思い返せば幾億の時。
 大した思いも持たず、ソレは弾かれた。
 真理の扉というものがある。
 扉の先で真理を目にし、真理にこそ弾かれたソレは、永い永い時を生きる。
 56億7千万の時を生きたソレは、そこからさらに永い時を生きるのだ。
 許されたのはただそれだけ。

  古くに唱えるは遥か過去。

 目立ったものなど無い時代に落とされ、ただ生きることを許された。
 大地にマナと癒しを植え、人ではない異形に癒しの神と祀られたことさえある。
 その頃は、妖めいたものや人のようなものが普通に存在し、どれだけ経っても姿形の変わらない存在など目立つほどに居た。ソレも姿形の変わらぬものの一人であり、

中井出「そう、僕だ」

 名を中井出博光といった。
 心理の扉に弾かれた彼はしかし、自らが持つ武具等に宿る意思を奪われそうになるや、その運命を全能力を以って破壊。マナがすっからかんの状態で彼が真理の扉に対して否定した“夢物語”の世界へと飛ばされ、ドグシャアと脇腹から荒野へ落ち、血反吐を吐いていた。

中井出「オゲェエッヘごっへがはっ! ……ハッ!?」

 気づけば知らない場所。
 しかし意思を死守したことで笑顔な彼は、真理に対して「ざまぁみやがれウェヒヒハハハハハ!!」と笑い、途中で血反吐が喉に絡んで咳き込んだ。

  ……そこから彼は、約三千万年ほど“夢物語の世界”を旅する。

 そこは今まで何気なく自分が見てきた漫画や小説やアニメの世界であり、彼はそんな世界を意思とともに楽しみながら過ごしていった。
 知っている世界では偽善に生きて、死ぬはずだった人を救ってみたり。
 知らない世界では右も左も解らないままに自分勝手に生きて、ヘマをやらかして周囲にボコボコにされたり、誤って武具を指輪ごと外してしまってアルティメット雑魚になった途端に再びボッコボコにされたりと、まあ忙しくも賑やかな日々を過ごした。
 そんな中で出会った人々にはやはり忘れられはしたのだが、意思はきちんと霊章の中に。
 心の底から信頼し合った“風間ファミリー”の意思も受け入れると、彼は忘れられはしたけど笑顔のままに“真剣で私に恋しなさい”の世界に手を振った。
 それからも旅は続く。

中井出「ねぇダオス。大いなる実はなんとかするからこっちで平凡に暮らさない?」
ダオス「デリス・カーラーンでは今も滅びに対し抗う民が待っている。それはできない」

 テイルズオブファンタジアの世界でウィノナとともにダオスと仲良くなってみたり、

マグナス「ぐっ、はっ……!? 馬鹿なっ! これはっ……!
     シルフではないっ……! まさかっ……闇の精霊、シャドウ……!」
クラース「マグナス! 今助ける!」
マグナス「来るなっ! 魔法陣の中に入るんじゃないっ!
     お前も、巻き、込まれっ……ぐっ、がっ! がぁあああああっ!!」
クラース「マグナァーーース!!」
中井出 「大回転ハゲピカリ松葉杖アタァーーーック!!」
シャドウ『《ドボォッシャア!!》ギャアーーーッ!!』
クラース「マグッ……なあっ!?」
マグナス「がっ、はっ……はぁっ……!! ……!? な、なにが……!?」
中井出 「サイコクラッシャーとは言えない大回転ロケットヘッドバッドで僕参上!
     ああもうマグナスさん? あなたそれはいけません。
     結婚を申し込もうとかそれっぽいことを言うから死にそうになるんだよ?
     そんなフラグに真っ向から戦いを挑む男! スパイダーマッ!!
     僕もドリアードと結婚宣言した所為で飛ばされたことあるから、
     フラグなんぞは大っ嫌い! よってシャドウをとっ捕まえる!」
マグナス「ま、待てっ……シャドウは人を嫌っている……!
     下手に手を出せば、ここに居る全員が……!」
中井出 「だったらブチノメして力を思い知らせて契約する!
     僕らの記憶が確かなら!
     この世界の精霊のほとんどは人より強い力を持っているから、
     力を貸すに値するかを試す傾向にアルノデス!
     なので今ここでGO! あ、一応契約の指輪は持ってるからあげる。
     あと辛そうだし回復の奇跡を。ベホイミ♪」
マグナス「《パアアア……!》なぁっ!?」
中井出 「そんなわけでさあ行こう!
     あ、クラースくん、精霊召喚学の前ではこんなことは茶飯事だから、
     もっともっと勉強しておいたほうがいいよ」
クラース「……目の前で知人が死ぬところだったんだ。肝に銘じておくさ」

 シャドウに消される筈だったマグナス・ブラッドリーを助けて契約させてみたり、

中井出 「ノー! ダメ! そういうこと、結婚してからするヨロシ!」
アーチェ「あ、あんたにはそんなこと関係ないじゃん!」
中井出 「それでもNO! その場の勢いでソレするの、イッツア・ヨクナーイ!!
     ここは耐えて、大手を振ってユニコーンに会いにユクノデス!」
アーチェ「なんのこと!?」

 誰かさんとコトをする筈だったアーチェさんのソレを阻止してみたり、

モリスン 「いいか! これからきみたちをある場所へ送る!
      そこでダオスを倒す手段を得てきてくれ!」
クレス  「モリスンさん!?」
ミント  「ある場所って……」
チェスター「おいっ、なんかまずいぞっ……! ダオスって野郎がこっちに向けて……!
      このままじゃ間に合わねぇ!《ダッ!》」
クレス  「!? チェスター!? なにをっ!」
モリスン 「チェスター君!?」
チェスター「続けてくれモリスンさん! こいつは俺がっ……《グイッ》おぉぁっ!?」
中井出  「行ってはいけないゾフィー兄さん!」
チェスター「なっ!? ヒロミツ!? てんめこんな時にまで何をっ!」
中井出  「囮になるなんて自己犠牲はダメ! ここは能力で勝負ぞ!
      というわけでダオス!
      友達になれなかったのは残念だけど、ここは行かせてもらうぞ!
      あときちんと塩沢さんボイスのキミにありがとうを! 奥義・生分身!!」
ダオス  「───!? 分身……!?
      ならばまとめて滅ぼせばよかろう! ダオス・コレダー!!」
中井出  「アァーーンド……自爆Y」
ダオス  「!?」
モリスン 「なっ!? ちょっと待てヒロミツ君!
      きみは私がここに残されることを考えていないのか!?」
中井出  「大丈夫! ちゃんとやられる前に戻ってくるから!」
モリスン 「やられる前以前にこの自爆で───あ、あおぉうぉあオワァアーーーッ!!」

 チェスターを置いて過去へ時間移動する筈だった瞬間をモリスンさんだけに任せて無理矢理飛んでみたり、

クレス  「そうか! その瘴気にやられて、精霊たちは正気を……!」
チェスター「ぶっ! ぷっははははは!
      お、おいおいクレスぅ、真面目な話をしてんだから、
      こんな状況でダジャレ言うのはよせって……!」
中井出  「ほはははは……! で、でも余裕を持つのはいいことヨ、とても……!」
クラース 「………」
ミント  「………」
クラース 「同レベルが三人か。やはりマグナスに任せておくべきだったのかもしれん」
中井出  「そう言わないの。マグナスとミラルドのラブラブっぷりが見てられないって、
      自ら同行を願ったのはクラースじゃないか」
クラース 「そうなんだが、早速後悔しているところだ。というかな。
      なんでお前は昔のままの格好で居るんだ?
      耳が尖ってないハーフエルフだったりしたのか?」
中井出  「いえ、随分前に不老不死の呪いをかけられた人間です」
クラース 「身長や外見年齢などは思いのままってやつか。私と出会った時は、
      ミラルドがユークリッドに引っ越してくる前だった筈だしな」
中井出  「まあそういうこと。しっかし……驚いたねぇ。
      親に尻叩かれたり近所の憧れのにーちゃんが結婚して、
      三日間蔵に閉じこもって出てこなかったり、
      落とし穴に落ちる瞬間までも見た幼馴染が結婚か。
      相手がマグナスとはいえ、多少複雑だったりしない?」
クラース 「ま、精霊召喚学は学会に否定されたままだが……
      ここでシルフと契約することが出来れば、
      学会の馬鹿どもへのいい罵倒文句になるさ。
      これでもマグナスには感謝してる。恩師ってやつさ。
      その証であるマグナスの恩師の帽子までこうして貰っちまっちゃあ、
      “俺”が頑張らないわけにもいくまいよ」
中井出  「そか。……よー似合ってるよ、その帽子」
クラース 「……これ以上ない褒め言葉だ。小言ばかりの学会の石頭どもも、
      それくらいのおべんちゃらが言えればいいのだがねぇ」
中井出  「そりゃきみ、精霊召喚を間近で見せるくらいしなきゃ無理だろ。
      もういっそオリジンくらいと契約して、一撃落としてやるくらいしなきゃ」
クラース 「オリジンか。気が早いことだが……こうして過去に来た人物が居て、
      不老不死を歌う幼馴染が居るんだ。夢も叶うと信じられるな」
中井出  「つーか今さらだけどさ。クレスもチェスターもミントも、よかったの?
      親御さんとか心配してるでしょうに」
チェスター「アミィだけでも連れてこれたらなーとはそりゃ思ったさ。
      つーか、お前が逃がしてくれてなきゃって思うと今でもゾッとするね」
クレス  「ペンダントのことで僕らは捕まっちゃったけどね」
ミント  「私も……せっかくヒロミツさんが逃がしてくれたのに、
      人質として捕まってしまって……」
チェスター「出会いが牢屋ってのも風情がねぇよなぁ。あっははははは!」

