天地空間ボツ


■QAの話 ■思い付きボツ ■適当 ■天地空間ボツ2
【盟友の歌】 ───……。 浩介 「ぬあああっ!?」 ゴドッ!!ドゴゴガガガ!! 浩之 「おわっ!?おわぁああーーーっ!!!」 某日。 あの弦月なんたらとかいう男が帰ってからしばらくした日のこと。 我とブラザーは親父からの言いつけで、倉庫のとある部分を探索していた。 親父が言うには、倉庫の床のタイル板、出入り口からして右手前の端から左12、 奥の端から手前に15のタイル板が開く仕組みになっているというのだ。 『見たことないだろうから、興味があるなら見てみろ』だそうだ。 浩之 「げほっ!ごほっ!……ったく!気をつけろブラザー!」 浩介 「そう怒るなブラザー!     これだけの荷物を埃も立てずに移動させるのは無理というものだ!」 もちろんその『タイル板』の上には、嫌になるくらいの荷物が乗せられていた。 我とブラザーはまず、それをどかす作業から入るしかなかったわけだ。 浩介 「よしブラザー、荷物はどかしたぞ。タイル板を数えてくれ」 浩之 「よしきたブラザー、我は右隅から始めよう。貴様は奥からだ」 浩介 「任せろブラザー」 ───…………。 さて、それで行き当たったひとつのタイル板だが…… なにやら小さな取っ手らしきものがあるのだ。 持ち上げてみれば、ゴ……リン……と重く動く。 浩介 「……む、確かに動くな」 その下にあるのは階段。 丁寧な作りだ。 浩之 「隠し階段か。よし、調べてみようではないか」 浩介 「上等だブラザー、手伝うぞ」 タイル板の下には、まず我の胸あたりまでが見えなくなるくらいまでの穴があり、 その下に階段があった。 我は先んじて穴の中に降り、体を屈めて階段を降りてゆく。 そのすぐあとにブラザーが続き、一緒になって下へと降りる。 浩介 「む……」 少し降りると天井(といっても倉庫の床だが)が遠くなり、腰を曲げる必要もなくなる。 階段には電気が設けられていて、常に通電していたのか、ずっと明るいままだ。 電球とかはどうしているのだろうか。 浩介 「……ふむ、これは……」 少し気になってじっくり見てみれば、それは電球を使う明かりではなく、 どちらかといえばディスプレイに真っ白な画面を移しているような状態だった。 それが連なり、明かりの役目を果たしている。 ……目が悪くなりそうな通路だ。 ───…………。 少し降りた先に見えてきた部屋のような場所に辿り着く。 一応換気は行っているらしく、そこまで湿気っぽさを感じない。 浩介 「これは……」 浩之 「ふむ……」 階段からそのまま直結して、ドアもなかったその部屋は異型だった。 いや、詳しく言えば異型というよりは普通ではない。 社、いや……なんと喩えればいいのか。 ゲームに出てくるような石造りの封印塚、とでもいえばいいのか。 カンパニー内部とは違い、タイル板など使わずに石のみで作られている。 浩介 「む───」 そんな部屋の中心。 そこに、奉るかのように拵えられた岩の塚があった。 だが、我とブラザーはその岩よりむしろ別のものに目を奪われた。 浩介 「ブラザー、これは……」 浩之 「ああ、これは……」 懐かしさを感じた。 この世に生を受けてから20と数年。 およそ、そんなものに触れたことすらなかった筈の我らだというのに…… それが『自分のもの』だということが解っていたのだ。 浩介 「………」 浩之 「………」 まるで魅了されたかのようにそれに触れた。 途端、頭の奥がチリチリと燃える錯覚。 そしてその燃え盛る深淵の中で、声を聞いたのだ。 懐かしい、盟友の声を。 ───…………。 声  「……おい。……おい起きろ」 聞こえる声には少し棘がある。 我の体は痛みを訴え、まるでなにか硬いもので殴られたような感触が脇腹に残る。 浩介 「ぐ、う……?」 声  「うう……」 これはブラザーの声。 すぐ傍に居るようで、我はそれを確認しようと目を開けた。 浩介 「………………」 そして絶句。 そこは、先ほどまで居た地下室ではなくなっていたからだ。 見たこともないような蒼空の下の草原。 そこで、我はブラザーとともに無様に倒れていた。 男  「目覚めたか。まったく……これに懲りたら盗みなど働くな。     あちらにも生活があるのだ、我らだけが苦しんでいるのではない」 そんな我らを見下ろしている男がひとり。 着物姿の、恐ろしいまでの凛々しさのある男だ。 しかも……どこかで誰かを思い出させる。 浩之 「同志……?同志か……」 思考の中、隣で倒れていたブラザーが目を覚まし、男を見て言う。 同志……そうか、盟友凍弥に似ていたのだ、こいつは。 男  「平丸……?なにを言っている」 浩之 「平丸?なにを言う同志。我は───」 浩介 「まあ待てブラザー」 浩之 「ブラザー……?」 反論を漏らそうとしたブラザーを止め、着物姿の同志を見る。 浩介 「すまんな同志。ひとつ訊きたいのだが……ここはどこだ?」 男  「夢中で逃げていたのか?ここは昂風(たかかざ)の外れの草原だ」 浩介 「たかかざ……?」 ……ふむ。 不可思議な出来事には慣れていたつもりだが…… 浩之 「おいブラザー、もしやこれは……」 浩介 「うむ、タイムスリップというやつだな。もしくは夢」 浩之 「なにぃ!?納得が早すぎるぞブラザー!何故我らが!?」 浩介 「こういった状況では考えるだけ無駄だということは、     同志と行動を共にするようになってから痛いほど解ったことだろう。     現在、我らの前にこういった状況があるのは紛れもない事実。     そして……我はこの風景を『懐かしい』と言える。     我は知っているのだ、この風景を。目の前のこの男を」 浩之 「なんだとブラザーこの野郎、     我だって同じ思いだが納得できないことが先走りしてだな」 浩介 「納得できないのであれば今はそれでいいだろう?     次第に納得出来るなにかが見つかる。それまでは……」 浩之 「……フッ、そうだなブラザー。それまでは精々……」 志摩 『この状況を楽しむとしようではないか……』 ニヤリと笑い合った我らはなによりもまず、 目の前の着物同志からいろいろと情報を仕入れることにした。 我らの置かれている状況から、この体の痛みのことまで全て。 ───………………。 浩介 「……ふむ。つまり……やはりこの世界は過去で、我の名は火道平良(ひどうひらよし)。     貴様が禊隆正という名で、     我らと貴様は『楓巫女』とやらを救うための旅をしている、と」 浩之 「ふむ……で、我が火道平丸(ひどうひらまる)か……。     『楓巫女』というのは、弦月なんたらが時々言っていた言葉だったな?」 浩介 「うむ。朧月に向かって言っていた名の筈だ。ということは……」 ……そうか。 やはりこの世界は一度起こった時代の風景で、この男は同志の前世なのだ。 加えて、この時代に居るのだ……朧月の前世も。 浩之 「なぁブラザー。この……喩えようのない怒りはなんなのだろうな」 浩介 「言うな。我も同じ気持ちだ」 ふたりは幸せにはなれない。 禊隆正と楓巫女はこの時代では死ぬ。 それは、同志や朧月や弦月なんたらの話で予想がつく。 同志と朧月は我らが集ったあの未来でなければ幸せにはなれなかったのだ。 そして……我らも─── 浩之 「……ブラザー。隆正が言った名……『櫂埜上喜兵衛』という名……。     その名を聞いてから、我はどうにかなってしまったようだ……。     悔しくて、憎くて……感情が思うようにコントロールできない……」 浩介 「言うな、と言っているだろう……」 そう、憎くて仕方が無いのだ。 苦しいほどの無念が胸中に渦巻く。 同時に、殺してやりたいほどの殺意がその名にはある。 隆正 「どうしたというのだ平良、平丸……。袋叩きにされた際、頭でも打ったか?」 浩介 「む……いや。なんでもない」 ……ここで憎しみに抱かれていても始まらない。 よし、我とブラザーがこの時代に存在できるのなら、 案外歴史は変えられるのかもしれない。 ならば我らがすることはひとつ。 ふたりを添い遂げさせることだ。 ならば我らも志摩としてではなく、火道兄弟としてこの世に暗躍するとしよう。 ───……。 ───……。 同志隆正と我ら火道兄弟は喜兵衛の居る城へ行く途中だったらしい。 先行偵察人として間吹とやらを城に向かわせているそうだ。 あとはその近くであるこの昂風で間吹が来るのを持つ、と。 そういう手筈だ。 平良 「しかしあれだなブラザー。     刀など初めて持つが、案外どっしりとした重さなのだな」 平丸 「そうだなブラザー。     箸より重いものを持ったことのない我としては、なんとも言えぬ重さだ」 平良 「なにをトチ狂ったことをぬかしておるかブラザー貴様。     箸より重いものを持ったことがないのなら、どうして茶碗が持てようか」 平丸 「実は箸が超特殊合金で作られたもので、総重量20キロにもおよんでいたのだ」 平良 「なるほど、それは茶碗など足元にも及ばぬな」 平丸 「そうだろうブラザー」 しかし特にこれといってやることのない我らは退屈していた。 本物の江戸村のような場所にトキメいたのも束の間。 しばらくすると、それは観光地での気だるさに変わっていた。 同志隆正が間吹を待つ中、 我とブラザーはくだらない話題に花を咲かせて暇潰しをしていたのだ。 男  「てーへんです!てーへんです兄ィーーッ!!」 火道 『む?』 隆正 「間吹……ようやく来たか」 そろそろネタも尽きてきたという頃、ひとりの男がとったとったと走ってきた。 ……というか風間だ。 あの顔はどう見ても風間雄輝だ。
【シフ】
───高校に入って二度目の春。 俺こと穂岸遥一郎は、新たに迎える一年の一歩を踏みしめていた。 校門を跨ぐだけのその行為が、何故だかとても懐かしい。 どこか暖かい気持ちを胸に、俺は小さく笑みを漏らした。 ……さて。 この年はどんな一年になるのかな……─── ───変わりゆく季節と、相も変らぬ世界のコト───
───……チャリ、と小石が音を立てた。 校門を跨いだ俺は小さく笑みをこぼして、視界に入りきらない学び舎を眺める。 新しい春を迎え、俺もまた新しい未来に身を置く。 少し先の未来を考えるだけでも期待と不安が頭の中を駆け巡る。 それがなんだかくすぐったくて、俺は笑った。 遥一郎「……さてと」 だからといって、いつまでも校門で立ちつくすわけにもいかないものだ。 意味もなく『うん』と頷いて、俺はクラス発表を見るために歩を進めた。 クラス発表のために立てられた板には、 クラスとそれぞれの名前がズラーリと書いて……なかった。 ただ一言『体育館に集まるように』という文字。 そして俺の脳内には昨年の『大凶』がフラッシュバックする。 またか?またなのか? この高校はどうしてこうもいい加減なんだろうか。 校長は『教師達と生徒達、または生徒と生徒とのコミュニケーションだ』なんて言うが、 俺にとってあれは嫌な思い出でしかない。 あれで大凶を引いてしまったばっかりに、俺は─── 声  「やっほぉ−ぅホギッちゃぁあああああんっ!!」 ……こいつと出会ってしまったんだ───。 遥一郎「新規一転の、しかも朝っぱらから脳内に桜の花満開状態で話し掛けるな観咲……」 言いながら振り向けば、一点の曇りもない笑みの観咲。 雪音 「はろーはろーホギッちゃん!今日もお空がピーカンだよー!」 ピーカンなのはお前の脳内だよ……。 遥一郎「お前のことなんてどうでもいいが、蒼木はどうした?」 雪音 「澄ちゃん?相変わらずのマイペースでとっこりとっこりと歩いてるけど。     わたしはクラス発表が気になるから走ってきたのだー」 遥一郎「帰れ」 雪音 「どうしていきなりそういうこと言うかなホギッちゃんは!」 遥一郎「朝から近くで騒がれると頭が痛くなるんだよ。     だからというわけでも……あるが、帰ってくれ、と」 雪音 「ガッ……ガッデムゥウウウ……!!」 相変わらずガッデムか、成長しないヤツだ。

【ヒロラインボツネタ】 射的、猫当てゲーム、その他いろいろなゲームで遊び─── 結局アタイがやっぱ彰利のままでいいコテとか言い出したりして───そんなこんなで朝。 中井出「はいはい貴様ら注目!」 キャンプファイヤー(ホギー作成)の燃えカス前に集った皆々様の前で、 中井出が声高らかに叫んだ。 ご丁寧に注目を集めるためにパンパンと手も打ってだ。 そういやどうしてこういう時って手ェ叩くんだろうね? や、そりゃ注目集めたいからって言ったらそれまでなんだけど。 そうして中井出に注目する目はやたら眠たげだった。 なにせ起き抜けだ、まだまだ思考が正常に回転するには早い。 でも言いたいことは言う男ですよあたしゃあ。 彰利 「お?なんだコラ提督この野郎。     祭りに燃え上がる我らにケチつけようってのかコラオウ?」 中井出「なんで最初から喧嘩腰なの!?     いやそうじゃないって!ケチはつけんが発表がある!」 彰利 「発表?なにかね?キミがエロいことならもう、     全世界の生きとし生けるものが知ってるが」 中井出「知らなくていいよそんなこと!」 ふむ?じゃあなんだというのでしょうかね。 隣の悠介くんがまず最初に考えるのがエロ関係なのかよって呆れておるが、 俺にしてみりゃ中井出イコールエロなんですがねぇ。 中井出「あのね、そろそろ祭りを切り上げて、旅に出ようと思うんだよ俺」 彰利 「え?なんで?」 中井出「楽しむのもいいけどさ、やっぱ冒険してこそのファンタジーだろ。     このままみんなでギャースカ騒いでるだけじゃあ前に進めん。     だからひとまず風の守護竜倒して竜宝玉手に入れてさ」 彰利 「おおなるほど」 空を飛びつつ旅をしようってハラかこの野郎。 確かにそりゃなんともステキなことだが───これに乗れるのってつまり、 魔王である中井出とナギ子さんと種坊主だけだよね? オイラ達一応敵だし。 ……ふむ。 じゃあとりあえず改めてこいつを魔王と認識するとして、 これからどうするか───そりゃあ鍛錬しかねぇわなぁ。 旅をしつつモンスターをコロがして、武器も己も鍛えてゆく。 これぞファンタジーの極みでしょう。 彰利 「ん、よし。俺もやることが決まったぜ〜〜〜っ!!     つーわけで、悠介、夜華さん、悠黄奈さん、ついでにルナっち。     これからオイラたちも修行に励みますよ?」 ルナ 「ついでってなによ」 彰利 「おお、ついでの意味も知らん貴様にアタイがレクチャーレッツゴー」 ルナ 「……もういいから話続けて」 彰利 「うわヒドイ」 盛大に溜め息をつかれてしまった。 だが確かにこうしていても埒もなし。 彰利 「ようはさ、武器と己を強くして、     この世界に我らありと謳われるくらいの存在になりましょうと、そゆこと」 悠介 「お前が真面目に取り組むとは到底思えないんだが」 彰利 「甘く見んなこの野郎!俺ゃもう心入れ替えたぜ!?     修行結構万々歳!この世界でレベルあげても、     最初から強いやつにはそう影響はねぇっていうけど、     多少でも強くなって、武器も───ここ大事ね?     武器も強くすれば、俺達ゃまだまだ強くなれるのよ!     見ろ!中井出を!最初クズでカスでゴミだった人間以下の平凡野郎がコレモンよ!     なんつーかホラ、希望が沸いてこない?」 悠介 「いやあの……な?中井出泣いてるからそれくらいにしとけ……」 中井出「なっ……なに言ってんの泣いてなんかないわよっ!《ポッ》」 彰利 「だからツンデレ怒りすんなっつーとるでしょうが気持ち悪ぃ!!」 ───ともあれだ。 もう何度目か知らないけど、いい加減に覚悟ってもんを決めなきゃいけない。 俺達ゃ確かに遊びでこの世界に降りたった。 そりゃ事実だ、強くなろうとかそういう気持ちは二の次だったな。 けど、それももうこれまでだ。 俺ゃ上を目指すぜ?たとえこれ以上は望めないと言われようが、 上を目指してる限りは強くなれる要素はある筈だ。 地道な鍛錬に勝るものなし。 才能なんてクソ喰らえだ。 彰利 「ほんじゃ夜華さん!いきますよ!?俺達も守護竜ってのブッコロがすんだ!」 夜華 「なっ……正気か彰衛門!相手は竜だぞ!?そんな簡単にいくものか!」 彰利 「誰が簡単と言ったネ!?何べん死のうがチャレンジして打ち勝つンだよ!」 ルナ 「うわー、熱いホモっちって鬱陶しいね」 彰利 「ほっときなさい!覚悟ってのはふとした時に現れるもんなんだよ!」 そう、この猛る思いはもはや誰にも止められぬ! ならばこそ全力で壁にぶつかり、これを打ち砕く者に至ろう! 彰利 「つーわけだから悪ぃな中井出。これは貴様ら魔王軍と我ら勇者一行の戦い。     どっちがより多くの守護竜を屠り、     経験値を得るか……今から楽しみじゃわってあれ居ねぇ!!」 悠介 「中井出ならお前の言葉聞いた途端に走っていったぞ?」 彰利 「なんですと!?」 見れば、藍田も丘野くんも居ない。 ナギ子さんと種坊主も───って、あれ?居るね。 彰利 「あのー、チミら中井出に付いていかんかったの?」 ナギー『ふむ。まあの。わしらもこのままではいかんと思ったのじゃ』 シード『このまま、というのは僕らの魔法のことだ。     知識ばかりが高くても技術が足りない。それではだめだと判断した。     だから───』 遥一郎「……マクスウェルに教えを請うんだとさ」 彰利 「ウィ?」 マクスウェルっつーと……おお、ホギーと契約したじーさんか。 え?つまりなに?こやつらホギーと一緒に行動することに決めたっつーこと? 彰利 「なんつーかそのー……頑張れ?」 悠介 「これ、俺がこの世界で調合した胃の薬な。多めに渡しておく」 遥一郎「ありがたく受け取るよ……」 なにせ原中の息が掛かった精霊と魔王の子だ。 胃痛薬は多くもらっておいて、もらいすぎということは絶対にない。 彰利 「こっから別行動だな。合流する気も仲間になったつもりもねーけど」 遥一郎「そうだな。俺もまだまだ試したいこともあるし……     手の内を知られるのも好ましくないから。じゃあな、またどこかで」 軽く手を振るホギーを前に、今度会ったら敵同士だぜという意味を込めた笑みを送る。 気づいたかどうかは知らんけど、ホギーは小さく溜め息を吐いて苦笑を返した。 彰利 「じゃ、いくか」 悠介 「ああ」 そうして踵を返すようにして浮遊要塞をあとにした。 目指すものを胸に、新たなる決意を込めて。 さあ行こう、夢広がる世界へ。 俺達の旅は……始まったばかりなのだから───!! ───……。 ……。 などとどこぞの漫画の打ち切りのように旅立った俺達は、 今現在近場の宿屋の一室を借り、ベッドの上に居たりする。 や、女どもがさ、サワー(シャワー)浴びたいとかぬかすのよ。 そりゃね、この世界じゃ風呂入ること自体が少ないのは認めるけどさ。 人の決意のあとにそりゃねーだろオイ。 彰利 「というわけで腹癒せに覗いてやろうと思うんだ」 悠介 「死んでしまえ」 彰利 「即答!?」 こういうイベントを前に、酷く冷めた親友が居たもんだ。 こんなヤツだから安心して友やってられるってのも認められるとこではあるんだが。 彰利 「はぁ……夜華さんとは一緒に居たいけどさっさと己を鍛えたい。     鍛えたいのにのんびり風呂入ってる僕のハニー。グムムー、世の中上手くいかん」 悠介 「世の中なるようにしかならないって言ったもんだけどな。     結局どうするかはお前次第じゃないか?     篠瀬を置いて一人で旅をするもよし、ここで待って一緒に行くもよし。     俺達と一緒に行くもよし。無理に俺を連れていく理由はないだろ」 彰利 「ぬう。そらそうだけどね」 悠介 「いい加減、親友がどうとか言い続ける歳でもないしな。     確認するまでもない。俺とお前のは腐れ縁だ。     それを親友って言葉で飾ってる。それだけで十分だろ。     切っても適当にくっつくもんだろ、腐れ縁ってのは」 そう言う悠介はボスンとベッドに横たわり、よく掃除が行き届いてる天井を見た。 そこになにがあるわけでもないが、なにがおかしいのか俺の親友はケラケラと笑っていた。 悠介 「懐かしいもんだな、こうしてなにもせずにお前と二人なんて」 こともなげに語るのはそんな言葉だ。 言うとおり、なにもする気はないんだと、態度と口調が語っていた。 彰利 「そうかな……」 呟きながら俺も横たわった。 そうして天井を見てみると、 確かにこんな風に穏やかに横たわるのなんて久しぶりかも……と思う自分が居た。 空界でのモメゴトが終わって……あの木の下でこうした時以来だろうか。 思えば遠いところまで来た。 ただ月の家系に産まれたってだけで、面倒ごとばかりだった子供の頃から今まで。 悠介 「正直な。正直……お前が強くなりたいって言った時、驚いた」 彰利 「そうか?そんなこと毎度言ってるだろ俺」 悠介 「真面目な意味でだよ。どうもお前は状況に流されて力を求める傾向があったから。     自分から強くなりたいって思ったのなんて、ゼノに立ち向かってた時くらいだろ」 彰利 「……あとレオとのこともか」 俺は戦いに関しては不真面目だろう。 なんでもかんでも、自分より強いヤツが味方に居るならそいつに任せちまう。 なまじ“かなわない敵”と戦い続け、死に続けたために出来たトラウマみたいなもんだ。 でも今……俺は強くなりたいって思ってる。 なにが俺をそうさせたのか……その理由はもう解ってる。 今回の戦いで、強くなれる要素を見つけたってのもあるが─── 純粋に中井出に負けたくないって気持ちのほうが強かったんだと思う。 これは、中井出ごときとか、前に感じた嫌な気分とは違う。 男として、強さで追い抜かれたくないっていう強い意志だ。 彰利 「なぁ悠介。悠介はさ、強さで誰かに抜かれたくないって思ったこと、あるか?」 悠介 「いや……どうだろうな。記憶で言うなら無い、と思う」 彰利 「……?思うって?」 悠介 「自分の深層意識に問いかけたってしょうがないけどさ。     心の中ではどう思ってたか、なんてのは理解しようがないからな」 特に俺の場合は、と続けて苦笑する。 ……そか。 そういや悠介はつい最近まで感情ってもんが欠落してたんだ。 人一倍、自分の心こそが信用ならなかったに違いない。 俺も一応経験者だ、そこんところは解ってやれる。

