17/チェレンヌさまとチュレンヌさま

【ルミエール=D=カーナ/回想終了】

 で……こんなことになってしまったがね……。

ルミエ「辿り着いた先で、スカロンさんに雇われてる貴様を発見した時……。
    どうして俺は声をかけてしまったんだろうなぁ……」
ルイズ「なんだかんだで様子を見に来てくれたのはありがとうだけど、
    さすがにそれは謝るしかないわ……」

 失敗続きのお嬢様は、もはや何物に対しても謝りたい心境なのだろう。
 「どうしてわたしは安宿で我慢できなかったのかしら……」って遠い目してるし。

ルイズ「でも、女にもなれたのね。最初は何事かと思ったわ」
ルミエ「男のままじゃ、俺の溢れ出る村人パワーで任務があっさり終わりそうだったから」
ルイズ「……確かに村人の中に居そうな顔だわ、あんたって」
ルミエ「でしょ?」
ルイズ「そこ、胸張るところじゃないわよ……ていうか、その。
    な、なななっな、無い胸、張ってんじゃ、ない、わよっ……《じぃい〜〜〜ん》」
ルミエ「貴様こそ、“初めて言えたわ……!”って顔で感動してんじゃないわよ」

 乙女心は複雑らしい。
 まあともかく、そんなこんなで働いてるわけだ。
 シャルとシエスタにはきちんとメールで、急務が入ったってことを報せてある。
 だから遠慮は要らないって感じで働いているわけだ。
 しかしなんというかこう……刺激はあれど、目的が果たせずにモヤモヤしていた。


【SIDE】  故に仕事が終わったのち、僕は飛んだ。  そう、僕は楽しいを知らない者に楽しいを伝えたい修羅なのだ!  それをもう一度自覚するためにもと、仕事が終わるや男に戻り、空を飛んだ。ジークで。  そしてドラゴンボールもかくやというほどの氣の探知(楽しいを知らぬ者の氣)を探り、国を飛び越えたりしたのです。 中井出「むむっ!? 強い反応アリ!」  ガリアへ辿り着き、適当に飛行していると、強い反応をキャッチする。  もちろんそんなもんを本当にキャッチできるのかといえば、そうでもないのだが。  ガリアの北西部、孤島と呼べるような場所の、しかも岩山に囲まれた位置にあった。  孤島といっても岩山があるために陸路からではいけないというだけで、船か飛行能力さえあれば行けるような場所だが……まあそんな場所だからだろう。中に人が居るのなら退屈してるに違いないと思ったのだ。 中井出「ジョイヤァー!」  海に囲まれた、島の輪郭から突き出たようなそこは、辿り着いてみれば修道院だった。  修道院……初めてその名を知ったのはスーファミのドラクエ5だったなぁ。  しかも修道院って名前の城かと思っていたほどだ。アホだね俺。  ともあれ、ドアをノックして、出てきた人へと「今! 楽しいを知る時!」って元気に言ったら扉を閉められた。むしろ目の前で鍵をかけられた。 中井出「……あれ?」  締め出された? いや、入ってないんだから出されたとは言わんけど。 中井出「え? や、ちょっ……開けて!? 僕楽しいを教えにきただけだよ!?     こんな場所では退屈してるだろうなって! なのになんで!?」  返事はない。  なるほど、これはどうやら本格的に堅物なようだぜ……?  楽しいを知らないからそんな性格になったに違いない……ならば無理にでも進入して……楽しいを教えなければ!! たとえ迷惑だったとしても! だって───その方が面白いから!! ……。  で…… 院長 「なにをやっているのですっ!!」 中井出「ゲェーーーッ!!」  第一作戦。ピッキングして侵入したところを発見され、蹴りだされた。 ……。  第二作戦。 中井出「説法しにきました。中に入れて?」 院長 「間に合っています」  コールタール漬けにした服を纏って牧師の真似をしたら、鼻をつままれながら門前払いされた。  うう……アタル兄さんのバッキャロー……この汚れ、絶対落ちねぇぞ……? ……。  第三作戦。 中井出「遊ぼうぜ!」 院長 「お引き取りください」  直球は無理があった。 ……。  第四作戦。 中井出「チワー! 新聞の勧誘でーす! 新聞取りません!?」 院長 「………」  無言で扉を閉められ《ガキィッ!》 院長 「なっ……なにをするのです!」 中井出「そんなぁ、冷たいこと言わずに取ってくださいよォ。     あ、なんなら映画のチケットとか《メキメキメキメキ》ギャアアアア!!」  締められる扉に無理矢理足を突っ込んだら、無遠慮に無理矢理締められた。 ……。  第五作戦。 中井出「セリャーーーッ!!」 院長 「!?」  律儀に開けてくれたのを見計らい、強引に押し入る!  ……囲まれてボッコボコにされて叩き出されました。  うん、勝手に入ったの僕だから、反撃する理由がないしね……。 ……。  第六作戦。 中井出「ハローアゲェィン」  普通に窓から侵入した。  その際の言葉がデモンズソウルの荷物番の挨拶である理由は特にない。  ゴーホホホ、院長め、いつも正面から来ていたから油断しておったのだろう。  でもあの人いい人だ。日に何度も訊ねても、きちんと話は聞いてくれたし扉も開けてくれた。 中井出「さてさて」  しかしそれとこれとは別だ。  僕は静かにチュドームイン……もとい、修道院の中を移動し、人が通ればゲンバリング(天井に張り付いて移動する技術。