18/ごめんなさいは言える内に言おう

【中井出博光/日々を歩けば】

 数日が経った。
 この博光がドリアードに絞め落とされて以降、ルイズと才人の様子が少しおかしい。
 なんだか見つめあったり頬を赤くしたりする日が増えたのだ。
 なにがあったのかを訊いてみても、なにもないの一点張り。
 なので部屋の過去を見てみれば、魅了された才人がルイズにキスしまくってた。
 もちろんそれ以上はなかったものの、魅了の熱に当てられて、ルイズもキスしまくってたわけで。ああなるほど、と納得した。
 若いっていいね。俺なんて絞め落とされたのに。
 仕事が終わってからの修道院での話題は決まったな。
 言いふらしてくれるわこの幸せ者め。

中井出「で、チスは気持ちよかった?」
才人 「さ、最高でした───ってなんで提督が知ってんだよ!」
中井出「実は絞め落とされてから天井に押し付けられたあと、起きてました」
才人 「マジか!? う、うぅううぁああああ……!!」

 恥という名の何かを踏み潰さんとするような、搾り出したか細い声が聞こえた。
 彼にしてみりゃ、主とのチッスの連続現場を知り合いに見られていたわけで。

中井出「よかったじゃない、ステップアップできて」
才人 「……でもよ。なんか魅了の勢いでそのまましちまった感じで、
    ルイズと顔合わせても何を言えばいいのか……」
中井出「今度は自分の意思でしっかりとキスすりゃいいんじゃないか?」
才人 「あっ……そうだよな! やっぱ大事なのは魅了されてない俺の心だもんな!」
中井出「うむ! そのとーり! ───ひょ?」

 愛についてを語っていたら、なんかルイズがズヴァーと駆け込んできた。
 で、皿洗い中の僕らをじっと見て、在り得ないものを見てしまったって風情でふるふると首を横に振っている。

中井出「どした? 怖くないからお兄さんに言ってみなさい」
才人 「お兄さんかよ」
中井出「お父さんとかおじさんは、なんかもう魅了で壊されてしまった気がしまして。
    不覚だった……いくら洗脳的なものに弱いからって、まさかチャームされるとは」
才人 「あれは珍しい光景だったなぁ……。
    まさか提督が、ルイズのこと可愛いとか言いながら迫るとは」
中井出「や、やめろぉ! 俺の黒歴史をつつくのはやめろぉおお!!」
ルイズ「そんなこと言ってる場合じゃないの!」
中井出「……そんなこと呼ばわりかよ」

 ひどい黒歴史もあったもんだと落ち込んだ。
 しかしルイズは焦った様子のままに才人を手招きし、店の中の一点を指差すのだ。
 どれ、とイーグルアイで見てみると……ギーシュにキュルケにモンモランシーが居た。
 ……ホワイ!? やつらとこの店の共通点が見つからない! 一体何事!?

中井出「OK状況はなんとなく把握した。俺はどうすればいい?」
ルイズ「なんとかしてあいつらを追い出すのよ。
    ツェルプストーのやつ、
    このことをバラされたくなかったらお店の品全部奢れなんて言って……!」
中井出「よし潰そう」
才人 「金集めんのがどれだけ大変かを、知っていようが知るまいが……
    脅迫でそんなこと頼むヤツに遠慮はいらねぇよな……?」
ルイズ「いるわけないでしょ? でも命令はしないわ。命令したらわたしの責任だもん」
才人 「お前、最低な」
中井出「このクズが」
ルイズ「う、うるさいわね!
    こんなこと実家にバレたら本気の本気で殺されかねないのよ!
    だからバレない程度の口封じを願うわ。あ、これはただの独り言だから」

 「お前の主ってすげえな」「お恥ずかしい限りです」……そんな会話をして、俺と才人は動き始めた。
 まずやつらをどうするかだが───なんとかギーシュを仲間に組み込めないものか。
 いやむしろここでひと悶着でも起きれば、恩着せがましいことして借りを作ってキャアステキってなことに……! とか思ってたら、おあつらえ向きに数人の貴族がキュルケたちの席に近付いていくのを見た。

