃準備!
    ユキはマシュマロを使っての敵左翼の誘惑準備よ!」
岳人 「わけわかんねーよ! つかなんだよ筋肉って!」
準  「つか右翼を固めるどころかほぼ左翼狙いじゃねぇかァァァ!!
    お前何ィイ!? どっかの軍師が憑依でもした!?」
卓也 「それにしては頭の弱い策だったけどね……」
冬馬 「策を。敵大将の後ろの門を攻めましょう」
大和 「敵とか言いながらこっち見上げるなぁあっ!」
準  「あー、若ー!? 真面目に策練らんでいいですからねー!?
    つーかそれ策でもなんでもねーですからァァァ!!」
小雪 「ヒロー、正面突破ー♪」
中井出「がってんだ!」

 つまり寄るところはないらしかった。
 アスファルトを駆ける僕らは雑技団のように奇妙な連携を見せ、学校までの道を往く。
 途中途中で個々が様々な行動でアッピルを始めるが、どこもおかしくはない。

中井出「ワン子! そこで強そうな言葉とともにハゲの頭に立つんだ!」
一子 「《キリッ》───そのような遅さではアタシには勝てない」
準  「あーこらこらこらー!? 人の頭の上でなに冷たい声出してんのー!?」
一子 「そしておもむろに静に入るアタシ《ピキーーーン……───》」
準  「この子なに人の頭の上で悟り開こうとしてんの!? つか首重ッ!!
    お、降りなさーーい!? 降りましょーーっ!? 降りろコラーーーァ!!」
大和 「うわわ暴れるな準! 落ちる落ちる!」
翔一 「だっははははは! いいぞワン子ー! よっしゃ俺も!
    おもむろにカッコイイポーズ! シャッキィーーーン!!」
準  「おぉおあっ!? バッ! 倒れるだろーがァァァァ!!」
翔一 「こーいうのはノリだろー? お前もなんかやってみろって」
準  「……幼女のために悟りを開きます。
    もはや何を言われても聞き流すくらいの菩薩の心で───」
大和 「あ、委員長」
準  「おっはっ……! おはよーございまァァァッすッ!」
中井出「悟れてねーじゃねーかよハゲ!!」
準  「うっせーな開く前だったんだよ! どんな偉い人でも悟る前はエロなんだよ!
    しかし俺はエロではなくロリだった! それだけだ!」
中井出「どこまで自分に正直なのこの人!」

 恐らくどこまでもだろうと、心の中が答えてくれた。
 うん、実にセルフだマイハート。

岳人「おおっ……これは案外使ってなかった筋肉が刺激されるぜぇえ……!!
   今度からはバランスの筋肉も鍛えよう! そして俺様はさらにナイスガイに!」
冬馬「ええ。たくましい腕に抱かれるというのも悪くありません」
岳人「だから寒気がするようなこと言うんじゃねぇって!!」
京 「どうせモテないガクトは、いっそそっちを攻めてみたほうが吉だと思う。10点」
小雪「おおー……ガクトナイスゲイ」
岳人「ガイだガイ!! 間違えんなユキっ子!!」

 そんな騒がしさのまま突入しました。
 ええ、逃げられんように京とユキがガクトの足をロック、ならばとモロと冬馬もキャップの足をロック。それなら道連れとばかりにキャップも準の足をがっしりと掴み、準もまたワン子の足をがっしり……ロックできなかった。大和抱いてるし。
 そしてここでワン子がジャンプして逃れようと───

準 「大回転ツルピカリサイクロンヘッド!!」
一子「《ズルッ!》うわやぁっ!? ったたたたとととっ!?」

 ───した瞬間、準が素早い動きで頭を動かす。
 離陸準備(離頭?)をしていたワン子はいきなりのことにバランスを崩し、構わず走った僕の魔の手によって、仲良く校舎の壁へと激突した。
 ……うん、当然教師に怒られた。


───……。


 なんだか今日の教室はいつもと違った。
 というのも、教室のすぐ近くの窓ガラスが割られた〜ってんだから、クラスの皆様も心中穏やかではないのです。

中井出「そんな情報とともにクマちゃんからケーキ一個おすそわけされた」
一子 「おお、なにそれ美味そうじゃない!」
中井出「おおワン子、顔面は大丈夫か?」
一子 「大丈夫よ、問題ないわっ」

 そんなことよりケーキに心が奪われているところらしい。
 モノスゲー見てます。輝く目で。

中井出「よし、ではともに食べませう。……っと、クリスもどう?」

 ワン子に戦利品(?)を見せているところに、よろよろとやってくるクリスさん。
 いったいモモにどんな可愛がられ方されたのか……気になるけど気にしないで勧めてみることにした。

クリス「あ、朝から教室でケーキなぞ、非常識と思え」
中井出「いらないって。じゃあ食おう」
一子 「分け前が増えるわっ!」
中井出「やったねワンちゃんっ!」
クリス「い、いや。しかし違反ではないのなら───その。
    常識を破壊するのもやぶさかではないかと」
中井出「キッパリ! もっと解り易く!」
クリス「じじ自分も食べるっ!」
中井出「よっしゃよく言った! さあお食べ!」

 サムと渡すと、それを素直に、というかとっても輝く瞳で摘み、口に運ぶクリス。
 この動作の中、常識破壊への葛藤一切無しです。
 口ではどうと言いつつも食いたかったらしい。
 そしてとうとうケーキはクリスの口に運ばれ…………幸せな笑顔がそこにあった。

中井出「……なんか……クリスって“ちょろいヤツ”だよな……」
大和 「なぁ……?」
卓也 「だよねー……」
クリス「んあむ? んむんむ……なにか言ったかっ?《ぱああ……!》」
中井出「そしてある意味天然でいらっしゃる」
大和 「お嬢だな」
卓也 「お嬢だねぇ……」

 一言で言えばナイス笑顔だった。
 そしてこっちのワン子さんは一気に残りのケーキを食って、口の端にクリームがくっついていらっしゃる。

中井出「これこれワン子、口にクリームがついておりますよ?」
一子 「むあ? んんー……!」
中井出「あぁこれこれ、腕で拭うものじゃあありません。どれ、この博光が───」
大和 「舌で!」
中井出「ラジャー!」
卓也 「躊躇おうよ少しは!」

 モロがそう言う間にベロォリとブチャラティばりに汗ではなくクリームを舐め取る。

中井出「この味は! ……クリームの味だぜ…………ワン子!」

 一瞬にして教室中がざわりと空気をおかしくさせたが、別にどうということもない。……はずだったんだが、この博光の顔が次第に熱くなってくる!
 しまった僕今感情がいろいろ大変なんだった! わりと今までフツーにやることあったからついノリで! イヤァアアアア恥ずかしィイイイイイ!!!
 そしてモノスゲー形相で僕のもとへとズカズカ歩いてくるゲンさんがギャア怖いすげぇ怖いマジ怖い!!

