10/戦の決着

【中井出博光/いろいろひどい魔王さん】

 ドォッガォオオオオンッ!!!!

中井出「くおぉおおっほぉおおおっっ!!?」

 モノスゲー衝撃!
 お、おぉおお……! よもや敵さんの戦艦にあげな巨大な大砲があろうとは!
 竜騎士なんざ寄越さなくてもあの大砲だけで強ぇえじゃねぇの!

アンリエッタ「っ……さすがは、
       天下無双と呼ばれたアルビオン竜騎士……それらを率いる艦隊……!」
ウェールズ 「距離を取られながらの、あの大砲の連撃はつらいな……!」
中井出   「ウヌヌヌヌ! あげなものを用意しておるなど!
       ありゃあハルケギニアの技術じゃ作れやしねー!
       裏で誰かが糸引いてるぜこりゃあ……!」

 ユグドラシルといえど、あんまり食らいすぎるのはまずいぜこりゃあ……!
 刻震竜のレーザーには劣るけど、だからって平気なわけじゃあねぇ。
 それにもたもたしてっとルイズが虚無を発動させちまうかもしれん。それはいかん。
 僕の中のみんなが、虚無を覚えてから高慢になるルイズよりも、魔法が使えなくても努力を続けるルイズのほうがステキだと叫んでいるのだ。虚無を覚えさせちゃあならねぇ!

中井出「ええい仕方なや! エジェクト、ナハトズィーガー!」

 霊章よりナハトさんを召喚!
 鎖で繋がった二丁銃を手にし、それを空中に放り投げると言を紡ぐ!

中井出「指令部! SUVウェポン起動を申請する!」

 その言に応じ、二丁の銃が虚空へと消え、生じた歪からとある兵器を召喚する。

アンリエッタ「まあ!? それはいったい!?」
中井出   「うむ! S・U・Vと書いてサブと読む!
       このアルファベットになんの意味があるのかは知らんが、
       とりあえずはまあアレだ! …………強力兵器?」

 元は閏璃の武具だが、合成されてるからいつでも使えます。
 そんなわけで、肩に背負う型の兵器(スカウターのようなもの付属)で狙いたいものをロックオン。
 “これを狙う”と意識することでロックオンが完了。
 あとはクッとトリガーを引けば……

ウェールズ「……ところでその兵器には名前はあるのかな?」
中井出  「ウィ? ……ウィ、名前はヘヴンパニッシャー。
      知っている人は知っている、PSOの兵器です」
ウェールズ「……キミの歴史の中で見たな。記憶が確かなら、空から───」

 ピシュンッ───ドォッガガガガォオオンッ!!!

 …………。

ウェールズ「…………天の裁きが舞い降りる」
中井出  「ウィ」

 天から衛星レーザーめいた光が舞い降りた。破壊したのはレキシントン号以外の戦艦。
 レキシントン号は姫ちゃんたちが壊してこそだと僕は思うの。
 故に───

中井出   「さあ姫ちゃん! ウェールズ! あとはキミたちの番だ!
       竜騎士どもは我らに任せ、
       キミたち二人はあのデカブツと敵の頭をブチノメーション!」
アンリエッタ「けれど、どうやって!? 大砲とバリスタだけでは勝てません!」
中井出   「兵器ならまだあるでしょーよ!
       キミら二人の魔力なら、二人だけでも十分だ!
       ……やつらに一発、かましたれぃ!!」

 言うや、SUVウェポンをナハトさんに戻し、空へとダイヴ!!
 フロートを行使して空を飛ぶと、ゲハハハハとバケモノチックに笑って竜騎士に襲いかかる!

中井出「やあやあ我こそは原中にその人在りと悪い意味で謳われし魔王! 中井出博光!
    不可侵条約を破りし貴様らに、絶望と希望を問いに舞い降りた!
    臆さぬならば! かかってこい!!」

 ナハトさんを霊章に戻してジークフリードを召喚!
 それを双剣化、ジークムントとジークリンデにし、さらに六閃化を使うことで十二双剣化! おまけに冥空斬翔剣を発動! さらに四閃をそれぞれに付加させることで四十八閃を完成させる!

