04/風のアルビノン

【中井出博光/それぞれの思い】

 で、翌日。

ギーシュ「な、なぁヒロミツ? これはいったいどういうことなんだい?」
中井出 「姫殿下から重要な任務を任されたから、キミもどうだい? って話」
ギーシュ「姫殿下からっ!? それはなんと光栄な!
     任せておきたまえ、及ばずながら全力で力になるよっ!」

 マキュリィーーン♪と歯を輝かせての返事だった。
 ……さて、ここは学院から少し離れた平原。
 用意された馬───などありません。
 僕が「そんなものはいらーん!」と、却下させました。

ルイズ「ねぇちょっと……馬も無しにどうやって───ま、まさか走っていく気!?
    姫殿下は火急の用だって言ったでしょ!?」
中井出「じゃーじょーぶじゃーじょーぶ、おいさんのこと信じなさい。
    あ、ちゃんと“手紙”と“水のルビーの指輪”、持ってる?」
ルイズ「持ってるわよ、忘れるわけないでしょ?」
中井出「ならばよし!」

 手紙ってのは、ウェールズさんに宛てて昨晩に書かれたホヤホヤの新書だ。
 これを届ければすぐに原因の手紙はくれるだろうとのこと。
 そりゃそうだね、急に行って「よこせ」とか言ったって怪しまれるだけだし。
 なんなら殺してでも奪おうか? って冗談で言ったら姫ちゃん泣いちゃったし。
 ええ、ルイズと才人にボコボコにされたのは言うまでもない。

中井出「じゃ、そろそろ行こうか。えーと……バハムート〜」

 右手の霊章よりベヒーモス、左手の霊章よりリヴァイアサン。
 これを融合させ、召喚獣バハムートと成す。
 晦が使役していたものを復活、召喚させたものだ。

ルイズ 「うっ……ひ、ぃえええっ!!?」
ギーシュ「ななななっ、なななっ……なななんだいこれはーーーっ!!?」
才人  「バハム……ッ……うぅおおおーーーーっ!! かっけぇえーーーーっ!!」

 チュゴォンッ!!と大気を吹き飛ばすように空気を震わせ景色を歪ませたソイツは、コルルルル……と静かに唸ると僕を見下ろす。
 僕はといえばそんな彼にやあと挨拶をすると、ちょっと乗せてと頼んでみる。……直後、尾撃をくらって霊章の中に逃げられました。

中井出「おががががが……!! まったく無茶をする……!」
ルイズ「…………な……なによっ! なんなのよっ! すごいとか思って損したっ!」
中井出「な、なにをぬかす〜〜〜〜〜っ!!
    じゃあいいよ! ヒロライン側のバハムート召喚するから!
    それからルイズ、おめーは乗っけてやんねーからな!
    お前はワルド子爵のグリフォンにでも乗ってればいいんだ!」
ルイズ「えっ───ワ、ワルド……様? なんであんたがワルド様のこと知ってるのよ!」
中井出「姫ちゃんに聞いた! 此度の旅、グリフォン隊隊長のワルドも参加するんだって。
    女王陛下の魔法衛士隊が一つ……だっけ?
    だからルイズはワルドと一緒に行くがよいわ!」
ルイズ「ワルド様が……そんな、姫殿下はそんなこと、私には一言も……」

 ショックを受けているらしいルイズを余所に、霊章よりバハムートを召喚!
 風を巻き込み、キュバァンッ!と轟音を立てて召喚されたソレは、集まった風の全てを吹き飛ばし、『ルグゥウオオオオッ!!』と唸ってみせた。

才人  「うおおおおっ! こっちも格好良いなぁっ!」
ギーシュ「竜種をこんなに簡単に召喚されるのも、とても複雑な気分だがね……」

 それぞれがキャッホォーイと感想を述べる中、僕は真龍王バハムルと話し合っておりました。空界側のバハムルは役に立たねーから協力して?と。

真龍王『人よ。汝よ。己よ。つまり我を乗り物代わりにすると。そういうのだな?』
中井出「その通りである」《どーーーん!》
真龍王『……龍の王を馬車かなにかと勘違いしていないか?』
中井出「バカモン! 勘違いなんかしとらん! 貴様は龍だ! だから乗せろ!」
真龍王『どういう理屈だ汝よ!!』

 ゴシャーーーアアアと吼えられた。

ルイズ「ちょ、ちょっと……! だだ大丈夫なんでしょうね……!
    なんだか怒ってるみたいよ……!?」

 大きさにして、シャルのシルフィードの五倍……じゃあ、きかないよねぇ。
 明らかに見上げるカタチになっている僕らの前で、ゴギャーと吼えられればそりゃあビビりもするでしょう。
 ルイズたちにはバハムルの声は聞こえてないだろうから、心配するのもまた当然。

中井出「どーしても嫌だと申すか!」
真龍王『嫌だとは言っていないがプライドというものがだな!』
中井出「バカモン! そんなもん産まれた時点でドブ川に捨ててみせい!」
真龍王『竜種から誇りを取ったら何が残るか汝よ!』
中井出「信念である!!」《どーーーん!!》
真龍王『だが断る』《どーーーん!》
中井出「じゃあいいよもう二度と呼ばないから失せろクズが!!」
真龍王『いっ……いきなりの辛辣すぎにも程があるだろう!
    ちょっと待て人よ汝よ己───《キュポンッ》』

 埒が空かないから収納した。
 仕方ないな……シャモンでいこうか。
 いや、グレイドラゴン召喚して言葉巧みに騙すのも……グエフェフェフェ……!!