中井出「ワ、ワリトイツモノコトデェス」
忠勝 「いつもンなことやってんのかテメェ……!!」
中井出「ノ、ノー! 世話って意味でです勘違いなさらないで!?」
忠勝 「一子がそういうことに頓着無ェのをいいことに、
    ヘンな真似しやがったら潰すぞボケ……!」
中井出「《キッ》それはこの博光に対する侮辱である!
    そんなことをしよう筈も無し!!」
忠勝 「………」
中井出「………」
一子 「?」
忠勝 「……チッ。あんまヘンなこと教えんじゃねぇぞ」
中井出「やっぱタっくん親切」
忠勝 「勘違いすんじゃねぇ。
    こいつが騙されっぱなしになるのが腹が立つだけだ《ギロリ》」
中井出「ヒィッ!?」

 そう言って、ゲンさんは僕をギヌロォッ!と睨んでから席へと戻った。
 おおおお怖かった……あの眼力、人泣かせるぜ……!?

中井出「イ、イマネェゥ! トテェモォゥ! コワァイカァンジガシトゥァゥ!」
京  「今ね、とても、怖い感じがした、と言っている。咄嗟に通訳も出来る妻。10点」
卓也 「思わず外人口調になるくらい怖かったんだ……」
大和 「しかも微妙にナマってるし。なんにせよ、なんだかヒロは苦労しそうだな」