事実とは異なる)し、退屈してそうな者を探し回った。 中井出「ア」 おなご「あ」  しかしまあなんでしょう。  ゲンバリングしているところを一人の少女に発見されてしまったのだ。  何かを思い、天を仰いだ彼女が俺を発見したのは、ただの偶然でしかなかった。 中井出「やあ」  でも会ったらまず挨拶だよね。  にこりと笑って挨拶すると、きちんと挨拶を返してくれた。  叫びそうになってたんだけど、修道女は礼儀を忘れないらしい。挨拶してよかった。  お陰で戸惑いも少し隠れてしまったようで、彼女はとりあえず様子を見る姿勢を取ってくれました。謝謝。 中井出「どうも、怪しい者です。     娯楽を伝える者として近所でも有名な博光がやってきたよ?」 おなご「……ご、娯楽、ですか」 中井出「実はわたくし、道化を生業にしたいなと日々思っている未熟者でして。     出来れば話を聞いていただければと院長さんに話をしたら叩き出されまして」 おなご「まあ! では騒がしい殿方が何度も訊ねているというのは、     あなたのことだったのですか!?」 中井出「その通りです。あのー、出来れば話だけでも聞いてもらえませんか?     僕は人々に楽しいを知ってもらいたいだけの、しがない時の旅人なのです。     ていうかそんなに驚かれると院長に見つかるので、せめて静かに」  僕がそう言うと、彼女は「ではこちらへ」とひとつの部屋へと僕を連れ込んだ。  しかしながらこんな簡単に匿ったりしてくれるもんだろうか。  もしや拷問室だったりして、僕はひどい目に遭うのでしょうか……そう思っていたのですが、部屋の中には別の修道女が何人か居るだけです。  だから僕は、ああきっと集団私刑にされるのだなと、ある意味覚悟を決めたのでした。 中井出「やあ僕博光。楽しいを知らない、または求める人に、楽しいを伝える人です」 おなご「……? よく、わかりませんわ」 おなご「殿方ですわよね?」 おなご「きゃあっ! 殿方など久方ぶりに見ましたわ!」  修道院はこれで結構騒がしいようです。  得体の知れぬ男に対して、興味をまず先行させるとか……なんと逞しいことでしょう。  訊けばこの修道院、半島として岩山に仕切られているため、やはり娯楽は皆無に等しいらしい。だからちょっとのことでも彼女らにとっては凄まじい娯楽らしく、僕は僕のレーダーが役立たずではないことに無意味に喜んでいた。  なので全力で楽しませることにしました。  楽しいを知らぬのは、人生の損だと僕は勝手に思います!  ていうか絶対ボコられると思ったのに、追い出されもしないことにとにかく驚きました。 ……。  楽しいを知ってもらう時間は長いこと続いた。  つーかこの人達、娯楽に貪欲すぎる。  相当退屈な日々を過ごしてたんだなぁって容易に理解できるほどに。 中井出「そうして、彼らは幸せに暮らしたのです」 おなご「まあ、ステキなお話!」 中井出「しかしその幸せは長くは続きませんでした」 おなご「!?」  修道女たちは俺が語るお話のひとつひとつを真剣に聞いてくれます。  もちろん俺がフツーのお話なんぞするはずもなく、幸せをブチ壊しつつも楽しいお話を何度も何度も語ります。 おなご「また四天王が出てきましたわ……!     それもまた、四天王最弱であることを自負していらっしゃる……!」 おなご「きっと謙虚なのですわ」 おなご「敵ながら天晴れとは、こういう時に使うものなのですね」  そして何故か四天王話がフツーに受け入れられていた。  それが嬉しくて、ついつい話を続けてしまう。 中井出「っと、そろそろ寝ないと明日に響くね。話はここらにしませうか」 おなご「まだ大丈夫ですわ」 おなご「そうですわ、いっそお泊りになって?」 中井出「どんだけ警戒心ないんですかキミたちは」  きゃいきゃい騒ぐ修道女たちは、本当に暢気なものである。  その中でもまだ純情っぷりを見せてくれるのは、俺を部屋へと招いてくれたお子、ジョゼットくらいだろう。  なんでも赤子の頃に箱に入れられて捨てられていたとかで、正真正銘の箱入り娘だ。  いや、冗談ですごめんなさい。 中井出  「しかし捨て子か……ひどいことするね」 ジョゼット「きっと事情があったのですわ。私たちでは想像出来ないような、深い事情が」 中井出  「……そか。親を探してみたいとは思わないの?」 ジョゼット「見てみたいとは思いますが、手掛かりがこの銀の聖具しかありません」  ジョゼットが、首にかけている銀色のブツを見せてくれる。  彼女が言うには捨てられていたときには既に首にかけられていたそうな。  で、それは絶対に外してはなりませんと厳重注意されているとか。  聖具を外すということは、始祖と神の恩寵を一気に失うことになるそうで、死ぬかもしれませんよと釘を刺されている、というのだが。  分析してみると、確かに妙な魔力的なものを感じた。   ◆魔法の銀ペンダント。姿を偽る魔法の道具。身に付けることで発動。  とのこと───って、え? 姿を偽る? 中井出  「………」 ジョゼット「?」  見てみたいと思うのは僕の勝手な好奇心。  おそらくは彼女自身も知らないであろう自分の本当の姿。  赤子の頃に捨てられ、その時からつけていたとなれば、もう十と何年も偽りの姿のまま過ごしてきたってことだ。  うぅう〜〜ん見てみたぁあ〜〜い!! ……と、アニメギャラクシーエンジェルのノーマッドの真似をしていないでと。 中井出  「ふむ」 ジョゼット「《なでなで》ひゃうっ!?」 おなご  「まあ! ジョゼットさんが頭を撫でられているわ!」 おなご  「ジョゼットさんがリンゴになちゃった!       とれたての、おいしい真っ赤なリンゴ!」 ジョゼット「ち、ちがっ……“なちゃった”って言うのやめて!」  ここでは誰かが赤くなるだけでも相当な刺激なようだ。  しかし、孤児か。  どんな理由でお子を捨てたのかは解らんが、理由を知ってみたいと思うのは余計なお世話とか野次馬根性に近いもんだよな。  でも、なぜか気になった。  だから分析したままのものをコピーして、霊章に保管した。