中井出「才人才人! 恩を売るチャンスだ!
    やつらがツェルプストーにちょっかいを出したら、キミが颯爽登場タウバーン!」
才人 「───恩を売ってご退場願うってわけか」
中井出「一発で解るとは、ウェヒヒヒ……うぬもワルよのぅ」
才人 「いえいえお代官さまほどでは」
中井出「いやいや解るほうがワルだって。僕実はそこまで思ってなかったし」
才人 「いえいえ一発で解るとはとまで言っておいてなにを。お代官さまの方がワルだよ」
中井出「いやいやワルはキミの方だから。僕のワルとかそーゆーのじゃないから」
才人 「いえいえワルはお代官さまのほうで───」
中井出「いやいや」
才人 「いえいえ」
中井出「───」
才人 「………」
中井出「キミのほうがワルだって言ってんだろうが!」
才人 「話の流れを無理矢理作って俺に行かせようとしてる時点で極悪だろ!!」
ルイズ「どうでもいいからさっさといきなさいよ」

 ごもっともだった。
 そうこうしている間に笑い声が響き、それがツェルプストーを笑う仕官貴族のものであることが解る。どうやらツェルプストー相手に酌をしろと言ったが断られたようで、彼女の実家があるゲルマニアと、彼女自身が尻軽的なことを大声で言っているらしかった。

中井出「……ツェルプストー自身と、国や親は関係ねぇよな?」
才人 「だよな。なんだあいつら、あれで貴族かよ。
    酌されなかったから悪口なんて、まるでガキじゃんか」
ルイズ「………」
中井出「耳が痛い?」
ルイズ「うっさい」

 しかしそうなれば、ツェルプストーも言われっぱなしで黙っていない。
 ギーシュとモンモランシーが気を利かせて「出ようか?」と言ったのだが、「先に来ていたのはわたしたちでしょ?」と当然のことを言って、喧嘩を売ってきた士官貴族のもとへと歩いていった。
 だが、その先でも笑われる。
 「およしなさいお嬢さん」とか我々は「軍人だぞ」とか、明らかにか弱い女性を見下した口調で、笑いながら。

中井出「よし、仕官どもが立ち上がった! 今ぞ才人! 恩を売るチャンス!」
才人 「おう! じゃなくて提督が行けよ!
    ルイズの使い魔の俺が怨敵ツェルプストーを救ったなんていったら、
    またいらない悶着起こるだろ!」
中井出「え? そ、そうなの?」

 だってギーシュと才人のバトルを見てたのに惚れた様子なかったし。
 だからそんなに難しく考えることないのかなぁって考えてたんだけど、意味なかった?

中井出「仕方の無い……」

 確かにこれで、庇うように割って入って才人に惚れられでもしたら困る。
 才人はルイズと末永く幸せに……それがこの博光の望みよ。
 だから確かにここは俺がいくべきなのだ───!!
 ていうかギーシュ!? キミはなにをおろおろしながら状況を見守ってるの!?
 相手が軍人貴族だからって無理だと諦めてらっしゃる!?
 ……でもごめん、僕もその気持ち解るかも……。
 やっぱ刻震竜に勝てても、ヤクザは怖い僕だから。

中井出「ちょっと待てぇえ〜〜〜〜〜い」

 だが臆することなく向かってゆく。
 貴族は嫌いなのでブチノメすチャンスだと割り切れば大丈夫さ。

キュルケ「は? え、な……なんであなたがこんなところに居るのよ」
中井出 「それ以上は言わないでツェルプストー。話は聞かせてもらったから。
     ……酌を断られたからと、国の悪口で相手を責め立てるのが貴族というのなら、
     この博光はその貴族をブチノメすのみ! 親ァ関係ねぇだろうが親はよォ!!」
貴族1 「なんだ貴様は……最近の平民は口の利き方も知らないと見える!」
貴族2 「誰のお陰で平和が保てていると思っているんだ!」
中井出 「戦って死ぬことが誉れだなんておもってる馬鹿軍人」
貴族3 「《カッ!》ば、馬鹿軍人だと!?」
中井出 「だってそうでしょ? 残される者のことなんててんで考えちゃいねぇ。
     戦って死ねれば本望? 本当に望むものと書いて本望? ふざけんな。
     本望謳うなら、きちんと生きて帰るところまで考えろってんだ」
貴族1 「……ハッ、平民がなにを───」
中井出 「そうやって平民平民言うから話が成立しねぇんだよタコ。
     お前なに? 同じ人間と話すのに同じ目の高さにすら立てないの?
     だから貴族は嫌いなんだよ。最初から見下されたり馬鹿にされたら、
     俺達平民だって嫌いながらでしか話せないじゃないか」
貴族2 「なにを貴様っ! 守られているという自覚もないのか!」
中井出 「需要と供給って言葉をご存知? 貴様らは戦う。俺達は糧を作る。
     平民が貴族を守ってないっていうんだったら、糧無しで戦ってみるかい?」
貴族3 「むっ、ぐっ……! へ、屁理屈を!」
中井出 「いやあんたコレが屁理屈って……」