 大変な人に目ェつけられた気分でした。
 まあ、生き方は変えないけど。


【SIDE】  ……流れ流れて放課後の空き教室。  教師連中、綾小路麻呂とルー・イーが生徒の前に食券を掲げ、競りをしていた。  といっても暇でかつ実力ある者に仕事の依頼をするという特殊なものであり、ある種でこの学園の公式万屋のようなものである。  生徒は食券が得られ、問題が解決されれば教師が喜ぶ。  よく出来た需要と供給である。 翔一「よーハゲ。トーマ、大和に負けて悔しがってたか?」 準 「んにゃ。それどころかますます惚れてたよ。ライバルだってな」 翔一「ライバルが身近に居て、勝って負けて! いーねー、勝負相手に困らねーじゃん」  本日の昼に直江大和VS葵冬馬のリベンジバトルがあった。  といってもメンツなどを気にしないバトルだったものの、周りが騒いでいつの間にか2−FVS2−Sになってしまっていたわけだが。  勝負は大和の勝利に終わり、2−Sの連中は悔しがってはいたものの、冬馬はうっとり笑顔で大和を見つめていたという。 麻呂「案件は一つだ、の」 ルー「それでは、競りを始めるヨ」 麻呂「では、麻呂が案件を詠みあげるでおじゃる。    ガラス割れ 己の道も また割れる〜……」 ルー「頼み料は上食券200枚ダ」 準 「おおっ、大きく出るねぇ」  依頼を完了できれば食券が貰えるということでも、200枚は中々大きい。  翔一と準は目を輝かせ───いや、この場合は翔一が事件に、準が食券に目を輝かせたというべきだろう。 準  「生活のためだ、食券は是非とも欲しい! 190枚!」 骨法部「YEAH! 180マーイ!」 弓子 「170枚にて候」 準  「一気に10枚ずつ減らさんでほしいねぇ……あ、人のこと言えんか。165枚!」 弓子 「140枚にて候!」 骨法部「120枚! WOW!」 準  「ちょ! 20枚ずつとか、懐に余裕があるヤツがでしゃばるんじゃあありません!     こっちゃあ生活かかってんだっての! 115枚!」 骨法部「100マーイ!!」 準  「オィイイイ!!」  次々と競りが進められてゆく。  しかしさすがに100枚以下で面倒ごとを背負うような輩はそうおらず、事件の全貌も知らぬままに無鉄砲をする者など─── 翔一 「90枚!」 骨法部「パードン!?」 準  「きゅっ……おいおいおい風間さん家のキャップさん?     相場とかちったぁ考えて───」 翔一 「90枚だ!」 準  「……あーはいはい、好きにしなさいもう。     その代わり、手伝うから一割よこせよ、コノヤロー」 翔一 「おうっ、多いほうがおもしれー!」  どのみちどちらが落札しようと付き合っていたのだろうが、二人は気にせず周囲を見た。 ルー「90枚。他にいないカ? 無ければ風間に落札!」 麻呂「詳しい話をするでおじゃる。他は去りゃ!」  結局落札したのは翔一。  他の者が去る中、準が「んじゃーあとでな」とだけ言って去る。  残された翔一はルーや麻呂から事件に関することを教えられ……子供のように目を輝かせていた。
 ……その後の教室。  招集がかけられた風間ファミリー&中井出ファミリーは、誰も居なくなった2−Fに集まっていた。  中には帰宅途中だった者も居て、突然携帯で呼び出されたのだ。  応答しねーヤツは探しに行きましたがね? 中井出「ガクト見つけたぞー。     親不孝通りでムチムチボインのねーちゃん発見して鼻伸ばしてた。物理的に」 岳人 「伸ばせねーよ!」 中井出「お前好きね、あーゆーの」 岳人 「年上の魅力満載じゃねーか! なにが不満だよ!」 中井出「俺はこう、大人になっても子供っぽい無邪気さを残した方が好きだな。なごむ」 準  「童心と姿。これさえあれば敵はねーよ。     シミ1つない柔肌を思い浮かべてみなさいよォ、心が洗われるようじゃないの」 岳人 「いや……その感性こそが俺様には解らねーよ」 中井出「年上好きには解らねーかねぇこの気持ち」 準  「俺ゃロリコンだが、少女をどーこーする趣味はねーよ。愛でたいだけだ。     出来ればそのまま一緒に風呂入りたいだけだ。一緒に寝たいだけだ」 岳人 「行きすぎじゃねぇかよそれ!!」 卓也 「しかも全然“だけ”じゃないしっ!!」 準  「一緒にって言ってるでしょーが。     相手に同意のねぇことをするのは幼女に対する侮辱だ。     なにせ、幼女は手折るもんじゃねぇ……愛でるもんだからだ」 岳人 「おお……なんだか知らねぇけど熱意と愛情は感じたぜ……」 卓也 「きっちり“幼女に対する”って限定してるところとか、さすがだね……」 中井出「ハゲだからな」 準  「いやハゲ関係ねーから。ハゲ=ロリコンじゃねーから」  ロリコン話に花を咲かせつつも、次々と教室に戻ってくる皆様を迎える。  やあ、いきなり招集かけられりゃあ、そりゃあ皆様外から来るよね。 一子 「まゆっち見つけてきたよー。剣道部覗いてたわ」 京  「クリス見つけた。茶道部でお茶飲んでた。そして好きです」 中井出「甘いわ、俺なぞ愛してる。誰をとは言わんが」 京  「う、う〜〜〜……! 自分に言われているようにも聞こえて、     なのに他の人かもしれないこのもやもやした心……!」 翔一 「よっし、これで全員そろったな?」  その中心でニヤリと笑うはキャップこと風間キャップ。もとい翔一。  皆様がキャップの声に一斉にキャップを見て、その視線を受け止めたキャップが次ぐ言葉を放つ。 翔一 「喜んでくれ! 久々に依頼が来たぜ!」 百代 「依頼か……それはいいな、食事代が浮く」 中井出「金ねーときは人に弁当依頼するくせによく言いおるわこのお子め」 百代 「浮くことには変わりないだろー?」  まあそうですが。 由紀江「あの、依頼というのは?」 中井出「うむ。ほいじゃあ依頼ってのを知らないまゆっちとクリスに、     この学園における依頼の全貌を教えよう。準が」 準  「俺かよ! あー……よく聞きなさいお嬢さんがた。     俺たちはまあ、いろいろ個別能力揃ってるからね。     たま〜に運動部の連中とかから助っ人の依頼がくるんですわ」 卓也 「大抵がモモ先輩の能力目当てだけどね」 冬馬 「彼氏役を頼まれる、というのもありますが」 大和 「それ、トーマとキャップしか来ないだろ」 岳人 「ハンサムでナイスガイな俺様は、     やはりマッスルシャインの所為で一度も依頼がこねぇがな」 大和 「…………ヒロ、俺には無理だったんだ。