 ───それから、数日が経ちました。  仕事をし、タルブやオルレアン公邸や修道院を回り、楽しみながら過ごす日々。  そんなある日のことです。 ルイズ「もうやだ、わたしかえる」  目をまんまるくしてえぐえぐと泣くルイズ嬢が、あたしの拳を中心に大回転した。  狭い部屋、というか寝室での大回転は、見事の一言につきた。 ルミエ「ルゥ〜イズちゃぁ〜〜ん♪ ……もっぺん飛ぶ?」  ……声をかけても痙攣するだけであった。 才人 「お、おいおいっ! 無茶するなよっ!」 ルミエ「お黙り! どーせ城でも姫ちゃんの言葉に二つ返事で了承したんだろ!     そのくせチィとばかし失敗が続いたからって“やだ”だの“帰る”だの!     今のは平民たちの努力を受け止めようともせずに投げ出そうとしたことへの、     平民たちの怒りの鉄拳と受け取りなさい!!」  ヒロラインパワーで回復したルイズがのそりと起き上がる。  しかし相変わらずえぐえぐと涙ぐみ、いろいろぶちぶちとこぼしている。 ルミエ「いい加減におしよ! みんなこうして生きてんの!」 才人 「そうだぞルイズ。貴族くらいなんだからな? なにもしないでも食えるのなんて。     殴るのはやりすぎにしたって、今のはお前が悪い。     姫さまに頼まれて、お前やる気だったじゃんかよ」 ルイズ「サイト……だってぇええ……」 ルミエ「とにかく情報収集が仕事なんだから、情報さえ手に入れりゃあいいのよ。     ていうかルイズ? あなた、貴族貴族っていうくらいだから、     それなりの作法は身につけているのよね?」 ルイズ「ふぇえ? ……ぐすっ……そ、それは、当然じゃない」 ルミエ「だったらその通りでいいから、貴族に対する行動で示してみせなさい。     相手は平民ではなく貴族。そう思ってやれば、あなたの態度も綺麗になるわ」 ルイズ「あ…………で、でも平民相手に───」 ルミエ「そういう仕事だと割り切りなさい」 ルイズ「うぅうう……!!」  やっぱりいろいろと引きたい線があるらしい。  しかしグッと胸の前に持ち上げた拳を握っているところを見ると、決心はついたようだ。  が、チラリチラチラと才人を見ると、ぽつりと言った。 ルイズ「それは……解ったわ。なんとかやってみる。     でも……サイトは? サイトはいいの?     その、わたしがそういうことするってことは、     他の男がわたしに触るってことで───」 才人 「手を握られたら、あとで俺が握りまくる。     ていうか厨房に下がったら手ぇ拭け。むしろ俺が拭く」 ルイズ「は……? な、なんでよ」 才人 「………」  ルイズからは見えない位置から、ニヤリと笑ってやる。  そして、“ここで言わなきゃヤケクソになって、客にいろいろなことを許すかもしれん”と脅しをかける。  “いろいろなことって?”と視線で返される。  “プライドが変な方向に向かって、チップを手に入れるためならば体さえも……!”そう紙に書いてみせてやると、才人の目がクワッと見開かれた。 才人「ル、ルイズに触っていいのは俺だけだからだっ!    他のやつらなんかに触らせるもんか!」  結果は……ラブである。  独占欲強かったんだな、才人って。 ルイズ「は、はぁ? なななんで、いつからあんただけのものになったのよっ!     そんなのあんたが決めることじゃ───」 才人 「うるせぇ! そんなの許せるかっ! しょうがないだろ嫌なんだから!」 ルイズ「なによそれ!」 才人 「なんだよ!」 ルミエ「あぁ〜あはいはい、どうどうどう。ルイズ、アレだ。     才人が他の女にデレデレする場面を思い浮かべてみなさい?     胸見てデレデレして、誘われるままに胸触ったりとかしてる場面」 ルイズ「殺すわ」  即答でした。  頭に“超”をつけたくなるほどの。 ルミエ「ね? それと同じ状況なのよ、今の才人は。     あなたが自分以外の誰かに触られるのがたまらなく嫌なのよ」 ルイズ「え───」 才人 「ぬわぁあああああっ!!?     ななななんであんたはそうやって人の秘密をべらべらとっ!」 ルミエ「だってじれったいんだもん」 才人 「じれったいって……じゃあ提督こそ、ドリアードさんとはどうなんだよ」 ルミエ「えへへ、ぶ、文通してるんだ、僕たち」 才人 「どこの奥手さんだよあんたはぁああああっ!!     え!? 好き合ってるのに文通!? 普通に会えよ!     つーかその姿で照れるなよ! なんか地味に可愛くて腹が立つ!」 ルミエ「うるせーなァァァァ!!     