 普通にズビシとツッコミが出た。
 しかし貴族軍人さまたちは相当にご立腹のようで、既に意識が完全に、ツェルプストーから俺へと移っていた。
 なので「表へ出ろィ!」と言うと素直についてくる。
 店を出る前にツェルプストーにニッコリと笑い、虚空で手をにぎにぎとさせた。
 ちょっと遊んできますとばかりに。


───……。


 で、店の外である。

貴族1「無礼者とはいえ、平民相手に三人でとあっては笑われる。先に仕掛けてきたまえ。
    礼儀を知らぬ平民に礼儀を教えるのも《ゴヴァンシャア!!》ぷぎゅるぁあ!?」

 仕掛けました。
 貴族1が錐揉みで飛んでゆく。

中井出「す、すげぇ! さすが貴族さまだ! 先に仕掛けてきたまえって言ったのに、
    構えもせずにベラベラ喋ってるなんて!」

 ゴシャーンと落下する貴族をある意味尊敬した瞬間である。
 その様子に驚き戸惑うほかの貴族も殴り飛ばし、僕らの旅は終わった。


───……。


 ギィッションッ。

中井出「ただいまー」

 羽扉独特の音が大好き……こんばんは、博光です。
 ともかく片付けて戻ると、客のみなさまがワッと沸いた。

中井出「やーどーもどーも! 誠意を以って話したら解ってくれました! さすが軍人!」

 それだけ言って厨房に戻ろうとすると、ツェルプストーにじぃっと見られていることに気づいた。なので、「横暴な貴族の所業を許さぬ男! スパイダーマッ!」と言いつつスパイダーポージングを取る。
 スパイダーポージングってのはアレだね、その場で落ち着きなくバッババッと構えを取りまくり、最後に両手を前に突き出すスパイダーマン的ポージング。
 ともかく任務完了!
 厨房に戻り、才人とウェーイとハイタッチ。

才人 「で、これからどうやって、キュルケとかを追い返すんだ?」
中井出「あ」

 目的忘れてた。

ルイズ「ちょっと……あんた、もしかして」
中井出「いいいイヤ違うよ!? べつに目的忘れてたとかそんなことじゃないよ!?」
ルイズ「まだ何も言ってないわよ」
中井出「“あんた、もしかして”って言ったじゃないか! うそつき!
    貴族はいつもそうだ! 僕らに平気でウソを《ドボォ!》ニーチェ!!」

 ストマックを前蹴りされた。
 ……もしかしてさ、ルイズって対人関係が慣れると暴力的になったりする……?

ルイズ「とにかくこのままじゃ大変な額を払わなきゃいけなくなるのよ」
中井出「お、押忍……正直僕関係ないんで逃げていいですか……?」
ルイズ「ツェルプストーを助けた時点であんたも共犯よ」
中井出「その理屈おかしいよね!? ねぇ! ちょ、聞いてよ!
    なにその“あぁはいはい”って顔!」

 最近は素直だなぁとか思ってたけど魔法訓練中だけだった!
 おのれこの小娘め、小ざかしいけど逞しい生き方なので素晴らしい!
 だってその方が僕も付き合いやすいし!

中井出「じゃあ普通に談判してこよう。
    つーか全部食えなかったら倍額払ってもらうってことで脅し返してくる」
ルイズ「あ、それいいわね」
中井出「返事したね? じゃあこれルイズの案だから」
ルイズ「なぁっ!? ちょ、待ちなさいよ!」
中井出「ホホホやだ」
ルイズ「やだじゃないでしょ!? いいからっ───待てって言ってんの!」
中井出「待たぬと言っているゥゥゥゥ!!」

 なにやらガッシィと掴みかかられ、そこから取っ組み合いバトルに移行!
 しかしこの博光は冷静のこの状況を分析、判断し、

中井出「いぞり投げどすこーーーい!」
ルイズ「《ブワッ!》ふやぁぅわっ!?」

 投げたッッ! ルイズをッッ!
 すると丁度そこに、「ちょっとー、注文したのまだなのー?」と文句を言いに来たツェルプストーが《ドグシャゴガンガランガシャーーンッ!!》……おがったとしぇ。

キュルケ「っ……たたた……! ちょっと、なにをっ……って、ルイズ?」
ルイズ 「っつぁーー……! ちょっとヒロミツ! 急に投げるなんて───あ」

 その状況をなんと言いましょう。
 投げ飛ばされたルイズがツェルプストーを押し倒し、床に押さえつけているような……マア! まるで赤松作品のような偶然!