だからこっち見るのやめてくれ」  マッスルシャインは未だに放たれているらしかった。  ていうかこの場合、言い出した俺が悪いだろうに。 中井出「いやごめん、俺もなんだかすまんかった……」 大和 「いや……その場のノリってあるからな……」 中井出「うん……ごめん……」 大和 「うん……」 クリス「? よく解らんが、つまりは何でも屋といったところか?」 中井出「そう。万屋準ちゃんだ」 準  「いや、俺そーゆーんじゃないからね? だがまあそーゆーこったお嬢さん。     学校内の問題を引き受ける何でも屋とでも考えておきなさい。     そして万屋準ちゃんは、     幼女と幼女体型の相手には有効ですのでそこのところよろしく《ニコリ》」 百代 「わざわざいらんこと付け足すなよハゲェ……それで、内容は?」  モモが先を促してキャップが案件を口にする。  内容は……やっぱりガラス割り事件だった。 翔一 「報酬は上食券……あー、つまり90枚を山分け。討伐クエストになるな。     犯人は3、4人のグループ。逃走には自動車を使ってる。     警備員が車の音を聞いたらしいそうだ。だから5人の可能性もある」 中井出「おお、では俺が捏造コメントとともに纏めよう。     “まいったよお手上げだ! 誰だか知らないけど窓を叩き割っていって!     このままでは学校の信頼も風紀もズタズタだ!     報酬は弾むから犯人を叩きのめしてくれよ!”     ───討伐クエスト【窓割り犯人を叩き伏せろ!】     達成条件は窓割り犯全員の討伐! 失敗条件は一人にでも逃げられること!     制限時間50分! リタイヤは2回まで! 3回目は終わりだ!     基本報酬は上食券90枚! 参加するか任せるが、参加しなければ報酬無し!     ちなみに参加しても活躍しないんじゃ意味ないから注意。     そしてもちろんこの博光は参加する!」 一子 「アタシもー!」  不参加は……居なかった。  さすがだね、うん。なんというかさすがだ。 中井出「で、依頼主は?」 翔一 「ヒゲだ」 クリス「ヒゲ?」 京  「2−S担任宇佐美巨人先生」 小雪 「ヒゲ生やしてるからヒゲ。ひねりないねー」 京  「だよね。もう“疲れた中年男性”でいいと思う」 準  「シャレになってないからおよしなさいね、お嬢さんがた」  さて。つまりは窓ガラス割る不逞な輩を、コノガキサガシングー!→アノガキブチノメーション→クエスト達成……と、こんな流れ。  相手を探してぶちのめせってことですハイ。 翔一 「武器は教室に飾ってあるレプリカ使っていいってよ」 中井出「何を言う! ガクトの筋肉はレプリカじゃないぞ!」 岳人 「そうだぜキャップ! 俺様ピュアマッスル! 俺様ナイスガイ!」 卓也 「“教室に飾ってある部類”に含められてることにツッコもうよ!」  はい、決闘に使われるレプリカは、各教室の黒板の上に飾られております。  教室ごとに存在する猛者が持つ武器に合わせて作られたものです。  そしてモロのツッコミでガクトに強襲かけられる僕。 一子 「武器あり! やっほーぅ! 存分に暴れられるじゃないの!」 中井出「うむ! ぞ、存分にっ! 暴れてっ……ぬ、ぬうう! くれよう、ぞっ!」 一子 「? なにやってるのヒロ」 中井出「アルゼンチンの広き世界を背中に感じています」  バックブリーカーなんて久しぶりにされました。  ああ、なんだか新鮮。 岳人 「ったく、ほんと息吐くみてーに冗談言うやつだぜ」 中井出「ククク、なにせ嘘吐きじゃけぇのぉ。ところで下ろして?」 岳人 「だめだな」 中井出「《ギリギリ……!》ごおおおお……!!」  おなごたちの強さに隠れてて解り辛いけど、基本的に能力高いのがファミリー。  バックブリーカーでメキメキなる僕の背中は、もういろいろと辛いです。  そして全然助けようとしてくれない僕の家族にカンパイ。 大和「で、ヒゲはなんだって?」 翔一「学長が出るには小さい事件だってんで、上から言われたらしいんだけどさぁ。    本人めんどくさいらしくて学生頼り」 百代「おいおい仮にも教師だろ……」 大和「仮にも姉が舎弟にめんどうだからっていろいろ頼むのとなんら変わらないでしょ。    ていうか報酬があるだけまだ“依頼”になってる」 百代「あーきこえないきこえない」  でも教師は福利厚生で食券タダで支給されたりします。  それを溜めておけば、むしろタダで依頼を出せるわけでして。  ……ほんと、ちゃっかりしてやがるぜあのヒゲ。  とまあそんなわけで参加の意として、机に置かれていた食券を掴むみなさま。  僕も手を伸ばしたかったけどブリーカー中なので無理でした。  そして気づけば無くなる食券……!! 中井出「ちくしょうてめぇら鬼だ!」 翔一 「いや。俺は風だ!」 中井出「そういうこと言ってるんじゃなくてね!?」 冬馬 「ということは今回は博光はお休みですか」 中井出「ぬ、ぬう……了解だ。自宅でジャガー目潰ししながら、     リアルタイムで進行する24時間ドラマでも見てるよ……」 京  「……私の食券一枚あげるから来てほしい」 小雪 「僕もー」 一子 「アタシのもあげるー」 中井出「いやあの、それ元々僕の取り分ですよね?」 準  「そして哀れ、3枚でも嬉しい馬鹿が居た」 中井出「うるさいよもう! ほっとけコノヤロー!     つーか普段から弁当作ってるんだからキミも一枚よこせコラー!」 準  「おォわ馬鹿ふざけんなァァ!! こりゃもう俺んだァアッ!!」  バオッ!とガクトの肩から逃れ、着地と同時に強奪にかかる!  しかし準はどうやら本気らしく、実に家族相手とかダチ相手っぽい口調のままに抵抗に入る! 冬馬 「はいはい、喧嘩は無しですよ、博光。私のを一枚呈しましょう。これでどうか」 中井出「おうおう、トーマはよきお子じゃのう……なでなでしちゃる」 冬馬 「《なでなで》おっと……ふふ、なんだか恥ずかしいですね」 準  「わー、なにこの俺だけ悪者みたいな空気ー。お兄さんちょっぴりショックー。     わぁったよ、一枚やるから拗ねなさんなァ」 中井出「朋友!!」 準  「ポンヨウじゃなくて家族だろーが!」  そんなわけで5枚の食券を手に入れました。  でも2枚は冬馬と準に返します。 準  「んお? どしたいいきなり」 中井出「ミャーコとユキのだけでいいわ。     キミらは美味しいもんたーんと食べて、しっかり栄養取りなさい。     ただでさえ最近痩せてきてるし。     