 居なかった筈のチェスターとの冒険を存分に堪能してみたり、

チェスター「……なあヒロミツよぉ。
      なんで過去には剣は売ってても弓矢は売ってないんだろうな」
中井出  「きっといろいろ事情があるのよ。
      ……っと、ほら、魔物の部位で弓矢作ったから使いなせぇ」
チェスター「おっ、サ〜ンキュッ。っへへ、いっつも悪いなぁっ」
アーチェ 「アンタってほんと、ヒロミツが居ないとなんにも出来ないよねぇ〜……」
チェスター「なんだとぉぅ? お前だって前衛が居なけりゃろくに魔法も撃てねぇくせに」
アーチェ 「それはアンタだって同じでしょー!?
      後ろでねちねち矢を撃つだけのくせして!」
チェスター「お前だって詠唱速度が早くなった〜とか言って、
      ファイヤーボールとかアイスニードルみたいな、
      矢っぽいものばっか撃ってるじゃねーか!」
アーチェ 「うくっ!? そ、それはっ……ほら、あれだよ。
      アーチェさんてばやさしいから、
      アンタに合わせて敵を蜂の巣にしてあげよーかなーって」
中井出  「……素直じゃないねぇキミ」
アーチェ 「うーさい! ていうか今日こそ話してよねヒロミツ!
      なんでアンタ昔に会った姿のままなのよ!」
チェスター「んあ? なんだ? 昔って」
中井出  「きっと誰かと勘違いしてるのよ」
アーチェ 「この前認めてたでしょー!?」
クレス  「おーーい! チェスター! ヒロミツー!」
チェスター「んあ? あ、どしたー? クレスー」
中井出  「風がなにかよくないものでもこの街に持ってきたりしたのか?」
クレス  「一度しか言わないからよく聞いてくれ……。ん、んんっ!
      ───僕は絶対にダオスをだおす!!《どーーーん!》」
アーチェ 「………」
チェスター「………」
中井出  「………」
アーチェ 「……あのさクレス。あんた急になに言って……」
チェスター「ぶっ……!」
アーチェ 「エ?」
チェスター「ぶっ……ぶははははははは!! いい! それいいなぁクレス!!」
中井出  「いい! クレス、それいいよ! 素敵だよ!
      急にトーティスを襲った者を、よもやギャグに変えるとは!
      その姿勢に全博光が感動いたした!」
クレス  「え、そ、そうかな。そうかなぁ! あははははは!!」
アーチェ 「…………」

 そのまま進んで過去の世界にとことんまでに弓矢が売ってないことにチェスターが落胆したり、アーチェとチェスターの絡みにニヤニヤしたり、

中井出「ねぇクレス?
    キミも大分上達したんだし、奥義の一つでも編み出してみたら?」
クレス「うわ、いきなりだなぁ。奥義っていったって、奥義書が無いと」
中井出「それを自分で編み出すんだって。例えばほら、鳳凰天駆。
    あれって気の炎を纏って突貫するでしょ?
    あれを当たったら後ろに戻るんじゃなくて、そのまま突撃してさ」
クレス「……ふんふん?」
中井出「で、相手の後ろ側まで突き抜けたら、
    今度はその反動を利用して元の位置まで更なる気の炎を纏って戻るんですよ。
    すると戻った時に駆けた地面から気の炎の波が沸き立って、
    敵を焼き尽くす───その名も、緋凰絶炎衝! ……格好いいっしょ?」
クレス「……!《ぱあああ……!!》いい! すごくいいなぁそれ!
    よ、よぅし! 頑張ってみるよ!!」
中井出「その調子ですとも!」

 まだまだ心は少年なクレスを煽って秘奥義を編み出させてみたり、

クレス「襲爪雷斬ッ!!」
中井出「うーむ……剣から雷が出せるところまで気のコントロールは完了と。
    それを虎牙破斬と合わせて……」
クレス「う、うーん……勝手に奥義とか作っちゃって大丈夫なのかなぁ。
    帰ったら父さんに怒られそうで怖いや」
中井出「何をおっしゃる。
    努力して作ったものは、たとえ親に否定されようともあなたの奥義。
    そしてそれが強いのなら、いつかはミゲールさんも認めてくれるだろ。
    そのためにはもっと強い技として昇華させねば!」
クレス「そ、そうだよね。そうだよ!
    トリスタン師匠も奥義は技と技の組み合わせだって言ってたんだから、
    これだって立派な奥義だ!
    じゃあ、襲爪雷斬と虎牙破斬の合体技だから……名前は襲爪雷斬破かな。
    この前の魔神剣と虎牙破斬の合体技は魔神双破斬だっけ。
    空中で虎牙破斬を二回やらなきゃいけないのが結構辛いんだよね」
中井出「そのために、かずピー流の氣での身体加速を教えたんじゃないのさ。
    アルベイン流はとにかく氣のコントロールが大事だって、
    ガキの頃にミゲールさんに教わってただろ?」
クレス「あ……最終奥義の時のあれかぁ。冥空斬翔剣……いつか僕にも出来るかなぁ」
中井出「出来るって。クレスなら絶対。
    むしろその最終奥義だって自分流にアレンジしてみりゃいいさ。
    最終奥義だからってそれ単体として考えるんじゃなく、
    それすらも技と考えて自分だけの“奥義”を作る。
    それが、親が子供に望むことに違いない」
クレス「精進あるのみかぁ。はは、父さんなら言いそうだ」
中井出「冥空斬翔剣って確か、
    闘気を剣に込めて斬り払い二回のあとに斬り上げる、だっけ」
クレス「うん。父さんでも型は覚えられても完成はできなかったって聞いてる。
    自分の闘気を極限まで高めて、外からの氣も吸収して剣に込める。
    ソレを相手に叩きつけるってものらしいけど……
    外の氣と自分の氣を合わせるのが難しいらしいんだ。
    合わせてもそれを制御出来るかどうか。
    それが出来て、初めて“奥義伝承”が認められるって聞いてる」
中井出「……じゃあアレだね。クレスは気とマナの融合を考えてやったほうがいいかも」
クレス「ええぇっ!?」
中井出「あ、でも出来れば外の氣……外氣も合わせて、
    氣とマナの融合が果たせるようになりましょう」
クレス「そ、そんないっぺんに言われても、僕には無理だよ!」
中井出「大丈夫! 君なら出来る! ミゲールさんに認めてもらえるような、
    立派なキミになって胸を張って戻ろうぜ!」
クレス「───! 父さんに…………うん! そうすれば父さんも認めてくれるなら!」
中井出「それに早く立派になれば、ママンも安心出来るでしょ。
    チェスターと狩りに行くたびに心配してたし」
クレス「あ……そうだよね。もっともっと強くならなきゃ」