中井出 「とりあえず激写《パシャリ》」
ルイズ 「!?」
才人  「おおっ!?」
キュルケ「え、な、なによ今の光」

 カメラに収めました。
 拍子にバッとこちらを向いたところをもう二、三枚。

ルイズ「なななななにしてくれてんのよ! アンタ今のシャシンとかいうのでしょ!?」
中井出「利用できるものはなんでも利用しないと。喜べルイズ!
    ツェルプストーを押し倒して真っ赤になってるルイズの顔!
    よく撮れてるだろ!」
ルイズ「ファイアボール!!」
中井出「《ジュゴォンッ!!》ホォオオアァアアーーーーーーッ!!!?」

 デジタルカメラが燃やされました。
 つーか! ル、ルルルルイズさん!?

才人 「ば、ばかっ! ルイズッ! キュルケがいるのにっ……!」
ルイズ「なによっ! こんなのっ…………え? あ」

 ルイズが振り返り、ルイズ自身を呆然と指差しているキュルケの反応を見て我に返る。
 ルイズの二つ名=ゼロ。
 今のルイズ=魔法使った。
 キュルケ=それを見た。
 ……俺は、もう片手で目を隠すように顔を覆い、天を仰ぐしかなかっ───

声 「さっきの小僧はどこだぁーーーっ!!」

 ───た、と思うより先に、想像しさが店の方から聞こえてきた。
 ホワイ何事!? と見てみれば、さっきの仕官貴族どもが仲間を引き連れてやってきていたのだ! おおこれぞゴッドの助け!? この騒ぎでうやむやにしてくれるわーーーーっ!!

中井出「よ、よぅし敵が来たんじゃしょうがない! いこうぜ才人!」
才人 「お、おぅ! 敵が来たんじゃしょうがないよなぁ!!
    ちょっとデルフ持ってくる!」
中井出「すぐに来いよぉ〜? じゃないとぜ〜んぶやっつけちゃうぞぉ〜っ?」
才人 「あっははは、言ったなこいつぅ!」

 出来るだけ騒がしく賑やかに言って、しかし目はマジで一気に散った。
 一目散。その名の由来である。ウソだが。


───……。


 で。

中井出「トルネードフィッシャーマンズスープレェックスゥ!!」
貴族9「《ギュルルルドグシャアア!!》ぐぎゃああーーーーーーっ!!!」

 数分の会話ののち。
 俺は貴族たちに体術の素晴らしさを肉体言語で伝えておりました。

中井出「スーパージャンピングニーパァーーーッド!!」

 おかしなもんですよね。
 酌をしてもらえなくて悪口言って、喧嘩売ってきたから買ったのに、負けたら復讐。

中井出「ブルドッキングヘッドロォーーーックゥ!!」

 それを貴族といふのなら、それを潰して回るやうな……さういふ男に、私は成りたい。

中井出「スコーピオンッ! デスロォーーーック!!」

 でもね、彼ら……軍人って割には体モロすぎ。
 もっと筋肉を鍛えねばだらしねぇってもんです。

中井出「にゃあああははははは!!!」

 なのでスーパーフェニックスの知性溢れるサブミッションコンボをしてみたところ、貴族たちは次々と動かなくなりました。
 ところでスーパーフェニックス(アニメ)って、どうして笑う時は“にゃああはははは”と笑うんでしょうね。いや、あの笑い声、デスノートのリュークの笑い声並みにすごい好きですけど。

才人  「提督お待たせっ! って……」
中井出 「馬鹿にしやがって馬鹿にしやがってぇええええ!!」
貴族15「《ギゥウウミキミキ……!》ごぉおおおお……!!」

 で、どうせならと、パンドラお母さん謹製のネックハンギングツリーシェイクで地獄を見てもらっていたところに、ようやく才人が到着。
 
才人 「……ハーメルンのバイオリン弾き?」
中井出「そう、パンドラお母さんのあれは実に見事だった。つーわけであとよろしく!」
才人 「あとって…………どんだけ居るんだよこいつら!」
中井出「五人やっつけたら仲間呼ばれた! きっと前世はマドハンドだ!」
才人 「……魔法が使えるなら一掃したい状況だなー……」
中井出「なー……?」