それでも押し付けるなら家に戻ってきてください」 準  「……よーするにエスカレートしてるわけだ」 中井出「京のやつ、僕が赤くなるのに新鮮味を感じてるみたいでさ……ことあるごとに」 京  「それが愛。そろそろ落ちると思ってる」 中井出「落ちません」 小雪 「僕もなにかしたほうがいい?」 中井出「ユキ……キミはそのままで居て?」 一子 「? アタシもなにかしたほうがいいのかな」 京  「寝ているヒロの雄々しいスティックをおもむろに───」 準  「はい危ない言葉禁止! 風間! 風間ー!? さっさと話進めてー!」 翔一 「おうっ! つーわけで全員参加だ!     で、クリスー? お前ほんとに報酬いらないの?」 クリス「無論だ、報酬はいらない。もらわなくても捕まえる。     そのような悪は、正義がこらしめるべきだ……!」  おおっ、クリスが、クリスがめらりと燃えている!  ……途端になんだか報酬をもらった自分がちっぽけに見えてきました。  僕はとぼとぼと、渡された食券を渡してくれた人達に返し、渡された人たちもまた……そんな僕の心境を察してくれて、何も言わずに受け取ってくれた。 大和 「一枚くらいもらっとけって」 クリス「いい。自分はこういう行動に見返りは求めない」 中井出「ほうらクリスー、いなり寿司だぞー」 クリス「わぁい《ぱくり》」 中井出「ちなみにそれは依頼料だ。みろ、正義はいなり寿司に負けたのだ」 クリス「うわぁあああああーーーーーーーーっ!!!」 翔一 「一瞬で口にして一瞬にして落ち込んだな」 卓也 「どんだけいなり好きなの……」  そんな調子でその場は解散。  とぼとぼ歩きながらもしっかりもぐもぐといなりを食べるクリスを、皆が甘やかす光景は見ていてなごみました。 準  「……幼女の頃はさぞかし……」 中井出「なぁ……」  そして俺と準は、そんな彼女を生暖かい目で見送るのでした。 ───……。  さて、夜である。  夜の学校。  なぜこげな場所に居るのかといえば、そりゃあクエストのためである。  相手は凶器を持ってるだろうってことで、四人一組でつるむことになったわけだが───  一人あぶれるってんで、僕単体行動。  A班、キャップ、大和、モロ、ガクト。  B班、冬馬、準、ユキ、京。  C班、モモ、ワン子、まゆっち、クリス。  そして出来の悪いF班がこの博光のみよグオッフォフォ……!!  さぁあて悪として悪らしく、実害しかねぇ悪をどう料理してくれようか……!  そんな感じで夜の校舎を徘徊してるわけです。壁に張り付きながら。  フルフルとでもギギネブラとでもベリオロスとでも呼んでくれ。  合わせてフルネロスでもOKです。フルネルソンスープレックスみたいでステキ。  さぁて、そうこう思ってる間に夜のガッコに怪しい人物がやってきました。しっかり車を校門近くにつけた状態で。なるほど、運転手は残ってるってわけね。割って戻ったらすぐ逃げられるわけだ。……ふむ、つーことは5人だね。  クォックォックォッ……アイドリングストップを心掛けぬ者に、この博光が地獄を見せてやる……!  うむ、実行犯の4人が校舎に近寄ったのを見送って〜〜……と。  ここで素早く地を這い風になり、車の傍で歌を歌う! 中井出「ア〜〜〜ッ♪ 今っ、ひっかぁりをっ浴びっなァがっらァ〜〜〜ッ、今っ♪     向ッかァいか〜〜ぜのっなァかっ、     ブリィーズィーな空〜気ィ〜がっよォ〜ろこォ〜びをッはぁ〜〜こォ〜ぶっ♪」 運転手「あん? 歌? おいうっせェーぞ、歌なら向コーで歌《ガキィッ!》えっ!?」 中井出「アァイドリングストォ〜〜ップ……!!」  で、車の窓を開けてそこに肘をかけ、くっちゃくっちゃとガム噛みながら言ってきたパツキンさんの顎を掴み、力を込めることで顎をゴギンと外す。あとは叫ぼうとした声帯……まあ喉だね。そこに親指を喉ごと埋めるように突き刺し黙らせた。  激痛のあまり体が跳ねるが知ったことではないわ。  つーか、あらら。よく見りゃまだコゾーじゃねーの。フケ顔だけど。  だが残念、俺ゃ差別がキライだ。たとえ老人だろうが重病人だろうがやることはやる。 中井出「さぁてコゾー、窓ガラス代払えとは言わねぇから、この車スクラップな?」 運転手「!? ……、……!!」 中井出「文句も聞かない立場で破壊を繰り返したヤツの言うこと、     俺が聞く意味があると思う? ねーわなぁ、だから知らん」 運転手「……!!」 中井出「まァ……中に入ってったヤツらに気取られるのもつまらんし……よっ」 運転手「《ゴキャア!》───!!」  首を捻って気絶させた。  ぐしゃりと倒れた男をとりあえずは治療。死なれても困るし。  えーと、とりあえず音を消して、さぁて三太夫〜♪ …………。
【SIDE】  警備云々よりも校舎に入れることが問題ではあるとはよく言ったもの。  少年3人と、ボブと呼ばれる男は各階に進み、早速窓を割ろうとしていた。   ───まず4階。 ボブ「フンフンフーン♪ ン〜〜……今カラ、ガラスヲブレェ〜イク♪    ハッスルスルゼェーイ! ヤー!」  ボブという男性がバットを構えていた。  拳で割るのも格好がいいかもしれないと考えたものの、そんなことをすれば手が傷つくだけだと考え直した結果……などとどうでもいいことをニヒルに笑みつつ、男はバットを振りかぶった。  しかしそんなボブの視界にスッと人影が。 百代 「ブレイクするのはお前なんだけどな」 ボブ 「!? 見タナ!?」 クリス「いかにも悪党が口にする言葉だな……」 由紀江「あ、あの、窓を割るのはよくないことだと思いますっ」 一子 「修正が必要だわねっ」 ボブ 「オオウ!? イツノ間ニカ囲マレテル!     ケド全員オンナ! ドウッテコトナイ!」 百代 「女と見て安心するヤツがここに来るなんてなぁ……ははっ、面白いな、お前」  百代が指を鳴らす。  片手で構えた右手が、ゴキペキと小気味の良い音を立てた。   ───3階。  一人の少年が男たちに囲まれていた。 少年3「お、お前らなんだYO!」 岳人 「このガッコのモンだよ。てめぇこそなんだコラ」 少年3「ボ、ボブくん! ピンチだ! 出番だYO!」 大和 「悪いけど、上のボブくんに動く余裕なんてないよ」 卓也 「4階に行ったのが運の尽きだよね……」 翔一 「つーわけでお前を殴る。俺達の食券のための潤いになれ。     それがお前に出来る最後の仕事だ」  翔一が拳を鳴らす。日々退屈、単位を捨てて自由に振る舞っているとはいえ、自分や仲間が通う学校の一部を破壊されて面白いはずもない。  