中井出「んー……じゃあフェンリル」

 コオッ───キュバァッ!!
 念じて弾けさせれば、目の前の草原にどかーんと現れる巨大な氷狼。
 狼と呼ぶにはあまりに大きく、そして寒いですハイ。

フェンリル『……何用だ、我が主の友よ』
中井出  「旅したいから背中に乗せ───」
フェンリル『断る』
中井出  「………」

 即答だったので無言で収納した。
 次にグリフォンを召喚───あっさり断られる。
 紫飛竜ディルゼイルを召喚……アウト、緑飛竜ヴァルトゥドゥスを召喚……アウト、蒼飛竜アーガスィーを召喚……アウト、赤飛竜ヘイルカイト……アウト、黄飛竜ウィットレイ……アウト。
 ……仕方も無しに、空界側の黒飛竜ジハードを召喚……やっぱりアウト。

中井出「ち、ちくしょーーーっ!
    どいつもこいつも一言目には晦晦とぬかしおってーーーーっ!!」

 召喚したもののほぼが、晦の使役生物だったんだから当然かもしれんけど。

中井出「ならばやっぱりシャモンで……否! ここはロドリゲスで───それも否!
    えーと……プログラムジェノサイドハートより適当な飛行物体を召喚。
    三人分用意して、と……」

 テイルズオブファンタジアのあの飛行機っぽいものを召喚。
 さすがに一人乗り用だから小さいけど、きちんと空も飛べるし攻撃も可能だぜ?

才人  「うわっ……これってもしかして───レ、レアバード!?
     うぅおすっげぇ! 提督ってこんなのまで出せるのかよっ!」
中井出 「飛行機械レアバード。三人分用意したからこれで行くべー」
ギーシュ「これは……乗り物なのかい? 初めて見るが……」
中井出 「乗り物乗り物。えーとまずこうやってこの部分に跨ってだね……」

 で、早速乗り方の説明。
 ルイズ嬢がソワソワ気分でこちらを見ているけど、そのヘンのフォローは才人にやってもらって好感度UPを狙います。

ギーシュ「こ、これをこう引いて……《フワッ……》わああっ!?
     う、うう浮いた……すごいっ、魔法の力以外で浮いてみせたよ!
     これはすごいものだねっ!」
才人  「すげぇっ! ははっ、すげぇーーーっ!!
     ルイズ見てくれルイズっ! 飛んでる飛んでるっ!」

 ……と思ったんだけど、自分で乗り回すので心がいっぱい夢いっぱいらしい。
 仕方ないのでナビネックレスを通じて耳打ち会話を届けると、「あっ」と口を開いてすぐに降りてきた。
 そして寂しげに彼を見上げていたルイズの手を有無も言わさず掴むと、ルイズを自分の前に乗せて操縦桿を握り───空を飛ぶ。

ルイズ「ちょっとサイッ───きゃぁあっ!!?」

 当然、そんな中で喋ろうとすれば舌を噛む。
 ……まあ噛むことはしなかったようだが、揺れた拍子に小さな体をぽすんとサイトの胸に預けるカタチとなり、彼女は顔を真っ赤に染めた。
 そして複雑そうな顔で俺を見下ろすルイズ嬢だが、僕はといえばそんな視線に親指立てて笑ってやった。

ルイズ(あいつ……なんで……。
    貴族が嫌いとか言ってたのに……なんで私に向かって笑ってるの……?)

 ワケが解らないって表情で返された。
 まあ……あれだけ嫌ってる的な言い方をすりゃあ警戒するってもんでしょう。
 だから僕は、彼女の後ろで操縦桿を握る彼に耳打ちを届けてやる。

才人 「ん……な、ルイズ。いろいろと譲れないこともあるかもしれないけどさ。
    貴族として、これだけは絶対に嫌だとか思うこと、あるだろうけどさ。
    譲れない何かも、譲らなきゃいけない時って……やっぱあると思うんだ」
ルイズ「……サイト……?」
才人 「そん時は、そんなもん譲っちまえ。
    そうしちまうことで立てなくなるなら、俺がお前の“1”になってやる。
    お前が周りからゼロだゼロだって言われても、俺がお前の1であり続けるから。
    えーと……なんつーんだっけ? ……ああそうそう。
    “ピンチな出来事が押し寄せてきても、キミと居れば乗り越えられる”。
    一人で解決できないことなら、一緒に解決していこうぜ?
    俺はお前の使い魔で、“成功の証”でもあるんだから。
    お前はゼロなんかじゃない。寂しいって感じたら手を伸ばせ。
    俺もお前に手を伸ばすから。一人になんかしないから」
ルイズ「───……」

 うむ。
 耳打ちを切らずに才人が喋ったもんだから、ばっちり告白めいたものが僕の耳にも届きました。
 まあっ! 才人ったらいけないひとっ(・・・・・・・)!!
 しかしまあ、相手はあのツンデレ界の頭領、といいますか……釘宮様が声を当ててらっしゃるお方なわけですから。

ルイズ「は? あんたなに言ってんの?
    使い魔がご主人様と一緒にいるのは当然じゃない」

 これですよ。
 ひどく侮蔑に近い見下しアイで、そげなことを言ってのけたんです。
 ええ。イーグルアイで見てますから、遠く離れた位置を飛んでようが見えますじゃ。
 普通ならこんな切り替えしはムカリとくるものでしょうとも。
 だが違うな、そこは怒るべきところじゃあねぇんだぜ、才人。
 怒るにはまだ早い……まだ、な。

才人 「───……そっか。当然だったら───ずっと一緒に居られるな」
ルイズ「なっ───《ボッ!》」

 ───そう。こう切り返してこそ、ツンデレ様は狼狽えるッッ!!
 ドイツ軍人は狼狽えぬものだが、彼女はドイツとはまるで関係がないッッ!!
 常識破壊をくれてやるよ───この魔影参謀博光が居る限り、ルイズよ……貴様は才人にベタ惚れになる!
 …………いやまあそのあのええっと、俺も恋愛経験とかかなり少ないですけどね?
 きゃっ……客観的な話ですよ!? 俺に自分自身の恋愛を進めてみろとか、そんなん無理無理っ! ただでさえ手を繋ぐだけでもトキメケがドッキンなのに、そんな恋愛を進めるとかっ……!
 と、道端でウネウネと蠢いていたら、空より舞い降りるグリフォンさん。
 間違えるわけないと思うけど、ジャスティスハリケーンは使わないグリフォンである。
 そしてその背に乗る、銀色の長髪で短めに髭を生やしたいかにも貴公子ですわ風の男こそが───ジャン=なんたらかんたら=ワルドである!