【WAW/ゼット戦前ボツ】 TV 《見てください。これが先日発掘されたという化石です》 柾樹 「……化石ねぇ」 テレビがお決まりのニュースを流す中、 俺は紗弥香さんが作ってくれた料理をモゴモゴと口に詰め込む。 紗弥香さんはお行儀悪いよと口では言うものの、言うだけで強制はしたりしない。 紗弥香「人間の化石だってね。すごいよね、こんなにハッキリと人の形を象ってる」 柾樹 「はは、案外ただの石像だったりして。     大体さぁ、毎日毎日ニュースばっかりやってればいい加減ネタも尽きるよ。     これもその足掻きのひとつなんじゃないかな」 紗弥香「どうだろね、解らないや」 ホケー、とテレビを眺める紗弥香さん。 こういう時の表情は本当に由未絵さんにそっくりだ。 親子なんだから当たり前なんだろうけど。 TV 《しかし凄いですね。     第一発見者の卯月教授、これを発見した時はどんな気分でしたか?》 TV 《ええ、さすがに驚きました。まさか人の化石が見つかるなんて。     それも恐竜などとは違い、骨ではなく肉もついているのです。     まるで今にも動きそうで───》 柾樹 「……動いたら人間じゃないって」 紗弥香「そうだよね。動くわけが───あれ?」 TV 《……?え?なんです?ディレクター?え……化石から……脈が?     なっ……そんなわけないじゃないですか!え?これってドッキリですか!?》 紗弥香「なんだろ。騒がしいね」 柾樹 「ドッキリって……やっぱりこれってただの石像だったのかな」 まあそれはそうかもしれない。 化石だっていうのなら、こんな風にハッキリとした形で残ってるわけが───   ───……ツゴモリィイイ……!! 柾樹 「───ぅぇっ……!!」 紗弥香「……!!」 声が聞こえた。 心の奥底から湧き上がるような、酷く寒気を覚えさせる声が。 その次の瞬間───バガァアアアアアアンッ!!!!! TV 《う、うわっ……!?ぎゃぁあああああっ!!!!》 ブラウン官の中で化石が輝き、やがて砕けた。 眩い光に思わず目を瞑るが、ゆっくりと目を開けた先に見たものは…… 男  《……グ……ゥウウウウウ……!!ツゴモリィイイイイイイッ!!!!》 角と翼と尾を生やし、まるで獣のように叫ぶ黒い肌の男だった。 その姿はまるでバケモノのそれだ。 姿を見ただけで解る。 『目を合わせれば生きていられない』という絶望が。 男  《オォオオオオオオオッ!!!!!》 男が咆哮を放つとともに、画面は悲鳴だけを最後に砂嵐へと変貌した。 俺と紗弥香さんは呆然としながらも確かに震え、 お互い声も出せないままに静かに恐怖した。 ───ガカァンッ!! 豆村 「くぅううっ!!!」 ゼノ 「そらどうした。威勢がいいのは口だけか?」 豆村 「あぁもうめんどくさいなっ!俺は修行なんかしなくったって強いんだよ!」 ゼノ 「だったらその強さとやらを見せてみろ。それこそ『口だけ』ではないのならな」 豆村 「カチンときたぁっ!!だったら見せてやるよ!これが───」 ゼノ 「───待て」 豆村 「あぁらっ……!?って、なんなんだよ!見せろとか見せるなと───か?」 言った瞬間、何か寒気のようなものを感じた。 これって─── ゼノ 「寒気、か。この我が寒気を感じるとはな」 豆村 「ゼノ助さん、この気配って何者かな」 ゼノ 「何者かは知らん。だが───戦って勝てる相手ではないのは確かだ」 豆村 「へ?───へっへ〜」 驚いた、あのゼノ助さんが『勝てる相手じゃない』なんて。 豆村 「へへー、んじゃあ俺がこの気配の主に勝てりゃあ認めてくれるよな?」 ゼノ 「なに?……認める認めないもない、貴様では無理だ」 豆村 「やってもないのに無理と決め付けるなってのが」
【ルドラと悠介との邂逅ボツ】 ルドラ「過去は()を形成し、現在は我を維持する。そして未来は我を破壊する。     解るか“俺”よ。人は真なる意味で神にはなれない。     物を作るのが神であるならば、人のそれはなるほど、神だろう。     だが理解に至れ。この世界を破壊しているのはその人間自身であると。     過去がなければ人は形成されない。現在がなければ人は生きていない。     だが、未来はその“人”さえも壊してゆく。     生きるための環境を壊しているのだ、当然だろう」 悠介 「………」 ルドラ「それでも俺は生きた。この世の最果てに辿り着き、     いつかゼットの姿に感じたものをこの目で見てきた。……それは地獄だった。     全てを枯らし、自然を破壊し、緑も水も無くした世界が辿るものなど死だ。     人々がそれに気づいた時、全ては手遅れだった」 悠介 「その時お前はなにもしなかったのか……?苦しむ人たちを見捨てたのか」 ルドラ「もちろん助けた。酸素を創造し、水を創造し、世界を緑豊かな大地へと変えた。     それからは死んでしまった者たちの蘇生だ。     飢えて死に、発狂して人を殺したのちに死に、     家畜を食らって生にしがみついていたが死んだ者まで蘇らせた。     その先になにがあったと思う?」 悠介 「なにって……?」 ルドラ「領地争いだ。人間は醜いものだ。生きれることが解ったらまた戦争だ。     せっかく生き返った命をそんなもののために使い、     気づけば生き残った存在など数えられるほどだ。     ……さすがにもう蘇らせることなどしなかった。     私はな、“人”というものにこそやはり絶望したのだ。     アレは生きていても仕方が無い。元々増えるだけの生き物だ、     それが増えなくなったからといって私がどうするわけでもない。     どうせ、増えれば殺し合い、死にゆくだけだろう」 悠介 「………」 ルドラ「もう一度言うぞ、“俺”よ。     その最中で、お前が守りたかったものの子孫は死んだ。     最後まで争うことを拒み、平和を願い、その果てに発狂した男に殴られて死んだ。     ああ、もちろん私はそいつを蘇らした。だがな、“俺”よ。     そいつはもうかつてのそいつじゃあなかった。     殺される瞬間というのが、死に絶える瞬間というのが     心の奥底に染み付いてしまったそいつはまるで人形だった。     人の全てが解らなくなり、人であることを憎み、自殺してまた死んだ。     そんなものが最果てにあった。“俺”が守ろうとしていたものはそんなものか?     “俺”が守りたかったものはそんな未来か?それを、お前にこそ問いたい」 悠介 「………」 ルドラ「……答えられないか。この軸のお前もまた、私と同じなのかもしれない」 悠介 「……?」 ルドラ「私のもとにも来たのだ、私が。そして似たことを説いた。     お前の望んだものはこんなものだったか、と。     まるで自分が見失ってしまったことを確信として返してほしいように。     ……だがな、“私”よ。そいつはこう言った。“お前は間違うな”と。     私はお前に言わないが、お前はお前の望むように生きることができるか?     心を曲げずに生きていられるか?」 悠介 「……あんたは……」 ルドラ「遠い未来の最果て───私が居るべきその時間軸。     その地界に生きている生命はひとりも居ない。     生きることを望んで起こった出来事はしかし、     人の全てを根絶やしにしてしまった。全てが終わった。     覚えているか“俺”よ。その最果てでは決して唱えることのなかった言葉を。     “人はひとりでは生きていけない”とはよく言ったものだ。     生きるための戦いに勝った人間はしかし、孤独に負けて衰弱して死んだよ。     まるで寂しすぎて死に絶える兎のようだった」 悠介 「………」 ルドラ「そいつは私にこう言った。“あの時代へ返してくれ”と。     “辛くても憎しみ合っても、人が居た時代へ返してくれ”と。     なんという郷愁だろうな。     辛いと思っていた時代さえ、死と孤独の前では故郷となった。……憐れなことだ。     自分で破壊しておいて、結局は孤独に負けたのだ」 悠介 「……その言葉に同意は出来なかったのか?」 ルドラ「……親友を殺した存在が、その人間だとしたらお前は同意出来たか?」 悠介 「───!!」 ルドラ「どうということはない。人とは悪知恵ばかりが発達する生き物だ。     ……ある一端の話だ。     とある場所で、まさに世界の最後ともとれるほどの大災が発生した。     大地は割れ、山は噴火し、地殻さえ割れた。海水は沸騰し、空は濁り、     まさにこの世の終わりだと思わせるようなことが起きたのだ。     ……情けない話だ。私はその時空界に居て、     親友だけが地界でその出来事の処理を、それこそ命をかけて行った。     だが死神王とはいえ、所詮はひとつの命。     どれだけ全力を尽くそうが、出来ないことは出来ない。     だがあいつは諦めなかった。死力を振り絞り、人々を守ろうとした。     それが、たとえ人がこの世界の深みに無闇に触れた故の出来事だろうと。     この世界にあった、たったひとつの約束の地を守ろうと全力を尽くしたのだ」 悠介 「………」 ルドラ「かくして、たしかに災厄は防げた。だが親友は力を使い果たし、     死神から人の状態へ戻らなければ消費が保てないほどに衰弱していた。     ……そんな英雄に、人間どもは何をしたと思う?」 悠介 「なにって……」 ルドラ「今の力があれば怖いものなど無いと決断し、衰弱しきった親友を研究した。     もちろん一分一秒を惜しむような研究だ、食べ物もなにも与えられない。     全ての力を使い果たした親友も、自分で動けるような状態じゃあなかった」 悠介 「待ってくれ……それじゃあ……」 ルドラ「解るか?親友は守りたいものを守るために全力を尽くした。     それこそ、“死神の力が枯渇するまで”だ。     そして人の状態になってしまった親友に、     研究者達が求めるような力があるわけがない。     ……結果、人だったあいつは衰弱死して早々に廃棄されたよ。     空界から戻ってきた時には、形こそあれ、親友は既に灰同然だった。     ああ、もちろん今お前が考えている通り、彼の灰を集めて復活させた。     そうやって竜族を復活させたことがあるのだから、     力をつけていた自分にはそれが容易く出来た。     だが───そこに復活したのはとんだ出来損ないだったよ。     あいつは“人”として死に、人形のように捨てられた。     死神が死んだ場合、どうなるか覚えているか?」 悠介 「───あ……」 ルドラ「そう。生きるも死ぬもない。“消滅”するだけだ。     そして、人としてより死神として生きたあいつの自我は戻ることなどなかった。     ただ自分が誰なのかも解らず、狂い、自分の過去を探し、     だがそんなものが無いということに気づくと……それが当然のように狂った」 悠介 「………」 ルドラ「人は汚い生き物だと悟った。     なるほど、ノートが己のために生きようとする者を嫌った理由が解った。     それこそが真だった。長く生きていればそこに辿り着いてしまう。     幾億を生き、最果てに至り、大地が滅びる瞬間を見た。     解るだろうか、晦悠介。     “俺”が愛した世界など、私の時間軸にはもう存在しないのだと。     そこにあるのは“俺”が幾度となく創造した、     ブラックホールのような冷たい虚無があるだけなのだと」 悠介 「………」 そんなの、解らない。 俺はそんな世界に辿り着いていないし、目の前の未来の俺の心を知っているわけでもない。 けど───だからこそ、訊きたいことは訊くことにした。 悠介 「ひとつだけ訊きたい。     その消滅した未来の世界に、お前が望んだ幸せは少しでもあったのだろうか」 ルドラ「………」 目の前の俺は、俺の質問に小さく笑んだ……そんな気がした。 ルドラ「消えたよ、なにもかも。親友の墓も、妻の墓も、友人や知人の墓も。     全てが消えて、そして……思い出だけが私の中に残っている。     私の望んだ幸せにカタチなど無い。     あったとしたら、地界の消滅とともに消えている。     だが記憶は消えない。私はそれが、幸せだと信じている」 悠介 「だったら───」 ルドラ「───と、私のところに来た私は言っていた」 悠介 「───っ」 ルドラ「確かにな、そうなのかもしれない。     ともに歩むと信じていたものが無くなってしまった時、     残されるのは思い出だけだ。思い出はいつでも自分とともにある。     思考することを技とし、極みに至った“俺”だからこそ覚えていられる。     幸せだった瞬間、楽しかった瞬間、そして……知り合いの悉くが死にゆく刹那を。     親友の灰は俺に、いろいろな記憶を残してくれた。     あいつがどれだけ地界を愛していたか。     そして、あの約束の場所をどれだけ愛してくれていたかを。     ……全ては無になってしまった。それでも、私はあの地界で生きたことを、     たとえどんなに辛いことだろうと忘れてやらないつもりだ」 悠介 「……それだけの意思があるなら、どうして俺の前に現れた。     あんたが会った未来の自分と同じことをしたかったからか?」 ルドラ「……願いたかっただけだ。私も、未来の彼も。     どうか今度こそ、親友とともに生きていられる未来を、と」 悠介 「っ……」 ……なんて悲しい願いだろう。 結局自分も、幾度となく死を見守り、そして涙を渇らしたのだ。 (ルナ)の死に、友人の死に、知人の死に、そして……他の誰でもない、親友の死にこそ。 それでもなお未来を見つめ、そして……深く絶望した。 なにを望みたかったわけでもない。 ただ───そう、ただいつまでも幸せの中で生きていたかっただけなのに。 いつか自分はこう思った筈だ。 未来と過去の自分が融合する際、その人生は親友とともに在らなければ意味が無いと。 だからこそそれのみを望んで生きてきた。 その最果てに───目の前の自分は至り、地界の崩壊を見たのだ。 何もしなかったわけじゃない。 自分の生きた理由と希望をくれた存在を、助け切ることが出来なかった。 これは、そんな現実だったんだ。 ルドラ「だが私は未来の私の願いを叶えることなど出来なかった。     解るだろう?意見の食い違いや醜さはあれど、日々は続いた。     それが日常なのだ、仕方ない。     その中でその瞬間を見つけ出すことなど、無茶にして無謀だったのだ」 悠介 「それは───」 それは、そうだ。 親友だからといって、未来永劫ともに居ることなど出来ない。 一秒たりとも離れずに居ることなど出来ない。 ルドラ「そんな中で親友は死んだ。生きた証拠は私の中にしか無い。     他のどの世界にも、あいつが居たという確たる証拠など無い。     つまり、こうなってしまっては私があいつの拠り所なのだ。     おかしなものだろう?誰よりも長くともに居た存在が今は居ない。     蘇らせたところで己が何者かも解らずに自殺する。     教えてやったところでそんな記憶は無いと発狂して自我崩壊する。     魂のレベルでそれを植え込んでやろうと、その人生に耐えられずに死んでしまう。     ……私はな、“俺”よ。そんな未来を、親友に歩ませたくないのだ。     人を守ったというのに人に殺されたなんて馬鹿げた未来があるか?     真実を知った私の、その刹那の気持ちが解るか?     私は、私の手で地界を滅ぼしてやろうとさえ思った。     だがその世界自体を守ったのは紛れも無い親友で、     そして……その人間は、私が当時守りたいものだと思ったものなのだ。     だからこそ、私は“私”にこのことのみを願う。     “守りたいものを守る”という幻想を、今ここで切り捨てろ」 悠介 「───……待て、それは───」 ルドラ「お前が私なら解る筈だ。私がなんのために空界に行ったと思う。     親友が世界を守っていた間、私が空界でなにをしていたと思う。     空界は“地界の空間”にこそ存在する世界だ。     その地界自体が大厄に襲われようという時、空界に異常が無いとでも思うか?」 悠介 「それは……」 ルドラ「私は全力で力を行使し、地界から空界を乖離した。     どの空間でもない、空界を空界として切り離した。     ああそうだな、その結果、世界の安定に導くために走り回るうちに時間は流れ、     親友は衰弱とともに死んだ。それが現実だ。     ゼットと戦っていた時に解っていた筈だったんだ。     “俺はきっと、守りたいものこそ守れない”と」 悠介 「っ……」 ルドラ「だからこそだ。“守りたいものを守る”だなんて幻想は捨てろ。     そして───親友、弦月彰利こそを守る存在であれ」 悠介 「───……だめだ、それは出来ない」 ルドラ「……?何故だ」 悠介 「そんなことを平気で出来るヤツが、     あいつの親友で居られると思うことこそ『何故だ』だろ……。     親友が死んだことで、そんなことも忘れたのか?」 ルドラ「親友の命に代えられるものなどない。お前こそそれが解らないか。     あいつは死神として覚醒した時点で、死んではいけないものと化していた。     死神は死ねば消滅する。ゼノを創造した時とは訳が違う。     あいつを形成するには、     その身に宿る黒、影、闇の全てを分析しなければならなかった。     さらにコピーした鎌、鎌の持ち主、     鎌解在り方、吸収した魔物や幻獣の全てをだ。     お前は信じている存在を根っこから分析しておくことなど出来たか?」 悠介 「…………」 出来ない。 出来るわけがない。 親友だからこそ踏み込んではいけない一線というものがあるのだ。 気になるからといって、相手の全てを分析するなんて行為が許されるわけがない。 誰かを蘇らせたいならきっと別だった。 現に、俺は竜族を分析して蘇らせた。 けど、死んでしまい、死神の部分が消滅した彰利では分析することなど不可能だったのだ。 ゼノのように在り方を組み合わせて創造した時とは訳が違う。 あいつの在り方は本人無しで組み立てられるほど単純じゃない。 だからこそ……全てが遅すぎたのだ。 悠介 「……他の時間軸の彰利を複製する、なんてことは出来なかったのか?」 ルドラ「それこそ愚かだ。私がともに生きてきた親友は、己の時間軸を置いて他に無い」 悠介 「………」 当たり前だ。 1から20程度の年月ならまだしも、 目の前の“俺”は最果て近くまで彰利とともにあった。 そんな彰利はそいつだけだろうし、 なにより同じ時、同じ時間軸を生きたことこそ重要なのだ。