珍しくも怒っている翔一は、ジリ……と少年に詰め寄った。 少年3「チッキショオオオオオオ!! 捕まりたくねェエエエエエエッ!!」  途端、“見つかっても忘れ物を取りに来たと言えば”などと誤魔化そうとしていたのだろう。バットを服の中に仕込んでいた少年はソレを取り出すや振り回し、男たちを近寄らせないようにした。 卓也「うわぁっ! バット持ってた!」 大和「振り回してるだけなら近付かなきゃいいだけだろ。ほっとけば疲れる」 岳人「つーかもう疲れてんじゃねーか……だらしねぇな。    もっと鍛えろ。鍛えて歪みねぇ肉体になってこい」  少年の抵抗は3分と保たなかった。   ───2階。  暗がりの廊下に、少し目が危ない少年が立っていた。  バットを持つ手は震え、しかし顔は他の連中のそれよりもよほどに危ない。 少年2「よ、よよよよしやってやる……!     これはただの窓ガラス破壊じゃないんだぞ……! 病んだ社会への警鐘だ……!」 準  「やめときなさい少年、病んでんのはお前さんの頭だけだ」 少年2「ひぃっ!? だだだだ誰だぁっ! バババットだぞ!     殴るぞ!《ヒュカンッ》───……え?」  臆病ではあるが、武器を持つと性格が変わる人種なのか。  いや、そんなことを想像するまでもなく、彼が持っていたバットは手元から先が綺麗に切断された。まるで、よく切れる包丁で野菜を斬るかのように綺麗に。 小雪「あははははっ、バットってやわらかーーーいっ♪」  その視線の先に居たのは、構えた足をストンと床に下ろして、ケラケラと笑う少女。  わざわざ訊くまでもなく……斬ったのだ、足で。バットを。 少年2「バッ……バババ、バットがっ……足っ……? 足で切れっ……!?」  氣を込めた足は鋭利な刃物と化し、生来の身体能力に加え、護身用にと過保護に叩き込まれたテコンドーは、確実に彼女を強くした。  幼き頃もだが、今でもその気になれば簡単に人などコワせるのだろう。 冬馬「そのバットの二の舞になりたくなければ、暴れることはオススメしませんよ」 京 「暴れなくても痛めつけるけど。バットを切れるテコンドーと、    全国の博光くんの心臓を射抜きたくてやまない弓術、どれで死にたい?」  しかしコワせるのは彼女だけではなく、弓を構えた少女もまた、その気になれば即座に人など無力化出来る。なんにせよ、“ここ”の女性は強いと認識していない時点で、敗北は当然といえるだろう。 少年2「ちっ、ちちちちち近寄るなっ! 来ると……《シャクンッ》さ、刺すぞっ!」 準  「あーらら光りモノ。それ出されちゃァ…………手加減出来ねーわなァ……!!」  いえるだろうが、男の実力もまた他とは比べものにならないのだ。  ナイフを構えた少年を前にしてもひどく冷静に、耳を掻く余裕すら見せ、小指についた耳垢をふぅっと吹き飛ばすと、井上準は臆する気配など微塵も見せずに構えた。  光りものを相手が出したならば、相手は人を殺せる武器を出したと同じ。  ならば一切の加減はせず、殺す気ならば殺し返す。───中井出家の教えだった。   ───1階。  ……。 少年1「へっ、大人たちは俺達のことゆとり世代ってばかりしてっけど、     俺達がいい歳になれば今の大人達はみぃんなジジババだ。     ステキな世界だぜぇ……!? 姥捨て山とか作っちゃいますよぉ〜ってかぁ!?     さぁて今日も張り切って割っちゃいますかぁ! おぉらぁっ!!」  少年がバットを振る。  だが───それが窓に当たるより先に、窓は割れた。それも外側から。 少年1「うぅわっ!? な、なんだぁ!?」  少年は目を疑った。  窓を鈍器も無しに破壊するほどの速度で飛んできたソレ。  そして、今まで生きてきた中で一度も見たこともない異形物を前に。 化け物『ゴフェハハハハカカカカッカッカッカッカ……!!     貴様か……我が“領域”で好き勝手に暴れてくれたヤツは……!!』 少年1「なぁっ……なっ……なんっ、だよ……コレ……!」  大きさは虎よりも大きく、カタチはまるで餓鬼。  落ち武者がそのままバケモノになったようなソレは、少年を見て笑う。 化け物『ゲハハハハ……我こそは学園七不思議の四天王が一人……!     もったいないお化け!!』《どーーーーん!!》 少年1「七不思議関係ねぇし七不思議なのに四天王で今自分が割ったものを見てその名前は     どうなんだよぉおお!!」  少年、心からのツッコミだったという。 化け物『どりあえず腹へっだから、おで、お前、まるかじり。     もぉお我慢できねぇなぁああーーーーーーっ!!!』 少年1「う、ぎゃっ……うぎゃあああああああーーーーーっ!!」  少年は逃げ出した。  仲間と合流するべく階上へ。  化け物もまたその姿を追って、ゴロゴロと何故か前転で転がってきた。 少年1「なななっ……ひっ……なんだあれっ……なんっ……んぐっ……ひぃっ……!!」  物理法則を無視して階段まで前転で登ってくる化け物から逃げる。  丁度その頃、ゆとり少年2はナイフを振り回して叫んでいたわけだが─── 少年1「お、おいぃいっ!! 逃げろぉおおおおっ!!」 少年2「!? あ、け、ケージ君!     ま、まままま待っててねっ、今こいつら“ヤ”っちゃうからっ!」 準  「あ? おいおいぃ、一階は博光担当だったろ、もしかして逃げ、ら、れ……」 化け物『るぅううぇええぅおぁああぅう!!!!』 準  「ほぉわぁあああーーーーーーーっ!!?」  そして準も叫んだ。  一階から登ってきた少年の後ろを転がるデカい化け物を見て。 冬馬「お、おやおや、妖怪腐れ外道ですか。    間違い無く博光でしょうが、また随分と手の込んだことを……」 京 「全力で楽しむ姿が想像に容易いね」 小雪「おー……!」  一方では呆れたり頷いたり目を輝かせたりだったが、準は真っ先に逃走体勢をとった。  このノリは大変よろしくないと、よく解っていたからだ。  いや、むしろ彼がそうするのと同時に中井出ファミリーの皆はさっさと走り出していた。 冬馬「……なりきると止まりませんからね、博光は」 準 「賭けてもいいね。立ち止まったら絶対食われる」 京 「ものごとに徹底する在り方も好き」 小雪「今僕をたべてーって言ったら食べるかなー。あははははっ」 準 「危ない言葉禁止だってのォォォォ!!」  迷わず廊下を走り、四人は階上へ。  少年1ももちろんそうしたのだが、驚くあまり固まってしまった少年2はそうはいかなかった。 外道 『はらへっだ〜……はらへっだ〜……』 少年2「な、ななななんだこいつ……! よよっ、寄るな、来るなよぅ!」 