恋人関係にもなってねぇヤツにうだうだ言われたくねぇわよ!!     恋人でもないのに他人相手に嫉妬嫉妬って、大概におし!     そんなに嫉妬するなら恋人にでもなりゃいいじゃないのよさ!」 才人 「えっ……」 ルイズ「なっ……!?」  あたしの言葉に真っ赤な二人の図。  だがね、本当にいかん。いかんのよ。  嫉妬だけは醜い。嫉妬だけではつまらんぞ。  そりゃね、恋人同士なのに一方が移り目とかするんだったら嫉妬も怒りも解る。  だがそうでもないのに嫉妬をし続けて攻撃……これはあまりにひどいでしょう!  一方的なのなんて恋愛じゃないやい! だって、だって……!  愛は……広がってゆくものだから……!  ということを熱心に語ってみたら、 ルイズ「言葉はすごく立派で胸に来たけど、あんたに似合わないことはよく解ったわ」  真顔でそんなこと言われました。 ルミエ「すごいでしょ?」 ルイズ「胸張れるあんたがすごいわ」 ルミエ「乙女ですから」  ポニーで結った長い髪をファッサァと払いながら言う。  その際、目は閉じてるとなんとなくサマになる気がしませんか? 才人 「つーかさ。数日前から始めたチップレース……だっけ?     あれに勝ったとして、なにがあるってんだ?」 ルミエ「ギーシュが死にます」 ルイズ「死なないわよ! ていうかサイト! あんたもちゃんとその場に居たでしょ!?」 ルミエ「うん居たね」  チップレース。  お客から貰えるチップの量を競う、おなごの戦いである。  それにはスカロンの娘であるジェシカも参加していて、今のところトップ激走中だ。  ちっ、どいつもこいつも豊かな胸にばかり目を向けおって。 ルイズ「私がダメでもあんたが居ればって思ったのに……」 ルミエ「巻き込まれるこっちの身にもなりなさい、ばかルイズ」 才人 「ぁん……そういやさ、提督はどんな接待やってるんだ?     俺、なんだかんだで見たことないんだけど」 ルミエ「胸触ろうとしたら井之頭式スタンディングアームロック。     尻触ろうとしたらトルネードフィッシャーマンズスープレックス」 才人 「お前に接待される客に心底同情する」  お陰でチップ数は少ない。  そんなもんである。 ルミエ「才人こそどうなのよ。     皿洗いしてるけど、随分とジェシカに言い寄られてるようじゃない」 才人 「失敬なこと言うなよ。なに言われたって断ってるって」 ルミエ「でも大きな胸には目が行くと」 才人 「男の子でごめんなさい」  やっぱりこんなもんである。  男はやはり大きなお胸がお好きか。解らんでもないが、愛した相手のものでなければあたしは嫌だ。そういう自分になれた。エロマニア時代はどうかしていたのよ。  しかし残念なことに、あたしとルイズはペタリだからなぁ。  その事実だけで姉妹であると納得されたり、あたしはあたしで黒髪であることで才人とキョーダイであることは納得してもらった。……本気で信じてるかは怪しいからこそ、ジェシカは才人に迫ってるんだろうが。 ルミエ「とにかくチップレースも明日で最後。     優勝すれば魅惑のビスチェがもらえるらしいから、頑張りなさいルイズ」 ルイズ「なに他人任せで終わらせようとしてるのよ! あんたもやるのよ!     むしろ私より頑張ってよ!」 才人 「あ。提督なら一発で出来ることあるじゃねーか! ほら、CHRをいじくれば!」 ルミエ「却下です。相手を魅了して金を巻き上げるなんてしません。     チップというのは、客が楽しんだからこそ等価として出すものです。     それを無視して操って巻き上げるなど……」 才人 「う……そりゃ、確かに。そこまで行ったらちょっと引くかも。     ……で、提督。なにやってんだ?」 ルミエ「え? チャームの練習。楽しませて、等価として出させりゃいいんだから」 才人 「しんみりとした納得の瞬間を返せ!!」  なんでか知らんが怒られた。 ───……。  その夏は……暑かった。 ルミエ&ルイズ『いらっしゃいませお客様。魅惑の妖精亭へようこそ』  ルイズが優雅に、あたしが元気に挨拶する。  そんな姉妹としてのステキな連携を整えるのに時間は要らず、一人が失敗すれば一人をフォローしジリジリとチップを集めた。  ルイズもまだまだレベルが低いが、ヒロライン経験者だ。  なのでステータス移動も出来るので、カリスマを上げることは出来た。 ルミエ「今宵のあなたが、どうか楽しんでいられますように』 客  「ハッ……ハハァーーーーーッ!!」  ただ困ったことに、カリスマ上げすぎると平民の皆様がひれ伏してしまう。  仕事仲間まで平伏してしまうので、シャレになりません。  なので適度な数で目を引くだけにとどめ、あたしとルイズは着実にチップを集めていた。 ルイズ「姉様っ、このままっ」 ルミエ「ええっ、このままっ」  しかし所詮ジワジワとだ。  平民一人からもらえるチップなど微々たるものだし、ジェシカには到底敵わない。  いや、別に勝てないからってどうだってわけでもないのだ。  勝てたらルイズがガキ呼ばわりされなくなるだけ。  あたしにはなんの利点もない。ただこれも経験だと、首を突っ込んでいるだけだ。  未知のものから楽しいを発掘する……こんばんは、ルミエールです。 