中井出「ウェーーーッハッハッハ!! 我が剣舞から逃れる者はあまり居ない! 多分!」

 笑いながら剣閃を放つ放つ放つ!!
 一振りで片方から二十四閃もの剣閃を放ち、寄ってくる敵をバシャバシャと切り刻んでゆく!
 その一撃一撃を超速剣疾風斬で放つため、一息で四連で空を裂く剣閃の数は異常。
 一息で96閃の剣閃に迎えられ、竜騎士たちが落ちてゆく。
 無理すりゃ何連でも出来るんだけど、それをすると盲目になるペナルティが相変わらずあるのでやりません。
 超連歩烈風脚も同じく盲目ペナルティ。故にやるなら一呼吸。四連までです。

中井出「さあ竜騎士たちよ! 雑魚は雑魚同士、楽しもうじゃないか!」

 三下気分を言葉にしてみると、まだ繋がったままだったかずピーとのtellから、「誰が雑魚だ誰が!」とツッコまれました。
 や……だってねぇ? 強いのは武具であって僕じゃねーのは確かだもの。

竜騎士「く、来るな! 来るなぁっ!《がしぃっ!》ひっ───!?」
中井出「ゲフェフェハハハハハカッカッカッカッカッ……!!!
    いぞり投げどすこーーーい!!」

 でも双剣を装備してるからって双剣だけ使うのもつまらん。
 だからね? こう……竜騎士の竜の上に飛び乗って、メイジさんを抱きかかえてね? SUMOUで勝負しました。土俵は竜です。
 したっけ───……ぎゃああーーーーーーーーーーーーー………………───
 ……メイジさんが落ちていきました。
 あらやだ、レビテーションとか使えないのかね。───あ、使った使った。
 健気にもこちらに戻ってこようと飛んできてますよ。

中井出「悟空、修行じゃ」

 ならばと両手に“亀”と刻まれた石を創造。
 それを、飛んできているメイジさん目掛けて投げては創造投げては創造!!

メイジ「《ゴドォ!》へぶっ!《ゴシャア!》べっぽ!」

 馬鹿正直に向かってくるだけのメイジさんにヒットヒット!
 おお、なんと修行熱心なオジサマよ……! こんな弟子を持てて、僕は幸せです……!

中井出「むっ!?」

 とか思ってたら別の方向から飛んでくる竜騎士さん!
 ええいいったい何人居るのかね竜騎士ってのは!

中井出「トタァーーーーッ!!」

 だが臆することなく跳躍します!
 飛んできている竜騎士目掛け、竜の背を蹴り弾くことで一気に接近!

竜騎士「はっ───!?」
中井出「スカイハイラリアットォオーーーーーッ!!!」
竜騎士「《パギョオ!!》ぶべぃ!?」

 その勢いのままにラリアットを食らわせ、竜の背から振り落とす!
 だがしかし彼は即座にレビテーションで体勢を立て直して

中井出「悟空、修行じゃ」
竜騎士「《ドゴゴスバゴゴシャ!!》ギャアアアアアアアアアアアス!!!!」

 修行の餌食となりました。最強。

中井出「いやしっかしホントうじゃうじゃ居るねぇ!
    キミらはなにか!? 夏場のGか!?」

 その気色悪さ、密集した蜘蛛の子が如し!
 なので竜に飛び移ってはうっちゃり、飛び移ってはうっちゃりを繰り返します。
 むしろメイジを投げ飛ばしてからは竜と会話して「お逃げなさい?」と伝え、竜に逃げられたメイジが「待ってくれぇえーーーっ!!」と叫ぶ様はなんともステキでした。

中井出「つーか姫ちゃん!? ウェールズ!? まだ!?
    撃ち方ちゃんと説明したよねぇ!?」

 暴れる内にすっかり距離を離してしまったエーテルアロワノンを眺める。
 そこから魔導砲が撃たれる雰囲気……未だ無し!
 ええいなにをボサっと……ゲェーーーッ!! そうこうしてるうちに相手のほうが撃ってきたよ! 

  がどぉおおおおんっ!!!

 あ、あらら……また直撃……!
 あの、姫ちゃん? ウェールズ? あんまりもたもたしてると、ドリアードが怒り出しちゃうから、そ、そのぅ……でで出来るだけ早く……!

声  「おぉおおーーーーーいい! 提督ぅうーーーーーっ!!」
中井出「むっ!? 何奴!!」

 声がした方へと振り向く! ───と、戦闘機に乗りこちらに手を振るサイトーン!