 しかし負けません。
 途中からツェルプストーも「私が売られた喧嘩なんだから」と参戦。
 そのままの勢いで押し込でゆく。

キュルケ「なによ、あなたなかなか出来るんじゃないの」
中井出 「フッ……能ある鷹はトーテムポールロマンスだ」
キュルケ「よく解らないけど、迫力は伝わった気がするわ」
中井出 「多謝」

 このままうやむやにできねーもんかと願ったが、「ちゃんと、あとで話を聞かせてもらうわよ」と言われ、諦めた。
 ツェルプストーの脳内辞書にゃあ、諦めって文字が無さそうだった。


───……。


キュルケ「それでなに? ラ・ヴァリエールは相変わらずのゼロで?
     魔法が使えるのはマジックアイテムのお陰だっていうの?」
中井出 「そ」

 ウソじゃないね。
 というわけで、仕官貴族どもをブチノメしたのち、魅惑の妖精亭の従業員部屋で話をしていた。いっくら誤魔化しても話逸らしてくれないんだもん、仕方ないじゃん。
 ギーシュにはモンモランシーの相手をしてもらっている。
 泊まるっていうから、部屋を別に用意してもらって。

キュルケ「面白そうね。ちょっとやってみせてくれない?」
ルイズ 「いや。なんであんたに見せなきゃいけないのよ」
キュルケ「ここで働いてること、バラされたい?」
中井出 「こら。脅迫も大概にしろ。ルイズが困ってるだろ」
ルイズ 「………」

 つーかルイズも。そこで“あんたそのキャラなに?”って顔で見てくんな。

才人 「熱でもあるのか?」
中井出「兄っぽくいってみようと思っただけだよ!
    悪かったな! どーせ似合わねぇよ!」

 前略おじいさま。
 俺には兄も居ませんし、長く付き合った家族が貴方しか居ません。
 その貴方も無口であったため、僕はいったい誰を見習えばよかったのか……。
 そうなると自然と原中であるとしか言えない自分が悲しいです。

中井出 「とにかくここでの出来事は他言無用に願います」
キュルケ「いや、と言ったら?」
中井出 「暴露でもなんでもおし。それはキミの勝手だ。
     ただし我らは貴様の敵となりましょう。それはどうあっても覆らん」
キュルケ「あら、怖いのね」
中井出 「それだけバラされたらヤバイことなの」
キュルケ「条件があるっていったら?」
中井出 「無茶なもんじゃなければ。似たようなものをくれって話は却下だけど」
キュルケ「む。どうして? まだあるのならくださいなと言っているだけじゃない」
中井出 「言ったでしょ? バラしたいならバラしなさい。
     こちらからあげるものなぞない。それは俺の持ち物だし、
     全部暴露されるなら取り上げてさっさと消える方法なんていくらでもある」
キュルケ「友達じゃないの?」
中井出 「一方的に面倒ごとに首突っ込んで人を巻き込まれて、キミは満足?」
キュルケ「………………思いついたら一直線だものね、ラ・ヴァリエールは」

 呆れた風情で溜め息を吐いた。
 そしてカリ……とボリュームのある髪の奥の頭を掻くと、「いいわ」と言った。

キュルケ「べつに好んで恨み買う趣味はないし、ちょっと見てみたかっただけだもの。
     それよりもあなたが何故そんなマジックアイテムを持っているのか。
     それを聞かせてもらえる? それくらいなら構わないでしょ?」
中井出 「作った」
キュルケ「そんなわけないでしょ」

 即答だった。
 才人もルイズも、俺の横で盛大に噴き出して笑った。
 まあねぇ……普通は信じないよねぇ……。
 どうにもこの世界の人々って、理解と不理解でしか判断しないのがいけない。
 解らないなら考えようじゃなくて、解らないから諦めるってのが多いのだ。
 だから“これはこうである”って思ってたら、“そんなわけないでしょ”って言葉が簡単に出てくる。考えることを放棄しておるわ。