ルイズ「…………《ぶつぶつぶつぶつ》」  ところで、ウソで塗り固めた媚を売る自分に、鳥肌までして震えているルイズ(妹役)はどうしましょう。そこまで嫌か、平民のフリは。  しかしながら忘れてはいけないのが情報収集。  ルイズがいっぱいいっぱいで目を回す中、耳を澄まして客の声を聞く。  数日前からだが、結構な噂は流れているのだ。  主に、アンリエッタへの陰口だが。 客1「戦争か……嫌になるよな」 客2「だよなぁ、“聖女”なんて言われちゃいるけど、政治のほうはどうなのかね」 客1「そうそう。雰囲気はいいけどまだまだ子供ってくらいじゃねぇか。    世間知らずのお嬢様に国の未来が握られてるなんて、考えるだけで怖ぇえよ」 客2「あのタルブの戦いだって、たまたま勝てただけなんじゃないか?    むしろ兵が居ての戦であって、“聖女様がなにをした”なんて聞いてねぇし」 客1「次は勝てるのかね」 客2「政治も戦もダメだったら、もうお手上げだろ」  好き勝手言いまくりですが、民ってたぶんこんなもんです。  言うだけならタダだ、しゃーない。 客1「こんなことならアルビオンに治めてもらったほうが、国も安心なんじゃねぇか?」 客2「馬鹿言うなよ、急に治めるヤツが変わったら、どんな難題ふっかけられるか」 客1「つってもよぉ、また税が上がるらしいじゃねぇか。    王はいいぜ? 口で言うだけで金が集まるんだから。    けど俺達ゃ口でなに言っても、    “ならば出ていきなさい”って言われれば住む場所を無くす」 客2「貴族ってなぁそんなに偉いのかね……。    偉いならさっさとアルビオンに攻め込んでほしいもんだ」 客1「勝てたらなにか変わるかね」 客2「そりゃ、戦争がある程度沈静化するだろ」 客1「で、調子付いて次の戦のため税を上げる? 軍隊の強化だかなんだか知らねぇが、    そんなもんは貴族サマの財布から出した金で強化しろよな」 客2「兵が強化されて戦死する前に、俺達が過労と飢餓で死んじまう」  まったくもっての正論が飛び交っていた。  酒飲みの平民の間では、国への不満をぶちまけるのがストレス発散なんだろう。  懐かしいなぁ、俺もよく日本の頭はまったく……とか言ってたもんだ。  自分の暮らしが安定しないから、とりあえず文句言ってただけのような気もする。  ただ、自国が大変な時にまで、他国に金を出す姿勢が好きじゃなかったのは覚えてる。  金で繋ぐ友好なんてもろいもんだ。友好は金勘定でするもんじゃない。 ルミエ「ふうっ……っと、いらっしゃいま───せ?」  溜め息ひとつついたところで羽扉が開き、新たなお客さまがやってきた。  もちろん笑顔で挨拶をするのだが、どうもおかしい。  明らかに平民の姿ではなく、嫌味ったらしく高価そうな装飾服を着飾った貴族サマが、部下っぽいのを数人連れてやってきた。  肥え、ハゲかかり、背が低い。  いかにもな姿だ。  しかしどうやら初めてくる客ではないらしく、そいつが入ってきた途端に店の中がシンと静まった。どうやら嫌なヤツっぽい。だって仲間のおなごがみんな嫌そうな顔してる。  これは貴族だからだとかは関係なく、相手が心底嫌なヤツっぽい。 スカロン 「こ、これはこれはチュレンヌさま、ようこそ魅惑の妖精亭へ。       ですが、生憎この通り、満席になっておりまして……」 チュレンヌ「ふむ、うぉっほん! 店は繁盛しているようだな、店主。       だが満席、ということはなさそうだが?」  やってくるなり偉そうであり、言葉を放ちながら手下か部下の下級貴族に合図を送る。  すると何人か居るそいつらが杖に魔法を籠め、チカチカと光らせると、それを見た平民たちは恐怖のために酔いを覚まし、そそくさと店を出て行った。  残されたのは、がらんとした店だけだった。 チュレンヌ「繁盛しているというのは私の見間違いだったようだな、ふぉふぉふぉ!」  でっぷりと膨らんだ腹を揺らしながら、そいつは笑っていた。  スカロンも、ジェシカを含めた仲間も物凄く嫌そうな顔をしている。  そんな空気も読まないままに、中心の大きな席へとドッカと座り、そこに居た客が開けて飲むはずだった、まだ手がつけられていないワインを勝手に飲み始め……近くに居た金髪のマレーネさんをジロジロと見て、ニタリと笑う。 チュレンヌ「客が来ているというのに誰も酌に来んとは……!       誰かこの徴税官のチュレンヌさまに酌をする者はおらんのかぁ!       ……ふんっ、しかしこの店は随分と儲かっているようだなぁ!       このワインはゴーニュの古酒じゃないかね!?       そこの娘が着ている服は、どうやらガリアの仕立てらしい!       これは課税率を見直す必要がありそうだなぁ!」  …………。  下品な笑い声に、奥で皿を洗っていた才人がやってきた。  そして中心のデヴを見て、心底嫌そうな顔で「あいつか……」と口にした。  そんな才人と目が合って、アイコンタクト開始。 ルミエ(あのデヴ、ブチノメーション) 才人 (揉め事、イケナイ、ダメ)  だめなようだった。  スカロンに送っても同じ結果で、ジェシカに送ったら“自分もそうしてやりたい”って返事が。でも立場上それはできないとのこと。  税を上げられれば店が潰れるという理由からだった。  