【futureボツED】 彰利 「人を守る?差別を忘れられない者を守ることになんの価値がある」 悠介 「価値がどうとかの問題じゃねぇ!     どうして破壊しか考えられなくなっちまったんだよ!」 彰利 「どうして?破壊しか?先にそうしたのは人間だ。     異能力があるというだけで月の家系を『人間じゃない』と唱えた人間だ。     差別されたから差別してなにが悪い。     ───ああ、お前は次にこう言うのだろうな。     『差別し合えば争いが絶えることはない』。……親友だ、よく解る」 悠介 「ッ……」 彰利 「争いが絶えない?それは差別し続けられればの話だろう?     だったら一方が滅べばいい。俺でも、人間でも。     抗うのなら滅ぼす。なにもしなければ俺もなにもしない。     『干渉』とはそういうことだろう。言っておくけどな、悠介。     俺が守りたかったのは『人間』じゃない。『俺が大切だ』と思った存在だけだ。     そこに差別はなかった。……解るな?差別をしたのは人間だ」 ガォンッ!! 悠介 「づっ……!!」 彰利 「……見ろ、人間ってのは醜いものだ。こちらが何もやってなくても遊びに来る。     だがな、あいつらは好きで銃を手にしてるわけじゃない。     全てを決めるのは上の者。あいつらは犠牲者だ」 悠介 「………」 彰利 「だが───だからといって銃で撃たれて黙っていればどうなる?     殺されるだけだろう。あいつらだって死ぬのは怖い。……俺は別だがな。     だが、あいつらの条件には当てはまる……つまりこれは正当な抵抗だ」 言って、彰利が手に光を込める。 彰利 「ブレードネイル」 フィンッ───バガァンッ!! 悠介 「……っ!」 軽く手を振っただけだった。 それだけで、彰利を狙っていた群集は全員吹き飛ばされていた。 彰利 「俺を惨忍に思うかい?悠介」 悠介 「くっ……」 彰利 「……俺とともに来てくれ、悠介。俺はこれから空界でひとつの国を作る。     そこでは俺達月の家系は自由だ。子供達のみを育み、静かに暮らしていける。     差別することしか知らない大人なんて入り込めない国を作るんだ。     子供の頃から異能力がある者を見ていれば、大人になっても何も感じないだろう」 悠介 「……それでしか解決できないのかよ……」 彰利 「ああ。噛み砕いて言ってやろうか。俺はもう、地界なんかに希望は抱いてない。     空気の濁ったこの世界を見てみろ。自然を削り、酸素を汚し、     ただ武器や建物を作れるからと生物の頂点に立ったと傲慢する者の住まう場所。     俺はこんな世界住みたくて、この世界で育ったわけじゃない。     だから今度は俺が国を作る。幼い孤児のみを集めた国を。     食料なんて種があれば俺がいくらでも作ってやれる。     水も俺が月然力で出してやる。子供がその世界に馴れる頃、     ゆっくりと畑の耕し方や作物の育て方を教えてあげるんだ。     親に殴られる恐怖を知ることもなく、純粋に」 悠介 「っ……」 彰利 「悠介。俺とともに来てほしい。こんな世界に居てどうする。どうなる。     それよりも、俺と一緒に自分の行き先を見失った子供達を救ってやってほしい」 彰利が俺に手を伸ばす。 それは握手を求める手だ。 だが─── 彰利 「……そうか」 俺は首を横に振っていた。 彰利 「じゃあ、お前は今から俺の敵だな」 悠介 「っ……どうしてお前はそう極論ばっかり……!     誰がお前の敵になるって言ったんだよ!」 彰利 「俺が言う。俺が作る国は、子供以外の全ての存在を敵と見なす。     ……だから、もう一度だけ訊く。俺と一緒に来てくれ。     お前とは『出来れば』戦いたくない」 悠介 「出来れば、か。状況が来たら戦うってことだな?」 彰利 「そうしなければお前が俺を攻撃するだろう?やられっぱなしは趣味じゃない」 悠介 「……じゃ、約束しろ。『お前が守りたかったもの』には手を出さないって」 彰利 「たわけ。さっきも言っただろう、相手が攻撃しない限りは俺も攻撃しない。     自分の命を守ってなにが悪い。それともなにか?     お前は『俺が守りたかったもの』が攻撃してきた場合、     それを甘んじて受けて死ねって言うのか?」 悠介 「だからっ……それが極論だって言ってるんだ!     そんな状況が来たら俺だってそいつを攻撃する!     みすみす親友を殺されてたまるかよ!!」 彰利 「………」 彰利は苦笑するようにクスッと小さく笑うと、 『いいんだな?』と言ってもう一度手を伸ばしてきた。 俺はその手を迷うことなく握り、笑み返してやった。 まず最初にやるべきことをふたりで同時に口にして。 彰利&悠介『名前、捨ててくか』 そう。 俺達は地界を捨てるんだから、地界の名前は必要じゃない。 彰利 「……知ってるか?冥界に居る死神の大半ってな、     月の家系に耐えられなくなった人を食い破って出てきた死神なんだってさ」 悠介 「……じゃあ」 彰利 「ああ。もしかしたら俺も食い破られて、俺からレオが出たかもしれなかった」 悠介 「……そんじゃ、名前は決まりだな」 彰利 「ああ。俺はレオ」 悠介 「俺は……ルドラだ」 パンッと手を叩き合わせて、新しい名を歓迎した。 彰利 「いつまで経っても月の家系には死神が付き纏うんだなぁ」 悠介 「神と死神の(すえ)なんだから、     神が付き纏うようなパターンもあっていいと思うのにな」 彰利 「まったくだ」 やがて空間に歪みを開いて、俺達はその中へと身を投じた。 恐らく、もう帰らないであろうその世界に別れも言わずに─── ───……手を差し伸べてくれる人が居ました。 女の人「汚らしいっ!あっちへお行きっ!」 殴られ、叩きつけられ。 存在さえ否定されるだけのわたしに、手を差し伸べてくれる人が。 ───……手を差し伸べてくれる人が居ました。 男の人「鬱陶しいっ!売り物に手ェ出したらブッ殺すぞ!!」 人に捨てられ、ただ生きようとしている僕に手を差し伸べてくれる人が。 ……手を、差し伸べてくれる人が居ました……。 それは、とてもとても暖かくて…… 冷たくなった自分を心を…… どこまでもどこまでも暖かく包んでくれる…… とてもとてもやさしい手の平でした…… ───アルマデル、フィルヴィニア暦6982年。 アントエンハンスの街を東に100キロ行った場所に位置するロトニウス地方。 その外れの外れにある壮大な草原に、ひとつの城がありました。 花が咲き乱れ、城壁ですら木々に覆われている、超自然要塞。 だというのに害虫は皆無で、 そこに住む子供達も虫が体に付くことを怖れることも知らず、 木の上で眠ったりすることもしばしばでした。 けれどもそれを強く咎める大人はふたりしか居ません。 というのも、この城には子供しか住んでいないからなのです。 人はこの城を『チャイルドエデン』と呼び、 どんな場所よりも自然が溢れる城だと言っています。 さて……そんな城の中、 唯一大人であるふたりの男はどんなことをしているのかというと─── ───……。 レオ 「ミリル、危ないよ。降りておいで」 ミリル「は〜い」 ぴょんと木の上から降りてきたミリルをやさしく受け止めて、微笑みかける。 レオ 「ダメじゃないか、落ちたらケガをしてしまうんだよ?」 ミリル「そしたらレオにぃさんが治してくれるもん」 レオ 「でも、痛いだろう?もう危ないことしたらダメだよ」 ミリル「は〜い……」 諦めるように言うミリルをやさしく撫でて、草の上に降ろす。 石畳だった場所も既に草に覆われ、倒れてたところで傷を負うということは滅多にない。 レオ 「ああそうだ、ミリル。ルドラを見なかったかい?」 ミリル「ルドラにぃさん?えっとねー……確かリーネの畑でおまじないやってたよ」 レオ 「そっか。じゃあ俺はそっちに行くから。     ミリル、お昼寝はちゃんと部屋でするんだよ」 ミリル「は〜い♪」 これを言うのももう何回目になるのか。 ミリルはこうして俺に構ってほしいのだという。 可愛いものだ。 テオ 「あ、レオにーちゃん!ブレッドポットの調子が悪いんだっ!ちょっと来て!」 レオ 「ああ、いいよ」 パン作りを任せているテオが、湯気が立ち上る部屋から小走りにやってくる。 俺はそれを迎えてやって、次は自分から部屋に赴いた。 レオ 「ははあ、これはアレだな。ミオ、二番バルブを閉じて」 ミオ 「はいっ」 レオ 「テオとヤオは一番のバルブを開けるんだ。     ああ、ミトンを付け忘れるな?火傷するよ」 テオ 「ああっ!」 ヤオ 「いくよっ!せぇぇーーのっ!!」 ブシュウウッ!!! バルブを開けると、物凄い勢いで蒸気が噴出した。 近くに居たテオにはたまらないだろう。 テオ 「うわちっ!あちゃちゃちゃちゃっ!!」 レオ 「さ、ナオ。融通の利かないパン工場にトドメだ。そこのレバーを引きなさい」 ナオ 「う、うんっ!てりゃあっ!!」 ガッ……コォンッ!! ナオがレバーを引くと、 唸りを上げていたブレッドポットがいつものような静かな音に戻る。 テオ 「ふ……ふぃいい……」 レオ 「お疲れだ。そっちの三番と五番に油を差しておいてあげるといい」 ヤオ 「は、はい」 テオ 「レオにぃちゃ〜ん……火傷しちったよ〜……」 レオ 「ああ、待ってなさい。今薬草を貼ってあげよう」 テオ 「えぇ〜〜?法術で治してくれないのかよ〜」 レオ 「テオ、いつも言ってるだろう?なんでも能力に頼ってはいけない。     私達には治癒能力が備わっているんだ、よっぽどの大怪我以外は自然の力で治す。     それが、チャイルドエデンの決まりだよ?」 テオ 「ちぇ〜、またあのあったかい光が見れると思ったのにな〜」 レオ 「見たいからって自分や他の子供を傷つけてはいけないよ?     そんなことをすれば、あの時みたいに大目玉だ」 テオ 「……あ、あれだけはもう勘弁だよ……」 レオ 「……うん、それでいい。     ああヤオ、そろそろピットペディットたちが騒ぎだす頃だ。     エサの準備は出来てるかい?」 ヤオ 「あっ……すぐやりますっ」 レオ 「うん。卵を貰うんだから、こっちもきちんと奉仕をしなければいけない」 そう言って、小さなパン工場から出てゆくヤオを追うように歩き出した。 テオ 「ルドラにぃちゃん、新しいブレッドポッド創ってくれないかなぁ」 レオ 「どうかな。古いものを大切にしない人は嫌いだからね、彼は」 テオ 「で、でもさぁ。そろそろこれもボロっちぃし」 レオ 「そうだね。爆発でも起こしてキミ達が怪我をしたら大変だ」 テオ 「…………ねぇレオにぃちゃん。どうして今日はそんな口調なんだ?」 レオ 「やさしい気分だからさ。今日は夢見がよくてね」 テオ 「もう昼過ぎだぜ?今まで寝てたのかよ」 レオ 「ネノルに童話を読んであげてたのさ。おかげで眠る時間が遅くになってしまった」 テオ 「ネノルのヤツ、レオにぃちゃんにべったりだからな〜」
【安置されてたなんかの設定。たぶん結構古い】 柾樹───英雄悠介 子供の頃の啓介事件の際、柾樹の体に入り込む。 本人に自覚は無いが、恋愛感情が死滅し、 親友に対しての友好感情のみが働いているのはそのため。 英雄悠介───神魔霊竜人 全ての人に絶望し、親友のみを求めた晦悠介の最果ての姿。 人々の思念によって英雄化され億と生きたが、肉体はその寿命に耐え切れず既に消滅。 体は霊体に近いものであり、実体化は可能だが主に誰かに取り憑くことで存在する。 創造世界はラグナロク。創造の理力と卍解能力を使い分けることが可能。 世界創造は鎌では無く理力で行い“天地空間”と書いてラグナロクを創造。 そして鎌の力、即ち卍解は“世界を滅する闇黒の秩序”と書いて、 ワールドエンドブラックオーダー。 己の世界以外の全てを破壊するという、 世界を真に憎むことで至った英雄悠介の鎌の最終形態。 千年の寿命───魂の寿命を延ばすもの。 当然肉体はいつかはそれに耐え切れず崩壊する。 だが寿命自体が残っているため、肉体は滅んでも霊体として存在出来る。 その場合、人々がより必要とし、その思念が最高値に高まると霊体は英雄と化す。 少年悠介───悠(ハル) 最終決戦の中で死に、奇跡の魔法を使ったために消えようとしていた悠介を、 ノートが光として持ち帰り、癒しの大樹の前の千年の寿命に沈め、 それが長い時を経て子供の精霊として結晶化したもの。 奇跡の魔法で願った願いは“彰利と喧嘩をすること”。 長い年月が経ったのち、ある日彰利が約束の樹の下に行くと、 一人の老人が立っていることに気づく。 老人の格好を装っていた彰利にはそれが誰かすぐ解り、 やがていつか交わした約束を果たすために喧嘩を始める。 その奇跡の魔法の願いも、彰利が老人となり、黄昏での喧嘩を終えた時、 「俺のことは忘れて、今の幸せを追いかけてみろよ、親友───」と言って消える。 奇跡の光が結晶化した最大の理由はノートの“不可能を可能にする力”にある。 散々時間を喰ったがようやく発動。だがやはり悠介は蘇ることはなく、悠が誕生した。 精霊名はやはりルドラ=ロヴァンシュフォルス。 だが本人が潜在的に嫌っているため、悠と名乗っている。 眠っているところに彰と出会い、 出会った途端に彰の中の創造の理力が少年悠介の中に全て流れこんでしまう。 “創造の精霊”として不完全だった故、 そういう要素を取り込むようにノートに細工されていた。 背は低く、言葉は丁寧。 しかし時折毒舌で、本人にその自覚は無い。 彰の名前に対抗してかこちらも頭の名前一文字の悠(ハル)。 こちらは悠介と違い完全に感情を持っていて、喜怒哀楽完全装備。 だが礼節を弁えるところや危機にこそ冷静に振舞うところは悠介譲り。 誰に教わったわけでもなく、剣術槍術体術を始め、魔法や式や召喚術までも楽々行使。 秘密にしているが、溶け込んだ“力”の名残か、竜人奥義まで使用可能。 ただし竜化を本人が嫌うため、普段は精霊として彰に付きまとっている。 というか彰に“その能力は俺のだから、 俺のところに戻す方法が見つかるまで付いてこい”と言われたので同行してる。 べつに嫌がってるというわけでもない。 【完】
【王様のブランシュ】 デケテテテンッ♪テ〜テ〜テ〜テテェゲッテ〜、テゲテテテンッ♪ テ〜テ〜テ〜テェゲッテ〜、デェーーゲデーデッテッテ、デーゲデーデッテッテ、 デーーゲデーデーデデゲデェーーーデンッ!! 彰利 「給食ン時の音楽ってなんでこれなんだろ」 中井出「俺もっとエロいのがいい」 彰利 「相変わらずストレートだねキミ……」 とある昼、とある給食の時。 中学も残すところ一年となった3年の初期、 俺達は教師たちを脅して見事迷惑部のみで教室を埋めていた。 担任は牧村ちなみセンセ。 この学校でナンバーワンに気の弱い女性のセンセだった。 多分他の教師たちに押し付けられたんだろうね、うん。 気が弱くて若作り。 高校生でも通じるじゃねーべかと思うほど。 キリュっち思い出すね、うん。 若作りって言い方だと歳食ってるように聞こえるけど、まだ20代だったりします。 教師生活はまだ始めて5年と経っていないそうな。 中井出「あ、せんせー」 ちなみ「もぐ?んむあむ……な、なんですか?中井出くん」 中井出「なんか俺だけ早速出された進路調査票、突っ返されたんですけど。なんで?」 ちなみ「あ、あたりまえですっ!なんですか女体神秘の探求者って!」 中井出「え?俺なんかヘンなこと書きました?」 彰利 「お前……」 中井出「え?え?なに?なんなのその目!」 ちなみ「もうっ!ふざけてないできちんと書いてくださいね!     書けるまで今日は帰しませんから!」 中井出「え……いやおいまいったな……どうしよう彰利、俺誘われてる」 彰利 「…………俺、お前のことほんとすげぇと思うわ」 中井出「彰利、悪いが今日一緒に見る予定だった極秘はナシだ」 彰利 「見ねぇっつったっしょ!?」 中井出「あ、なんだったらお前だけでも家でゆっくりと」 彰利 「ちょっ、やめれ!なに人の鞄に勝手にヴィデオ押し込んどるの!     ちょ、やめっ……!先生が見てる!女子たちが見てる!     イヤアァアアなんでこんな羞恥プレイ……!ら、らめぇえーーーーっ!!」 それはまだ。 僕らが中学生の頃のお話です。 ムシャムシャモグモグモリムリ…… 彰利 「オカワリ」 中井出「そんな、声まで変わって……!」 彰利 「ナオミなんかと一緒にすんじゃねぇ!」 今日も今日とてメシが美味い。 かつて小学では給食費を払わず給食を食わなかったアタイ。 しかしキリュっちと親しくなってからのアタイはちと違った。 しっかりと食べ、しっかり飲み込む。うんウマイ。 今日は持参したJリーグカレーをドヴァドヴァとライスの上にかけて、 それをレタスと一緒にいただいていた。 すると体がみるみるうちにラモスに……!!……なるわけないね。 だがしかし姿が変わるからってナオミと一緒にされるのはこれ心外。 まさおに失礼ってもんさ。 ちなみ「だ、だめですよぅ弦月くん!学校にカレーなんか持ってきちゃあ!」 彰利 「なんと!?貴様カレーを馬鹿にするとはなにごと!     カレーなんかとはなんですかカレーなんかとは!」 中井出「はっはっは、これこれ彰利一等兵、それくらいにしなさい。     ちなみちゃん怖がってるじゃないか」 ちなみ「ちなみちゃんとか言わないの!!」 中井出「…………ちなみ《ポッ》」 ちなみ「恋人みたいに言うのもだめぇええ!!」 ちなみちゃんは僕らのアイドルさ。 なんつーかこう、うん、からかい甲斐がある。 彰利 「あ、えーと……と、ところでみんなー?その……《ぶっ》うぶっ!?」 中井出「鼻血だ!───なに!?どんなエロス想像したの!?ねぇ!ねぇったら!」 彰利 「うるせぇ!エロスじゃねぇよ!!」 中井出「恥ずかしがることないじゃないか……それは立派な雄の証さ」 彰利 「違ェエエっつってんだろ!?そうじゃなくて!レタスだよレタス!!」 中井出「……っ……《ごくり……》……レ、レタスプレイか……斬新、だな……」 彰利 「言いながら素で引いてんじゃねぇよ!!違うっつーとるでしょ!?     レタスだよレタス!みんなレタス余ってたらちょーだい!?」 ざわ………… 彰利 「いや“ざわ”じゃねぇよ!!     食うだけだよ!?なんなのその恐ろしいものを見る目!」 悠介 「お前がレタス貰うこと想像しただけで鼻血なんぞ出すからだろ、たわけ」 彰利 「ああんダーリンたら冷たい!!」 ざわ…… 悠介 「……ん?───へ?お、おい……?なんだその生暖かい目……って待て!     まさかお前ら盛大な勘違いして───!《ポム》───彰利?」 彰利 「俺達、親友だろ?地獄へ行こうぜベイベー」 悠介 「捨て身のホモ疑惑を俺にまで擦りつけるなたわけぇええええええっ!!!」 彰利 「《バゴルシャアア!!》ゲボルヴァーーーーーッ!!!」 空飛びました。 ええマジで。 中井出「あ、じゃあここらで好きなものの寄せ集めでもしてみるか。     ライス好きなヤツ、居るかー?」 田辺 「あ、提督俺俺」 中井出「じゃあ田辺にはクラス中からライスを5分の1プレゼント」 田辺 「食えねぇよそんなに!!」 中井出「茄子は生る……洗えば食える!」 田辺 「いやおいちょっと待て提督てめぇ、     なんかいいこと的なこと言って押し切ろうとしてるみたいだけど     意味解んねぇからそれ」 中井出「馬鹿!田辺くんの馬鹿!     鉱物ならばたとえ苦しくても全て食うのが好きな者の根性でしょう!」 田辺 「限度ってもんがあるだろサーてめぇ!」 中井出「サーてめぇって言うのやめなさい!」 岡田 「つーか今好物って部分にとても鉱石的なものを感じたんだけど。     あ、俺デザートのプリンがいい」 中井出「なにぃ!では岡田二等!     貴様にはクラス中のプリンを今ここで全て食らい尽くすことを命ずる!!」 岡田 「すんませんッしたァアアーーーーーーーッ!!     自分調子に乗ってましたァアアーーーーーッ!!!」 中井出「うむ!謝罪はいい!食え!」 岡田 「鬼ッスね提督!!」 ちなみ「だめです!プリンは一人一個なんです!」 中井出「ちなみちゃんには僕のプリンを進呈」 ちなみ「ありがとう!!」 とてもダメな先生だった。 悠介 「はぁ……」 彰利 「おや溜め息。どうしたの〜そんなに疲れた顔してェエ……」 悠介 「いや……退屈だけはしないんだよなぁ、ってさ……頭痛はするのに」 中井出「頭痛にバファリン」 悠介 「気持ちだけもらっとく」 中井出「気持ちで病が治るものか!治すのはそう!誰かのやさしさ!     さあ受け取れバファリンを!     そして誰のやさしさかも解らん半分の成分で癒されるがいい!」 彰利 「そのやさしさでキミのエロが癒されればなぁ」 中井出「フッ……落ち着いて考えるんだ。焦ってはいけない。いいか?     もし貴様がバファリンの成分の半分でメイドさん好きが消えると言われたら?」 彰利 「バファリン会社潰す旅に出るよ」 中井出「それと同じく俺はエロを愛すのだ!」 彰利 「一緒にするんじゃねぇよそんなエロスと!」 【完】