ワルド「どうやら待たせたようだね」

 グリフォンを草原に降りさせると、ふわりと降りてのご挨拶だ。
 被っていた羽のついた帽子を優雅に取り、優雅にお辞儀をする。

ワルド 「此度の任務で君達と同行することになった女王陛下の魔法衛士隊、
     グリフォン隊隊長のジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド子爵だ」
ギーシュ「なっ……魔法衛士隊!?」
中井出 「? さっき自分でも言ったけどさ、結局なんなのそれ。すげーの?」
ギーシュ「すごいなんてものじゃないさっ! 全貴族憧れの存在だよっ!
     当然僕も例外じゃないっ……!」
中井出 「なに言ってんだよギーシュ……お前は既にマッスルボディじゃないか。
     それこそあんな長身ヒゲ野郎なんかじゃあなれない存在……。
     お前は平民にも誇りを以ってやさしく接することの出来る、
     素晴らしきマッスルボディじゃないか!
     俺はお前が魔法衛士隊なんかに劣ってるなんてちっとも思ってねぇぜ!」
ギーシュ「ひ、ヒロミツ……!」
ワルド (……マッスルボディ?)

 ワルドが首を傾げていたが、まあそれはそれとして。
 降りてきた才人とルイズがワルドを発見し、ワルドもそれに気づくや───

ワルド「ルイズ! 僕のルイズ!」

 ルイズを見て両手を広げて駆け寄り……その体をキュムと抱き締め、持ち上げてみせた。
 才人が「んなっ……!」と驚愕の顔をするが、僕は口笛をキュワワァーーーンと吹くと、あたかもウォーズマンがマンモスマンを押さえつけるかのように鎮めてみせた。
 焦るんじゃあねえぜ才人……今はまだ、怒る時じゃあねえ……。
 本当に怒る時ってのはな、才人……こんな時じゃあねえ……それを理解するんだ……。
 言葉ではなく……心でだ。

ワルド「はっはっは、相変わらず軽いなキミは! まるで羽のようだね!」
ルイズ「お恥ずかしいですわ……」

 ポッと顔を赤らめ、ルイズが恥ずかしそうに呟く。
 才人もギーシュも驚愕状態である。
 才人は自分が何処に目を向ければいいのか戸惑うようにそっぽを向き、ギーシュは自分の憧れの役職に就いている人が、あのルイズを抱えていることが理解に至らないようだ。

中井出「あー、子爵? ちと場所を弁えてもらいたいのだが。
    おっと失礼、俺はヒロミツ=バストラルディア=トクホンチール=ナカイデ。
    二つ名は魔王だ」
ワルド「なに……? マントも杖もないようだが───キミは貴族なのか?」
中井出「いや、人間だ。貴族も平民も関係ねぇ……俺は一人の人間よ。
    で、こっちがギーシュ=ド=グラモン。あっちが平賀才人。ルイズの使い魔だ」
ワルド「使い魔だって? ……人間だとは思わなかった」

 そう言うワルドはギーシュに「失礼」と声をかけたのち、才人に近寄った。
 実にきさくな感じで、見た目だけで言えば頼れるお兄さん風だ。

ワルド「ぼくの婚約者がお世話になっているよ」
才人 「へ? こんやく……?」

 ワルド の こうげき!
 ワルド は ザキ をとなえた!
 ミス! 才人 には どういうことだかわからない!
 だから教えてやりました。
 ワルドが、ルイズと親が決めた婚約者同士だということを。
 だが落ち着くんだぜ……そう、そうだ才人……怒るときは今じゃあねえ……!
 怒りそうになった時こそ自分をコントロールだ……それが出来るヤツが、土壇場で一番動けるんだぜ……!?
 それでも見ずにはいられないんだろう。
 才人は顔を赤くするルイズを見るが、ルイズは悪戯がバレた子供のように目を逸らした。
 さすがに才人にショックが走るが───

中井出「じゃ、行こう」

 それが心を支配するより先に、出発を宣言する。
 ぶちぶちやっていても埒もなし。
 レアバードに乗ると、ワルドを促して準備を完了させる。
 ルイズは才人とワルド、どちらの乗り物に乗るかを最後まで迷っていたが───ワルドに「おいで」と招かれ、ワルドのグリフォンへと乗ってしまった。

才人 (………ま、そうだよな。あいつのほうが格好いいし、嫌味な感じもしねぇし……。
    はぁ……俺、ガキだよな……使い魔だからって、なに独占欲出してんだ……。
    いつの間にか、あいつの傍に居るのは俺じゃなきゃダメって気分になってた。
    いいじゃねぇか、婚約者だっていうなら。
    後から来た俺がとやかく言うことじゃねぇもんな……)

 才人もレアバードに乗り、浮上した。
 ワルドはしこたま驚いていたが、グリフォンを駆ると俺達を追った。


───……。


 ギーシュに道のりを訊きつつ、中継地点である港町ラ・ロシェールに辿り着くまで、半日もかからなかった。
 結果としてグリフォンもレアバードも走りっぱなしの飛びっぱなしだったわけだが、誰一人として疲労を口にする者は居ない。
 現在は女神の杵亭って宿屋で談話をしているところさ。
 金はワルドが払うっつーから、僕らは受付から離れたところで話し合っておりました。

ギーシュ「すごいものだね!
     あれだけの速度で飛んでいるというのに、風の抵抗をまるで感じなかったよ!」
中井出 「そういう乗り物じゃけぇのう」
才人  「あ〜スカっとした〜! ぷぷっ、見たかよワルドのたまげた顔っ!」
中井出 「うむうむ、思いっきりブチ抜いてやったわ!
     その調子で怒りは蓄積させときなさい、怒るには早いぜ?」
才人  「……ん、大丈夫だって提督。俺べつにルイズの婚約者でも恋人でもねぇし……。
     あいつ普段、俺のこと犬とか言ってるんだぜ?
     ほんとにただの犬としか見てないんだよ。
     お互い……って言ったらヘンだけどさ、
     恥掻く前に……本気で惚れたりする前に、そーいう関係が解って良かったよ」
中井出 「お?」
ギーシュ「うん?」

 良かったよ宣言。
 あれ? まさか諦める?