 向上心がある素直な少年の心を擽りまくり、強化しまくったり、

クレス 「大量の氣を制御するのに必要なもの……!
     それは……! 人を、仲間を想う心……!
     荒々しい心じゃ……相手を傷つけるだけの心じゃ、なにも制御できない……!
     だから───! 僕は! この剣で、守りたいものだけでも守るために!
     ……父さん、あの日見た未完成を、今こそ!
     ───アルベイン流最終奥義! 冥空……斬翔剣!!」
中井出 「お……おおお……! クレスが! クレスが氣をマスターした!
     己の氣と外の氣……それを混合させてなお制御する力を!
     ようやりおったわクレスめ!
     力任せに氣を振るうしか出来なかったお子が、ようやってくれた!
     ……まあ、相手はバグベアなんだけどね」
クレス 「っ───はぁあああああっ!! 負けるゥウッ……ものかぁあああああっ!!」
中井出 「よしクレス! 制御した蒼色闘気を剣に宿したまま襲爪雷斬だ!」
クレス 「えぇっ!? お、覚えたばっかりの奥義なのに!?」
中井出 「いやいやァ、きみね、
     それを全ての技や奥義に組み込むことを考えてみなさいよォ。
     今よりも何歩も先の自分になれるよ? 絶対。
     そうすれば奥義伝承はおろか、
     その先に立った息子を見てミゲールさん感涙するよ。感動の嵐だよ。
     もうご近所にウチの息子は自慢の息子じゃけぇと自慢───」
クレス 「奥義! 冥空ゥッ! 翔雷斬!!」
中井出 「納得速ェエエーーーーッ!!」
バグベア「《ギシャゴバァアォオウゥン!!!》───……!!」
中井出 「キャーーーッ!!?」
クレス 「う、うわぁあーーーっ!!?」

 試しに最終奥義+技をやらせてみたら、ギガブレイク級の雷斬が完成してバグベアがケシズミになったり……つーかコントロールが可能になった分、TPさえあればいつでもギガブレイクが出来るようになったクレスくんが時々怖い。

チェスター「えーと、つまり? 俺も闘気を矢に乗せることが出来れば、もっと強く?」
中井出  「イエス。制御の仕方はクレスが編み出したからそのイメージを貴方に。
      まあ制御に関してはチェスターの方が上手そうではあるけど。集中力的に」
チェスター「んで、どうすりゃいいんだ?
      自分の闘気と外の氣と、マナってのを集めて合わせるってのは解ったけど」
中井出  「んむ。まずは───」

 親友に遅れていられないと言ってきたチェスターに操氣のノウハウを覚えてもらい、もっともっと強くなってもらったり、

チェスター「鬼のように怒して撃つなり! 弓術奥義、大牙!
      うぉおおおりゃぁあああああーーーーーっ!!!」
中井出  「うぉおおおーーーーーっ!!?」
チェスター「うわぁあーーーーーーっ!!?」

 試しに撃たせてみた大牙が氣のレーザーみたいになって、チェスターとともに驚いたり……まあその。正直な話、もうクレスとチェスターが居ればいいんじゃないかなぁってくらいにまでになってしまって。

中井出  「まだモーリア坑道の途中なのになぁ……大変なことになった」
チェスター「? なにがだ?」
中井出  「いえなんでも……。まあ、この調子でどんどんいこうネ!」
チェスター「おうっ!」
クレス  「僕たちは!」
三人   『負けないっ!!』
クラース 「……いや、元気なのはいいことだがなぁ」
アーチェ 「あれで武器が強かったら、あたしたち居る意味ないよねー……。
      ていうか無遠慮に奥義とか使いすぎるから、
      ミントがチャージばっかりになってるじゃん。少しは自重してよね男ども」
ミント  「ま、まあまあ……」
中井出  「じゃあアーチェもクラースさんもミントも、
      無詠唱とか高速詠唱、出来るならガトリングスペルを覚えてみましょう!」
アーチェ 「へ? 今なんて? がと…………なに?」
中井出  「ガトリングスペル!
      無詠唱っての頭の中で詠唱を組み立てて、口では詠唱せずに魔法を使うこと!
      高速詠唱はまあ解るだろうけど、ガトリングスペルなのよね問題は。
      まあ特に精霊召喚は時間がかかりすぎるから、高速詠唱はオススメです」
クラース 「これでも頑張って急いでいるんだがなぁ。今より早く出来るのか?」
中井出  「出来ますとも。慣れれば無詠唱だって出来るに違いねー。
      じゃあまず順序よく高速詠唱からいきましょうね。アーチェは無詠唱から」

 死なないためのパーティ強化をとことん行い、モーリア坑道を敵にとっての地獄、僕らにとっての修行場所に変えたり、

アーチェ 「TPの続く限り、頭の中でファイアーボールを……。よっと!」
モンスター『《ボチュチュチュチュチュ!!》ギャーーーーーッ!!』
アーチェ 「あはははは! これ面白い! ねーねー見てよチェスター!
      ファイアーボールが雨みたいに飛んでいってる! ほらほらー!」
チェスター「うわばかっ! こっち向くんじゃねぇっ! こっちに飛んでくるだろうが!」
クラース 「この指輪は御身の目、この指輪は御身の耳、この指輪は御身の口。
      我が名はクラース……指輪の契約の元、この儀式を司りし者。
      ───契約は完了せり! 我が手の内に、御身と、力と、栄えあり!
      出でよ、シルフ!」
クレス  「クラースさん! 詠唱している内からシルフが際限なく出てきて、
      敵を切り刻みまくってますよ!?」
クラース 「無詠唱の恩恵だな。
      普通に詠唱している内に10回以上は頭の中で詠唱出来る。
      風の精霊シルフは個体というわけではないからな、
      呼べば呼ぶほど現れ、敵を切り刻む。
      これで魔力が上がれば、下手をすれば最強の精霊召喚になるかもしれんな」
中井出  「いやいや、ノームも確か個体じゃなかったはずよ?
      だからノームとシルフを交互に召喚しまくるのも面白いかも」
クラース 「高位精霊にもそういった者が居てくれるとありがたいんだがなぁ……」
ミント  「あの……もういっそ魔物が可哀想なくらい切り刻まれているんですけど」
クラース 「おっと、考え事をしている最中も無詠唱を続けてしまっていたか。
      まあ、これはこれで要研究だな」
中井出  「なんか少しダオスが気の毒になってきた……」
ミント  「ヒロミツさんがそれを言いますか……」
中井出  「ミントも鬼のピコハンレイン覚えたじゃない。
      アシッドレインの要領で雨じゃなくてピコハン降らせるなんて鬼ヨ」
ミント  「あの……教えたの、ヒロミツさんですけど」
中井出  「……今日は……風が騒がしいな……」
ミント  「誤魔化さないでください」
チェスター「急ぐぞヒロミツ。
      どうやら風が、街に良くない物を運んできちまったようだ」
ミント  「いえあの……チェスターさんまでなにを───」
クレス  「おーい! ヒロミツ! チェスター! 今アーチェに聞いたんだけど、
      アルヴァニスタで食材が30%引きだって! すぐ行こう!」
博&チェ 『ふん!!』
クレス  「《バゴシャア!》なんでっ!?」
チェスター「ここはまず“急ごう……風が止む前に”って言うところだろうがァァァ!!」
中井出  「空気読めよオメェェェェ!!」
クレス  「話なんて聞こえてなかったんだけど!?」
中井出  「ええいもういい! こうなったら食材買いにいこう!
      そして話題を振ったアーチェにいい加減料理をマスターしてもらおう!」
チェスター「……あいつに料理をマスターなんて出来んのかねぇ」
中井出  「出来なくても覚えてもらわなきゃ当番の時に腹壊すでしょうが!」
ミント  「あの……なにもそんなキッパリ言わなくても。
      ねぇ、クレスさん、チェスターさ───」
クレ&チェ『急ごう……風が止む前に《ザッ……》』
ミント  「いえあのっ! 聞いてください!?」

 まあともかく、それはもう好き勝手にやってみていた。
 心が腐ることもなく、いつまでも楽しみながら進む彼は、夢物語の世界をとうとう楽しみ尽くし───やがて、全ての世界に忘れられると、最後にとある世界へと落とされた。
 再び脇腹から落下。
 血反吐を吐きながらも妙な気配を感じて探ってみれば、それが神気や妖気であることに気づき、「えぇ!?」と妙に驚いていた。






  ───幻想楽花生 I enjoy the life and live.