【2010年の正月おまけとして書いたブツ:中井出博光/永遠を旅する者】  ぺけぺんっ、ぺんぺぺぺぺぺぺぺんっ♪ 中井出「ぅあけましてぇっ!!」 総員 『おめでとーございまーーーーす!!』 彰利 「お年玉よこせお年玉!」 中井出「なに言ってんのいきなり! 同い年でクラスメイツな貴様に何故俺が!?」 彰利 「バカヤロコノヤロォ!!     てめーは4000歳のアルティミッツジジーソンだろーが!     だから俺にお年玉よこせ! 貴様にはその権利がある!」 中井出「いらねーよそんな権利!!」  はい、そんなわけでお正月です。  懐かしい感覚ですね、和尚が二人で和尚がツーなんて、昔はよく言ったもんです。  さて、現在僕らは流されるまま揺られるまま、時空を彷徨い外史を行ったり来たりしているわけですが。 中井出「次は何処に辿り着くのかなぁ」 ルナ 「時空の狭間でやることが新年の挨拶って、どうかしてると思うけど」 中井出「ルナちーはまだ常識抜けし切れてないなぁ。     こんな時だからこそ面白いんじゃないか。     ほら、しっかりと時空移動に左右されない時計が1月1日をお知らせしています」  そう。  あの瞬間から僕らはずぅっと外史の旅を続けている。  終わることのない冒険の旅を、今も続けているのだ。  誰かが願うたびに作られる外史の中を、ゆったりたっぷりの〜んびり♪ 中井出「次降りるとしたらどんなところがいい? 決めて降りることなんて出来ないけど」 才人 「あ、俺アイドルマスターの世界がいい。アイドルってのを間近で見てみたいし」 彰利 「アタイは僕の血を吸わないでの世界がいいざんす。     ヴァンパイア倉地さんと対面してみたい」 総員 『やめとけ』 彰利 「あ、あらそう?」 悠介 「俺は……うしおととらだな」 彰利 「キャア!? だったらアタイ、ナマの“さとり”に会ってみてィェーーーッ!!     あと“ふすま”! 戦い甲斐ありそーじゃないの!」 藍田 「漂流教室のマリリンモンローと握力勝負してみてぇ……オリバで」 彰利 「や、そりゃ勝負にならんしょ」  それぞれが好き勝手に案を出します。  確かに言われてみれば、そこに行きたいと思う場所は多々あるわけで。  でも上手くいかんのが時空の流れ。  外史間移動は流されるままでしか飛べないのです。  どの外史に辿り着くかで、暦間移動も時空移動もその外史に合わせたものに書き換えられてしまうのです。  だからたとえば、今さら真恋姫の世界に戻りたいって思って、行ったことのある場所のイメージを弾けさせたところで、たとえばネギまの世界に立っているのなら、ネギまの世界での千何年前に飛ばされるだけである。  そんなわけだから、一度行ったところには二度と行けないと考えたほうがいい。 中井出「こう、やっぱり適度にファンタジーが混ざった世界とか、いいよね」 彰利 「いっそのことドラクエの世界でいいんじゃねーの?」 中井出「あ、じゃあ僕世界の半分が欲しい。本気で半分もらって自然で溢れさせて、     竜王のやろうが侵入してきたらぶっ潰すの。ステキじゃない」 鷹志 「俺はどっちかっていうとFF派なんだが」 中井出「FFで思い出したけど……なんでFFってファイファンって呼ばないんだろ。     ちなみに俺は子供の頃はファイファンで通してた」 才人 「あ、俺も俺もっ! バグ武器で“えふえふ”ってのが出るまで、     ずーーっとファイファンで通してたよ!」 彰利 「じゃけんども公式で“FFと呼んでほしい”って決めちゃったらしいぜ?」 中井出「それがどうした俺はファイファンと呼ぶ」 彰利 「テメー最近までFF言ってただろーが!」 中井出「うるせー! 決まったことに逆らってこそのひねくれもんじゃい!     それより新年だよ新年! なんか新年っぽいことしよーぜー!」 総員 『おおーーーっ!!』  さて、話を中断して楽しむ方向へGO。  現在はハイ、例の如く猫の里。  時空の波に揺られててもつまらんだけだし、内側に篭って遊びます。  どっかに着いたら外に出ればいいしね。 中井出「では久しぶりに原中名物“覇根津鬼(はねつき)”でもやるか?」 閏璃 「覇根津鬼って?」 彰利 「フツーの羽根突きは相手が落としたら負けっしょ?     覇根津鬼はヘンな方向に打ち返して落とされたほうが負けなのさ。     さらに打ち返すごとに一歩近寄らねばならん。     相手のほうに的確に打ち返し、かつ一歩ずつ近づく。     勝ったヤツは負けたヤツに一つだけ命令が出来るのさ。     ただし下ネタやエロ禁止。     せいぜいで教育実習生のカツラ取ってこいとかそーゆーレベル」 来流美「それせいぜいどころのレベルじゃないわよ!?」 中井出「まーまー、ある程度やりたくないものが待ってるって思ったほうが、     みんな全力を出せるってもんなんすヨ。     そして我ら原中生に、始める前から逃げ出すクズはおらぬ!!     さあどうする! 臆さぬならば、かかってこ───」 ラカン「フツーのルールで羽根突きでいいだろ。ただし全力ありでだ」《ムキーン》 中井出「おお匠! ならばこの博光も全力でかからせていただこう!!」《ムキーン》 エヴァ「喋るたびにポージングすんな、鬱陶しい」  そんなわけで普通ルール!  フツーの羽根突きに決定した!  まずはお手本をと、創造したダマスクス羽子板をラカンさんに渡し、僕も手に取り距離を開ける。  球は耐久性と弾力性にすぐれた、これまたダマスクス製。  これらを以って全力羽根突きを開始するものとする! 中井出「ではラカンよ! まずは貴様から血祭りに上げてやる!     魔王!《バッ!》灼……碧!《スゥウ……シュバッ!》     天破崩塵雷火風水烈閃砲ォオオオオゥァッ!!!」  素晴らしき構えをビシバシとキメたのちに、放り投げた羽根を思い切りブッ叩く!!  すると羽根は炎風を纏ったレーザーとなってラカンへと襲い掛かり───! ラカン「烈破闘神反発鳳凰羅漢壁ィイイイイェエエエーーーーーッ!!!!」  しかし既に構えていたラカンの手により、炎風をまとった羽根は跳ね返される!!  その威力は倍返し並の速度を以って僕へと───! 中井出「我煉空壊波動震動弾ンンンーーーーッ!!!!」  ラカンへと───! ラカン「欧牙魔迅特攻拳!!」 中井出「焔鬼爆裂砲!!」 ラカン「葱拳!!」 中井出「葱拳!!」  速度が、威力が上がれば上がるほど技名を短くせざるをえなくなり、いつしか極光レーザーを羽子板で打ち返しまくるような状況へと発展!!  タイミングミスればケシズミになってもおかしくないこの緊張感がたまらねぇYO! と彰利なら絶対言うね! むしろ俺も言いたい! ラカン「はははははは!!! はぁーーーっはっはっはっは!!!     やるじゃねぇか中井出よぉ!!」 中井出「ワハハハハハ!! ラカンこそ、さすがは千の刃の男よ!!」 ラカン「ヘッ、千の武具の男がよく言いやがるじゃねぇか!!     だがこれで終わりにさせてもらうぜっ!     ラカンッ───インッ……パクトォオオオオーーーーーーーッ!!!!」 中井出「なんと!?」  レーザーとなった羽根を打ち返しまくる中、ラカンがついに最大出力を解放!  ならばこちらもと、最大出力のレイジングギガフレアを羽子板に付加させて解放!!  景色を破壊しながら飛んできたラカンインパクトを跳ね返してギャアアアアアアアア!!   ……景色が爆ぜました。 ───……。  それでもって。 エヴァ「貴様らなぁ……! 少しは周りのことも考えてから全力解放しろっ!」 ラカン「全力出しても死なねぇ相手に全力出さねぇでどーすんだ」 中井出「そうだサブリガ」 エヴァ「サブリガ言うな!!」  崩壊した景色を復活させたのち、僕とラカンさんは互いに肩を組んでワハハハハと笑っておりました。 中井出「ナギもネギ連れての冒険ばっかで僕ら退屈だし。なにやってんだろ、今」 ラカン「知らん。今頃、アハツィオンに挑戦してボロボロになってんじゃねーか?」 中井出「自分より強いやつは許さんってケがあるからね、彼。     で、景色ブッ壊しておいてなんだけど、正月らしいことって他にあるかな」 殊戸瀬「福笑い。…………提督の顔で」 中井出「死ぬよ!?」  ともあれここじゃあ猫たちや自然に迷惑になるので、別の場所へ移動しよう。  場所は〜〜……そうだね、エコナ平原あたりで。 ───……。  そんなわけで、パパッと転移でエコナ平原。 中井出「そんなわけで餅つきしよう!」 総員 『着いて早々かよ!』 中井出「早々だとも! 創造しますは、つけばつくほどやわらかく美味しくなるモチ!     殴る───もとい、つく力が強ければ強いほど美味しくできます!     つまりは蓄積で美味しくなるわけだが、つくのはあくまで杵だけでね!     拳や蹴りはご法度です! さあそんなわけでとっととペアを組んでモチをつけ!」 総員 『イェッサァッ!!』  言ってからは高速です。  僕と晦とブラックノートン先生は臼や杵を創造、ルールの説明を立て札にして地面に突き刺しつつ、人数分を用意した。 中井出「さあ、中には餅つきのやり方を知らんという人もいらっしゃるでしょう。     ですので軽く実演を。じゃあキティ、キミが回し役ね?」 エヴァ「…………私を殴らないよな?」 中井出「殴る」 エヴァ「おぉおいっ!?」 中井出「あ、いや、大丈夫大丈夫! 殴らないよウン殴らない! 僕いい子だもん!」 エヴァ「いい子が自分を外道だとか公言するかばかっ! 貸せっ! 私がつく!」 中井出「OK白刃取りの準備は万端だ!」 エヴァ「殴るかっ!!」  いろいろありますが、僕が臼の傍にスチャリと屈みこむと、キティも杵を持ち上げ…… エヴァ「《ずしっ……!》ふくっ!? ……お、おいっ……!?     この杵、やたらと重いんだが……!?」 中井出「ラカンパワーに耐えられるよう、超圧縮グラビディア鉱石で出来ています」 エヴァ「いつも通りオリハルコンを使えオリハルコンを!!」 中井出「だってそんなポンポン使ってたら希少性が……」 エヴァ「こんな時ばっかり常識ぶるなぁあーーーーっ!!!」  埒も無し。  杵を賢者の石で文字列変換してやると、軽くなったそれを振るってニヤリと笑うキティ。  スタンバイしている僕を見て、僕が頷くのを待ってから───いざ! エヴァ「ていっ!」  でしんっ! 中井出「だめだな……全然だめだ」 エヴァ「叩いた途端に失礼だなおい!! 何が不服だ何がっ!!」 中井出「せっかくラカンパワーにも耐えられる臼と杵なんだよ?     もっとこう〜……ヒロラインパワー全開でさ。見なさいこのモチを。     殴ったというのに全然柔らかくなっていない。     ……ではラカンさん、お手本をどうぞ《ヒョイッ》」 ラカン「おう《バシッ》」  ヒョイと投げた杵を受け取り、何故か上半身裸になってポーズをとってゆくラカンさん。  わ、解る……! 体の隅々まで力が蓄積されていくのが……! ラカン「おぉおおおおお……!! 奥義!!《ズビシィッ!!》     凄・絶!《バッ、ビシィッ!》 餅突鬼羅漢!!(今命名)」  ヒュゴドォッゴォオオオンッッ!!!!  腕をクロスさせ、両腕を腰に溜めたのちに右手だけを突き出し、その場で横回転を一度した反動をそのままに、思い切り振るわれた一撃が餅を衝く!!  するとその場に衝撃波が発生!! 傍に待機していた僕は思わず吹き飛び、地面をバキベキゴロゴロズシャーと跳ね転がることに! ラカン「……とまあ、こんなもんよ」《ムキィーーン!!》 エヴァ「だからわざわざポーズ取るなよ鬱陶しい……で? 肝心の餅はどーなんだ」 ラカン「ん? あー……《ぷにょんっY》……思わずむしゃぶりつきたくなるほど、     恐ろしくやわらかくなってるが」 エヴァ「お前が言うとなんか卑猥だ」 ラカン「ハッハッハッハッハ!! まーお前も頑張って突けば柔らかくなるんじゃねーか?     自分のが可哀想なくらい無いんだから、     せめて餅だけでも揉めるくらいは《ゴスゥッ!!》おごっ!?」 エヴァ「餅を引き合いに出すなこのアホォッ!」  良い角度からの杵攻撃でした。  鍛えられてても弁慶の泣き所は痛いだろ。 中井出「そんなわけで各自開始! それが今日の朝飯になりますんで」 エヴァ「少ないだろどう考えても! 打つごとに小さくなるぞこれ!」 中井出「ええい足りなかったら雑煮でも作るわ! 彰利が!」 彰利 「なして俺!?」 悠介 「いや。雑煮作りは俺に任せてもらおう……いや、やる!」 中井出「だめだ」 悠介 「なんでだよっ!」 中井出「言いたかっただけです! 最強!」  そんなこんなでみんなで餅つき。  強く殴ればいいってだけあって、みんな全力で殴りまくってます。  ええ、もちろん力を入れすぎて水差し役の人を殴るとか、そんなアクシデントもありますが。 オリバ「《モキモキモキ……!》フフフ……! モチツキ……思えば初めての経験……!」 岡田 「お、おぉおお、おいぃ……!? 外すなよ!? 絶対に外すなよ!?     なんか別の方向から外せ外せって期待されてる気がするけど、     絶対に外すなよ……!? 外したらお前……どうなることか……!」  特に危険極まりないのがオリバ&岡田くんペアでゴチャア!!  ……ミンチになった。 彰利 「ゲェエエーーーーーーーッ!!! 岡田くんが! 岡田くんがぁーーーーっ!!」 悠介 「うぇっ!? 岡田!? 岡田ぁあーーーーーーっ!!!」 オリバ「オマエサンハ少シ……スマートサガ足リネェ……」 彰利 「うぅわひでっ!     自分の失敗を岡田くんのスマートさの所為にしようとしてやがる!」 閏璃 「ひでぇ!」 悠介 「オリバひでぇ!」 田辺 「オリバひでぇ外道!」 飯田 「外道!」 彰利 「つーかどれだけ目測誤りゃあ相方の顔面打ち抜くんじゃい!」 オリバ「そう……バカ力だけが自慢だ」 彰利 「人の話聞いてないよこの子ったら!!」  ひでぇ状況が視界の隅で展開されております。  でも気にしない。アクシデントなんてつき物ですよつき物。 一刀 「提督さん、木刀でやってもいいのか?」 中井出「纏わせた氣で殴るんなら平気……かね?     でもレーザーとかだと消滅するわけだし。つーか木刀じゃ殴りづらいだろ」 一刀 「んー……だったら杵に氣を通して……と。     あー、やっぱり通しづらいな」 中井出「貴様の木刀がどうかしてるんだって。なにあの氣の拠代みたいな木刀」 一刀 「ずっと愛用してたんだから、そうなってもいいじゃないか」  言いながら、杵を持ち直すかずピー。  その臼の隣には凪が待ち構えていて、餅が突かれるのを待っていた。 一刀 「錬氣……集中《キィイーーー───……ン》」  意識を研ぎ澄まし、臼を睨む彼の目は本気と書いてマジモード。  すっと振りかぶり、ひゅっと息を吐くとドォンガァッ!!  脱力をした状態で一気に振り下ろし、インパクトの瞬間に渾身を込める一撃。  凪を気遣ってか、さすがに全力ではやらなかったおかげで衝撃波は出なかったが、突かれた餅はツヤツヤだった。 凪  「……!」  それを確認するや、凪が水で濡らした手でくるりと丸める。  あとは───もうよく出来た連携劇場だった。   ドガァンッ! くるり、ドガァンッ! くるり、ドガァンッ!!  ……申し合わすこともなく、初めてでここまで出来るとは……さすがです。  で、こうなると気になるのが華琳たちなわけだが─── 春蘭 「華琳さま……! き、き、きー……」 秋蘭 「杵だ、姉者」 春蘭 「杵を振るうお姿もお美しい!」 華琳 「……形は絶と似ているし、ようは慣れよ、慣れ。それより───」 中井出「え? なに?」  何故か睨まれる僕。  次いで睨まれているかずピーは、凪と一緒に餅をついている。  三羽烏のもう二人は、別の場所でぺったんぺったんだ。ちなみに真桜が打つ役で、沙和が水差しね。 華琳 「ねぇ博光? 春蘭と代わり、餅を混ぜなさい?」 中井出「殴られそうだからヤだ」 華琳 「……言い方を変えるわ。殴られなさい」 中井出「あれぇ!? 餅つきの話はどこへ!?」  なにやら理不尽を感じましたが、構いません。  受けて立つぜ〜〜〜っと臼の隣に座り、なにやらマジで俺目掛けて杵を振り下ろす華琳へと、臼を構えてヴェトゥァーーーンッ!!! 中井出「ウオッ!? ちょ、華琳さん!? 今結構マジで───」 華琳 「ただ突くだけだなんてつまらないじゃない。     私が振るうから、貴方が受けなさい?」 中井出「なにぃ!? な、なんと斬新な餅つき! OK受けて立つぜ華琳!     さぁ来いぃいいいいいっ!!」  振るわれる杵! それを、臼に入った餅に当たるように構え、ベトンバトンと受ける! 中井出「ふはははは!! どぉーーーしたぁーーーカカロットォオーーーーーーーーッ!!     そんな程度じゃない筈だぁーーーーーっ!!!」 華琳 「このっ! ちょこまかと臼を構えて……!」 中井出「構えなきゃ当たるんですけど!?」  いやでも楽しい! これ楽しいよ!  相手の動きを予測して臼を構えることが、こうまで面白いとは!  えーとなんだろ! キャッチボールをアグレッシヴチックにしたような!?  ほらアレですよ! ボールじゃなくてバットをグローブで受け止めてるみたいなさ! 華琳 「───《ギラリ!》」 中井出「地面スレスレは反則ね!? 餅落ちるでしょ!?」 華琳 「……チッ」 中井出「舌打ちしたぁあーーーーーーっ!!!?     ちょっ……ねぇ!? これ餅つきだよね!? 新たな餅つき企画だよね!?     なんで姿勢を低くしたり殺気込めたりするの!? ねぇ!!     って春蘭さん!? なんで加勢しますとか言って大剣抜くの!?     秋蘭さん!? 避けようと考えてた方向に弓構えるのやめません!?     いやちょっ、やめてよ! なんかへんだよこれ! 剣と弓関係ないよね!?     餅つきに関係な───いやっ、やめっ……ヴァーーーーッ!!」  ……。 ───……。  その後私は担任の鬼山にボコボコにされた。 中井出「ちくしょ〜〜……」  鬼山ってのはまあウソですが。  さ、餅つきも終わって雑煮も食ったところで、次は……凧上げ! 中井出「よっしゃいくぜナギー! そぉりゃあーーーーっ!!」 ナギー『おおーーーっ!! これはえきさいてぃんぐじゃのーーーーっ!!!』  凧に相方をくくりつけて空を飛ぶのが課題。  僕はナギーを選んで、凧にくくりつけて空に飛ばした。  すると、万能文化猫娘のおじいさんが如く、エキサイティングじゃのーと叫んでいた。  で、一方のラカン&キティペア。 ラカン「奥義! 風乗りラカン!!《ブワァアッ!!》」  凧を背負ったラカン氏が風に乗り、HAHAHAHAHAと笑いながら空へと飛んでいった。……いや、あの体格、あの重量で空飛ぶって……どれだけ超人なんだあの人は。 エヴァ「この場合、私が凧に乗るだろ、普通……」  凧の糸を手に持ち、ジト目で空を仰ぐキティはぐったりマイハートです。  僕はそんな彼女の傍まで歩き、 中井出「そんな時は凧糸をこうして───《ブチリ》」 ラカン「ハハハハハ───ハ? お、おぉっ!? おぉおーーーーーーー───……」 エヴァ「───……おー、飛んでいった飛んでいった」 中井出「さすが風乗りラカン……!     奥義ってだけあって、支えの糸をも軽々切っていったぜ……!」 エヴァ「……お前らのその逞しさは、時々見習うべきだって本気で思わせるよ」 中井出「ところで転がると軽がるって似てるよね。ほら、文字的に」 エヴァ「どーでもいーよそんなこと。それよりお前の凧の先が大変なことになってるぞ」 中井出「む? ───おお!     ナギーったらそんなに回転して! そんなに気に入ったのか!?」 ナギー『たたたたたこの設計問題なのじゃじゃじゃじゃぁああーーーーーっ!!     目が、目が回るのじゃーーーーーーーっ!!』 中井出「大丈夫! プロのスケート選手はどれだけ回っても酔わず、平衡感覚を失わん!     今こそその感覚を開花させる時ぞ! 大丈夫! キミなら出来る!」 ナギー『わ、解ったのじゃー!!』 エヴァ「……かわいそうなくらい健気だな、おい」 中井出「フッ……ツレがいいからな」 エヴァ「そのツレの所為であれだけ回転してるんだろーが」  赤色の凧がぎゅるぎゅる回る。  