中井出「貴様……まさかルイズ嬢を諦めると?」
才人 「……この世界に来てさ、いろいろ知ったよ。魔法とか貴族のこと。
    全部が全部、ギーシュみたいに懐の広いヤツらばっかじゃない。
    親が……貴族の親が決めたことってのはさ、子供じゃ覆せないだろ?
    ましてや恋人でもなんでもない、使い魔……犬としてしか見られてないんだよ俺。
    そんなヤツがデシャバッてなにになるんだよ」
中井出「フム、簡単だ。自分のためになる」

 スッパリと言い返してやる。

中井出「貴様は何を迷っている? 格好いいからなんだ。親が決めたからなんだ。
    本当に相手が好きならよォオ〜〜……力ずくで奪い取るのが男だろうが。
    そりゃあ女がお前のことを嫌悪してりゃあアウトだろうよ。
    けどな、お前が離れりゃあいつはゼロよ。
    いずれ家名にしか誇りを持たなくなる。犬でもいいから一緒に居てやれ。
    犬にはな、話相手になる能力はねーがよ……涙を舐めてやることが出来るんだ。
    何も言わず、ただ一緒に居てやることが出来るんだよ。
    “ともにあるもの”ってのは……それだけでいいんじゃあねぇか?」
才人 「───……提督……」
中井出「使い魔結構。貴族じゃなくても貴族以上の働きが出来ることを思い知らせろ。
    だが、でしゃばることは確かに良くない。今はあいつを泳がせてやればいい」
才人 「……? 泳がせるって……?」

 疑問符を浮かべた才人に、ギーシュも含め近寄るように言う。
 小声で話すのはもちろん内密話さ。

中井出「あくまで予想だが……ああいうヤツほど裏切りやすい。
    考えてもみろ、姫ちゃんが“ゼロのルイズ”を頼ってくる任務だぞ?
    それに対してわざわざ隊長なんかを護衛につけるか?」
才人 「……もしかしてベイガン?」

 ベイガン……FF4での裏切り野郎。仲間になった途端に襲いかかってくる男です。

中井出 「そういうこったろうと思ってる。
     仲間になることで油断させておいて、後ろからザクー! って」
才人  「じゃあルイズが危ないじゃねぇかよ!」
中井出 「フフフ、だがまあ落ち着け。今は泳がせてやればよいわ。
     まだ陽があるってのに、
     わざわざ休憩をとって“ここ”に泊まる理由がきっとある」
ギーシュ「ふむ……確かにそうだね。
     全然疲れていないというのに───しかも火急の用だというのに、
     休憩ならまだしもわざわざ泊まる理由が見当たらないよ」
才人  「───あ」

 ギーシュの言葉に才人がハッとする。
 そうなんだよね、飛行技術を持ってるってーのにわざわざ行かない理由が解らん。

中井出「解った? だから俺達だけで乗り込もう。
    ワルドは邪魔だからここで泊まってもらうことにして」
才人 「ルイズは?」
中井出「連れていくよ? 泊まりたいって言ってるの、ワルドだけだし」

 その言葉を聞くや、才人が可笑しそうに笑った。
 ……さて、そうと決まれば───

中井出「おーいルイズ嬢〜」
ルイズ「? なに? 今ワルド様が部屋を───」
中井出「それなんだけどさ、火急の用なんだからこのまま行くことにした。
    俺と才人とギーシュはそのつもりだけど、お前どうする?」
ルイズ「……はぁ。なに言ってんの無理に決まってるでしょ?
    アルビオン行きの船は明後日にならなきゃ出ないの」
中井出「べつに船になんぞ乗らんし。乗り物があるのに何故別の乗り物に乗らねばならん」
ルイズ「…………言われてみれば、その通りね。
    でもワルド様、もうチェックイン済ませちゃってるのよ」
中井出「休みたいやつにだけ休ませりゃあいいさ。
    お前はどうしたい? 任務を受けたお前にこそ問う」
ルイズ「───そうね。こんなところでぐずぐずしている場合じゃ───」

 と、ルイズが頷きかけた途端。
 「待ってもらおうか」と、重い声が届いた。

中井出「あ〜〜〜ん?」

 振り向いてみれば青年さん。言うまでもないが、ワルドである。

ワルド「きみ達はよく解らない飛行物体でここまで来たかもしれないが、
    僕の可愛いルイズは慣れないグリフォンの騎乗に疲れ───」
中井出「じゃあ手紙とルビー持ってくな。じゃーなーゆっくり休めよ二人とも」

 スチャリと手紙とルビーをかすめ取り、ヒラヒラと手を振りながらクールに去る。
 途端にルイズがバタバタと自分の体を触るが、当然手紙もルビーもあるはずがない。

ルイズ「え? あ、ちょっ……いいいつの間にっ!?」
ワルド「───! 待ちたまえ! この任務は遊びではな───」
中井出「遊びじゃない〜〜〜っ? だったらすぐ出発しようぜぇ〜〜〜っ?
    こんな場所でのんびりしてねぇでよぉおお〜〜〜っ、あ〜〜〜ん?
    それともなんだぁ? 今すぐに行けない理由でもあるのか〜〜〜っ?
    どうなんだよ〜〜〜っ、え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ?」

 涎を溜めて、口の端からネトリと垂らしながら輝く瞳で。
 いわゆる旧時代の画太郎漫画のキャラのような表情で、煽ってやりました。
 したっけ───

ルイズ「うっわむかつく! その顔すっごくむかつくわっ!!」
中井出「ほっといてよもう! わざとやってんだから!」

 何故か先にルイズが釣れた。
 けれども、“わざと”と……思わず出た言葉に、ルイズがきょとんとする。
 次いで、ワルドの目からは解らないように才人を見ると……その才人が、小さく頷いた。

ルイズ「………」

 気づけ、とは言わない。
 記憶が確かなら、ルイズはワルドに憧れていたはずだ。
 しかも彼はトリステイン側の人間で、かなり高い地位に居る。
 そんな身分を捨ててまで裏切りに走るとは、到底思わんだろう。

中井出「で、どうなん?」
ワルド「〜〜……だから、言っているだろう! ルイズが疲れ───」
ルイズ「……ワルド様。先ほども言った通り、私は疲れてなどいませんわ。
    姫様から承りし火急の任務、迅速に達成することこそ今必要な行動です」

 おや? ……お、おっ? もしかして気づいた?