中井出「おおーーっ! 無事だったかぁーーーっ!!」

 ルイズを自分の前に座らせるなんていう、ヴァカップリャ座りをする二人を前に、僕も大きく手を振って応えた。
 ウーヌ、なにが二人をあげに親密に……!? もしや吊り橋効果とかゆーやつ?
 まあいいや、それはそれとして!

中井出「才人! 次に敵からの砲弾を受けても姫ちゃんたちが何もしねーようなら、
    敵目掛けて特攻かけるぞ!
    もはや何もせずにやられる様を眺めるだけではこの博光、辛抱たまらん!」
才人 「解った!」

 聞こえるように叫ぶと、才人は機体を旋回させ、そろそろ尽き始めた竜騎士団へと突っ込んでいった。

中井出「さて、ではこちらも頑張りますかいっ!」

 双剣を長剣化、ジークフリードに戻し、ラグナロクのギミックを発動。
 紅蓮蒼碧の剛弓へと変異させ、引き絞る矢は竜槍ゲイボルグ。

中井出「“屠竜”!! ぶぅううち抜けぇえええええっ!!!」

 思い切り引き絞ったソレを放ち、風を裂く赤の光を見送るその先。
 要塞を後方から狙い撃とうとしていた竜騎士隊の一人に光は直撃し、貫通。
 その途端に光は三十もの光の矢へと変異し、隊の連中全てに降り注いだ。
 そげなことをした所為か、残ってた竜騎士さんがこちらへ向けて飛んでくる。

中井出「んー……しゃーのない」

 弓を収納。再びナハトさんを召喚して、再びSUVウェポンを召喚。

中井出「指令部! SUVウェポン起動を申請する!
    ───百銃のSUVウェポン! “浪漫幻想百銃(ロマンタジーノ)”!!」

 手に出現した二丁拳銃の他、自分の周囲に夥しいほどのビットが出現。
 二丁拳銃を構えると、待ってましたとばかりにキシリと音を立てるそれらにニヤリと笑みを浮かべ、言を放つ。

中井出「この世納めに見届けな!!《ガキキキキィイインッ!!!》
    ヒャックガァーーーーーーン!! 天中殺!!」

 僅かONEトリガー。
 一度、クッとトリガーを引くだけで、百もの弾丸が放たれる。
 もちろん、ただの弾丸なら竜鱗なら多少防げるだろうけど───可哀想だけどこれ、ステータスで威力が変わる兵器なのよね……。
 弾丸の幕……まさに弾幕に気づいた時には逃走経路一切無し。
 竜騎士さんたちは弾丸の津波に飲み込まれるように……絶命した。

中井出「若すぎる……遅すぎる……そしてなんと弱い……」

 もはや竜騎士も僅か───と思ったら、残りの二人を才人の機関砲、シャルの剣閃がコロがした。
 目に見える位置には、もう竜騎士さんはいらっしゃらなかったよ。

中井出「しっかしなにやっとんのかね、姫ちゃんたち」

 ちと見に行ってみる? うむ、それがいい。
 ───と、ビジュンッと要塞内の砲台広場に転移してみれば。

アンリエッタ「ウェールズ! ウェールズーーーッ!!」
中井出   「ホイ?」

 聞こえるのは悲鳴でした。
 え? なに? なにこれ。何事?
 きょろりと見渡してみれば、腹から血を流して苦しげにうめくウェールズさん。
 で、カタカタと震えながらも笑っていらっしゃる……ナイフを持った王党派の一人。
 ……あっちゃー、貴族派のタコが混ざってらっしゃいました?
 こりゃ撃てねーわけだ。

中井出「いい覚悟だ。逃げ道もねーのによくぞ踏み切った。では死ね」

 そうこぼした刹那、へたりこむそいつの足下からアモルファスを召喚。
 一瞬で噛み潰し、咀嚼し、黒の栄養になってもらった。

中井出「まったくもう……うろたえるんじゃあありません姫ちゃん。
    ……っと、うわ〜毒ナイフかよこれ。傷口がドス黒いや」

 蹲るウェールズに近寄り、傷を見てみれば呆ればかりが浮かぶ僕。
 なるほど、ナイフで刺すなら詠唱はいらないし、魔法ばかりに警戒するハルケギニアの者どもには最高の不意打ちとなりましょうぞ。
 でもね、こげなもんはね?