しかしそんな中、勇敢にもチュレンヌさまへ向かうおなごが! ってルイズかよ! ルイズ  「お客様は……、素敵で───」 チュレンヌ「なんだ! この店は子供まで雇っているのか!?」  お客様は素敵ですわね、で始まるルイズのマニュアル接待が途中で潰された。  ビキィと彼女のコメカミあたりに青筋が浮かぶが、それでも接待を続けようとする、あなたの成長した忍耐にカンパ─── チュレンヌ「……? なんだ、子供ではなく胸が小さい娘か。       そのように小さくては相手にも事欠くだろう。       顔立ちが良いのにそれではなぁ。       どうだ、客が来たら、胸と性格が慎ましいのが自慢ですと言うのは」  ……ルイズの足が小刻みに震える。  顔は怒りを通り越した所為か赤から白へと変わり、拳がギゥウウと握り絞められ、 チュレンヌ「だが嘆くことはないぞ? どれ、このチュレンヌさまが、       その小さな胸を大きくして《メゴッチャア!!》ブギャアゥェ!!?」  ヘルユー。  駆けたあたしと才人の足の裏とルイズの拳が、チュレンヌさまの顔面にヒット。  勢い任せにドッカァーンと椅子ごと倒れるチュレンヌさま。  そんな彼の胸倉を掴んで起き上がらせた。 チュレンヌ「き、貴様ら! 自分がいったいなにをしているか!」 才人   「うるせぇ! ルイズに触っていいのは俺だけだ! 文句あっか!」 ルイズ  「ふえぇっ!? なっ、こんなところであんた、なにを言って……!!」  下級貴族に囲まれ、杖を突きつけられているにも係わらずの啖呵。  そして彼は、いつもは背にあるデルフリンガーに手を伸ばそうとして……部屋に忘れてきたのを思い出した。 才人   「……しまった。仕事の時は邪魔だからって……!」 チュレンヌ「この無礼者たちを捕らえろ! 縛り首にしてや《ベパァン!》へぅぎゅ!?」  とりあえずビンタ。  驚いた顔で叩かれた頬に手を添えて、こちらを見るチュレンヌさま。  胸倉掴まれてるから逃げられませんけどね。 チュレンヌ「きっ、ききき貴族の頬をぉおおお!! 貴様《ベパァン!》ぺぎゅう!?」  続けざまにもういっちょ。  喋り途中だったんで、頬肉噛んだっぽい。 ルミエール「あのですね、チュレンヌさま。       漫画版・シュバリエではチェレンヌさまなチュレンヌさま。       貴族も店ではただの客です。       そんなことも解らない人が徴税官を務めるだなんて笑わせますわ」 チュレンヌ「ななな、なんだとぉ!?」 ルミエール「魔法が使えるからと、力無き者を脅かして、       せっかくの憩いの時間の邪魔をする。それが貴族のやることですか?」 チュレンヌ「力の無いものがそうなるのは当然ではないか!       それよりもこの手を離せ! いつまで───」 ルミエール「あ、今の録音させてもらったから。       力があれば、無いヤツはそうなって当然なのね?       ではこれより力での貴様の修正を行う。歯ァ食い縛れ」 チュレンヌ「え? え? あ、いやっ……いやぁあああああああああっ!!!?」  ドゴゴシャメシャドカガンゴンガン!!! チュレンヌ「しぎゃああああーーーーーっ!!!!」  殴りまくり蹴りまくり、掴んで投げて叩き落して、踏んで起こしてぶつけまくった。  そこでようやく、状況についていけずにポカンとしていた下級貴族どもが動き出す。 チュレンヌ  「うぶっ……げほっ! も、もう終わりだぞ貴様ら!         よくもこのチュレンヌさまに! げほっ!         さ、さあお前ら! この洗濯板娘どもとそこの男を捕らえろ!」 ルミエ&ルイズ『───《ビキッ》』  …………せ、ん……たく……!?  せ、洗濯……ホホホ……!? 洗濯板と申したかこのデヴ……!! ルイズ「………」 ルミエ「……《コクリ》」  据わった目で見つめ、頷き合うと、もはや我ら姉妹を止める者は居なかった。  下級貴族どもが魔法を放つよりも先に、烈風脚で接近して杖を叩き折った。  その次の瞬間にはルイズがブラストを放ち、チュレンヌさまの周囲の空気を爆発させた。 チュレンヌ「え……あ……? な、ななななんで魔法を!?」 ルイズ  「洗濯板はないんじゃないの……!?」  俯き気味にチュレンヌさまを睨むルイズは、その長い髪に少し隠れた眼光でチュレンヌさまを貫いた。普通に怖い。 ルイズ「人がせっかく愛想よく話しかけようとしたのに……それさえ遮って子供扱い?     ヒロミツに頭撫でられて、でも嫌な気分はしなかったから、     そういう扱いされるなら、頑張って大人っぽくなるだけだって思ってたのに……。     洗濯板……? 子供扱いだけならまだ我慢できたのに……!」  手に持つ杖がカタカタと震える。  ……おお、おキレになられている。  あたしの方は下級貴族ボコってるから結構スッキリしてるけど……って、どうでもいいけどひどいとばっちりだよね、この下級貴族たち。 チュレンヌ「つ、杖!? まさかメイジ!? 貴族!? な、何者!?       あなたさまはいったいどこの高名な使い手のお武家さまで!?」  チュレンヌさまがルイズに訊ねる。  急に自分の周囲が爆発したため、腰を抜かしたままに。  そんな彼へと、ルイズはアンリエッタにもらった許可証を突き出した。 チュレンヌ「…………ひぃいいっ!? じょじょじょ女王陛下の許可証!?       