その姿はまるで赤きサイクロン! 中井出「そこだ! そこで素晴らしい勝利(ボリショイ・パビエーダ)!!     さあナギーもご一緒に! ボリショ〜イ! パビエ〜ィダッ!!」 ナギー『ボ、ボボボボボ……ボボボボ……《ガクッ》』 中井出「気絶したぁあーーーーーーーっ!!!」  ナギーが気絶しました。  うん……脳がシェイクされすぎたんだろうなぁ……。 ───……。  さあ次! 中井出「次はいろはかるた!     貴様らにはこの8枚をめぐって、血で血を洗うバトルをしてもらう!」 総員 『この人数で!?』 中井出「うむ! そのとーり! 大丈夫大丈夫、普通より大きくしてあるから見やすいし、     手も伸ばしやすいから簡単に取れるよ! ……物理的には」 藍田 「サ、サー! それは手に入れるためならばどんな手も使っていいといわれる、     原中名物威炉覇渦流蛇(いろはかるた)でありますか!?」 中井出「うむ! 故に怪我したく無い者は見学しておくこと!     さあ! 早速読み上げよう! まずは───」 彰利 「ちょっと待て準備くらいさせなさいてめぇ!」 中井出「準備……所詮、スポーツマンじゃな」 彰利 「う、うるせー!! わざわざ渋川老の真似すんじゃねーざます!」 悠介 『…………《ドキドキ……》』 彰利 「あの……僕の親友? 正月の遊びだからってそんな震えて待たんでも……。     え? 取る気満々? 全力ですか? つーかあの、なんか解放してません?     白くない? なんか白いよねキミ。白解放中? え? 本気なの? かるたで?」  約一名、オーダーまで解放して待機しているお方が居ます。  光化してて眩しいったらない。  ここにネギが入ればいい勝負になったかもしれないんだが。 中井出「ではいざ! ───『は』なより団子」 悠介 『うぉしゃァアアアッ!!!』  開始直後に晦が地を蹴る!  光の速度で一瞬にしてかるたの傍までの距離を詰めるが─── 彰利 「ウハハハハ遅いわ! 貴様がかるたを取れる運命は既に破壊済みよッッ!!」 悠介 『なっ……《スカッ》……うなっ!? かるたが滑って拾えない!?』  その手がかるたに触れるのだが、つるりと滑って手にすることが出来ない! 彰利 「そしてこの隙にアタイが頂くゥウウ!!     愚かモンがァアア! 原中大原則ひとぉーーーつ!!     原中生たるもの、勝負ごとには一切手を抜かぬこと!     かるたを手にするのはこのっ! 弦月彰利だッ!ーーーーッ!!」 悠介 『どういう叫びだそれっ! だったら───紅蓮に染まれ! ラグナロク!!』 彰利 「ゲェーーーーッ!!?」  否である。  拾えぬのならば、自分にとって都合の良い世界を創れとばかりに世界を創造。  そうして運命破壊を捻じ曲げてかるたを拾おうと─── 声  「斬魔剣弐の太刀ぇあ!! 今日はお嬢様と初チュースペシャルゥッッ!!」   ザフィィインッ!!! 悠介 『ぐあっ!? あ、うぉあぁあああっ!!?』  ───した瞬間、伸ばした腕が剣閃によって斬り飛ばされる。  光化をしているっていうのにばっつりと斬ってみせるソレはドゴォンッ! ラカン「遊びと聞いちゃ黙ってはいられねぇな。俺も噛ませてもらうぜ」《ムキーン♪》  桃白白よろしく、大剣に乗って空の彼方から降ってきた彼によって放たれたものだった。 悠介 『ぐっは……厄介なのが来た……!』 彰利 『オホホホホ! 貴様が白ならば、アタイはそれを塗り潰す黒になろう!     耀天食らう影闇の漆黒(ダークネスフロント)!! 悠介の白を完全に飲み込んでしまえい!!』 悠介 『なっ!? うわ馬鹿っ! ここでそれ使ったらもうかるたが見えな───』 彰利 『アタイは見える! だから大丈夫!!』  言うや、彰利の影から全てを黒く染める闇が発生!!  景色一面を完全に飲み込むと、もはや何処に誰が居るのかも解らなくなり─── 声  「ぬぅううううあぁああああっ!!!     奥義!! 気合い・結界破り!!」   ごがぁっしゃぁあああああんっ!!!  …………。  ……ア、見エルヨウニナッタヤ。 悠介 『……うぉおおおおおおおおおい!!?』 彰利 『ちょっとキミ!? 創造世界も黒の空間も気合いで破壊するとか……何者!?』 ラカン「この世の全ては気合いでなんとかなる」《どーーーん!!》 二人 『ならねぇよ!!』  さて。バケモン三人がギャースカ騒ぐ中、視界の端では原中の猛者どもが血で血を洗う争いをしているわけですが───もうね、かるたぐちゃぐちゃのボロボロ。  そりゃああそこまで本気出してバトればああなるよ。  別に強度強くした〜とか、そんなサービスしてないし。 中井出「……次、行こうか」  エコナ平原が廃土となる前に、かるた終了のお知らせを入れることにした。 ───……。  ……懲りずに次! 中井出「では次! 双六! ……は素っ飛ばして、独楽回しだね!」 エヴァ「あっちで男女数十人がボロボロになって気絶してるが、いいのか?」 中井出「遊びが始まれば無理矢理にでも起きるって。     さて、コマ……独楽と書きますが、今回使用してもらうのはこれ。     これを回して、ぶつけ合ってもらい、最後まで残ってた者の勝ち」 まき絵「? これなに?」 中井出「ベーゴマです。     十色用意したから、十人ずつでバトってもらい、勝ち進んでもらいましょう」  創造。  時間はかけずにパッパと用意して、競ってもらうことにした。 中井出「で、あとすることっていったらなんだっけ?」 エヴァ「……初詣とかか?」 中井出「グムー、神社なんてものはこの世界には…………ジャポンに行けばあるか」  言いつつ、チラリと既に始まっているベーゴマ大会を覗けば、 彰利 「行けっ! キミに決めた!《バヂィンッ!》ゲェエエエーーーーーッ!!!」 夜華 「一瞬で弾かれているではないか! なにをしている彰衛門!!」 彰利 「馬鹿なッッ! こんなッ!」 悠介 「いい! 次は俺が行く!」  ……なんかいつの間にか仲間内対抗みたいなものになっていた。  こう……ねぇ? 戦争イベントの時みたいに各国対抗風に。 龍宮 「私に苦手な距離はない───いけっ!《バヂィンッ》あ」 古菲 「あっさり弾かれたアルヨ!?」 まき絵「じゃあ次は私が出るよーっ! 長い紐を操るのは得意だよ〜♪」 春蘭 「《バヂィンッ!》ぬあっ!? い、意外に強い……!」 秋蘭 「姉者、恐らく結びが甘いのだ。次は私が行こう」 才人 「これでぇ───決まりだぁっ!!《バヂィンッ!》うあっ!?」 悠介 「……俺の勝ち、だな」 彰利 「キョホホホホ!! 宅のモミアゲ将軍は日本の遊びにゃ強ぇえぜ!?     さああ次は誰だ! まとめてブッコロがしてヤンヨ!」 悠介 「あっさり負けたヤツが威張るな」 彰利 「グ、グウムッ……!」  そんな調子で大乱闘。  べつに拳で殴り合ってるわけでもないんだが、意外や意外、みんなムキになって燥いでおるわ。 閏璃 「フフフ、昂風街の遊び人と言われたこの俺に勝てるかな……?」 藍田 「提督側についた俺たちゃちょっと手強いぜ?」 岡田 「さあ、どっからでもこぉーーーい!」  視線をずらせば、我が猫の里側として立つ閏璃と藍田と岡田。  既に傭兵業はやめて、こちら側に専念するようになって以来、藍田くんと岡田くんは随分と姑息になっている。  ……ちなみにナギーやシード、キティや美羽、ドリアードらは、ベーゴマの結び方を悠黄奈さんに教わっているところだったりする。  さて、対するは……傭兵・北郷一刀と凪。 一刀 「お前らって無駄に元気だよな……」 桃香 「えへへ〜、ご主人様? 一番手は私が行くね?」 華琳 「待ちなさい桃香。私から出るわ」 雪蓮 「いいわよ、私が全勝してあげるから隅っこで遊んでて」 三人娘『……………』 閏璃 「…………お前、相変わらず苦労してるなぁ……」 藍田 「俺、モテ男の末路を見た気分だよ……」 岡田 「何処に行っても取り合いか……」 一刀 「……はぁ……」  それはそれは重苦しい溜め息でしたとさ。 一刀 「三人とも、自分の国のことはいいのか……?     俺は凪と傭兵やってるから自由だけど」 雪蓮 「いーのいーの、うちは小蓮が上手いから、勝つだろうし」 桃香 「こっちだって蒲公英ちゃんが強いよー?」 華琳 「流琉に任せてきたわ。いつもあんな大きなものを回しているのだから、     あれしきを勝てないわけがないもの」 一刀 「………」 藍田 「よっ! モテ男!」 一刀 「いや……本気で頼む……それ言わないでくれ……」 凪  「……隊長。ところでこれはどう結べば?」 雪蓮 「あ、そうそう。それ私も訊こうとしてたんだけど」 桃香 「あ、私も」 華琳 「これは天の遊びなのよね? 解りやすく細かに説明しなさい?」 一刀 「…………泣いていい?」 閏璃 「存分にお泣きめされい」  モテる男は辛いっていうけど、あの人数に好かれたら身が持たんでしょうに。  さて、そんなこんなで予想外の盛り上がりを見せる、エコナ平原でのベーゴマバトル。  ベーゴマを独楽って言っていいのか疑問が残るところだが、細かいことは気にしません。  せっかくだし僕も混ざることにして、悠黄奈さんと一緒にドリアードたちに結び方を教えていった。 ───……。  ズバッ! ビシッ! コオォオオオオ……シャキィーーーン!!! 中井出「奥! 義! 魔王旋風回転旋回竜巻輪廻烈風輪!!」  ベーゴマをッ!! 投げるッッ!!  全ての能力を解放し、そう、全力でッッ!!  するとあまりの回転速度にベーゴマが宙に浮き、風を巻き込み、やがて竜巻となり、周りに居た皆様を巻き込み、しかも無駄に様々な能力を混ぜたためか様々な属性や魔法まで発動!!  景色を飲み込み人を飲み込み、 中井出「おっ、おわぁああーーーーーーーーーっ!!!!」  ……ついには、エコナ平原は廃土と化した。 ───……。  ……その後私は仲間である皆様にボコボコにされた。 中井出「ちくしょ〜〜〜……」 エヴァ「ちくしょうじゃないっ! ベーゴマで天地崩壊させる気かお前はっ!」 中井出「グフェフェフェフェこの俺を誰だと思っていやがる。     知るひとぞ知る、魔王と呼ばれたただの人間ぞ?     ベーゴマで天地崩壊など、武具があれば造作もないこと《パゴォ!》マッシュ!」  殴られました。マッシュってなんだろう。 中井出「そんなわけでハイ、やることなくなっちゃったけど……どうしよ」 エヴァ「やることなら腐るほどあるだろーが。     正月の遊びじゃなくても、この世界は退屈じゃない。     私は調合したいアイテムがあるから、これで引かせてもらうよ」 彰利 「なに!? そんなことは神が許さんぞ!」 エヴァ「だったら神とも戦うまでだ」 彰利 「よし行け悠介」 悠介 「神です」《どーーーん!》 エヴァ「お前はころころと種族が変わりすぎだっ! なんなんだお前はっ!!」 悠介 「意思体だからなー、こればっかりは経験に訊いてくれ。     神魔霊竜、どんな種族にも変われるぞ。人間のみの状態は無理だが」 彰利 「それが悔やまれるんだよね〜ィェ……烈風疾風奥義って人間じゃなきゃ使えんし」 悠介 「俺はそれよりも人器を覚えたいけどな」 彰利 「ああそら無理だわ」  早速正月ムードが消えていってます。  うん……正直、正月ってやることやったらただの休みだよね。 中井出「じゃ、ここいらで解散しますか。バトるんなら止めはせぬ!     えーとあれだ! 私闘は面白いのでじゃんじゃんやれ!」 彰利 「それ、狂乱家族日記の家訓だっけ?」 中井出「いや、俺もよく解らない。ともかくどっかの外史に到着するまでは───お?」  と、少し違和感。  外……時空の渦を漂う体がなにかを探知したようで……おお! 中井出「皆様! 次の外史に到着しますぞ!」 彰利 「なんと!? 次は何処かね!?」 中井出「や、それは降りてみなければ解らぬわ。だがしかしきっと楽しい世界に違いねー」 彰利 「うしゃー! ほいじゃあ面白そげな世界だったらアタイを召喚するんじゃぜ!?     新鮮な刺激が欲しいのだYO!」 中井出「うむ! ではちと外の様子を見てきます!」 彰利 「オウヨ!」  意識体の自分を体に戻す。  そうすることで、見ている景色は即座に時空の渦の景色へ。  様々な色を混ぜたうねりに流されるまま、一体何時間こうしているのか。  ようやく体が引っ張り込まれる世界に辿り着いた僕が見たものは───! 中井出「………」  やたらと広い世界でした。  とりあえず人は見当たらん。  町とも呼べんしなんか全体的に緑だし。  道路もなければアスファルトのアの字もない。  とても静か…………なんだけど、そこに森林があったりするわけでもない。  ただただ広い景色が続き、僕はそんな景色の一つの孤島に立ち、風を浴びていた。 中井出「…………お、おおっ、とりあえず彰利を召喚せねば!」  面白い場所かどうかも確認出来てないわけですが、だってさ、この景色ってばさ。  うむ、考えるのは後! つーか彰利が見れば絶対に叫ぶ! そんなわけで召喚!   マキィイイイン……!! 彰利 「……我ハ外道アキトシ……今後トモ、ヨロシク……」  召喚するや、女神転生風に喋る彰利が居た。  で、興奮した様子で辺りを見渡すと、特に何もない事実に興奮は冷めてゆき、僕を見てから「あれ? 面白い世界は?」と訊ねてきました。 中井出「いやいや、よーく見るのです。この世界、どっかで見たことない?」 彰利 「そげなこと言われてもねぇ……見事になにも無い場所じゃないかね。     あるとすれば、なんか緑っぽい海と孤島ばっかりで───…………あれ?」  あ、なんか気づいたっぽい。 彰利 「……あのー、提督YO?」 中井出「なんだYO」 彰利 「こ、こここっこここここここってもしかして……」  彰利がカタカタと震えながら喋る。  ……そんな中、遠くの空を結構な速度で飛行する物体を確認した。 中井出「ぬうあれは!?」 彰利 「ピエロアイーーーン!!《グミミ……!》」 中井出「キモッ! いつ見てもキモいなピエロアイーン!」 彰利 「眼球伸ばしてますからね! つーかキミもやってたでしょうが!」 中井出「お前みたい本気で眼球なんて伸ばしてねぇよ!!」  とはいえ僕もイーグルアイで観察するわけだが……あ、あらやだ。  あのツルッと輝く素敵な頭と、ぼっちゃんカットと、触覚が生えた緑色と、その後ろを飛ぶトゲトゲ頭のピンクっぽい彼は───!! 中井出&彰利『ドッ……ドドリアさんだぁあーーーーっ!!!』  え!? あ、えぇ!? ここドラゴンボールの世界!?  しかもいきなりナメック星!? デンデ救出絵巻でカルゴ死亡中!? 彰利 「す、すげぇ! 子供の頃の夢が叶った気分だ!     生ドドリアだよ生ドドリア! も、もっと近くで見るべーよ!     ねっ!? はいっ! ねっ!?     つーかもう行く! カカロットの出番はないぜーーーっ!!《ギャオッ!!》」 中井出「ああっ! お待ちなさい!!」  こちらの言葉も聞かず、ドドリアさんを追って空を飛んでゆく彰利。  僕は手を伸ばした状態で止まるしかなく─── 中井出「……晦悠介を召喚」  どうせなら三人で行こうと、晦を召喚。  驚く彼とともにドドリアさんを追うことにしました。  ジークフリードを宙に寝かせて、その上に乗るや早速各馬一斉にスタート! 中井出「待っててねドドリアさん! 今追いつくからね!」 悠介 「なんで彰利じゃなくドドリア追うんだよ……」 中井出「原中生徒はみぃんなドドリアさんが大好きだからさ」 悠介 「あー……言われてみれば、一時期ドドリアドドリアうるさかったなお前ら」  一時期はドナルドよりも好きだったくらいです。最強。  と、それはそれでいいんだが…… 中井出「ただねぇ……この世界で生きていけるかが僕は不安です」 悠介 「……珍しく弱気だな。どうしてって訊いていいか?」 中井出「失礼な。僕は常に弱気よ。───あー、ほら。フリーザ様居るだろ?     彼と対峙することになったら勝てるかどうか」 悠介 「初期の姿で53万だったよな。変身後は?」 中井出「最終形態50%状態で6000万。フルパワーで1億2000万らしい」 悠介 「ぐほぁ!? かっ……勝てるのか!? それって!」 中井出「上限ブレイクはとっくに完了してるから、     上げようと思えばいくらでもレベルは上がるもののー……グムー。     ともかくようはあれだ! この先がどうなろうと楽しんだモン勝ちってことで!」 悠介 「無駄に逞しいなオイ……いや、付き合うけどさ」 中井出「うむよし! ならば早速ドドリアさんにサイン貰いに行こう!」 悠介 「……早速頭が痛くなってきたんだが。霊章に戻っていいか?」 中井出「だめじゃ」 悠介 「そうだろうと思ったよ……!」  空を飛ぶ! 街が飛ぶ! 雲を突き抜け星になる!  さあ、スーパーシティが如く空を飛び、クリリンと悟飯とデンデを追うドドリアさんを追尾する!  いやむしろ追いついて追い抜いてサイン貰うくらいの勢いで!  スピードUPした所為で風がやかましいが、かまわーん! 悠介 「なぁー! もし、というか絶対にそうなるだろうけど、     サイン貰えなかったらどうする気だー!?」 中井出「せめて“うわぁー! フリーザさまー!”だけは聞く!」 悠介 「殺すのかよ! あ、いや……も、もういい、ツッコむだけ疲れそうだ……!」 中井出「グフフそれが狙いよ」 悠介 「帰せぇ! 今すぐ俺を霊章に戻せぇっ!!」  さあ、先に飛んだ彰利が見えてきた!  ドドリアさんの後姿も確認した!  これより始まるジャーゴンボールストーリー!  我が手の内に御身と力と栄えあり! 悠介 「フリーザに勝てなかったらとか考えないのかー!?」 中井出「そんなこと気にしていたら楽しめぬわ! 大丈夫!     確か最長老様が潜在能力引き出す力持ってたから!     その力で、僕の中の潜在能力を引き出してもらうんだ!」 悠介 「…………潜在能力が一切無いとか言われそうだな」 中井出「うるさいよもう!!」 悠介 「まあ……提督の中のみんなの潜在能力が引き出されれば、     そのまま提督の力になるわけだし……大丈夫、なのか?」  細かいことは気にせずGO!  さあ追いついた! こ、ここここれからどうやってサインのこと切り出そうか!?  あ、あああまずは色紙だよね! ウン! えーとえーと クリリン「太陽拳!!」   ゴシャァアーーーン!!! ドドリア&三人『ギャアアアーーーーーッ!!!』  色紙を用意してたら原作通りの太陽拳に瞳をやられました。  叫び声からして彰利と晦もらしく、僕らはドドリアさんとともに、仲良く目を押さえてもがき苦しんだのです。 悠介 「くっは……! すっかり忘れてた……! って、お、おい提督!?     見えないけど落ちてないか!?     なんかこう、落下時特有の緊張感を味わってるんだが!?」 中井出「へぇあぁああ〜〜〜〜……目がぁあ、目がぁあああ〜〜〜〜っ!!!」  ……その後。  僕らはジークフリードとともに海に沈み、しばらくようやく目が見えるようになった直後───空の上からドドリアさんの強力エネルギー波をくらうことになります。  目が慣れてきたばかりの僕らはまともにくらうしかなく、ようやく完全に見えるようになった頃には、ドドリアさんは既に帰った後であった。 中井出「おのれおのれぇえええ!! 絶対に許さんぞドドリアさんの野郎めぇーーっ!!」 悠介 「サイン貰うんじゃなかったのかよ! ……ドドリアさんの野郎!?」 中井出「血染めにして色紙に叩きつけてくれるわ! ドリ拓だドリ拓!!」 悠介 「なんか絵づら的に呪われそうだからやめろ!!     って彰利!? 彰利何処いったぁーーーーっ!!?     俺だけじゃ提督止められないからお前も───」 彰利 「オウヨ! 一緒に騒げばいいんじゃね!?」 悠介 「止める努力をしろ! 何処から沸いて出た!      原ソウル全開なのはいいけどここは止めような!?」 二人 『みなごろしだぁーーーーーーっ!!』 悠介 「だぁああっ!! 人の話を聞けぇええーーーーーーっ!!」  うん……なんか踏んだり蹴ったりだけど───やっぱこれでしょう。  俺達の戦いは───始まったばかりだ!  そんなノリでGO!  いつか辿り着くかもしれん忘れられた者が辿り着く場所……そこに着くまで!  否! そこに着いても永遠に!  いつまでもどこまでも馬鹿やっていこーぜ!?  俺達全員が居れば、どんな壁も豆腐が如く!  乗り越えるどころか食らってやるわグフェフェファハハハハ!!!