 神というものが居る。
 遥か太古、彼が歩き、うろついた先で出会った神は、自らを創造神と名乗った。

中井出「へー……GODか」
神  「むしろ汝よ。何故存在している。我はまだ生物を創造した覚えはないのだが」
中井出「それは僕が常識破壊の王だからさ!」
神  「………」

 神は彼を無視して創造を続けた。

中井出「無視っすか!?」

 神は大きかった。
 むしろ世界そのものが神だといわんばかりであり、その血肉は海となり大地となり、その息吹は世界を撫でる風となった。
 それで力を使い果たしたのか、いくつかの理を作ると神はもの言わぬ“世界”となる。

中井出「……どうやら創世に立ち会ったらしいッス。
    きっとあの神、モービーだったのよ。
    というか……アレ? じゃあここって僕らの世界じゃないよね?
    僕らの世界って古の神々が作ったものだし、
    今のGODは間違い無く独りだったし」

 ねぇ? と彼は自分の中の意思たちに問うてみた。
 しかしマナが無いために誰もが沈黙状態。
 さらに言えばこんな荒野ばかりの場所だ、マナが回復する筈もない。
 急激なマナの低下のために、内部のユグドラシルも疲労状態にある。
 無理をすれば枯れてしまうだろう。
 なので仕方なく世界の行く末を見ることにした。


───……。


 世界には、彼が知らなかっただけで生物が存在していた。
 それらは母なる海より生まれ、そこで生存競争を始める。
 その争いにより海は穢れてしまい、敗者は海で生き、勝者は穢れ無き大地へと足を踏み出した。水棲生物が陸棲生物への進化を遂げた。
 それらは独自の進化を個々に行い、時が進むごとに違うナニカへと変わっていった。
 それは鳥のようなものだったりヒトのようなものだったり、虎のようなものだったり虫のようなものだったりと様々だ。
 しかし、変わったからこそそこで再び生存競争が起きた。
 誰が生物の頂点に立つのかを競うかのように、穢れた海を思い出すこともなくそれらは争い続けた。

  ある日、要石が抜かれ、それは天界となる。

 その際に起きた地震で、地上の生物のほぼが死滅した。
 当然というか、棒人間たちとの融合を切り離されなかった彼や極一部の生き物は生き残ったが、大半は死滅。
 生き残ったものたちはそこから再び繁栄を目指す。
 神だの妖だのも、生き延びたものの中に含まれていた。

中井出「自然のた〜めな〜らえ〜んやこ〜らどっこいしょー!」

 そんな滅びた世界の中、彼はといえば土を掘っていた。
 荒れ果ててしまった世界に緑を。
 そのために、土を掘っては無消費創造である花を創り、埋めてゆく。
 大地に栄養がないために枯れてしまったそれらだが、枯れて土に還ると栄養になり、それが繰り返されると自然と大地も生き返ってきた。
 花ではなく雑草が生えた時など、

中井出「うぉおっしゃぁあああああっ!!」

 とガッツポーズを取ったものだ。
 ちなみに食料はネコット農場などから取っているので問題ない。
 この荒廃した、世紀末でもないのに世紀末然としたヒャッハーな見た目の世界に緑を。
 それしか今は特に考えていなかった。


───……。


 天津神が伊邪那岐と伊邪那美に天沼矛というものを託し、彼と彼女はそれを以って日本列島を創った。
 それを聞いた彼は早速そこへと移住。

中井出「アイムニホンズィーン! 日本初の日本人……こんにちは、中井出博光です」

 相も変わらず脱いで、伊邪那岐と伊邪那美に気味悪がられた初めての日本人の誕生。その瞬間である。

中井出「まあそれはそれだよ」

 神々が創っただけはあり、日本列島は最初から大地に栄養が行き届いていた。
 これならばとマナと癒しの種を植え、それをのんびりと育てていった。
 途中、そんな彼がなにをしでかすのかが心配になった伊邪那岐と伊邪那美がともに生きることになり、せっかくなのだからと人間式の楽しみ方というのを教えながら。

伊邪那岐「……? つまり? 神力を使う際には掌の上に力を溜め、
     己の名を叫びながら握りつぶして発動するのが“ナウイ”のか」
中井出 「オウイエス」
伊邪那岐「なるほど。ならば───……イザナギッ!《カッ!》」

 掌に込めた神力が弾けるとともに、前方にあった樹に落雷が。
 「おお、これはいいな!」と言ったイザナギではあったが、次の瞬間には「罪の無い自然を壊してんじゃねぇえーーーっ!」と中井出に殴られていた。
 それを見た伊邪那美が激怒し、彼は神二人の手によってボコボコにされた。

中井出「エキサイティン《キラーン♪》」

 でも不老不死だから懲りなかった。

……。

 生きているといろいろとある。
 神の出産に立ち会うなど人類としてアリですか? ありでしょう。
 だってなんか結ばれてっていうよりは、共同作業で出来ましたって感じなの。

中井出 「オギャーっていうより、コンゴトモヨロシクって感じなのね」
伊邪那岐「なにがだ」

 生まれたお子は娘っ子。
 名前はアマテラス。天照大御神だそうだ。

中井出「アマテラース!《ムキーン! ベパァン!》ジェノバ!」

 なんとなくマッスルポージングを取ったら伊邪那美にビンタされた。
 ……話は戻るが、ヒトとは違い、神は神力を合わせて子を成すらしい。
 次に生まれたツクヨミも同じようにして産まれたのだから、コンゴトモヨロシクと言った彼は悪くない。悪くないが、伊邪那美に怒られた。
 明らかにおかしなことを考えてやっているでしょうと言われては、常識を破壊する彼としては「そうだ」と胸を張るしか《ズパァン!》……ビンタが飛んだ。

中井出「なーるほど、神様ってのは役割ってのがあるんだね。
    アマテラスは太陽を司って、ツクヨミは月を司るわけだ。
    ……あれ? じゃあもう一人、スサノオは?」

 一説ではアマテラスやツクヨミは伊邪那岐の左右の目から生まれたとされている。
 ……スサノオは鼻から。
 目という“ものを見る”という意味では、遥か高い位置に存在していつでも生命を見守る存在としては、太陽と月という存在の当てはめは実に似合っている。
 ……スサノオは鼻から。
 なんだろうか。草薙の剣を用いて鼻毛でも剃りたいんだろうか。

中井出 「それで言うと、伊邪那岐と伊邪那美ってどれだけ巨人なんだよってね」
伊邪那岐「現在は体を矮小化させているだけだが」
中井出 「えっ」

 神とはまっこと謎だらけの存在だ。

……。

 アマテラス、ツクヨミ(月夜見と書く……らしい?)、スサノオはすくすくと育った。
 ツクヨミの弟、スサノオの兄として“ヒルコ”という子が産まれたのだが、三年経っても足が立たなかったために遺棄されることになった。
 もちろん生まれた命に罪はないので両目、鼻と来たら耳か口でしょうってことにして、どっちも担当ってことになってもらった。ようするに生きている。
 こやつ、スサノオの兄として生まれたのだが、名前の部分で女として伝承されており、ヒトの知識では二面性を持っている。“日ル子”、または“日ル女”と呼ばれ、それぞれ“音”を司る神として歩くのではなく浮くことで生きてもらっている。
 皮肉なもので口は音を発し、耳は音を拾う。奇妙な部分で二面性を受け取っていることから、遺棄は苦渋の決断なのですとキリッとした顔で言っていたイザナミ嬢も、セイントマッスルパンチで鼻を砕かれたら涙目で感動して鼻血を出しながら頷いてくれた。神すげぇ。やっぱ会話(肉体言語)で解ってくれた。

ヒルコ「あうあー♪」
中井出「うむうむ、お子に罪はねー。良いお子にお育ち。
    マナや癒しの大樹も順調に育っておるし、
    GODどもが貴様の誕生を遺棄しようとしようが、
    この博光は貴様の存在を認めよう」
ヒルコ「あーう♪」

 世界は平和だった。

……。

 さて。
 日本に数々の神々が広がり、各地で生活をする中で、その神たちの想像や恐怖が思念となり、カタチを持ったものも出てくると、やがてそれは妖と呼ばれるようになる。……ようになるもなにも、要石が抜かれる前からおったがな。
 そんな妖怪と神が戦ったりすることもあったりしたのだが、今回は神がポカをやらかした。しかもその神というのがスサノオとくる。

中井出 「この愚か者が!!」
スサノオ「《ヴァゴチャア!!》ウブルシャーーーッ!!」

 鼻をグーで殴った。ええ、もちろん全力で。
 なんでもこのタコ、高天原で好き勝手働いた上に他の神の顰蹙を買い、それらの面倒をアマテラースに押し付ける形でシカトしたまま、さらには機織り姫が集う場所の天井に穴を空けて、皮を剥いだ馬を投げ入れたりもして、それに驚いた機織り姫の一人が謝って陰部を刺してしまい、死んでしまったというではないか。いえ、実際には死にそうになっていたところを癒して、なんとか死なずには済んだのですが。
 え? ええはい、機織り姫というのがどんな仕事をしているのか、見てみたくて見学に行ってたのです。したっけ天井から皮を剥がされた馬が落ちてくるでしょう? もう怒りましたさ。自分の中で“楽しい”を見つけて実行に移すのは素晴らしい。しかし馬に罪はなかったでしょうに。そこはキミ、自分の生皮を剥いで“人体模型の佐藤はるおです”とか言って自らが落ちるくらいしなければ。
 とまあともかくそんなこともあって、これに激怒したアマテラースが岩戸に閉じこもり、この世界は闇に包まれた。