中井出 「はい、じゃあ会話終了」
キュルケ「終わってないじゃない」
中井出 「俺は本当のこと話して、でもキミはそれを信じない。会話にならん。
     ……しまった! ウソでもいいから信じ易いこと言ったほうが面白かった!」
キュルケ「あなたがどんな目でわたしを見てるのか、解ったわ」
中井出 「じ、実はギーシュは筋肉質なんだ!」
キュルケ「それのどこが信じ易いことなの……とりあえず言ってみないでよ」

 言われてみればそうだった。

中井出 「とにかく終わり! 僕もいろいろと用事あるし!」
キュルケ「ふぅん……まあ、どうせどこかで偶然拾ったマジックアイテムとかでしょう?
     以前流行った宝探しゲームの中で、ホンモノを見つけたとか」
中井出 「エ? ───そ、そうそう! そーなんだ!
     ほら、前にルイズと才人と一緒に剣を買いに行ったじゃない!?
     あの時に地図売りつけられちゃってさぁ! ワハハハハハ!!」
才人  「あ、そ、そーなんだ! あはっ、あははははは!!」

 才人……キミ結構アドリブとか苦手そうね。
 だがツェルプストーが自覚無しの助け舟発言をしてくれたお陰で助かった!
 宝探しゲームで見つけた! そういう騙し方もあるのか……!

キュルケ「ホンモノだとしても、いつ壊れるかなんて解ったものじゃないけどね。
     うふふ、ゼロのあなたにはお似合いじゃない」
ルイズ 「ええそうね。ヒロミツには本当に感謝してるわ。
     そうよね、馬鹿にされたって構わないわ。道具を使っているからなに?
     私のTPってものを消費して使うなら、間違い無く私の魔法だもん。
     屁理屈だろうがなんだろうが、使えるってことに意味があんのよ」

 キッと睨んでの言葉だった。
 そこに余裕らしい余裕なんざ無いが、それでも虚勢なんかではなかった。
 “これからどんどん立派になるのだから”と、今の言葉を聞いた皆に誓っているようにさえ感じられた。

キュルケ「………」
中井出 「少し寂しい?」
キュルケ「ばっ───! じょ、冗談でしょ? どうしてあたしがヴァリエールに対して」
中井出 「いやいや、だってキミのルイズに対する意地悪ってさ…………
     《ボソリ……》ルイズを元気づけるためでしょ?」
キュルケ「───!!《かぁあああっ……!》」

 あ。赤くなりました。
 あちこちに飛び回る中で、シャルに“あまり彼女に冷たくしないで”と言われたのちに、そんなことを聞いたのだが……マジか。“この目で知るまでは〜〜〜っ!”って意気込んでた僕が本気で馬鹿だ。
 だから素直に頭を下げた。
 無礼失礼は原中では然だが、心の底から人への無礼を働くのは、相手が心底嫌なヤツであること。そしてそれが真実である場合のみで十分だ。

中井出 「キュルケ=フォン=ツェルプストー。
     貴女への今までの数々の無礼、ここに謝罪いたします。
     ていうかええっとその……ああもう、とにかくごめんっ! 本当に悪かった!
     罪を償わせるために、貴女が俺に攻撃するというのなら、
     たとえそれがどんなものであろうと受けましょう!」
キュルケ「えっ……や、なによ急にっ」
中井出 「反省をしているのです! 貴女という存在をこの博光、見誤っておりました!
     えと、俺ね、貴族が嫌いだ。本当に嫌いなんだ。
     見下すだけの貴族ばかりのこの世界、
     本当に相手を気遣えて誇り高い貴族は居ないかと思っておりましたが……
     真に会えたのは、恐らくシャルとウェールズのみ。
     そんな事実に落胆していました」
キュルケ「誇り高い貴族って……」
中井出 「つーわけでさぁこい! さぁ! 存分に叩きのめしてくれ給えッッ!!」

 オリバ戦の楊海王のように、掌に拳を当てて重心を下へ。
 足を肩より広く伸ばし、しかし膝は曲げてドッカと構える。

キュルケ「……ちょ、ちょっと……ヴァリエールも、あなたも、コレを止めてよ」
ルイズ 「……信じられない。ヒロミツが殊勝だわ」
才人  「うそだろ……? 提督が自分から本気で謝るなんて……」
中井出 「しっ、失礼な!! 俺だって本気で悪いと思ったら謝るよ!
     外道を自称してても心はピュアだよ!
     外道としてのピュアだから既に腐ってるけど!」
ルイズ 「全然ダメじゃないのよ!」
中井出 「う、うるせーーーっ!!」