中井出「どくけしそう〜〜〜〜〜っ♪《ぺぺらぺー♪》」

 毒の成分を分析、それらを破壊する成分を凝縮させた草を創造するだけで万事解決!
 それを姫ちゃんに渡し、

中井出   「これを口の中で汁状になるまで噛み砕きます。
       そして口移しオンリーで飲ませるのです!」
アンリエッタ「!?」

 嘘八百を伝える!
 ただ口に含ませれば治りますが、生憎このワシは……意地が悪ぃのよ……!

中井出   「ちなみに口移し以外では効果がありません。
       空気に触れると効果を散らしてしまうのですよ。
       故にKUCHI-UTSUSHI! さあ! 愛する者のために!」
アンリエッタ「こ、これ以外に方法は……」
中井出   「あらず!!」《どーーーん!!》
アンリエッタ「うぅ……!《かぁああ……!》」

 方法? 腐るほどあります。
 だがこげな時こそ、愛が人を救うのだという状況を見たいじゃないですか。
 なので僕と王党派の皆様は、ゴ、ゴクッ! と息を飲みながら二人の行く末を───

アンリエッタ「み、見ないでください!!
       後生です! そのように凝視されてはっ……!」
中井出   「断る!」《どーーーん!!》
アンリエッタ「えぇええええっ!!?」

 いつでも自分に素直で外道!!
 空気が読めない男として近所でも有名な───こんばんは、中井出博光です。

中井出   「ぶっちゅ! ぶっちゅ!」
アンリエッタ「〜〜〜〜……!!《バッ!》」
中井出   「……おや?」

 ふと、僕の前に差し出されるどくけしそう。
 ハテ? こりゃいったい……

アンリエッタ「なっ……なななにも、わわわたくしがしなければいけない理由は……!」
中井出   「ホイ? …………ゲゲェエエーーーーーーーーーーッ!!!
       なななっななななにぬかしとんじゃいワリャァアーーーーーッ!!!
       俺に男とぶっちゅせよと!? 冗談じゃあありません!
       キミ好きなんでしょ!? 愛しているのでしょう!?
       ほれ! やんなさいほれ! ちゅーだちゅー! ぶちゅー!」
アンリエッタ「このような大勢の前でっ……むむ無理、無理です……!!」
中井出   「なんと! おら〜貴様散れ散れぇぃ!!
       姫ちゃんが困ってんのが解らねーか!」
王党派1  「それを言うなら貴様もだろう!」
王党派2  「一番空気を読んでいない男に言われたくはない!」
中井出   「あら耳が痛い!! だが痛いだけでへっちゃらだから失せるがいい!
       大丈夫! 姫ちゃんの初ぶっちゅは俺がしっかり見ておくから!!」
アンリエッタ「貴方も散ってくださいぃいっ!!」
中井出   「なんと!? 俺に砕け散れと!? ここまで助けた僕に爆死しろと!?」
アンリエッタ「そそそそうではなくて……っ!」
中井出   「ではどういう意味かね! 言ってみてくれたまえ!?
       私にも解るように平明に! さぁ!
       なんと! 言えないとな!? ならばぶっちゅださぁさぁさぁ!!」
アンリエッタ「一秒も待たずに急かさないでください!!」

 急かす中でも苦しげに呻くウェールズさん。
 そんな彼を見て、とうとう姫ちゃんが覚悟を決める……!
 つーか決戦時になーにやっとんのでしょうね、僕ら。

アンリエッタ「ん、くっ……」

 どくけしそうが咀嚼される。
 しゃく、しょり……となんともステキな音とともに、噛み潰されていく。
 それが何度か繰り返されたのち、ついに姫ちゃんがウェールズへと顔を近づけ……!!

中井出&王党派『……ゴ、ゴクッ!!』

 皆様集まりゃ息を飲む音も大きいもの。
 姫ちゃんはいっそ泣き出しそうなくらい顔を真っ赤にして、ウェールズの口へと
 ドッカァアアアアアアアアアアンッ!!!

中井出「ぬおおおおおっ!!?」
王党派『うわぁああああっ!!?』

 ───突然の衝撃!
 何事!? もしや姫ちゃんの羞恥心が天地を揺るがした!?
 じゃなくて、敵からの砲撃が着弾したらしい……煙が出てらっしゃる!