中井出 「ねぇツクヨミ、こいつ馬鹿でしょ。
     男子ならば誰もが憧れたスサノオがまさかのコレだよ。
     もうね、今なら断言できる。
     僕らが憧れたのは草薙の剣であってこのタコじゃないって」
スサノオ「わ、私が馬鹿だと!? 人風情が誰に向かって」
中井出 「この愚か者が!!」
スサノオ「《ヂョゴォン!!》ギョプッ……!!」

 渾身ストレートで鼻を砕いたそうな。

中井出 「ええいとにかく岩戸だ! 明るくないといろいろとまずい!」
ツクヨミ「だとして、どう開けるのだ。あれは力で空くものではないぞ」

 黙っていればもう女にしか見えない、黒いストレートヘヤーのツクヨミが腕を組みながら言う。そんな彼に中井出はニコリと笑って提案をした。
 ───のちに。
 天岩戸の前で世界初の“インド人類は繁栄しました”の繁栄ダンスが神々と一人の馬鹿によって踊られることになるのだが、出てこなかったアマテラスに激怒した神々はよってたかって中井出をボコボコにした。
 まあ、当然である。
 なので仕方なしに従来道理に岩戸前でお祭り騒ぎ。
 祭り好きの彼は神も妖も混ぜて大いに騒ぎ、楽しげに響く声に惹かれて岩戸を開けた天照大御神を……

中井出  「ちょぇええーーーーーっ!!」
アマテラス「えっ《ガッ》え、えっ!?《グイッ!》はうっ!?」

 穴から引きずり出し、アームロックを決めた。

アマテラス「がああああ!!」
中井出  「……人がせっかく楽しんでいるのに。
      なにもこんなに早く出てくることないでしょう」
アマテラス「え、えっ……?」
中井出  「見てください!
      酒も肴もたっぷり用意したのに、あれしか食べられなかった!」
アマテラス「あ、あの!? わ、わたくしを出すことが目的だったのでは───」
中井出  「あなたは宴会をする者の気持ちを全然まるでわかっていない!
      宴会をする時はね、誰にも邪魔されず自由で……
      なんというか救われてなきゃあダメなんだ。皆でうるさく豊かで……」
アマテラス「本末転倒という言葉を知って───《ギュウウ!》があああ!
      痛っイイ! お……折れるう〜〜〜……!」

 もちろんハッとした神々連中にあっという間に引き剥がされ、彼はボコボコにされた。
 しかしそのボコボコにアマテラスが隠れる原因となったスサノオを巻き込むと一緒にボコボコにして、修行して立派な神になってこいと追い出したのでした。もちろん高天原からは追放。「あなたの所為であーむろっくされたんですからね!」と涙目になって怒ったアマテラスは、「あれはあれで貴重だった」とツクヨミに肩を揺らしながら笑われていた。
 のちにスサノオはヤマタノオロチを退治、櫛名田比売と結婚するが、それは別のお話。
 どこぞの馬鹿が草薙の剣をかっぱらい、ウェヒェヘハハハハと笑っていたらしいが、神々に囲まれボコボコにされ、奪い返されたとかなんとか。奪われたのはコピーしたものであり、現物はしっかりと黒で飲み込んだようだが。
 死ぬ筈だった機織り姫からもお礼とばかりにマフラーのようなものを貰い、村人の服とのアンバランスさも手伝って凡人っぽさが際立っていた。それに感動した中井出は機織り姫に何度もお礼を言うと、自分の凡人っぽさを誇りながら今日も元気に生きている。
 その話とは別に、八岐大蛇の申し子として弥三郎という存在が知られることになり、人のカタチをしたソレが人間の娘と恋に落ち、産まれた子が伊吹童子と呼ばれる。
 産まれてすぐにカッと目を見開き、人語を介して話してみせたことから鬼子が産まれたと畏れられ、伊吹童子は伊吹山の谷に捨てられることになる。
 落ちてきたソレを受け止めた凡人が居たりしたのだが、それを知る者は居ない。


───……。


 因幡の素兎。
 日本に住むなら大体の人はこの話を知っている。
 話の内容は知らずとも、因幡の素兎という名は知っていると思う。
 そんなウサギと出会ったのは、世界に緑が随分と増えてからのことだった。

中井出「やあウサギさん。今日も暑いね」
ウサギ「やあ人間。神々に紛れてうろつくヒトが居ると聞いたけど、あんたがそうか」
中井出「うむっす」

 ウサギは好奇心旺盛だった。
 人である中井出を発見しても好奇心で自分から寄ってくると、普通に人語を介して会話する。
 なんでも海を渡り、島に辿り着きたいのだそうだ。

中井出「なして?」
ウサギ「おかしなことを聞くね。知らない場所だからに決まっているウサ」

 わざとらしく語尾にウサをつけて、ウサギはギチュチュと笑った。
 そして中井出の話も聞かないうちに突貫。
 ウサギは鮫を騙し、どちらの種族が多く居るかを競わせるために、島から島へと並ばせ、その上を駆けて島へと辿り着く。上を駆ければ数が数えやすいからなんて口八丁で騙してみせ、見事に島へと渡ったのだ。
 その際、よせばいいのに鮫に「お前は騙されたのだ」などと言ってしまったがために、鮫に皮を剥がされたという伝説。ナマガワハーガスを目の前で見るのはさすがにキツかった。なにせ生きたままだ。
 そう、彼はその一部始終を見ていた。むしろ一緒に鮫を騙し、兎と一緒に皮を剥がされた。ギャオアーとか叫んでいたが、不死身なので佐藤はるおくんの真似をしてコサックダンスなどを踊ってみたが、風が吹いても痛い通風状態だったのですぐに泣き叫んだ。
 大激痛に苦しんでいるところに、オオナムチの兄弟である神々と遭遇。
 海で体を洗い、山で乾かせば元に戻ると言われたので実行するのだが、肉は乾き、さらなる激痛に襲われる始末。治らなかったのでウサギとともにその兄弟とやらに復讐した。イビルチャージののちに「ぶち殺す!」と叫び、インフェルノブレイザーでこんがり焼いて満足したそうな。
 その後に訪れたオオナムチに本当の治し方を教わるのだが、さすがに二度目だ。疑ってかかった。しかしながら兎は素直にそれを実行。自分だけ悪者っぽくて納得いかーんと叫んだ皮無しの彼は、同じく実行。
 すっかり治ったことに驚きながらも、彼と兎はオオナムチに感謝を捧げる。

中井出「おお、オオナムチさんあなた最高!
    治そうと思えば簡単に癒して治せたけどなんか最高!」
ウサギ「治せたんなら最初からそうしろこのばかっ!」
中井出「馬鹿だからな!《どーーーん!》」
ウサギ「威張るなぁあーーーっ!!」

 何故この出来事がきっかけで素兎が兎神と言われるのかは解らんが、ともかく兎と彼はオオナムチに感謝した。
 そうしてしばらくはともに旅をしていたのだが……大変迷惑なことに神々に恨みを持った彼と彼女(雌)が神々にちょっかいを出さないはずもなく、中井出が用意した罠に神が嵌るのを見てウサギは目を輝かせて興奮。
 それ以来、あらゆる神々を落とし穴に落としたりミシシッピーしたりをして、ウサギはすっかり罠の魅力にハマってしまったとかなんとか。
 そんなウサギともしつこい神に追われている最中にはぐれてしまい、ついには再会することはできなかった。


───……。

 しばらくののち、どんぐり……ではなく、背比べをする山々を発見。
 緑ももう自然と伸びる世界の下の富士山と八ヶ岳。
 それぞれ、富士山は木花咲耶姫を祀り、八ヶ岳は石長姫を祀る。
 名の通り、過去には実際にそれぞれの姉妹がおり、大山津見神の娘に当たる。
 姉妹は山の神としてそれぞれの山で背比べをするのだが、妹の八ヶ岳の方が高かったことに嫉妬し、八ヶ岳を壊してしまう。
 結果として八ヶ岳は二つに分かれ、低くもなり、石長姫はその事実に嘆き悲しんだ。
 結果、その涙が溜まり、諏訪湖が誕生した。
 山の涙のなんと恐ろしいことと、彼は大層驚いたそうな。
 というか、“神”の規模がデカすぎである。
 のちにこの八ヶ岳がとある世界で妖怪の山となるのだが───