 でも実際、外道であっても下げる時は下げる時さ。
 一方的な考え大いに結構。
 でもそれが本当に当てはまらずに、勝手に相手に嫌悪してたのなら謝るのも当然だ。
 一方的な信頼にどう応えるかを自分で決めるのと一緒だ。
 だから相手に全てを委ねる。

才人  「まあでも、提督なら平気なんじゃないか?
     顔が燃えてても、普通に宴会に混ざるような人だし」
キュルケ「それって本当に人間なの?」
才人  「困ったことに間違い無く人間だ」
キュルケ「じゃあ───“炎の矢”」

 ツェルプストーがおっかなびっくり魔法を唱え、俺へ向けて発射。
 俺はその炎の矢というのを正面からまともに受けてみせたのだが……

キュルケ「え、ちょっ、直撃!? 避けるかなにかしなさ───」
中井出 「くだらんわざだ……ただ煙を巻き上げるだけか」

 すまぬ、それでは効かぬのだ。
 普通にレジスト能力が高いからさ、ブリュンヒルデってば。

キュルケ「───《ムカリ》……へ、へえ……?
     無事だったのは驚いたけど、そんなこと言っていいのかしらぁ?」
中井出 「これは償いである! 遠慮なく全力で来いィイ!!
     あ、確かメイジの魔法ってイメージが重要なんだよね?
     えっとですね、まず、回転するイメージをしてください。
     回転して風を巻き込む炎の球のイメージ。
     で、炎が魔力よりも自然の力で大きくなったら、今度はそれを細長く形成。
     敵に向けて投擲! これぞファイアーランス!《ジュゴォン!》……おや?
     ギャアーーーーーーーッ!!」

 言ってみたことを素直にやってくれた!
 すると燃える僕! 炎の槍が僕を貫きメラメーラ!?

中井出「あ、ちなみに槍に爆発魔法とか付加させておくと、
    刺してから内側からドッカーンと、レジスト無視の魔法が《ゴォオメラメラ》」
才人 「だから火ィ消そうな!?」
中井出「やあボク火炎入道!
    クロムアーマーに弾かれた武具を燃やす絶望をいつでも味わわせてあげるよ!」
才人 「……いきなり殺意が沸いてきた。殴っていいか提督。その炎が消えるまで」
中井出「フッフフ、いや待て。それはそこのツェルプストーにやってもらおうではないか。
    彼女の気分も晴れて僕もなんだか許された気分になれる。とってもステキ。
    つっても、やっぱり俺の気持ちが楽になるだけで、
    ツェルプストーがどうなのかは解らんのだよね。だから任せるぜツェルプストー!
    俺を煮るなり刻むなり好きにしろ! もう焼かれてるから、焼くのは無しだぜ!」

 言ってる今も全身全焼状態である。
 でもまあ熱いには熱いけど、装備のお陰で熱は随分和らいでるので死ぬほどではない。

中井出 「さあツェルプストー! こんなことが出来るのは今回限りだ!
     今までの鬱憤を僕で晴らしたまえ!」
キュルケ「も、もういいわよ! ていうかなんで無事なの!?」
中井出 「え? なんでって………………すげぇからよ《どーーーん!》」
才人  「胸張る状況間違えてるぞ火炎入道」
中井出 「ほっといてよもう!」

 つまり威張るなら火を消せと言いたいらしい。
 まあ“もういい”と言ってくれたので消そう。

中井出「《ンゴゴゴゴゴゴゴ……》汝のさだめ……滅びなり!《シュゴォンッ!》」

 とりあえずMOWのグラントの真似をして、KIで炎を吹き飛ばした。
 するとやっぱり毛という毛が無い僕降臨。

中井出「不死鳥の如く産まれたのなら、産まれたままの毛根で。
    ……博光です《脱ギャーン!》」
才人 「せっかく服は燃えてないんだから脱ぐなよっ!!」

 怒られてしまった……。

才人 「えっとな、キュルケ。信じらんないかもしれないけど、提督って───」
中井出「ハルケギニア1頑丈な男! スパイダーマッ!!」
才人 「今のを頑丈で済ませるには無理がないか!?」