中井出「…………《ブチリ》」
王党派『…………《コキッ、ボキゴキ》』

 原因が解った途端、僕の中で何かが切れ、王党派の皆様は指をゴキベキと鳴らした。

中井出「オイオイ……流石にここは空気読もうぜレコン・キスタよぉお……」
王党派『やってくれるぜアンタら……いいところだったのによォオ〜〜〜……』

 ゆらりと動く僕ら。
 その歩みはゆっくりと、だが確実なる怒りを秘めていて、

中井出「魔導砲! 装填!!」
王党派『YesSir(イェッサァッ)!!』

 口走る絶叫に対し、絶叫を吼え返す王党派連中とともに魔導砲にマナを装填!!
 一発分では足らぬと、幾重にも幾重にもチャージして、敵さんが再び大砲をブッ放してきたまさにその時!!

中井出「お亡くなりになりやがれぇええっ!!!」

 大きな撃鉄をマナを込めた拳で殴りつけ、魔導砲───発射!!

  キヒャァォウンッ───……

 綺麗な音だった、と……誰もが記憶する。
 要塞の搭乗者も、零戦に乗っていた才人もルイズも、そして……タルブ村におわす皆様も。
 放たれた魔導砲はその圧縮率のためか、拳銃の弾丸程度の範囲でしか放たれなかった。
 しかしそれは戦艦を容易く貫き、空間を歪ませ、発生した力場が歪んだ空間とともに元の形に戻ろうとした瞬間……轟音を立て、戦艦を破壊してみせた。
 マナで破壊したってよりは、空間で捻り壊した……って言ったほうが適当だろう。うん。
 お陰で激しい爆発なんてのはなかったものの、レキシントン号がゆっくりと大地へ落ちていく。
 その過程でどこぞの回路が火を噴いたのだろう。
 レキシントン号は燃え、爆発し、崩れながら落下した。

中井出「あぁっはっはっはっは!! 素晴らしい!
    ほら、見てごらんなさいザーボンさん! ドドリアさん!
    こんなに素晴らしい花火ですよぉ!!」

 ……言ってみたかったんだよね、これ。
 うん、目的を果たしたところで、どさくさ紛れに口移しを済ませたらしい姫ちゃんに近づき、ウェールズの体の中から毒が抜けていることを確認すると、傷を癒して回復させた。
 それだけでウェールズは苦しげな表情を無くし、その目にしっかりと姫ちゃんを映した。

ウェールズ 「う……ん……? ア、アン……?」
アンリエッタ「ああ……ああ、ウェールズ様……!」
中井出   「おぉお……愛の、愛の奇跡じゃあああ……!!」

 そしてせっかくだからそういうことにしておく。
 これで一件落着……かね。
 ……っと、まだ敵さんの大将をブチノメしてなかったね。
 えーと……名前なんつったっけ。セルジオ=オリバー? ビスケット=オリバ? オリバ……オリバー……“オリバ”って文字はあったはず。
 オリバーって伸ばしてたかどうか……最初にオリバーがついてたんだっけか? で、続くのが……クロ、クラ、ク、ク……ク……? クラメル? クローヴァー? …………ドアベル=クライニー!! ……それ絶対違う。
 オリバー……オリバ〜〜……ク、ク───クロムウェルっつったっけ?

中井出「……おおっ!」

 クロムウェル! そうだそうだよそんな名前だった気がする!

中井出   「姫ちゃん! ウェールズ! 突撃命令をお出しめされい!
       空中戦艦だけではない! 地上部隊も居ることをお忘れでないよ!」
アンリエッタ「……!《コクッ》───アルビオン貴族派を撃退します!
       戦艦を無くし、浮き足立っている敵軍へ追い討ちを!!」
王党派   『おぉおおおおおおっ!!!』

 よく通る声だった。
 頼りない感を見せていた初対面とは違い、真っ直ぐに前を見つめる目。
 何が彼女をこげに強くしたのやら……! とこんな状況で口にしたら、“それは恋よ”とか誰かが言いそうな気がした。
 ぬふぅううんとか喋るヒモパンマッチョとかさ、ほら。ね?