中井出「月夜見ー! 月夜見はおるかー!」
月夜見「なんだうるさい。呼ぶ時は静かにしろと言っているだろう」
中井出「いやいや、ちょいと八意さんが新薬開発したから飲んでほしくて!」
月夜見「神に実験体になれというのか貴様は!!」
中井出「だって僕この前実験体になって大変だったんだよ!?
    一緒に飲んでくれなきゃやだって言って無理矢理八意にも飲ませたけど!」
月夜見「……ああ、あの不老不死の薬か」
中井出「まあ僕既に不老不死だったから意味なかったけどね。
    でもすっかり“俺の所為で不老不死なんだから責任とれ”って感じで、
    八意さんがものっそい怖いのです。だから飲めてめぇ」
月夜見「そこで何故私になるのだ」
中井出「だって八意さんてば貴様を一番尊敬してるじゃん!
    俺の方が年上なのに! この小童めが!」
月夜見「……私が飲んでも不老不死の効果なぞ出ないが?
    あまり神というものを舐めるな。ヒトが作った薬なぞ、通用するものか」
中井出「じゃあ飲んでも問題ないね。ゲロまずいから精々吐けオラ」
月夜見「鬼だなお前!!」

 神とも妖とも人との関係も、まあそこそこに良好。
 しかしこんなやりとりのしばらく後───といっても既に時間の感覚がおかしいので、何年後、何十年、何百年、何千年後かも解らん。
 大体神が普通に居る時代って何年前? 軽く億とかいってるんじゃない?
 そんなことを時々考えていた頃、月夜見が月へ移住した。
 実際の月ではなく、“見えている月”へ。
 結果として発達していた技術は衰退の一途を辿り、コールドスリープなんてものも開発出来る技術はこれより完全に消滅した。
 ……それでも月にいけばそれがあるんだから驚きだ。

中井出「あっちで都でも作ってのんびり暮らすわ、とか言ってたけど……」

 大丈夫かね、永琳。
 そんな言葉をぽつりと呟いて、彼の旅はまた始まった。
 本名も教えてもらったものの、この地の言葉では発音出来ないらしい。だから永琳でいいわとあっさり言われた。
 この地で発音出来ないならGOD語かなんかで発音できるのだろうか。
 実に不思議である。


───……。


 どれほどの時間を生きたのか。
 月夜見の親族ではない者の技術など随分と未発達だと胸を張れるもので、月夜見が居なくなった地上は実に……長閑だった。一言で言えば神を祀って豊作を願うことを真剣にやっているような時代を、彼は今、歩いていた。

中井出「えーと……縄文時代? よく解らんが」

 多分そうだろう。
 適当にアタリをつけて、彼はのんびりとこの時代を生きていた。
 月夜見との別れの際に、様々な神々とも別れを告げて旅に出た彼は、そもそもあまりに世界を知らないということを理由に旅を続けている。
 現在、涙で出来たという場所……諏訪の地。
 この地に神が祀られているというので、その神でも拝もうと放浪していた。
 でも土地勘がてんでないので道に迷いまくった挙句に道端で寝てたら妖怪に襲われ、ボロボロになりながら歩いた。

中井出「ぐしゅっ……ひっく……! ちくしょうあの妖怪野郎……!
    背中ばっか狙いやがって……!」

 弱点が背中なのは今も変わらない。
 しかしながら強引にブチノメして現在を歩く彼は……泣いていた。
 実に小さな男である。

中井出「え、えーと。村人の話だとここらにモリヤとかいう社が……」

 あった。
 少々の緑に囲まれた、地面は舗装されていない剥き出しの社。
 神社といえば石畳というイメージがあったため、これには驚いたようだった。
 しかしそれも“まあいいや”と横へうっちゃり、社の奥へ。
 辿り着いた社は一見…………豪華なのかどうなのか疑問に思う社であり、きっとこの時代ならば豪華なのだろうと思う装飾や稲などで綺麗に飾られていた。
 ……そしてその社の屋根には、何故か屋根の先っちょに座りながら足をぷらぷらさせている幼女が。

中井出(なんだあの帽子……すげぇセンスいいじゃねぇか……!)

 早くも興奮が止まらない。
 なにせ幼女が被る帽子には二つの眼球がくっついており、しかもそれがギョルギョルと辺りを見渡しているのだ。
 その目が中井出をギョヌリと睨むと、幼女……もとい、少女も中井出の存在に気づく。
 しかしニヤリと笑うとぴょーいと屋根から飛び降り、相当高いのになんでもないふうにストンと着地すると、つかつかと彼のほうへ歩いてきた。

中井出「………」
少女 「………」

 何故かすぐ目の前に立つ。
 鼻息があたる距離だ。
 そんな少女が目の前で蠢きだす。
 ……ハテ。もしや、この少女は自分が見えていないとでも思っているのだろうか。
 中井出は考えた。
 この少女からは神気と、少々の禍々しさを感じる。
 神は神でも、少々方向的に偏った存在だ。

少女「ま、やっぱり見えるわけがないね。姿消してるから当然だけど。
   こっち見てた気がしたから見えてるのかなって思ったのに。
   ああ残念だ。残念だ」

 やがて興味を無くしたのか、くるりと後ろを振り返って歩こうとする。
 そんな彼女の帽子をスチャーンと奪い、シャキーンと被ってみる彼。

少女 「へえっ!? うわっ! な、なにっ!?」
中井出「フオオオオオーーーーーーーッ!!!!《ファァアアゴオオオ!!》」

 するとどうだ!
 まるで石仮面を被って血を塗りたくったディオのように、爽快な気分になるじゃあないかッッ!! 嘘だがッッ!! 当然ッッ!!

中井出「な、なんだべ……!?
    手を伸ばしてみたら急に帽子のようなものを持っていただよ……!
    こ、こりゃあきっとモリヤ様のご加護に違いねえっぺや!」
少女 「急になにすんのさこの! 返せ! それは私んだぞ!」
中井出「《ぐいっ!》ヴォウ!? な、なんだべ!
    帽子が急に何者かの力によって引っ張られているだべ!
    こりゃあ妖怪の仕業に違いねぇっぺや! おのれ妖怪!!」
少女 「誰が妖怪だ!!
    確かに私は祟り神だけど、妖怪って呼ばれるほどひどくないんだぞこのー!」
中井出「グ、グウウ〜〜〜ッ! す、すごい力だ〜〜〜っ!!
    この大陸一と謳われたおらさ力が負けそうだなど〜〜〜〜っ!!」
少女 「こ、この人間何者!?
    神の力で引っ張ってるのに互角どころか喋る余裕があるって!
    って、うわわわわやめろやめろー! 帽子が千切れるー!
    はなせ! はーなーせー!」
中井出「HA☆NA☆SE!!」
少女 「へっ? ……ね、ねぇ。もしかしてお前、私のこと見えてる?」
中井出「どうも。幼女を愛してやまないロリコニアを信じる博光です。
    ロリコニアの一日はまず挨拶から始まります。
    まず朝には“おは幼女”。昼には“ロリコンにちは”。
    そして夜にはもちろん“ロリコンばんわ”」

 その日、一人の村人の格好をした男が、神によってボコボコにされた。

……。

 さて。

諏訪子「へえ。じゃあ博光は旅をしてたまたまここに寄ったのか」
中井出「うす。ちなみにもう何年生きたか忘れた」
諏訪子「ちっこいがきんちょが何ナマイキ言ってるんだい。
    お前なんて神連中に比べれば子供以下さ」
中井出「ちなみに僕、イザナギとかイザナミの喧嘩友達です」
諏訪子「恐れ入りました!!」
中井出「いるなよ!!」

 現在、少女……洩矢諏訪子というらしい、と軽口を言えるくらいまで打ち解けた彼は、その勢いのままにノリツッコミで遊んでいた。
 当然イザナギなどといった神連中との関係は一笑に付され、笑ってくれたなら別にいーやと中井出もそれで神の話は無しにした。
 そんな中、旅ばっかしてると一つのことに集中できなくて困るということを相談すると、じゃあ飽きるまでここに住んでいけと諏訪子は言った。