ワルド「い……いや、ルイズ。平気だと思っているのは自分だけで、
    キミもまた自覚していないだけで……!」
中井出「じゃあルイズ、俺達だけで行くべ〜〜〜っ!」
ワルド「! ならばその手紙とルビーは置いて───」
中井出「ハン? 悪いがこの手紙とルビーは、俺が姫ちゃんに託されたもんだぜ?
    な〜〜〜んでお前のために置いていかなきゃならねーの? ン? なんで?」
ワルド「ぐっ……! ルイズ! 僕のルイズ! なんなんだこの男は!」

 そしてあっさり怒り狂う子爵様。
 うむ、やはり冷静っぽくしているヤツをからかうのはたまらないです。

中井出「おいおい……自己紹介してやったのに全然聞いてないとくるよ……。
    だが問われたならば言ってやろう!
    我こそは中井出博光! ここにおわすルイズの使い魔、才人の友人である!」
ワルド「サイト……? ああさっきの、ルイズの使い魔とかいう……。
    では訊くがきみ達。ここで僕を置いていくとして、
    アルビオンへ乗り込んで無事でいられるつもりかね。
    言いたくはないが、どうにも強そうには見えないのだが?」
中井出「お? だったら試してみる? 言っておくが宅の才人は強いぜ?」
ワルド「……フ……結構。なんならまとめて三人ででも構わないくらいだよ」
中井出「じゃあ四人でいこう。ルイズ、ギーシュ、君達の力を貸してくれ!」
ルイズ「え?」
ワルド「エ……?」

 ルイズと子爵がヘンテコな声を出し、ギーシュがニコリと笑って賛同した。
 その後のことといえば…………まあ───

…………。

 宿の中庭にあった錬兵場に、俺達四人は来ていた。
 どうしてこうなった……? と首を傾げているワルドとともに。

中井出「ではまず才人から。GO!」
才人 「よしっ!」
ワルド「なに? まとめてじゃないのかい?」
中井出「馬鹿めが……貴様なぞ才人一人で十分だ。そんなことも解らんのか馬鹿めが……」
ワルド「に、二度馬鹿という必要はあったかね!?」

 言いつつも、互いに6メートルは離れた位置にて構えるワルドと才人。
 才人はデルフリンガーを、ワルドは細身の杖をそれぞれ。

ワルド「さ、いつでも来たまえ」
才人 「……そうかよ。じゃあ───ひゅうっ───“1”っ!!」

 ドォンッ!! ───土が爆ぜる音がする。
 次の瞬間には、ワルドの眼前に才人が迫っていた。

ワルド「! 速いっ!! だが!」

 才人が剣を振るう……が、その軌道には既にワルドが盾として構えた細身の杖が……!
 ガギィンッ!!

ワルド「ぬっ……力強いな……! だが速いだけ、勢いを利用しただけにすぎない。
    戦い方は素人《ドボォッ!!》ぐふぉおおっ!!?」

 ……つーか、アホである。
 受け止めておいて、のんびり話を開始するなんて。
 剣の一撃はただワルドの体勢を多少でも崩すためのもの。
 体勢さえ崩せば、剣の威力に多少の驚きを見せた今なら剣しか警戒しない。
 そこへ、才人が蹴りをぶちこんでやったのだ。鳩尾に思いっきり。

才人 「戦い方が素人? っははーっ、解ってねぇなぁ貴公子サマ。
    これが“平民”の戦い方だ。貴族サマたちみたいに綺麗に優雅にじゃない。
    今を生きるので精一杯な、“人間の戦い方”だ。
    優雅にとか華麗にとか、戦い方を選んでるから付け入られるんだ」
ワルド「ぐっ……」
才人 「あーあー、俺が今、靴に刃を仕込んでたらどうなってたのかね。
    強そうに見えなかったから油断しちゃったのかなー、ワルドさまぁ〜ん♪」
ワルド「《ビキッ!》っ……き、キミは……!
    年上に対する敬意というものを持っていないようだね……!」
才人 「そーいうあんたは年下への感心が全然無いよな。どの口が言うんだよ」
ワルド「………………構えたまえ。もはや加減は───」
中井出「はいしゅーーりょーーーっ!
    ねっ、加減をしたくなくなるほど強いって解ったね!?
    力量を見るだけだもんねぇ! ギョーーーッハッハッハッハッ!!
    それともなに!? ン!? 悔しいから叩きのめすまでやめないの!? ン!?」
ワルド「《ブチブチブチ》ギッ……ギィイイーーーーッ!!!!」

 割って入って正論ぶちまけてやりました。
 そしたら血管ムキムキにしてギーと叫ぶ子爵さま。
 まあつまりアレです、相手を本気にさせれば勝ちだったんですよ。
 それが挑発でだろうがなんだろうが、力量を測るためなら隊長サマが本気でかからざるを得ないとなるだけで十分。
 僕らは早速レアバードを召喚、それらに跨り、今度は才人の前に座ったルイズに親指を立ててみせ、戸惑うワルドをそのままに出発しました。

ワルド「ま、待つんだ! 待ちたまえ! 待っ……チィイッ!!」

 彼が舌打ちするのをしっかりと耳で受け止めながら、にっこり笑ってバイバイビー。
 貴様の思い通りにことが運ぶと思うな……! 貴様なぞ我らの手の中でランバダを踊るムシケラぞ、グオッフォフォ……!!
 ……と、そんなわけで明日か明後日あたりに襲撃に来るはずの、脱獄囚土くれのフーケイベントを完全無視して、一路アルビオンへと飛行を開始したのでした。


───……。


 浮遊大陸アルビオン。
 その姿が、宙に浮かぶ霧の先に見えた。

ルイズ 「すごいわねこの乗り物……風の抵抗が全然無いわ……」
才人  「気持ちいいよな、カタチもカッコイイし」
ギーシュ「おーいサイトー! どちらが先にアルビオンに着くか、競争しないかーい!?」
才人  「おっ……望むところだっ!」
ルイズ 「ちょっとやめなさいよ! ただでさえとんでもなく速い乗り物なのに、
     許可も得ないで突っ込んだら敵だって思われるでしょ!?
     私達がなんのためにアルビオンに行くか、もう忘れたの!?」
才人  「あ……ハイ、混戦中のアルビオンの皇太子に手紙を届けるんでした……」
ギーシュ「む、無益な争いはよくないね、うん」

 FUUUM、しかしそうなるとこのまま突っ込んだのではどのみち捕まる?
 ……と、辺りを見渡してみると、空を飛ぶ船を発見。
 あれって確か、風石とかいうので空を飛ぶ船なんだっけ?