ではあなたさまはまさかっ……ままままさかぁーーーーっ!!?」 ルイズ  「わたしは女王陛下直属の女官で、       由緒正しい家柄を誇るやんごとなき家系の三女よ。       あなたごときに名乗る名は無いわ」 チュレンヌ「女王陛下直属ぅううっ!?」 ルイズ  「で……? 誰が……誰が洗濯板ですって……!?       怒らないから言ってごらんなさい……?       怒らないまま、笑って始末してあげるから……!」 チュレンヌ「しひぃいいっ!!? ごごご、ご勘弁を!       命だけは! 命だけはぁああーーーーーーっ!!」  OH、ド・ゲ・ザ……あの最低の謝り方ネ……。  そんな土下座先生が懐からデケェ財布を取り出すと、ドゴシャアとそれをルイズの足元へ投げ、やはり土下座を続行した。  ……いったいいくら入ってるのかしら、あの財布。 チュレンヌ「どどどどうかそれでご容赦を! お目をおつぶりくださいませ!」 ルイズ  「…………今日、見たこと聞いたこと、全部忘れなさい。       じゃないと命がいくつあっても足らないわよ」 チュレンヌ「はいっ! 誓って! 陛下と始祖に誓いまして、       今日のことは誰にも口にしたりはいたしません!       ししししっしし失礼しましたぁあーーーーーーっ!!」  喚き散らしながら、チュレンヌさまはドタバタと逃げ出した。  それを追って慌てて逃げる下級貴族どもへハンケチーフを振り、僕らは勝利した。 ルミエ「……やったわね、ルイズ」 ルイズ「なにがよ───って、あ……」  あたしの言葉に、ルイズは魔法をぶっ放したことを思い出したようだった。  慌ててスカロンたちを見るが、 ルミエ「そういう意味じゃなくて。ほら、チップ」  ゴシャリと持ち上げた財布を開けてみれば、エキュー金貨がごっさりと。  大体、責める場合、あたしならば“やったわね”じゃなくて“やってくれたわね”と言います。 ルミエ 「それに、お前が貴族かどうかなんて───」 スカロン「見てれば丸わかりよ」 ルミエ 「だよねぇ?」 ジェシカ「ついでに言うと、キョウダイっていうのも嘘よね?」 ルミエ 「はい正解。あたしと才人は同じ場所での産まれだけどね、ルイズは違うわ」  チュレンヌさまを打倒したことで、妖精亭の皆様がルイズを褒め称える。  貴族とはいえ、邪魔でしかなかったチュレンヌさまを追い返してくれたということで、彼女への信頼は仕事下手から頼れる仲間へとクラスチェンジした。 ジェシカ「いや〜、でもスカっとしたよ! 徴税官のあの顔っ!」 スカロン「すごいわルイズちゃん!」 ルイズ 「う……でもわたし、怒り任せに……お店の椅子も壊しちゃったし」 ジェシカ「あれはチュレンヌの体重で壊れただけでしょ?」 スカロン「そうそう。な〜んにも見てないわよ?      勝手に倒れて勝手に壊していったんだから」 ルイズ 「あ…………あり、がと」  感謝の言葉を言いなれていないのか、ルイズは顔を赤く染めながら言う。  そっぽ向かずに言えてれば満点だったろうに、妙にツンデレが炸裂した感がある。 ルミエ「ツンデレ娘って、どうして正面向いて感謝の言葉を言えないのかな」 才人 「……言われてみれば」  ルイズが囲まれる中、あたしと才人はそんなことを話し、くつくつと笑っていた。 【中井出博光/悶着終わって】  翌日。  女でいる必要もなくなったので男に戻り、妖精亭の部屋で三人、くつろいでいた。  皆様が起きる前に修道院に侵入して、また面白話をジョゼットたちに聞かせたあとだから、正直少し寝足りなかったりもするのだけれど、眠気よりも楽しいを優先する男! スパイダーマッ! じゃなくて博光です。  それに任務も終わったならこれで……ねぇ? 中井出「ふぅ、これでようやく帰れる」 ルイズ「なに言ってんのよ。まだ情報収集は続いているのよ?」 中井出「え?」  終わると思っていたからこそ戻ったというのに、ルイズは無情な言葉を仰った。  ……そういや、情報収集が目的で、どれほど入手すればいいのかなんて聞いてなかった。  スパイが誰かも断定出来んし、リッシュモンもまだ尻尾を掴ませてくれないのだ。 中井出「アノボクカンケイナインデアディオスヴォンジョリーノ」 ルイズ「待って」 中井出「《がしぃっ》いやです待ちません! 女になるのはそりゃ構わないけど、     なんだってキャミソールなんて着て接待しなきゃならないの! 嫌だよ僕!」 才人 「まあ、魅惑っていうくらいだからそれなりの魅惑が───」 ルイズ「…………《ギロリ》」 才人 「ぐっ……と、というわけで、チップレースの優勝賞品である魅惑のビスチェ!     着てみないかルイズさん!」 ルイズ「………」 中井出「そういえば、飾ったままだっけ」  そろそろ仕事の時間である。  しかしながらルイズは用意をする様子も見せず、才人をじいっと見ている。  ふむん? 中井出「ルイズ、今日休むの?」 ルイズ「休むわよ」 中井出「魅惑のビスチェがあるのに?」 ルイズ「魅力で金を巻き上げるのはどうかって言ったの、あんたじゃない」 中井出「既にやっちゃったしね。     自分でレベル上げたものならまだしも、アイテムじゃなぁ」  正論だったので素直に頷き、俺と才人は部屋の外へと出た。 