外道 『だぁ〜〜〜っ!!』 少年2「え《ズバビシャアンッ!!!》」  まるで、地面に止まった蚊を潰すかのような叩き落しだった。  大きな手の平で潰された少年はぐったりと動かなくなる。  そんな少年が持っていたナイフが、化け物の手に刺さり…… 外道『うおいてっ! ……ハッ!?    あ、あれ? ここは何処? 僕は───外道! よし俺だ』  彼は、なりきりすぎていた自分を取り戻した。  ナイフを抜いてからすぐに人間の姿に戻ると、ヒクヒクと痙攣している少年を治療。  それから頬をコリコリと掻くと…… 「よし、肝試しだ」  彼らしく、よからぬことを考えた。 …………。  一方3階。 翔一「んお? おーお前らどしたー?」 準 「手短に言うが博光の野郎が化け物になって暴れ出した」 総員『よし逃げよう』  3階、風間ファミリー男性陣は、合流するや聞いた手短な話のあとに即答した。  彼の過去を見たからこそ即答出来る、嫌な予感爆発の状況だったからだろう。 声 「み゙ゃぁぁあああーーーーーーーーっ!!!」 総員『あ』  ……などと判断した時には既に遅く。  階上からはよく聞く声で、よくは聞かない声調の悲鳴を聞いた。 卓也「今の……モモ先輩だよね」 大和「あっちゃー……姉さん、なんでも平気だけど魑魅魍魎だけはダメだから……」 翔一「触れるモンならなんでも叩きのめせるけど、触れなきゃダメってのもなぁ」 冬馬「ということは、上に回りこまれたということですが……準、下はどうです?」 準 「おー……バケモンは……いねぇな。追ってくる様子もない」 翔一「んで? お前ら2階の悪人は?」 小雪「置いてきたー」 京 「今頃潰されてる。いい気味」 準 「まあ、依頼とはいえ夜に駆りだされるヤツの身にもなれってこったな。南無」 冬馬「博光のことですから殺しはしていないでしょう。とりあえずは───」  これからどうするかですね、と口にする。  途端に窓ガラスを割って落ちてゆく、見慣れた姿があったわけだが───妙な白いモヤが即座に後を追い、落下していったソレ……川神百代という女性に巻きつき、再び階上まで引っ張り上げていった。 総員『………』  その際に本気で叫んでいた百代の声は、皆聞かなかったことにした。  と、一応耳を塞ぐフリなどをしていると、この階へと転がるように下りてくる女三人。  ……C班だった。 翔一 「お、ワン子にクリスにまゆっち、単刀直入に訊くけど上の様子は?」 由紀江「地獄です!」 翔一 「おおう!? 物凄いキッパリだな!」  迷うことなく言われた言葉に、翔一は驚きよりもむしろ心擽られた。  擽られたが最後、その足はもう風のように階上へと向かい……残った者は、そんな素早さに気づかないままに、へたり込む女性陣へと駆け寄っていた。 クリス「じ、自分は知らなかったんだ……!     日本のもったいないおばけが、あそこまで怖いとは……!」 大和 「いや、見てもないのに自信をもって言えるけど、     それ絶対もったいないお化けじゃない」 一子 「でも自己紹介してたのよぅ! 首だけ浮いたお化けが、     “マイネームイズ……もったいないおばけ!”って!」 男衆 『その時点で絶対違うだろーが!!』  そして、上の状況を聞けば聞くほどツッコんだ。  曰く、霊の大群が飛び回っている。  並んで飛ぶ生首がウェグザイルの例のアレのようにぐるぐる回ってたりする。  首の無い体がブレイクダンスしている。  人魂の大群が飛び交っている。  トイレの花皇(はなこう)
様と名乗る皇帝が居て、芳香剤のすばらしさを説いてくる、などなど。  聞けば聞くほどにツッコミどころが増していた。  しかし困ったことに全員触れることも出来ないときて、最初は戦う気だった百代があっさり戦意喪失&逃走&捕縛。  それらがさっさと達成された頃には、三人は逃走を選んでいた。というか全員散開という百代の合図に従ったのだが、その百代が捕まるとは思わなかったらしい。 冬馬 「ところで……上の階のボブくんは?」 一子 「ファントム(魂)GUYにスカイハイラリアットされて伸びたわ……」 大和 「なにそれ!? ファント……なにそれ!?」 京  「二回言うほど大事なくらい謎だね」 由紀江「マスクを被ったレスラーでした……ただし足が無いです。浮いてます……」 卓也 「超ファイヤープロレスのキャラだったよね……」 冬馬 「……博光の仕業、で間違いないでしょうけど……」 由紀江「い、いえそれが……博光さんでしたらほら、校門で車を叩き潰してまして」 総員 『…………え゙……?』  チラリと窓から校門を見る。  と、ぐったりと倒れた誰かの傍で、車を殴りまくる中井出博光が。 大和「エ? じゃあ上のって……なに?」  トコトコと歩き、大和はソッと階段の上を覗いてみた。  すると、ヒョウと飛んできた生首がその視線に気づき、ンバッと振り向いてオギャーと叫んで─── 大和「───……」  彼は見なかったことにして皆のもとへと戻った。 岳人「どうだった?」 大和「目と口から血を流しながらオギャーと叫ぶ生首と目が合った」  しかし口は正直だった。 岳人「そうか。ところでなんだがな、大和」 大和「? どした? ───あ」 岳人「……そこに気絶させといた窓割り犯が、天井から落ちてきた妙なもんに食われた」 大和「………」 岳人「………」 大和「………ところでガクトさん」 岳人「なんでしょうか大和さん」 大和「後ろにいらっしゃる、目の無い女性はガールフレンドですか?」 岳人「……お、俺様……恋人つくるならパッチリおめめの綺麗な年上って決めてるんだ。    だから………………違うぜ?」 大和「………」 岳人「………」 大和「…………他のみんなは……?」 岳人「一足先に逃げた。俺様、さっきから体が重くて動けなくてな……」 大和「………」 岳人「………恥も外聞も無く言わせてもらおう。───助けてくれぇ大和ぉお!!」 大和「ヤドカリに餌やらないと」 岳人「いきなり逃走体勢とかひでぇだろおい!! ───あ」 大和「はう!? お、俺の肩に何を見てる!? な、なに!? なん───あ」  口をあんぐりと空け、大和は俯いた。  足が動かなくなった理由を調べるためだったのだが、俯いた先の足に無数の赤い手が絡まっていた。そしてさらに、肩に妙な感触を覚えてちらりと視線だけを動かしてみれば。自分の右肩の後ろから、先ほどの目と口から血を流す生首が。  今こそ全力で叫ぶ時とばかりに、彼は叫んだ。