中井出 「では各自! そこらへんに浮いてる船に乗り込み、そのまま入国するぞ!」
ルイズ 「ちょぉおっ!? ななななに言ってんのよあんた!
     そんなことしたらっ……はは犯罪よ!?
     姫殿下の命を受けた先で犯罪を起こす気!?」
中井出 「ばかもん! そんなもの、ようは捕まらず、
     身元がバレずにウェールズに手紙を届ければ終わること!
     顔や特徴となるものの悉くを隠し、船を襲うぞ!
     念のため魔法は使うでない! マントも杖も隠しておきたまえ!」
ギーシュ「本気かい!? 貴族である僕らに犯罪の片棒を───」
中井出 「ギーシュ……お前は貴族でも平民でもない……僕らのマッスルボディだろ?」
ギーシュ「任せたまえ!
     この僕、マッスルボディのギーシュ=ド=グラモンに怖いものはないよ!」
ルイズ 「ちょっとぉおおおおおおおおーーーーーーっ!!!?」

 意気揚々!!
 僕らはこくりと頷き合うと、アルビオンへ向けて空を飛ぶ船へと一気に襲いかかった!!

中井出 「ヒャッハァーーーッ!! ご機嫌だぜぇーーーーっ!!」
才人  「……な、なななんかラピュタのドーラ一家みたいだな……」
ギーシュ「何を言っているのか解らないが、これも安全に入国するためさ!」
才人  「……お前、絶対にノセられてるぞ?」

 このまま勢いよく着陸! といきたかったが、敵さんの方が気づきやがった!
 なにやら海賊チックな格好をした皆様が、こちらに大砲を向けて……ムウ!!

中井出「ジョワジョワジョワ、空飛ぶ船に大砲たあ随分と物騒じゃあねぇか〜〜〜〜っ!!
    ひょっとしてこれは大当たりかもしれねぇぜ〜〜〜〜〜〜っ!!」

 記憶が確かなら、明後日に出るはずの船を襲う船があったはず。
 空賊ってぇやつで、その頭が実はウェールズ皇太子。大砲なんてものを備え付けてあるっつーことは、この船がその空賊の船って可能性が高い。

中井出「“世界”(ザ・ワールド)!! ───時よ止まれ!!」

 考え事をしているうちに放たれる大砲! それを、火闇スキル9:フォアラドゥンク/モード時属性にて解放したザ・ワールドで迎え討つ!!
 ドォオーーーーーンッ!って音とともに全ての時が止まるが、僕とワールドだけは自由に動けるステキ。
 さて……

中井出「大砲の弾か……こんなものでこのDIOを殺せると思うたか」

 目前まで迫っていた弾を撫で、それからニコリと笑う。
 それからパチンと指を鳴らし《コシュッ》…………いいんだ、指なんて鳴らなくても人は生きていける。
 べ、べつにパチンって鳴らせなくても悔しくなんかないんだからねっ!?《ポッ》

ワールド『無ゥウウ駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァアッ!!!!』

  ドガガゴバゴボゴガドドドドガゴバゴベゴォッ!!!

 ワールドが大砲の弾を殴る殴る殴る!!
 圧倒的なる拳の力を以って、ヘコませ、潰し、やがてビーダマほどの小ささになるまで殴り潰し、それを握ると───

ワールド『無駄ァッ!!』

 大砲の筒目掛けてブン投げるッ!!
 当然ソレは止まった世界の中でビタァと止まり、その先には「どうだ……!」といった風情で俺を見上げたままの男……が構える大砲の筒があった。
 不死身ッ! 不老不死ッ! フフフフフッ、スタンドパワー! これだけ揃えば負けはない! でも不死身と不死って同じじゃないかなと、昔の自分は思ったものですはい。

中井出「そして時は動き出す」

 ガゴドォッガァアアアアアンッ!!!!!

船員1「うぎゃぁああああああっ!!?」

 亜音速で飛翔した弾の残骸は、それが爆発するより早く筒へ衝突。
 直後に爆発し、構えていた男を吹き飛ばして筒を破壊した。
 さらに直後、僕はレアバードの上から月空力を実行、甲板へと転移した。

船員2「な、なんだ!? どうした!」
中井出「《ビジュンッ!!》───やあ《どーーーん!》」
船員2「───ひっ!? い、いつの前に後ろに!?」
中井出「うむ! その質問に答える義理は無い! ハーミットパープル!!」

 次にモード然を解放!! 灼闇の魔人を茨の鞭にし、それで船員2を縛り付けるッッ!!
 シュバババババシィッ!!!

船員2「ウゴアッ!? ウンゴアァアーーーーッ!!!」

 驚きの白さ……ではなく驚きの速さで、手足と口を封じてニコリ。
 ウム、もしも相手が鼻詰まりとかだったら死ぬネ。だが知ったことではない。

中井出「おぉっと動くなよ!? 動けば首がコキリ……だぜ!?」
船員2「ウヒィイイーーーーッ!!?」

 人質は確保した。
 あとは……と、ざっと甲板に集まってきている船員を見渡し、声を大にして言ってやる。
 砲台の上からッ! 敵さんどもを見下した上でッ!!

中井出「貴様らの親分を出せ! 交渉といこうじゃあねぇか!」
船員3「て、てめぇ……なにが目的だ!」
中井出「おぉっと妙な行動をとるんじゃあねぇっ! 位置は俺が上! お前らが下だ!
    そしてお前等が交渉の意思を見せなければ、俺はこの船を破壊し尽くすだけだぁ」
船員3「なんの恨みがあってだ! 船は関係ねぇだろうが!」
中井出「エ? …………あ、あーあーあー! そういやそうだった! 博光うっかり!
    あ、じゃあ今のは取り消す今の無しOK!?
    えーとこの船乗っ取ってアルビオンに入ります。
    言うこと聞けば危険ナイネ。アタシ信じるヨロシ」
船員3「…………《クイッ》」
船員4「…………《コクッ》」

 なんらかの合図が送られる。
 しばらくすると、船員の人垣の奥から少年と青年の中間あたりの……まあ少年でいいや。が現れた。
 黒髪、眼帯、髭……わーお海賊だーってくらいの風情だ。
 が、ありゃあカツラに付け髭、そしてどうみても立派な大人って背格好じゃあねぇ。
 まだまだ青臭さの残るマンモーニだぜ。