才人 「な、なんだよ」 中井出「俺達は仕事でしょ。昨日アレだけ騒いだんだから、休みたくもなるわい」 才人 「え? ……提督、まだ仕事続けるのか?」 中井出「今度は男で。大丈夫、ルミエールの双子の兄ってことにしとくから」 才人 「なんでもありだよな、ほんと……それで通るか?」 中井出「見知らぬ人間三人をいきなり住み込みで雇う時点で、包容力MAXだから安心さ」 才人 「なんも反論できないな……」  そんなわけでGO!  恐らくルイズは中で着替えを始めたはずさ。  で、仕事が終わった才人を魅惑のビスチェで迎える……おおステキ!  ならばそんな愛を十分に受け止められるよう、才人を適度に疲れさせてやらねば!!  しかし双子か。言っておいてなんだけど、そういやぁガリアじゃ、双子は忌み子として嫌われているらしいね。双子が生まれたら一方は処分されるそうな。  文字通り、殺すか捨てるか。似たようなもんだな。  赤子にゃ一人で生きる力なんてないんだから。 中井出(修道女の中にも双子が原因で捨てられたやつとか、居るのかね)  居るとするなら、その子はきっと産まれたばっかの時に捨てられるんだろう。  双子であることがバレないように、誰もが中々寄り付けない場所だとか、もしくは姿を偽る魔法具をつけられたりして───……って。 中井出「……まさかねぇ」  ジョゼットを思い出したが、軽くかぶりを振って笑った。 ……。  さ、そんなこんなで終了しました。  ビスチェを手に入れたルイズが仕事に出ないってんで、スカロンさんもがっかりしてたけど、だがもらえるチップが全てじゃない。  これより始まるは愛の試練!  僕は「さあ」と才人を促して、扉をノックしてから中へと入った。 中井出「タダイマヨー」 才人 「ルイズ、今日の夕食は───あれ?」  入った先で見たものは、小奇麗になった部屋と、テーブルに置かれた料理の数々。  どこで料理作ったんだと突っ込みたくなったが、まあスルーが無難だ。  それよりも、そのテーブルの向こう側に座っているルイズの格好だ。  露出度の高い、綺麗な黒のビスチェ……そう、魅惑のビスチェをきた彼女が、そこに座って才人のことをじっと見つめていた。  まあそんなことはどうでもいい。  それよりも目がいったのは、長い桃色の髪を後ろで結った姿……そう、ポニーテール!!  あ、いや、ポニーテールというには結び目が高い。  ウェーブヘアーのお嬢様がよくやる髪型だ。  なので俺は時を止めて接近するや、ポニーテールに変えたのちに元の位置へと戻り、時を動かしつつ額をゴシリと拭った。  うむ美しい、いい仕事をした。 才人 「なんだこれ! すげぇ!」 中井出「ルイズが作ったのか?」 ルイズ「そ、そうよ。ジェシカに教えてもらったの」 才人 「へえええぇ……! 教えてもらっただけで作れるなんて、器用だなぁ!」 中井出「だよねぇ!? 普通教えてもらったとか言って作るのなんて、     大体無駄なひと工夫がなされててマズイって決まってるのに!」 才人 「ていうか……」 中井出「なぁ? ていうか……」  困ったことになった。  魅惑のビスチェには、名前の通り“魅了”の魔法がかけられているそうな。  そしてその服はどんな体格の人でも着れる魔法までかけられていて、大きい人でも小さい人でもジャストフィットする。  ルイズが綺麗に着こなしているのもそのためなんだが、例に漏れず心がドッキンコ。  み、妙ぞ……この博光の胸が高鳴っている……!? ルイズ「な、なによ」 才人 「す、すげー似合ってる。綺麗だ」 ルイズ「!? なっ……あ、あん、た……あああああんたに言われるまでもないわよっ!     わわわたしが着るんだもん、似合うのは当然でしょっ!?」  真っ赤である。  ルイズも才人も、おまけに俺も。 中井出「才人、なんだか僕、どきどきするんだ」 才人 「う……俺も。ていうか提督がドキドキ!?」 中井出「あ、や、やばい! なんか無償にルイズになにかをしてやりたい!     か、彼女に振り向いてほしい! やばいやばいって!     サササ才人! 才人止めて! やばいんだって!」 才人 「止めろって、どうや───って?」  俺の豹変っぷりに才人が驚く中、我が霊章からゾルゾルと木の根のようなものが延び出てきてイヤァアアアアアッ!!? 来た来た来た来た来たぁああーーーーっ!! 中井出「ヒィ違う! 違うんだドリアード! これは魅了が!     俺の意思じゃない! 俺の意思じゃ! ああでもルイズが可愛い! 悔しい!     ちくしょうただのお調子者のお子だと思ってたのに、     なんでこんなに大人びて見えるんだ! ───って違う!     俺にとってのみんなは“お子”! そうだろ!?     俺は年取ったお爺さんかおじさんで、だからこそ俺は───ルイズ可愛い!     じゃなくて!《ぞるるるる》ヒィ違うドリアード違う待って待って!     俺は無実でギャアアアアアアアアアアアアア!!!!!」  木の根が僕の体を締め付け、抵抗しても締め付け、やがて僕をオトした。  うん……なにを言ってもダメだったよ。  嫉妬に燃える女は話を聞かないからな……。  いやまあ、恋人同士なんだから嫉妬もどんとこいなんだけどね……でも本当に僕の意思じゃなかったのに……。 Next top Back