 スパイダーポージングしたら思い切り突っ込まれた。

中井出(お馬鹿っ! 不老不死ってバレたら、なんか軍事目的で利用されそうじゃん!
    僕イヤだよそんなの! 大体最近、本気でマナが無くなり始めてて大変なんだよ!
    余計な力使うとか勘弁して!?)
才人 (えと……それってもしかして俺達の所為か?)
中井出(キミらと恋姫連中の所為だね。みんなの能力とか成長とかを管理促進させるのに、
    フルにマナを使いまくってるからね。だからしばらくは僕、ただのヒューマン)
才人 (でも武具は普通に使えるんだろ?)
中井出(……まあ、正直武具だけでも、
    かなりのマジックアイテム的な効力は期待できるけどさ。
    それでもまったくマナを使わないわけじゃないんだからね?
    武具だってヒロラインのものだったってこと、忘れないでください)
才人 (あ……そっか、そうだよな)

 ようするにマナの枯渇は俺の弱体へと繋がります。
 だがそれがどうした! 楽しいのためならば、たとえ俺が弱体しようが楽しめればOK!
 なので一方的に“不快”を与えてしまった自分が許せんのだァアーーーッ!!

中井出 「というわけですまなかったミス・ツェルプストー!
     もういいわよと言ってくれた言葉、ありがたく受け取ることにする!」
キュルケ「え、ええ……」

 あれ? 軽く引かれてる?

キュルケ「あ、じゃあせっかくだしマジックアイテムのこと、教えて───」
中井出 「それはそれ、これはこれです」
キュルケ「なによ、意外とケチなのね」
中井出 「女の過去と年齢がミステリアスな方が魅力的なように、
     男だって隠し事の一つでもあったほうが魅力的なんです。
     なんでもベラベラ喋る存在に、仲間や親友である価値なんてあんまりないし」

 だから深いところではさすがの俺も注意する。
 ほんと、さすがの俺でもだよなぁ……基本、楽しいならなんでもするし。

中井出「というわけだから、ほんとごめんでした。
    仕官どもをぶっ飛ばしたことも含め、どうかご容赦を。
    しかしなんかシャッキリしないし……えぅううんむ……よし!
    では貴女が危険な時には一度だけ助けると誓いましょう!
    俺、守るとかそういう風に決めて生きるの好きじゃないけど、これは誓う!
    口約束で悪いけど、言ったことは守りましょう!
    っと、もう時間的にやばいか。それじゃあ才人、俺用事があるから」
才人 「マナが少ないって言ってたばっかなのに頑張るよな」
中井出「マナよりもお子の笑顔を優先したい男! スピアダーマッ!」

 …………噛んでしまった。

才人 「はははっ、盛大に噛んだな」
デルフ『うははははっ! おめぇさんでも失敗とかするんだな! だはははは!!』
中井出「しょ、しょうがないでしょ人間なんだから! ほっといてよもう!」

 もういいから修道院行こう……迷えるお子めらをドッカンドッカン笑わせるのさ。
 猛者どもから物騒な話も聞いてるし、なんとかしなきゃならんのだ。
 いえね? なんでも少ししたら神の右手ヴィンダールヴとかいうのが来て、ジョゼットさんをたぶらかすらしいの。しかも修道院で生きたピュアなハートを持ち前の容姿とキザな台詞でオトして、自分の目的のために利用するのだというじゃあないですか! 許せんっ!!
 人の恋心を利用するなど言語道断! 笑い事で済ませられる程度ならまだしも、それを戦のために利用するというのだ! グワバババ許せ〜〜〜ん!とか言いたくもなるさ! 言ってないけど!

キュルケ「あらおでかけ?」
中井出 「押忍! 実は僕、人に楽しいを教える仕事をしておりまして。
     なのでそれを知らない人に、笑顔をあげるのが大好きなのです。
     いっつもここでの仕事が終わるたびに行動を起こしているので、
     少々寝不足気味ではありますが」

 時間すっ飛ばして寝るって方法もあるけど、さすがにそんなことにマナは使えない。
 どっかにマナの大樹でも埋めないといかんな。
 才人、貴族になってくれないかな。姫ちゃんから領土とかもらえたら、そこにマナの種を植えたいんだけど。もちろん誰かに侵入されて、切り倒されたりされないために。

中井出(……そういう意味では、べつにラ・ヴァリエール邸のどっかでもいいんだけど)

 カトレアというお子が、話に聞くよりも温和な人なら、むしろそういうところに生やしたほうが癒しにもなりますし。
 ともあれ考え事も適当に、修道院目指して移動を開始した。





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