【DDD05ボツ】 【ケース11:提督猫/何が大変って、タイトル考えるのが一番大変】  ゴンゴギャガギャゴギャジャギャジョギャゴギィンッ!!! 彰   「うぅううおおおおおおおおおおおおっ!!!」 サハギン『ギョギョキヒエェエエーーーーーーッ!!!』  ……戻ってみると、彰はまだサハギンと戦っておりました。  しかし先ほどまでとは大きく変わったところがあり、それは……戦いに対して真っ直ぐになっていると……そんなところでした。  先ほどまでの退け腰じゃない……あれは相手を敵として見ている目だッッ!!  ていうかラグの斬撃を身に受けても平気なサハギンってどうなの?  気になったのでラグに向けて調べるを発動。  すると……  長剣:皇竜剣ラグナロク───こうりゅうけんらぐなろく  攻撃力:1374  斬れ味ゲージ ──────..            龍属性:80  かつてモミアゲが美麗な男が振るっていた剣。  空界の様々な生物素材と、フェルダールの様々な生物素材とが組み合わさった武器。  だが、精霊の生成にその力の大半を使ってしまい、今ではほぼナマクラの剣。  モンハンで例えるなら斬れ味はほぼレッドゲージである。  そのくせ素材が今では手に入らないものばかりなため、無駄にレア度が高い。  ハンタータイプ:剣士  レア度10 会心率:−100%  スロット:−−−  ……との詳細が。  おお、何故か無駄にモンハンチック。しっかり斬れ味ゲージまで……うぅわひでっ!  なんだいこの斬れ味の悪さ! 攻撃力なんて“意味無し”じゃないか!  龍属性も80ぽっちだし……ゲッ! 会心率がマイナス100%!?  すげぇ……確実に攻撃力マイナスじゃないか……!  そりゃあ苦戦するわけだね。  まずはラグナロクを鍛えるところから始めたほうがよさそうだちょー。 提督猫『フルウノングン』  ガガォンッ! ドチュドチュゥンッ!! サハギン『ギャーーーーッ!!』 彰   「! 隙ありゃぁああっ!!」  サハギンの足を、佐知子さんの銃フルウノングンで撃ち抜く。  その途端、彰がラグナロクを構え、頭から股までを一気に斬り裂く! ───なんてことが出来るはずもなく、ゴパキャアと何かを砕く音がして、サハギンが絶命した。  ……わあ、斬れもしない。頭蓋骨破壊だよ……いや、それはそれでスゲーけどさ。 彰  「ふっは……! は、はぁっ、はぁ…………はぁ〜〜ぁぁぁあ……!」  倒し、塵になるのを見送ると、彰は深い溜め息を吐いた。  きっと彼のバックパックにはサハギン素材が盛り込まれていることでしょう。  そんな彼に「やあ」と声をかけ、にこやかに参上する……こんにちは、中井出博光です。 彰  「猫か……今サハギンの足撃ったの、お前?」 提督猫『お、俺見たんだ……! ミア助が銃を構えて、サハギンを撃つのを!』 ミア 「なんでわたしがやったみたいなことになってるの!?     銃なんて撃ってないよわたし!」 提督猫『ハイ冗談です』  しかしまあアレです。  予想通りといいますか、比べるなってのは当然なんすけど……フツーだ。  見方が変わったなぁ俺も……鍛錬続けで生きてきたわけじゃないんだから、彰の動きが鈍いと思うのもおかしなことじゃないとはいえ……これはいかん。  自分の周りが強いやつらばっかりだったからなのかなぁ、彰の動きがゆったりに見えて仕方もなし。こんな見方はとても嫌なのですが。  ……思い出しなさい博光よ。恋姫世界でも、僕はのんびりと生きてきたじゃないか。  それを今更、彰利の転生体だからって速くて当然とか思うのは無礼ってもんだ。  だから〜……えーと。 提督猫『なぁ彰よ。貴様、強くなりたい?』 彰  「強く? やー……よく解んね。     そりゃ負けるのは悔しいけどさ、現実味がないっつーか。     べつに強くなっても、帰った先に勝ちたい相手が居るわけでもねーし……     冒険はロマンだっていっても、どーにもなぁ」 提督猫『ふむ』  結論。彰利と彰では当然、生きた歴史に違いがありすぎる。  それは時間の長さだったり、経験だったり……主観が入るが、なにより原中を生きていない。常識破壊を常としたあの頃の騒がしさを知らんのなら、このどこかノリが良さそうで一歩足りない性格も解るような解らんような。  ……本人にそれを言ったりはしないけどね。だって彰は彰だもの。  ただし、提案と自由意志の尊重はするよ? 俺の独断と偏見と実力行使で。 提督猫『彰。そしてカイよ。貴様らに刺激を持たせてみたいのだが、     受け取って見る気、ある?』 彰  「刺激? なんだそりゃ」 ラグ 『刺激……?』  二人の困惑にウムスと頷き、そういうお年頃なのか僕をヒョイと抱き上げるギャルドに抱かれるまま、説明を続ける。  え? 逃げないのか? フフフ、明命に抱きつかれ慣れたこの博光、もはや抱き上げられることなど……ごめんなさいやっぱり人相手だと震えます。 提督猫『今僕、精霊融合を目的とした行動を開始したところなのさ。     精霊の聖堂に行って、聖域からマナをかっさらう。そんな行動。     僕の中の精霊さんと武具の中の精霊さんとを……一緒か?     まあともかく、物理的に融合させるってことを思いつきまして。     武具融合させたんなら融合できてないのかーって話は、     誤解のないように言っておきたいが、武器と武器を融合させるのと、     意思を具現化させてから意思同士を融合させるのとはまた違うのです。     武具融合させたなら同じだーってのなら、     猛者どもの意思が個々として存在するわけないもの』 彰  「や、いちいちワケ解らんからもっと噛み砕け」 提督猫『つまり、貴様の行動が地界に帰ることならば、     僕の行動は精霊の聖堂を巡ること〜って、それだけのこと。     で、その過程で思いついたことなんだけどね?     まあそのなんてゆゥかあのー、     変に影響されるとアレだからーとか言っといてナンだけど、     彰、カイ、貴様ら……前世と持ち主の意思と、リンクしてみない?』  …………。 彰&ラグ『へ?』  返事はとってもシンプルでした。  たった一言です。マアカンタン。 提督猫『彰なら知ってると思うが、まあアレだ、システムイド』 彰  「受け取ろう!!」  一瞬にして釣れました。  やばい、こいつばかかもしれない。もちろん嬉しいことだけど。 提督猫『カイー、貴様はどうするー?』 ラグ 『持ち主……それは晦悠介のことですね?     樹脂の中で眠っている時に、ずっと彼の存在を感じていました。     それもいつしか消えてしまいましたが、     その持ち主の意思を受け取れるというのなら……     僕はもう一度、あの暖かさを感じたい』 提督猫『ほいOK! んじゃあ……彰、貴様にはこの闇の腕輪を。     カイ、貴様にはこの光の腕輪を。それぞれ腕に嵌めてごらんなさい』 彰  「?」  首を傾げながらも、受け取った腕輪をガギィイン!と嵌める彰。  カイも人型に戻ると腕輪を受け取り、ジャギィン!と嵌めた。  すると…… ミア 「……? どうなるの? 猫さん」 提督猫『彰にゃあ黒と死神能力を、カイには白と創造能力強化を。     代わりに僕の中からそういった能力が無くなるけど、まあいいじゃない?     何故ならば───』 彰  「《キィイイイ…………ィイン……》…………あー。     まあその、なんだろね。スゲーな意思って。こんなことも出来るんか」 カイ 『いやいや驚いたな。って、おほんっ! ん、んんっ!     こ、これは困ったなぁ……気をつけないと口調がぶっきらぼうに……。     で、えーと……うん。とりあえずは……』 彰  「オウヨ」  彰とカイが向き合う。  で、彰が右拳を、カイが左拳を互いに向けて繰り出すと、それがゴパァンと音を立ててぶつかり合う。 カイ 『無事に転生出来たようでなによりだよ、腐れ縁』 彰  「クォックォックォッ、貴様も無事に製造されたようじゃねーの、腐れ縁」  そうです。  腕輪をつけた瞬間、様々な経験と記憶とがあくまで情報として彼らに流れます。  それは脳に一気に負担をかけるようなものじゃなく、必要な情報だけを適度に教えてくれる引き出しみてーなものです。  だから急に流れる情報量に脳がやられる〜なんてことは無し。  それを受け取った上で、互いが互いにとってどれだけ大切な存在かを認識、確認することで、彼らはどこぞの悪ガキみたいにニカッと笑って拳を合わせていた。  そして僕のことを見下ろすと、二人揃って敬礼をした。 彰  「……よ。久しぶり、“提督”」 カイ 『お前の中にある意思としての挨拶は済ませたんだろうけど、     今の俺の───ラグに篭った意思としての挨拶はまだだからな。     まあ……草原での喧嘩の記憶も、転生した彰利から引き出せたし……うん。     久しぶりだ、提督。随分、ひどいものを背負わせた』  ……アレ? ちょっと待って? 提督猫『あれ? 今……あれ?』 彰  「クォックォックォッ、驚いとる驚いとる」 カイ 『無理もないだろ。って、あー、つまりまああれだ、提督。     今こうして浮き上がってる俺達は、ヒロラインから出たあとの俺達であって、     提督の武具に融合されたほうの意思じゃないってことだよ』 提督猫『なにを言っとるんだこの男は……』 カイ 『いや説明してたんだが!? 何故ここで呆れられる!?』 提督猫『お、おおお……その反応、よもや貴様はオボベバーニョさん……!?』 カイ 『誰だよ』 彰  「よろしくオボベバーニョ!」 カイ 『お前もなんでもかんでもノってくるな! このたわけ!!』 彰  「たわっ……!?」  ……なんか、いろいろこんがらがってる。  えーとつまり? 今浮上しているお二方は……ねホギアン? これってどうなってるの?  ……え? カイの言葉通り? や、それが解らんから貴様に訊ねてるんであってね? ミア 「えと。つまり今のカイくんや彰くんは、元の二人じゃないってこと……なの?」 彰  「フッ……違うな」 カイ 『俺達は腕輪を嵌めることで、     この二人の意思を内側から侵食することに成功した自由意志……』 彰  「そう! 腕輪の中にあった情報を元に、自力で強引に浮上したかつての記憶!     その名を一言で例えるのならば原ソウル!!」 ミア 「は……はら……そ……?」 カイ 『そうだ。常識を破壊することを常とし、     その意思が微弱ならば微弱なりに長い年月をかけて本体を侵食する。     ククク、長い年月をかけて物事を乗り越えたのは、     提督……あんただけじゃないんだ』 提督猫『なに!? 貴様何故それを!』 彰  「や、だって渡された腕輪にその情報があったし」 提督猫『それもそうだね』  世界は平和だった。 提督猫『じゃあ行こう』 彰  「俺達の旅は───」 カイ 『始まったばかりだ───!!』  僕らは駆け出した。  また再び、この三人から始めるために───! ミア 「ってちょっと待ってよ!」  そしてあっさり止められた。 彰  「なんじゃいおどりゃあ! ここで邪魔とかねーべよギャルド!」 ミア 「ミアだよ! それより彰くん、ちゃんと説明してくれなきゃわかんないよ!」 彰  「なに言ってるのちゃんと説明したでしょ!?」 提督猫『ところで貴様ら、彰とカイの意思とかってちゃんと大丈夫なの?』 カイ 『や、むしろ記憶を受け取っていろいろ理解したってだけで、     俺達はむしろ───あ、こほんっ! ぼ、僕らはそのままですよ』 提督猫『……わあ』  モノスゲー違和感だった。  でもそうか、いろいろとこんがらがることはあっても、記憶はきちんと浮上させることが出来たと。 彰  「んーと……ほいっ《バサァッ!》おおっ!     おーしゃおーしゃ! ちゃんと黒衣召喚出来るわ!     やっぱこれができねーとアタイって感じがしねィェーーーッ!!』 カイ 『《バサァッ!》……ん、よし。こっちも白衣召喚出来るな。     創造も……ハトが出ます《ポムッ》…………よしっ! 出来るっ!     じゃあ───彰利、じゃなかった、彰』 彰  『オウヨ悠介! じゃなかった、カイ』  モノスゲー違和感なのは、彼らものようでした。  そりゃそうだ、記憶や経験に関しては、彰ボーイたちのものよりも彰利たちのものの方が濃すぎるわけだし。 カイ 『───……神々の力、解放……!』 彰  『お目覚めなさいレヴァルグリード!』  で、いきなりなにをするかと思えば……二人とも、なにやらとんでもないことを口走ってらっしゃる!  なに!? 何が起きようとしてるの!? ……あ、え? ドリアード? うん、うん……エ? 神々の力とレヴァルグリードの力を解放して? その経験を僕の中に取り込む? なんだってそんなことになってんの!?  などと霊章内のドリアードと話していると、マジで力を解放した……というか解放出来たらしい二人が、即座に腕輪を外して僕に投げてくる。  僕はそれを 提督猫『情け無用で残虐非道で少女の涙を踏みにじる男! スパイダーマッ!!』  バッ!と屈むことで器用に避け《マゴシャア!!》 提督猫『ベンハァーーーッ!?』  ……たところに、顔面トーキックをされた。  猫だから、屈んでもあまり変わらんが。 カイ 『避けるなたわけ!!』 提督猫『フッ、馬鹿め。ものを投げつけられてわざわざ食らう馬鹿が何処に居る。     それとも貴様は食らうのか?     だったら今から特大元気玉を作るから、避けずに死……当たってみろ』 カイ 『“死”って言ったろ今! 絶対に“死”って言ったろ!!』 提督猫『うるせー! 腕輪外したんだから元のカイくんみたいに礼儀正しくいろタコ!     なんなんだこのタコ! 黙れタコ!』 カイ 『ちゅっ……注意しただけなのにこの言われよう!!』  大体急いだっていいことありませんよ?  善は急げなら、悪はのんびりドンと構えてりゃいいのだ。  でもとりあえず腕輪を拾って便利に収納。  すると───内側の方からOKサイン。意思体の晦と彰利が、記憶を継承、得た経験も吸収し、神々の力と皇竜王の力の解放の仕方を会得したとの報せが。  つーか……こんな簡単でいいのかよオイ。 提督猫『まあいいや。で……おや?』 カイ 『…………───ハッ!? あ、あれ? 僕はなにを……』 彰  「……なんか体がだりぃ……え? な、なにが起こった……?」 ミア 「……二人とも、覚えてないの?」  二人がハッとすると、感じていた力の波動がなりを潜める。  そうなると語調も元通りになり、二人はしきりに首を傾げていた。  しかしなにがあったかを全く覚えていないわけではないらしく……文字通りあれだ、いつか僕がやったように、内側から操られていたんだろう。で、自分はそれを自分の視線で、けれど自分の意思とは関係なく動く体の中で眺めていた、と。 カイ  『自分、なんだけど……自分じゃない、みたいな……』 彰   「カルネージハートが自分の視線で展開されてる気分だった……」 提督猫 『またシヴい喩えを……』 彰   「うおー……だりぃいい……」 カイ  『動きたくありませんね……これは辛いです……』 提督猫 『じゃあ行こう』 彰&カイ『話聞いてた!?』  そんなことは知りません。  まあアレだ、目的は軽いもんだし、さっさとパパーとやっちまやぁ終わる。  彰が“アタイYOアタイ!”ってリヴァイアさんに言ったところで、絶対に信じられんだろうから……まずはモンステウ(笑)をブチノメーション、ランクプレートのレベルを上げて城に入れるようになる。  そのついでで精霊の聖域からマナを吸収、ヒロラインを復活させつつ、空中庭園サーフティールへの道を地味に探すと。  どーせ上のやつらのことだ、今まで通りのやり方じゃあ上に上れなくしてあるだろうし。  普通に空を飛んで近づくことだって、恐らく出来なくなっているだろう。  なら道を探して普通に上る。  紀裡はもう死んじまってるだろうが、その子供が居るとするなら絶対に下への通路は存在する筈だ。なにせチャイルドエデンへの用事は腐るほどあるだろうからのォォォォ……グオッフォフォ……!! 提督猫『………』  かつての娘の死に目にも、結婚式にも立ち会えないなんて、親失格だねぇ。  まあ、その代わりは七草が果たしてくれただろうから……構わんさ。 提督猫『んじゃ、二人とも受け取れィ。疲れたら発動できなくなるから注意が必要だけど』  暗い話は無しさ。  僕はもう一度光と闇の腕輪を取り出して、二人にヒョヒョイと投げた。  二人はそれを受け取ると、一度顔を見合わせたあとに身に付けて…… 彰  「FUUUM……持ち主の体力が削られるって、困った腕輪よのゥォォオ」 カイ 『俺はまあ、昔の創造経験で慣れてる……が、カイ自体がそうじゃないみたいだ』  あっさりと彰利と晦に意識を乗っ取られた。 提督猫『貴様ら、相変わらず我が強いねぇ』 彰  「クォックォックォッ、大変頼もしいことにこの彰利様はサイキョーなのさ」 カイ 『イメージを塗り替えるのも、これで案外得意分野だからな。     基がラグな分、羅列の書き換えもお手の物だ。……武器としては下の下だが』 ミア 「…………むうっ」  それはスゲー。  スゲーけど、置いていかれっぱなしのギャルドが膨れてらっしゃる。 提督猫『んじゃあギャルドにはこれを』 ミア 「? なにこれ猫さん」  殴られた虫の木の傍で虫を拾い集め、旦那さんに渡すアイルーが如く、ゴニャッニャアゥとブツを差し出す。  ギャルドはソレ……腕輪を受け取ると、シゲシゲと様々な角度から見て、首を傾げた。 提督猫『うむ、先代(?)のマナの使徒の記憶と経験が込められた腕輪である。     このメンバーだといきなり強敵と戦うことになりそうだし、     それを身に付ければいろいろ湧きだす力もありましょう』 カイ 『……提督、そりゃなにか? 俺の所為でまた巨大生物と戦うとでも───』 提督猫『なに!? そう聞こえなかったと言うのか!?     しっかりと貴様の顔を嫌そうな顔で凝視してたというのに!』 カイ 『だから言っとんじゃあ!!     あからさまに人の顔をジロジロ見ながら言う言葉か今のが!』 彰  「悠介YOォ……あ、いやさ、カイYOォ……いい加減自覚しようぜ……?     誰の所為でベヒーモスに追われたと思っとるん……?」 提督猫『そうだこのクズめが。貴様の所為であの場で吸収できた筈の然のマナが吸収出来な     かったではないかこのクズが』 カイ 『おっ……俺自身が何をしたわけでもないのにこの言いぐさッ!!     ああもうお前らいい加減にしろ!     大体それを言うなら然のマナくらい、     提督の中のユグドラシルから腐るほど取れるだろうが!』 提督猫『馬鹿もん! この馬鹿! 馬鹿野郎!!』 カイ 『馬鹿って三回言われた!?』  ああもう解ってないよこの馬鹿は!  かつて僕よりも先に空界の空を駆けた者とは思えん言い草!  