 ……。 中井出「ち〜いさ〜な百鬼夜行〜♪ す〜いかさ〜まのおっとお〜りだ〜いっ♪」  やあ僕博光。  今日はそう、川神学園4階の空き教室から状況を報告するよ? 中井出「うむ、やっぱり夜のガッコって霊に好まれてるのかね。     ちょいとばかり冥界の門あけたらこの有様ですわい……」  肝試しとばかりに冥門あけたのがマズかった。  一気に霊たちが溢れ出して、大変なことになってます。  あ、ちなみに外で車を三太夫(スクラップ)にしているのはドッペルゲンガー能力で出した博光です。 中井出「で……えーと」 百代 「………」 中井出「どうしよう」  教室の隅で震えるモモさんがいらっしゃる。  殴れぬ恐怖に怯え、こうして隅にまで追いやられてしまった。  どうしよう、後が怖い。めっちゃ怖い。  でも涙目のモモさんめんこい。めっちゃめんこい。  なんて思ってたら、ガッコを貫かんとするほどの絶叫。大和とガクトのものだった。 中井出「モモさんや。あなたに霊を打ち払える力を貸しましょう。     僕がこの世界に来る前に手に入れた武器です」 百代 「……?」  モモの右手に触れる。  そこに武器を渡すイメージを流し、手を放せばはい完了。 百代 「うわっ!? わーーーっ! うわぁあああーーーーーっ!!」 中井出「ややっ!? これ! 暴れるでない!」  しかし現状がこんなもんだから、急に変化した自分の手にとても驚くモモさん。  そんな彼女にソレがどーゆーものなのかを説くと、ようやく落ち着いてくれる。 百代 「……と、とにかく。これがあれば魑魅魍魎を殴れるんだな?」 中井出「うす。ある物体と混ぜてあるから、     解放したらちょっと右肩から先が大変なことになるけどね。     つーわけで解放しますよ?」 百代 「ああいいぞやってくれっ! 魑魅魍魎を殴れるなら、もう私に怖いものはない!」  急に黒い笑みとオーラを浮かべ、目を真っ赤に光らせたモモさん。  そんなモモさんの右手に触れて、 中井出「宇宙天地與我力量(うちゅうてんちよがりきりょう)
降伏郡魔迎来曙光(こうふくぐんまごうらいしょこう)……!     我が右手に封じられし鬼よ! 今こそその力を───示せェッ!!」  我がではないけど解放の経を!  するとモモの右手に武器として付加させた鬼の手が、力の解放とともに一気にモモの腕を侵食。肩までを飲み込むと、それが赤と黒を混ぜたような魔物の腕になる。  ぬ〜べ〜は左手だから、こっちは右手にしました。最強。 百代 「う、うあ……不気味だな……」 中井出「拳を握りしめると甲の部分のコアが大気中のマナを吸収します。     それによって現実と霊体との境目が潰されて、殴れるようになる。     ただし右手だけだから、そこは気をつけようね?」 百代 「十分だぁ……! ふふふっ……よくも今まで人を怖がらせてくれたなぁ!     おっしおきの時間だぁあ〜〜〜〜っ!!」  ……かつてないほどの黒い笑顔で駆け出していった。  教室の引き戸? ええ、殴り飛ばして行きましたさ。  その先に居た生首が早速消し炭にされてました。 声 「おおおおいいなこれいいなこれ! 殴るたびに黒い火が出るぞ!    もっと居ないかもっと! 殴らせろ〜〜〜っ♪」 声 「おおっ!? なんだそれモモ先輩! カッコイうぉおああっ!!?    ちょ、モモ先輩俺! 俺だって!」 声 「うははははは!? 今度は俺俺詐欺の幽霊かぁ!!」 声 「うわーい!? 目が完全にいろいろ大変になってるーーーーっ!!」  そしてジャイアンが誕生した。  人の速度とは思えん速さで移動し、霊を殴りまくる人間。ミステリーだ。  余波でキャップが吹き飛ばされたりしたが、それでも暴れ回るMOMOYOは、室内限定の暴風と化していた。  ……ええまあ、あの手はご存知、ぬ〜べ〜の鬼の手です。  そんでもって解放した先のコア付きの腕は幻影竜装。  腕を覆っちゃいるけど、一応篭手装備です。  いろいろ世界巡ると、ほんといろいろあります。  段々時系列とか無視した巡りになってきてるし、そろそろ終わりが近いのかもしれない。  ……あくまで近いかもであって、1000年程度で終わるなんて思っちゃいないが。 中井出「あーでもごめん、マナの消費が高いからそこまでね?」  モモの腕から幻影竜装と鬼の手を解除。  すると、聞こえていた笑い声が突然ピタリと止んで、しばし沈黙。  のちに、「み゙ゃああああーーーーーっ!!!」というかわゆい悲鳴が聞こえてきて、霊に追われるモモが廊下を逃げ回っているのが見えました。  いつの世も調子に乗ったら痛い目見るということですね、学ばせてもらいます。  つーか雑魚霊相手に最大出力で殴りかかるとは何事ですかもう。  しかしあのままではまた隅で固まってしまいます。止めてあげましょう。 中井出「……さて。では目一杯怖がらせてあげましょう」  モモは強いお子。しかし弱点がある。それが魑魅魍魎。  そこを刺激して乗り越えてもらうのだッツ!  まずは創造したこれを着て、と。  あとは天井に張り付いて、モモが来たら───ってもう来た! これでかつる!  なんて思ってる間にモモはさっきのように教室の隅に走り、そこで屈み込んでしまった。  そのすぐ上に、この変装した博光が居るとも知らず……!  さあ行こう! 盛大に、しかしまったりと!  ───張り付いていた手を放すと、僕は身を翻して落ちた。  しっかりと床に両手と両足をつけるため、まるでゴキブリのような体勢のまま。 半漁人『はんぎょじぃい〜〜〜ん』  ドチャリ。 百代「───」  …………。  ……あれ? 無反応?  せっかくどちゃりと落ちてきたのに、僕を見たまま固まってるモモが居る。  どうせならこう、大キョーフ!とか言ってファイナルエルボーでもドカーンと……。 百代 「う、うううっ……うっ……うぅうあぁああああああああああっ!!!」 半漁人『え? あ、いやぁあああああーーーーーっ!!?』  突然ブワッと涙を浮かべたモモが、右手に尋常ならざる力の波動を蓄積、爆発!  その氣を以って俺の顔面をアッパーカットで殴りつけ、そのまま氣を解放!  俺はその氣に吹き飛ばされるがまま天井にぶつかり、破壊し、突き抜け、遥か大空の雲までをも穿ち、宇宙へと飛んでいった。  これぞ川神流奥義かわかみ波。  俺は大いなる宇宙空間へと半漁スーツのまま飛ばされたものの、考えるのをやめそうになる前に転移で戻った。  ……ええまあ、戻った先でもモモどころか皆様にボッコボコにされましたが。 Next Menu Back