中井出「いいの?」
諏訪子「構いやしないよ。どうせ祀られて繁栄を齎す以外にやることがないんだ。
    祀られて、っていうか畏れられてか。
    祟り神だからね、祀られ方も他の神とは毛色が違うのさ」
中井出「ええと、八岐大蛇みたいなもん? 脅し入れて生贄差し出せ〜みたいな」
諏訪子「そんなとこかな。ところで博光、祭りってなんのことか知ってる?」
中井出「嫌味ったらしい神の連中に嫌ってほど聞かされたね。
    祭り……神遊び。神が人間と遊ぶこと、だよな。むしろ神が人間で遊ぶ」
諏訪子「解ってるなら話は早い。私を楽しませておくれ、人間の子。
    実りのために生贄を貰うのももう飽いた。
    畏れられながら信頼もされるのって肩が凝るのよ」
中井出「わあ。なんつーか、その容姿で“のよ”とか語尾につくと違和感すっごーい」
諏訪子「喋り方なんて神それぞれさ。お前は勝手に喋る。誰にも文句は言わせない。
    私だって勝手に喋る。信仰・恐怖は欲しくても、文句はいらないね」

 へらりと笑って、どーだどーだと胸を張る。
 上手いことを言ったつもりらしい。

中井出「まあそれは置いといて」
諏訪子「あーうー! 置くなよう! なんで置くのよ!」

 拗ねられた。
 しかしまあそれはともかくなのだ。
 楽しませろというのなら楽しませるのがこの男。
 楽しいを知らぬ者に愉しいを提供する愉快犯、中井出博光だ。

中井出「貴様を楽しませましょう。
    何が好みか知らんから、じっくりと探りを入れながら」
諏訪子「探るよりもどっかん楽しませてくれれば文句はないんだけどね」
中井出「諏訪ちゃん、そういう時はまどろっこしく言わないでこう言えばいいんだ」
諏訪子「うん? なんだい?」
中井出「一番いいのを頼む」

 やはり世界は平和だった。


───……。


 諏訪子を楽しませる日々が続く。
 中井出に“飽いた”と言った年からぱったりと人の生贄要求をやめた諏訪子は、代わりに動物の献上を要求した。
 これには村人らは大喜びし、畏れが少なくなった分は信仰が高まり、「ま、吊り合いはとれてるよ」とケロケロ……もとい、ケラケラ笑っていた。
 そんな日……日? 年? からしばらく。
 ある日突然、目を潤ませてポッと頬を赤く染め、少し視線をずらした諏訪子は中井出に向けて言った。

諏訪子「…………子供……出来ちゃった……《ポッ》」
中井出「───」

 彼いわく、目が飛び出る思いだったとか。

中井出「だだだっだだ誰のだァーーーッ!! 誰との子供だァアーーーーッ!!
    おンのれどこぞの男め!
    ロリに手を出すとはロリコニアに住まうに値せぬ愚行!
    眠らせて骨髄をこう、スプーンでコリコリ掬い上げてくれようかッツ!!」
諏訪子「そういえばそのロリなんとかってなんなのよ」
中井出「見た目が幼女の者に、大人が心ときめく瞬間。
    そんな熱き魂を、人はロリ魂という。ロリだましいではなく“ロリこん”な?」
諏訪子「ん、とりあえずお前を殴りたくなった」
中井出「やってみろ、クローン風情《パゴォ!》がばぼ!!」

 クローンは関係なしに、とりあえず喋り途中に殴るのは勘弁して欲しい。
 彼が思ったことなど、それだけだった。
 それだけだったが……まあ、拳が飛べば拳が飛ぶとはよくいったもので、……言わないが、ともかくその場で喧嘩が始まった。
 対等に渡り合える相手が居なかった諏訪子にとっては丁度いい遊び相手となった中井出は、それはもう存分に楽しむために喧嘩をした。そして───喧嘩が終われば、殺風景だからという理由で諏訪の社の周囲で花を育て始めた。
 ちなみに子供は例によって信仰や神力を以って創られたらしい。

諏訪子「うわ、なにこれ。博光って能力持ち? 花を育む程度の能力とか?
    てっきり“馬鹿は死ななきゃ直らない程度の能力”だと思ってたのに」
中井出「や、なんすかそれ。……でもその“程度の能力”って言い方、いいね。
    なんというか奥ゆかしさを感じました。
    で、そんなことを言い出したってことは、諏訪ちゃんも能力あるんだよね?」
諏訪子「おうさ、もちろんだよ。私のは坤を創造する程度の能力」
中井出「坤? 坤って……」

 “乾坤一擲”の坤だろうか。
 その乾や坤の意味もよく知らない彼は、とりあえず理解したことにして話を進めた。

諏訪子「で、博光は?」
中井出「んー……“器を詠む程度の能力”かな。
    意思や命が通ってるものなら、ソレの声が聞けるんだよ俺」
諏訪子「なんか神なら誰もが持ってそうなパッとしない能力ね」
中井出「うん、だからいーじゃない? 実に“程度”の能力だ」

 彼はむしろ嬉しそうに言った。
 言って、また花を植える作業に戻る。
 作業以外は料理を作ったり遊んだりの連続。
 そんな、今までとは違う暮らしに諏訪子も随分と“楽しい”を感じていた。


───……。


 しかし歴史を知るなら結局は辿り着くところもあるわけで。

  建御名方命と洩矢神の戦。

 神々の戦いということもあり、相当な規模で、しかも長々とやってくれた。
 やる前はいろいろと問答悶着もあり、その際には建御名方……ここでは“八坂側”にアマテラスの姿も発見し、

中井出  「貴ッ様なにやっとるかァ!!」
アマテラス「ひぇ!? えぇえええええっ!!? まだ生きていたのですか!?」
中井出  「久方の再会にその言い草!
      貴様あのアームロックでまだ懲りておらんかったと見えるわ!」
アマテラス「懲りてます! 懲りてますからもうあーむろっくはおやめください!」
八坂神  「あ、あー……大御神殿? こやつとはその、どういったご関係で?
      大御神殿にこんな口の利き方をするとは───」
アマテラス「我が父と母、イザナギとイザナミの古き友人です」
八坂神  「ぶはっ!? ゆ、ゆうじっ……!? 人の気配しかしませんぞ!?」
アマテラス「ええ……なんでも不老不死なのだとか……」
八坂神  「………」
アマテラス「ちなみにこの日本列島が創られた際にも立会い、
      この地を初めて踏んだのも彼だそうで」
八坂神  「………」

 珍獣を見る目で八坂さんに見られてしまった。
 ちなみにその八坂さん。
 髪の毛は短めのもっさりウィングヘアーで、背には注連縄。首には丸い鏡のようなものを下げていて、雰囲気はなんとも“神”といった迫力があり……それはどちらかといえば軍を指揮する将軍様のような迫力だった。
 そんな彼女を前に、彼は宅のちびっこ神を思い浮かべてみる。

中井出(……無理だ……勝てねぇよ諏訪ちゃん……)

 ロリコニアの住人としては是非応援したいが、迫力では明らかに負けていた。
 しかしながら実力はどうかまでは知らないので、まああとは当神たちに任せるカタチでいいのだろう。

中井出「しかしアマテラスがそっちってことは、八坂神さんは太陽の力をお持ちで?」
八坂神「己の力を偽る理由もないな。応、その通りぞ。
    乾を創造する程度の能力を持ち、風雨程度なら造作も無く操れる。
    乾とは天。坤とは地。戦とは常に天に近い者が勝つもの。
    地からの攻撃は天には届かぬと知れ、諏訪の遣いの人間よ」
中井出「ところでアマテラスちゃん、スサノオ元気?」
八坂神「聞け!!」
中井出「だって神様の言葉だし……訊いておいてなんだけど、
    神様って自慢しかしないじゃない。
    やれヤツはあれで自分はこれだから負けない、勝つのは私って。
    褒めて終えることは出来ないの?
    最後に意地でも自分を褒めなきゃ話を終えられないなら、
    それこそ器が知れるでしょ」
八坂神「んむぅ……それは、まあ確かに。
    しかし褒めて終えるというのは中々に癪だろう」

 そんなもの、神でなくとも躊躇はする。
 そう言って、八坂神は中井出を見た。
 暗に“お前はどうなのだ”と訊ねているのだろう。

中井出「僕? 僕はいくらでも褒められるぜ? なにせ自分自身が平凡だからね!」

 ……言った途端、アマテラスになにをほざきやがりますかこの人間はという、白い目で見られた。その隙を逃さずにアタックギャグマンガ日和を「みんな目が死んでるぅ〜♪」と歌いだしたらアマテラスビンタで舌を噛む結果となった。
 何故自分の知り合いの神はこうも手が早いのか。
 そんな無駄なことを考えたが、無駄といった通り本人が自覚無自覚に係わらず無礼だからだろう。