これはいかん! いかんぜよいかんぜよ! 提督猫『いくら僕らが常識破りを好むからといって、     近場のマナを吸収してイベントを終わらせちゃあつまらんだろうが!     然のマナはきちんとサウザーントレントで吸収するのだ!     様式美っての考えろこの美麗モミアゲ!』 彰  「そうだこの馬鹿!」 提督猫『馬鹿め! 馬鹿め!!』 カイ 『やかましい!! 普段から面倒臭いからってショートカットばっかしてるくせに、     こういう時だけ真面目ぶるなよ鬱陶しい!!』 提督猫『なんだとっ……!』 彰  「死ねっ…………!」 カイ 『産まれたばかりの精霊に死ねと!?』  そして始まる取っ組み合い。  ギャースカ叫びつつサミングしたり砂かけババァしたり毒霧吐いたり─── カイ 『どぉおおおおおしてやること為すコト全部が目への攻撃なんだよ!!』 提督猫『《ポッ……》や、やだっ……気づかれちゃった……!』 カイ 『嫌なのはこっちじゃああ!! なんだその赤らめた顔はぁっ!!』 提督猫『や、俺が言うのもなんだけど、猫が顔赤らめられることに突っ込もうぜ……?』 彰  「中井出相手にそげなことしてどーすんのよ」 提督猫『わあ、僕ってとことん常識外で考えられてんだね』  いいけどさ。  とりあえず二人を促し、ギャルドの行動を見守る。  そのギャルドはといえば、やっぱりシゲシゲと腕輪を見て……ようやく、左腕にゴシャーンと嵌めてみせた。  すると、ギャルドの体がカタカタと震え始め、先代(笑)に意思を奪われそうになっているのか、ガクガクと痙攣し、やがて───!! ミア  「マイネームイズ! オクレ!」 彰&カイ『外人になってるぅうーーーーっ!!!?』  ……外人になった。 彰  「中井出てめぇいったいなにをと言う前になんか衝撃的だったのでサンクス!」 提督猫『オッケイサンクス!』 カイ 『言ってる場合か! なに渡したんだよ提督!』 提督猫『え? 女性陣の意思の大半が詰まった腕輪。     いつでもいろんな知識を引き出せるに違いねー』 カイ 『器詠の理力も無しにそんな器用なことが出来るかたわけっ!』 提督猫『大丈夫! 何故ならば!     そこは先代のマナの使徒であるみさおちゃんがフォローするから!』 彰  「キャアすっげぇ他人任せ!」 提督猫『だって僕めんどいの嫌いだし《マゴシャア!》ゲンボ!』  正直者になってみたらカイに殴られた。 カイ 『ああくそ、ええっと……!?     女の大半の意思か……そこから考えるとしたら……     ああもう提督ちょっとこっち来い』 提督猫『フン断る《ゴドォッ!》ふんぎっ!?』  拳骨が落とされました。 カイ 『いーから来いこのたわけっ! ちと穂岸の意思もよこせ、処理能力を上げる』 提督猫『いやいいけどさ……まったく、貴様の親友は相変わらず拳が先に出るね』 彰  「オウヨ、なにせアタイが散々っぱらからかってきたから」 提督猫『つまり貴様の所為なのね……』  今更だね。  そんなわけでカイがつけている腕輪に触れて、ホギーの意思を移す。  それを受け取ったカイは頭に人差し指を当てて思考を回転させると、 カイ 『……つまりあれか。     ミアの中で、猛者どもに限らず様々な女どもが意思を奪おうと争ってるわけか』 彰  「……べつに高速思考受け取らんでも簡単に出せた答えやね」 カイ 『やかましい』  なんかフツーのコトを言った。  まあそれはそれとして、ギャルドが様々なお方から意思を奪われまくって痙攣してる。  さっきの外人は絶対に猛者の中の誰かだろうが、まあ……面白いからほっとこう。 カイ 『まあ、解らんでもない……か?     4000年ずぅっと外の空気吸ってなかったからな』 彰  「その開口一番がマイネームイズオクレってどうよ」 提督猫『や、それはそれでスゲーと思うよ僕』  その結果が目の前でウネウネダンスしてるギャルドだし。 カイ 『で……あれずっとほっとくのか?』 彰  「首でも折って気絶させる?」 提督猫『……今更だけどさ。どうして俺らって首折り気絶が定着してんの?』 彰  「…………《ハッ!?》」 カイ 『え、あ、いや……え? 言われてみれば……なんか普通になりつつあるよな』 提督猫『そしてそう言いつつ、ギャルドのダンスを傍観しているわけだが』  なんかブレイクダンスになってる。今誰の意思が浮上してるんだ? と思ったらドラゴンボールカードゲーム爺さんのかめはめ波してるし。 カイ 『……とりあえず気の毒になってきたから止めるか』 彰  「首折りならスペシャリストが」 提督猫『ドドリアです』《どーーーん!!》 カイ 『ブリュンヒルデでドドリア顔作るのはやめろっ! その等身じゃあ気色悪いわ!』 彰  「キャア!? じゃあ普段のドドリアさんは美麗すぎるってことなのね!?」 カイ 『へっ!? いやそういう意味じゃなくてだなっ!』 提督猫『……すげぇ趣味してんな』 カイ 『お前に言われたかないわっ!!』 彰  「なんと!? そりゃつまりドリ姉さんを好きになった中井出この野郎は、     いろんな意味で趣味がおかしいと!?」 提督猫『覚醒しろ! 万象担う灼碧の法鍵(スピリッツオブラインゲート)ォオオオ!!!』 カイ 『いろいろ誤解だそして待てぇえええええっ!!!』  ……その日。  ロックスフォールの滝付近で巨大な爆発事故が起こったとかなんとか。 【ケース12:提督猫(再)/空飛ぶ夢を見た。……平泳ぎで。なんかショックだった】  キャリンキャリンキャリンキャリン…… 提督猫『これぞ武具お手玉でござーい!』  いろいろあって、現在は……俺より強いやつに会いに行く! なノリで、道を歩いておりました。え? ロックスフォール? もちろん直したさ。 彰  「無駄に武具増えたねィェ〜」 カイ 『恋姫連中のも合わせれば軽く100を越えるか?』 提督猫『武具だから武器や防具だし、“軽く”ってのは確かだねぇ』  道を歩くのは僕と彰とカイとギャルド。  ただしギャルドはいろんな状況に目を回して、とほーと溜め息を吐いている。  意思はギャルドのままです。  なんかあのまま他の意思にこそ食われそうだったから、腕輪は返してもらって、護身用に竜鱗の外套だけ纏わせて歩かせております。 ミア 「うー……なんか納得いかないよぅ……」 カイ 『生きろ。ストレスで胃をやられようが、生きてりゃたまにはいいことに出会える。     そのたまにに癒されたら、また次のたまにを目指していきていけ』 ミア 「前向きなのか後ろ向きなのか解らないよそれ!」 彰  「人生に疲れたけど死にたくはない人の心境だねそれ」  そうなんか。  まあ猫時代の記憶もきっちりあるこの博光、解らんでもないが……それでも死ぬくらいならまだ楽しいを探したいとも思うなぁ。  そうするにはいろいろと必要なものもあるけどね。世の中はやさしくなどないってことか……世の中っつーか人間がやさしくないだけだけど。 彰  「しっかしこう歩くだけっつーのもなぁ。歌でも歌う?     ハ〜〜イキングにゆっこっお〜〜♪     ホ〜〜イホイディアホゥホッホ〜〜〜〜〜ッ♪」 カイ 『何年前の自作の歌を歌ってんだお前は!!』 彰  「ホイ? ん〜〜……百とか二百程度じゃねーの?     もしくはアタイと中井出の生きた歴史を合わせて、     真面目に初めて歌った時を考えるに……約五千年前!!     ヒャッハァー! 中国四千年にも負けなくても負けてもどっちでもいいや!」 カイ 『元気だな……お前……。まあ、固体で中国に匹敵する歴史持ってる馬鹿も居るし』 提督猫『え? 誰のこと?』  なにやら二人が僕のことをジッと……!  や、やだ、化粧が濃かったかしらっ……!  べべべつにあなたを思っておめかししたんじゃないんだからね、ばかっ!《ポッ》  などとツンデレやってないでと。 提督猫『しかし、歌ねぇ。地界を離れて長いからなぁ、もう新しい歌とか全然知らん』 カイ 『覚えてる歌は?』 提督猫『万象の唄。然の精霊だけが知っている唄だね。     あとは適当なアニメソングとか子供の歌とかそっちのものばっかり』 彰  「アーティスト系も覚えてやりんさいよ……。ドラマソングとか、なんかねーの?」 提督猫『アンインストールは珍しくハマったなぁ。あれもアニメだけど。     で───……おや? ……ふむ、ふむふむ』 カイ 『提督?』 提督猫『む? おっと無礼、ちと意思達と話し込んでた』 カイ 『いや、そこは普通“失礼”じゃないか!?』 提督猫『いいのいいの、似たような意味に違いねー』 カイ 『文字からして違うだろうが!     失礼は“礼を失う”で、無礼は最初っから礼が無いんだよ!』 提督猫『……え? 俺に礼ってあったの?』 彰  「オイオイ悠介ぇ……じゃなかった、カイィ……頭大丈夫か?     中井出にそげなもんあるわけねーべよ……」 カイ 『なんで俺が神経疑われるみたいな言われ方されてるんだ!?』  そんなわけで意思との会話を終えた僕は、意思の皆さん、そしてこの場に居る三人に届くように歌うことにしました。  ほんの少し、30秒もかからんけれど、まあこれからの俺達を思い。  きょとんとした顔で僕を見る三人から少し離れ、そこでマーマーマーと喉の調子を調べてと。 彰  「おお歌?」 カイ 『こんな道端で歌うのか……まあ提督らしいって言えばらしい気もするけどさ』 ミア 「猫さんでも歌えるんだね……」  グフフ、愚問よ。  この博光、かつては音痴だったが、いろいろあってまあまあな歌声が出せるのさ。  そんなわけで、ほんと短い歌を。僕は知りもしない歌で、意思の皆様が我らと絆を深めるためにだのなんだの言ってたから、よっしゃあと頷いたもの。  だから歌った。タイトルも知らん歌を。 彰  「オッ……Happyかね! なぁーーーつかしぃーーーーっ!」 カイ 『……聞いたことがないな。彰利……じゃなかった、彰は知ってるのか?』 彰  「まあ……アタイは好きだよ。つーかこれ、中井出に歌われると……ちとね」  歌詞も曲調も今知ったばっかりの歌を、しかし心を込めて歌う。  終わらせる勇気も、続きを選ぶ恐怖も覚悟に変えるため。  いつか失くしちまった自分がここに在ることを喜び、世界からは忘れられた自分ってカラッポを抱きしめるように。  そして───意思とともに受け取った、武具って名の借り物の力。  そこに確かにある意思って鼓動を感じながら。  そう。  こんな俺とでも、もし歩いてくれるなら……歩いてくれるのなら。俺が生きていても、どうせいつかは終わってしまう貴方がたの旅……その意思が、もしついてきてくれるというのなら。  永遠に続くであろうこの旅を、僕と、一緒に歌おうと。 提督猫『…………一応真心込めたけど、どう?』 彰  「とりあえず貴様はもうこの歌歌うな」 提督猫『なんで!? えぇ!? 下手だった!?』 カイ 『……お前が歌うと重すぎる。やめろ』 提督猫『え……ぇええええ……?』  わ、訳が解らないっ……! いったいなにが起こっているというのだ……!  歌ってくれと意思に頼まれたから歌ったのに、目の前の二人も、意思の皆さんまでもが重い重いってなんですかコノヤロー!! 彰  「歩き方、少なくとも家族にゃ教わってねーもんねぇテメー。     教わる前に全員死んだり殺されたりだし」 カイ 『……穂岸に歌詞聞いたけど、確かにこれは……提督は歌っちゃだめだな。     目、洗っても赤いままなんだろ?』 提督猫『え? なんでここで目の話? や、まあ洗ったって赤いままだけど』 彰  「心の傷や呪いは洗えないってことかね……まあでも大人にゃあなったよな。     な〜んも教わってこなかったくせに、教わらなかったいろんなもんで」 提督猫『………』  よし解らん。  意思の皆さんに歌詞全部教えてって頼んでも、みんな無視しやがるのです。  仕方も無しにもやもやした気分のままに歩きかけたら……後頭部をデデシッと叩かれた。 提督猫『な、なにをするだァーーーーッ!!』 彰  「いンや? ただね」 カイ 『歌ってほしくはないが、まあ……どうせいつか終わる旅だもんな』 彰  「オウヨ。……一緒に歌っていこうぜ? この、くそったれな世界の旅をさ」 提督猫『……貴様ら……』  振り返り、見上げれば二つの笑顔。  俺は……そんな笑顔を見つめ返して、 彰  「…………ところでYO中井出? なして皇竜爪(アンギア)召喚しとんの?」 カイ 『この流れで出す理由、あるか?』 提督猫『え? だっていい話中だろうがなんだろうが一発は一発でしょ?     理由も話さん、不意打ちで後頭部は叩く。これに反撃せずになにに反撃しろと?』 彰  「ゲェーーーッ!! 言葉だけ聞くと美談でもなんでもねぇーーーーっ!!」 カイ 『いっ、いやっ! 待て提督! そりゃ確かに叩きはしたが、     これは友人特有の挨拶みたいなものであってだなっ……!!』 提督猫『じゃあこれも挨拶だね? だって不意打ちじゃないもん。     のけ者にされて、振り向いた途端に頭叩かれて……。     痛かったなぁ、ああ痛かった……! 貴様らもその痛みを味わえばいいんだ!!     俺のターン! 皇竜爪を召喚!! 契約したばかりのウンディーネの力を封入!』  言葉とともに、アンギアに寄り添うようにウンディーネが召喚される。  同時に皇竜の両手に水のマナが集い、ソウルエナジーを装填してゆく……! カイ    『ま、ままま待て待てウンディーネ!        仮にも一度契約した相手をだなっ……!』 ウンディーネ『契約? 私が? 貴方と? …………ハッ』 カイ    『鼻で笑われた!?』 ウンディーネ『我がマスターはルドラ=ロヴァンシュフォルス。        しかしその存在ももはや我々を道具として扱った愚者。        共に強くなり、守りたいものを守るためを願った契約者はとうに滅んだ。        今のマスターはこの中井出博光以外に存在しない。        同じく永遠を生きる者となっても、仲間を裏切らぬ者以外存在しない』 カイ    『…………《だらだらだら……》……つ、つまり……?』 ウンディーネ『気安く我が名を口にするな、創造の精霊』 カイ    『やっぱりかぁああーーーーーっ!!!』  かつての丁寧な言葉遣いもどこへやら。  ギヌロとカイを睨んだウンディーネは、これでもかといわんほどにマナを装填!  アンギアのソウルエナジーをマックスにさせると、僕に後を任せました。  僕の行動? もちろんゴッドハンドクラッシャーです。 ───……。  ……・  さて、殺してしまうわけにもいかんので加減したのち、ノビている二人を起こしてからはやっぱり歩く。  喉が渇いたーとかぬかすから、昔懐かしのビンラムネをカイに創ってもらい、キュポンと開けて極飲。  しゅわしゅわしたものが喉を通り、ゲボハァッと吐き出した。 提督猫『ブエェエッフェ! エッフ! エファーーッ!!』  いくら常識破壊が好きだからとはいえ、どうにも炭酸飲料を受け付けるほど、このキャット博光の喉は素晴らしくはなかったらしい。  即座に気を聞かせてくれた晦───じゃなかった、カイが別の飲み物を創造してくれて、渡された器の冷たさに安心して一気飲み!  すると、ピリピリした喉にぶち当てられる灼熱のゴッフェエ!! 提督猫『おあーーーちゃちゃちゃちゃちゃほじゃじゃじゃじゃじゃ!!     ハッ……ハッ……アッー! アーツィ! アーツ! アーツェ! アツゥイ!     ヒュゥー、アッツ……! アツウィー! アツーウィ! アツー! アツーェ!     アー……アツイ! アーツェ! アツッ! アッツ! アッ……アツウィ!!』 彰  「……なに飲ませたん?」 カイ 『ジョロキアエキス100%の熱湯だ』 提督猫『猫舌相手に何考えてんだてめぇ!!』  そりゃ既に猫舌なんてものは克服したよ!? 無理矢理だけど!  でもそこにジョロキアと炭酸のピリピリ感が合わさって痛くて不味くてピリッとしてまったりとした味わいがオウイェーーーイ!! ミア 「? じょろきあ、ってなに?」 提督猫『うんいい質問だねー。これ飲め』  質問して来たギャルド……もう嬢でいいや。に、ズイと渡すジョロキア先生。  よく見れば形容しがたい色で、ゴポリゴポリと粘着性のある泡を噴いている。  ……なのに容器は冷たいとくりゃ、咄嗟じゃあ一気くらいする。  無限に沸くのか望めば沸くのか、容器の中はジョロキアに満ちていた。  それを、ズイと渡すのです。 ミア 「うっ……! 鼻にツンと来たよ!?」 提督猫『べ、べつにあなたのために差し出したんじゃないんだからねっ!?《ポッ》』 彰  「中井出、それツン違い」 提督猫『ままま、飲んでごろうじろ。貴様の無知な世界が少しだけ広がるぜ?     知識とは己の脳を彩る絵の具よ。     貴様の経験が、脳を何色に染めるかを決めるのさ。     ちなみに俺はゲーム脳だと思う』 彰  「俺もそうかねぇ」 カイ 『俺は───』 提督猫『日本脳だろ?』 彰  「日本脳だろ」 カイ 『…………ミア。頭痛を永遠に無くす方法を教えてくれ。     それが出来ないなら俺は、この旅の目的をそれ一点に絞り込んでしまいそうだ』 彰  「頭痛にバファリン」 カイ 『頭痛の種が言う言葉かっ!!』 提督猫『ワハハハハ! 今日から貴様は種だ! 種だ!!』 彰  「種は貴様の義息子でしょーが!!」 ミア 「…………《ごくり》」  誰一人、まともに話す人が居ない気がした。  ともあれ僕らは歩き、一つの町へと向かってる。  サハギンブチノメした程度じゃあ、ランクも大したことはないようで……上も中々、城入りを容易には許可してくれないらしい。  むしろこのまま乗り込んで、写本探すのもアリなんだけどねー。 提督猫『やい創造精霊てめぇ、晦の記憶の中に写本とかの情報はなかったのか』 カイ 『どうしてそこで“やい”をつける……あー、ちょっと待て。………………』 彰  「SB!」 提督猫『カッレーのっ、おっうっじっさまっ!』 カイ 『話に脈絡持とうな!?』 提督猫『だってこのトンガリが僕を急にノセるから!』 彰  「おお! いった!」 提督猫『え? なに?』  ほんと人の話を誰もが聞かない。  むしろ真面目に受け取って、行動を起こしたカイが馬鹿に見えるくらいの清々しいコワレっぷりである。  で、彰の方を見てみれば、その隣でクピリとジョロドリンクを飲む嬢がゴプシャア!! ミア 「うっきゃああああーーーーーーーっ!!!」 提督猫『あ、ところで昨日のポンセのスリーラン、すごかったなー』 彰  「お前っていつもそれなー」 カイ 『…………どこからツッコめばいいんだよ俺は』  嬢が悶絶した。  叫び、喉を押さえ、倒れ伏し、ビターンバターンと跳ね回っております。  さすがに無視するわけにもいかなくなったので、こほりと咳払いを一つ。 提督猫『カイ……なんてひどい……! こんな年端もいかないガールを……!』 彰  「人間のやることじゃないな……!」 