中井出「素直に出てきてくれて助かったぜ。
    まずはこれを読みな。おっと、他の誰にも見せるんじゃあねえ。
    お前だけが読むんだ、いいな?」

 ハーミットパープルで船員を人質にとったまま、ルビーの指輪の穴に丸めて通してあった新書を投げ渡す。
 頭はそれをパシンッと受け取ると、まずその指輪に驚き、慌てて開いた手紙の内容に驚愕した。その直後にカツラや付け髭や眼帯などを乱暴に取ると、キチッとした動作でお辞儀をしてくれた。

ウェールズ「とんだ失礼をした、大使殿。既に知っていると思うが、
      私はアルビオン王立空軍大将、本国艦隊司令長官……いや。
      その肩書きよりもこちらのほうが通りがいいだろう。
      アルビオン王国皇太子、ウェールズ=テューダーだ」
中井出  「うむ。我こそは原沢南中学校迷惑部が提督、中井出博光である。
      突然の来訪、失礼した。だが姫ちゃんが火急の用だというのでね」
ウェールズ「ひ……姫……ちゃん?」
中井出  「アンリエッタのことである。我は姫ちゃんと呼んでおる。
      さてウェールズよ、積もる話などどうでもいい。
      貴様が率いるアルビオンの民全て、貴様の命とともに我に預けよ。
      ともにトリステインへと亡命することを博光の名の下に命ずる」
ウェールズ「え? あ、いや……命じられる覚えがないんだが。
      私は皇太子であるとともに、この国に命を捧ぐ民の一人だ。
      この国を捨てることなど私には出来ない」

 ワー、きっぱり言っちゃったよこの人。
 もしかしてマジで死ぬ気ですか?

中井出  「敵の数は?」
ウェールズ「5万。対し、こちらは三百だ」
中井出  「余裕だな。よっしゃ、手伝うからブチノメすぞウェールズ」
ウェールズ「───…………きみは、なにをいっているんだ?」

 心底呆れた、信じられないって感情を込めた言葉が降ってまいりました。
 だがこの博光、からかう時以外にウソは言わん。多分。

中井出  「きみじゃない、ヒロミツと呼べ。それか提督。
      いいかウェールズ、
      貴様がアンリエッタの意中の者ならば、覚悟を以って頷け。
      民がどうとか国がどうとかそんなことは二の次だ。
      皇太子ではなくウェールズ=テューダーに問う。
      手紙読んだからには発端を心得ているだろうが、オメーはどうしたい。
      男としてアンリエッタを迎えに行くか?
      それとも皇太子としてここで死ぬか。
      もしくは俺とともに敵を全滅させて、
      大手を振ってアンリエッタを嫁にもらうか」
ウェールズ「なっ……」

 突然すぎる質問に、ウェールズが戸惑いの声をあげる。
 顔は……結構赤かったりする。ううんウヴよのぅ。
 なんだかこちらも恥ずかC。と空を見上げてみれば、レアバードに乗りながら僕らの様子を見ているらしい才人とルイズとギーシュ。
 もうちょい待っててねって才人のナビメールに飛ばしておいた。

中井出「いいかウェールズ、男と男の会話だ。
    そこにもしウソが混ざるようなら、俺はお前を男としてブン殴る。
    お前が答えるべきは、惚れた女を手放してゲスな男との結婚を許すか、
    お前がしっかりあいつを受け止めるかどうかだ。
    選びな、オメーにはその権利があり、資格がある。
    いいか、男としてだ。ロリコン野郎に姫ちゃんの可憐を許していいのか?」

 なにも王だからって、個人を捨てることはない……その意味を込めて言った。
 ……んだけどね、こいつったらこう返してきましたの。

ウェールズ「───……私は皇太子として、それに対して発言することを良しとしない。
      ……手紙を返してほしいんだったね。
      生憎と手元にはなく、ニューカッスル城の私の部屋にある。
      一緒についてきてくれないか」

 って。男と男の会話だって言ったばっかりなのにですよ?
 だったらこっちにも考えがある。つまり皇太子じゃなくなればいいんだよ。

中井出  「よっしゃあアルビオンをブッ潰すぞ!
      そうすりゃ貴様は皇太子でもなんでもねぇ! ただのウェールズだ!」
ウェールズ「なっ!? 何を言い出すんだ! それは───」
中井出  「うーるーせぇ! 俺はウェールズに話し掛けてたのに、
      皇太子として返すお前とはハナッから会話が成り立たぬと判断したッッ!
      だから貴様は俺が勝手に連れ去る! アルビオン!? 5万!? ハッ!
      延々と召喚される黒と死に物狂いで戦った時に比べりゃ屁でもねぇ!!
      許可が降りるならあの大陸ごと滅ぼしてくれるわ!!」
ウェールズ「話を聞いてほしいっ! キミがどれほどの力を持っているかは知らない!
      手紙にはキミのことは手品師としか書いていなかった!
      だがフーケを捕まえたのも突き詰めてみればキミだと書いてある!
      それでも5万を相手に何が出来るというんだ!」

 何が出来るか!? 何が出来るかと申したかコノヤロウめが!

中井出  「だからうるせーってのコノヤロー!
      死ぬことしか考えてねぇヤツが、生き抗おうとするヤツに文句を飛ばすな!
      無様だぜウェールズ! 人としても王としても、そして男としてもだッッ!!
      人として馬鹿にされて悔しいのならば、無様でも生きる道を選べ!
      男ならば惚れた女のためにどうせ死ぬ命ってのを懸けて突っ走ってみせろ!
      王であるならば反乱分子なぞ律してみせろ! たとえ力ずくでもだ!
      その何一つもやろうとしねーお前じゃあ、
      “何も出来ない”に決まってるだろうが!」
ウェールズ「───!!」
中井出  「自分だけでは出来ないのならば頼るがよいわ! 自分以外の誰かにこそ!
      そして俺はそれをする代償として、平民への侮蔑廃止を望む!
      それが、いつになるか解らなくとも約束されるのであれば!
      こんな腐った上下関係の世界を見なくて済む未来にため、
      そう……自分のために尽力しよう!!」