中井出「まあ、なんにせよ───」

 あとは皆様に任せましょ。
 ペリカンも回収せにゃならんし、後片付け後片付け。


───……。


……。

 後日、トリステイン城下町、ブルドンネ通りでは盛大なパレードが開かれた。
 皆がみんな、少数でアルビオンをブチノメしたアンリエッタを褒め称え、隣に立つウェールズに驚きながらも祝福した。
 いわゆる、王女が女王に即位した日になるってわけだ、本日は。
 そんな中で僕が何をしているのかといえば、

中井出「ウメー! この肉ウメー!」
才人 「あっ! 提督それ俺が狙ってた……!」
中井出「狙ってただけであろう!? 俺なんぞ調味料で名前まで書いてたもんねー!」
才人 「うそつけっ! じゃあこれもらいっ!《スカッ》───あらっ!?」
タバサ「……《もくもく》」
才人 「タバサ!? いつの間に!?」

 ユニコーンの馬車に乗って皆様に手を振る姫ちゃんをガン無視で、屋台で売られていたメシを食いまくっていた。
 祭り、大好きです! なにが好きって、こういう時でしか食えないこういうものが!

ルイズ「ちょ、ちょっとあんたたちっ、姫殿下がすぐそこを通ってるのよ!?
    食べるのやめて、きちんとお祝いの言葉を───!」
中井出「むぐ?《んむんむ……ごきゅり》───むふぅ。
    解っとらんのぅルイズ。
    ここでこうしてメシを食うことも、国へ金を払うことに繋がるんです。
    税があるからね。だからこれは俺流の新たな女王への奉仕!」
才人 「ルイズ、お前も食う? これウメーぞ?」
ルイズ「いらないわよっ!」
タバサ「………」
中井出「お? これ? ほいシャル、よく噛んでお食べ」
タバサ「……《ハムハム……》」

 指差されたものを取ってやり、食べさせる。
 もちろんきちんと金は払ってるさね。
 しかし……なんだねぇ、無口で食べてばっかだと、恋を思い出す。

ギーシュ「しかしなんだね。前線で頑張った僕らにはなんの誉れもなく、
     褒め称えられるのは王女さま……っとと、女王様だけとは……。
     ああいや、喜ばしいことではあるのだけどね、もちろん。
     だが何か欲しいとは思わないかい? ヒロミツ」
中井出 「名誉も勲章もべつにいらんよ。
     女王になるのは嫌がってたけど、皇帝サマと結婚せずに済むってんで、
     あんなにいい笑顔を見せとる。いぃじゃねぇの、それで。
     “楽しそう”でなによりだ。やっぱ人生、楽しまねぇとウソだぜ?」

 言ってから再び肉を食らう。
 焼き鳥みたいなのなんだけど、この食感は日本にはないものだ。ウマイ。

ギーシュ「うーん……貴族としては武勲は誇るべきものなのだけれどね」
中井出 「んーなもん、ひと握りの誰かが解ってくれてりゃそれでいいじゃん。
     自慢したくて戦うわけじゃないし、俺は俺がそうしたかったから戦っただけさ。
     勲章もお褒めの言葉もなーんもいらん。
     仲間が無事に笑ってる“今”があるなら、俺にとってはそれが武勲だ」
才人  「提督……」
ギーシュ「《うず……っ》……う、ううん……なんだか擽ったいね。
     しかし、こう……なんというのだろうね、この感覚は……やっぱり擽ったいね」

 薔薇を銜え、照れの笑みを浮かべるギーシュは実に奇妙だった。や、いい意味で。

中井出「だから僕はメシを食うのです」
才人 「や、関係ないだろそれ」
中井出「……ふむ。笑顔の傍で食うメシは美味いってことさね」
才人 「……そっか。なんか解るよ、それ」
デルフ『俺様食えねぇから解んねぇや』
中井出「ならば届けようこの感覚! ───魂の! 共鳴!!」

 肉を口に頬張り、パリパリの皮と柔らかな肉の食感に頬を緩ませながら、才人の背にあるデルフリンガーを抜く。
 次いで実行するのは器詠の理力での感覚共有。
 すると───

デルフ『おおっ! これが味かっ!
    おーおーこりゃいいねっ! おったまげた! おでれーた!
    次はそっち! おっ、おっ、次はそっち! おぉおおっ!!
    ずりぃなぁおめぇら、いっつもこんな感覚味わってんのかっ!』
中井出「世の中がどれだけ不自由であっても、せめて食と思考は自由でありたいね。
    そんなわけでえーと。姫ちゃんと目が合ってしまった。どうしよう」
ルイズ「どうしようって。お祝いの言葉を───」
中井出「いや、な〜んかヤな予感がしてね? 姫ちゃんたらほら、根が真面目じゃん?
    この功績はわたくしの実力によるものではありませんとか言いそうで……」
ルイズ「あ」
才人 「う」

 才人もルイズも“そうかも”と思ったらしい……って言ってる傍から、姫ちゃんが馬車から降りてこっち来ようとしてるんですけど!?
 だがナイス! それをウェールズが止めてくれた!