……。

 そんなこともあって、なんだかんだの言い合いののちに中井出は立会い人になっていた。人間に神の戦いの立会い人になれとか正気かテメーと八坂神に真正面から言ったらオンバシラで鼻と股間を砕かれアオオオと絶叫、悶絶。
 現在は涙を流して痙攣しながら、二人の戦いを眺めているところである。

中井出「なんと美しい光景だろう……《はらはら》」

 諏訪と大和の国のものたちが戦いを見守る中、鼻と股間の痛みの所為で泣いていると思われたくなかった彼は、戦に感動していると思わせたくてそんなことを言ってみた。
 ……結果として誰も聞いておらず、彼は別の意味でしくしくと泣いた。

諏訪子「おやおや! でかいのは態度と武器だけかい!?
    その程度で諏訪に挑もうとしていたなんて笑わせてくれる!」
八坂神「ほざいてくれるな土着神如きが!
    軍神の力を見誤ったこと、存分に後悔させてくれようぞ!」

 あ、ちなみに八坂神は八坂神奈子というらしいです。
 そんな補足を加えつつ、二人の戦を眺めている。
 乾坤、天と地を意味するように、二人は見上げ見下ろしの戦いを続けている。
 錬鉄の技術がこの時代にあったんですかといろいろとツッコミたい気持ちもあるものの、中井出の視界の中で諏訪子が飛ばすものは確かに鉄の輪。
 しかし、その鉄輪が勝負の決め手となってしまった。
 投げた輪が神奈子が構えた藤蔓に絡め取られた上、なんと錆びていくではないか。
 これには諏訪子も驚愕し、武器が無くなってしまった彼女は唇を噛み締めながら降参を宣言。諏訪は八坂神奈子の───大和の軍門に下ることに───


───……。


 ───……ならなかった。

神奈子「えっ!? なっ、どうして!」
中井出「だってここ諏訪だもの。なのに急にキミが来て、
    我が勝ったから我を崇めよなんて言って、民が納得すると思う?」
神奈子「……無理ね」
中井出「でしょ? 信仰って過去から何代もかけて人に刷り込むものよ?
    それを急に我を崇めよなんて無茶ってもんさ」
神奈子「……じゃ、じゃあ今回の戦いは……」
中井出「無駄だったんじゃない?」
神奈子「うああああああああああっ!!!」

 きっぱりと切り捨てられ、神奈子は頭を抱えて呻いた。
 しかし負けは負けだからとすっぱりと切り替えている神もここに一人。

諏訪子「まあ、好きにやればいいよ。怖がられるのも祀られるのも少し飽きてきてたし。
    そりゃ、信仰が無ければ消えちゃうかもだけどね、
    この世に祟り神が蔓延る限り、
    その頂点に立つ私を信仰しないと危険なのは誰だって知ってるよ。
    そういった意味では、名前が知られてる限りはそうそう消えそうにないし」
神奈子「……否だ! 戦を無駄で終わらせることほど愚かしいことはない!
    だから───……な、なにか案を出せ!」
諏訪子「勝手だなぁ。急に攻めてきて、勝っても我が儘押し付け放題なんて」
中井出「そだね。じゃあアレだ、もう表向きは諏訪ちゃんがそのまま神で、
    神奈ちゃんはその裏で信仰を蓄積させるーとかでいいんじゃない?」
神奈子「かなちゃっ……!?」
諏訪子「あーうー……やっと面倒から解放されると思ったのに……」

 信仰をなんだと思ってやがりますか。
 諏訪子の言葉にぴしゃりと返しつつ、これからのことを話し合った。
 神奈子はまだぶつぶつと言っていたが、無駄にしたくないという言葉に偽りはないと割り切ると賛成の意を見せる。
 こうして諏訪はそのまま諏訪子が仕切ることとなり───神奈子は諏訪子が集めた信仰で風雨の神から山の神として祀られるようになった。
 ちなみにその二神の周りをうろちょろする人間のことは、小間使いとして見られるようになったとか。

中井出「おーい二人ともー、いっつもいっつも暇だ暇だ言ってたから、
    今日はうぬらに暇潰し道具を用意したぜ〜〜〜〜〜っ!!」
諏訪子「や、博光自体がもうおもちゃ箱みたいなもんなんだけど、私ら」
神奈子「退屈はしても、しすぎるってことはないな。
    で、まあそれはそれとして何を用意したって?」

 社ではなく、建てた家の中でスズ……とお茶を飲んでいた二人に、中井出があるものを取り出して渡す。それは……この時代では絶対に存在しない、ゲーム機というものだった。

諏訪子「? なんだい、これ」
中井出「ゲーム機。遊び道具だね。
    やり方によっちゃあ1000年でも何年でも遊べる……はず」
神奈子「ほほう? それは面白そうだ。
    ……主にソレが真実かどうかを暴いて、お前を罰するのが」
中井出「嘘であること大前提!? ば、罰するって決め付けるのはどうかなぁ!」

 ともかく説明を続ける。
 そのゲーム機の中には百では済まない数のゲームが内臓されていて、しかもバージョンアップはいつでも可能。電池も永久で壊れることもない頑丈さ。それらを説明して、起動、操作などを教え、ゲーム機内臓のチュートリアルなどを実際にやってもらい、あとは全てを本人たちに任せる。
 触れた存在に対しての自動翻訳機能が備わっているため、よほどに難しい言語でもない限りは完全にサポート。二人は問題なくプレイできているようで、早速魔物ハンターをやっている。

神奈子「ふぅん? 姿は自分で決められるのか」
中井出「触れた人のデータを読み込んで創るから、
    “変更する”を選ばないなら自分の姿のままでプレイできるよ」
神奈子「……私の髪、もっと綺麗じゃないか?」
中井出「美化はやめんさい」

 ともかく冒険の旅(ゲーム)に出た二人……二人? 二神。
 設定はほぼヒロライン物語なので、彼女たちが最初に訪れたのは“花舞う都・エーテルアロワノン”。やあ懐かしい、と渡した彼自身がほっこりしていた。

諏訪子「お、お、おおお……! こう動けって思うだけでも動くんだ。こりゃすごい」
中井出「その思考操作が、
    “自分が闘っているような感覚”をゲームにすることを成功させたのですじゃ。
    もちろん臆病風に吹かれれば勝手に逃げたりするので、
    心を鍛えることにも役立ちます」
諏訪子「あっはっは、逃げるわけないじゃないのさ」
神奈子「当然よ。戦って勝つ。神が妖怪相手に逃げてたまるもんか」

 二人はとても楽しそうだ。
 そんな様子を満足げに見ていた彼だったのだが、彼女らがゲームに熱中すればするほど、彼の仕事は増えていった。
 やれお茶を用意してくれだのメシを作ってくれだの。作ったら作ったで「あとでー」とか「キリのいいところまでー」とか言い出す。
 風呂が沸いてるよーと言った時も似たようなものだ。

諏訪子「ええい遅い! もっと速く動かないか! あ、あっ、やられるっ、やられるっ」
神奈子「おぉい博光! このゲームおかしいぞ! 私はこんなに遅くない!」
中井出「レベル上げなきゃ神のレベルまでは中々到達しないよー。
    今は人間の身体能力で我慢なさい。AGI上げていけば身体能力上がるから」
諏訪子「むうっ……だったらAGI最大だ! さあ行け私の分身《グシャーム!》あ」
神奈子「ははははは! 真っ直ぐに走ってギガースに踏み潰されるか!
    神ともあろうものがなんとも情けな《グシャーム!》あ」
中井出「ほほっ、二人とも潰されたでおじゃるか。GODなのになんとも情けない」
諏訪子「う、うるさいなぁ! 今に見てなさい、
    すぐに神の身体能力になるまでレベルを上げてやるんだから!」
中井出「ねぇ諏訪ちゃん? もっと容姿に見合った口調をした方が似合うよ?」
諏訪子「子供扱いするなぁああああっ!!」
神奈子「口調か。民にしてみれば、もっと砕けた口調の方が好まれるやもしれんなぁ」

 二神はゲームを楽しんだ。
 そしてゲームの楽しさにノるように酒の勢いも増し、飲んで遊んで飲んで遊んで。
 中井出製作の酒は神であろうが容赦なくあっさり酔わせることもあり、二人はそれはもうあっさりべろんべろん状態。絡み酒のようで、二人にがっしりと掴まれた彼はあーだこーだと様々を言われ……少し、「早まったカモ……」と後悔したのでした。






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