カイ 『なぁ。俺が精霊だって解ってて言ってるんだよな? それは』  言いながらカイが別の飲み物を創造。  ぶっきらぼうに嬢を起こすと、その口にバッシャバッシャと流し込むように容器を傾け─── ミア 「べぶっ!? うぶっ! はぶぶぶぶっ!!」 彰  「おお、容器から謎の水が滝のように」 提督猫『相変わらずこういう創造はお手の物だなー。つーか普通に溺れ死なない? これ』 カイ 『大丈夫だ。酸素たっぷりの水だから』 彰  「や、その酸素、水分無しで肺に行かなきゃ意味ねーから」  ハラハラ怒気怒気の瞬間……いえ、ドキドキの瞬間。  嬢は突如クワッと目を見開くと、バッと跳ね起きて───咳き込んだ。そりゃそーだ。 ミア 「げっほごほっ! げっほ! な、なにするの!? 死んじゃうとこだよ!?」 カイ 『いやすまん、正直それくらい流し込まないと治らんと思ってな』 ミア 「そんなことされたって、治るわけ───…………あ、あれ? 治ってる……?」 提督猫『じゃあ行こう。えーとホイ』 ミア 「《ガキィンッ!》わわっ!? ね、猫さん!? なにこの腕輪! え!?」 提督猫『もう面倒だから、みさおちゃんの意思に任せることにしました。     つーわけなんで、えー……おいでませ! みさおちゃんメモリィイーーーッ!!』  嬢の腕にガッキィと嵌めた白と黒が混ざった腕輪が輝き出す!  その輝きは百億もの人間の様々な夢を受け止め、さらに無限の可能性を見せつけている!  関係ねーけど! 意味もねーけど! ミア 「あ、あ……あ───…………」 提督猫『…………で、気分どう?』 ミア 「…………いろいろとこんがらがってます……けど」  ボーっとしております。  記憶って情報が流れ込んでいってる状態で、すぐに反応しろってのは無茶だね。  べつにこうして猫の姿でみさおちゃん……セシルの来世の意思と会えたからって、伝えたいありがとうが湧き出るわけでもない。  どうしてゼットが簡単に、俺なんぞと親友になろうと思ったのか。俺の気配が猫のソレと似ていたかどうかなんてのも問題じゃない。  我らは今まで通り、なんの気負いもなく楽しめる猛者であれば良し。  重荷になるなら置いていく。それでいいのさ。  仲間ってのは、そういうものじゃけぇのぉ。多分。 ミア 「……あの。中井出さん?」 提督猫『え? なに?』 ミア 「その。猫の姿で話すのは、     セシルの頃の記憶と相まって、少々やりずらい気もしますけど。     言わないとすっきりしないこともあるので、勝手に言わせてもらいます」 提督猫『うむ! 私は一向に構わんッッ!!』  すっきりしないことがある! ならばすっきりしてもらおうではないかッッ!!  バッチこーいって感じで、前足二本の肉球をメタァーンと叩き合わせ、身構えた。 ミア 「……ありがとう。そしてごめんなさい。     ゼットくんが狭界に飲まれ、私の……セシルの意思が歪んでしまってから、     あなたには随分と酷い思いをさせたと思う。     でも、あなたはきっと謝られることよりも暖かさを望むと思うから───」 提督猫『《ひょい》むっ!?』  嬢の姿をしたみさおちゃん……いや、今はセシルか? が、この博光をひょいと抱く。  それから、遥か過去に彼女がしてくれたように背中を撫で─── 提督猫『うっひゃっひゃっひゃっひゃ!! いやちょっ! やめてやめてぇえええ!!     なんかゾワゾワする! 僕擽ったいのだめなの!』  ───あっさり決壊するシリアスシーンの誕生さ!  あれ? 壊れてるなら誕生じゃない? まあいいや。  なんか心が喜んでる気がしないでもないし。  ともあれひょいと嬢の腕から逃れると、ただ楽しんでくれりゃあそれで満足だってことを伝える。  べつに俺に何かを返す必要はないし、悩む必要もあらずだ。  もったいないじゃない? せっかく楽しめる状況があるのに、楽しまないのは。 提督猫『と、とにかくもう行きましょう!? 僕らの旅は───始まったばかりなんだ!』 彰  「───…………だりぃ」 カイ 『……………………動きたくないですね』 提督猫『あれぇ!? 彰利と晦の反応が消えていく! ……って、体力が限界にきたのか』 ミア 「なんか立場ないですね私……せっかく浮上したのに」 提督猫『いやいや、確かに降りてから動きっぱなしだったんだし、     ここらで一度キャンプでも張ろう。見る限りじゃあもう町があるけど───』  森を抜けた先には崖がありました。  その広大に広がる地平線。  そして、眼下の先にある、ひとつの……村か? 町ってほど大きくはないなぁ。  飛べばひとっとびだけど、“僕の心が人を恐れている!”といった感じでね?  城かどっかで両替したいし、今の技術で出来た武器とかも見てみたいしで、行ってみりゃあいいんだけどさ。  トラウマってやつかなぁ……出来ることなら人里へは行きたくない。 提督猫『だがその当然をブチ壊す!! 人間がなんぼのもんじゃああーーーい!!     こちとら4000年を生きた超猫又さまじゃーーーーーーっ!!』  暗い雰囲気なんのその! そんなものが嫌いだからこそ、この博光は生きてきた!  ならばどうする!? ならば突っ込むしかあるまい!!  人への恐怖!? そんなもの、こちらから飲み込んで克服してくれるわ!!  地界回路、“順応”をナメんなコラァアアアア!!! ───……。  …………ガタガタガタガタガタ……!! 提督猫『怖ェ……!! 超怖ェエ……!!』  そんなわけで村。名前をオルトン。  そこに降り立ちガタガタと震える俺参上。 提督猫『ね、ねぇみさおちゃん!? 帰っていいかな! 俺帰っていいかなぁあ!!』 ミア 「えぇええっ!? まだ来て数秒ですよ!? 猫又根性はどうしたんですか!?」 提督猫『馬鹿! みっちゃんのばか!     根性でなんでも出来るわけないじゃん! 僕英雄じゃないんだよ!?     根性でなんでも乗りきれるのは、選ばれた英雄だけだもん!』 ミア 「そ、それはそうですけど……!     はぁ、相変わらず、言い訳にだけは口達者ですね、もう……!!」 提督猫『すげぇだろ』《バァアア〜〜〜ン!!》 ミア 「褒めてませんっ!」  そんなわけで早々に逃げ出した。  彰とカイを置きっ放しのキャンプまでひとっとびさ。  ……ていうかいいや、とりあえず城まで行こう。  レファルド、オーエン、ファウエル……行くならどっちかなーと思い、レファルドに行くことにした。  彰とカイにはゆっくり休んでもらうとして。 ───……。  さあ、そんなわけでレファルド皇国。  あれから百と数年、文明発達は盛んかなぁとは思ったけど、そうだったね、僕がほぼを殺したから発達もなにもないや。  ほぼかつての姿のままのレファルドが、そこにあった。 ミア 「…………変わりませんね、ここは」 提督猫『あ、ところでみさおちゃん? 意思がキミの時の認識、変えていい?』 ミア 「? 変えてなかったんですか?」 提督猫『やあ、一応姿がそれだから遠慮して……って、なんで僕の額に触るの?』 ミア 「いえ……熱はないのかなぁと思いまして」 提督猫『生物ですもの、熱くらいあるよ?』 ミア 「そういう意味じゃないんですけどね」  額に触れてきた暖かさにニヒルに笑みながら、認識をミアからみさおちゃんに変換。  うむ、彰とカイの時もそれでいいでしょう。 提督猫『で、みさおちゃん。両替屋ってのはあるものなのかな』 みさお「えと、そうですねー……。     こういうのはリヴァイアさんの方が詳しいんでしょうけど」 提督猫『……霊章から、さん付けで呼ぶなぁああって叫び声が轟いたけど』 みさお「いい加減慣れてくださいって返しておいてください」 提督猫『そうだね』  世界は平和だった。  さて、結局のところ、惨殺事件から百と数年、いや数十年か?  なにせ猫だったから詳しい年月なぞ覚えちゃいない。  ともかくそれほどの時が経ったのだ。  リヴァさんが覚えている場所に両替屋があるかも解らん。  なので、素直に適当な店で両替を願うことにした。  宝石店とか、いいね! みさお「……で、どうして人の帽子の中に隠れるんですか?」 提督猫『だって怖いじゃない!!』 みさお「……いいですけどね、もう」  体を完全な子猫姿にタイムスリップ。  その状態で、魔導士ハットの中に潜り込むと、みさおちゃんへGOサイン。  ふう、これで安心だぜ……! ───……。  人づてに貴金属屋とかはねーかと訊いて回り、やってきましたアクセサリーショップ。  そこの厚化粧と交渉し、マテリアル硬貨のいくつかを両替。  ンマアアアアア!って驚いてたけど、しっかり両替してくれたよ。  両替中にはみさおちゃんが物珍しそうにアクセサリーを見て回り、その中にブラックオニキスを発見すると、目を輝かせた。 みさお「中井出さん中井出さん、ブラックオニキスですよ! HP最大値が上昇です!」 提督猫『おおマジだ! 効果説明にもしっかりと体力が上がる気がするとか書いてある!』  みさおちゃんは“試着用”と書かれた見本品を手に、ブローチ状のそれをつけてみる。  ……うん、言っちゃなんだがあまり似合わん。   しかし、聞いてみればなんとなく体力が上がった気がしますとのことで、空界もいろいろと復興のために頑張ってるんだなぁと実感。  僕はといえば、目につけたアクセサリの効果を分析したりして、片っ端からコピー。  え? 外道? グオッフォフォ……!! 今更今更……!! おばさま「換金が済んだざますわよ」 みさお 「あっと。終わったみたいですね」 提督猫 『仕事が……早ェエエんだな……』  カウンター前まで行くと、身分証明がどうとか言われた。  埒も無し、毒々しいランクプレートを見せると、そこからなんか解らんけどデータを取られ、オバサマがこくこくと頷く。 おばさま「ブレイバーとは、今時珍しいざますわね。      ウィリブセイバー……サハギンでも討伐したざますか?」 みさお 「ええはい、少し前に」 おばさま「結構ざます。その調子でどんどん頑張るざますよ。      はい、これが硬貨と、換金証明ざます」 みさお 「あ、はい、助かりました」 おばさま「構わないざますよ。わたくし、M$を集めるのが趣味なんざます。      丁度小銭が集まってたから丁度よかったざます」 みさお 「そうですか。それじゃあ」  ぺこりとお辞儀をして、みさおちゃんが店を出る。  うむ、当然この博光も帽子の中に潜んでおるから、一緒に。  しかしこの帽子、何故か他人って感じがせん……もしかして俺、帽子愛に目覚めた?  いや、よく解らんけど。 みさお「さてと。それじゃあ技師さんのところに戻りますか。     ちゃんと払わないといけませんし」 提督猫『律儀だねぇ』 みさお「人のお金なんですから、しっかりするのは当然ですっ」  怒られてしまった。  しかしうむ、確かに他人の金なのにしっかりとしないのはいかん。  そんなわけで、再び技師の小屋に戻ることになった。  とはいっても、一度言った場所なので転移でズヴァーっとってことになったけど。  しかし僕らは走った。何故って? だってその方が冒険者らしいじゃないか。  転移があるから転移に頼ってちゃあ、なんかもう冒険の意味無いじゃん。  だから走った。  ジークに乗って飛んだほうが速かったとか、そんなことはもうどうでもいいんだ。  走ることに意味があるッッ! 歩いていても走っても同じ場所には辿り着く。  だがしかし、走りださなくちゃ変わらないってばあちゃんが言ってた。  俺のばーさんじゃないけど。 みさお「はっ……はっ……こ、この子の体、体力なさすぎっ……つ、疲れっ……」 提督猫『こら! 人の体を乗っ取っている分際で、人の体を悪く言うもんじゃない!』 みさお「気分が乗ったからってこの子に腕輪つけた人の言葉ですか!?」 提督猫『当たり前だ! 見縊るな! だって人じゃなくて猫だもん!』 みさお「そういうことを言ってるんじゃなくてですね!?」  そんなわけで、ゼーゼー言うみさおちゃんの出来上がり。  え? 僕? 僕は頭の上に乗ってるから楽ちんだっぜェエーーーーイ!! 提督猫『オラー! メロスー! 走れー! 走るんだメロスー!』 みさお「誰がメロスですか! もう!」  肉球でテシテシと額を叩きつつ、前進命令ッッ!  しかし……ああジョジョ、しかしッッ! 進まない! ちっともっ!! 提督猫『愚かな……それが、ヒロラインに慣れて現実では怠けた者の姿ぞ……』 みさお「意思だけの存在に対してそれ言いますか!?」 提督猫『まあまあ。……そういやさ、ディルゼイルとかの竜玉ってどうなったんだろ。     晦がラスペランツァから出る時点で、その場に置きっ放しだったから……あれ?     僕の中にある?』 みさお「本物の方はっ……はっ……多分ですけど、スピリットオブノートがっ……!     回収したんじゃないか、とっ……思いますけどっ……」 提督猫『ほほう、そかそか。んじゃー……召喚獣の方は契約切れてると思うし、     回収してバハムルでも作ってみませうか』 みさお「べつにそんなことせずにっ……     すぐにでもサーフティールに行って、地界に戻ればいいんじゃっ……」 提督猫『ふむ。じゃあ行こう』 みさお「ええっ!? 今からですか!? えっ……ここまで走った私の苦労は!?」 提督猫『回復してやろう』  パパァアアア……!!  然の義聖拳を解放、みさおちゃんの披露をあっさり治した。  これぞ、ルビカンテ流のやさしさ。  ……でも立ち止まったみさおちゃんは、とてもとても悲しそうでした。 【ケース13:提督猫(再々)/お空へ行こう!!】  ゴォオオオオオオッ!!! 甲冑猫『ヒャッハァアーーーッ!! 音速を越えて塵と化すぜェエーーーーーッ!!』 みさお「うわやややややややや!! きあぁーーーーあああーーーーーーーーっ!!!」  やあ僕博光。  ただいま空を飛んで、サーフティールを目指しているところさ。  もちろんみさおちゃんの体を生やした蔓で掴んで、ガンザックでドギャアと。  その速度、ハンパねぇ!!  だってみさおちゃんが本気で叫ぶくらいだし。  しかし暑い!!  猫姿に甲冑ってすげぇ暑い!! 甲冑猫『ムンム〜〜〜ン♪ ム〜レム〜レわっきのぉ〜下〜♪     ムンムンム〜レム〜レむ〜ねのっ谷〜♪』 みさお「こんな速度でこんな状況で女の子の前でなんて歌歌ってるんですか!!」 甲冑猫『ばかもん! 博光ですもの! どんな状況でだって誰の前でも歌うよ!!』 みさお「少しは常識ってものを考えてください!」 甲冑猫『よし考えたこれで文句はあるまい!!』《どーーん!!》 みさお「考えればいいって意味じゃなくてぇえええーーーーーーーっ!!!」  気にせずGO!!  つーかもう目前よウェーーーッハッハッハッハ!!  久しぶりだなかつての我が家がある場所よ!  私はっ……帰ってきたぁあーーーーーーーーーっ!! 甲冑猫『《ドムンクッ》───おや?』  だがしかし。  一定以上近づいた途端、厚い空気の壁に勢いの全てを吸収され、ばいーんと弾かれた。  ……あれ? なにこれ。空気の壁? みさお「あ、あの?」 甲冑猫『ぬう……! なんとけしからん! 侵入者防止用に魔法壁が張られておるわ!!     しかもこの感覚は忘れもせぬ! スピリットオブノートのもの!!     おのれおのれぇええ!! どこまでこの博光の邪魔をすれば気が済むのか!!』 みさお「あの。いつ邪魔したんですか?」 甲冑猫『え? ……………………』 みさお「……………」 甲冑猫『…………とりあえずこの壁にハイペリオンを撃とう。全てはそれからだ』 みさお「はぐらかすにしたってもうちょっと別のやり方がありません!?」  ホキャーと騒ぐみさおちゃんにまあまあと返し、ブレイブポットスキルのハイペリオンを用意!! 一切の遠慮無く発射し、青の虚空を焼いた。 甲冑猫『ギャオアアーーーーッ!! うるせぇえーーーーーーーっ!!』 みさお「あつっ! あつつつつつ!! もうちょっと距離ってものを考えてくださいよ!     いくら巨大なリングシールド張ってても、これはさすがにっ……!」 甲冑猫『口答えすんじゃないのォォォォ!!     あんたはもうホンット人の揚げ足ばっかりとってェェェェ!!』 みさお「揚げ足云々の問題じゃないでしょうこれって!!」  どうでもいいけど、八郎のかーちゃんって最高だよね。  うん、本当にどうでもいいんだ。  ただ猛者連中からの情報で、八郎のかーちゃんの声優がねるねるねるねのおばーさんだってことを知って、驚愕したってだけだから。  でもなんだかんだでこれだけの轟音。  サーフテイールに住んでいた者どもが何事かと出て来おったわ!  そんなやつら目掛け、雷を発射! もちろん空気の壁なぞ破壊済み!  皆様驚きながら逃げ惑う! 甲冑猫『ィヤッハッハッハッハッハ!! ここは空! 神の領域だ!!     全てが目障り! 人も木も土も! あるべき場所へ還るがいい!!     全て青産みに降る雨となれェェェェ!! ィヤァーーーーッハッハッハッハ!!』 みさお「ホワァーーーッ!!?     出会いがしらになにやってんですかぁあーーーーっ!!!」 甲冑猫『ィヤッハッハッハッハ! 逃げ惑う天使どもはまるで撹乱した蟻の行列ゥゥウ!!     本位に還れェェェ……スカイピアァアアーーーーッ!!』  雷のラッシュラッシュラッシュ!!  かつては見知った顔どもが、突然の出来事に絶叫し逃げ惑う!!  おめでとう何もかもを忘れて幸せを掴んだ者どもよ!!  俺は貴様らと決別するためにここに来た!! だって僕魔王だもん!!  でもところどころに生えてる草花達にはいい迷惑だね、やめましょう。  ウムと頷いて、ヒョーとサーフティールに降り立つ。  当然皆様は僕に恐怖し、ごくりと喉を鳴らし……! 甲冑猫『やあ』《どーーーん!!》 総員 『なんか普通に挨拶してきたぁああーーーーっ!!!』  大層驚いたそうな。  そう。これは……全てを記憶し、幸せなど手に入れられなかった僕と。  全てを忘れ、幸せを手に入れた者どもとの物語……!  ……つーわけでみんな無視して晦工房行って地界に戻ろうか。  え? 物語はどうした? 言ってみただけである!! みさお「あの……普通に鍵使って、父さまの工房へ飛んだほうが早かったんじゃあ……」 甲冑猫『段取りは適度に踏まないとダメ』 みさお「……そう言うと思ってましたけどね……」  こうして、平和ボケして争う術を知らぬ皆様の列の中心をズシーンズシーンと歩き、 みさお「私そんな歩き方してませんっ!」 甲冑猫『心読まないでくださる!?』  ……ともあれ、工房の扉前へと辿り着いたのでした。  ルナ子さん、絶対まだ引きこもってるよね……うん。  まあいいや、GOだ!  レッツハバナーウ!とみさおちゃんを促すと、その手がとうとう扉にかけられた……!
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