 言葉ののち、ひと呼吸おいてからクワッと眼を見開く。

中井出「ウェールズ=テューダーよ! 我が汝の願いを聞こう! 故に唱えろ汝の願い!
    魔王の二つ名の下、それが俺の行動の軌道上にあるのならば叶えてくれる!」

 叫ぶ言葉にウソはない。
 あくまで“俺の行動予定の中に含まれてもいいものならば”だ。
 面倒ならば切って捨てる! 面倒嫌いだし!
 外道に生きて四千年、博光です。

ウェールズ「…………私は」
中井出  「応。人よ、汝よ、己よ。我が問いに応えよ」
ウェールズ「私は……!」

 わざわざヒロライン側のバハムルの真似をしてみた。
 なんだか無視っぽかった。

ウェールズ「私は! 王としての道を示す! 反乱分子の全てを律そう!
      力を───貸してくれ! 魔王の手品師よ!」
中井出  「うんやだ」《どーーーん!》
ウェールズ「へぁえっ!? ………………え? え……えぇえーーーーーーっ!!?」

 あ。歳相応になった。
 おー、やっぱいいもんだねー、素直な驚きってのは。

中井出  「よろしい、その顔とその驚愕加減が見れただけで十分だ。
      アルビオン鎮圧、手伝おう。
      兵は三百も要らない。俺も含めて三人だけで十分だ」
ウェールズ「三人!? いくらなんでも───!」
中井出  「俺からお前に言えることは一つだよ、ウェールズよ。
      お前は“お前”を信じろ。で、自分の未来を勝手に押し付けてみろ。
      信じるってのは自分の責任だ。
      個人の意思が他人に干渉することを俺は良しとはせぬ。
      口で何をどう言われようと、“決めるのは自分”だ。
      嫌なら嫌と言い、決して譲れないのであれば、
      己の全てを懸けて嫌だという意思を貫き通す───そんな馬鹿にお前はなれ」
ウェールズ「ば……馬鹿に?」
中井出  「そして……王だからといって、なにも生涯の全てを民に捧げる理由はねぇ。
      この際だからきっぱりハッキリ言っておくけどな、ウェールズよ。
      俺は、“楽しい”を探せるのに探そうともしないでうじうじするヤツと、
      生きているのに死に急ぐヤツがヘドが出るほど大嫌いだ。
      死ぬことが出来る……そんな覚悟があるのなら、
      死に直面しながらも生きてみろ!
      自分を覚えてくれている人が居るなら! 必要としてくれる人が居るなら!
      一人じゃねぇならな───ウェールズよ!
      誰に無様だ見苦しいと言われようと! 胸を張って生きてみろ!
      どこまでも自分のために、誰かを守れる結果を残せる自分のためを探せ!
      その生き様こそが貴様という人間を象る!!
      貴様の意思、確かに受け取った! だが今はまだ戦う時ではない!」

 意思を受け取ったからには、もはやこの博光、辛抱たまらん!
 霊章から引きずり出した黒衣でウェールズを包みこむと、その中へと収納!
 驚き走り寄る者どもはこの船ごと影で包みこみ、収納!
 それが終わるや運転手を失い、ゴシャーと飛んでいったレアバードを異翔転移で呼び戻し、落下しながら着地すると再び飛翔した。

才人  「提督!? 船はどーしたんだーーーっ!?」
中井出 「船……そんなもの、最初からなかったのさ……ここにも、どこにも……」
才人  「なにいきなり感動秘話みたいな語りで締めようとしてるのか知らねぇけど!
     どうするんだよこれから!」
中井出 「うむ! 任務完了! 任務自体は完了した! だが俺にはヤボ用があってね!
     これよりアルビオンに突入し、ウェールズの味方全てをかっさらってくる!
     貴様らはトリステインに戻れ!」
ルイズ 「え───な、なななに言ってんのよ!
     ウェールズ皇太子にも会ってないのに……!」
中井出 「さっきの船の中で会った! いーから行け!
     それと才人! ギーシュ! ワルドに気をつけろ!
     あいつは貴族派───レコン・キスタの一員だ!
     あいつがフーケを逃がした張本人だ!」
ルイズ 「───……え?」
才人  「あいつが!?」
ギーシュ「誉れ高きトリステインの魔法衛士隊隊長の彼がかい!?
     それはいくらなんでも───」
中井出 「信じられなかったら意地でもルイズだけは守れ!
     あいつの狙いはルイズの力と姫ちゃんの手紙と! ウェールズの命だ!!
     恐らく地面に辿り着いた途端、もしくは戦いやすい場所に辿り着いた途端、
     仮面の男が攻撃をしかけてくる!
     そいつはワルドの偏在……分身みてぇなやつだから、上手く立ちまわれ!」

 空を飛びながらの会話は叫ばなきゃならんから疲れるなぁくそう!
 だが構わん! 信じないっていうなら実力を行使して───!
 まずイメージを開始! 即座に創造を実行すると、俺の手の中に三つの飴玉が出現する!
 それをルイズ、才人、ギーシュの口の中に転移させる!

中井出 「口ン中に───いいか!?
     口ン中に、受けたダメージを仕掛けた相手に返す飴玉を飛ばした!
     それを飲み込んで全てを理解しろ!
     仮面の男から攻撃を受けてみりゃ、全てが解る!!」
ギーシュ「…………《ごくっ》───“覚悟”を持てって───ことなんだね?」
中井出 「うむ! あ、ルイズー!?
     立派な“ルイズ”になれよ! 貴族であり平民の心も解る貴様になれ!
     んじゃーな! トリステインで、また会おう!!」
才人  「提督も気をつけてな!!」
中井出 「まっかせんしゃーーい!!」

 それだけ伝えると、レアバードをかっ飛ばしてアルビオンへ!
 でも操縦するの面倒だから乗り捨てて収納すると、霊章よりジークフリードを抜き取り、その刀身に乗っかってかっ飛ばし直す!

中井出「各馬一斉にスタートォッ!!」

 視界の先にある巨大な浮遊大陸目指し、ただひたすらに飛翔した。
 もうあれだ、あ〜〜……
 あれが貴族派王党派が血で血を洗っている国アルビオンか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!
 どおれ今日は大暴れしてやるとするか〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!
 と、無駄にマスクドアラジンとブキャナンの真似をしたくなる気分で。




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