中井出「ふう……! まったく危険なことをする……!
    戴冠式だってのに、何をお考えかあのお子は……!
    危うく一大事になるところぞ……!」
ルイズ「……? もし走ってきてたらどうする気だったのよ」
総員 『……キャプチュード(だろ)(だろうね)(……)』
ルイズ「…………キャプ?」

 知らないならそれが一番だと思い、僕らはそれ以上口には出さなかった。

才人  「提督のところに来て、何する気だったんだろうな、姫さん」
ギーシュ「ふむ……褒美をとらせようとしたのかもしれないね。
     自国より強い敵国を倒したんだ。
     もし褒美が設けられるのだとしたら、それは相当なものだよ」
才人  「へ? まさか貴族になる〜とか?」
ギーシュ「ふむ。ありえるだろうね」
才人  「…………まじ?」
中井出 「よしっ……ちょっと行って王宮滅ぼしてくるね……?」
ルイズ 「やめなさいよっ! どーしてそうなるのよ!」
中井出 「だって僕貴族になんかなりたくないよ!?
     もしそれがお礼だというのなら、
     友としてファイナルアトミックバスターで解ってもらうしか……!」
才人  「死ぬだろそれっ!! スクリューパイルドライバーの時点で死ぬよ!!」
中井出 「じゃあどんな体術で仕留めれば解ってくれると!?」
才人  「仕留めるところからまず離れろよ!!」
中井出 「鍵は体術か!!」《どーーーん!》
才人  「そこからも是非離れような!?」《ドギャーーン!》

 グムムー、仕留めるところから離れたならば、体術しか残らんではないか。
 そこから離れたらいったいなにがあると……ハッ!?

中井出「そ、そうか〜〜っ! せ、誠心誠意話し合って解らせるというのだな〜〜っ!?
    大切なのは言葉! OK!?」
才人 「そうそう! そうだよそう! 言葉でいいんだよ言葉で!
    それならなにもそんな、血生臭いことすることないだろ!?」
中井出「解った! 今からちょっと姫ちゃんに呪言かけてくる!!」
才人 「ちょっと待てぇえええええっ!!!」
中井出「え? なに?」
才人 「なにじゃなくてっ……! あぁああもう……!!」
中井出「?」
才人 「本気で解らない顔するなよ頼むからさぁあああ……!!」

 ぬ、ぬう……なにやらサイトーンがてんぱっておられる。
 だがそれよりもぼかぁ貴族にさせられるかもしれんことが心配さ。
 もちろん断るよ? 断るけどね、それでヤなヤツに目ェつけられるのは勘弁ノリスケというか。
 あれ? 前にも似たようなこと言わんかったっけ? まあいいコテ。

中井出「ま、村も無事だし零戦も貰えたし、いろいろ終わったって思っていいのかね」
才人 「……なぁ。あれほんとに俺が貰っていいのか?」
中井出「ええよ? 一度乗れりゃあ十分だったし。
    取りこんだからヒロラインでも使えるし……うん、大丈夫大丈夫」

 レキシントン号もコピーすりゃよかったなぁと思ったのは内緒です。

才人 「けど、こうなると気軽にヒロラインを冒険〜とか出来なくなるよな、姫さま」
中井出「ホ? あー、逆逆。こういう場合はね、逆にヒロラインに来たがるようになるよ」
才人 「そうなのか?」
中井出「うむ。仕事づくめで疲れた時とかは、むしろ猫の里とかに来たがるだろうし、
    そうなったらtellよこせ〜って言ってあるから《ジジッ》………」
才人 「提督?」
中井出「…………《ブッ》……やあ僕博光。
    え? 見世物になるのは疲れた? ウェールズとゆっくりしたい?
    馬鹿お言いでないよ! ヒロラインは逃げ道にあらず!
    きっちり仕事しなきゃ遊ばせません!」

 言いたいこと言って切りました。
 やあ、会話の流れで予想がついたらしい才人が、生暖かい視線を送っとうぜ。

才人 「こりゃ……大変そうだな……」
中井出「まったくじゃわいもう《ジジッ》……《ブッ》───……誰?
    あ、やあウェールズ、元気……ってなに? あんまりアンをいじめないでくれ?
    ちょ……っ! 過保護にもほどがありません!?
    そりゃあボカァ楽しい時を作る企業に負けない生き方したいなとは思っとるけど、
    さすがに堕落させたいわけではないですぞ!?」

 ……再び切断。
 ウ、ウーヌ、もしかして僕、国を堕落させる一歩を踏み出してしまいました?
 いやいやいや、さすがにこればっかりは本人にも頑張ってもらわんと!
 よく言うじゃない!? 仕事とプライベートは別だって!

中井出「……OH」
才人 「んむ? どうかしたのか? 提督」
中井出「や……なんつーかそのー……ぼ、僕マルトーさん手伝ってくるね?」
才人 「へ? や、そりゃさすがにまずいんじゃ」
中井出「いやー……仕事もせずにメシばっか食ってちゃ説得力がないなーって」
才人 「今さらじゃないか? それ」
中井出「《ザグシャア!》はぐぅ!」

 刺さった……刺さりました……。
 言葉ってほんと、刺さるんだねぇ……今さらだけど。

中井出「……そうね。ほいじゃあパレードが終わるまでは待ちますか……」

 そもそも僕にゃあ説得力のせの字すらありゃあせんでした。
 それならそれで、もっと普通の人生も歩んでみたかったなーとは思いもしますがね。

中井出「そういや零戦って今どうしとるんだっけ?」
才人 「コルベール先生に管理してもらってるよ。
    さすがにそこらへんに置いておけるもんじゃないし」
中井出「ナルホロ」

 あの御仁ならば安心か。
 そう頷いて、やっぱり料理に手をつけることにした。
 はてさて、こうしてアニメで見た部分も通りすぎてしもうたわけですが……なるようになりますか、後のことなど。
 我が儘放題突っ走って、その先を見させてもらいましょう。
 そんなことを小さく思い、次なる料理に手を伸ばそうとして……金が尽きたことに気づいた。
 ……いろいろと自由にはいかんもんですよね、世の中って。

中井出「ところで才人。僕、な〜んか忘れてる気がするんだけど」
才人 「なんかって?」
中井出「いやー……零戦を手に入れた時点で出来る、とっても重要なことがあった気が。
    なんだったかなー……えーと……」
才人 「……? よく解んねーけど。そういや知ってるか提督。
    提督が使った、空を明るくする力、結構続いてただろ?
    決戦の次の日って実は十年に一度の日蝕だったんだってさ。
    惜しいことしたよなー、あの能力が途中で切れてれば、見れたかも───」

 ……オヤ?

中井出「………………今…………なんと?」
才人 「へ? や、だから日蝕があったんだって。十年に一度の」
中井出「日蝕? にっしょ……オォオオオオオオーーーーーーッ!!?」

 思い出した!
 やべぇ思い出しちゃった!
 あらまあどうしましょう!

中井出「才人! 大変なことが起きた!」
才人 「! なんだ!? なにが───」
中井出「実はその日蝕に向かって零戦で飛んでいくと、
    日本に帰れたかもしれんのだ!」
才人 「───…………」

 時が、止まりました。
 確か小説でもアニメでも、それっぽいことが言われていたはず!
 この世界にかつて舞い降りた竜の羽衣は二体!
 うち一体は日蝕に消え、もう一体は燃料切れでタルブ村に不時着した……!
 その不時着したのがシエスタのひいおじいさまで、消えたもう片方は恐らく日本に……!

才人 「へ? じゃ、じゃあなに?
    俺達って十年に一度の帰れるかもしれない機会を……」
中井出「…………敵軍撃退記念・ヨシェナヴェパーティーで潰してました……」
才人 「………」
中井出「………」

 泣いた。
 もうね、なんかいろいろ頭の中でぐるぐる回って、泣きました。
 そして僕らは肩を抱き合って唱えるのです。
 生きてゆこう、この世界で、強く……強く、と。
 ええまあその、そんな大事なことを忘れるなって才人に本気で怒られましたけどね?





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